「草野球の窓」

第22章
「スクイズ」

 前章で述べた投手交代と同じくらい難しいのがスクイズである。スクイズはどうしても1点欲しい場合に用いる戦法である。どうしても1点欲しい場面とは、先制得点、同点、勝ち越し、だめ押し、局面を変えたい場合などである。しかし、失敗の危険も高い作戦である。打者・走者のどちらかがサインを見落とす危険、相手バッテリーに外される危険、打球が小飛球となりゲッツーとなる危険、打者が空振りして3塁走者が刺される危険があるためだ。
 一方、スクイズをしないでそのまま打たせる場合、安打を打つ可能性(相手は前進守備をしているため、内野の間を抜く確率は高くなる)、外野手の定位置より後ろに飛球を打つ可能性高いバウンドの内野ゴロを打つ可能性を期待する。

 ところが、甲子園に出てくる高校の監督でも、3番・4番打者にはスクイズさせない、とか下位打者だからスクイズさせるという監督がいる。そうではなくて、スクイズした場合の危険性とそのまま打たせた場合の可能性を、我がチームの力、相手投手の力、試合全体の流れなどを勘案して判断し、作戦を決めるべきである。3番・4番打者といっても、相手投手との相性、その日の調子によってはスクイズの方が可能性が高い場合もあるし、下位打者といっても打たせた方が可能性が高い場合もあり、一概には決められない。

 前章で、監督はまず選手を信頼することだと述べた。4番打者にスクイズを命じたから、4番打者を信頼していないということではない。4番打者だからこそ、相手もスクイズを警戒していない可能性がある。ここでどうしても1点取りたい。そのために最も確率の高い戦法にこの4番打者は必ず応えてくれるという信頼がなければ、スクイズのサインは出せない。

 監督は困難な局面の中で、どうすれば打開できるかを考え、実行しなければならない。3番・4番打者にはスクイズさせないとか、エースに全てを託すなど、最初から決めつけた作戦は、困難な局面を打開するために様々な工夫を凝らすというマネジャーの取るべき作戦ではない

 前章および本章では、甲子園大会を見て感じた監督への問題提起をした。「Manage to do」という英語は、困難な局面を打開するという意味である。したがって、困難な局面を打開できない者、打開のための工夫を凝らさない者は監督(=マネジャー)ではない

 これ、ゆめゆめわすれることなかれ。



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