News >「仕事日記」2008年3月


3月1日(土) 移動
北海道は広い。昨日名古屋から函館まで来たのと同じ時間、その先へ動いてやっと遠軽に着くのだから。札幌は粉雪。旭川はすっかり雪景色。そこからは指定席のない電車で窓を楽しもうとするがず〜っと変わらぬ真っ白な山あい。これもいいものだ。
昨日から今日にかけて4曲ほど作れた。井上陽介とのDUOに向けた12の調の書き下ろし。
3月2日(日) ソロ サロマ町民センター
オープニングアクト 高橋真由子(佐呂間高校2年生)
モーツァルト ソナタ KV333
ベートーベン エリーゼのために
ショパン 別れの曲
ドビュッシー アラベスク第1番

Martha
Mind Talk
Tough
Sayamambo
Tears Of Nature
Sand Castle
In The Velvet
Floatin’ Time

Love Goes Marching On
Matador
Sand Witch
Pooh Song
Dream A While
Righteous Magnoria
Premavera
Chase The Shade
Harvest
Hymn To Freedom
花の歌(メンデルスゾーン)マイちゃんと連弾

高橋さんは地元の期待を一身に背負う天才少女。透明感のある音楽づくりをする。僕はずいぶん落ち着いて演奏できたように思う。38度の熱というのはソロにはさほど影響しないようだ。打ち上げには支障がある。
3月4日(火) エレクトーンイベント 浜離宮朝日ホール
書き下ろし曲の発表会。以前の作品もこの度のもう一人の人の作品もとてもコンテンポラリーな大作で、僕の曲が始まる前になんだか居心地がむずむずした。
ある意味エレクトーン本来の楽しさの出ている曲ですね、といわれて多少ほっとしたが、いやいやエレクトーンの世界というのも大変なところまで来ているのだな。
マリンバとのDUO、倉沢君と桑山君(Acco)のDUOがよかった。やはり僕はアンサンブルものに好みがあるようだ。「輪郭」この度の作品をエレクトーンとピアノのDUOや、エレクトーン二台使いのオーケストレイションでやってみたい。
3月5日(水) ラジオ日経 インタビュー
虎ノ門、もとのライオ日本。山本かおるアナウンサーはとても落ち着きのない人で、終始ドタバタ・ジタバタしていた。それがどうにも可笑しくて、可愛くて、いいキャラである。何曲も掛けてくれるのだがそのたびに話が弾んでしまって、リスナーは音楽をほとんど聞けないと思う。しまいには収録時間をオーバーしてからエンドスピーチを入れていた。どうするんだろう。3月23日放送。

[管理人注釈]ラジオNIKKEI「テイスト・オブ・ジャズ」の模様。ただし確認できず。
3月6日(木) 観劇 歌わせたい男たち
いや、素晴らしかった。大谷亮介の芝居はここのところなるべく見に行くようにはしていたのだが、今のところ一等賞。彼が本当に見せたいものは去年の“黄色い熱を帯びた〜”あたりだとはわかっちゃいるが、テーマと言い(卒業式で国歌を歌うことについて)役者と言い(戸田恵子、近藤よしまさ)大谷の役どころ(校長)も役作り(いやらしいポジションを見事に笑いとシリアスの間をとりながら)も最高だった。
3月7日(金) 特別授業 東京工業大学
中村教授に一日微分講習を受ける。手始めに彼の研究所を一回り見学。無埃室にそれ用の服・靴・帽子を身につけての入室など普通では体験できないことができて嬉。高圧下での物質の変化が研究課題だそうで、600万気圧(地球の中心程度)やテラワット(100万ワットの100万倍?このあたりあてずっぽう)なんていう数字が平気で出てくる。
驚いたのはフェムト秒という単位。10の15乗分の1秒単位でレーザー光線を使った実験をする。日常的に。1ジュールを1フェムト秒与えるということは10の15乗分の1J。分数をひっくり返すと10の15乗Wがその物質に与えられる(ただし10の15乗分の1秒だけ)ので宇宙空間での現象の実験にもなるのだ。凄い。何がすごいって、机上の分数計算が何100万気圧の実証に結びつくという、その数学・物理の理論と実際の整合性に、男の子は感動するのですね。
バッハのカノンが本当に同じことをなぞってあの音楽になっているのを確認した時のようなぞぞ〜っとする感じが味わえた。微積分入門も随分と工夫してくださった様子でよくわかった。国立大学の1部屋に3時間ほど二人きりで個人レッスンしてもらうのも僕くらいのものだろうと少々鼻高々。
3月8日(土) 観劇 スーパー歌舞伎 ヤマトタケル
飛んでた。
3月9日(日) ひだのトリオ TRUST 西国分寺・いずみホール
ライブアルバム発売を機にバンド名をTRUSTにした模様。どんなにフリーになっても受け取って発展してくれるのでこのユニットは面白い。もう少し回数を増やしてもいいところだがヒダノ君の楽器が大変なのでそうもいかないところ。
帰りは吉祥寺に出て「どいちゃん」で飲む。土井さんは先日ここの帰りに財布を落としたら翌日隣のマンダラIIのマスターから連絡がきて、なんと店の前の道路に落ちているのを拾っていてくれたそうである。今時珍しい良い話。
3月11日(火) 映画鑑賞 This Is Bosa Nova
名曲ぞろいで楽しめた。ポルトガル語を知りたくなった。ナラ・レオン、チャーミング。ボサノバはジャズの1ジャンルではなく、サンバの1種それも芸術性が昇華した形だ、と誰かが言ってたのがよかった。ジャズはなんでも取り込んでしまう、とも。良かったり悪かったり、感謝されたり恨まれたり、結果はどうあれ、当を得た発言だろう。
3月14日(金) M’s 富士ロゼシアター
レクチャーコンサートの二回目(=最終回)
アドリブの方法について、〈1〉フェイク〈2〉スケール〈3〉モード(含む:ペンタトニック・ブルーノート・そして勿論教会旋法)に分けた縛りで小野さん(Ts)とのやりとりが愉。

わざわざ泊っての打ち上げは地元の名門ジャズクラブ“ケルン”。地元歌手やピアニストなど入り混じって、最近にはないミュージシャンっぽいパーティ。
3月15日(土) ドラマ音楽録音 ビクタースタジオ
1ポンドの福音、の作曲家に指名されて別ドラマの収録。彼は相当売れっ子になっている模様。打ち込まれた音源を元にPCから印刷された譜面はとても読みにくいが、曲はよく練れている。やはり新しい種類の才能と技術なのだろう。

[管理人注釈]フジテレビ系ドラマ「ラスト・フレンズ」かと思われます。作曲は 井筒昭雄氏。「井筒昭雄」で検索するといくつかの無料視聴可能(ダウンロード購入も可)サイトがヒットします。
3月16日(日) デュオ w/倉沢大樹
コンドルは飛んでゆく
これからの人生
シャンソンメドレー
この素晴らしき世界(倉沢:ピアニカ)
マシュケナダ
I’ll Remenber April
That’s All(倉沢:ピアニカ)
Mambo In
Tears Of Nature
Take The A Train
Round Midnight(倉沢:ピアニカ)

かつての弟子はやはり優秀だった。ジャズの気分をちゃんと持っているという点では松田昌を凌ぐかも知れぬ。やる気が出る程度の難易度がありつつ、懲りすぎない按配の良さ。何よりも実演奏時の本気さが好感も持てるし、それはある意味当然のことなのだが、ほかの(エレクトーン)プレイヤーにちと見受けにくいところ。

松田昌と僕のアルバムを聴いてピアニカに目覚めたとのことだが、実際に目にしたことはないらしく、ストラップを使った両手弾き奏法のことはご存じなかった。松田昌さんもそうだが、音楽性と感受性の豊かな人にはピアニカがよく合うのだから、レパートリィを増やしてほしいところ。
3月18日(火) ハムカツブラザーズ w/金子晴美 銀座スイング
八尋洋一(B)
松山修(Dr)
今福健司(Perc)
金子晴美(Vo)

Freedom Jazz Dance
Sayamambo
Send One Your Love
Love And Happiness
歌コーナー
Spanish Key
T , T , C & T
Just The Two Of Us
Fire On The Bayo

リハーサルから楽しくてしょうがない。学生バンドに知り合いの女の子を呼んで歌ってもらおう、みたいなノリ。「歌を覚えてさぁ」「そんなの無理よ、私」「大丈夫だって。みんな優しいからさ」「そうぉ?」「じゃ、決まりネ」なんて風に。などと喋り合っていたら「私、実際そうやっていつの間にか歌手になっちゃったのよ」と金子さん。

去年のゲスト講師の体験もあって、今福さんの良さがよりわかったので、メニューも演奏内容もよりよく対処できた結果大いに盛り上がれたと自負する。それにしても洋一君のベースの音、アイデア、熱、プレゼンス、、、すべて凄い。東京だと終わってから皆で飲めないからツアーに出よう、バンド歌手に晴美ちゃんも連れて行っちゃおう、ということに話はまとまった。
3月19日(水) ソロ 三国ハウスメーア
---自分名義コーナー
Mind Talk
Tough
Sayamambo
Tears Of Nature
Sand Castle
In The Velvet
Floatin’ Time
---新作コーナー
The End Of Season
In Your Quiet Dream
Chase The Shade
Harvest
---リクエスト・コーナー メドレーで
センチメンタル・ジャーニー
枯葉
テイクファイブ
---Ponta Boxコーナー
Love Goes Marching On
Pooh Song
Dream A While
Over The Rainbow〜Hymn For Nobody

元知事や役人、文化人のクラーズな集まり(30人限定)というので、良く知られた曲やリクエストもので埋まるのだろうと考えていたら、お迎えの盛岡さん「うちの集まりでは、とにかくアーティストのやりたいようにやってもらってそれを楽しむのです」。
大昔、八雲のジャズハウスのママが「その時にミュージシャンが一番やりたいことをやってもらうのが結局は一番イイモノが聴けるのよ」と言っていたことを思い出すついでに、先日の6台リハーサルの折に塩谷が白寿ホールでのソロに僕を誘いながら「やっとだんだん思うようにピアノが弾けるようになってきました」と言うのを聞いて「そうだよ。この人のようにずっと自作で勝負、というインスト・ミュージシャンだっていっぱいいるんだ。妙に客に申し訳なく思う必要はないのだ」と思いを新たにしたことも思い出し、少々の勇気をもって全曲自作にトライ。わいわいと楽しみながら真剣に演奏を受け取る、という実に上質な客に恵まれていい演奏ができた。
聴衆と演者の境界線から我が心のうちへ入る(=客から遠ざかる)距離が大きいほど、或る地点で反転してその距離だけ聞き手に音楽が届く、という予想は正しい気がしてきた。“リーマン予想”のような名前をつけたいものだ。あ、“佐山予想”か。数学的な証明はむりだろうけど。
3月20日(木)
朝ごはんに“塩ウニ”というのをいただいた。この辺り(三国)でとれる雲丹を何十分の一にもなるほど塩で〆たもの。全国からリクエストはあるのだが、とてもお分けできるほどは作れなくて、地元でしかいただけない。
いや、感動的にうまい。超のつくほど小粒の卵がぎゅと詰まったようなタラコ、塩漬けは勿論施してはあるのだが、海の塩味、磯の風味が漂うあの感じが僕は大好きなのだが、それを何倍にも凝縮したような、そして勿体なくてなるべく飲み込まないようにしているのが、ついにはそれもかなわず嚥下してしまった少々の後悔の後にずっと舌に残る海の味の向こうに日本海が見えてくる。

京都に移動して三木君と合流。“なかひがし”に連れてってもらう。
一枚板漆塗り(それも多少地肌を出すような何とかというスタイルらしい)貝合わせの陶器に入って出てきたのは白和えに土筆。となりの長皿には侘助に見立てた白蕪と赤蕪。中には花粉に見立てた卵の黄色。根元を昆布で巻いてある。いちどに口に入れる方がハーモニーを味わっていただけます、というお言葉通りに和声法どころか対位法まで感じたのは初体験。ビル・エバンスからドビュッシーにかけての実感だった。焼いた菜の花。鮎の稚魚である氷魚(ひうお)など頂いたあとに、中休みに炊き立てのごはん。蒸らす前そのままをいただく。

モズク汁のなかにレンコンすり身揚げ。オレンジジュレに乗ってきたぐじ(尼鯛)の切り身の背の切れ目に大徳寺納豆。鯉の薄造り。土筆のてんぷら。鹿肉の一口カツ(状のもの)。最後にマールのような水出しコーヒー。チーズと黒糖金平糖の付け合わせが絶妙。毎朝野草を採りにいくという大将の一番のウリはごはんだそうである。

夜帯にソウエンを訪ねる。大野綾子とも会い、急死した森野兄(マサヒロさんという)を偲ぶ。出番だった洋子と共演したりして一休みしたあとに我儘を言って、一人追悼演奏をした。Chase The Shade、Hymn To Freedomなど自分自身を試す(情に流れるのか、冷静に弾けるのか、勿論目標は“無”になれるのか)意味もあったが、成長なのか今だけなのかは判じかねるが相当納得のいくものだった。セインツのバラード部分とバンド呼び込みフレーズ(早くなったら入ってくれ、とその日のバンドメンバーには頼んであった)は体得した気がする。
3月21日(金) ジャズピアノ六連弾 倉敷音楽祭
現状メニューでの最後のステージ。登場は新バージョン(各人のソロはスタンダードナンバーに限定)を使ってみたらいい感じだった。特に山下洋輔さんのラウンドミッドナイトが秀逸。個人的には島健さんとのDUO(Spain)、小原・国府とのトリオ(On Fire)が落ち着いてできて良。ボレロは塩谷の指導よろしきを得てアンサンブルが極上になってきた所へ、国府弘子がよく頑張った。
3月22日(土) 新妻由佳子 吉祥寺ストリングス
 
3月24日(月) 歌舞伎 観劇
銀河鉄道でご一緒した寺川さんのお世話で初めての歌舞伎。面白かった。スーパー歌舞伎とは別物だったが、舞台袖でのパーカッションの音のでかいのは同じくらいだった。踊りに感動した。
3月26日(水) 寺井尚子リハーサル つづきスタジオ
前田憲男さん、加山雄三さん等のステージの仕事を頻繁にしていた時期にはしょっちゅう来ていたものだが、久しぶりに懐かしい。尚ちゃんはリハーサルといえども音楽を丁寧に扱うのでこちらも気が抜けず、この段階から発見がある。ゲストの里実ちゃん(Vo)は前田さんの大推薦新人。神主の次女。お姉さんが凄いらしい。会いたい。
3月27日(木) デュオ w/寺井尚子 スイートベイジル
ボーカルゲスト 鈴木里実   
Hush a Bye
Jerasy
Fragile
Saving All My Love For You (w/Voc)
Lover , Come Back To Me (w/Voc)
アメイジング・グレイス〜オー・ハッピー・デイ (w/Voc)
The Peakock
In The Velvet
Be Bop
寺井・北島デュオ
My Favorite Things

Over The Rainbow (w/Voc)
Spain
3月28日(金) デュオ w/寺井尚子 スイートベイジル
ボーカルゲスト 鈴木里実
In The Velvet
Jerasy
Fragile
Hush a Bye
The Peakock
Be Bop
Love Goes Marching On
Saving All My Love For You
Georgia On My Mind
Lover , Come Back To Me
My Favorite Thing
出会い

Over The Rainbow
Spain
3月29日(土) 観劇 東京芸術劇場小ホール「青春の門」
面白かった。五木寛之さんの推薦文もチラシに入っていたが、そこはお芝居のこと、かなり限定プラス突っ込んだ話だった。
敢えて言うとプロレタリア闘争の話なのだが、この前見た芝居も(時代は下って僕世代の)闘争モノ(と括ってしまうと芝居の人々に怒られそうだが)だったので、気合わせた演出家の横田さんとそんな話をした。このテの(とまたひと括りにするようで気が引けるが)小劇場演劇は星の数ほど行われているので、たまたま僕達の通ったものが(テーマだけだが)に通っていたのだろう、との結論。

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2008年