News >「仕事日記」2006年10月


10月1日(土) 古野光昭フルノーツ 富士・ロゼシアター
古野光昭(B)
大坂昌彦(Dr)
川嶋哲郎(Ts)
ゲスト:寺井尚子(Vln)

Yesterday
Like Someone In Love
All The Things You Are(w/寺井)
Obriviyon(w/寺井)
A Night In Tunigia(w/寺井)
P-Bop
To The East(Pf,Bass)
Softly As In A Morning Sunrise
Be-Bop(w/寺井)
Spain(w/寺井)
Isn’t She Lovely? (w/寺井)

1曲目、ビートルズのイエスタディ。川嶋のテーマの吹き方が抜群で、改めてジャズというのは演奏のことなのだと思い知った。安定感とともに、少々のことにはたじろがぬ太いベースラインに支えられて、ドラムがテナー方面に大幅に攻め寄って行く様子が微笑ましくも頼もしい。

制作の持田さんとは何度かのお付き合いなのに、万度(バンタビ、と読んで、毎度毎度の意味。ワープロで出てきませんね)忘れて失礼を重ねている。そういう相手って時々いますね。
10月2日(月) 紋別 前入り
女満別から紋別はそこそこ距離があるのだが、前日入りの事とてゆるやかな時間設定の結果ロングドライブとはなった。紋別の楽器屋さんが用意してくれた部屋で久々のピアノデュオを合わせる。がんがんの練習こそしなかったが、今日に向かう10日間は毎日1回以上おさらいしていたのでラクに出来た。この“気持ちがラク”というのが“おさらい”の一番の目標と成果なんじゃないだろうか。

ホテルにすすめられた洋風居酒屋というのに行ってみる。なるほど洋風、、、というものはまっっっっっったくない。強いて推測すれば、座敷(30人分くらい)だけでなく、テーブル席(4人掛けが2つ)もある、ということだろうか。

ホタテのうまいのに驚いたが、これは去年佐呂間での初体験が生きているので落ち着いて味わえた。秋刀魚がナマで食えるというのは今やさほど珍しくもない。バチアタリだが多少の流行りもあって、特に湘南地方などでよくいただく。ナマで食することが出来る、ということと好んでいただく、というのはまた違う話なので、スタッフの注文を僕としては冷ややかに聞き流していたのだが、一口いただいて考えが改まった。程よく脂がのった青魚の風味に、鯉のアライのようにあっさりと引き締まった肉。

先入観の逆転はまだあった。ほっけの粕漬け。これがきりりとした白身焼き魚になって出てくる。見ばなれもよく、おろし醤油に良く合って焼酎が進みます。
10月3日(火) 小原孝デュオ 紋別
ミヨー:ブラジルの女
モーツアルト〜グリーグ:ソナタハ長調
モーツァルト:4手のためのソナタニ長調
小原孝ソロ;リベルタンゴ
      世界にたった一つの花
      トルコ・マーチ
佐山雅弘ソロ;Summer Afternoon
       Spain
ビートルズ・メドレー
いずみたく:見上げてごらん夜の星を

ホテルは漁港のすぐ近く。そのホテルの近くの魚屋さんが開いてる食堂でお昼なんだから期待はいやがうえにも高まる。小原君はこのツアーのテーマにしているかのごとく昨日からいくらばかり食べている。この昼もいくら丼。我々は定食をいくつかとってシェアあいながら。筋子・鯨・しいら(刺)、ニシン(焼)、ししゃも(煮)。ししゃもの煮た物は始めて食するが、甘辛の煮汁がよく絡まって美味。

会館にはヤマハとスタインウエィの二つのフルコンサートグランドがあり、それを生かすコンサートの意味もあって我々を呼んでくだすったそうで、嬉しい話である。

打ち上げでボランティアスタッフの皆さんと音楽話。なんと小原君の国立音楽大学時代の同級生がメインスタッフの中にいらして、本人達も勿論だが、周りから当時の様子の取材などで大いに盛り上がる。現役で音楽活動している人が多くて、文化レベルの高い町、との印象が快く残った夜だった。夕べの店(洋風居酒屋!?)へ二次会にいく。どうも僕は、あのへんてこさがクセになっているらしい。
10月4日(水) 小原孝デュオ 新十津川
奈良の十津川を連想するが、それは正解。ニューオリンズ、ニュ―ヨーク、北広島、などと同様、あると力の入植者が故郷の名前を残すパターン。とりわけこの新十津川は奈良県十津川郷が明治年間のある年の大洪水で壊滅的な打撃を受けた時に有志を募ってわたってきたとのこと。吉村寅太郎の事跡も思い起こされるが、僕としては何といっても慶応4年。
見廻組の佐々木只三郎とは言われているが、伏見寺田屋に逗留中の坂本竜馬を暗殺した刺客が宿に名乗って油断させたのが“十津川郷士某”というのである。十津川にうらみがあるわけではない。むしろその逆、でもないが、十津川郷士というだけで油断を解くほどの信用が、都会でもなく、広くもない地域の名称にこもっていたということに驚き、また感嘆する。そこに至る無数の事跡、生々しく言えば多くの“死”までもが陽炎のようにその名前にまとわりつくのである。

今日は、東京から高木クラビアの社長以下3人のスタッフがスタインウエィを持ち込んでの調性に余念がない。広い敷地の川沿いを眺めるとどうやら武道場らしき平屋。覗いてみると果たせるかな剣道場ではないか。入り口で一礼し、板の間の端に正座。小学生に打ち込み稽古をつけている様子をすがすがしい気持ちで眺めていると、別の小学生が大人の意を受けたとおぼしく、オクへお通り下さい、と背筋の伸びた行儀のよさで招じ入れてくれるのを、別の用もあることなので、と居並ぶ人々に軽く会釈をして退場。ふらりと寄ったどこかの剣豪、に見えてないかしらん。

クラッシックだというのにのびのびと楽しく出来るのは小原君とのデュオがうまく回って来ている証拠でもあるが、渋谷から持ち込んだスタインウエィの、さすがにフィットするコンディション作りも大きい。と高木さんに述べると、持ち込んでいるピアノは常々調律、調整しているからさほどの手間はかからない、むしろ現地ピアノの音色その他を調性して二台がうまく響くようにするのが一番の苦労点だという。

コンサート環境というのは臨めばいくらでも上があるものだ。逆に相当な悪条件でもやっちゃえばできないことはないわけで、この点小原孝に比べて佐山雅弘は相当レンジの広い仕事っぷりといえるなぁ。
10月5日(木) 移動日
北広島に寄り道。今月終りにM’sで来るホールにお邪魔すると“M’s展”の準備中。横山明さんに書いてもらったオスカー・ピーターソンと二人並びのイラストが豪華。お隣のFMメイプルにお邪魔して小原孝クンと二人30分ほど出演。その下のラーメン屋がうまいというのでいただいて函館に向かう。

昨日から頼んでおいたビーズビーでの会食。平山シェフが相当気合を入れてくれていたと見え、豪華絢爛なワインパーティとなった。嬉。

まずはスパークリングワインで乾杯。自家製生ハムのカナッペなど6〜8品のオードブルは全て絶品。平山さんはブルゴーニュファンなのだが、僕がボルドー好きなのを知っていて、2000年ものを出してくれる。当たり年だったそうで、確かに深みが一歩二歩違う感じ。ワインとの食事に最高の好物ながら、ここんとこ狂牛病騒ぎで全国的に食べられなくなっている牛カルパッチョ。これを和牛で用意してくれた手回しのよさに感動。ステーキは鹿肉にする演出のうまさ。
やがてワインがブルゴーニュに変わるとハンバーグが出てきて、こちらはラム肉。参りましたところへ、当地いつもの調律師の馬場さんがスパニッシュワインを差し入れてくれた。今日の僕たちのメンバーには高木クラビアの社長もいる。あれこれ業界では有名な人なので、というわけでもなかろうが、明日の調律を見学したいとの由。
いかめしを白ソース・赤ワインソースでいただく、という料理が出て吃驚。またこれが実に合う。普通に予想すると赤いソースの方がワインに相性がよさそうなものだが、どちらも美味。料理自体としては白ソースの勝ちかな、などと話していると、ホワイトソースがことのほか好評で、空港でお土産として売られるようになったという。

青山あたりに店を出してほしいほどのクォリティをもつ“ビーズビー”。そんな大仰な冒険はさすがにしないだろうが、この味と思いやりをもち続けたまま、ますますの発展を祈念するものである。
10月6日(金) 小原孝DUO 七飯町文化センター
前回来た時に平山氏に教わった道南食堂でうにいくら丼をいただく。小原君の練習の都合もあり(15日にリサイタルを控えているのだ)早めに会場へ行くと、昨日ワインを差し入れしてくれた馬場さんが調律師仲間の上出さんと既にいる。上出さんは瀬木デュオで乙部だか何だか田舎の方で弾いた時、元は相当困ったチャンだろうことが用意に推察される小さいグランドピアノを、見事にコンサートホール仕立てに調性してくだすった当の御仁。再会を喜ぶうちに、僕が大沼公園に行った事がない、それなら1時間くらいの行程で、と彼のボルボで案内してくれたんである。
その後親切にも感動したが、わざと山道を往き、牛の放し飼い牧場などみつつ俯瞰景色を堪能した後に佇んだ湖面は鏡のような、という形容詞が初めて得心のいく心持。今朝からの何気ないメロディ衝動をメモ用紙に書き付けておいたものが曲の形に膨らんで、楽屋で仕上げて本番に掛けた。

すさまじい集中力で練習する小原孝と観光で得たモチーフを即本番でアドリブしていく佐山雅弘の好対照が微笑ましい、、、か?
10月9日(月) 瀬木貴将ネイチャーワールド 東海村文化センター
瀬木貴将(Zam)
越田太郎丸(Gi)
坂本昌人(B)
ヤヒロトモヒロ(perc)
ゲスト;溝口肇(Cello)

久々ネイチャーワールド。ヤヒロ君のパーカッションはとてもやりやすく、その落ち着きは巨匠の風格さえ出てきた。
10月10日(火)
言葉遊び
動物の中で、こんなことするのは人間だけなんだからやめよう、ということと、動物の中で、こんなことするのは人間だけなんだから大事にしよう、ということの両方ある、ということは、動物の中で、こんなことするのは人間だけなんだからという設定と理由付けは意味がない。喫煙・服を着る・季節を選ばない交尾。笑うこと。

CM 西麻布ウォールスタジオ
先日録音したピアノにかぶせて別パート。結果ピアノデュオになる。
10月11日(水) 国立音楽大学
後期 第四回 ジャズボーカル

Billy Holiday / Summer Time
テーマ・メロディの時点ですでにフェイクしているのはサッチモ時代からの流れ。歌いまわしに潜んでいるブルースフィーリングを聴き取る事。
○素材としての、ミンストレル・民謡・後にはポピュラー・ソングなどをジャムセッションで取り上げる際に、フェイクとスイングが付加されて、ジャズになる。片やウエストエンドブルースのように、主にブルース形式を母体としたオリジナル曲。この大きく二つの素材のありようが、後のビ・バップや新主流派への流れにもなるのだろう。

Frank Sinatra / In A Wee Small Hours Of The Morning (Arr.by Nelson Riddle)
イントロ【短三度転調から歌に入った瞬間に元調】
ジャズボーカル、ということを浮き彫りにするために、一旦シナトラを聴く。ジャズを離れてもネルソン・リドルとゴードン・ジェンキンスの名前はポピュラー・オーケストレイションのバイブルとして覚えておくこと。
完成されたアレンジとソフトなフェイク。フェイクというよりは歌詞のリズムを大事にフェイクすることで四分音符だけではない本当の意味のストレートメロディになる。
>> EX. I Can’t give you anything but love, baby を四分音符や歌詞どおりで歌い分けてみる。
こちら(シナトラ)はフレッド・アステアを祖とするビング・クロスビーなどポピュラーソングの系譜。とはいえ、大元は“ジャズ”という白黒あざなえるアメリカ文化であって、世界中のポップスはとどまるところ、ブルースとジャズに還元される。あとはカントリー・ミュージックか。

Ella Fitzgerald / How High The Moon
1コーラス歌ったあとダブルテンポ。そのまま壮絶なスキャットになだれ込む。ジャズボーカルの一典型。ただし留意すべきこと以下に。
アドリブはジャズの命ではあるが、ボーカルにおいては必須ではない。アドリブはしなくても十分ジャズである、それ以外ではありえない歌手も多くいる、、、ということで、、、

Anita O’ / day's Wonderful
They Can't Take Anything From Me を挟んで、その部分をハーフテンポにするというアレンジの妙もあるが、それよりも、バンドとボーカルが一体に成ってスイングするところに真骨頂がある。
リズム(曲ごとのスイング感、グルーブ)に乗って歌うことが出来るかどうか、楽器同士のようなコミュニケーションがとれるかどうか。
バンドがスイングしているということがジャズであって、そのセッションの仲間に、例えばトランペットがたまたま入るように、ボーカルが入っているのがジャズボーカル、、、かな?

Sarah Vaughn / Lullaby Of Birdland (Arr. By Quincy Jones Recorded With Clifford Brown Quintet)
インストルメンタルに施すようなアレンジをボーカルものにも。フェイクやアドリブが効果的に入る余地を残しつつ、コサビを聞かす程度の編曲。>>ボーカルの為、歌伴というのではなく、インスト・ジャズのテイストにボーカルを入れるという発想ないしサウンドはえエラ、アニタと同じ。

Carmen McCray “Great American Song Book”
コンボによるボーカルバッキングの完成形
Satin Doll
チャック・ドミニコによるベースソロ・イントロが秀逸。以後定番となる。
A Song For You
この時代のこのポップス・チューンあたりがジャズ化の限界のように思う。

後に、ドクター・ジョンのスタンダード・アルバムやソングフォーユーの作者。レオン・ラッセルの“谷間に三つの鐘が鳴る”(シャンソン・スタンダード)などなど、ポップス・シンガーのジャズ、ジャズ・ボーカリストのポップスなど百花繚乱ではあるが,ジャズサイド、ポップスサイドともに、オリジナル自体の完成度(和声と旋律の緊密性、より構築的な対位法、オーケストレイションなど)が高度な為(音楽的にどちらが高度とはいい難いが、少なくとも演奏者の自由度は低くなっていく)カバーに留まり、換骨奪胎には至りにくいのだ。

Chet Baker / That’s Old Feeling
Tpによるイントロはバース(と思われる)。But Not For Me もこのスタイル。
歌が始まってからのピアノのカウンターメロディラインに見るべき所多し。エンディングのトニック音にF7aug > E7 > Eb7 > D7 > DbMaj ( < Tonic)
Look For the Silver Moon では珍しいトニックペダル(主音通奏)が見受けられる。

チェット・ベイカーはやがて取り上げるウエストコースト派の代表的ミュージシャンであるが、スモールコンボでのVocalにおいて、スタイルとしてはビバップコンボの編成とアレンジ法にのっとっている。ただ、メロディアスであることを身上とし、激しいフェイクをしない点はシナトラに代表される白人系。先鋭的なジャズフィーリングとソフィストケイトされたポップスフレイバーのブレンド具合が構成にも至る多くの人々の好む所となる所以。

ジャズ・ボーカルその後の三つの道
フュージョン・ファンク化
ダイアナ・クラールなど白人ポップス化<<<シナトラへの回帰?
ダイアン・リーブスなど新伝承派的、黒人ジャズ化<<<バンドとの一体化。サラ、エラの発展形。
10月12日(木) 成世昌平コンサートのゲスト
松田昌(Pianica)、篠崎正嗣(Vln)と僕の3人でワンコーナー。これはこれでM’s(マサちゃんズ)。漢字も全部違うし。

篠崎さんとは若いときから縁深い、というか随分お世話になっている。初めてのポップスものツアー、NSPは彼のヒキで入ったし、スタジオミュージシャンとして多くのアレンジャーに紹介もしてくれた。彼がジョーストリングスの重鎮でもあった頃に、意欲的なコンサートへ割にはご一緒の機会が少なく残念である。今回はゲスト同士なので“お喋りバイオリン”など美味しいところをチョコットずつ見せてもらえるのが愉。
10月13日(金) 松田昌変型トリオツアー 一戸 コミュニティセンター わわわのドーム
言葉のない夜(伝兵衛・佐山デュオ)
忘れない誕生日(伝兵衛・佐山デュオ)
ムーンライト・スターライト(伝兵衛・佐山デュオ)
満月が笑う(伝兵衛・佐山デュオ)
Wes が聴こえる(松田昌参加)
夢はいつも(松田昌参加)
楽しいバス旅行(松田昌ソロ)
どうしてる?(松田・佐山デュオ)
マサ坊旅に出る(松田・佐山デュオ)
孤独(松田・佐山デュオ)
さらばブエノスアイレス(松田・佐山デュオ)
高原列車のワルツ(松田・佐山デュオ)
夢のごとし
七つの子(3人で)

ここのドームではもう何度も演奏しているが、今日のピアノは特別に弾きやすかった。入れ替えたのか?と浪岡楽器の店主に聞くと、そうではなくて、ピンを変えるなどメンテナンスの予算が出たので念入りに調整する事ができたのだそうだ。ピアノというのはやはり金食い虫なんであるな。ここんとこ小原孝、M’sレコーディング、ガーシュインなど朝練が続いている成果であるかして、アドリブものになると自在に指が動くので、コツコツと音楽を構築している実感は薄けれど、かなり気分よくステージ時間を過ごす。
伝兵衛、松田昌の二枚看板の後ろで好き勝手演ると言うこのスタイルはやはり得がたい、捨てがたい演奏快感がある。この対極のソロ・ピン・ひとり立ち・自己の確立メニューを作りたいと近々は考え中。やはりオリジナル中心か、、、。
10月14日(土) 松田昌変型トリオツアー 盛岡公会堂
官庁街の真ん中に、明治だか昭和だか、とにかく古いレンガ造りのい〜い感じの建物。ピアノはヤマハのFC.。ン?CFではなくFCなんである。浪岡氏の昨日の話によると、あまりに古くてアルファベットが右から綴ってある、とのことだったのだが、さすがにそれは勘違いで、Nippon Gakkiと普通に書いてある。
ピアニストのサインが共鳴鉄版に残っていて、1959年。プラスティックの鍵盤ではあるがいまどきとは違う加工の具合で、調律師的にはつらいというが、どうしてどうして独特のいいタッチと、建物とも相俟ってか、いい響きがする。取り壊しの流れを押し留めるのが精一杯という話。“全国的にも珍しい独特のいい響き”としか形容の出来ない語彙の不足を恨むばかりだが、大事に残してほしいものである。

館長が実にユニークな人だった。打ち上げ後部屋で寛いでいると、もう一軒へのお誘い電話有り。否やのあろうはずもなく連れられたのはジャズ喫茶“ジョニー”。ギターと尺八(!!)のデュオの真っ最中に6人でがやがやとお邪魔したのは少々気が弾けたが、マスター始めお客様みんながなんだか歓待してくれて嬉。ギタリスト、シャクハチストと同い年とわかって盛り上がる。

ギタリストと“The Girl From Ipanema”“Billy’s Bounce”。ソロで“Good-Bye”“T , T , C and T”。しばらく飲んでるとお客様からPONTA BOXメドレーを、という声有り。Sand WitchとLove Goes Marching On
10月15日(日) ヒダノ修一 掛川文化会館 シオーネ
無我夢中
バンパの風
ンゴンベ
モンシェリ (太鼓・ピアノDUO)
竹田の子守唄
がんけ
Dance (太鼓・サンポーニャDUO)
コンドルは飛んで行く
トルコマーチ(サンポーニャ・ピアノDUO)
アンデスの詩
まりと殿様
Enc.太鼓ソロ

シオーネとはシオニズムからのネーミングではなく、潮の音(シオノネ)からきたと思ったが、以前にも取材していたはずなので聞けなかった。

ソロ、月猫、M’s、に続いて今日で4回目のシオーネ。全国ホールは数々行けど、公共ホールというものが総じて幅広い演し物設定をするので、このリピート回数は珍しい。ホール側にとっても僕が最多出場に近いんじゃないだろうか。有難いことだし、嬉しい。ホールスタッフともすっかり顔なじみ、っていうのもなんだかいいもんだし。
松田昌教授の学校とのやりくり上、この期間にツアーを組んでその結果、先に決まっていた今日のイベントと東北をとんぼ返りせざるを得ないのはしょうがないから、浜松(来年は二回来る)の前後に立ち寄ってプライベート飲み会でもしようかな。
10月16日(月) 松田昌変型トリオツアー 二戸福岡中学校
言葉のない夜
忘れない誕生日
moonlight,Starlight
Wes が聴こえる
夢はいつも
ドラえもん
孤独
楽しいバス旅行
どうしてる?
マサ坊旅に出る
羽根を忘れた天使
さらばブエノスアイレス
七つの子
10月17日(火) 松田昌変型トリオツアー 八戸店 ホール(ヤマハ)
 
10月18日(水) 国立音楽大学
後期 第五回 ビッグバンドの確立
デューク・エリントンとカウント・ベイシー

前説
まちまちだった楽器編成がやがて統一されて今に至る。すなわち、
4 Trumpets
4 Trombones(うち一つは Bass Trombone)
5 Saxies(2 Alto 2 Tener 1 Bariton)

【カウント・ベイシー・オーケストラ】
参考レコード “ベイシー・イン・ロンドン”
リフを聞かせるバンドといっていいだろう。いい意味でスイングしかしていない、と表現できるのではないか。

〈1〉Jumpin' At Woodside
冒頭のサックスのリフがテーマといえばテーマだが、次々に色んなリフが出てきて相当盛り上がったところで曲が終わってしまう。
〈6〉の One O'clock Jump もそうで、こちらはアンコール演奏とも思えるが、1分半だけの演奏でワンフレーズを3回繰り返すブルーステーマにTpセクション、Tbセクションが次々に重なっていき、最大のダイナミクスを迎えて終わる。

〈2〉How High The Moon
ピアノトリオによるイントロからテーマ。8小節も立つ頃にはフェイクからアドリブに入って行き、その後二度とテーマは現れない。
ソニー・ペインのドラムが素晴らしく、フレディ・グリーンのギターとともに、このバンドのスイングの推進力。特にフィルインの絶妙さに留意。アドリブ法にもつながる、引き算てきな感覚。
挿話として:バリー・ハリスのレッスン法のひとつ。
 八分音符で 01765432|1
と降りるのを
 00000002|1
 00000032|1
 00000432|1
 00005432|1
 00065432|1
 00765432|1
 01765432|1
と、一音ずつ増やすことで到達点に向かう、歩数感覚ともいうべきものを養う。

【デューク・エリントン・オーケストラ】
参考レコード 1:インナメロウトーン 2:ザ・ポピュラー

1ー〈1〉 Perdid
テーマをしっかり聞かせた後に、エリントニアンと称されるアドリブの名手が名人芸を披露する。バックリフも多様に用いられるが、ベイシーバンドが、それ(リフ)自体を聞かせ、スイングさせるのとは異なりソロを際立たせる役割が多い。言い換えればソロの比重が高いといえる。
カラートーン(非和声音を色付けに使う)の多用とともに、ブルーノートを、単に旋律的用法にとどまらせずに、和声に組み込むまでに楽音として扱っているところにも注意。

1ー〈5〉 In A Mellow Tone
アドリブ部分のバックリフの位置に注目。即ち、4小節単位の1後半から2、3後半から4にかけてバックリフがある。ということは、アドリブは4から1、2から3になる。このことで、1〜2、3〜4でメロディを作った場合の、ぶつぎれフレーズになる傾向を避け、ストーリーを次々とつなげるようなアドリブラインが生まれる。この小節またぎの感覚はビバップ以後も引き継がれ、ウエイン・ショーターのコンテンポラリープレイにまで繋がっていると見てよいだろう。

1ー〈10〉 Rock My Baby
I 度のなかでのスケール第三音が IV 度セブンのなかでもフラットせずにシークエンスされている。メロディ反復を縦のハーモニーよりも優先させて、ある種のディスコードも新しい和音として成立させる手法は色んな曲に見受けられるところ。
1ー〈1〉および2ー〈2〉は同曲だがそれぞれエラ・フィッツジェラルドのボーカルとジョニー・ホッジスのアルトによるテーマ。歌は楽器のように、サックスは歌うように。
2ー〈1〉テイク・ジ・Aトレインの始まりが3拍子のピアノトリオであることもアレンジ上興味深い。とともに、ベイシーバンドとのスイング感の違いも如実に聞き取れる。総じてベイシーバンドは軽快、エリントンバンドはヘビーといえる。

エリントニアンとしてはジョニー・ホッジス(As)を筆頭にハリー・カーネイ(Bs)ジミー・ブラントン(B)の名前くらいは知っておきたいところ。特にブラントンは史上初めてベースを独立した楽器として認知せしめた功績有り(初めてベースソロをした)。
別格として、ビリー・ストレイホーン(Arr,Pf)は是非銘記したい。若きストレーホーンがある日エリントンを訪ね、自分で研究したエリントンサウンドのスコアを見せたところ、すぐに雇われることになり、ハーレムに向かう手土産に書いた曲がTake The “A” Trainであったとは有名なエピソード。
10月19日(木) 佐山クァルテット 都城 ???ホール前広場
三木俊雄(Ts)
小井政都志(B)
古地克成(Dr)
10月20日(金) 佐山トリオ 都城 ???ホール前広場
小井政都志(B)
馬場孝喜(Gi)
10月21日(土) 成世昌平 大阪ブラバホール
何故か腹痛。おへその段、前面半周分シクシクと痛い。どうやら便秘だろうと、昌さんがいうと正さんが“フンヅマリーの赤ちゃん、、、”とぼそっと言う。一体にこの人は面白くなさそうなことをポソリと言ってじわじわ面白い、という話芸なのだが、このときほど迷惑なことはなかった。
腹が痛いんだから笑わせないでくれ、とはよく聞いていたが、本当だったことを実感。したくないもんである。救急車を呼ぼうか、と言ってバイオリンで物まねしたら“あ、ごめん、今のはパトカーだった”などは悪い冗談である。一人になっても思い出して、また腹痛。おかげで何ヶ月ぶりかの酒抜きとはなった。
10月22日(日) ソロ 富山・竹田楽器
1:バッハ・コーナー 
  アリア〜Var 1.2.3.25.29.30.アリア
2:クラッシック・コーナー 
  ショパン ノクターンEb Maj
  佐山   Tears Of Nature
  リスト  愛の夢第三番
3:シャンソン・コーナー 
  松田昌  孤独
  バルバラ 群集
4:ジャズ・コーナー 
  Let’s Face The Music And Dance
  Hymn To Freedom
  Spain
5:オリジナル・コーナー 
  Sand Witch 3-2-3
  グッドバイ(板橋文夫)
  Love Goes Marching On
6:ガーシュイン・コーナー 
  ラプソディ・イン・ブルー
Enc1: ???
Enc2: In The Velvet
Enc3: なし崩し。

ホロビッツが最晩年に持っていた(ロシアへの凱旋公演でも持ち運んで使用した)スタインウエィが日本のあちこちを回って展示され、今週は富山。それを受けてナオちゃんが弾いてみないか、というので一も二もなく飛んできた。それを弾いて何がどうなるわけでもないが、、、と思いきや。何かがどうにかなるんですね。
自分では想像しなかったあのまろやかな音が出ていたり。ただし自分の意思でそうしたい時には出てくれず、何かの拍子に“あ、今あの音だ”と後からやって来る。偶然にしか出ないところが情けないような面白さ。本番はイマイチだったが、リハーサルでショパンを弾いていた時になんだか、自分じゃないショパンの音がした。

ステージを追うごとに、ワンコーナー回るごとに、僕の音になっていく。これはどこの何のピアノでも同じ現象で(時と場合によってはあっという間だったりもする)ピアニストとしては当然というか喜ばしいことなのだが、今日ばっかりは恨めしい。

色んな人が試弾して“ホロビッツがそこに立っている”と言ったという。ぼくにはそんなものは見えないが、そういう表現をしたくなる体感はあった。ピアノに染み付いた発音があるのだろう。
10月23日(月) ソロ 金沢・もっきりや
Tears Of Nature
Summer Afternoon
Sand Witch 3-2-3
Poo Song
Love Goes Marching On 
10月24日(火) 週間金曜日 インタビュー 和田誠事務所
 
10月25日(水) 国立音楽大学
後期 第六回 チャーリー・パーカー

研究課題がいっぱいある。項目ごとにトランスクライブ(コピー)と分析・解説する。これは相当中身の濃い授業になる。

コピーは割り振って宿題にし、その出来によって後期の成績を決めることにする。分析解説は補講日にまとめる。生徒全員までは宿題が回らないので、次のマイルス以降にも引き継ぐ。

1:April In Paris >>原田
  テーマ各フレーズにいたるPre Phrasingの妙
10月27日(金) 南佳孝 原宿クエストホール
バカボン鈴木(B)
鶴谷智生(Dr)

君の笑顔
遥かなディスタンス
スコッチ&レイン
夜間飛行
プールサイド
Desert Storm
夜の翼
君を乗せて
The Gift
Nature Boy
冒険王
コルコバド
昼下がりのテーブル
Someone To Watch Over Me
Midnight Love Call
コンポジション#1
プロムナイト
スタンダード・ナンバー
Paradiso
月夜の晩には
モンロー・ウォーク
スローなブギにしてくれ
10月28日(土) M’s 鷹栖メロディホール
All The Things You Are
Falling In Love With Love
Blue Keys
My Shining Hour
Ladies In Mercedez
Let’s Face The Music And Dance
But Beautiful
On A Clear Day
I Got Rhytm
Deep Blue
I’m Old Fashioned
Spain
10月29日(日) M’s 北広島・花ホール
 
10月30日(月) デュークエイセス ジョギングコンサート 新宿シアター・サンモール
 
10月31日(火) M’s+東京交響楽団リハーサル ミューザ川崎
 

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2006年