The Conti入院g Story of Bungalow Bill 第9章

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【過去の下つゆINDEX

 2018.7/1(日)  182 | 61.6kg | 200,836

4日目【ぼくの膵臓をたべたい】

6時採血。36.8℃。やっと37℃を下回る。膵炎の疑いが濃くなり絶食継続,点滴で治す。

9時清拭。9時半Q(P150cc)。クスリ。

10時クスリ。12時半P300cc。13時P350cc。15時半P300cc。

14時半ステントを鼻翼・頬・耳朶に固定するテープを替えてもらう。これは毎日ある。7時と17時に清拭とは別の洗顔用蒸しタオルが届く。これも毎日。

18時P220cc。クスリ。

あすかあさって「外出」してウチに帰りたいと申し出るも反応が渋い。ピンチ。実現まで強力に押すぞ。何しろ替えのパンツもないのである。

20時P80cc。クスリ。24時P150cc。

空き時間は Reader T3 で『機龍警察』シリーズを再読している。T3の電池も残量が乏しいが,1週間は持つ。持ってもらいたい。持たないと娯楽がなくなる。

 2018.7/2(月)  183 

5日目【胆汁王子】

6時採血。36.9℃。7時半Qちょっぴり。クスリ。8時半にDr.来。研修医さんが新たにつくそうだ。外出の許可を貰えた。Oh, yeah。

10時クスリ。着替え。36.9℃。尿量測定終了。

10時半に外出申請書を記入する。Dr.に2時間でいいからと言ってしまったので明日13-15時にしたんだが,ちと寂しい。看護婦さんと相談して13-16時に直させてもらった。

昼飯再開。五分粥・吸物・豆腐煮・大根人参煮・オレンジ。

ZenFone電池切れ。あしたの外出に間に合ったと言えよう。よくがんばった。

13時P。15時P。研修医の他に看護学生もひとりおれにつけたいそうだ。おれは模範囚だからな。

16時半からレントゲン。鼻のステントから造影剤を入れての精密写真である。Dr.と研修医が防弾チョッキ的な防護服を着て室内におり,Dr.がおれに姿勢を指示しながらパシャパシャと撮る。画像はリアルタイムにモニタディスプレイに表示される。これは研修医のためのデモの要素が強いかな。胆管に胆石がみっつ詰まっているのが赤裸裸である。帰りにP。

夕食。五分粥・味噌汁・鰆煮付け+ブロッコリー・里芋・ヨーグルト。海苔佃煮のパックが附いていたのでおみやげに持ち帰ろう。ヨーグルトがうまくてうまくて痺れる。

19時あっさり Reader T3 の電源ダウン。ああ,これで娯楽がなくなった。腕時計を持ってきていないので,時刻を知る手段も失われた。

20時半クスリ。む,ハラが痛くなってきた。

実はきょうは呼吸器内科の診療日だったのだ。当然ながらおれの緊急入院は伝わっていて向こうから呼び出しが掛かるという話だったのであるが,とうとう音沙汰なしだった。高い注射をする日なんだけど,いいのかな。おれとしては,呼ばれなかったんだから知らんがなの態度でいよう。

もっと言うと,7月5日から呼吸器「外科」に入院して9日に右肺の一部を切除する手術を行なう手筈だったのである。1週間前にこの緊急入院が飛び込んじゃって,このまま入院を接続されたらウチで作りかけの入院セットがパーである。あすの外出が如何に重要であるかがここにある。

 2018.7/3(火)  184 

6日目【胆汁物語】

昨夜半から記録を取れないでいたほどの腹痛でのたうちまわる。鎮痛剤を連続点滴してもらったがほとんど効かず,胃の中身をぜんぶ吐いて顔をびしょびしょにし,器からだいぶこぼれてシーツも入院着もしっぽり濡れた。

オマケに左腕の点滴ルートから液が漏れている。おれが暴れたせいで針が血管壁に刺さってしまったのか。腕が段をつけて腫れて,手の甲までふくよかだ。あれ,それって鎮痛剤入ってなかったってことかな。右腕に新しいルートを設営する……が,鎮痛剤はMax2本/日みたいでくれず。何時だったか血液検査が挟まったように思う。

いやもー痛いのなんのって,同種の痛みはウチに居るときや呼吸器内科で倒れたときにも感じているけれど,これはひと晩延えんと続いたから地獄だった。

それが,明け方になってPのために起き上がり,よろよろとトイレを往復すると,どういうカラクリかすとんと腹痛が収まったように感じる。何だこれ,早くトイレに行けばよかったのかな。ベッド脇に立ってみるくらいはしたんだがな。

病名としては胆管炎なのか。あとで消化器外科のDr.に聞いたところでは,ごはんを食べて腸が蠕動する刺戟で痛くなることもあるそうで,それについては鎮痛剤が効きにくいのだそうだ。

こうなるともう呼吸器外科より先に胆嚢除去の手術をするという道も出てくる。こんな体調で9日に開胸するのははばかられるかもしれんしな。

そんなことより13時からの外出である。案の定Dr.が渋りはじめたそうなので,外出をあしたに延ばすまでは譲歩できるが最後は無断外出も辞さないとマジに(仲介の看護師さんに)言って抵抗した。きょうの検査の結果を見ましょうとお茶を濁される。でもさ,もし外出してダメージを受けるにしても,一日でも早いほうがいいじゃないか。

朝・昼飯は中止である。9時半クスリ。10時に造影剤CT。看護学生が挨拶に来る。クスリ。

血液検査の数字で炎症は軽微だったそうで,「外出」の許可が下りた。やった。ありがとう。申請どおり本日13-16時の3時間。外出中の飲食は禁止。OKOK,万難を排して守るよ。

13時前に院発。紙マスクをして鼻とステントをなるべく覆い,胆汁バッグを来院時に提げてきたショルダーバッグに収めたら案外モブキャラ然としている。点滴ルートは看護師さんがダミーの包帯を巻いて隠してくれた。

今はこの病院の送迎だけやって夜は営業してないと豪語する個人タクシーに乗り,いつもよりウチの傍まで寄って1370円。ウチに居るデッドラインを15時40分と決め,次に帰ってこられるのは三週間後の想定で,まづは洗濯機を回しはじめる。冷蔵庫のハンバーグ弁当を泣く泣く廃棄して電源OFF。食器の洗い物(AllYouNeedIsKillのようにコーヒーに黴が浮いていた)。自宅Q後トイレの電源OFF。DVD-RWデッキに溜まった録画をちら見でさくさく削除し,BANANAFISHと暦物語の予約を入れる。

PCを起動してネットを覗く。ゲームはやんない。ジャンプ+のROOKIES無償公開が終わっていてがっかりする。5日からの入院セットを完成する。

風呂というか洗髪をしたかったのだが,鼻ステントのテープや胆汁バッグ・点滴ルートを濡らしてトラブることを慮ると断念せざるを得なかった。

あっと言う間に15時40分である。4時間にしておけばよかった。まだ回っていた衣類乾燥機を止め――ほっとけば自動停止するけど,万一の加熱出火の可能性は無視できない――PCと周辺機器のコンセントスイッチを切り,ウチを出る。手持ちのクスリを忘れてたのと腕時計をしてなかったのとで玄関先から二度ひきかえして最寄り駅へ向かう。此度はタクシーが何台も客待ちしていやがって16時5分に病院着。1180円。病棟に16時10分に着いたら看護婦さんにちょっと叱られた。ごみんなさい。

着替え。持ち込んだポメラで日記を書きはじめる。20時歯磨き。21時クスリ。

比較的やすらかに眠る。おいおい。

今回もちこんだ入院セットを書きだしておこう。

呼吸器外科をターゲットの荷造りである。パンツが増えたぶんラジオなどをカット。前回までは病院往復の靴とは別に病棟履きのサンダルを持ちこんでいたのであるが,嵩張ってしようがないから直接そのサンダル(クロックスの踵ベルト附き)を履いて来た。

今回結果的に使わなかったのは予備電池とスーフル・ポケティのみ。

 2018.7/4(水)  185 

7日目【不血脈】

6時半Q空振り。7時半クスリ。給食は停止中。

8時半Dr.来。7月9日予定の呼吸器外科の手術は延期が決定。今週中にもう一度胆石除去の内視鏡をやっていったん退院し,今後は呼吸器内科の外来で仕切りなおしということになった。この波瀾万丈な体調では止むを得まい。胆石とる手間で胆嚢を取ればいんじゃねと思うが,そうなると消化器内科と外科の調整が入って一朝一夕には決まらない。おれ的にも鼻ステントを抜いてもらうほうがありがたいしなあ。

9時に看護学生きたりてシャワー室の予約を取ってくれ,体温血圧測定など。37.2℃。床頭台やテーブルの拭き掃除なんかもあるのだが,ベッドシーツをコロコロするのは何故かおれが自分でやらされた。

10時半,点滴ルートと胆汁バッグの防水を施してもらってシャワー室へ。5分余らせて出たというのに次の人が待ちかまえていて入れ替わりに入っていった。いらちやな。6日ぶりの洗髪がたいへん気持ちいい。鼻ステントの固定テープを交換してもらう。

昼食再開。五分粥・味噌汁・冷奴・マッシュドポテト・オレンジ。腹痛が怖くて手を着けられない。最初ポテトがアイスクリームに見えたのが糠喜びだったのことも手伝って,豆腐とオレンジを囓ってよしにしてしまった。

あした胆石除去の内視鏡をやることになった。

17時Qちょっぴり。吐き気来襲してナースコールし,吐き気止めを点滴に混ぜてもらう。非同期収縮が甚だしい。心房粗動までは行かないがなかなかの不整脈で,これまた塗炭の苦しみである。

夕飯きたが見るのも厭な気分。ヨーグルトをちょっと舐め,ヨーグルトさえ飲みきれず降参する。

18時半クスリ。19時半Q。便器にヨーグルトを吐く。20時半クスリ。

21時,病室のベッドに心電計が出張してきて心電図測定。当直のDr.は大したことない(AEDや薬剤による強制リセットは不要)との見立て。24時間心拍計(ホルター)が装着された。非同期収縮のたびに体内にぐわんぐわん響いて連続すると非常に堪えるのだが,機械にはそう深刻に出ないものらしい。

21時半Qとクスリ。睡眠導入剤を貰って逃避を狙う。

26時に目が覚めると今度はしゃっくりがプラスされ,これがまた連続すると水火の苦しみである。

29時Q空振り。どんな姿勢でも苦しいので誰も居ないDルームにしゃがんでみるもしゃっくり止まらず。

 2018.7/5(木)  186 

8日目【人間しゃっくり】

6時うとうとしていたのを起こされてクスリ。きょうの内視鏡の都合で,週イチ早朝に1錠のむやつとふだん朝食後に飲むレギュラをいっぺんにこの時刻に片づける。乱暴だがしかたがない。いやらしいことに,しゃっくりは続いている。

7時半Q空振り。オペのために歯磨き。パンツを履き替える。

9時半に検査室から呼ばれるまで眠っていたようで,あれっ,しゃっくりが止まっている。止まったから眠れたのかな。

学生ちゃんの押す車椅子で移動する。もう一度P。胃の洗浄剤をカップ1杯。胆管ダイヴの内視鏡も4回目だぜ。寝台に俯せになり,今回は喉の麻酔スプレーが1回で,しかし坐薬を挿れられた。

「眠くなる薬」が点滴に追加されて速やかに暗転……のはずが意識がある。あ,これは心房粗動のとき生き地獄だったパターンかしらとぞっとしたが,数秒遅れで無事落ちたようだ。

検査室と病床でそれぞれ一度づつ覚めたような気もしたが,頭がはっきりしたのは16時。歩いてPに行ける。不整脈もしゃっくりも吐き気もおとなしい。意識の途切れ具合でリセットの掛かり方も違うのかネ。もちろん鼻のステントは抜けている。鼻血がえらく出たそうなが,それはおれのせいじゃないすよね。あとで洟を噛むと,なるほどものすごい鼻血汁が取れた。

17時半37.4℃でアイスノンを貰うも入院以来の気分の良さである。鼻ステントがよほど合っていなかったのだろう。

22時半P。29時Q空振り。あー,前言に反して,何かもう,気分が悪くなっている。

 2018.7/6(金)  187 

9日目【畳の上の膵炎】

6時半採血。36.7℃。吐き気旺盛でまたのたうちまわる。5回目の発作的悶絶タイム。8時クスリ。

どうやら膵炎の模様。内視鏡の副作用に膵炎は付きものとは言い条,嵩じては適わない。9時レントゲン。10時クスリ。鎮痛剤追加。

11時からポンプ駆動の点滴を追加。レミナロンてやつかな。12時半クスリ。P。

15時に病床で出張超音波を受ける。幸い悪い所見はなく,様子見となった。おれのほうはぐんにょりでぐだぐだではふはふである。具体的にハラが痛くはないのが1mmほどマシではあるけれども,しょうじき言って死ねるもんなら死にたい。

17時に入院着(3日目)を強制着替えさせられる。17時半P。

19時半,空腹のため胃が痛い感じ。しかし食欲は全くない。Pとクスリ。ただの水がおいしい。これは吉兆ではないか。

20時半クスリ。26時P。

 2018.7/7(土)  188 

10日目【スリーピング病体】

6時半採血。Q。9時半P。クスリ。10時半クスリ。

実家に電話して現況と肺の手術の仕切り直しを伝えておく。付き添いは要らないよと念を押して納得してもらう。

投薬メモ
備考
ブイフェンド 1 1 食間
プレドニン 1
プレドニゾロン 4
タケキャブ 1
レルベア 1
アレンドロン酸 1 週イチ
エリキュース 1 1
リン酸コデイン100倍散 1 1 1 5日分飲みきり

きのうの問診で空咳が酷いと言っておいたら,意外に素早く内服薬が処方された。おや,これ,わりかし効くんじゃないか。

12時半Q。13時長P。18時半クスリとP。20時クスリ。

さて本日は上記イベントを除いて眠りたおしていた。眠りはすばらしい。一切の苦痛を感ぜずにいられる。その代わりなのかどうかは知らないが,ふだん見ない奇妙な夢を次つぎに見ていた。劇団が居候してきたりファミリー物だったりこのおれが小学男児と仲良くなったりカタナを降りて軽四を買おうとしたり,テレビドラマの絵作りになっている。悲惨で放送禁止になるようなコンテンツはなく,けっこうおもしろかったので今後ともこの路線で行きたい。ディレクタはどこに居る。

と,20時24分にこの大病院を揺るがす地震があった。長っ。20時半クスリ。まぁ余震があっても倒壊すまいと楽観して寝穢し。

23時P。久びさに気分よくてDルームでお茶を飲む。

26時P。

 2018.7/8(日)  189 | 59.9kg

11日目【時計警察】

6時半37.0℃。看護婦さんの腕時計がものすごかっこいいのに驚き,その時計かっこいいですねえと思わず直裁に声に出してしまう。G-SHOCKだそうなが,うーん,見たことないなあ。黒文字盤に黒液晶の窓が開いていてアナログ二針の金色が映えている。九時の所にもう1針ある。12・3・6…の文字はなくて皆ブロックで,これも金色。黒地に金の二色のみ。樹脂バンドの調整穴が1列。

あとで検索してみるに,GA-110系統とは思うんだが,ああもシンプルな配色の物は見あたらず,逆輸入か記念ないしコラボの特装品かもしれない。特定に至らなかった。型番訊けばいいじゃんてなもんだが,それだと値段を教えるようなもんだから若い看護師さんには言いづらいかと思ってさ。

7時半クスリ。9時清拭でパンツ穿き替え。割と体調よろしく,ポメラの日記清書と『機龍警察』シリーズの再読を再開する。10時クスリとP。12時クスリ。

電池シェイヴァで髭剃り。唇周りの剛毛はまあヨシとして,頬や喉・顎の稜線に沿っての長毛には無力だなあ。手持ちの使い捨てT字剃刀がなくなり次第電動一本化をと思っていたが――ローション買わなくて済むからサ――剃刀全廃は無理筋か。

15時にDルームでTwitterを見てたら,看護師さんが点滴の交換に追いかけてきた。お手数かけてすまぬ。

INGRESSやポケGOは入院中たちあげようともしなかった。他のオンラインゲームはZenPadでやっていて,ウチに置いてきている。持ち込んでもZenFoneをテザリングにパケットを食うばかりだから,外出の折りのToDoにも入れないでいた。

16時P。17時36.7℃。18時半クスリ。21時半P。寝付けない。

終日悪くない体調であった。あすの昼から給食再開してあさって退院というところか。これまでの胆管がらみの入院は数日のものだったから,それなりに重篤であったと言えよう。てかステントを鼻から外へ出した処置,要った? まぁ呼吸器外科の日程にうまく載せる方便だったのかもしれないが,慮外に侵襲が強くて,おれがおじゃんにしたようなものなのかな。

28時P。心電図が乱れたようで看護師さんがトイレに追ってこられておれは一大事だったらしい。結果電極パッドが外れていたものだった。

 2018.7/9(月)  190 

12日目【Q-SHOCK】

6時半36.9℃。7時採血。7時半P。クスリ。9時清拭。

10時クスリ。10時半着替え。11時半ホルター(24時間心拍計)の電池交換があった。アルカリ単三2本。

また腹痛が起きそうで怖いが,いつまでも食べないわけに行かないからそろそろと給食を再開する。玉子サンドとアイスクリームが食べたいなあ。

と,昼食は重湯・吸い物・林檎ジュース(パック商品でない,目盛つきのプラコップ)であった。米粒なし,豆腐のひと欠けもなし,ぜんぶ水じゃん! これは驚いたな。塩気皆無で重湯を飲むのは思ったより困難だった。全品飲み干す。おなかは……大丈夫かな。

12時半Pとクスリ。13時半P。

14時半に1F入院受付へ。即日入院だったから,手続きをまるでやっていないのである。ただ,元もと5日に呼吸器外科に入院するためにウチで書いた書類を先の外出で持ち込んでおり,それらの日付をちょいちょいしてスムースに進めることができた。しかし入院費の手付けにン万円前納するかクレジットカードの照会を仰がねばならないのへ財布を病室に忘れて来,出直しが発生した。外来の有象無象が減るのを見計らって17時過ぎに再び降り,完了。比較的早い決着を言祝ぎ,自販機でカップのペプシを買ってしまう。80円。甘露甘露。

前後するが15時半にP。17時半にQ空振り。36.8℃。

夕食。重湯・吸い物・ゼラチン・ホットミルク。またも固形物皆無。ゼラチンは看護婦さんともナニコレーと首を傾げあった謎ゲルである。温めてあり,無色透明で何の具もトッピングもない。ステビア的な味付けがあるものの,お菓子感覚でもなく,スプンで掬って食べるのが苦痛で大半残してしまった。

18時半クスリ。19時半歯磨き・P。20時半クスリ・P。

この入院で初めて耳栓が必要になり,開封。未使用弾2。

22時・24時・26時・29時半とP。

 2018.7/10(火)  191 

13日目【やらせは千ド鶴】

朝食。重湯・実なし味噌汁・森永おいしいカルシウムヨーグルト。重湯を茶碗一杯飲むのはやはりつらい。加えてヨーグルトが期待した甘味でなくてがっかり。

8時P・クスリ。研修医と看護学生がバラバラに来て同じことを訊くのは何だかなあだが,研修と勉強だから萬止むを得まい。おれにできるささやかな社会貢献だ。

10時P・クスリ,学生ちゃんの問診。清拭の蒸しタオルを持ってきてくれたが,別にどこも拭いてくれはしない。シーツ交換も修行のうちだそうで,Dルームに追い出される。

11時半点滴終了。P。

昼食。五分粥・吸物・煮魚・カニかま菠薐草・プラム。やっと身のあるものが出た。もっともいちばん硬いのがプラムである。プラムって皮むかないで食うんだよ……ね。

12時半入院費の定期請求を事務方が持ってくる。6/28-30の3日間でン万円である。溜息が出る。

13時半P。14時半点滴ルートを1基撤去(残1)。

学生ちゃん来て,退院後の食生活の改善について病院から何かレクチュアがあったかと問う。同様のテーマで自身がレポートを書かねばならんのでしょうな。A4紙一枚で揚げ物を控えましょうみたいなのは貰ったよと言いつつ――現物は水濡れしてきのう捨てたところだ――そんな禁止品目リストをつくったってなんにもならないヨと釘を刺す。改善すべき人間が日び運用可能な方法を提案しないと,一瞥してごもっともですと呟かれてそれっきりだ。

15時半P。16時Dr.来。食事を重くしていってあしたまで様子見,あさって退院ということだ。むう,予想より1日遅い。

17時半P。『機龍警察』シリーズ読み終わる。

夕食。五分粥・実なし味噌汁・肉なしジャガ・茄子・ヨーグルト。海苔佃煮の小袋が附いてきたので粥に味付けしてみたが,上澄みを飲む助けにはならなかった。茄子は手着かず。ヨーグルト(小鉢盛り)が練乳を溶き入れたようなどぎつい甘さで,喉が渇く。

18時半クスリ。36.8℃。歯磨き。20時半クスリ。21時半P。

23時・25時半・29時半P。

※サブタイトルは,当時広域水害の被災地に千羽鶴を送りつける愚を説いたtweetがバズったことを受けたもの。「やらせはせん!!」というドズル中将の台詞と,ごみを被災地に「遣ら」ないことの義・千羽鶴・ドズルの名が渾然一体となった名作である。

 2018.7/11(水)  192 

14日目【ステン童子】

朝食。五分粥・実なし味噌汁・賽の目ジャガ・カリフラワー・紅茶。目盛り付きのプラコップに取り分けられた200ccの液体をてっきり食後の林檎ジュースと思っていたら,ほんのり温かさとティーバッグの香る紅茶であった。それも砂糖がたっぷり入っている。な・何でや。

8時クスリ。学生ちゃんが9時半のシャワー室を予約してくれた。

9時半点滴ルート撤去(残0)。看護師さん多忙のためこの作業がシャワーの予約時間に食い込んで学生ちゃんがやきもきしていたが,10分で頭とちんこを洗って出てリカヴァしてあげた。

10時半クスリ。11時半着替え。学生ちゃんが電極パッドを貼って――これくらいならやってもいいらしい――ホルターを再装着する。そしてP。

昼食。ごはん・吸物・ハンバーグ・胡瓜サラダ・オレンジ。全粥を挟むかと思ったらいきなりの普通飯だ。余さず食べて今のところ異常なし。

12時半クスリ。14時P。飛んで17時半P。

14時半ホルターを外して腹のレントゲンを撮りに行く。道すがら学生ちゃんにテレビ何観てるんですかと訊かれ,去年はけものフレンズがあって本当によかったとしみじみ語った。主題歌は知っているものの本篇を観ていないそうだ。第1話でやめてはいけませんよと念を押しておいた。ちなみに学生ちゃんの2017ベストは『宝石の国』とのことである。

ホルターを装着し,Dルームで学生ちゃんによる「胆石予防のための食生活」案内を拝聴する。指導看護師さん同席である。一点物のA5版6頁の冊子を貰った。思ったより良い出来。小一時間3人で割と等分に喋りたおす。食事の間隔が開きすぎるとヨクナイというのは新しい知見であった。

夕食。ごはん・味噌汁・鰤照焼き・薩摩芋ブロッコリー・もやし小松菜。飯粒が茶碗に貼りついてかなわないので,最後は猫まんま。

18時半クスリ。19時半歯磨き・P。20時半クスリ・P。ここ数日はDルームでReaderを読むことが多かった。つまり体を起こしていられるような体調だったのだ。

ポメラの電池はeneloop2本がラクショーに持ったなあ。

27時P。

 2018.7/12(木)  193 

15日目【ステント・バイ・ミー】

6時週イチのクスリ。6時半Q空振り。

朝食。ごはん・味噌汁・肉なし筑前煮・湯がきキャベツ・紅茶200cc。筑前煮は肉がないばかりかジャガイモに見えたのがお麩であった。なかなか箸が進まず,また猫まんまにしてしまう。ティーバッグの紅茶をわざわざ淹れてくれるのは,牛乳はいけないというメッセージなのだろうか。

と,ちびちび居残り罰給食のように飲んでいたら看護師さんのほうから教えてくれ,砂糖を入れてカロリー合わせにしているのではないかとのお見立てだ。なるほどー。え?

8時クスリ。9時半P。ホルターが外され,お会計が届く。退出準備開始。

10時最後にクスリとP。退出確認を貰い,学生ちゃんの見送りで退院する。10時10分に支払い&退館。

雨でなく晴れでなくそう暑くもないから駅までは持つと見て帰路は電車にする。かつてなくハラが凹んでいるのに,嵩張るのを案じてベルトをしてこなかったので,カーゴパンツが二十年遅れのヒップハングになってしまった。

コンビニによってアイスを奮発し,11時自宅着。何かもう熱が出てる気がする。

 2018.7/13(金)  194 

 2018.7/14(土)  195 

 2018.7/15(日)  196 | 58.3kg

 2018.7/16(月)  197 

 2018.7/17(火)  198 

 2018.7/18(水)  199 

 2018.7/19(木)  200 

 2018.7/20(金)  201 

 2018.7/21(土)  202 

 2018.7/22(日)  203 | 58.2kg

 2018.7/23(月)  204 

1日目【ヴィンテイジ・エヴァンゲリオン】

退院して1週間というもの,おなかが痛くはならなかったが常時おもく,何より熱が簡単に出やがってな。

熱を下げるのに水をがぶ飲みしたいが,ウチの組み込みフィルタ式の浄水ポットは容量が小さくてめんどくさい。日中は暑くて外へ出られないし,夜は体温が上がっててしんどいしで,水分補給はけっこう綱渡りなところがあった。夜明け前4時頃ごみ捨てに出て――これが絶対に休めない家事なんだよね――近所の自販機でポカリ擬きのPETボトル飲料を3本買ってくるのが精一杯だったり。発熱の燃料たる固形物(コンビニ弁当の類)の調達は輪を掛けて億劫で困難だったな。

んでもう胆嚢をとりましょうということになったのが先週の金曜日。早くも次の胆石が落ちてきてるっぽい。即日入院するよう言われたんだけど,いったんウチに帰らないと……と辞して翌診療日のきょうが入院日となった。先の入院セットが大して解かれもせずに残っている。ウチで爆弾かかえて熱中症と区別の付かない大熱を発して煮えているよりは,早めに避暑に寄せてもらったほうがいいだろう。

6時半にはコンビニパックの肉じゃがを温めて食べて朝のクスリを飲み,冷蔵庫の電源を切って9時半にウチを出る。体調は悪くないと見て電車を採るが,駅までの道のりがもう暑い。駅から病院へ向かう途中でくらっとする。病院のエアロックふうの出入り口に置かれたベンチで時間までたっぷり休み,入院受付に来てみれば,何だこれはというような激込みであった。パンデミックか。

小一時間おくれた恰好で11時前に病棟に上がる。前回と同じ病室でベッドが違う。六人部屋満室だ。何か臭うがこの辺は合縁奇縁でしかたがない。

11時に病衣に着替えて身長体重測定。176.5cm・59.2kg。背が止まってからの最低体重に近く,若さ補正のなくなった今あんまり軽いのはよろしくない。体温は36.9℃。

11時50分左腕に点滴ルートが設営され,採血のあと点滴開始。いきなり絶食モードである。いまは健全な空腹感があって何か食べたいので,ハラ痛や熱で食えなかったときのことを思えばこの気持ちがもったいない。

13時半P。ID腕輪装着。15時半P。ハラ減ったなあと近年なかった健康的な感想を抱く。

実はきょうは呼吸器内科の通院日でもあった。前回は前回の入院中にあって向こうからシカトウされている。それが16時になって呼び出され,外来エリアに点滴キャリアをガラガラ引いて参上する。日記のほうで隔週で高い高い注射をすると言っている奴を打つのだろうと思ったら,あれは外来の患者にしかつかえないという妙な縛りがあるそうで,問診のみ。てか現況説明でおれのほうが多分に情報提供したぞ。

前に貰った咳止めの粉薬がよく効いたとお世辞半分に言ったら,あれを処方したのは呼吸器内科じゃないそうで,むしろおれには飲ませたくないハイリスクハイリターンな劇薬だったらしい。Oh..., 1包あまらせて隠し持ってるぜ。

17時Dr.来。出張超音波エコー診断で,半分研修医の実習である。何十分か長めの検査。胆管炎は恢復しつつあり,胆嚢摘出手術の準備をする由。おれはあしたでもいいっすよ。胆汁の排泄をとか言ってまたステントを鼻から出されるのが一番いやだ。

18時P。クスリ。ハラ減ったなあ。20時P。クスリ。ね・眠いぜ。

20時半暫定版看護計画を貰う。え,スーフルやんないといけないの。今回関係ないと思ってウチに置いて来ちゃったなあ。あ,病棟にあるんすか。あれ音が恥ずかしいんだよなあ。憂鬱だ。

21時半23時半29時P。喉が渇いてDルームのほうじ茶を飲む。

 2018.7/24(火)  205 

2日目【日射(にち)行き倒れ(ゆき)のバラード】

やっぱウチでエアコン掛けてるよりは快適だよなー。

7時半クスリ。きのうまでの飲みきりで出ていた抗生剤が2日ぶん追加された。

8時半Dr.来。あすステントを入れ替えて鼻から出す方式にするとのこと。えー,それやるんすか。しかし外科の要望だそうで,手術の一環なら否も応もないか。昼から給食が出て,明朝また絶食の模様。

9時清拭。10時クスリ。11時36.8℃。点滴交換。

昼食。五分粥・吸い物・魚煮付け・しらすと小松菜・ソルダム。先先週も出てプラムと書いた果実は画像検索してみるにソルダム(日本すもも)という品種らしい。皮ごとかじって正解のようだ。プラムとすももは同じものを指していると見てよい。

12時半P。ぼんやりと頭痛。脱水症状は考えにくいが……。14時半P。

あすの「内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)」の説明を受ける。ステント留置はウイルス感染しちゃったお腐れ胆汁を排出するために必須の処置なのね。

16時半P。

17時にDr.来。手術説明・同意書と入院診療計画書に署名する。サインして恰好よくシパーンとボールペンのチップをしまったら,あっ何ということだ,ペン尻のプッシュ機構のパーツが反動でスッポンと抜けてしまった。輪ゴムで縛りつけて辛うじて書ける状態にはできたが,瞬間接着剤の欲しいところだ。これだけのために売店で割高なのを買うのはなあ……と思ったが,瞬着より新しいボールペンのほうが安いと気づく。

夕食。五分粥・吸物・肉なし肉ジャガ・茄子・ヨーグルト。のり佃煮の小袋は粥には無力だからおみやげにする。ヨーグルトは加糖してあって甘味に飢えた舌にも甘い。

18時半クスリ。19時歯磨き。20時半クスリ。

入院用に買った「フルット」「露伴は叫ばない」をあっさり消化。青空文庫の怪談をいつつむっつ入れてきたが,短編ばかりだったのでもうおしまいに近い。漱石の猫とディーヴァーのスナイパーを併読しよう。

21時半P。29時半Q空振り。

 2018.7/25(水)  206 

3日目【胆の汁ぜんぶ抜く】

6時クスリ。10時のボリコゾナールも一所に飲む。抗生剤飲みきり終了。以降絶飲絶食&服薬停止である。

8時P。10時半検査前に意図的にQを狙うもなかなかハードであった(これは入院直前の朝食であろう)。入院着のズボンを着替えパンツも穿きかえるが,上着は点滴チューブをいったん外さないと腕が通らない。内視鏡の呼び出し待ちになるかな。

11時に検査室から呼び出し。折悪しく点滴が切れたところで,ルートのチューブへおれの血が逆流している。ルートに近い管パーツから交換を繰り返して大層手間取り,入院着の着替えとおれのだめ押しのPを挟んで遅刻気味の移動である。とは言えそれでも検査室待合いでプールされる時間のほうが長かろう。眼鏡を外して11時半,歩いて検査室へ向かう。

胃の洗浄剤を飲み,寝台に俯せになって顔を右に向け,マウスピースをくわえて喉麻酔のスプレーを受け,坐薬を挿入され(いちど失敗されてゲットマシンジャガー号のように痛かった),点滴に睡眠導入剤が追加される。一連のルーチン。

今回はなるべく起きておいてやろうと試みたのだが,やはり口に何か挿入される前にすやあ……となっていた。鼻腔をガコガコ刺戟されて目が覚めた気がしたのが現実か夢かわからない。

検査室のうちに意識が戻り,病室から迎えのベッドへは自力で転がり移る。部屋に戻って時計を見たら12時半だった(と思う)。哀れ鼻からステントが延びて胆汁バッグに繋がっているが,あれっ,ぜんぜん溜まってないじゃないの。など横目にしつつ午後は2時間ごとに起きては寝ぇの繰り返しであった。

14時半,トイレはまだ車椅子に乗せていってもらう段階。胃痛を感じたがQ空振り。麻酔の残滓かちょっと気分悪い。

16時半18時半目覚める。胆汁の出に前回の鼻ステントの勢いがなくてあまりおもしろくない。

19時半に起きあがってみる。トイレへは自力で行っていいが飲食不可。

23時半Q空振り。ハラがしくしくする。

 2018.7/26(木)  207 

4日目【空飛ぶ胆汁】

6時採血。飲水中止なので週イチのクスリも中止。

7時P。ハラの痛み漸増。アバラの最下部と鳩尾がジクジクする感じ。膵炎の影響かな。前回より胆汁の出が少ないのは,胆管の詰まり具合がそう悪くないということだろう。

11時服薬の抗生剤再開。P。清拭。腹の痛み本格化。

12時痛み止めの点滴を貰うが効かず,またしてものたうちまわる。13時半に強力な鎮痛剤を追加して収まってくる。16時P。17時からぶり返す。ベッドで移動してレントゲンとCT撮りと大袈裟なことになったが特に異状はなかったようだ。でもこの痛みは何。

痛くて記録が取れなかったので,日記上あまり深刻に見えない。筆力のなさを呪う。

18時クスリ。起きあがってふうふう唸っていたら――この姿勢がラクなときもある――消化器外科のDr.が入らして胆嚢摘出の手術は火曜日と言う。遠いなー。

20時半Q。心臓がつらい。鎮痛剤を追加してやっと眠れた。おねしょをしたと思ったが夢で良かった。

ぜんぜん関係ないけど,同室の患者が無断で外出して酒を買ってきて病室で飲んだのがバレ,即日強制退院になっていた。ほほう。重篤度との兼ね合いが気になるが,容赦なしといった感じだった。

 2018.7/27(金)  208 

5日目【Part6 ストーンオーガン】

7時半きのう飲みそこねた週イチのクスリを飲む。8時半Q空振り。クスリ。11時クスリ。

ずっとだるくてだるくて記録できず。

12時半15時P。

17時に外科Dr.の術式説明があるというので別室まで結構な距離を歩かされてへとへと。山ほど書類に署名して更に消耗した。

大雑把に手術の内容を言うと,腹によっつ孔を開けて腹腔鏡と電気メスを入れて,CCDによる拡大映像を見ながら胆嚢を切除して引きずり出すというものである。スタンダードな「腹腔鏡下胆嚢摘出術」である。胆嚢はまま周囲の臓器に癒着していて剥がすのに難儀するそうなが,埒が開かないとよっつの孔のどれかを結んで従前の腹部切開式の手術に切り替えるのそうだ。これもよくあるパターンと言う。どう転んでもおれは全身麻酔下にあってすべてお任せである。大出血あらば輸血や血漿分画製剤の使用もあり得る。

19時クスリ。20時P。クスリ。

 2018.7/28(土)  209 

6日目【査官スーフルー】

7時半スーフルが「支給」される。6月に呼吸器外科の外来で4500円だかで買わされた奴だぜ。今回関係ないと思ってウチに置いて来ちゃったよ。もっとも入院費にしれっと加算されているかもしれないが。それよりこれやると調子悪くなるんだよな……。

8時麻酔科の問診票を書く。P。クスリ。10時クスリ。

11時おれが売店まで行く気力がなくて,腹帯を看護助手さんに買ってきてもらった。600円。腹腔鏡を諦めて開腹手術に移行された場合の術後に使うもので――たぶん腹に巻いて大きな縫合痕を固定する――未使用未開封で済めば返品できるのだそうである。

昼前から案の定ハラが痛くなって来,盛大に空えずきをし,またまたのたうちまわる。毎度毎度キツい。堪らず13時に鎮痛剤を入れてもらう。ああ,鎮痛剤来たぁと感じる瞬間があって,何とまぁ幸福感まで湧いてくるのであった。

15時半P。18時クスリ。37.6℃でアイスノンをあてがわれる。37℃を越えたら頭は冷やしたほうがいい。

21時クスリ。22時P。

まるで寝付けない。台風はどこ吹く風である。

 2018.7/29(日)  210 | 56.8kg

7日目【紫胆嚢古木】

7時半P。8時クスリ(エリキュース中止)。クスリを飲む水をこぼしてしまって病床デスクに投げ出しといた書類がびっしょびしょ。不整脈が暴れそうで気持ち悪い。

9時にポンプ駆動の点滴が始まる。けさから中止になったエリキュースの代わりにヘパリンという血液抗凝固剤を入れるのだ。ポンプと言ってもでっかい注射器のピストンを24時間かけて押し進めるものである。ふつうの重力に頼った点滴では落ちない粘性があるのだろう。

10時清拭。クスリ。36.9℃。

15時久しぶりの喀痰でしかも血痰。スーフルのせいで気管支がどこか開いたのだろう。効果ある……のか。

18時P。スーフルを洗う(呼気で筐体内部が濡れるのだ)。

20時クスリ。それにしても鼻のステントが忌ま忌ましい。

21時半P。寝付けない。

みおふぉんのデータ使用量を見たら,ありゃ,7月分をつかいきって8月分に食い込んでいる。今月は中旬の十日間を除いてずっと入院してたもんなー。ウチでは光フレッツのWiFiに繋ぐから,ケータイ自身のパケットは最廉価の3GB/月で足りてたからな。当面tweetをひとつ打つ以外はネットに行かないことにしよう。

 2018.7/30(月)  211 

8日目【菌だらけのフローラ】

5時半採血。7時半血痰出る。8時P。クスリ。

点滴ポンプの残量警告がピーピー鳴って驚く。9時に点滴ルートを交換。同じ左腕。

9時半ヘパリン液の注射を交換。ポンプを使うのは粘度うんぬんじゃなくて,時間当たりの注入量に精確さを求められるからと言うことである。ふつうの点滴では落ちムラがあってうまくないそうだ。

10時麻酔科の受診で別階へ移動。めっちゃ喋るDr.。あすの手術の書類に署名する。全身麻酔と穴4箇所の神経ブロックの組み合わせ。硬膜外麻酔なし。ちょっと好奇心で訊いてみたら,笑気ガスはもうはやらないらしい。別の担当医のお話も伺う。

腹腔鏡術はそのカメラの1mmの視野を検査室のモニタディスプレイいっぱいに拡大投影したのを見ながら電気メスほかを操作するものだから,体がちょっとでも揺れたら映像が盛大にブレて簡単に目標を見失なうのだそうである。そりゃあそうですなあ。故に全身麻酔を掛けて微動だにさせない由。

11時クスリ。13時持ち込みのシェイヴァで髭剃り。13時半P。Dルームの焙じ茶を貰う。

14時半に超音波の検査で同階の別室へ歩いて行かされる。これまた遠くてくたびれる。血液検査で肝臓の数字がよくなかったそうで,炎症の具合を見るためらしい。結果的にはそう悪くない。胆嚢炎の進行があったかも。15時半消炎剤の点滴追加。

17時なんと臍を洗ってもらう。臍である。オリーヴオイル!を含ませた綿球を臍に載せて十分間なじませ,綿棒で臍の胡麻を掻きとるのだ。術前の処置で臍をいじられたのは初めてだなあ,今回剃毛などはないのに。おれの臍は今まで掃除した中で一番きれいだったと看護婦さんが誉めてくれた。

18時,点滴をいったん外し,ルートをラップで巻いて防水してもらう。シャワー室へ行くと「入ってます」の札が掛かっており,中の浴室まで聞こえるように強くノックしたら,いま出るところでしたというおばさんが恐縮して顔を出した。しまった,強く打ちすぎたな。いえいえと愛想よくしておいた。

シャワーの途中でへたばって固まるかもしれないと思っておれのは2枠1時間とってもらってたんだが,がんばってギリ30分で出る。もっともおれが本日最後なので意味のない努力だけれども,のんびり湯船に浸かりたくもなし洗髪とボディシャンプーが終わればやることはない。1週間ぶりの洗髪で,毛髪が何万本ながれたことであろうか。

入院着を着替え,パンツを穿きかえる。点滴から自由なうちにDルームで焙じ茶を飲む。P。

19時点滴再接続。鼻ステントの固定テープを貼りなおしてもらう。あすの術中術後あしに塞栓が起きないように――エコノミーシート症候群のこと――両の脚にマッサージパッドを巻くのだが,その一環で足の動脈の位置をマーキングするのだそうである。油性マジックでほぼ3cmの縦線を引かれたのは,足の甲の真んまん中であった。へえ,そんな所に。あとでさわってみたら,血管は透けて見えないのに,なるほど脈打っている。

あすのために下剤を飲んでおくかと看護婦さんに訊かれ,もう何日も出てないから要らないでしょうとお断りをする。食べてなくても腸内細菌の死骸が出るものなんですがと言われ,たしかQの1/3は細菌の重量なんだっけとトリビアをあやふやに思い出す。あれっ,するとおれの腸内フローラには,菌はもう居ないのです。菌は絶滅したのです。ということなのか。下剤は飲んどいたほうがいいですよという話なら飲みますと応えると,まあいいかということになった。

20時歯磨き。スーフル洗浄。P。クスリ。きのう切っておいたが,もういちど爪を切る。ギギギ。

20時半ポメラのeneloopに電圧低下の警告が出たので,早そうに髭剃りのアルカリ電池(単四+単三スペーサ)と入れ替える。スペアに単四アルカリが8本ある。今回充電池の充電器を持ってきたつもりであったが,まぁその何だ,忘れてきた。

21時,きのうおとといと寝付かれずにいたので睡眠導入剤を貰って飲む。耳栓を装着する。このまま眠って退院したいものである。

 2018.7/31(火)  212 

9日目【胆嚢直入】

願いも虚しく23時半にガバアと目が覚めてしまった。夢も見ない。暫し眠気の再来を待ち,諦めて起きなおるとちょうど看護師さんがヘパリンのポンプを止めに巡回して来,眠剤効いてないじゃないのとからかわれた。いやトイレに行こうとしたところですと言ったが,これ回答になってないね。

24時P。寝付かれねえ。

6時半採血。クスリ(胃の制酸剤は中止)。ここで飲む水を最後に飲水禁止となる。36.7℃。89mmHgはそうとう低い。点滴追加。

む,たまにしゃっくりが出る。あれも続くとつらいが,全身麻酔なら横隔膜も眠りこむであろう。

そうか,太陽電池の腕時計は入院が長びくと局所的なサンライト不足でダウンする可能性があるなあ。Dルームなどの日の射す一角に放置できればいいが,目を離すわけに行かないし,そうそう歩行可の病状とも限らんし。入院セットでは内蔵電池式のほうが信頼性が高そうだ。

本格的にしゃっくり。やだなあ。

朝食の時間帯を見計らってQ……は空振り。パンツを穿きかえる。いつもならT字帯を買ってくるのだが,汚れてかまわないなら自前のでいいと言われている。術後のT字帯を見るとけっこう血ぃや薬品の染みがついてるもんな。

7時半P。Dr.来。しゃっくりはステントによる胃炎かもしれないとのこと。

8時けさの採血の血が足りなかったからもういちど採らせてくれと眼鏡っ娘が言ってきた。否も応もない。試験管の隠圧で血を吸い込むんじゃないかと思ってるんだが,2本目も途中で噴出が止まってしまった。Oh.... 2本目捨て。3本目はいったん注射器に余裕を以て吸い出して,そこから採ることに。

術着に着替える。

8時半看護師さん来て,術後のリハビリで履く圧力ソックスのサイズを知るために足首と脹ら脛の外周を巻き尺で計る。いまおれは成人後最軽量に近いんでめっちゃ細くなっているのだが,Sサイズでいいですねと言われたのは軽くショック。まあ足首なんか手の親指と人差し指の輪っかが楽に届くもんな。

さてここから24時間は記録を取れなかったので曖昧模糊とした記憶に頼って書く。

8時45分眼鏡を外して麻酔科の検査室(手術室)へ看護師さんと共に歩いて移動(帰りはベッド)。麻酔科Dr.sのお出迎えで検査室に入り,せっかく着た術着を脱がされていろいろ接続される。右手の甲に新しい点滴ルート・指血流酸素量測定器・ホルター(24時間心拍計)・両脛のマッサージパッド・酸素マスク(6L/分)。点滴に全身麻酔薬が足されて次つぎと質問されるのへ応えているうちに暗転する。

12時半ごろ麻酔から覚めて次つぎと質問されるのへぼんやり応える。おれへの接続に尿道カテーテルが増えている。人工呼吸器のパイプを抜かれて咳をすると,痰出ますかと言いながら吸引機で気管支から吸い上げに掛かる。息を吸えないから体が跳ねるくらい苦しかった。それを3回やられたと思う。

予定どおり3時間の腹腔鏡操作で胆嚢の摘出に成功したそうである。ああ,よかった。この言葉が適切なのかよくわからんが,おつかれさまでした。

やっぱり輸血とか血漿製剤とか感染が怖いもんね。我が胆嚢は炎症で壁が薄くなっており,肝臓に癒着しかけてて剥がすのがひと苦労だったそうである。

ぼくの胆石

何と,おみやげに胆石をいくつか頂戴した。永久保存したいところだが,やがては腐れてなくなるコレステロールの塊でそう長持ちしないものらしい。残念。ちょうど胆管に落ちやすくはまりやすい手頃な大きさなんだそうで――もっと大きく成長することもある――ちょっとムカつきますな,それ。

おっと腹帯も未使用品として返品できる見込みができた。

実のところおれはおれの難治体質を知っているから,どうせ最後の最後に開腹手術になってどったんばったん大騒ぎだろうと悲観していたのよ。回避されてほんとうに嬉しい。感謝の念に堪えない。

元の病室へベッドごと移動して帰ったのは覚えている。あとはひたすら眠っていたことと思う。18時頃(術後6時間経過して)ベッド安静状態の解除。鼻酸素供給が外される。ただしヘッドから降りるどころか起きあがるのも禁止。うがいができるくらいか。数分ごとにマッサージャーのバルーンパッドが左右の脹ら脛を交互に軽ぅく締めたり緩めたりを繰りかえして気持ちいい。

18時半看護師さんにZenFoneを取ってもらい,ReaderStoreを立ち上げる。おいおい。液晶の明かりと画面のデザインが眼を刺してリアルに目眩がする。1タップごとに目を伏せて休みやすみ頁を進め,『私モテ』と『プリニウス』の最新刊を買った。こんなときに何やってんの。だって本日有効期限切れのクーポンがあるのを思いだしたんだもんよ。

19時看護婦さんに歯を磨いてもらう。すわ偽物語的粘膜責めになるのかと思いきや――いや思わん思わん――洗剤を含んだ脱脂綿で歯列の埃をさっと拭う感じで終わりなのだった。これでヤニだらけ歯石だらけのクチをさらけだしたら汗顔の至りだがおれは去年の夏秋冬を駆け抜けての歯医者通いで全周メンテしているから大丈……いややっぱり申し訳ないな。

腹は痛いが術前の穿痛と違って疼痛だからまだ我慢できる。キンキン声の責め立てとバリトン声の恫喝の違いと言おうか。

24時を過ぎると寝付けない。耳栓をする。

【きょうの愉しみ】

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