男の自宅介護

人力車型の車椅子で行動範囲が広がった:介護用品をつくる<9>


車いすの妻との外出先が砂利道だったりすると前輪が大粒の砂利石の中に埋まってしまい、いくら押しても前に進めないことがありました。そんな時、偶然テレビで目にした補助器具。これをヒントに、車いすを人力車仕様にして前から引いて運べる補助器具を自作しました。



リンク:車椅子を人力車に-補助舵棒を自作する:介護用品をつくる<8>

補助舵棒と車椅子との接続部分の仕組み

自作構想後すぐに作った補助舵棒は、すべて塩ビ管だったために強度が不足し、妻が乗った車いすの前輪を持ち上げることはできませんでした。
しかし、舵棒部分をアルミ素材に変えたことで、強度不足は解消されました。

この舵棒と車いすを接続する部分には苦心しました。
舵棒を持ち上げて前輪を浮かす時に一番力がかかるところなので、頑丈に作らないといけません。

接続部分にはTS異径チーズ継手(T型)を使いました。
「介護用品をつくる<8>」でもご紹介した接続部分の材料ですが、ここでまたおさらいします。
<材料>
[車いすとの接続部分]
TS異径チーズ継手(T型)2個
立バンド(配管金具)4個
ビスM4x15mm 2本

<補助舵棒接続部分の作成のポイント>
TS異径チーズ継手の内径は、車いすのフットレストに巻きつける側が20mm、舵棒を差し込む側が26mmです。
継手をフットレストに巻きつけるために、写真のように20mm径の方を縦半分に切り、立バンド(配管金具)を上下2か所に配置して、ボルトで締め付けました。



<舵棒の着脱を簡単に>
車いす接続部と舵棒は簡単に着脱できるようにピン止めにしました。
舵棒(アルミ管)と車いす側の接続部(塩ビ製継手)に位置が合うように穴をあけます。
抜け止めのピンは、M4ビスで代用しました。
舵棒を接続部に差し込み、穴にピンを差し込むと、塩ビ管の弾力でパチンと止まります。

車内常備で砂利道も難なく、雪道を楽しむこともできる

この補助舵棒は妻の車いす専用ですので、市販の介護用品のようにサイズ調整や分解して持ち込む必要がありません。
むしろすぐに装着できるように、組み立てた状態で車に載せておくほうが便利です。
そのため車内に専用の収納場所を作りました。
フックを2か所設置し、S型フックで補助舵棒をかけておけるようにしました。

完成して真っ先に確認しに行ったのが、お気に入りのお出かけスポット、尾山神社の神苑でした。
深い砂利の中を進めることはもちろん、石畳の振動も少なくなりました。

ですが、使ってみると欠点もわかってきました。
車いすのブレーキが使えない
ブレーキが必要な坂道を下る時は、車いすの後ろに回ることにしました。
全長が長いため、込み入った場所は曲がれない
室内など狭い場所では取り外し、広い野外でのみ使用することにしました。

こうして使い方のコツや対処法も会得できると、これまでは敬遠していた深い砂利の公園や、海の砂浜へも出かけられるようになりました。

冬になると、雪道でも補助舵棒が威力を発揮しました。
10cmぐらいの積雪なら問題ありません。
雪が降った翌日には、快晴となる日があります。
そんな時は完全防寒して出かけます。
晴天の新雪の中、車いすでワダチを作りながら進むのは楽しいです。

避けていた砂利道や雪道も制約がなくなり、むしろ「楽しむ」要素に変わったことで、行動範囲が格段に広がりました。


補助舵棒の変化型・車いすの対面式ハンドルも作成

車いすを人力車にする補助舵棒の作成から10ヶ月後。
妻の顔色を見ながら散歩するために、車いすの対面式ハンドルを作成しました。

妻は長時間の座位で失神したこともあるので、体調不良の時は心配です。
ベビーカーに対面式があるのに車いすでは見たことがない、という疑問を抱いたことから着想しました。

<対面式ハンドルの作成のポイント>
・失敗した補助舵棒の塩ビ管の長さを短くして対面式ハンドルに流用しました。ハンドル全長は60cmです。
 前輪を持ち上げる必要がなく、つくりも補助舵棒より短いので塩ビ管でも強度は十分です。横棒の補強も不要です。
・車いすへの接続は、補助舵棒を作ったときに車いすに取り付けた接続部を流用します。
 補助舵棒と同じように、ピンでパチンと簡単に着脱できます。
・追加購入した材料は、TSエルボ継手2個とTS45度エルボ継手2個で306円です。

<メリット>
・妻の顔色を見ながら散歩出来ます。
・ハンドルの中央あたりを持てば、片手でも進行方向をコントロールできます。後ろから押す場合はハンドルが両側についているため、片手ではバランスを取りづらくまっすぐ進めません。
・会話しながら進めるので、ショッピングなど、相談しながらの歩行に向いています。

<デメリット>
・車いすのブレーキが使えません。人力車の補助舵棒と同様、急な下り坂では後ろに回ります。
・妻と同じ景色が見えないので、歩行中に景色を話題にした会話はしづらいです。
・妻は進行方向とは逆向きに座っているので、行き先が見えず不安なようです。

これを作った当初は「不明熱騒動」の病み上がりだったこともあり、妻の顔色が気がかりでした。
しかし最近では妻の体調が良いことも多いので、使う機会も少なくなりました。
それでもショッピングの時や体調不良時の備えに、車には常備しています。



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