男の自宅介護

車椅子を人力車に-補助舵棒を自作する:介護用品をつくる<8>


外出専用にした車載用車いすに散歩を快適にするアイデアを装備して、天候のいい季節は毎日のように出かけています。しかし場所によっては深い砂利道、砂浜など前輪が埋まってしまって進めない場合があり、敬遠している場所がいくつかありました。



名所を訪問しようとするも、車椅子の前輪が砂利に埋まってしまう

前田利家公をお祀りする金沢の名所・尾山神社は、妻と私のお気に入りの場所です。
梅や桜、紅葉など見どころが多くてよく行くのですが、神苑の砂利が深く、車いすでは前輪が埋まって進めない場所があります。
砂利のない道を選んで遠回りするか、車いすを後ろ向きにし、私も後ろ歩きの体勢になって引いて行くしかありませんでした。

金沢には無料の駐車場があり、車いすで散歩できる公園がたくさんあります。
しかしながら、駐車場や通路に大きめの砂利が敷かれている公園が何カ所かあり、そこは“車いすでは行けない公園”として敬遠していました。

車椅子を人力車にする補助器具との出会い

そんな時、人力車のように車いすを引くことができる補助器具をテレビで目にしました。
番組の内容はバリアフリー旅行をテーマにしたものでした。
兼六園を車いすで回れるように調査している様子でしたが、それよりもこの補助具が気になりました。

それは、簡易装着型けん引式車いす補助装置(29,800円)というものでした。
普通の車いすのフレームに「人力車の舵棒」のようなものを取り付けて、前輪を浮かせて人力車のようにするものです。

メリットは、前輪を浮かせることで悪路での前輪の食い込みを防止でき、振動が軽減されることです。
後ろから押すことに加えて、前から複数の人で引くこともできるので、機動力が上がります。

坂道や瓦礫のある場所、積雪のある場所、砂浜、石畳や玉砂利など不整地での用途を想定したもので、緊急避難時や日常の外出でも使えます。

この補助器具が金沢福祉用具情報プラザで展示されていることがわかったので、さっそく見てきました。

実物を手にとってみるとしっかりとした作りで、車いすのフレームの径や幅に合わせて調整できるようになっています。
また全長を縮めたり、分解してしまえたりできるようになっています。

常に使うものではありませんが、行動範囲が広がりそうですし、緊急避難の備えにもなりそうです。
「これは作るしかないだろう」と、自作魂に火がつきました。

補助舵棒作りに挑戦、1回目は失敗

市販品は各種の車いすに対応するため複雑な機構になっていますが、妻の車いす専用に舵棒を作るなら、構造を単純にしても問題はなさそうです。
2本の舵棒と、持ち手となるハンドル部分さえつなぎ合わせれば、意外と簡単に作れるのではないかと思いました。

さっそくホームセンターへ材料の調達に向かいました。
選んだのは給水用塩ビ管とその継ぎ手です。

そして完成したものは…見事に失敗でした。
すべてを塩ビ管で作ったために強度が足らず、持ち上げた時にしなって前輪が持ち上がりませんでした。


2回目は舵棒の素材を変えて強度をアップ

そこで、強度アップのために舵棒の部分を直径25mmのアルミパイプに変更しました。
すると問題なく前輪が持ち上がりました。
強度アップ版の補助舵棒に使った材料は、以下の通りです。
すべてホームセンターで購入できます。

<材料>
[舵棒とハンドル、補強の部分]
アルミ丸パイプ(外径25mm、長さ2m)1本
硬質塩化ビニールVP管(肉厚管)呼び径20(外径26mm、内径20mm、1m)1本
TSエルボ継手(L型)2個
TSチーズ継手(T型)2個
立バンド(配管金具)2個
ビスM4x15mm 6本
[車いすとの接続部分]
TS異径チーズ継手(T型)2個
立バンド(配管金具)4個
ビスM4x15mm 2本

<舵棒とハンドル部分の作成のポイント>
アルミパイプは長さを半分に切り、1mの舵棒を2本作ります。
硬質塩化ビニールVP管は33cm長さに切ったものを2本作り、1本をハンドル部分に使います。
アルミパイプの径は塩ビ管より1mm小さいので、継手の内径と合わせるために、接続部にテープを巻いて調整しました。

<補助舵棒を補強する>
車いすに接続した状態では強度に問題ありませんが、車いすから外した状態では補助舵棒が長いので、ハンドル部分の横棒だけではエルボ継手の強度に不安がありました。
そこで補助舵棒を引く時に邪魔にならない位置に、横棒をもう1本追加して補強しました。
ハンドル部分と同じ硬質塩化ビニールVP管(33cm長さ)を使いました。

作成にかかった材料費は約2,700円でした。
でも作り直しや失敗がなければ、2,300円くらいでできたと思います。

車いすとの接続部分の仕組みや使用感については、次の「介護用品をつくる<9>」でご紹介します。(続く)

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