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     〔人間の巣〕 === 高・安定指数の  〔文明の器

         極楽浄土のインフラ建設      

      
        
          < 宗教における第4の道


               
                   

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード                         担当 :    里中  響子 

      INDEX                      index.1102.1.jpg (3137 バイト)   

プロローグ     ・・・・・《感染症圧力 VS 戦略的対応》からの続き・・・・・ 2007. 9.20
No.1          <・・・・・小休止・・・・・> 2007. 9.20
No.2 〔1〕〔極楽浄土〕の建設こそ目指すべき社会 2007. 9.20
No.3       <真の意味での・・・〔極楽浄土〕とは> 2007. 9.20
No.4       “意識”・・・この世の本質とは> 2007. 9.20
No.5       〔世界市民〕のための万能型・防護力 2007. 9.20
No.6 〔2〕〔欲望の地獄〕から〔浄土の極楽〕  2007. 9.20
No.7       “世界標準”は、経済至上主義から、地球温暖化対策へ> 2007. 9.20
No.8       ポスト・資本主義

       〔人間の巣〕を単位として・・・多様な価値観の展開

2007. 9.20
No.9 〔3〕スローフード/スローライフの潮流・・・ 2007. 9.20
No.10        反・グローバル化/分散化は・・・全紛争の終局化へ 2007. 9.20
No.11        共産党・指導で・・・〔人間の巣〕 2007. 9.20
No.12 〔4〕<“文明の第3ステージ/意識・情報革命”・・・の視点> 2007. 9.20
No.13        <ここまでのまとめ・・・> 2007. 9.20
No.14 〔5〕宗教における第4の道  〔極楽浄土の、インフラ建設への道〕 2007. 9.20
No.15        <極楽浄土を・・・永続させるシステムの構築 2007. 9.20
No.16          <アポトーシスとマクロファージの機能 2007. 9.20
No.17        〔人間の巣〕における・・・リフレッシュ・システム・・・> 2007. 9.20

 

分割       ・・・・・ ページを分割し、リニューアル・アップロード・・・・・ 2007.10. 7
推敲完了 〔1〕(2007.10.26) 〔2〕(2007.11.3)

   〔3〕/〔4〕(2007.11.18)  〔5〕(2007.12. 2)/修正(2007.12. 5)

2007.12. 5

                       

  プロローグ          

「ええ...里中響子です...

  このページは、《感染症圧力 VS 戦略的対応》から続いております。高杉・塾長との

対談という事で、つい頑張り過ぎて、長くなってしまいました。

  そこで、テーマの異なる、《極楽浄土のインフラ建設・・・宗教における第4の道》

は、切り離して別に新しいページを立ち上げました。混乱した事をお詫びいたします。え

え、そういう次第ですので...ひとまずここで...小休止を取りたいと思います...」

  響子が、インターネット正面カメラに向かって、深く頭を下げた。

 

「今、用意しますわ...」響子が、高杉に言って立ち上がった。「お茶がいいかしら?」

「そうだな、お茶がいい」

「はい」

  高杉が、窓の方を眺める...

  響子は、部屋の奥のインフォメーション・スクリーンの方へ歩いた。シャム猫のチャッピ

ーが、彼女の後について来た。響子は髪を振り、窓の方を眺めながら、会話ボタンを押

した。窓の外は薄日が射していた。

「...オウ!」スクリーンの中に、ポン助が現われた。「何か用かよ?」

「小休止を取ります。お茶をお願いします。ポンちゃんたちもどうぞ、」

「おう...さっきよう、庭の柿を取ってきたぞ。持っていくか?」

「うーん...そうね、お願いします」

「あ、響子さん...」夏美が、スクリーンに現れた。「今、用意しますわ。お茶がいいので

すね?」

「そうです。お茶をお願いします。《危機管理センター》の方は、異常はないかしら?」

「特に、変わったことはありませんわ」

「そうですか...」響子は、小さくうなづいた。

  夏美は、《脱・原発へ舵を切る!》の仕事の後、《軽井沢基地》に残っていた。残務

整理を兼ね、軽井沢で静養していた。それから、引き続き“柏崎刈羽原発”復旧作業

と、原発反対運動の動向を注視していた。今回の事故が、“脱・原発”へのターニング・

ポイントになる可能性が高かったからである...

   index.1102.1.jpg (3137 バイト)   <・・・・・小休止・・・・・>    

     wpe57.jpg (5177 バイト)wpe57.jpg (5177 バイト) wpe56.jpg (9977 バイト)   

「ご苦労様でーす!」

  夏美が、ワゴンにお茶の準備をし、入って来た。後ろで、ポン助が柿と果物

ナイフの載った皿を持っていた。少し遅れて、ブラッキーがついて来た...

「すっかり秋になったよな...」ポン助が、柿の載った皿を、作業テーブルの

端に置いた。「うまそうな柿だぞ、」

「ポン助...」高杉が、頭の後ろに手を当て、脚を組み上げた。「《ポン助のビ

ア・ガーデン》は、まだやってるのか?」

「まだ、やっているよな...」ポン助が、こまめにワゴンからアケビをテーブル

に移した。「今年は、猛暑が続いたからよう...石焼きいもの季節には早いよ

な...地ビールのいいのが残ってるぞ、」

「ふむ...それじゃ、その地ビールを飲みに行くか...ブラッキー、タバコを1

本くれないか。ブラッキーの顔を見たら、1本吸いたくなった」

「おう!いくらでも吸ってくれい!」ブラッキーが、タバコの箱にジッポのオイル・

ライターを重ね、テーブルに置いた。

「うーむ...少し疲れた...」

「すみません、高杉さん...」響子が、茶を入れながら言った。「せっかく静養

に来られたのに...」

「なに、かまわんさ...人生に、苦労はつきものだ...」高杉が、タバコに火

をつける。

「フッフッフッ...」ブラッキーが、タバコを吹かした。「そうは見えねえぜ...」

「まあ...」高杉は、タバコを吸い、ゆっくり煙を吐き出した。「好きなことをやっ

ているわけだが...」

  夏美が作業テーブルの端で、2つ目の柿の皮をむいていた。

“原発”の方は、どんな様子かね?」高杉が、夏美に聞いた。「“脱・原発”

方へ、向かいそうなのかな?」

「そうした方向も...」夏美は、柿を4つに割り、皿の上に置いた。「出てくるの

ではないでしょうか...“再開の方向”で作業を進めていると、ニュースでは協

調していますけど...大きな方向性はどうなのかしら...そう強調すること自

体が、どこか不自然なニュアンスを感じますわ...」

「うーむ...なるほど...

  しかし、“高速増殖炉・もんじゅ”でもそうだが...完全停止と言いながら、

何度も復活して来るからねえ...」

「でも...」響子が、高杉の前にそっと茶椀を置いた。「今度は、だいぶ事情

が違うのではないかしら...活断層問題は、そう簡単にはクリアできないと思

いますわ。それに、“原発”を縮小しても、その分、〔人間の巣〕を展開して行

けば済むことですし...」

「あえて...“原発”を維持する必要が無くなったわけか...利害構造を別に

すれば...」

「はい...

  今度こそ、以前とはだいぶ様相が違って来ると思います。“原発”か、それ

とも〔人間の巣〕かという、単純な選択構造になりました...当然、将来展望

を考えれば、〔人間の巣〕という結論になりますわ...」

“脱・原発”“舵”を切る、絶好のタイミングというわけですか...そういう方

向になると...産業界構造にも、大きな変化が起こりますねえ...世界的

エネルギー戦略の構図も、大きく変わって来るでしょうねえ...」

「はい...」響子がスカートに両手を当て、椅子に掛けた。

「結局、こうした流れも...ヨーロッパの方から来るのかも知れないねえ。

とは、真剣さがまるで違う...」

「はい...

  現在の日本の政治に、はたしてそうした決断ができるのでしょうか...結

局、その方向しかないとは思いますけど...」

「そうだねえ...」

日本の政治はよう...」ポン助が言った。「パンクしたタイヤだよな...いく

ら空気を入れてもよう、空気がスカスカ抜けてるよな...」

「ポンちゃん...」響子が、ニッと笑った。「いいことを言うわね、」

行政もよう、穴のあいたバケツだよな。いくら税金を入れても、無駄だよな、」

「そうね、」響子が、感心してうなづいた。「よく勉強しているわね、ポンちゃん」

「フッフッフッ、」ブラッキーが、タバコを吹かしながら響子を見上げた。「おれは

よう...今の日本の政治は、座のシラケた漫才のように見えるぜ、」

「それも...」高杉が、タバコの煙を吐いた。「当たってるな...」

「ともかくよう...」ブラッキーが、高杉言った。「政治は、高速で“空転”してい

るぜ!スクリューが、大シケの中で、空を切ってる音がするぜ!そのうちに、エ

ンジンが焼けつくぜえ...」

「うむ。相変わらず国民から乖離し、選挙のことばっかりを考えているようだな」

「ブラッキーは、」響子が、頭をかしげた。「難しい事を言うわね...そんな大

シケを、経験したことがあるの?」

「ああ...」ブラッキーが、タバコを吹かし、うなづいた。「オレは、元・米海兵

隊軍曹だぜ...」

「うーん...そうだったわね、」

日本が...」夏美が、柿の皮を片ずけながら言った。「世界最大“柏崎刈

羽・原子力発電所”を再開するなら...〔人間の巣〕を展開する方が、はるか

経済的ですわ、」

「確かに...」高杉が、タバコを吹かした。

“原発”と、〔人間の巣〕を天秤にかければ、」響子が言った。「結論は明白で

すわ...ただ、産業界官僚組織が激変します...でも、そんなことで、危

険な“原発”を残すことはできません」

「うむ...

  “ポスト・京都議定書”の問題があるし、“洞爺湖サミット”も近づいているし、

決断をしなければならないだろうねえ...」

「どうぞ!」夏美が、柿に楊枝を刺した。「おいしそうな柿ですよ!」

                                    

  〔1〕  〔極楽浄土〕 の建設こそ、目指すべき社会  

           

「では、始めましょうか...」響子が言った。「新しいページになりましたので、夏美さん

たちにも、引き続き参加していただきます。

  ええと...前にも言いましたが、塾長は“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時

は、宗教が非常に重要になって来ると言われました。そしてそれは、具体的にはどの

ようなものかは、まだ分らないとも言われました...

  今回の、〔極楽浄土のインフラ建設=宗教における第4の道〕は、その“未来型・宗

教の形”の、<最初の提言>になるものですね?」

「そういう事になりますね...」高杉が言った。「私は、宗教について、特に専門家と言う

わけではありません。しいて言えば、私自身が、“たった一人で禅の道を歩んで来た”

言った程度のものです。

  これは、とても信仰と呼べるものではありません。“人生哲学”の域を出ていないのか

も知れません。響子さんも含めてですが、私たちのこうした状況は、日本において、この

時代に生まれてきたことと、深く関係しています。

  江戸時代に始まった“檀家(だんか)制度”により、日本に古来から存在した仏教が、非

常に形骸化していたという事です...それに加え、私たちは戦後・民主主義と、高度経

済成長時代の、西洋合理主義の中で育って来たわけです。時代背景として、必然的に

無宗教になっていたわけですねえ...」

「はい...」響子が、コクリとうなづいた。

「したがって...宗教的には、ほとんど無色・透明といった立場です...

  また、その立場だからこそ、人類文明における宗教全般と言うものを、客観的に見渡

せるのかも知れません。信仰という事から言えば、とても褒(ほ)められた立場ではありま

せんが、全宗教というものを、客観的に望観することができます。その上で、未来型・宗

というものを、考察して行きたいと思います...」

「ええと、高杉さん...」響子が、モニターに目を流した。「一言、基本的なことをお聞き

したいのですが、」

「はい、」

「私たちは、宗教というもの無しには...人生というものは難しいものなのでしょうか?」

「私は、そう思います...

  まあ、そのことも併せて、考えて行きましょう。日本が、壮大なモラルハザード社会

陥ったのも...日本社会無宗教性と、深く関係しているのかも知れません。私たちは

気付いていませんが...日本人精神性が、非常に薄弱になっているのかも知れませ

ん...」

「そうですか...」

科学というものは、唯物論的学問です...

  宗教とは相反する方法論的学問ですが、偉大な科学者というものは、みな敬虔な宗

教心を持っているとも言われます...相対性理論を提唱したアインシュタインも、神の存

在を信じていたというのは、有名な話でしょう。

  より深く、物事や人生を洞察すると、そういう事になるのでしょうか...まあ、そう言い

ながらも、私などは、いっこうに信仰心がわかなくて困っています。“禅の道”を究めようと

は思っているのですがね...」

「はい...

  “禅”自力本願的な、“智慧の道”という事もありますね。そうしたことが、信仰心

結びつかないのでしょうか。高杉さんは、しばしば言っておられますが...」

「うーむ...そうなのかも知れません...

  それに、これまで、真剣に拝むというような事態に、遭遇してこなかったからかも知れ

ません。その点、響子さんはどうなのでしょうか?」

「私も、似たり寄ったりですわ...

  寺院仏教美術などは好きですが、子供の頃から、信仰心をもつような環境にはあり

ませんでした...高杉さんのおっしゃる通り、身の回りにあったのは、戦後・民主主義

と、高度経済成長時代合理主義でした。それに共産主義や、社会主義思想ですね、」

「まあ...

  こんな私たちが、これから〔極楽浄土〕というものを考察して行くわけです。まさに、宗

教的には、無色・透明といった立場でしょう。しかし、大多数の日本人もまた、同じような

立場なのではないでしょうか。

  代々の墓や、葬式が仏式だから、何となく仏教徒だというような程度の...」

「はい...」響子がうなづいた。

「今回は、“未来型・宗教の形”に関する<最初の考察/提言>になります...そういう

わけですが、ひとつよろしくお願いします...」

「はい...」響子が、頭を下げた。

の意味での・・・〔極楽浄土〕とは  index.1102.1.jpg (3137 バイト)  

                     

「ええ...」響子が言った。「今回のテーマは、〔人間の巣〕に関連した、〔極楽浄土の

インフラ建設=宗教における第4の道〕ということですが...これは宗教というもの

の、新しい視点になるわけですね。面白そうですわ」

「そうですね...」夏美が響子の方を見て、頬に笑窪を作った。「未来型・宗教の、<最

初の提言>になるわけですね、」

「うーん...そうかも知れません...」響子が、曖昧に笑みをこぼした。「ええ...

  このページは、《感染症圧力 VS 戦略的対応》から続いていますので...話を少々

し戻しましょう。そこから分割したページですので、そこから入りたいと思いますが、よろ

しくお願いします」

「はい、」夏美がうなづいた。

 

「高杉さん...」響子が、ノートパソコンから顔を上げた。「将来的な、感染症対策として

は...

  “タミフル”予測・ワクチン開発・備蓄に、莫大な税金を投入するよりも...戦略的

に、“グローバル化の抑制”、そして、〔人間の巣〕の展開へとシフトして行くべきだとい

うことですね?」

「そうです...

  新薬の開発予測・ワクチンに、文明の存亡をゆだねるというのは、長期戦略的には

きわめて不自然でしょう。人類文明が、生態系/生命潮流ベクトル空間に存立してい

る以上は...ホメオスタシス(恒常性)治癒的・淘汰圧力に逆らうことは、まるで意味が

ありません...

  〔極楽浄土〕の建設こそ、目指すべき社会でしょう...他の動植物の上に君臨し、

度に家畜化したり...遺伝子操作をしたり...全てを人類の利益にのみ処するという

のは...大きな間違いでしょう...

  よく言われることですが、“神の領域”には踏み込まぬが賢明ということでしょう...」

「はい...」響子が、ゆっくりとうなづいた。「それが、“賢明な道”ということですね...

傲慢にならずに...」

「そうです...

   〔極楽浄土〕とは...他の生物種共々...共に生きる道を目指すという事です。全

てを、自らの利益にのみ利用するというのは、あまりにも傲慢です...フランシス・ベー

コン(1561〜1626/帰納法を確立)が言ったように、

 

  “科学の目的は、自然を拷問にかけ、その秘密をはかせる

 

  というようなやり方は、見直していくべきだと思います...重要なのは、“共に生きる”

ということです。まあ、このあたりの事は、大いに議論をして行く必要があるでしょう」

「はい、」響子が唇を結び、うなづいた。「そうですね...」

「そうしたことに、覚醒することが...

  つまり、生命潮流の中での、“霊的進化”だと思います。それが、DNA・最高モード

の、“ホモサピエンスに課せられた課題”なのかも知れません。“次なる進化”の方向

のかも知れません...」

「はい...」夏美が、神妙にうなづいた。「“霊的進化”が、必要だという事ですね?そう

いう方向なのかも知れないということですね?」

「そうです...

  そういう意味では、人類文明はまだまだ、“野生のまま/生存競争のまま”の姿なの

です。“経済原理・・・欲望の原理”で、地球表層を席捲している状態では、おそらくこれ

以上の進化は望めないでしょう。

  私たちは、豊かさ便利さは、もう十分過ぎるほど達成しているのです...“これでも

か!”というビジネス・モデルは、終局が近づいています...技術革新は、今後も続い

て行くと思いますが、生活者の立場では、五体満足で十分なのです。人間としては、そ

れを活用することこそ、楽しいはずです。したがって、この方向は、もう十分なのです」

「はい、」

「そうした現状が...」夏美が言った。「“霊的進化”の方向へ、転換して行くという事で

すね?」

進化というのは、難しい判断です。特に、現在進行形の我々自身のこととなると、難し

いものがあります...ただ、“スローフード/スローライフの潮流”は、その方向にある

のかも知れません。いずれにしろ、これは大きな文明の流れになって行くでしょう...」

「そうですね、」響子が言った。

ホモサピエンスは、生態系で頂点に立ってはいますが...

  “命”とは、もともと、“36億年の彼”リンクした、きわめて平等な存在なのでしょう。

不可分の、36億年の時空間に広がる、1つの全体的な存在なのでしょう...“1つの命

という全体”が、36億年の時空間に拡大しているのです。つまり、そういう“命の側面”

あるということです...

  それゆえに...私たちは“高潔な良き種族”として、地球生命圏の歴史の中に、“ホ

モサピエンスの名”を刻印したいものです。いずれ、この時代の文明種族として、何者か

評価される時代もやって来るのです...」

「はい...」響子が、うなづいた。「その前に...私たちの時代が、後世において、再評

価される時代がやって来ますわ...モサピエンスという“種”を超えた視点と、責任が求

められていますわ」

「そうですね...」

〔極楽浄土〕とは...」響子が言った。「人類だけのものではないわけですね...

の生物種にとっても、〔浄土の世界〕であるということですね...真の意味での〔極楽

浄土〕とは、他の全・生物種にとっても...そして、この世の全ての存在が...<霊的

浄化された世界>だということですね、」

「その通りです。それが真の意味での、〔極楽浄土〕ということでしょう」

「うーん...」夏美が、ゆっくりと肩をかしげた。「〔極楽浄土〕とは、そういうものなんで

すか?」

“覚醒/悟り”とは、」高杉が、夏美に言った。「そういうものです...

  『正法眼蔵』“山水経”にあるように...“真理に覚醒した世界”では、全ての存在

が、<浄化>されて行くのです...“青山運歩(せいざんうんぽ)“東山水上行(とうざんすいじょ

うこう)の世界です...このことの解説は、長くなるのでここでは省きますが...」

「ええと、それは...」響子が、夏美に言った。「《仏道/正法眼蔵/山水経で解説し

ています。そちらの方を読んで下さい...あ、分らないことがあったら、私の方に聞いて

下さって結構ですわ...私も塾長について、禅の修行をしていますから、」

「はい!」夏美が、嬉しそうにうなづいた。「高杉・塾長の1番弟子ですね、」

「ほほほ...」響子が、口に指を当てた。「ただ、古いでけですわ、」

支折さんも修行していますし、私も頑張ろうと思っています」

  響子がうなづいた。

「一緒に頑張りましょう」

「はい!」

       “意識”・・・この世の本質とは >  

                        

「高杉さん...」響子が、小首をかしげた。「私たちは、ずっと...〔極楽浄土〕を求めて

来たわけですが...そもそも、〔極楽浄土〕というものも...私たちの、意識/認識の

に映し出される、の世理想世界の風景ということになりますね...

  こうした、“ストーリイの原型/本流”も...人間的なバイアス(偏向)がかかっているの

でしょうか?」

「うーむ...難しい話ですねえ...

  私もまだ、十分に考えの及ばない領域です...そもそも、人間的なバイアスと言いま

すが...私たちが見ているこの世の風景も、真のリアリティーそのものではないと考え

るべきでしょう...

  “リアリティーの人間的な切り口/・・・リアリティーの人間的な側面”とでも、呼ぶべき

ものです。また、“カオス(混沌)人間的な加工・編集/・・・人間的ストーリイの原型/本

流”が、形成されている可能性があります」

「と、いうと...?」響子が、口に指を当てた。

“リアリティー/巨大なカオス”の、“人間的ストーリイの編集と解釈”です...そこに、

“永遠の現在/・・・今の深淵/・・・無時間的なストーリイ構造”が...“主体的な認識

の鏡”に浮かぶようです。

  それが、“人間的意識”というものなのでしょう...したがって、そもそも“意識”ととい

うものには、人間的なバイアス(偏向)がかかっているのです...この世と不可分の、最も

基本的な“意識”においてさえです...」

「はい...」

“言語”を話す動物である人間は...

  カオス(混沌)から物を切り出し、名前を付けました...それが、名詞ですね。人間は、

その作業を進め、どんどん名詞の数を増やして来ました。そして、それらの名詞動詞

によって動かされ、形容詞福祉は、その様子を修飾します。そうやって、この世言語

的に構造化し、人間的再解釈を展開して来たのです...それが人類文明です。

  人類文明は、象徴的・座標...“言語的・亜空間/...言語的バーチャル空間”に構

築されているわけですが...ストーリイは、その時空間座標上に開示され、解釈されま

す。数学物理学は、その現象面の関係性定量化定式化です...その関係性

理解することは、それなりの威力を持ちます...つまり、それが科学技術力です...」

「はい...」

「いいですか...

  ところが、人間が存在するのは、“言語的・亜空間”ではないのです...人間は、リア

リティーの中に存在しているのです...そこに、超常現象などの、様々なズレが出てくる

わけです...

  そのズレに困り果て...アインシュタインは、“神はサイコロを振りたまわず”と言った

わけですねえ。しかし、【不確定性原理】が確立し...どうも神様は、サイコロがお好き

なご様子です...これは量子力学での、“非局所性/局所原因の否定”になるのです」

「うーん...」響子は、口に手を当てた。

「ええ...」高杉が、モニターの方に目をやった。「ようやく、“神”が出て来ました...

  高名な物理学者であるアインシュタインが...“神”をどのように定義していたのか、

その一端が理解できると思います...デカルトも、リアリティー“物の領域”“心の領

域”に分割し、それを統合するものは“神”としていたのです...」

「はい...」響子が言った。「そもそも、デカルトが...リアリティー“物の領域”“心

の領域”に分離した所に、問題があるのですね...“神”抜きにして、この統合がなさ

れない限り、解明が進まないわけですね...」

「うーむ...その上でもなお...

  まさに、“神”は存在するのかも知れないということです...この世というのは、説明

できないことがあまりにも多いのです。しかし、まあ、“物の領域”“心の領域”の統合

は、進むでしょう。少なくとも現代文明は、そのあたりの解明に着手したわけです。“文明

の第3ステージ/意識・情報革命”の時代に、すでに突入しているということです」

「はい...

  ご存知のように、ユング(フロイトの弟子/精神分析学の体系を拡大)心理学には...共時性(シン

クロニシティ/“非因果的連関の原理”)という概念があります。これは、“心に思い浮かぶ事象”と、

“現実の出来事”が一致することですが...一般的な“因果律とは異なる原理”になる

わけですね...つまり、“偶然の一致”として現れる衝撃ですが...

  私たちの【人間原理空間・ストーリイ】には、こうした“偶然の一致”が多発していま

すわ...“圧縮されたストーリイの原型/過不足のない関係性”から、“偶然の一致”

こぼれ出すように析出/結晶化しています...こうした事象の解明から、“物の領域”

“心の領域”の統合が進んで行くのでしょうか? 」

「うーむ...」高杉が、苦笑した。「難しい問題を...次々と、あっさりと聞いてきますね

え...」

「すみません、」響子が、笑いをこぼした。「塾長との対談ということで、つい、色々な事を

お聞きしたくて...」

「まあ、ここは、〔極楽浄土〕の話に集中しましょう。その切り口から、そのことも考察して

みましょう」

「はい。お願いします...」

「ともかく、話を戻しますが...

  私たちには、“比較するべきスケール”というものが存在しないのです。あらゆる手段

も、最後には主体/認識の鏡に映し出されて来るわけです...相互主体的な意味での

他者として、響子さんや夏美さんが目の前にいるわけですが...それは私という、主体

の認識の鏡に映し出された他者なのです...

  私という主体と一体の他者です...純粋な意味での他者などは、この世には存在し

ないということです...それゆえに、リアリティー切れ目のない、巨大な全体世界でも

あるわけです。唯一絶対の、“唯心”の世界でもあるわけです」

「ボス(岡田)の小説に、唯心という作品がありますね...」  

「そうですね...詳しくは、そちらの方を読んで下さい...」

「はい」

デカルトが、喝破した根本原理...

 

     “我思う・・・ ゆえに、我あり・・・”

 

  ...ということで、“主体的・意識”は確かに存在するのは分ります。しかし、その先に

ある“物の領域”というのは、“壮大な幻想/夢”なのかも知れないのです。“物の領域”

“心の領域”が統合されていないために、実在していると証明できないのでしょう...

  デカルトは、“神”によって2つの領域を統合し...それならば、“我である肉体”

するのだろうとしています。しかし私たちは、その“神”を抜きにして統合しようとしてい

るのです。

  直感的には、“物の領域”は存在していると思いますが...さて、その証明ができな

いわけですねえ...したがって、“奇妙なストーリイ世界/...夢”が流ているだけかも

知れないのです...

  豊臣秀吉は、辞世の句で...『露と落ち露と消えにし我が身かな なにわの事も夢

のまた夢 』と詠(うた)っていますし...道元禅師にも、“人はみな夢の中を歩む...”

いう言葉があります。この世というのは、“夢”の方が、むしろ優勢なのかも知れません」

「...現実よりも、“夢”の方が...ですね...」響子がつぶやいた。

「そうです...

  “物の領域”“心の領域”の統合がなされない限り...主体/認識の鏡に映し出さ

れた、“壮大な幻想/夢”という立場に甘んじなければなりません...しかし、その点で

いうと、“命/生命体”というのは、まさにこれら全てを統合する“超媒体”になっているの

でしょう...

  そう思えば...“神”という媒体を必要としているのではなく、“命”こそ“物の領域”

“心の領域”媒体だということです...私たちに必要なのは、《神と霊魂の統合》なの

かも知れません。これは、実は、最近私が立ち上げたページのタイトルなのです。まだ、

白紙の状態ですがね...ともかく、これから、考察を開始して行きます...」

「はい、承知していますわ...」響子が、口に拳を当てた。「難しいですね...

  “リアリティーの人間的な切り口/・・・リアリティーの人間的な側面”...“カオスの言

語による加工と再編集”...そこに、“人間的ストーリイの原型/本流”が存在している

のでしょうか...

  歴史上、変動指数の高い人間というのは...その“人間的ストーリイの原型/本流”

に、より近い所に、位置しているという事でしょうか...?」

「そうした可能性はあります...

  ともかく私たちは、そうした...“過不足のないリアリティー/1点を押せば全体が動く

ストーリイ”の中で...ひたすら、〔極楽浄土〕を探し求めて来たのかも知れません...

“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代が本格化して行けば、多くのことが分か

って来るでしょう。それは、現在の私たちには、想像を絶した世界観になるでしょう...

  ニュートン力学から...相対性理論...そして、量子力学へのパラダイムシフトより

も、はるかに大きなパラダイムシフトがやって来るでしょう。それが、“物の領域”“心の

領域”の統合なのです...」

「はい...」響子が、うなづいた。「でも、何故...

  “意識”は、発達心理学的段階を経て成長し、寿命が来てそれが終わるのでしょうか。

何故、成長し続けないのかしら?」

「いや、成長しているのでしょう...

  終わるというのは、木の葉が枯れ落ちるようなものです...木の葉毎年枯れ落ち、

春には新たな芽吹きがあります。“意識”も、そのように新陳代謝し、その本質のフレッ

シュさが保たれるわけでしょう。

  そのように、“超媒体”である“命”引き継がれ...明確に繋(つな)がっているというこ

とです...“意識”も、そこで途切れるわけではありません...“命”“意識”も、そして

リアリティーも、途切れることのない“唯一・全体世界”なのです...巨大な、“主体的・

絶対世界”なのです...ここが、非常にややこしい...」

「うーん...そうですね...」

 

「響子さんも、ご存知のように...私が提唱している、“36億年の彼”という概念では、

“命の様相”はだいぶ違ったものになります...ここで、もう一度説明しておきましょう」

「はい...高杉さんから、直接お聞きしたいですわ...」

“36億年の彼”という、生命の新しい概念は...

  “地球上の全生命体のリンク.../超・時空間座標への広がり.../霊的・上位シ

ステムへの広がり...”とでも言うべき...地球生命圏“命の全体性”という側面を表

現します。

  したがって...この“命の全体性”は、細菌ウイルスも含めて、“平等にリンク”して

いて、まさに全体性を形成しています。“命”というものにも、眼前するリアリティーと同じ

ように、“時間的・空間的な切れ目”がないのです。引き継がれ、途切れがないのです。

  それゆえに、“巨大な1つの全体”なのでしょう...まあ、そういう“命の別の側面”も、

人類文明の視界に入ってきたということです...

  その“地球生命圏の命の全体性”に、1つの人格を与えたのが、“36億年の彼”とい

う概念です...内部的に、食物連鎖があり、淘汰圧力はかかっていますが、それは

命潮流のベクトルによるものです...

 私のこうした考えは、≪ニュー・パラダイム仮説≫という位置付けになっています。私

の、【新しい生命観】とでも言うものですね...これは、<仮説>という事を、はっきりと

断っておかなければなりません...」

「はい...」響子が、うなづいた。「あの...この、“36億年の彼”という概念は、もうだ

いぶ固まって来たのではないでしょうか...《企画》/担当としては、そろそろ体系的

に整理したいと考えているのですが、」

「うーむ...」高杉が、脚を組み、口に拳を押し当てた。「私もそう思っているのですが、

なかなか時間がありません...

  シンクタンク=赤い彗星に、ようやく、綾部沙織さんが参加して来ました。彼

女の力を借りて、何とか考えてみましょう...彼女は、ユング心理学トランスパーソナ

ル心理学の方面が、専門ということですから、」

「はい...いよいよ、《神と霊魂の融合》が始まりましたね。その中で、やっていただけ

るのでしょうか?」

「うーむ...沙織さんに、相談してみましょう」

「はい。よろしくお願いしますわ」

 

      〔世界市民〕 のための、万能型・防護力

     index.1102.1.jpg (3137 バイト)              

「さて...」高杉は、夏美の方を見た。「だいぶ、脱線してしまいましたが...どんなテ

ーマだったのかな?」

「あ...ええと...真の意味での〔極楽浄土〕です」

「ああ...」高杉がうなづいた。「そうでした...

  人類文明は、気付いていていませんでしたが...〔極楽浄土〕は、もうそこまで来て

いるということですね...文明欲望の原理に振り回され、その十分に可能〔理想郷

極楽浄土を、掴み損ねていたということです...

  それだけでなく...文明の傲慢/増大した欲望...それを助長する経済至上主義

が、地球生態系沈没させる所まで悪化させていたわけです...すでに、非常に多くの

生物種を、“絶滅”させて来ています...」

「はい!」夏美が、強くうなづいた。「すでに...“絶滅種”“絶滅危惧種”は、相当な広

がりを見せていますわ...生態系が、非常に単調な風景に変わって来ています...」

「そうですねえ...

  現代文明と表裏一体の...まさに裏返しの所に...〔極楽浄土〕があったわけです

ねえ...しかしまだ、金融のグローバル化だの、未来型のロボット・カーだのとやってい

ます。そんな所に、〔極楽浄土〕はないのです...まさに、その裏返しの所にあるので

す。

  現在の、“文明の折り返し”の先...、〔理想郷/極楽浄土〕が見えて来たわけで

す。このことに、私たちはもっと早く気づくべきでした...もっとも、そのためには、〔人間

の巣〕が必要だったわけですが...」

「はい...」夏美が言った。「この“地球温暖化”の中で...“文明の折り返し”をする、

具体的なアイテム(小道具)が、〔人間の巣〕ということですね、」

「いや...〔人間の巣〕は...おそらく、それ以上のものでしょう」

「あ、はい...」夏美が、髪を揺らした。

「というのは...

  〔人間の巣という...“多様性・複雑化を許容する社会的器/・・・アイデンティティ

ーの強い分散型の小単位”なくしては...“文明の折り返し”ばかりでなく、〔極楽浄

土〕の実現も難しいからです...

  〔人間の巣パラダイム〕があってこそ、はじめて〔極楽浄土〕可能性が見えて来る

のです...それは、価値観そのものが、変わって来るということです。それが、大事な

のです」

「うーん...そうですね...」

資本主義のグローバル化や、経済至上主義の延長線上には、〔極楽浄土〕は見えて

は来ません。そこにあるのは、競争原理/欲望の原理であり、純粋な意味での<魂の

浄化>はないからです。

  競争原理の中でも、ある程度の達成感の喜びはありますが...そこは、必然的に

を生みだす戦場です。スポーツゲームなら問題はないのですが、野生の生存競争

と同質の社会では、<魂の浄化>はありません。文明社会に到達した、本来の意味が

ありません...

  こうした生存競争を、文明種族はとっくに乗り越えているはずですなのです。長期的ビ

ジョンに立って、人類“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代へ、ステージ・ア

ップして行く必要があるのです。

  文明の象徴でもある医療の発達は、身体的・弱者を救済して来ました。しかし、そこで

経済的・弱者差別したり、切り捨てたりしたのでは、文明社会形成の意味が失われて

しまいます。

  私たちは、そうした野生の淘汰圧力を超越するために、文明社会を形成してきたので

す。その中で人間どうしの生存競争をするために、文明社会を形成しているのではあり

ません...しかし、現在は、資本主義が暴走し、巨大な富の寡占が起こり、生存競争

激化しています」

「そうですね...」夏美が言った。

「その文明社会の中で...

  再び熾烈な生存競争を激化させるような政治風土経済競争システムは、本末転倒

というものです。そうした民主主義的な意味からも...“スローフード/スローライフの潮

流”は、文明社会を正しい方向へ導くものです...

  〔人間の巣〕は、そうした〔世界市民〕のための、“万能型・防護力”としても機能を発

揮します...経済原理/富の寡占の下で、その奴隷の立場から解放されるためには、

“万能型・防護力”が必要なのです...」

「はい!」夏美が、コクリとうなづいた。

「さて、」高杉が言った。「〔極楽浄土〕の話に戻りましょうか、」

「はい」

 

「過去において...

  世界3大宗教(仏教、キリスト教、イスラム教)拡大した版図を見ても分かるように...その全

てが、大成功しているとは言い難いものがあります...いずれも、布教は世界的拡大を

見せましたが、ある程度で止まっていますね...」

「はい、」

釈尊が誕生したのが最も古く、紀元前500年頃です。それから、キリストが誕生したの

が、紀元ゼロ年。現在の西暦元年になっていますね。ムハンマド(マホメット)が生まれたの

は、紀元後571年頃と言われています...

  これらの布教の拡大は...中央の求心力を巨大なものにしましたが...やがて、

様性・複雑化のベクトルに晒され続けて来ました...絶対的・聖典ですらも、多様な解

が生まれ、分派離反が起こり、複雑化して行きました...

  しかも、そこは〔極楽浄土/パラダイス〕ではなく...異端弾圧の場となり、それへ

抵抗の場となり、新たな闘争の場を作り出してもきました。それは、ある意味では活力

をも生み出しましたが、その多様性・複雑化は、本来目指した<浄土>ではありません

でした...

  それゆえに...〔極楽浄土〕というものは...“人間のサイズ/慣習法の行き届く範

囲”で実現すべきものだろうということです。もっと小さな、アイデンティティーの強い、

間の巣〕のような場で、実現すべきだったのです。そもそも、生態系における“群れの集

団”はそうなっているのです...

  また、1つの生物体でいえば、細胞の単位<浄土>を実現し、多様性・複雑化を受

け入れ、その上で全体〔極楽浄土〕として機能するようなシステムですね...それこ

そが、現実の生態系空間で見られる、安定システムなのです...

  つまり...私たちは、〔人間の巣〕の単位で、あらゆる多様性・複雑化を吸収し、人間

の要求を実現し、〔理想郷〕がかなうものと考えています...」

「うーん...」夏美が言った。「そういう、〔極楽浄土〕の風景ですね...」

「そうです...

  思うに...生態系/生命潮流の中では、本来、巨大組織・巨大構造というものが、成

立しないといという事なのでしょう...多様性・複雑化という、生命潮流のベクトルに晒

(さら)されるからです。また同時に、“新陳代謝システム”が機能していない巨大組織は、

組織内のエントロピーが増大し、内部崩壊て行きます...

  こうした事は、現代において、共産主義イデオロギーでも試されました...しかし、結

局、同じことでしたねえ...イデオロギーが正しいものであっても、やはり分裂し、停滞

し、エントロピーが増大して行くわけです。大きな構造ほど、その影響は顕著になるよう

ですねえ...」

「はい、」

「もし、〔人間の巣〕のような小さな単位の集合なら、共産主義は成功したと思います。

また、仏教でも、キリスト教でも、イスラム教でも...自給自足〔人間の巣/未来型

都市〕ならば、そこに〔理想郷〕が実現できるだろうと考えています...

  多細胞生物であっても、“命”の最小単位は、1つ1つの細胞にあります。人類文明

全体デザインについても、この風景を学ぶべきでしょう...」

「はい...」

「しかし...

  これまで人類の歴史は...狩り征服統一...布教による統一大航海でした。

それゆえに、“文明の折り返し”が来たということです。こうした、征服無制限の拡大

いう方法は、終焉したということです。

  現在の社会組織は...蓄積した巨大資本の海/グローバル化の海で、まさに荒れ

狂っている状態です。こうしたシステムは、細胞単位/〔人間の巣〕の単位に、折畳ま

れて行かなければなりません...」

「うーん...そういうことですか...」

「それが、“文明の折り返し”なのです...」

「はい、」

宗教でも、イデオロギーでも...様々な弾圧が行われたわけですが、結局、抑えきれ

ませんでしたねえ...そして、最後にはエントロピーが増大し、分裂して行きました。こ

うした現象は...実は、科学技術における巨大ミッションでも見られるのです...

  宇宙開発原子力開発でも、こうした現象は顕著に表れているようです...何故か、

これら分野巨大ミッションというものは...急速なブレーキがかかって来ました」

「うーん...そうですね...」夏美が、頭をかしげた。「宇宙開発でも、“原発”でも...

それから“核融合発電”でもそうなのかしら...何故か、技術革新があるというよりも、

があり、ブレーキがかかっている感じですよね...

  コンピューター技術や、ゲノム解読の方は伸びているのに...」

「その通りです...」高杉が、自分のモニターに目を落とした。「いい点を指摘しました。

つまり...それは...

  人類救済史ストーリイの問題なのかも知れません...そうした傾向は、@・・・生命潮

流/多様性・複雑化のベクトルから来ているものなのか...単純に、A・・・エントロピー

の増大から来るものなのか...それとも、“ストーリイの原型/本流”からの、B・・・スト

ーリイ的なバイアス(偏向)から来るものなのか...

  あるいは、C・・・もっと他の要素が存在するのか...もっと詳しく分析してみる必要

があります。現在の段階では、はっきりした事は言えません...ただ、生態系空間の中

では、巨大組織・巨大構造というものは、極めて成立しにくいということですね...

  それを強引に推し進めると...しだいに風景が単調になり、生態系そのものが崩壊

して行くということです...現在の地球表層/地球生命圏の風景は、まさに、こうした状

況にあります」

「はい...」夏美が、コクリとうなづいた。

“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代が本格化して...“物の領域”“心

の領域”の統合が進めば...そうした高次元の問題も、しだいに明確になって来るので

しょう...現在は、そうした事が、何となく観測されているということです...」

「うーん...」響子が、細い指を合わせた。「ともかく...単なる、エントロピーの増大

いうことではなさそうですね...ケースバイケースで、様々な要素複雑に作用してい

るのかも知れませんわ...」

「そうですね...」高杉がうなづいた。「それこそが、多様性であり、複雑化の影響です」

「はい、」響子が、神妙にうなづいた。

 

「ところで...」高杉が言った。「自由主義・経済体制ですが...

  これはうまく行きました...東西冷戦構造時代を勝ち残り...比較的うまく行ったの

は、多様性・複雑化の部分を、あまり抑えなかったからでしょう。しかしそれも、“経済至

上主義/グローバル化/富の寡占化”によって、急速に多様性が失われて来ました。

  自由主義・経済体制が勝ち残り...単一のシステムに収斂・変貌し、巨大化して行く

と...急速に限界が現われて来ました。そして現在、“ポスト・資本主義/ポスト・経済

至上主義”の課題が、急浮上してきているわけです」

「確かに、そうですね...」響子が、頭をかしげた。「“スローフード/スローライフの潮

流”が...“欲望の原理/巨大資本による世界制覇”の前に...大きく立ちはだかって

来たように思います...この潮流は、太陽光線のように弱いものですが、まとまると

大なエネルギーになって来ます。

  これはちょうど...あのルネッサンスの状況と、非常によく似ているのかも知れませ

んね。社会の根源から発生する、“人間性回復のうねり”です。今後、世界中に波及して

行くと思われます...また、“地球温暖化”との相乗効果で、経済至上主義は急速に後

退して行くと思います...

  すでに、世界標準は...経済至上主義から“地球温暖化対策”にシフトしつつありま

すわ...」

「そうですねえ...」高杉がうなづいた。「来年あたりから、それが一層顕著になるのか

も知れませんね。中国などの経済的躍進は、〔人間の巣〕の方向へ、進路を変えて行く

べきでしょう」

「はい...

  来年から、【京都議定書】の履行期間が始まりますわ...そして、“洞爺湖サミット”

があります。世界の流れが、大きく変わっていくと思います。それが、世界標準経済至

上主義から、“地球温暖化対策”にシフトして行く原動力になると思われます...」

 

  〔2〕  〔欲望の地獄〕  から、 浄土の極楽   

        

 

<“世界標準”は・・・

             “経済至上主義”から、“地球温暖化対策”へ >

            index.1102.1.jpg (3137 バイト)      

「ええ...」響子が言った。「さて...

  私たちとしては、以前から主張していることですが...日本の、自然な形での、“急

速な人口減少”大歓迎すべきものです。これは、日本社会の人口が、生態系正常

な数に戻って行く、正しい過程にあることを示しています。確かに、社会の縮小は淋しい

わけですが、これこそが日本大きな希望であり、治癒の苦しさです...

  生態系においては...ネズミバッタ微生物も、異常に大量発生した後は、みな

によって正常な数量に戻って行くのです。それは、ホモサピエンスおいても例外ではな

いということですわ...

  いかに、文明社会に到達していても、やがて壮大な飢餓圧力が高まって来ます。科学

的創造力を持っていても、それは時間差の問題なのでしょう...この法則性を打ち破れ

ば、生態系の方が沈没します。そして、より明確な、種の絶滅がやって来るということで

す...」

「はい...」夏美がうなづいた。「現在、その状態がさし迫っていますよね...」

「そうですね...

  いよいよ、日本においても、食料品の値段急上昇して来ました。食料自給率向

が、喫緊の大問題となってきました...日本国内においても、社会が分散化し、自給

自足社会の再構築が求められています。そして、その安全装置となるのが、〔人間の

巣〕の展開なのです。

  来年/2008年は...日本にとっても、そして世界にとっても...“文明の折り返

し”起点の年になるかも知れません...“洞爺湖サミット”もありますし、“ポスト・京都

議定書”でも、新たな大方針が打ち出されることを期待しています。

  それから、もう1つ...理論研究員秋月茜さんが提唱しているように、《地球温暖

化対策・第2弾/不要物・世界中の軍産複合体の昇華》という事も、いよいよ真剣に

考えなければならないと思います。もはや世界中の軍事力が、“覇権競争”で、無駄なエ

ネルギー大量消費している状況にはないということですわ...」

「はい...来年は、色々なことがありそうな年ですね、」

「そうですね...

  1995年に似ているかも知れません。1995年は、パソコンOS“Windows95”

発売され...文明が激変する起点の年でした...それから、阪神大震災もあり、エボ

ラ出血熱も話題になりました...

  ええと、それから何があったかしら...ともかく、色々なことがあった年ですわ...そ

うそう...オーム真理教がやった、“地下鉄サリン事件”を引き起こした年でもあります

ね...あの事件も、世界中を震撼させました...」

「私の担当では、“高速増殖炉・もんじゅ”“ナトリウム漏れ事故”が発生しています。こ

れも、“原発”技術的・行き詰まりという意味では...今から考えれば、ターニング・ポ

イントではなかったかしら...」

「うーん...そうでした...」響子がうなづいた。「それも、1995年でしたわね...

  来年/2008年も...ともかく、私たちの記憶に残る年になりそうですわ...“洞爺

湖サミット”も、その1つのイベントになりますが...日本はその大役を果たすことができ

るのでしょうか。

  それまでに、〔人間の巣〕の展開へ、大きく踏み出すことができるでしょうか...その

方向しか、有効な選択肢はないと思うのですが...細かな努力/勤勉な努力で...乗

り越えられる障壁ではないと思うのですが...」

〔人間の巣〕の展開のような、抜本的な大方針が必要ですよね、」

「ふーむ...」高杉が、自分のワークステーションのデータを見入った。

日本の政治は...」夏美が言った。「相変わらずスクリューが空転していますよね...

ブラッキーが言うように...この大シケの中で...」

「そうですね...」響子が、高杉の横顔を眺めた。「ともかく...価値観の大が必要

ですわ...“グローバル化の抑制”...“競争原理の終息”...そして“文明の折り

し”が急務です...」

国際社会が、この現状に覚醒し、具体的な行動を起こすことが必要ですね」

「そうですね...それから、日本国家政策も、経済から“地球温暖化対策”にシフトし

て行くことが、非常に重要になって来ました...

  やがて人類文明は、未曾有の“大艱難時代”に突入して行くことになりますが、その

前に、“十分な準備”をすることが、大衝撃軟着陸に変えることにつながります。私たち

は、そのための“万能型・防護力”として、〔人間の巣〕を提唱しているわけです...

  〔人間の巣〕を展開することによって、この“大艱難時代”を、スムーズに乗り切ること

は可能です...むろん、他にも良い提案があるなら、どんどん出して行くべきです。私た

ちも、〔人間の巣〕にこだわるつもりはありませんわ...」

「はい...」夏美が言った。「ともかく...食料問題であり、COの削減であり、“地球温

暖化対策”ですが...全ての問題の根源は、人口爆発にありますね、」

「そうですね...」響子が、両手をこすり合わせた。「でも...

  様々な社会的大混乱/壮大なモラルハザードはありますが、日本に限って言えば、

良い方向へ向かっているのです...と言うのは、日本は何をさておいても、急速な人口

減少局面に突入しているからです...

  着実な人口減少の方向は、日本の社会正常な姿へ戻って行く自然治癒が、順調に

進行しているという事ですわ。その苦しさだけ、やがて、スムーズな着陸が可能というこ

とです...しかも、島国ですから、海外からの影響は少ないのです...

  人口が減少し、自給自足が確立されれば...日本に限って言えば、“反・グローバ

ル化/分散化”は、比較的容易な条件が整っています...これは、神に感謝すべきで

しょう...まさに、こんな折に、“少子化対策”などは論外なのです。社会福祉こそ、充

実させるべきなのです」

人口減少は、」夏美が言った。「社会混乱壮大なモラルハザードと相殺できる、自然

治癒力ですよね...素直に、喜ぶべきですわ...」

「そうですね...国家・社会の上流域から、壮大なモラルハザードが拡大していても、

口減少局面に入っていることが、唯一の救いなのです...それだけで、日本列島の負

担が、相当に軽減されているのです」

「はい、」

人口減少で困っているのは、労働人口が減少する産業界でしょう...経済の縮小は、

金融においても、同様かも知れませんね...でも、主権者/国民が、豊かに暮らしてい

くための産業であり、経済のはずです...産業経済奴隷となるために、国民が存

在するわけではありませんわ」

「はい...」夏美が、コクリとうなづいた。

世界標準は...いずれ、経済至上主義から“地球温暖化対策”シフトして行くでしょ

う...そして、現在の市場経済システムは、いずれにしても破綻して行くでしょう...

  私たちは、地産地消/自給自足の比率を高め、“反・グローバル化/分散化”に備

えなえることが、喫緊の課題となって来ています」

「そうですね...」

「より一層...スローフード/スローライフシフトして行くことが必要です...つまり、

“人間性回復の大きなうねり”の中で、国家主義的“覇権競争”などは、過去の遺物

して行かなければなりません。

  こうした流れの中で、“覇権競争”などは、やがて幻想だと分かって来ます。それが

ラダイムシフトです。私たちは、“反・グローバル化/分散化”して、“共に生きて行くこ

と”こそ、何よりも大切なことだと分かって来るはずですわ。

  そのために、〔人間の巣〕“万能型・防護力”になるわけです...」

 

「でも...」夏美が、首を傾げた。「日本の政治は、それが分かっているのでしょうか?」

「うーん...」響子が言った。「そうですね...

  何処で誰がどのように決定したのかは知りませんが...“少子化対策”などは、

態系の摂理に逆行する大失政です...そんなことさえ、理解されていないという事自体

が、大問題ですわ...食料自給率が40%の国でです...それも、大問題ですけど、」

日本の現状ですよね...」

「残念ながら...そうですね...

  “少子化対策”は、急速にしぼんで来ているようですが、まだその担当大臣が存在し

ています...こうした事は、そもそも間違って許されるような問題ではありません。食料

自給率の問題もそうです...

  第一、“人口減少が続けば、日本の人口はゼロになる”などという(うた)い文句も、全

くあり得ない話です...むしろ、人口減少こそ、唯一の希望なのですわ」

「はい...」夏美が言った。「社会的混乱は...〔人間の巣〕で吸収し...〔21世紀・

維新〕の中で...日本社会を再構築して行く...これでいいわけですね?」

「そうですね...」響子が、ゆっくりとうなづいた。

 

「さて...」高杉が顔を上げた。「話を進めましょう...

  経済至上主義暴走も...いよいよ、その終局が望見できるようになりました...

ピークに達し、下り坂の局面に入ったというよりも...空洞化と瓦解による雪解け

が、春の足音のように、何所かで、広く静かに、着実に始まっているのを感じます。春の

訪れのように、それは不可避でしょう」

「はい、」響子がうなづいた。

「その根拠は...

  いよいよ本格化する“地球温暖化”の中で...富の寡占や、投機的資金の暴走が、

〔世界市民の信頼〕が得られなくなって来たということでしょう...世界の金融システム

というものも、〔世界市民の信頼〕の上に構築されている虚構です。

  これは、“信頼”により、“言語的・亜空間世界”の上に構築されている、壮大な幻想

のです。つまり、リアリティーに根拠を持つものではないのです...“信頼”が失われれ

ば、一挙に崩壊してしまいます...」

「はい、」

「ここが、非常に重要です...

  金融恐慌の怖さがあると同時に、希望もあります...あのルネッサンス運動で、中

世・ヨーロッパの民衆が“絶対的な神の支配”から解放されたように...今〔世界市民〕

は、“圧倒的な資本の支配”からの、解放前夜にあるのかも知れません...

  “スローフード/スローライフの潮流”が起こり...人類文明は、かつての“清貧な姿

/人間的生活”に、回帰し始めているということです...清貧を好む人々は、昔から

や財宝には何の価値もないとを知っています。〔世界市民〕が、資本ソッポを向けば、

それはもはや裸の王様です。誰も見向きもしないことになります...」

巨大資本も、それに従うものがなければ...労働を提供する人がなければ...システ

ムが瓦解するわけですね...」

「そうです...〔市民〕が、資本ソッポを向き...“人間性豊かな素朴な生活”へ向か

い始めたのかも知れません...“欲望の地獄”から、<清貧・清浄な...浄土の極楽

に、“覚醒”し始めたということかも知れません...」

「はい...」響子が、口に指を当てた。「〔市民〕は...“スローフード/スローライフの

潮流”に乗り...いわゆる、“物欲”から、“存在の覚醒”へ、価値観シフトしつつある

ということですね...」

「そうです...それが、“霊的・進化”の方向にもなるわけです...これは、生命潮流

ベクトルに沿った流れなのかも知れません...」

「でも、怖い話ですね...実際、本当に、そんな流れがあるのでしょうか?」

「さて...」高杉が微笑した。「確証はありません...

  しかし、その事実が進行しているようです...例えば、日本では若者の間でさえ、

に対する興味が減少してきていると言います。そういう、飽くなき物欲というものが、大き

な社会現象として、無くなって来ているのではないでしょうか」

「でも...車が、全く無くなったわけではないですよね、」

「もちろんです。現在の社会システムの中で生活して行くには、車はやはり必要でしょ

う。しかし、ステータスというよりも、単なる移動手段になりつつあるようです。日本の若

は、それと意識しないままに、“文明のテージ/意識・情報革命”の方へ、シフト

を始めているのかも知れません」

「はい、」

中国インドロシアブラジルなどは、物質的豊かさ沸騰していますが...進国

ではすでに、そうした時代を終了しいるのでしょう...そして、“文明の第ステージ/意

識・情報革命”へ、シフトを始めていると思われます。

  私たちは、その新たな価値観として...“存在の覚醒”を、その候補の1つとして提

示しているわけです。少々難解な所もありますが、それだけに奥の深いものです。人類

文明は長い歴史を経て、すでにそうした段階に到達しているものと思います。私たちは、

そこに、〔極楽浄土〕の可能性を見出しています...」

「そうですね...」

「まあ...

  そうした中で...大混乱の日本ですが...まさに、文明の水先案内の位置にありま

す。否応なしに、日本最も急激な人口減少社会に突入しているからです。日本は、そ

うした〔極楽浄土〕の創出の意味でも、世界の期待に答えなければなりません」

「はい...」響子が唇を結び、手を握りしめた。

 

“腐っても鯛”という言葉がありますねえ...

  日本はまだまだ、技術大国としての底力は十分に備えています...また、いやしく

も、あの〔明治維新〕を完遂した民族です...

  国家戦略として、〔人間の巣〕を全国展開し...人口調整局面を受け入れ...真に

豊かな島国/...〔極楽浄土〕を創出して行くことが求められているのです」

「こうした時代の奔流は...」響子が、両手を固く握りしめた。「“地球温暖化”という

で、強制的に推移して行きますね...?」

「その通りでしょう...

  “国家の舵取り”を誤らないことが、非常に大事になります...時代の変動値が、急

速に高まって来ています。経済競争金融システムだけを見ていると、道を大きく踏み

外すことになります。30年後の世界を想定し、現在の国家政策大転換して行く必要が

あります」

「はい、」

国民にとって真に必要なのは、国際競争に勝つ!”ことではありません。激動の時代

に突入した今...将来展望の中で、“しっかりと国民を守る!”ことこそ大事なのです。

これから始まる“大艱難の時代”を乗り切っていく、大政治力が求められています」

「はい、」

「まあ、このモラルハザードの状況下で...私は、その原動力若者世代に期待してい

ます...いずれにしろ、早晩、若者世代が、この日本を背負っていくことになるのです。

やがて、確実に、その若者たちの時代がやって来るわけですから」

「そうですね、」

「響子さんが言うように...来年/2008年“洞爺湖サミット”あたりからは、世界標準

経済至上主義から、“地球温暖化対策”シフトして行くのではないでしょうか...“ポ

スト・京都議定書”の動きも、本格化して行くわけです...」

「はい...そうした、文明史的な大きな流れが始まっているわけですね...?」

「そう思いますねえ...また、そうでないと、地球は救われないでしょう...何もしなけ

れば、さらなる大混乱を重ねて行くだけです...」

「はい、」

 

トヨタなんかは...」夏美が言った。「今後も海外で、大量の自動車を作ろうとしていま

すが...それも、大きく“舵”を切って行くことになるのかしら?」

「結局は、そうなるでしょう...“時代は想像以上に加速”している様子です...

  現在、自動車燃料として、ガソリンからバイオ・エタノールへの切り替えが始まってい

ますが...そのことで、燃料食料の両方が高騰し始めています。いよいよ、大混乱

始まるでしょう...格差社会高齢化社会日本では、“脱・車社会”がますます加速す

ることになります。

  電気自動車ロボット・カー、それにロボットの開発が進んでいるようですが、需要は

限定的なものになると思います。これまでのような、“これでもか!”という快適さ追求の

ビジネス・モデルは、どこか時代とのズレを感じるようになってきました」

「うーん...」夏美が言った。「人間は、適度に汗を流すのがいいのですね...〔人間

の巣〕も、人間サイズコンパクトな高機能空間を想定しています...自給自足農業

も、大型機械を導入するのではなく、労働集約型・農業を想定していますよね...

  それが、〔理想郷〕だと思いますわ...最低限の動力でいいと思います。そこを、

ボット・カーですいすいと乗り回す必要はありませんもの...大自然の中で、のんびりと

暮せばいいのですわ」

「そうですね...」高杉がうなづいた。「ともかく...

  “脱・車”“脱・冷暖房”、そして“脱・原発”...さらに、“自給自足社会の展開”...

こうした時代的要求を、そっくり受け入れるのが...〔人間の巣/未来型都市〕の展開

です...現在、日本では、こうした先進的・大転換の必要性が、最も差し迫った状況に

なっています...」

「はい、」響子がうなづいた。

〔人間の巣〕の展開では...予算面・技術面とも、障害になるものは何もありません。

決断さえすれば、即移行できる基礎的建造物です...

  あえて言えば、既得権を失う人々が出てくるということでしょうか...しかし、文明基

盤の未来型への転換となれば、既得権などは些細な問題でしょう。〔明治維新〕の折に

も、様々な既得権が失われ、皆が平民となったわけです...」

「私たちは...」夏美が言った。「そうした事をすでに経験してきているわけですね」

「そうです...

  大混乱の時代には、“官僚主義的な修正小手先の改革・改善”では対処できませ

ん。まさに、大局的な思想や、政治主導が必要なのです...」

「でも...」夏美が言った。「そうした、大政治家が出てこないですね。日本にも、世界

も...これから、出てくるのかしら...?」

「うーむ...そうですねえ...

  “ノーベル平和賞”を授与された、アメリカゴア・前副大統領などは、その最右翼

も知れません...来年の大統領選挙に再出馬し、是非、アメリカ・大統領になって欲し

いですねえ...

  それとも、〔世界市民〕別のポストを用意し、旗振り役になって欲しいものです。ま

あ、それ以外にも、立派な人はいくらでもいるのでしょうが、今はこのぐらいしか思い当

たりません」

「うーん...」響子が、細い指を組んだ。「本当に、来年あたりが...最初の正念場にな

りそうですね」

「まあ、そうなって欲しいものです」

 

「でも...」夏美が言った。「日本の政治は、年金問題や、政治資金問題防衛省の汚

職問題で...バトルを展開していますよね。将来的未来社会の青写真は、ほとんど

聞こえてこないですよね。こんなことで、大丈夫なのでしょうか?」

「うーむ...」高杉が、長いため息をついた。「政治弱体化した状態では...国民

しっかりしなくてはいけません。私は、未来を担う若者に、大いに期待したいですねえ。

若者に、日本の未来を切り開く、行動を起こして欲しいと思います。

  こんな時代だからこそ、若者“青臭いほどの理想主義”が必要なのです...そのぐ

らいの、大変革の気概が必要なのです...溢れるような、理想社会建設情熱が必要

なのです...多少、勇み足であっても、それは試行錯誤の中で修正して行けばいいわ

けです...」

「はい、」響子が、うなづいた。

「あの〔明治維新〕も...

  若い下級武士たちによる、奇跡の革命でした。その若者たちの手によって、日本

“中世・江戸時代”から、一気に“近世・明治の時代”大変貌をとげたのです。さらに、

世界の列強にも参入したのです...

  あれほどのスムーズな大変革は、世界の歴史上にも例が無いのです。士農工商の身

分制度は一気に崩し、突然にして日本国民全員が、“平民”として新たに歩み始めたの

です。それほどの大変革を、維新の若者たちはやり抜いたのです...その若者たち

よる〔明治維新〕が、今でも極東アジアの小さな島国に、経済大国・技術大国の地位を

築いているわけです...

  そして現在...再びこの日本が、その〔維新/大変革〕を渇望しています。平成時

代の若者も、まさにその時代的な役割を、果敢に果たして欲しいと願っています。現状

の政治状況は、まさに時代に取り残された、当時の“江戸・幕藩体制”そのものの姿な

のかも知れません...」

「そうですね...」響子が言った。「当時の“江戸・幕藩体制”であっても、これほど国民

から乖離し、空洞化してはいなかったのではないでしょうか、」

「そうですねえ...

  ま、ともかく...人心一新若者世代に期待したいと思います。具体的には、〔人間

の巣〕全国展開ということでしょう...それが、〔21世紀・維新〕と連動します。この

維新〕の中で、日本社会を再構築して行って欲しいと思います。そこに、“自分たちの

理想とする社会”を建設して欲しいと思います...」

「はい!」夏美が、強くうなづいた。

 

ポスト・資本主義

   〔人間の巣〕 を単位として・・・多様な価値観 展開

   index.1102.1.jpg (3137 バイト)                 

「さて...」高杉が言った。「私たちは、私たちの仕事を、しっかりとやって行きましょう」

「はい!」夏美がうなづいた。

「そこで...

  “ポスト・資本主義”という事を...そろそろ視野に入れて行く必要があります。その、

準備をしておく必要があります。私たちは、そのための文明の器として、〔人間の巣〕

提唱しているわけです...

  “ポスト・資本主義”は...〔人間の巣〕単位で、それぞれの多様な価値観をもつ、

アイデンティティーの強い社会を想定しています...これは生態系に見られる、多様性・

複雑化と同じ姿になります...つまり、生命潮流と同調しているわけです...」

「そうですね、」夏美が言った。

「何度も言うことですが...

  〔人間の巣〕単位では、多様な価値観が想定されます。それが、生態系多様性・

複雑化で、安定している姿なのです。もちろん、資本主義も否定しません。また、様々な

宗教において、それぞれの〔理想郷〕自己完結することも可能です。

  これは、“グローバル化”ではなく、“分散化”の流れになります。その“小さな単位/

細胞の単位”で、それぞれの社会を<浄化> して行って欲しいと思います...」

「はい...」夏美がうなづいた。「ええと...“分散化”ということは...“反・グローバ

ル化”の方向でいいわけですね?」

「そうです...

  〔人間の巣〕は、世界経済の破綻という大衝撃にも耐え得る、“万能型・防護力”を提

供します...経済の破綻は、今後様々な要因で、大いに可能性のある事態です...

  私は経済の専門家ではないので、経済面での詳しい事は分りませんが、その大衝撃

の方は想像できます...現在の人類文明の器は、そうした意味でも非常に脆弱(ぜいじゃ

く)な状態なのです」

世界経済の破綻大衝撃とは、」夏美が言った。「どのようなものなのでしょうか?」

「うーむ...

  世界経済の破綻は、いわゆる物理的衝撃ではありません。しかし、結果として、巨大

なパニックが起こることになります...例えば、気候変動によって、世界的凶作が何年

か続くようだと、この種の大パニックが容易に起こり得るのです。飢餓暴動が多発する

でしょう...そして、そのしわ寄せは、必ず弱者に向かいます...」

「はい、」

「それを乗り切るには...

  “万能型・防護力”と、“食料の備蓄”と、“自給自足”が基本になるでしょう。その要求

に答えるのが、〔人間の巣〕です。また、天候不順に左右されないような、“食糧生産の

手段”も準備しておくことが必要かも知れません。まあ、もっとも簡単なものでは、ビニー

ルハウスのような農法でもかまわないわけです...」

「それなら簡単ですね、」

「そうですが...そのノウハウと、ビニール等を確保しておくということです。自給自足

となると、ビニールは確保しにくいですからねえ...また、その時になれば、需要も急

増するでしょう...

  もちろん、それだけでいいということではありません。あらゆる準備が必要です...」

「はい、そうですね...〔人間の巣〕の単位で、そうした飢餓の衝撃を、長期間にわたっ

て乗り越えて行く事も、必要になって来るかも知れませんね」

「そうですねえ...

  漁業資源の荒廃も、構造的に進行しています...海面水準の上昇も急速に進んで

います...感染症パンデミック(世界的大流行)も、世界経済大混乱に陥れる要因になり

ます...予測されている“新型インフルエンザ”も、“新型肺炎・SARS”をはるかに上回

る、経済的混乱が予想されます」

「はい、」

「全てのケースで、それぞれ様相は異なります...

  しかし、最後には、居住環境と、食料に収束してくるでしょう。その時こそ、〔人間の

巣〕“万能型・防護力”を発揮します。〔人間の巣〕単位で、それぞれきめ細かく準

し、乗り切っていくということです。もちろん、国家国際社会には、別の意味での責

任があります」

“新型インフルエンザ”は、直接的な脅威だけではないのですね...パンデミック

際物流がストップすれば、即、飢餓地域が出現するわけですね...日本も、ライフライン

貿易ラインが停止したら、たちまち飢餓に陥りますね、」

「そうですねえ...

  海上輸送路は、そう簡単には止まるとは思われませんが、その分、海上や港の管理

には、難しいものがあります」

「はい、」

「ともかく...

  経済の混乱は、社会システムの混乱を招き、国民生活大打撃を与えるでしょう。そ

して、全てのしわ寄せは、弱者に向かいます。したがって、その時のためにも、弱者こそ

〔人間の巣〕を準備しておいて欲しいのです...

  また、巨大資本/経済原理に翻弄されないためにも、国民の立場としても、〔人間の

巣〕の展開が急務となります。謙虚強固な、〔人間の巣/未来型社会〕の展開が、あ

らゆる衝撃から、私たちを守ってくれるでしょう」

「はい...」夏美がうなづいた。「ええと...

  〔人間の巣〕は、最も単純なものでは...頑丈な3層ほどの建造物に、適量の土

かぶせるだけでいいわけですね...上は、公共・野外スペースになり、周囲は自給自

足農業を展開することになるわけですね...これは、過疎地でも十分に可能ですね、」

「そうですねえ...そうした所では、独創的な〔人間の巣〕になるかも知れません...

  まあ、しかし...自然災害に対する防護力としては、地形地盤は十分に吟味して

おく必要があります。それと、農業生産力が必要になります。必ずしも、大型農業機械

は必要としませんが、地域で自給自足ができる事が、1つの条件になるでしょう...

  その上で...多少の特産物ぐらいは、流通させることができるのがいいですね。まあ

特産物でなくても、工芸品や、工業品でもいいわけですね...それから、大農業地域

どでは、自給自足以外に、それなりの責任が付加されるでしょうねえ...」

「うーん...流通も必要ですよね...」

「そうです...

  そのあたりは、国家としてのデザインが必要になるでしょう。まあ、ともかく一般的に

は、〔人間の巣〕の単位で“万能型・防護力”を持ち、食料備蓄も進めて欲しいということ

です。こうしたシステムは、市町村レベルでも十分に展開が可能です。また、発展途上

でも、この程度の建造物は十分に作れるでしょう...

  〔コンパクトな高機能空間〕で、“脱・冷暖房”“脱・車社会”を実現し、“福祉・医療・

治安”も、コンパクト機能的な管理が進められます。気候変動地震・噴火などの“自

然災害”も、“万能型・防護力”で克服が可能です。ともかく、大混乱時代様々な衝撃

に対し、十分な備えをしおいて欲しいと思います」

「はい...」

「何度も言いますが...あらゆる衝撃は、まず弱者に向かうということです。弱者こそ、

積極的〔人間の巣〕の展開をしておいて欲しいと思います...」

 

「塾長...」夏美が、首をかしげた。「不思議に思うのですが...

  これまで、人類文明において...何故、このような、〔半・地下都市/人間の巣

建造されて来なかったのでしょうか...東西冷戦構造下核戦略時代にさえ、こうした

建造物は造られなかったですよね...

  軍事的・核シェルターは作られても...それに、民間用のカプセル型・核シェルター

販売されても、〔人間の巣〕のようなものはなかったですね。あの当時は、それこそ、こう

した“万能型・防護力”が必要だったのではないでしょうか?」

「うーむ...そうですねえ...

  そうした、発想が無かったからでしょう...私たちも、“地球温暖化対策”を迫られた

からこそ、《文明の地下都市空間へのシフト》ということで、考察を開始しました。そし

て、ようやく、〔半・地下都市/人間の巣〕に到達したわけです...

  考察を進めて行くと、〔人間の巣〕には、“万能型・防護力”があることも分かってきた

わけです...さらに、その延長線上には、〔極楽浄土〕を創出できる可能性も見えて来

たということでしょう。

  したがって...そもそも、発想の原点が違っていたということでしょうか。核シェルター

として“人間を守る”ためではなく...人口爆発/地球表層の荒廃に対し、“地球環境を

守る”ために考察を開始したということです...」

「でも...〔人間の巣〕は冬でも暖かいですよね。昔はそれだけでも、ずいぶん助かった

と思いますわ...戦国時代などは、としても強固なはずですし、雪が降っても大丈夫

です。歴史上、こうした建造物はなかったのかしら?」

「うーむ...そうですねえ...

  本格的な〔半・地下都市〕というものの普及は、無かったわけですねえ...確かに、

夏美さんの言う通りでしょう...都市プランナーという専門家が、歴史上、こうした建造

物を創出してこなかったのは、不思議な気がします。

  第2次世界大戦の前に、フランスマジノ線(1936年に完成)や、それに対抗したドイツ

ジークフリート線(1938年に完成)という要塞線は有名ですが、〔人間の巣〕に発展すること

はなかったですねえ...日本も、空襲に備えて、大本営などの地下施設は造られまし

たが、終戦とともに忘れられてしまいましたね...

  そうそう...アフガニスタンにも...かなり昔に作られた、大地下水道があるようです

ね。しかし、それも、〔人間の巣〕にはならなかったようです。まあ、ともかく、その必要が

なかったからでしょう...

  21世紀になり、その必要性が生まれ...私たちが、“文明の地下都市空間へのシフ

ト”に着手したわけです。ともかく、“地球温暖化対策”としては間に合ったわけですね。

これまでは、COの削減などは、真剣に考える必要がなかったわけです。どんどん化石

燃料を燃やして来たということでしょう」

「はい、そうですね...」

「これは、“ストーリイの原型/本流”が、そのように作用したからかも知れません...

  技術開発というものが...宇宙開発原子力発電、あるいは核融合発電という...

“人類文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命の方向に沿っては伸びず...“人

類文明の第3ステージ/意識・情報革命”の方向へ、大きくシフトしたことと、無関係で

はないでしょう...そのための文明の器として、〔人間の巣〕が用意されたのでしょう。

  そもそも...コンピューターや、ヒトゲノム解読飛躍的発展の方向性も“ストーリイ

の原型/本流”とは無関係ではないでしょう...これは、様々な技術革新の、順序・強

弱・音色などの問題として考えると、分かりやすいかも知れませんね。

  生物体の発生における、遺伝子発現の風景は...後成学的光景と呼ばれています

が...これは無数の楽器が、オーケストラのような壮大なメロディーを創出しているのと

似ているかも知れません。

  つまり、“人類救済史ストーリイ”においても、まさに技術革新というものが、オーケスト

ラの楽器のように...精妙に発現し、音が構成れ...メロディーに沿って流れている

のかも知れません...

  楽団楽譜を読むように...【人間原理空間・ストーリイ】を、有意に描き出している

のかも知れません...それが人間意識の結晶化であり、過不足のない関係性である、

ストーリイの析出なのでしょうか...」

「でも...そんな“意識”というものが、本当に存在するのでしょうか...?」

「うーむ...」高杉が、ほくそ笑んだ。「デカルトの言うように...我思う・・・故に我あ

り・・・であり...確かに、何者かは存在しているのでしょう...つまり、それは、“私と

いう主体”ですがね...それは確かに存在するわけです...」

「はい...」夏美が、頬に笑窪を作った。

「しかし...

  こうした考えの...根拠/具体的な証拠はと言われると...分りませんねえ。ただ、

“認識の鏡に映し出されるストーリイ”は...単純に、パラメーター(媒介変数)的時間軸

上を流れているだけではないようです。もっと強固な意味をもつようですねえ。そもそも、

それが、永遠の現在/今の深淵の謎につながっています...」

 

「うーん...」響子が、大きく肩をかしげた。「この世とは...そのようなものなのでしょう

か?」

「いや...」高杉は、片手を立てた。「これは、あくまでも、単なる私の推理です...

  あるいは、妄想かも知れません...確かなことは、何も分りませんね...しかし、こう

考えるということもまた、“真実の結晶世界”の、貴重な果実なのです...全てが意味

あることなのです...

  この世には、余分なものは、何もないわけです...全体に影響を与えないものも、ま

皆無なのです...局所原因というものは、【ベルの定理】によって、数学的にも否定

されています...」

「うーん...それは、“人類文明の第3ステージ/意識・情報革命”が進展して行けば、

しだいに見えて来る世界なのでしょうか?」

「そうですねえ...そのように、構築されていく世界なのかも知れません...

  私のように...こういう事を考えれば...そして、そんな事を、実際に研究して行く人

々が出てくれば...時代は確かにそういう方向へ流れます...その方向が発現してき

ます...構築されて行くのです...“ストーリイの原型”にまで影響するか、あるいはそ

れに沿ったものなら、それは“本流”・・・メロディーにまで合流して行くでしょう...

  人類はそうやって、“言語的・亜空間世界”を拡大し、文明のを構築してきたわけで

す。その座標系を研究し...微細な領域の関係性を掘り下げて来たわけです...」

人間の巣〕は...そうした“ストーリイの原型/本流”に沿っているか...あるいは、

そこから発現して来たものだということですね?」

「そうかも知れないということです...

  私は、そう考えています...人間の巣〕は、【全ての問題解決の方程式】になっ

ているようですから...まず、“この方向性は間違ったものではない”と思います...」

「はい、」響子がうなづいた。「そうですね...」

 

  〔3〕 スローフード/スローライフの潮流・・・  wpe18.jpg (12931 バイト)

         index.1102.1.jpg (3137 バイト)

 

反・グローバル化/分散化は・・・・・全紛争の終局化 

 

「高杉・塾長...」夏美が言った。「【ポスト・京都議定書】では...是非、人間の巣〕

の展開を進めて欲しいですね、」

「そうですねえ...」高杉が、うなづいた。「もう残された時間は、あまりないと思います。

〔人間の巣〕が展開して行くのであれば、閉塞的な世界の様相一変して行くでしょう。

世界中に広がっているあらゆる紛争も、徐々に終息の方向に向かうと思います。

  世界が、“地球温暖化対策”という1つの共通の価値観でまとまる、象徴になると思い

ます。国際連盟や、国際連合のような世界共通の概念が、具体的な建築物となって展

開するわけです」

「そうですね...」夏美が言った。「省エネ技術省エネ努力など...目に見えにくいも

のではなく...人間の巣〕は形として見える、大きな“文明の折り返し”となるわけで

すね...この流れが具体的に動き出すと、人類文明も大きく変わって来ると思います

わ...」

「そうですねえ...

  ガソリンバイオ・エタノールへの切り替えも、地上の風景を大きく変えましたが、これ

は、あまり関心のできるものではありません...また、それ自体は、エネルギー消費

削減するものでもありません。依然として、“人類文明の第2ステージ/エネルギー・産

業革命”のパラダイムの中にあるからです...

  しかも、バイオ・エタノールの生産は、食糧生産世界経済の方へ、大きな影響が出

ています...まあ、他にも様々な意味で、根本解決策とはならないでしょう。いずれにし

ろ、人類文明の大風呂敷は、縮小の方向へ向かわなければ、根本解決策にはならない

わけです」

「はい...バイオ・エタノールへの切り替えは、過渡的なもの、ということですね?」

「そうですねえ。しかし、すでに大資本が動き出していますから、これは急速には止まら

ないでしょう。

  “原発”もそうです。その方向へ技術大資本が流れ出しています。しかし、こうした

流れは、ますます富の寡占を生み出します。そして、将来的には、より“貧富の差”を生

み出す構造なのです。また、危険物世界中にまき散らすことになります」

「そうですね...」

「それに比べ...

  〔人間の巣〕は、発展途上国も含めて、自力で推進が可能なものです。それに加え、

その国自身にも、大きな安定をもたらすものです。〔人間の巣〕の展開こそが、“文明の

折り返し”へ大きく“舵”を切って行く、切り札になるものになるでしょう」

「はい...

  大資本の影響を受けないでも、〔人間の巣〕は建設できますよね。そこに、未来都市

最新技術を組み込まなくても、〔人間の巣〕としては立派に機能しますよね。それこ

そ、自分たちの好きなレベルで、人間的に暮せるわけですね、」

「そういうことでしょう...」

「はい。是非、【ポスト・京都議定書】では、推進して欲しいですね」

「そうなることを祈っています!」

「はい!」

 

「さて...」高杉が言った。「現在、日本の政治で議論されている“テロ特措法”なども、

やがて、この“大きな潮流”の中に呑み込まれて行くでしょう...したがって、現在日本

の国会でやっている“安全保障議論”などは、非常に時代遅れの、ムダな議論をしてい

るように思います...」

「うーん...」夏美がうなづいた。「本当に、ムダな議論をしていていますよね...」

国内の諸問題にしても...

  〔人間の巣〕の展開/〔21世紀・維新〕の流れになって行くのであれば...まさに、

ムダな努力と言えます...〔人間の巣〕は、【全ての問題解決の方程式】になっている

ようですから、この新しいパラダイムの中で、根本解決を図って欲しいと思います...

  “食料・農業問題”も...“厚生・福祉問題”も...“文化・教育問題”も...小手先

チグハグな改革では、どうにもならない状態です。〔21世紀・維新〕を断行し、国家の土

から再構築して行くことが必要でしょう」

「はい...」夏美が、ニッコリとうなづいた。「そうした方向に、向かって欲しいですよね」

「まあ...

  トラブルモグラ叩きしているだけでは、根本解決には至りません。また、界秩序

正しいものにしなければ、“地球温暖化対策”は本格化はしません。現在の国内政治

も、国際政治にも、そうした視点が欠けています」

「はい...」

「しかし...

  世界が、〔人間の巣〕の展開へ動き出せば...“地球温暖化対策”が本格化します。

目に見える形で、世界が動き出します。そうすることによって、あらゆるものが変わって

行くのではないでしょうか。

  世界標準も...経済至上主義から“地球温暖化対策”へシフトし...経済的エゴイズ

退潮して行くことになるでしょう。また、当然の結果として、世界の軍事力の展開も、

縮小して行くことになるでしょう。在日米軍基地も、無用のものになって行きます...」

「はい...全てが、良い方向へ動き出しますね、」

「そうですねえ...まさに、そうなって欲しいと切望しています」

「はい!」

 

「私たちには...

  〔人間の巣〕の展開による、“地球温暖化対策”の効果というものは...膨大すぎて

計算はできませんが...やがて“原発”も不要のものにして行くでしょう。そして“覇権主

義”も、20世紀の遺物にして行くものと思われます。もちろん、今問題になっているテロ

にしても、自然に国際社会から消えて行くと思われます」

「はい...」夏美がうなづいた。「〔人間の巣〕による“分散化”によって...利害対立が

後退して行けば...紛争の火種そのものが無くなって行くということですね...その上

で、全てを調整する、“地球政府/世界政府”が創設されるわけですね?」

「そうです...そういうことです...

  そのためにも、“洞爺湖サミット”【ポスト・京都議定書】での、〔人間の巣〕の提唱

は、非常に重要になります。

  大げさではなく、人類文明の進路を決める、“大きな舵取り”になるでしょう。“地球温

暖化”が、予測を越えて加速している状況では、実質的な選択肢は非常に限られてきま

す。したがって〔人間の巣〕は、その選択肢の1つとして、消えることはないでしょう。

  また、仮に...国際社会が推進しなくても、市民レベルで、“万能型・防護力”として

の展開が進むでしょう...ここが、バイオ・エタノール“原発”とは異なり、大資本力

依存しなくても可能なのです」

「はい!」

日本政治は...ますます混迷・空転を深めていますが...民主党でも自民党でもか

まいません。ここはしっかりと、“日本丸の舵とり”をして欲しいですね...

  何といっても、まさに日本が、少子高齢化社会最先端にあるわけです。人類文明

水先案内の位置にあるわけです」

「はい、そうですね!」夏美が、コクリとうなづき、響子の方を見た。

 

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「ええ...」響子が、ノートパソコンから顔を上げた。細い指で、髪を耳の後ろへ撫で上げ

た。「スローフード/スローライフの話に移りましょう...」

「はい、」夏美が言った。

「何度も言いますが...

  スローフード/スローライフ世界的潮流となるためには...“万能型・防護力”/

〔人間の巣〕が不可欠になります。この最強の防護力が無くしては、スローフード/スロ

ーライフも、“富める者/強者”の特権になってしまいます...それを〔世界市民〕のも

のとするためには、“孤立・分散化”に耐え得る、万能型・防護力”/〔人間の巣〕が必

要なのです」

「はい、」

「ええ...

  “スローフード/スローライフの潮流”は...先進国工業国の中で静かに進行してい

ます...“ファーストフード/競争社会”の反動として、そうした思想潮流が益々顕在化

する傾向にあるようです。それは、日本においては、“のどかな昭和”、そして“田舎暮ら

しへの回帰”でもあるようですね...」

“田舎暮らし”を求めている人は、多いですよね、」

「そうですね...

  こうした、スローフード/スローライフを求める人々は...莫大な富財宝より、人生

には“もっと大切なもの”があるのことに気付き始めています...“物質的な豊かさ”と、

その裏返しである“心の砂漠化”を知った人々です...」

「私たちも、」夏美が言った。「そうした流れの中にありますね、」

「そうですね。私たちも、まさにそうした流れの中にありますわ...そこで、“富”というこ

とについて、少し考えてみましょう。専門家ではないので、ごく一般的な見解ですが、」

「はい、」

 

「ええ...」響子が、ノートパソコンに目を落とした。「資本の蓄積は、それ自体が“富の

寡占化”を生み出して来ました...人類文明の必然的な流れでした...

  文明の長い歴史の中で、“富”は時代とともに巨大なものとなってきました。交通の発

通信の発達も、“富”世界的に統合して来ました。現在、その“富の寡占化”は、

終段階に到達しているものと思われます...裏返して言えば、有限な器の中で、その

限界に到達しているとも言えます...

  一方...“富”そのものも数値化され、バーチャル化し、そして暴走を始めているよう

です。実際の“地球上における富”とは、かけ離れたものになって来ている様相です。

“富”に、その裏付けが無くなり、マネー・ゲームのようになって来ています...

  巨大な投機的マネーが大暴れし、有限な地球表層で、圧倒的な強者極貧の弱者

生み出しています。これはやがて、確実に行き詰るものと思われます...世界経済もま

た、その実態は、非常に脆弱(ぜいじゃく)なものになってきているのではないでしょうか、」

“大艱難の時代”になれば...」夏美が言った。「その脆弱性が顕在化しますね?」

「そうですね...」響子がうなづいた。「非常に大雑把になりますが...

  富や財宝に従う者がなければ...富める人々裸の王様ですわ...巨大な浮動資

金/バーチャル的な富は、単なるシステム上の数字の積み上げに過ぎません。現在の

世界金融システムも、“人々の合意と信頼”なくしては、大いなる幻想だという事です。私

たちは、ようやくそのことに気付き始めています...」

「結局、大切なのは、衣・食・住ということになりますよね...危機の時代には...」

「そうですね...

  昔から、清貧な人生を歩む人々/真の人生を歩む人々は、喝破していますわ...

“富や財宝には何の価値もない”と...人間的に生きるには、巨万の富は、必要ないと

いうことです。私たちが、突然言い出したことではありません。昔から言われていること

ですわ...」

「はい...」

人類文明の発達段階が...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”に到達した現在

では、人類全体がそのことに覚醒しつつあります...それが、“スローフード/スローラ

イフの潮流”として、顕在化しつつあるようですわ...」

「うーん...」夏美が、首をかしげた。「知的水準の上昇が...“文明のステージ”を変

えて行くわけですね?」

「そのように感じます...そして、全てが連動しているようですわ...

  基本的な価値観シフトなくしては、“文明の折り返し”は実現しません...中世ヨ

ーロッパにおけるルネッサンス運動が...抑圧的・絶対的“神の支配からの解放”

だったことはよく知られています...それに、“免罪符”に代表されるように、“堕落的な

教会支配からの解放”でもあったわけですね...

  現在は、その当時の様相と、非常によく似ていると思います...息詰まるような、“資

本支配・経済支配からの民衆の解放”になります...民衆の覚醒になります...それ

が、“スローフード/スローライフの潮流”という、“人間性の回復”であり、知的水準の上

であり...バーチャル的富らの覚醒になります...

  それこそが、地球人類を、救っていくことになるのだと思います...」

「はい...」夏美がうなづいた。

 

共産党・指導で・・・・・〔人間の巣〕の展開へ

                

「さて...」高杉が言った。「話は、少し変わりますが...

  そのアメリカが、巨大な軍事力を展開し、既得権のある、現在の“覇権主義体制”

しようと躍起になっています。米陸軍・第1軍団司令部キャンプ座間への移転を早

めたのも、その表れでしょう。

  その“覇権競争”を、太平洋をはさんで受けて立とうという中国も、この幻想的な構造

を維持しようとしているのかも知れません...相手がなくては、競争にはなりませんから

ねえ。このままでは、在日米軍は無用の長物になってしまいます。いや、世界最強

メリカ軍そのものも、無用の長物でしょう...それを食い止めようというわけです...

  その敵役を、中国が受けて立ってくれたわけです...中国アメリカの2国で、世界を

軍事支配しようというのでしょうか...しかし、それは幻想でしょう...“地球温暖化”

それを許さない状況です。もちろん、アメリカも、中国も、民主主義国家であり、一枚岩

はありませんがね...したがって、この状況は、変わらざるを得ないでしょう...」

「はい...」響子が、ノートパソコンに手を置き、頭を斜めにした。

日本列島は...その真只中にあるわけです。軍事戦略的に見れば、アメリカは絶対

に確保しておきたい位置にあります。日本としては、今、まさに、歴史的な決断を迫られ

ていますねえ...

  〔自衛隊〕在日米軍が一体化し、アメリカ“覇権競争”の片棒を担ぐのか...それ

とも、アメリカにも中国にも加担せず、第3の道を歩み始めるのかということです...そ

決断が迫られています...

  私は、そのカギになるのも...やはり、〔人間の巣〕の展開だと考えています。日本

は、アメリカの世界戦略とは徐々に距離をとり...第3の道/“平和憲法にもとずく絶

対平和主義”“舵”を切って行くべきだと考えています...

  その時、専守防衛/“万能型・防護力”である〔人間の巣〕の展開が、戦略的に生き

て来るわけです。万能型・防護力”は、ミサイル防衛構想そのものを無用にするからで

す...それに加え、来年/2008年あたりからは、世界標準経済至上主義から“地

球温暖化対策”にシフトして行くからです...米陸軍・第1軍団司令部キャンプ座間へ

の移転を早めたのも、アメリカの焦りからだと、私は考えています...」

「はい...」

「しかし、日本は...“絶対平和主義”こそが、正しい選択ということになるでしょう...

来年はアメリカの大統領選挙ですが...まず、日本が変われば...アメリカの世界戦

も大きく変わって来ると思います...アメリカ中国も、非常に流動的なのです...」

アメリカも...」響子が言った。「モラルハザードの日本が...いったい、どういう方向

へ動くのか...ジッと様子を見ている観がありますね?」

「ま、そうだと思います...

  在日米軍基地の問題も、日本中で火を吹いています...そもそも、米・陸軍司令部

が、なぜ日本に来なければならないのでしょうか...世界標準が、“地球温暖化対策”

になろうとしている時代に、〔自衛隊〕米軍一体化などは...まさに時代錯誤です」

アメリカは、冷徹に見ていますね...」

「そうですねえ...

  ともかく、日本〔人間の巣〕の展開し、今こそ第3の道へ踏み出すべきでしょう。もと

もと、“平和憲法を持つ国ですからねえ...アメリカとしても、このことに特別に強い反

はないと思いますねえ...

  国連でも強く指摘しているように、“地球温暖化”予想以上に加速しています。日本

第3の道へ踏み出すことは、世界中が待望しています...」

日本の決断が...」響子が、椅子の背に体を引き、両手を組んだ。「世界の軍事バラ

ンスを動かしますね...それで、軍事的にも、“反・グローバル化”が進行するのでしょう

か?」

「私は、大いに期待しています...まあ、すぐに、在日米軍基地が全てなくなるわけで

はありませんが、軍事的プレゼンスというものが、意味を持たない時代になって来ました

ねえ...」

「はい...」

「さて、もう一方の中国ですが...

  軍事担当大川慶三郎が言っているように、中国軍備増強というのは、いかにも

膨大な無駄遣いの観が否めません...いまさら、共産主義による“世界同時革命”とい

う時代ではないですからねえ...

  中国は、そのあたりのことを、実際に、どう考えているのでしょうか...確かに、中国

も一枚岩ではないようですが、名目的には共産党指導体制のもとで一枚岩なのです。ま

あ、北京オリンピック、そして上海万博以降に、社会体制細分化されて行くのでしょう

か...いよいよ、中国分裂が始まるのでしょう」

「それは...」夏美が言った。「ソ連が、分裂したようにでしょうか?」

「そうですねえ...

  いずれにしても、多様性・複雑化の方向で分裂して行くことは、避けられないと思いま

す。それが自然界ベクトルだからです...その点、ソ連はうまく分裂しましたねえ。チェ

チェン紛争などはありましたが、あの強大な軍事国家分裂するのに、その程度で収ま

ったとも言えるわけです。

  いや、もちろん...チェチェンには深く同情しています...また、一連の紛争で犠牲に

なった全ての人々にも、深く哀悼の意を表します...しかし、いずれにしてもソ連の分裂

によって、全面核戦争/第3次世界大戦という、“人類絶滅のシナリオ”は回避されたわ

けです。そのことに対して、深く感謝しています。

  当時のゴルバチョフ書記長も、“分散化”ということに、大きく貢献してくれました。今後

は、まさにこの“分散化”が、地球規模で必要になるわけです...」

「はい、」

 

中国の場合...

  市場主義経済の導入にはうまく対応しましたが...その矛盾が、かえって(あだ)

ならないかと、危惧しています...心配するのは、この状況下での、軍備増強の姿勢で

す。それが内向きになっても困りますし、外向き“覇権競争”になっても困るわけです

ねえ...」

「そうですね、」夏美が言った。

「ともかく、このままでは済まないでしょう...

  中国が、混乱なく...次の安定した社会体制へ移行することを願っています。ここで

も、私たちから提案できることは、〔人間の巣〕の展開です。〔人間の巣〕“万能型・防

護力”であり、これをうまく使えば、中国混乱なく、“文明の第3ステージ”へ移行するこ

とができるでしょう。

  もちろん、〔人間の巣〕共産主義を否定するものではありません。しかし、統一的な

統治は、その意味を失って行きます...多様性・複雑化ベクトルを吸収して行くシス

テムを、先進的に取り入れて行って欲しいと思います。

  共産主も、資本主義も...あるいはシオニズム(ユダヤ人国家建設運動)などの民族主義

も...〔人間の巣〕単位で...自己完結型<浄土>を作ればいいわけです。

自給自足農業を展開する範囲とし、その他は大自然に還元して行くということです

ね。まあ、広い意味では、“地球政府/世界政府”共通管理という事でもいいわけで

す...」

「うーん...」響子が言った。「私は...中国は、うまく乗り切ってくれると思いますわ。

でも、何故いま、軍備増強なのでしょうか...それが気がかりです...」

「私も、杞憂(きゆう/取り越し苦労)であることを願っています...

  ともかく、〔人間の巣〕を展開し、膨大なエネルギー消費を解消し、居住空間を安定化

させて行けば...13億の巨大・中国も、安定方向へ向かうのではないでしょうか...

社会の安定が、破綻した場合、結局苦しむのは民衆なのです...

  私は、それを心配しています。そしてそれは、世界秩序をも不安定にして行くわけです

ね。中国の安定は、世界にとっとも非常に重要になります...」

「はい...」響子が言った。「“地球温暖化”の深刻化で、軍備増強をしても、戦争など

きない状況だということですね...したがって、軍事力という不要物を、世界から一掃

る事が大事ですわ...それだけでも、計り知れない“地球温暖化対策”になりますわ」

解決策は、」夏美が言った。「やはり、〔人間の巣〕の展開という事ですね、」

「そうですねえ...」高杉が言った。「〔人間の巣〕は、【全ての問題解決の方程式】

なっているようですから...中国も、この【方程式】研究してみる価値はあると思いま

す。ここから、新時代を切り開いていくカギが見つかる可能性は高いと思います」

【世界市民】は...」響子が、両手を組んだ。「圧倒的な経済支配からの脱出方法を、

ようやく手に入れたわけですわ...そのための安全装置として、“万能型・防護力”/

〔人間の巣〕が...きわめて容易に獲得できるという事です...

  これは、中国には理想的なのではないかしら...共産党指導体制の下で、その方向

が打ち出されれば、一挙に〔人間の巣〕が展開して行きますわ...中国は、それが

出来る国です。それが、13億の人民を、真に解放することになるのではないかしら、」

「そうですよね、」夏美が、響子の方にうなづいた。

「まあ...」高杉が言った。「後は、中国の問題ということでしょう...」

「はい、」響子がうなづいた。

 

  wpe18.jpg (12931 バイト) wpe18.jpg (12931 バイト)wpe18.jpg (12931 バイト) 

「うーむ...」高杉が言った。「“地球温暖化”から来る...気候変動の猛威は、すでに

始まっています...

  私たちは、未来型自動車の獲得よりも、気候変動飢餓感染症圧力の増大に、しっ

かりと備えて置かなければなりません。産業界もその技術力を、〔人間の巣〕システ

ム開発の方にシフトして欲しいと思いますね...それだけ快適な〔人間の巣〕ができま

す。

  いよいよ、文明の新しいステージが始まるわけです。それこそ、やることは山ほどある

でしょう。しかし、そこに経済原理を持ち込み、これまでのような利潤追求型でやられて

は困るわけです。今こそ、国家・国民が一丸となって、真に住みよい国家建設/社会建

を始めて欲しいと思います...」

「そうですね...」響子がうなづいた。

〔人間の巣〕の展開は...市場経済原理の下でスタートすることになりますが...い

ずれにしても、“反・グローバル化”/“分散化”の流れになります。これは、別の側面と

して、経済支配力の低下を意味します...〔人間の巣〕“主権者”は、名実ともに、

民/市民ということになります。

  したがって、企業力というものは、社会に還元して行って欲しいと思います。それ以

後、企業の技術サービス力がどうなるかは、“時代の推移”を見て行くということになるの

でしょうか...いずれにしても、豊かさの蓄積も、〔人間の巣〕が単位になります。そし

て、〔人間の巣〕においては公共性の領域が、必然的に広くなることになります...」

「うーん...」響子が言った。「現在は、パワーは依然として企業の中に凝縮されている

わけですね...それが、〔人間の巣〕へ移っていくということでしょうか?」

「まあ、そうですねえ...

  様々な〔人間の巣〕の形態が、多様性・複雑化して行くわけであり...管理は難しい

ものがあります...ともかく、そうした中で、一定の人の流動性は必要かと思います。そ

うした中で、自分の好きな〔人間の巣〕を選択して行くということになるでしょうか...

  それから、企業というものはなくなり、そうした事をする〔人間の巣〕が、様々なサービ

スを生業とするようなシステムになるかも知れません...ともかく、ゆるやかな、人間性

豊かなシステムが育ってほしいですね...

  むろん、上位レベルでは...地域の管理国家の管理、あるいは世界政府の管理

いうものが...それなりに、“ゆるい形”で育って行くことになると思います...」

「はい...」

「現在の資本主義というのは、非常に変動指数の高い社会システムです。フロンティア

開発には威力を発揮しますが、有限な地球表層ではもうフロンティアは残されてはいま

せん。

  したがって、それらを“人間的な良い形”で、“新しい文明のステージ”へ移植して欲し

いと思います。むろん、資本主義ダイナミズム(活力)を残したいという、〔人間の巣〕

おいてですがね...」

「はい...」夏美がうなづいた。「そのあたりが、難しいのかしら?」

「いや...価値観がシフトして行くのであれば、それほど難しくはないでしょう。現在は、

必要以上の便利さが、“これでもか!”と供給されています。したがって、それに反発

る人々は、“物質的な豊かさ”から、“精神的な豊かさ”への回帰が始まっていますから」

「はい、」

「ともかく、“脱・車社会”です。また、航空・輸送も、船舶・輸送に切り替えて行くことも必

要でしょう。これだけでも、地球はぐんと広くなります。既存の利害対立はさまざまあると

思いますが、パラダイムが大きく動き始めています。そのための準備を、しておいて欲し

いと思います」

「はい...」響子が、うなづいた。「資本の蓄積による支配力が...消えて行くことにな

るわけですね、」

既得権のある者は、それを失っていくということになりますね...しかし、自然界を眺め

れば、そうした既得権を持って生まれて来る生物などはいないわけです。生まれた時

は、みな平等なのが一番いいわけです...

  したがって、そういうことになると、家族というものも大きな変動が予想されます。人々

は家族以上に、〔人間の巣〕に依拠して生きて行くことになるのかも知れません...ま

あ、それも、多様性・複雑化の中で...様々な形態が考えられ、試されて行くことになり

ます...」

「はい、そうですね...」響子がうなづいた。

 

  〔4〕 文明の第3ステージ/意識・情報革命の視点 

    index.1102.1.jpg (3137 バイト)         

「さて...」高杉が言った。「次は...“文明の第3ステージ/意識・情報革命の視点”

ということですか?」高杉が聞いた。

「あ、はい...」響子が、モニターを見てうなづいた。「以前にも、少し考察したテーマで

すが、ここでも再度お願いします...何度も考察が必要なテーマですから、」

  高杉が無言でうなづき、自分のモニターを操作した。そして、しばらく自分の専用回線

のデータを眺めていた。

「ええと...」高杉が、顔を上げた。「うーむ...

  人類は...そもそも、生態系を超越して存在することはできません...“36億年の

彼”から離脱することは...長時間/長期間に及ぶと、生存/存続は不可能と思われ

ます...そのリンクが切れるということは...おそらく“死”を意味します...

  そのリンクが切れると、“生物/命”は、単なる有機物の塊になるということです...

これが“36億年の彼”という、<ニュー・パラダイム仮説>の側面になります...

  科学技術という手法/言語的亜空間に展開した技法では...原理的に、超越的座

には到達しするのは、おそらく不可能ではないでしょうか...つまり、人間はこの生態

系/リアリティーを離れて、仮想空間/バーチャル空間では存続できないという事です。

この世“超媒体”である、“生物/命”本質の1面を示していると思います...」

「はい...」響子がうなづいた。

「ええ...

  この地球生命圏の...生命場/ガイア・フィールド”と呼ぶべきものが、どの程度ま

で及ぶのかは分りません...天体的な地球圏なのか、太陽系空間なのか...あるい

は、未知の原理が介在し、時空間的なスケールを越えているのか...非常に難しい推

理になります。

  ボス(岡田)『小説/人原理空間』は、そのあたりをテーマとした空想・理論科学小

説のようですね...」

「はい...」響子がうなづいた。「ええ...そちらの『小説』の方も、読みやすいように、

文章の形式を統一的に整えようと思っているのですが、時間がありません...申し訳ご

ざいません。そのうちに、時間を見つけて整理しようと思います」

「さて...」高杉が、モニターに目を落とした。「私たちは、“生物/命”というものを、

することはできます。殺すことは、容易にできます。

  しかし、“たった1個の細胞”すらも、真に創出することは実現していません。沼など

に、ひとりでに湧き出てくるようなミジンコでさえも...さて、この“命”を最初から組み立

てるとなると、およそ絶望的なのです...また、一度死んだものを、生き返らせることも

できません...まさに、不可逆的なのです...これは、何故なのか...

  DNAを解読し、タンパク質糖鎖を解析し、部品としては全て分かって来ていても、

“命”を吹き込むことは実現していないのです...これは、何故なのでしょうか?

  これはどうも...リアリティーである“命”を、名詞として分断する瞬間において...そ

のつど、“全体性の何者か”が、失われて行く気配です...“命”の本質の、“最も大切

者か”が、分断によって失われて行くようなのです...カオスから、“命”分離する

ことも...すでにその時点で、“何者か”が失われているようです...」

“36億年の彼”の概念を使えば...」響子が言った。「“36億年の彼”とのリンク

切れるということになるわけですね?」

「そうですねえ...

  つまり、そこが...物理空間/...“言語的亜空間・座標”の中で組み立てられた

システムと...眼前するリアリティーに存在している、“命”との違いのように思いま

す...眼前するリアリティーと、人類文明が構築している“言語的亜空間世界”とのズレ

なのでしょうか...まさにそのズレが、有機物の塊に、“命”を吹き込むことを拒んでいる

のかも知れません...物理空間には、“心の領域”が欠落していますから...

「はい...」

「また、そのズレが...より微細な学問領域の、量子力学に析出して来ているのではな

いでしょうか...量子力学では、この世観測者の座標系として、“主体性/参与者”

を導入しているわけですが、非常に奇妙な風景が様々な形で顕在化しています...

  例えば...前にも説明しましたが...“光”というものは、主体“波”と思いこんで

観察すれば、確かに波動性が観察されます...そして、主体“粒子”と思いこんで観

察すれば、粒子性が観察されるわけですねえ...つまり、これが、リアリティー/カオス

(混沌)の、“人間的切り口”であり、“ストーリイの主体的な編集”になるわけです...

  もちろん、そこに法則性があるわけですね...現代物理学は、一般相対性理論(重力

理論)量子力学ダブルスタンダードとなっていますが...矛盾は山積している様子で

す。“標準理論”“重力理論”の統合も研究されているわけですが、非常に難しいようで

す...」

“ひも理論”などですね...」

「そうです...色々ありますが、最も有力なのが“ひも理論”のようです。しかし、『日経

サイエンス』の論文などを読んでも、実際の所は分りませんね...部外者には難しいよ

うです...」

「はい...」響子が、口元に微笑を浮かべ、うなづいた。

「しかし...今、より大きな問題が押し寄せて来ています...

  “物の領域”“心の領域”の、統合が始まるということです...ダブルスタンダード

限界も、あるいはこうした流れの中で解決されて行くのでしょうか...しかし、こっちの方

はさらに一筋縄ではいきません。いずれにしても、“文明の第3ステージ/意識・情報革

命”の進展を待つしかないのかも知れません...まあ、門外漢の私が、どうこう言える

立場にはありませんがね...」

「はい...」響子が、まばたきした。

「うーむ...くり返しますが...

  リアリティーにおいては...“全体”とはつまり...機械のような“部分の集合体”

はないということですねえ...“全体”とは、部分局所性の存在しない、カオス/巨大

な全体世界なのでしょう...私たちはそこに、“ストーリイの主体的な編集”を試みてい

るわけです...

  “科学における最も深遠な発見”と言われる【ベルの定理】では...数学的に、部分

や局所性の概念を否定しています...このことを、数学的に証明しているようです。私

は専門家ではないので、実際にそれがどのようなことを証明しているのかは知りません

がね...

  ただ、【ベルの定理】では、“局所原因の原理”が間違いであることを示しても、それ

“どのように間違っているか”を、示してはいないようです...まあ、こうした事例は、

よくあることなのでしょう...」

「はい...」

「 この【ベルの定理】というのは、どうも難解なようです...そのために、一般的にもあ

まり受け入れられてはいないようですね...現代の科学技術は、ほとんどの場合は、旧

来の還元主義的機械論で進展して来ているようです。まあ、ニュートン力学でも、近似値

には使えるわけですからねえ...」

「はい...」響子が、髪を揺らした。

「しかし...

  心霊現象を説明するのには、この【ベルの定理】はなかなか便利なようです...オカ

ルト的という事で、いわゆる一般的な科学者の受けは悪いようですがね。しかし、“物の

領域”“心の領域”の統合には、必要なものかも知れません...

  “文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代には、この【ベルの定理】が脚光を

浴びて来ることになるのかも知れません...つまり、量子情報科学の中心的テーマで

ある、“量子もつれ”のような、非局所性の現象です...まあ、我々は、野次馬的に眺め

ているわけですがね...」

「うーん...」響子が、楽しそうに頭をかしげた。「どういう事になるのでしょうか...いず

れ、そうした時代が来るわけですね...でも、それは、どのようなものなのでしょうか?」

「そうですねえ...

  すでに“量子もつれ”は、量子コンピューターデバイスの中に組み込まれて行くよう

です。これが実現すると、現在使われているスーパー・コンピューターでさえ、玩具のレ

ベルになると聞いています。そのぐらいのことしか、まだ私の耳には入って来ていません

ねえ...

  まあ...スローフード/スローライフを目指す私たちの日常生活レベルでは、関係の

無いものでしょう。しかし、“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の場においては、

子コンピューター大きな原動力になるものと、私は期待しています。そうした時代は、

もうそこまで来ているということでしょう...」

「はい...現在分かっていることは...

  最初から、“言語的亜空間・座標”の中で組み立てられた機械と...リアリティーに存

在している“生物/命”とは、本質的に違う...という事ですね?」

「うーむ...

  その確認を求められても...私などに、断定のできる問題ではありません...ともか

く、非常に深遠であり、微妙で、難しい課題です。したがって...そうした推理も、可能

なのではないかということです」

「はい...高杉さんの推理ということですね?」

「そうです...

  どうも...生物体というのは、“基本的に違うもの”のようですねえ...私の推理する

所では...それは、“36億年の彼”リンクしている存在だからなのではないかという

ことです。つまり、この世認識主体と、リンクしている存在だからかも知れません...」

「うーん...」響子が、細い指を組んだ。

「もちろん...

  “この世の全て”は...“認識主体の鏡”に映し出された世界です。したがって、全て

認識主体リンクしているのは当然なのですが...どうも、“命”というのは別の地位

があるようですねえ...“生物/命”...それと、“意識”ですかね...

  いや...“意識”の方こそが...“生物/命”複雑性を支配しているのではないか

と、私は推理しています...人体60兆個に及ぶ全細胞を、デジタル的コンピュータ

ー処理できるとは思えません。あまりにも深遠複雑なのです...コンピューターでは、

計算時間がすぐに爆発してしまいます...およそ不可能でしょう...

  生物体の発生.../受精卵からの発生における後成学的光景...そのオーケスト

のような遺伝子発現の風景を...わずかな受精卵細胞で、デジタル的に並列処理

扱うとなると絶望的なのです。私にはそこに、“36億年の彼”リンクしている、“意識”

が関与しているとしか思い当たりませんねえ...

  では...その“意識の本質”はどこからやって来たのかとなると...まさにです。

“意識”この世と不可分の...“主体的認識/認識の鏡”です。それゆえに、“この世

の最も基本的なもの”なのでしょう...まさに、“神に属するもの”なのかも知れません。

  “生物体”とは...“命”“意識”“この世”の、“超媒体”になっています...ニワト

リが先か、卵が先かということですが...この場合は、“意識”がの方が先行しているの

ではないかと思います。それゆえに...“この世の最も基本的なも”と考えるわけです」

「うーん...」響子が、両手を組み直した。「それは...高杉さんの、“勘”でしょうか?」

「そうですね...

  現在、《神と霊魂の融合》のページを開始した所ですが...担当綾部沙織さん

力を借りて、少しずつでも、解明・整理して行きたいと考えています...それで、どうなる

というものでもありませんが...この世というものを、より深く理解できるでしょう」

「はい...」響子が、深い眼差しで、宙を見つめた。

「それも...1つの“覚醒”につながります...」

「はい...高杉さんの言われている、【新しい生命観】になりますね...」

「まあ...全体として、まだ“ぼやけている概念”です...しかし、せっかくこの世に生ま

れて来たわけですから、私なりの考察を発展させて行くつもりです」

「はい...是非、お願いしますわ」

「これは、これから本格的な解明が進んで行くと思うのですが...

  いわゆる、“物の領域”“心の領域”の統合という課題になります...“人間意識”

上に結晶化する、“物”“心”の統合です...いずれも、“主体的/認識の鏡”の上で

の作業になるので...それそのものが、“夢の世界”なのかも知れないわけです...

  そして、それは、“ストーリイの原型/本流”とも関連しています...まあ、発達心理

学的なアプローチもあるわけですが...“意識の本質”については、まさに謎の世界

すねえ...」

「はい、」

「そこは、私たちにとっては...別種の、“魔物の巣窟”なのかも知れません...また、

死後地獄界や、涅槃(ねはん)が、底知れずに広がっているのかも知れません...」

“広大な心の領域”ですね...それは、今話題になっている、認知科学の領域とも重

なって来るのかしら...?」

「そうですねえ...ともかく...何かが、膨大な領域に横たわっているようです...」

「うーん...

  “新型インフルエンザ”などに対しても...そうした、“文明の第3ステージ/意識・

報革命”の視点が...必要になって来るということでしょうか?」

「まあ...

  正鵠(せいこく)を射たものであるならば...という条件付きですが...そうした視点も、

不可欠の要素になってくるでしょう。本来、新理論とはそういうものでしょう...“ストーリ

の原型/本流”がどのようになっているかという事は、非常に重大な問題です...

  “歴史はくり返す”とはよく言われますが、理論的に分かってくれば、コントロールも可

能でしょう。“新型インフルエンザ”を監視していたら、“新型肺炎・SARS”が飛び出して

きたというのも...それは響子さんの言われるように、明確な“警告メッセージ”なのか

も知れません。そうした構造が、存在するの感じます...

  この世“ストーリイの原型/本流”というものが存在し...それが統計的に解析

れて、その実態が見えてくれば...そうした事象の位置づけも、はっきりとして来るのか

も知れません」

「はい、」

“占星術”“血液的な性格判定”...“共時性/偶然の一致”なども含め...現在は

オカルト的な地位にあるものも...何らかの真実の結晶化であり...その析出なので

す。今後は、“死後の地図/死後のストーリイ”も、より明確なものが、出来上がってくる

のではないでしょうか...」

「ふーん...」響子が、頭を斜めにした。

人間の意識というものは、面白いですねえ...

  実に、バカバカしい事を考えたりするものです。自分にも説明がつかず、人にも恥ず

かしくて説明できないようなことも多々あるようです。心がキレてしまうような事も、最近で

は多いですね。しかし、それらもひっくるめて、“意識”の上に析出したものは、過不足の

ない真実なのでしょう。

  その馬鹿らしさもまた、“意識”バグ(虫/プログラムにおける誤り)として、真実なのです。壮

大な“ストーリイの原型/本流”の中の、小さな逆流の1つ泡の1つなのです...」

「塾長も、バグはあるのでしょうか?」夏美が聞いた。

「もちろん、あります...

  そうしたバクを楽しむことはありますね...面白いですねえ...人というものは、実に

バカらしいことを考えるものです...そのために失敗したり、をかいたり...小さな欲

張りで、大きな損をしたり...人に非難されたり...しかし、それが、人生の楽しさでも

あるのでしょう...そういう風に、前向きに考えるのがいいようですね...」

「うーん...」夏美が言った。「小さな間違いは、バグなのですね?」

「そうとしか、説明ができないでしょう...」

「でも、犯罪となると、別ということですね?」

「そうですね...大きな実害があるようだと、それはバグではすまなくなります。また、

治家のように、大きな影響力のある人は、それを自覚した方がいいですね」

「そうですよね、」

「まあ...」高杉が、椅子の背に体を起こした。「総じて...

  オカルト的な問題は、科学や学問を越えた領域にあります。しかし、多くの人々が、

常に興味を持っている課題でもありますね...こうした私の視点は、全て妄想と言って

しまえば、そうなのかも知れません。

  しかし、いずれ、“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代に、本格的に突入す

るわけです。実際に、そうした解明も進んで来るでしょう。この世に析出した物事につい

ては、私たちの行動も含めて、全てが“真実の結晶”なのだということです...“真実の

析出”なのです...そして、“過不足のない関係性のストーリイ”として、不可分な全体

なのです...」

「はい...」響子がうなづいた。

「まあ、今の所は...“頭の中で考えるのは自由だ”とでも言っておきましょうか...」

「そうですね...

  シンクタンク=赤い彗星関三郎さんも言っていましたわ...“考えるのは

自由”だと...彼は、塾長とよく似ていらっしゃいますわ。この間、少しお話しする機会

がありましたけど、」

「うーむ...

  《脱・原発へ舵を切るの中の、《ミスの考察》で...確か、そんなことを言ってい

ましたねえ...私も、目を通しました...まあ、後に続く人が出てきたという事は、嬉し

いことです」

「はい」

        <ここまでのまとめ・・・> 

                      

  響子が、キイボードを叩き、モニターに目を通した。

「ええ...」響子が言った。「話を整理して置きたいと思います...

  あ、これは...分割する以前のページ、《感染症圧力 VS 戦略的対策》の続きにな

ります...そういう事情で、データが混在しています...申し訳ございません...

  ええ、そういうわけで...感染症の克服には、戦略的な視野が必要だということです

ね。“文明の折り返し”が、必須だという事ですね...また、“スローフード/スローライ

フの潮流”世界的展開には、“万能型・防護力”/〔人間の巣〕が必要になるという事

ですね...そしてまた、その延長線上には、〔極楽浄土/パラダイス〕可能性が、見

えて来たということですね...」

「まあ、そですねえ...

  そして、全てが連動している課題だということでしょう...“強毒性/高病原性”“新

型インフルエンザ”も含め...人類に対する感染症圧力の増大には、背後に生態系の

治癒力/ホメオスタシス(恒常性)が起動しているかも知れないということです...

  したがって、グローバル化の抑制”、そして“人口の抑制”こそが、根本的解決策

だということです...現在、日本政府政策的に推進している、“少子化対策”や、“経

済のグローバル化推進策は、まさに逆効果となります。そろそろ、“文明の折り返し”

ということで、“大きく舵を切る時”が来ているということでしょう...

  そこで...カギになるのが、〔人間の巣〕の展開です。これは、“文明の強固な防波

堤”になり得るということです...《文明の半・地下都市空間へのシフト》です...つま

り、〔人間の巣のパラダイム〕が、【全ての問題解決の方程式】になっているということ

でしょう」

「はい、」響子が、コクリとうなづいた。

「この方向に...

  どうやら、“ストーリイの原型/本流”がありそうです...まあ、そうした“ストーリイの

強い本流”が、あるとしたらですがね...いずれにしても、要石(かなめいし)/キイ・ストー

が見つかったということです...」

「はい...」響子が、姿勢を正した。「予測・ワクチンについては、どうでしょうか?」

「うーむ...

  高度な遺伝子工学/高度な医療的手段で...ワクチン予測し、感染症各個撃破

して行く戦術的・対抗手段では...長期的に見れば、非常にリスクの高いものになりま

す。大変な努力にもかかわらず、やがて大被害をこうむり、敗北するのは確実でしょう。

  それが、戦略戦術の違いです。戦略が正しいものであって、戦術レベルの努力が報

われます。したがって、戦略は絶対に間違ってはいけないものなのです。可能な限り広

い視野に立っての、確固たる総合的判断が求められます。現在の日本の政治には、そ

深慮遠望の視野が欠落しています。

  安易な考えで、“少子化対策”などを、戦略化してはいけないのです...それこそ“鼎

(かなえ)の軽重”が問われます...また、それに安易に乗る、政党政治マスコミも、“鼎

の軽るさ”を露呈しています...

  まあ...政治行政マスコミともども...猛烈なモラルハザードに陥っているわけで

すから...いまさら、“鼎の軽重”がどうこうという段階ではないですがね...しかし、だ

からと言って、放置しておける問題ではありません。日本丸が、大シケの中で難破してし

まいます...」

「はい、」響子が、うなづいた。「ええと...

  〔人間の巣〕は、そうした壮大なモラルハザードも含め...現在ある、【全ての問題

決の方程式】になっているということですが...“少子化対策”も、この方程式】

導入できるわけですね?」

「そうです...

  この【方程式】に導入して、正しい回答の得られる課題でしょう。閉塞状況に陥ってい

人類文明が、全てにおいて再編成されて行く手段が、〔人間の巣のパラダイム〕であ

り...それが、“間違ったものではない!”ことの、証明なのではないでしょうか」

「はい!」

「ともかく...

  文明“大艱難時代”に突入して行くに当たって...非常に安定指の高“社会

の器”に到達したと思っています...また、その延長線上には、〔極楽浄土〕という新た

な文明展開が、垣間見えて来たということです」

「はい...」響子がうなづいた。「では次に...その〔極楽浄土のインフラ建設〕につい

て、お伺いしたいと思います」

「その前に...」高杉が、両手を組んだ。「ひとこと、言っておきましょう」

「あ、はい...」

「これまで言ってきた、〔極楽浄土〕というのは...

  必ずしも、宗教的な意味で言ってきたわけではありません。どのような社会体制でも、

そこが〔浄土〕であることを願ってきました。例えば、そこが芸術の浄土〕でも、〔学問

の浄土〕でも、〔スポーツの浄土〕であってもいいわけですね...あるいは、大学や、

物館〔浄土〕であってもいいわけです。

  そうした中で...今度は特に、〔宗教的な浄土〕というものを考察してみようというこ

とです。〔極楽浄土〕とは、もともと宗教から出発した〔理想郷〕のことです...その

の側面を眺めてみましょう...まあそうは言っても、宗教内面的なことではありませ

ん。その器の話になります...」

「はい。そのような、位置づけということですね」

 

  〔5〕 宗教における第4の道 ・・・   

           〔極楽浄土の、インフラ建設への道〕 

             

 

「ええ...」響子が言った。「それでは、いよいよ、〔極楽浄土のインフラ建設への道〕

ということですね...高杉さん、お願いします」

「うーむ...」高杉が、顎に手をやり、しばらく自分のモニターを眺めていた。シャム猫の

チャッピーが、高杉の脚に頭を擦りつけた。

「かつて...」と、高杉がゆっくりと顔を上げた。「〔理想郷・・・/極楽浄土・・・/パラ

ダイス・・・〕は...様々な宗教で説かれ...それは、“自らの心の中”にあるとされま

した...“信仰の道”...“覚醒/悟り/智慧(ちえ)の道”...“儀礼道”...》、この

“3つの道”が...様々な宗教で、それぞれ独特の強弱をもって実践されて来ました」

「はい...」

宗教は、まさに人類文明の大黒柱なのです...

  何故か人類は...それぞれの文明において、“神”渇望してきたのです...どの

明社会にも、“神”は存在してきたのです...これは“ストーリイの原型/本流”に、“神

の存在”というものが、明確に存在しているからかも知れません」

「うーん...はい...」

「ともかく...

  ホモサピエンスは...“信仰”“覚醒”“儀礼”“3つの方法”で、〔浄土世界〕とい

う頂上を求め...それぞれに、歩み始めたわけです...それが、“人類救済史ストーリ

イ”となり...“ストーリイの原型/本流”になって来たのかも知れません...

  しかし今...それら“3つのアプローチ”に加えて...いよいよ、“宗教における第4の

道・・・理想郷のインフラ建設の道”が、具体的に開かれて来たと思います...〔理想郷

/極楽浄土/パラダイス〕という...現実の“浄土建設の道”が...物理空間/“言

語的・亜空間座標”において、ようやくその可能性が見えて来たということでしょう。これ

は、人類霊的進化に、1つのステージ・アップをもたらすかも知れません...」

「はい...」響子が、唇を真一文字に結んで、うなづいた。

〔人間の巣〕は...大いにその可能性を広げる建造物であり...地球環境システム

であり...生態系と同調している世界的システムです...〔人間の巣パラダイム〕は、

地球に〔極楽浄土〕を招来する可能性を秘めています」

「はい...」響子が、顔を輝かせた。「具体的な、浄土世界〕の建設が開始されるわけ

ですね...かつて、夢にまで見た...」

「そうですねえ...

  これは知的生命体の、“霊的進化の方向性”を明示しているのかも知れません...

生命潮流/・・・多様性・複雑化ベクトルバイアスのかかった生態系では...単一の

宗教をもって、均一的に布教を完結するのは、およそ不可能なのでしょう...それは、こ

れまでの経験/歴史から、しだいに分かって来ています。

  単一支配/単一布教は...多様性・複雑化に反し、単調な風景になるからです。そ

こで、宗教においても...“多様性・複雑化を積極的に導入し、エントロピーを排泄する

方法”が、検討されてもいいのではないか...というのが、〔人間の巣パラダイム〕から

導き出されて来たわけです...

  まあ、“芯のしっかりとした、非常にダイナミックな宗教”になりますかねえ...私自身

は、“智慧の道”と言われる原始仏教/禅的なこと以外は、あまり知りませんが...む

ろん、これに限る必要はありません...」

「はい...〔人間の巣〕では、その方向性を試すという事になりますね...?」

「そうですねえ...

  まあ...私たちには、両手にあまる課題だという事は、重々承知していますが...と

もかく、この方向へ、ブラリと歩き出してみようということです。既存の、“絶対的な聖典”

に反するような問題も出て来ますが、宗教的に無色な私たちだからこそ、可能な作業な

のかも知れません...

  考古学的な地球の歴史と、『聖書の創世記』などの矛盾点も指摘される時代になり

ました。しかし、キリスト教においては、そうした事を乗り越えてきた歴史もあるわけです

ね...ヨーロッパ中世“天動説”から、コペルニクスガリレオの、“地動説”パラダ

イムシフトしてきた歴史もあるわけです...」

「そうですね...」響子がうなづいた。「そうした流れが、やがてルネッサンスへ発展して

きたわけですね...現在、まさにそのルネッサンスが求められている時代ですわ、」

「うーむ、そうですねえ...

  さて、ともかく具体的には...教義のしっかりとした大宗教が基盤になると思います。

様々な宗教があっていいと思います。ここから、<インフラ整備から入る極楽浄土>

展開することになります。

  <インフラ整備から入る極楽浄土>は...〔人間の巣〕の展開とともに...人類

全体をも救済して行く、大きな船になります...仏教で言えば、自力本願小乗仏教

いうよりも...全ての民衆を乗せて救済して行く、大乗仏教大きな船です...

  ただし...〔人間の巣の単位〕での...小乗仏教的な、“適正な大きさの船”という

ことです...この“適正な大きさの船”ということが、非常に大事になります...」

「はい...“大き過ぎない”ということですね...細胞のように、独立的であるということ

ですね...そして、多細胞生物のように、全体として正常に機能して行けばいいわけで

すね?」

「そういうことです...

  個人的に、“覚醒”/〔・・・浄土世界〕に到達するには、非常な努力を必要とします。

あらゆる宗教においても、“覚醒”にまで到達するのは、ごく一握りの人々でしょう...だ

からこそ、全ての民衆を乗せて救済して行く、大乗仏教的大きな船が必要だったので

す。

  それが、つまり...“信仰の道”です...しかし、巨大で統一的〔浄土世界〕となる

と、多様性・複雑化の作用で、容易には実現しなかったわけです」

「はい...歴史の示す所ですね...」

「そうです...

  “適正な規模/適正な大きさの船”というのは、これからの研究課題になりますが、私

たちはとりあえず、〔人間の巣〕ということに決めてみたわけです。したがって、非常に

イデンティティーの強い、1つの社会単位を想定してみたわけです...

  そこで...<極楽浄土のインフラ整備>から...“霊的進化”を遂行するための、

社会的器を建設しようというものです...」

「はい...

  閉鎖的ではなく...アイデンティティーの強い...解放系システムの社会単位という

ことですね...これは、交通が発達する以前には、世界中に何処にでもあった社会風

ですわ...そこに、〔自給自足型/未来型都市/人間の巣〕によって、<極楽

土のインフラ整備>を展開してみようということですね?」

「その通りです。まあ、難しく考えることはないのです」

「はい...

  ただ、私たちは、そうした時代を、すでに通り過ぎてしまったという事が問題なのです

ね...戦争や、覇権競争に明け暮れていていて...」

「そうです...

  歴史上の、“世界のリーダー”たちは、もっと早くにそのことに気付くべきだったので

す。その足元に存在する、〔浄土世界の建設〕に歩み出すべきだったのです...地球

がここまで荒廃し、豊かさ/欲望の原理で、世界がグローバル化してしまう前にです」

「はい...」

                  house1.s3.jpg (1834 バイト)  

「先ほども言ったように...

  “存在の覚醒/悟り”というものは...この世のありとあらゆる存在を、<浄化>

て行きます...人・動物も、草・木も、海・山も、それそのものが、あるがままの姿で、

<浄化>されて行きます...

  〔極楽浄土〕とは...そういう<清浄な精神世界>でもあるのです...<魂が浄

化されて行く世界>でもあるのです...その方向が、まさに文明種族/ホモサピエン

に課せられた使命であり...次なる“霊的進化”なのではないでしょうか...初めて、

文明に到達したということは、そういう事なのでしょう...」

「はい...」響子が、うなづいた。「そうですね...生命潮流で、その進化の方向性が試

されているかも知れないということですね...それが、《神と霊魂の融合》ということで

しょうか...?」

「そうですね...そういう方向だと思います...

  この、〔人間の巣/未来型都市〕・・・〔浄土世界〕は、おそらく私たちが、遠い子孫

まで残していける、最大の財産となるでしょう...これを基盤にし、子孫の手によって、

“文明の第3ステージ”が進展して行くでしょう...それは、幾世紀まで続くか分かりませ

んが、遠い未来への道程になります...

  そして、私たちもまた...“36億年の彼”として...“時空間に拡大する永遠の命”

として...この“意味の世界”を、目撃して行くことになります...人間としてではなく、

“36億年の彼”として、確実に目撃して行くことになるでしょう...」

「はい...私たちも、それを目撃できるわけですね...?」

「そうです...

  おそらく、その時は...“個的な意識の渦”は消滅しています...“神と霊魂の融合”

した形で、“自らの存在を目撃”するのかも知れません...」

「はい...それは、どのようなものなのでしょうか?」

「結局、私たちは...

  まさに現在...その雛型(ひながた)の中で...まさに、その“今の深淵”を目撃してい

るのかも知れませんねえ...それは、基本的には...今現在目撃している世界と、同

じものなのかも知れません...さらに広大な視野が開けているでしょうが...」

「はい...」

「まさに、“今の深淵”の謎ですねえ...あらゆる形態というものが消え...ただ“聖な

る光”となり...が、光り自身を目撃している姿が浮かびます...」

「うーん...」響子が、顎を上げ、宙を見つめた。「はい...

  ともかく...そうした、次のステップの、〔理想郷〕を残してやれる所まで...人類文

は、すでに到達しているということですね...?」

「ま、そういうことになりますねえ...」

 

   <極楽浄土を・・・永続させるシステムの構築   

                 

「それで、高杉さん...この〔浄土世界〕は、長く持続できるものなのでしょうか?」

「さあ...そこが重要な所です...

  理想とする国家都市...あるいは様々な宗教様々な組織まで含めてですが、そ

れを創出することは比較的容易なのです。しかし、それを“維持・存続”させて行くことの

方が、はるかに難しいのです...“永続”させて行くとなると、およそ不可能でした...

過去においてはです...」

「では、その可能性はあるということでしょうか?」

「あります...大いにあります...

  人類の歴史とは...ある意味では、失敗の記録と言えるのかも知れません...繁栄

の裏返しとして、必ず衰退があったからです。それが、いかに良いものであっても、必ず

しも長続きはしなかったからです...“永遠に存続”するものなどは、もともと無いわけ

ですが...それにしても、人類文明の歴史は、混乱悲劇が支配的でした...」

“形あるものは必ず崩壊する”...というわけですね、」

「うーむ...そうなのです...

  歴史上でも、数々の革命が成就されてきましたし、理想とする国家社会が作られて

も来ました...国際平和機関としても、国際連盟が創設され、国際連合(現在の国連)が創

設されて来たわけです...しかし、理想の社会は、それほど長くは維持できませんでし

た...国連機関は、現在でも、それで四苦八苦しています...」

「はい、」

「全てがダイナミックに変動し、流動して行く中で...

  形あるものは容易に崩壊し、また変質して行きます...現在の国連にしても、これか

ら到来する“大艱難の時代”に、十分に対応できるものではありません...もっと強力

な、“世界政府/地球政府”のような...利害を超越した人類共通組織が必要です」

「はい、」響子がうなづいた。「そうですね...」

 

「さて...しかし...

  〔人間の巣/未来型都市〕・・・〔浄土世界〕は、何としても長く維持し、それを発展

せて行かなければなりません...生態系と同調した“ダイナミックな解放系システム”

して、〔浄土世界〕長く機能させて行くことが、至上命題となります...

  理想郷〕が、長く機能して行ってこその...〔極楽浄土〕なのです...また、1部の

人のみの<極楽>であっても、それは浄土>とは言えません。他の生物種までも含

めて、全てが浄化>されていることが条件になります...」

「はい...それが、可能なのでしょうか...?」

可能性はあります...

  唯一...“生物体/命”が...この生態系空間の中で、“維持・存続”を完遂している

からです...さらにまた、進化しているからです...私たちには、まさに眼前に、“究極

の手本”があるということです...」

「うーん...

  “生物体/命”は、そうかも知れませんね...ダイナミックに変動している生態系の中

で、個体を、“維持・存続”していますわ...何万年も、何百万年も...」

「そうです...

  私たちは、〔浄土世界〕“永続性”を...生物体システム“個体の維持/存続”

から学ぶべきでしょう...生物体システムというのは、この生態系空間の中で、非常に

安定しています。完璧に、“システムの維持・存続”を完遂させています。さらにその上

で、“進化まで内包しているシステム”なのです...まさに、“これを学べ”と、指摘され

ているのです...」

「はい...」響子が、髪を揺らした。「また、それ以外に...“学ぶべきもの”が、ないと

も言えますね...」

「そうですねえ...

  これほどの深遠なシステムは...おそらく、“36億年の彼”と、リンクしているからこ

そ可能なのでしょう。私たちには、そこまでは無理でしょうが、その基本システムは、しっ

かりと学び取ることがでるわけです...」

「はい...」

生物体システムの、“個体の維持/存続”の方法を、<浄土世界・システム>に取り

入れて行くことは可能でしょう...

  いかに...芸術的評価の高い陶磁器を完成させても、それはやがては壊れてしまい

ます...しかし、生物体というのは、非常に柔軟で、自己修復機能があり、“個体の維

持/存続”を完遂させているのです。またその上で、内なる“命の本質”は、次世代の個

にまで確実に引き継いで行きます...私たちが欲しいのは、まさにこのシステムなの

です」

「はい、」

“生物体/命”は...

  営々と継続され...“36億年の時空間”にまで拡大し...過去・現在・未来と引き

継がれています。つまり、“命の本質”は、壊れてはいないわけです。部分的に、アポト

ーシス(プログラム細胞死)壊死して行きますが、“命の本質”は脈々と保たれているわけで

す...

  したがって、“命の本質”不死であり...これまで、“真の意味での死”は経験して

いないのでしょう...それが、“36億年の彼”の姿なのです...」

「うーん...」

「私たちの眼前には...

  まさに、これほどの完璧なシステムが開示されているわけです...まず、このことを、

しっかりと学ぶべきでしょう...また、私たちには、その権利義務とがあります...と

いうのは、私たちもまた、この生態系システム“主体/参与者”なのですから...」

「そうですね...私たち自身も、そうした膨大な生態系システムの、“主体/参与者”

のですね...」

「うーむ...そうなのです...

  まずは素直に...生物体システム“個体の維持/存続”の方法を、〔人間の巣〕

取り入れて行くということでしょう...それが、生態系システムと同調する、“維持・存

続”の、唯一の方法なのでしょう...

  それがうまく機能した時...結果として、それが〔極楽浄土〕になるということでしょ

う...それが、人類“霊的進化”に道を開きます...」

「はい...それでは...具体的に、どうしたらいいのでしょうか?」

 

「その前に...少し、そのシステムの背景を説明しておきましょう...

  これまでにも説明していますが...このエントロピー増大宇宙においては...エント

ロピー増大(熱力学の第2法則)に拮抗して、システムや構造を維持し...あるいは、発展・進

させて行くことのできるのは...人類文明“言語的・亜空間座標”で観測・確認して

いる限りにおいては...“たった1つの方法”だけなのです。

  それが、まさに“生物体/命”に見れらるような...外部からエネルギー食物等

取り入れ...それでダイナミックに活動し...エントロピーを排泄して行くという方法な

のです...簡単に言ってしまえば、“食物を摂取し、呼吸し、排便しているシステム”

すね。

  全ての生物体は、微生物も含めて...この方法で、壮大なエントロピー圧力拮抗

ているのです...これは、つまり、“新陳代謝システム”ということですね...これは、実

にうまく機能している、非常にバランスの良いシステムなのです。これ以上のものを作る

のは、おそらく不可能なのでしょう...」

「はい、」

“命”最小単位は、細胞と言われています...

  呼吸していないウイルスの話は、この際別にしておきましょう...機動性・遺伝子

ようなウイルスは、生物と無生物の中間的な座標に位置しています...生物体に依存

して存在しているのです」

「そうですね...」響子が、頭を揺らした。

「さて...」高杉が、脚を組み上げた。「人類史上で、うまくいっている組織というのは、

外部から有能な人材をどんどん登用し、エントロピーを排泄している組織です...それ

が、周囲の無能な人々重職につかせるようになると...エントロピーが蓄積して行くわ

けです...

  まあ、典型的な例が、かつての王国や、その軍事組織などに見われるわけです。現

代社会では、行政組織企業組織ですね...そうした組織システムは、呼吸・新陳

代謝をしていなければ、やがて壊死が始まります...

  つまり...〔人間の巣〕・・・〔極楽浄土〕においても...システム呼吸・新陳代謝

が非常に重要になって来るということです...また、悪くなった部分は、その新陳代謝

のラインに乗せて、エントロピーとして排泄して行くということが、基本になります...」

「でも...」響子が、頬に手を当てた。「〔極楽浄土〕は...弱者をも含めて...全てを

救済して行くシステムではないでしょうか...不要なもの...弱者は...エントロピー

いうことでいいのでしょうか?」

「その通りです...いい指摘です...

  今、私が言ったのは...軍事組織行政組織、あるしは企業組織ような...目的完

遂型組織の場合です...生物体システムというのも、一種の目的完遂型システムなの

です。個体として、生存して行くためのシステムです...

  しかし、文明社会というような“存在の器”では...心地よく存在するこを、目的として

いるシステムです...当然、エントロピーの意味が、大きく異なって来ます...

  例えば、軍事組織精強であることが至上命題になります...ところが、家族では、

赤ん坊老人も、そこに存在することに本来の意味があります...そして、市町村など

には、弱者のための病院がありますね...それが、“存在の器”なのです...」

「そうですね...」

人類文明における、“存在の器/社会”では...

  医療の発達に代表されるように...弱者をも救済して行くことが、最大のテーマにな

ります。健常者も、病気怪我などで、容易に弱者に変わってしまいます。また、一定の

比率で、生まれながらの弱者も存在します。こういう人たちも、共に守っていこうというわ

けですね。

  つまり、こうした不安定/マイナス要因を克服するためにこそ、そもそも文明社会はあ

るわけです」

「はい...」

強者武力支配/経済支配のために...私たちは“存在の器/社会”を形成してい

るわけではありません。

  互いに助け合って、豊かな生活をするために、“存在の器/社会”を形成しているので

す...これまでは、多分に、支配者のための社会という傾向がありました。しかし、〔人

間の巣〕では、“文明の折り返し”で...明確に〔極楽浄土〕を目指しているわけです。

  支配者/支配階級があり、搾取が行われている社会では、<極楽>浄土

やってこないわけです...ただ、そうしたダイナミズムギャンブル性を求める人々は、

〔人間の巣の単位〕で、そうした〔理想郷〕を実現すればいいわけですね...否定する

つもりはありません...」

「うーん...そうですね...」

「それに...

  様々な意味での弱者は...“存在の器/社会”では、エントロピーではありません。

文明社会でのエントロピーは、“社会規範を破る人間”です。このことは、ハッキリとさせ

ておかなければならないでしょう...

  野生のような弱肉強食社会であれば、そもそも医療などは必要ないのです...仲間

同士で助け合い...共に生きて行くために...文明社会は形成されているのです...

〔極楽浄土〕においては、それがさらに他の生物種にも拡大されます...それを実現す

るために、知的生命体“霊的進化”があるのでしょう...」

「それを達成するために...脳が発達し、肥大化してきたわけでしょうか?」

「うーむ...そうですねえ...

  私は、そう理解しています...進化“外適応”というより、もっと大きな生命潮流

中で、それは準備されたのではないでしょうか...」

生命潮流ですか...

  “ストーリイの原型/本流”を越えて、まさに謎の領域ですわ...そこに、そのような

意図というものが、存在するのでしょうか?」

「さて...

  もし、意図というものがあったとして...それは“人間的側面/人間的加工編集”

よるものかも知れません...“人間的な臭い”がします...」

「そうですね...」響子が、口元を崩した。

 

「さて...」高杉が、モニターに目を移した。「ともかく、話を進めましょう...

  ええ...もともと、“存在の器/社会”においては...企業は...“豊かな社会を実

現するためのシステム”です。“存在の器/社会”を...水田のように利用したり、

また人々を、家畜のように弾圧したりするのは、本末転倒でしょう...

  経済至上主義の現状は、企業システムの方が、主権者/人間弾圧しています。こ

れでは、〔極楽浄土〕はやってこないですねえ...」

「はい...基本的な問題ということですね...

  ええ...ともかく...〔人間の巣〕・・・〔浄土世界〕においては...“新陳代謝システ

ム”を導入し...エントロピーを排泄して行くということですね。それが、生物体システム

のように...生態系空間においては、非常に安定して存続できるわけですね...」

「そうです...

  そして、私たち自身も、その生物体システム“主体/参与者”だと言うことです。つ

まり、〔人間の巣〕においては、これまでの“無機質的な社会の器”を、もう一歩進め、よ

生物体システムに近づけるということになります...

  実は、このことが、将来的には...“想像を絶するほど進化した形態”を、生み出すか

も知れないのです...まあ、とりあえずは、文明社会全体を、大きくステージ・アップする

ことになります...文明の器自身が、“生命体/命”のように進化する風景ですね...

  そして、そこに...〔極楽浄土/土世界〕というものが、垣間見えてくるということ

です...」

「やはり、その方向に...“霊的進化の方向”に...生命潮流の何らかの意図/意識

が存在するということかしら...?」

「まあ、私はそう考えています...」

  響子が、唇を結んでうなづいた。

               

「ええと...」高杉が言った。「脱線してしまったので...話を戻しましょうか...」

「あ、はい...」

「この...

  “外部からエネルギー等を取り入れ、エントロピーを排泄する方法”・・・“新陳代謝シス

テムは...システム論的には、宇宙構造化の進化/星の進化などにも当てはまりま

す。また、社会組織の維持・存続などにも当てはまります...

  先ほども言ったように...逆に、これ以外の方法では...どうも、エントロピー増大の

圧力には、うまく拮抗できないのでしょう...安定した構造組織システムというもの

永続させるには、唯一この方法しかないようです...まあ、他に何らかの基本的

方法が発見されたら、それはまぎれもなく、ビッグ・ニュースでしょう...」

「やがて崩壊し...最終的には、熱的平衡状態になるということですね、」

「そうです...まあ、私は専門家ではないので、詳しい事は分りませんがね...しか

し、どうも、大枠ではそういう事のようです...

  つまり...“新陳代謝”していない、いわゆる道具・機械、それから建造物などは...

いずれは、確実に崩壊して行くわけです...人間が作り出した膨大な都市の残骸

殿の遺跡なども、やがては土や砂に還って行くわけです...

  ところが...“生物体/命”は面白いですねえ...“新陳代謝システム”個体を維

している上に、さらに上位システムの新陳代謝で、“命の本質”次世代の個体へと、

大事にリレーして行くわけです...そして、途切れることがありません...

  “命のエキス”...その物質的側面とは違う“命の本質”のような...“システム・・・と

も/意識・・・とも”呼べるようなものが...眼前のリアリティーの、重要な構成要素/構

造材になっているようです。

  ここに、生命潮流があり、更なる進化につながっているようです...まさに、エントロピ

ー増大に拮抗する、非常に巧妙で安定したシステムが...“命のエキス”として存在し

ているのです...何故こんな構造が存在しているのか...これこそ、まさに“神の意

思/神の業”なのかも知れません...」

「うーん...」響子が肩を揺らした。「そうですね...」

生物体システムでは...

  “命の本質”は...その個体の殻を越え、次世代の個体リレーされます...それ

によって、“命の本質”リフレッシュし、確実に“維持・存続・進化して行くシステム

す...まさに、恐るべきシステムと言わなければなりません...これこそ、“神のなせる

業”なのでしょう」

「そうですね...」

“命の本質”は死ぬことなく...“36億年の時空間”に、現在も存続ています...

  この完璧な維持・存続システムを、〔浄土世界〕“永続性”として、導入して行くべき

だということです。これは、地球生命圏で頂点に立つ、DNA最高モードホモサピエン

権利であり...また、義務なのかも知れません...」

「はい...うまくいけば...素晴らしいですね...」

 

「そうですねえ...

  私たちは、“あまりにも身近過ぎて”...一般的には、このシステムには気付いていな

いのでしょう...眼前するリアリティー“存在の覚醒/悟り”が...“あまりにも身近過

ぎて”、それになかなか気付かないのと同じです...

  そのために...禅僧は、“1指”を立てたり...“痛棒”を喰らわせたり...“罵倒”

たりしたわけですねえ...それでも“あまりにも身近過ぎて”...それが分からない人

々は、依然として分らないわけです...」

「はい、」

「さて...

  この、“新陳代謝システム”については...科学者は当然のこととして、学問的には、

十分に承知しているわけです。しかし、それを大規模に、社会システムに導入するという

ことは、これまではあまりやってこなかったわけですねえ...

  共産党指導の国家などでは、社会工学については、大胆にやれる状況にあったわけ

しかし、どうもこうした事は、あまり成果を上げなかったようです...政治の壁があっ

たのでしょうか...」

「そういう事は、多くありますわ...」

「まあ...〔人間の巣〕や...〔極楽浄土〕にしてもそうですね...

  あれほど探し求めていた<浄土世界>が...実は、現代社会の裏返し/...“文

明の折り返し”の中にあることに...私たちは、長い間、気づかずに来たわけです。そ

んなことは分りきっていても、それに気づかなかったのです...

  そして、人々は、大量生産・大量消費という社会システムの中にあって...そのベル

トコンベア上で、マラソン競争のような人生を強いられていたわけです...人々悲惨

な生活を強いられ、人格を持たない企業システムが、膨大な利益を吸い上げていたので

す...人々は、そのことに気づかなかったわけですねえ...

  ところが...このままでは、“地球が壊れてしまう”という所まで来て...ハテ?...

と、立ち止まって、振り返って見たわけです。そして、かつて昔の人々が夢想していた、

〔極楽浄土〕は、すでに私たちの足元に存在していることに気づいたわけです...そこ

に、すでに〔極楽浄土〕要素は、転がっていたのです...十分なものが、すでに散ら

かって存していたのです...」

「はい...

  “スローフード/スローライフの潮流”が...それを、少しづつ組み立て始めたというこ

とですわ...私たちはまさに、“人類の絶滅/全生態系の沈没”という、地獄の風景

中で、ようやくそれに気づき始めたということですわ、」

「そうですね...

  現在...理屈では分かっていても...既得権を持つ人々や、これまでの惰性から抜

け出せない人々が大勢いる状況です...日本でも、いまだに膨大な予算をつぎ込み、

更なる道路建設をやろうとしている人々がいます...そして、そういう人たちは、責任

ついては、何も取ろうとしない人々です...」

「そうですね...

  時代は、“脱・車社会”に、急速に流れ出していますわ...この状況が、今後、緩むこ

とはないでしょうね...それなのに、道路を作るというのは、政治の暴走です...どうせ

作るのなら、〔人間の巣〕大々的に展開すればいいのですわ。土木工事の仕事は、そ

れこそ山ほどもあるのです」

「その通りです...

  ムダな道路などを作るのなら...日本中〔未来型都市/人間の巣〕を展開するべ

きでしょう...“脱・車社会”“脱・冷暖房社会”を実現し、〔21世紀・維新〕へ向かって

走り出すべきでしょう」

“永田町(/国会議事堂があり、政治の中心)や、“霞が関(/官僚組織が集中している)は、壮大な漫才

劇場を開演しているそうですわ。《真剣勝負》の中で、ポンちゃんが喝破していますわ」

  高杉が、微笑した。

 

「ええと...」高杉が言った。「参考までに、言っておきましょう...

  現在....日本社会システムは、壮大な閉塞状況に陥っているわけですが...ま

さに、組織において、“新陳代謝”というものが機能していませんねえ...既得権を持つ

人々が、それを抱え込み、“滑稽なほどのインチキ社会”が出現しています...

  “外部からエネルギー・食物を取り入れ、エントロピーを排泄”するという...細胞呼吸

/新陳代謝が無くなっているから...こんな“壊滅的/・・・政治・行政・文化の様相”

を呈して来ているのです...“社会公器の私物化/・・・壮大なモラルハザード社会”

を描き出してしまったのです...まさに、“子供のケンカ”のような社会です...」

「うーん...」響子が、顎に手を当てた。「日本文化全体が...まさに壊滅的になってい

ますね。勲章・表彰・褒賞などに対しても、国民がソッポを向いている観がありますわ。

スコミに対しても、国民一定の距離というものを、測りはじめた様に思います...」

  夏美が、コーヒーを配りながら、コクリとうなづいた。

マスコミも...」夏美が、最後に自分の前にコーヒーを置き、椅子に掛けた。「非常に

大きな責がありますわ...公共放送・NHKも、その本来の役割を放棄しているとい

う事で、この社会状況に、非常に大きな責任があると思います」

「まあ...」高杉が言った。「いずれにしても、こんなことは長くは続かないでしょう...

  しかし、これを抜本的に立て直すとなると...やはり、〔維新〕が必要になるでしょう。

〔人間の巣〕の展開による、〔21世紀・維新〕が必要になります...生半可修正主

義的改革では、砂上の楼閣になってしまいます...キリがありません...」

「はい...」響子が、ノートパソコンに目を落とした。「ええ...

  それでは...〔人間の巣〕・・・〔浄土世界〕では、こうした“バカな事”をくり返さない

ために...具体的に、どのような“回避システム”を組み込めばいいのでしょうか?」

「それを、これから考察してみましょう...」高杉が、コーヒーカップを口に運んだ。

 

<アポトーシス(プログラム細胞死)と、マクロファージ(貪食細胞)の機能  

                 

「さて...」高杉が、マウスに手をかけた。「とりあえず...私が考えた結論を言いましょ

う...」

「はい、」響子が、キーボードの脇に両手を置いた。

「今、言ったように...

  まず、生物体“個体の維持・存続”の方法を、〔極楽浄土の基本システムの中

に、しっかりと組み込んで行くという事ですね...とりあえずは、“慣習法”の中に、“新

陳代謝システム”を、しっかりと組み込んで行くのがいいでしょう...それを教育し、

明の本質に根付いた、“息の長い不文律”にして行くことです...」

「はい...“慣習法”として、根付かせていくということですね...?」

「そうです...

  それ以外の、具体的システムについては、これから本格的に研究して行って欲しいと

思います...こうした“新陳代謝システム”を失った〔人間の巣〕は、ちょうどガン細胞

ようになるでしょう...周囲の健康な〔人間の巣〕にも、悪影響を及ぼし始めます」

「はい、」響子がうなづいた。

「そこで...

  その排除の方法も、生物体システムから学べばいいわけです...生物体システム

は、どのようにして、こうしたバグ(虫/プログラムにおける誤り)を取り除き、ホメオスタシス(恒常性)

を維持しているかを、しっかりと学び取るということです...

  くり返しますが...“新陳代謝システム”によって、“生物体/命”完璧に存続し続

けています。非常に安定して、この生態系空間の中で、個体“維持/存続”させていま

す」

「はい、」

「そこで、具体的に、どのようなことが観測されているかというと...

  “一定時間”を経過した細胞は...自らアポトーシス(プログラム細胞死)して行くということ

です...また、病気にかかった細胞や、ガン化した細胞は、マクロファージと呼ばれる

貪食(どんしょく)細胞によって、速やかに処理されて行きます...

  まあ...その背後には、高度な免疫システム神経システムなどがあるわけです。

実際の所、そこまで鋭敏なシステムでないと、生物体というものは“維持・存続”ができな

いのでしょう。〔人間の巣〕は、そこまで複雑・深遠なシステムではありませんが、基本

はしっかりと学び取る必要があります...それが、人類文明全体ステージ・アップ

つながるわけです...」

「うーん、そうですね...」響子が、口に手を当てた。「アポトーシスや、マクロファージの

仕事は、大切なものになりますね...」

「その通りです...

  〔極楽浄土〕“永続性”を持たせるためには...そうしたある種の非情さも...

球生命圏レベルでは必要な機能になるでしょう...また、“バグ”は早期に摘み取って

行くということです。

  これは、実際には難しい作業になりますが、その前に、古くなった細胞は、ガン化する

以前に、そっくり入れ替えて行くということですね...生物体では、そういうやり方で“維

持・存続”を完遂し...“36億年の彼”を、壮大な時空間に拡大してきたのでしょう。

  古くなったもの”...あるいはガン細胞のように“悪性化したもの”...は、いずれも

確実に、解体・処理されて行くわけです...つまり〔人間の巣〕の展開でも、こうした“解

体・再生システム”を、初期プログラムの中に設定しておく必要があるのでしょう...」

「はい...」

「ええと...」高杉が、モニターの方に顔を向けた。「そうですねえ...

  〔人間の巣・レベル〕での、“解体”“再生”という機能も...全生命圏レベルでの

ントロピーの排泄機能として、重要なものになると思います。〔人間の巣〕アポトーシ

再構成ということですね...これはちょうど、古くなった人体が、次の世代シフト

て行くのと似ています。

  正常に機能していても...“解体”“再生”ということを...プログラム的/強制的に

実行して行くということです。これが甘いものになると、〔極楽浄土〕という生命圏の風景

は、しだいに壊死して行くことになります...」

「でも...」響子が言った。「こうしたことは、行き過ぎると、大変なことになりますね?」

「そうですねえ...

  人体でも、アレルギー反応があります。免疫不全という間違いもあります。しかし、総

体としては、うまくいっているわけですね。まあ、そのためにも、定期的な解体・再生が、

早めに行われて行く必要があります...

  ともかく、こうした方面の研究も、本格的に進めて欲しいと思います...」

「うーん...そうですね...

  生態系における、他の生物種の実態というものを、そうした視点から、あらためて研究

し直してみる必要がありそうですわ...非常に重要なことのように思います...」

「その通りでしょう...手本は、まさに眼前の、生態系の中にあります...」

「はい!」

  人間の巣 における・・・リフレッシュ・システム・・・>  

             ・・・居住、仕事、結婚、のクラス替えも・・・  

 index.1102.1.jpg (3137 バイト)    

「さて...」高杉が、空のコーヒーカップを押しやった。「いいですか...話を戻しましょ

う...」

「はい、」響子が、姿勢を正した。

  夏美も、作業テーブルの上で両手を揃えた。

「くり返しますが...

  “生物体/命”は...自らを、“維持・存続”して行くために...新陳代謝が行われて

います。生物体システムが、総体として安定しているのは...そこに、“新陳代謝システ

ム”が機能しているからです。

  樹木は、秋になればいっせいに葉を落とし、春には新芽となってリフレッシュします。

病葉(わくらば)虫食い葉は、その時に一掃されます。雑草は、毎年、(たね)から新しい

サイクルを始めます。人間肉体も、赤ん坊から新しいサイクルが始まるわけです

ね...だから、“生物体/命”は安定しているわけです...

  さて、それと同時に...例えば、人体では約60兆個の細胞が、数日から半年ぐらい

でしょうか...ごく1部の細胞をのぞいて...全細胞が、すさまじい速度で新しい細胞

と入れ替わり、リフレッシュしています...

  つまり、アポトーシス(プログラム細胞死)と、細胞分裂による補充が、すさまじいスピード

行われているわけです...この作用によって、いわゆる虫食い葉を除去し、恒常

(ホメオスタシス)を維持しているわけです...

  したがって...細胞が古くなり、機能不全ガン化する前に、ほとんとはアポトーシス

で、ログラム的リフレッシュして行くわけです。ガン高齢者に多いのは、実はこうし

たことを反映しているわけですね...上位においては、個体アポトーシスし、再生

れて行くわけです。

  “生物体/命”は、こうしたリフレッシュ・システムで、非常に安定しているのです。

は...“36億年の彼”とのリンクに関係していると、私は考えていますが...それも

リフレッシュ・システムの一環でしょう...私たちは、こうした生物体システムを、しっかり

学び、新しいステージ〔人間の巣〕に取り入れて行かなければなりません」

「はい、」響子が言った。

「ええ...また...

  生態系上位レベルにおいては...“種(しゅ)そのものが新陳代謝して行くわけです

ね。生きた化石のような“種”も、たまには存続していますが、それらは例外的だというこ

とです。したがって、ホモサピエンスもまた、やがては新人類新陳代謝して行くわけで

しょう」

「あの...」夏美が言った。「“霊的進化の方向性”も、あるわけですよね?ホモサピエン

が、その方向へ進化して行くことも...?」

「そうですね...まあ、その話は別の機会にしましょうか。話が非常に複雑になります」

「はい、」

「ええ...したがって...

  〔人間の巣〕も...それ自体が、呼吸/新陳代謝して行く必要があるのでしょう...

基本的には、樹木の葉が毎年生まれ変わるような...プログラム的アポトーシス/再

生システムが、必要なのかも知れません。そのことによって、常に新鮮な、若々しい〔人

間の巣〕を維持する事が必要です。これが、自然界の摂理です」

「はい...」夏美がうなづいた。

 

「そこで...

  社会形態・レベルでも...リフレッシュ・システムが必要と思われます...それは、ど

のようなものかというと...そうですね、一例を挙げれば...“学校でのクラス替えのよ

うなシステム”でもいいわけですね...

  定期的に、社会編成“解体・再生”し、リフレッシュするシステムです...それが、

陳代謝の役割を果たしてくれるかも知れません...“学校でのクラス替え/席替え”は、

それだけで新鮮な、フレッシュな気持ちになるものです」

「うーん...」響子が、ゆっくりとうなづいた。「具体的に、どのようにするのでしょうか?」

「まあ...

  社会管理システムを切り替えてもいいですし...住居クラス替えしてもいいでしょ

う...また、家族編成そのものを、切り替えてもいいわけです...それから、人事や、

仕事の分担を、総入替えしてもいいでしょう...そうすることによって、社会の鮮度が、

常的に維持できる可能性があります。それを、研究してみるということです。

  先ほども言ったように...〔人間の巣〕は、目的遂行型の組織ではありません。生産

が最優先される必要はないのです。そこで生活する人々が、“幸せ”であることが最重

要です。

  人生が、“あきらめ”“沈滞”に陥ることなく...適正な自由度と、リフレッシュ・シス

テムを、プログラムとして組み込んで行くということです...人生のアカを、アポトーシス

し、再生して行くということです。今風の言葉で言えば、リセットということでしょうか...

  もちろんそれは、〔人間の巣の単位〕で、それぞれに最適なものをプログラムすれば

いいわけです。自由な形式を取り入れればいいわけですね...平均的<農業都市

と、<宗教都市><学問都市>では異なりますし、<工業都市>でも、当然、異

なるでしょう...それぞれ、基本的ルールさえ守れば、自由にやればいいわけです。

  そうした中でも、古い伝統/慣習法を残していくことは可能なはずです...まあ、そ

れなりの弊害もありますが...人生の鮮度を、システム的に保持することも、非常に重

要です...

  そこが、全員合意<浄土>であればいいわけです...住民が、“幸せ”であり、そ

浄土>が、“永続性”を持つことが大事です...つまり、“生物体/命”では、その

アポトーシス/再生が、すさまじいスピードで行われているということですね。それで

している、手本があるということです...」

「うーん...」響子が言った。「そうですね...

  古くなると、様々な意味で、弊害の方が多くなりますね...樹木の葉も、虫に食われ

たり、病気になったりしても、春になって新芽が出て、またフレッシュにやり直せるからい

いわけですね...そして、を咲かせ、を結ぶことをくり返す...生物体生態系

ら学ぶことは、多いと思いますわ...」

 

家族の再編成というと...」夏美が言った。「結婚も、“クラス替え”が出来るということ

かしら?」

「さあ...」高杉は、苦笑した。「それは、想像に任せましょう...

  ただ...支配階級の無い〔人間の巣〕は、非常に楽に暮らしていける自給自足社会

です。したがって、システムとしては十分に可能なはずです。そうしたことにこだわる人

々は、そうすればいいわけです...5年なり10年なりで、“クラス替え”するようなプログ

ラムは可能です...」

「はい!」夏美が、弾んだ声で言った。「社会のあり方という意味で、“周期的なクラス替

え”システムは、研究してみると面白いかも知れませんね...

  子供を、どのようなシステムで育てるのか...結婚を、どのようなシステムで、リフレッ

シュさせるかですね...まさに、〔極楽浄土〕になるかも知れませんわ!」

「そうですねえ...

  〔人間の巣〕は、アイデンティティーの強い社会ですから...子供家族の中で育つ

以上に、〔人間の巣〕への帰属意識が強くなるのかも知れません...〔人間の巣〕が、

その生涯を保証して行くことになるわけですから、子育ての心配は、あまり無いかも知れ

ませんねえ...

  まあ...こうした事は社会工学の問題ですから、そちらの方で研究して欲しいと思い

ます。私たちは、そうしたことを提案をするだけです。〔人間の巣〕によっては、そうした

“周期的なクラス替え”システムを、採用する所もあるかも知れないということです...

  それが良いと思うなら...計画を立て、合意したら、試行錯誤をしてみればいいわけ

です...仕事を入れ替えるといっても、学問芸術、あるいは技術的なことは、それを

継続することが、大きな意味を持つ場合もあるわけです...私たちは、そうした〔人間

の巣〕を選択する、という事でもいいわけですね...」

「はい!」夏美がうなづいた。「自分に合った〔人間の巣〕ですね!」

「肝心なことは...

  ともかく...〔極楽浄土・システム〕も、生態系と波長を合わせた...“ダイナミックな

解放系システム”にして行くということです...ダイナミックな生命潮流の中では、静止

しているものは皆無です...全てが流れ、波動しています...そうした中で、〔極楽浄

土〕“維持・存続”して行くことが、最重要になります...

  〔人間の巣〕・・・〔極楽浄土〕も、“正常に呼吸するシステム”にするということです。

そうした初期設定を、しっかりと組み込んで行くことが重要だということです。また、その

ためにも、“慣習法が行き届く規模”の、〔人間の巣の単位〕...生命体で言えば、“細

胞の単位”が、まさにカギになるでしょう...」

「はい...」響子が、深くうなづいた。

「ええ...ともかく...

  私たちとしては、この方面の研究を、開始することを提唱します...〔世界市民〕も参

加して、この生命圏の風景を、“文明の第3ステージ”の方向で、再構成して欲しいと思

います...

  うまく行けば、“世界政府/地球政府”が創出され...〔人間の巣〕の展開によっ

て、〔浄土世界〕が実現し...地球環境が復元され...“大艱難(だいかんなん)の時代”

を克服した暁には...人類文明は再び、大きな安定期を迎えることが可能です...」

「はい!」響子が、コクリとうなづいた。「そうした...“人類文明の選択/時代的選択”

が、急速に接近して来ているわけですね?」

「そうですねえ...時代が、それを強く要求していると思います...

  〔人間の巣〕では、新たな価値観として...“存在の覚醒”というものを予想していま

す。“存在の覚醒/悟り”とは...この世のありとあらゆる存在が、<浄化>  して行く

ことです。人・動物も、草・木も、海・山も、それそのものが、あるがままの姿で<浄化>

されて行きます...

  〔極楽浄土/浄土世界〕とは、そういう<清浄な精神世界>でもあるのです。<魂

が浄化されて行く世界>でもあるのです...」

“生存競争をするための人間都市・・・”では、ないということですね?」響子が言った。

「そうですね...

  そうした意味では...ホモサピエンス“霊的進化”を遂げて行くための、次世代

“新しい社会の器”です。〔人間の巣〕は、そのためのインフラ建設でもあるのです...」

「はい!

  ええ、高杉・塾長...どうも、ありがとうございました。時代が、〔極楽浄土/浄土世

インフラ建設を求めている...という話をお聞きした所で、このページはここまでと

したいと思います。夏美さんも、ありがとうございました」

 

                    

「響子です...

  今回は、高杉・塾長が軽井沢基地に来ておられたので、“新型インフルエ

ザ”と、“極楽浄土のインフラ建設”に関するするご意見を伺いました...

  最初のアップロードから、大幅な変更が加えられ、時間がかかってしまいま

した。また、ページを分割したことから、内容が重複してしまった所も多々あり

ます。重ねて、お詫びを申し上げます。

  “閉塞状況にある人類文明”ですが、次の“22世紀”には、再び“大きな

安定期”を迎え、さらに心豊かに繁栄していることを祈ります...

  ご静聴ありがとうございました...どうぞ、次の展開にご期待下さい...」

 

 

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