櫛形山( 櫛形山 :2,053.5m ) 2007.3.31 登山


  櫛形山に多く見られるカラマツ林とサルオガセ ( 2007.3.31 )

【櫛形山再登山記録】

【櫛形山再登山データ】

フォト

初登山


櫛形山再登山記録

天気予報によれば、ずっと週末の天候は良くないとされていたため、登山は無しと決め込んでいたのだが、 金曜日の晩、念のために翌日の天気を調べてみたところ、何と甲府地方は晴れとのこと、慌てて山に行くことにした。
このような急遽の山行の場合、準備不足もあって大体以前に登った山を選んでしまうことが多い。
今回も 6年ほど前に登った
櫛形山がすぐに頭に浮かんだのだったが、 これは恐らく、このところ南アルプス周辺の山を登っていることからくる連鎖反応と思われる。

いつもより遅めの 4時45分に横浜の自宅を出発。空は何となく曇りがちだが、これは天気予報通り。 甲府地方は晴れのはずである。
しかし、中央高速に乗って、笹子トンネルを抜けても空は曇っている。いつもこの時期楽しみである、勝沼IC付近で目の前に展開される南アルプスの山々の展望も、 この日はわずかに 北岳 が雲の切れ間に見えているだけであった。前回の櫛形山登山では南アルプス展望が全く得られなかっただけに、 今回はと期待していたのだが、またまた今回も駄目ということか...と少々気持ちが萎える。

この櫛形山へのアプローチだが、前回は高速を甲府昭和ICで下りた後、少々迷いながら辿り着いたのであったのだが、 今回は中央高速道双葉JCTから中部横断自動車道に入り、白根ICで高速を下りると、後は本当に簡単であった。時間もかなり短縮できた感じである。
天候の方は相変わらず好転の兆しを見せていない。しかも、県民の森へと向かう途中、目の前に見えてきた櫛形山は、左手上方がガスで覆われているといった状況で、 この時点で山頂からの展望はあきらめたのであった。

登山口である、県民の森 ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前に着いたのが、7時9分。身支度をして 7時12分に出発。
先般登った 雨乞岳 のこともあり、スパッツは不要と判断したため、身支度は簡単である。
登るコースは前回と同様 中尾根コース。人気のないコテッジの間を抜け、檜林の中を進む。空は完全に曇り空、時折薄日が差すが、今後の天候回復は期待できそうもない。 モラールがますます下がる。

道はほぼ記憶通りの展開である。最初は檜の植林帯で、そこをを登り切ると、 植林帯との境界線を歩くようになる。やがて、自然林になったかと思うと今度はカラマツの植林帯といった感じである。展望の方はやはり駄目で、 高度を上げるに連れて本来見えるはずの甲府盆地は全く見えない。
やがて、記憶通り、登り切った先に車道が現れた (8時16分)。櫛形山林道である。登山道はその林道をまっすぐ横切り、 法面に造られた階段を登って再び斜面を登ることになる。
前回は、久々の登山で少々バテ気味だったことからここで休憩した記憶があるが、今回はモラールが上がらないという理由で休むことにする。このところの山行が天候に恵まれていただけに、 天気予報が恨めしい。10分ほど休んで、出発。ここからもカラマツ林が続く。

林道から 5分ほど登ると、登山道周辺に雪が現れ始めた。しかし量はわずか。やはりスパッツはつけずに正解だったと納得。 暫く続いていた雪もやがて見えなくなり、道は尾根から山腹への取り付きへと変わる。自然林の中、落ち葉を踏みしめながらのジグザグ登りが続く。 周囲にはガスも漂い出し、神秘的であるとともにやや薄気味が悪い。

やがて傾斜が緩んでくると、再びカラマツ林が現れた。このカラマツにはサルオガセがくっついている。 枝に少々くっついているだけなら良いのだが、枝という枝にびっしりとサルオガセがくっついており、そうした木々が何本も立っている姿は、 大変申し訳ないが何となく汚らしさを感じてしまう。
そのカラマツ帯を過ぎると、明るい原に飛び出した。祠頭 (ほこらあたま) と呼ばれる場所で、ここには ほこら小屋の他、 この場所の呼び名の由来となったと思われる、小さな祠が大きな木の下に置かれている (9時23分)

ここから右に道を取る。左へ進めば氷室神社の登山口である。
暫く進むと再びカラマツの林が現れ、ここでもサルオガセがびっしりとまとわりついている状態が見られた。足下には再び雪が現れ、量も多くなり出す。
やがて樹相はカラマツから自然林に変わる。この辺になると足下は完全に雪の状態である。一応雪の上に付けられた踏み跡を辿るが、それほど新しいものではないようである。
暫く登ると、左 櫛形山との標識が現れた。当然 左に進むのだが、雪の上にハッキリとした足跡はなく、道が分かりにくい。周辺をウロウロすると何となく足跡らしきものを発見したのでそれを辿る。 再び明瞭な道が現れ、やがて、バラボタン平と呼ばれる雪の原に出た。ここでも足跡が見つからない。記憶を頼りに原を突っ切ってみると、標識が見つかったので、 それに従って斜面を登る。
帰りに気づいたのだが、道はこの原の周囲に沿って付けられており、本来原の中は入ってはいけないところである。

斜面を登り始めると、雪の量がかなりあり、足が潜り込んでしまい登るのに苦労する。ただ、 それほどの長くは続かず、やがて原生林に囲まれた奥仙重、櫛形山の頂上であった (10時16分)。 頂上には山梨百名山の標柱がおかれている。前に登った際、どういう訳か勘違いして、三角点のある方を奥仙重と思いこみ、登山記録にもそう記したが、 奥仙重はこちらの標柱のある方を指すのが正しいようだ。
この奥仙重は樹林に囲まれて暗く、また足下も雪なので休むには適さないと判断し、先に進んで三角点を目指す。
ここから倒木と雪の斜面を下り、再び登っていくのだが、動物の踏み跡に惑わされ、三角点のある場所からかなり北側の林の中を進んでしまった。 雪の上の道筋はいくつもあり、それがどんどん林の中を進んでいる。しかし、記憶では三角点のある場所は、もっと左手上方、尾根上にあるはずである。
いつまで経っても左上の尾根に登る踏み跡が現れないので、これはおかしいと思い、林の中から明るい尾根へと向かって斜面を登ってみることにした。
林の中のため、雪の量はまあまあだが、雪が凍っていて歩きにくい。木々に掴まりながら、ようやく尾根へと登り着くと、ハッキリした道が現れ、そのすぐ先、 林を抜けたところが三角点のある場所であった (10時31分)
以前の記憶がなければドンドン目標から離れてしまうところであった。雪は恐ろしい。

時折ガスに包まれる中、三角点前で暫し休憩した後、再び奥仙重へと戻る (10時52分)
何のことはない、正規の道は林の中をほとんど避ける形となっていた。どこで間違ったことやら・・・。
奥仙重から再びバラボタン平の雪原へと戻り、道標に従って裸山を目指す。この行程も途中までは良かったのだが、林の中を進む段階で道が全く分からなくなってしまった。 雪の上の踏み跡は消えており、しかも雪の量がかなりある。進むべき方向も分からずに、無闇に雪の中を進むことは大変躊躇われる。しかもスパッツを着けていないとなれば尚更である。
仕方がないので、一旦斜面を下り、雪のない方へと向かうことにした。ここは谷のようになっており、今いる北向きの斜面は雪で完全に覆われているものの、 反対側にある南向きの斜面には全く雪がないのである。

斜面を下り切ったところで、このままこの斜面と斜面との間を下っていくことも考えたが、 それでは感覚的におかしい。地図を引っ張り出して検討してみると、地形的にこの南向き斜面を登っていけば、道にぶつかりそうである。
道に迷ってはいるが、焦る気持ちはない。一度この山に登ったことがあるということが気持ちを落ち着かせているのである。しかし、経験というのは諸刃の刃で、 過去の記憶に頼りすぎるのも間違いを生じさせてしまう場合がある。やはりその場の判断力が重要ということか。

斜面は急で、かつ道があるわけではないので歩きにくい。おまけに周囲には鹿のものと思われる糞が散らばっている。幸い、 植林されたカラマツの他、ミズナラなどの木々があるだけなので 皆落葉しており展望が利くことがありがたい。
喘ぎながら急斜面を登る途中、ふと左手を見ると、ガスの切れ間に三角形をした真っ白な山が見えた。恐らく 悪沢岳 と思われるが、 この日 南アルプスが見えたのはこの時だけであった。
喘ぎながら斜面を登っていくと、不意に斜面を水平に横切っている道にぶつかった。裸山への道である。やはり 「逆くの字」 型に大きく迂回している道を、 斜面を下り再び登ったことでショートカットしたようである (実際はショートカットではないが・・・)

丘のようになっている裸山に着いたのが、11時42分
正面の櫛形山は流れるガスに覆われてなかなかハッキリとした形を現さないし、ましてや南アルプスなど影も形もない。山頂でガスが晴れるのを待つこと 15分。 しかし、ガスは次々にわきだしてきており、あきらめることにした。この状況では、先ほど 悪沢岳 が見えたのが奇跡である。
裸山からはアヤメ平へと向かう。ここでも樹林の中の斜面を下るのだが、雪が多く、道が分かりにくい。しかし、それとなく見える踏み跡を辿ったところ、 今度はどうにか迷うことなくアヤメ平に着くことができたのであった (12時16分)

ところで、アヤメ平に向かう途中、目の縁を黒いものが横切った。さては熊か ? と一瞬慌てたが、 よく見るとカモシカであった。私が斜面を下るのに合わせるようにして先方も斜面を下っていたようで、向こうもビックリしたのであろう、大きな木のそばでジッとこちらを見ている。 回り込んでカメラに収めようとしても、全く動かない。向こうもドキッとして足がすくんでいたのであろうか。
静かで誰もいないアヤメ平では 雪の上に 2種類の真新しい登山靴の跡を見つけた。足跡は私が下りてきた斜面の方に向かっているのだが、下ってくる途中では全く足跡を見なかったので不思議である。 もしかしたら、斜面を登るのを止め、アヤメ平の休憩舎に入っていたのかもしれない。

周囲がガスで覆われ始めたので、慌てて下山を開始する。
アヤメ平を抜ければ、後は雪もない立派な道が続く。田中澄江さんの詩が組み込まれた記念碑のある展望台に着いたのが 12時55分。 前回はここから 富士山 を見ることができたのに、今回は全く見ることができない。林道を横切り、 再び斜面を下る。落ち葉をかき分けるようにしてドンドン下っていくと、再び周囲が檜に変わり、やがてウッドヴィレッジ伊奈ガ湖に繋がる林道にぶつかったのであった。 そして、15分ほど林道を辿り、駐車場に戻り着いたのは 13時37分であった。

今回こそはと展望を期待したのにも拘わらず、先の月山と同様、同じ状況の繰り返しであった。 こういうこともあるのである。
しかし、誰一人として会わずに静かな山を楽しめたし、雪によって少々スリルも味わうことができたので、それはそれで良かったと思う。でも、もう一度展望を求めて櫛形山に来ることはないであろう。 もっと登りたい山々が沢山あるから・・・。


櫛形山再登山データ

上記登山のデータ登山日:2007.3.31 天候:曇り単独行日帰り
登山路:ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前−櫛形山林道−祠頭−バラボタン平−櫛形山(奥千重)−三角点−櫛形山−バラボタン平−裸山−アヤメ平−展望台−ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前
交通往路:瀬谷−国道16号線−八王子IC−(中央高速道路)−双葉JCT−(中部横断自動車道)−白根IC−ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前 (車にて)
交通復路:ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前−白根IC−(中部横断自動車道)−双葉JCT−(中央高速道)−八王子IC−国道16号線−瀬谷 (車にて)


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