櫛形山( 櫛形山:2,052m ) 2000.12.16 登山


  県民の森公園線から見た櫛形山 ( 2000.12.16 )

【櫛形山登山記録】

【櫛形山登山データ】

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再登山


櫛形山登山記録

11月4日に 八海山に登って以来の 1ヶ月ぶりの登山である。
この間、2回程山へのチャレンジを試みたのだが、2回とも ぬくい寝床から起き上がることができずに挫折してしまい、 今回予定起床時間より 30分以上遅くはなったものの、ようやく寝床から這い出て山へと向かうことができた次第である。
行き先は山梨県の櫛形山。標高は 2,052mあり、その山中にあるアヤメの群落が有名である。
なお、「櫛形」 という名前の由来は、その名の通り、山の姿が甲府盆地から見ると櫛の形をしているからとのことであるが、 事実、山は昔の女性がよく頭に用いた半円形の和櫛の形をしている。

登山口は南伊奈ヶ湖を中心とした県民の森で、そこまで行くには中央高速道を甲府昭和ICで降りて甲府バイパスに入り、 そこからすぐ立体交差を越えずに左に入って櫛形町へと向かえばよい。
釜無川にかかる開国橋を渡り、県道甲府櫛形線を道なりに進むと、やがて国道52号線にぶつかるので、そのまま櫛形町を通り、 右 県民の森という標識があるところで道を右折して県民の森を目指せば、あとは 1本道である。
目の前に見える櫛形山の大きな姿を目指して進んでいくと、小学校を過ぎた頃から山道となり、クネクネした道を登り切ればやがて南伊奈ヶ湖で、 すぐに大きな駐車場のあるグリーンロッジ、ウッドビレッジ伊奈ヶ湖前である (8時3分着)

この山の難易度としては、「一般向け」 ということであり、 しかも天気予報ではこの日は快晴ということであったことから、クルマを止めたグリーンロッジ辺りはさぞかし混雑しているものと思いきや、 12月半ばでは季節はずれなのであろうか、クルマはウッドビレッジ伊奈ヶ湖と道を挟んだ向かい側の駐車スペースに 3台止まっているだけであった。
クルマを止めて身支度をしていると、ビレッジ前で掃除をしていた管理人さんが声を掛けて下さったので、櫛形山へ登る旨を告げ、 山への取り付き口を尋ねると、親切にも 「櫛形散歩」 という櫛形町探訪ガイドブック (見開き A1サイズの登山地図付きパンフレット) を下さり、ビレッジからの 3つの登山コースを教えてくれた。
ビレッジ前から、来た道を戻って氷室神社から南尾根を登るコース、ビレッジからすぐに山に取り付く 中尾根コース、 それから ビレッジ前の車道を更に進み、市之瀬川を渡ってから山に取り付く北尾根コースである。

無論、私が登ろうとしているのは 中尾根コースで、道はビレッジの裏手にある檜林の中を登っていくようになっていた (8時10分発)
道は最初比較的緩やかであったが、山腹から尾根筋へ出ると結構急になる。それでもさほどのレベルではないのだが、久々の登山であるためであろうか、 結構息が上がる。
展望のきかない樹林帯を抜けると、周囲は植林帯となってやや展望が開けるが、この日はガスがかかったようになっていてあまり良い景色は得られない。
この後、道はすぐにカラマツの林に入ることになったが、すっかり葉を落としたカラマツの枝の間から差す日差しが心地よい。
さしたる展望もないままひたすら道を登っていくと、目の前に白いガードレールと車道が現れた (9時13分)。 これは櫛形山林道で、先ほどもらったパンフレットには標高 1,460mと記されている。
ビレッジが 890mとなっているから、570mの高度を 1時間ほどで稼いだ訳で、久々の登山ということもあって体が休養を欲している。
そこで、林道を横切ったところにある山の取り付き口に腰を下ろしながら休憩をとったのだが、周囲は明るいのに風の音が聞こえるだけの静けさに何となく気分が落ち着かない。
また、ここから見えるはずの 富士山も霞むような空の中に見ることができなかったのは残念であった。

7分ほど休んでから出発 (9時20発)
登山取り付き口に立てられた 「熊に注意」 の看板が少々気後れを覚えさせる。
ここからは再びカラマツの林の中の道で、さしたる展望も得られぬままひたすら登り続けることになったのだが、 この頃になると天候に対する心配も少々出始めてきたのであった。
日は時々差すものの、段々上空が曇り始めてきたからである。上空を流れる雲の上流 ? を見ると、黒い雲が空を覆っている。雨が心配である。

やがて樹林が切れ、草原の中に屋根が見えてくると、ここが祠頭 (ほこらあたま) と呼ばれる台地状の場所で、 見えた屋根は 櫛形山ほこら小屋 であった (10時25分)
この祠頭から標柱のある櫛形山山頂までは 25分ほどの距離であったが、この間の周囲の様子はこれまで登山道の大部分を占めていた人工林のそれとは全く異なり、 周囲に太い老木や何本も幹が分かれた巨木が現れるようになって、深山の趣であった。
おまけに祠頭までは明るかった空も暗くなり、強い風に揺れる木々の音だけが聞こえるだけで、さらに風には雪までが混じるといった状態であり、 その様相の変化に驚くばかりであった。

やがて山頂への分岐が現れたので山頂に向かって左に道をとると、すぐにカラマツに囲まれたバラボタン平と呼ばれる草原で、 枯れ残った草花が春から夏にかけてのこの場所の盛りを思わせる。
このバラボタン平を過ぎると、小広いが樹林に囲まれて展望はあまり利かない櫛形山山頂であった (10時49分)
山頂にはこれまた山梨百名山の標柱が立っており、そこに記された標高は 2,051m。
また、この山梨百名山の標柱の傍らには、従来からあるのであろう、アヤメ平、池の茶屋林道の方向を示す道標兼用の標柱が立っていて、 そこに記された高さは 2,053.5mであった。

ガイドブックによれば、この標柱のあるところは櫛形山の主峰の奥仙重のひとつ手前の峰で 2,050mが正しく、 三角点のある奥仙重 (どういう訳か 2,052m) はここから往復 10数分のところにあるようである。
ひとまずは誰もいない標柱の前で記念写真を撮り、丸太に腰掛けて昼飯にしたのだが、吹く風がとにかく冷たく、 今が真冬であることを否が応でも感じずにはいられない。
また、時に視界が見えなくになるほどの雪が降り、誰もいない山頂に一人いることへの不安を覚えさせたかと思うと、 すぐに暖かい日差しが照りつけるといったおかしな天候となり、全く驚くばかりであった。

あまりに寒いのでじっとしていることもできず、そくささと荷物をまとめて最高峰の奥仙重へと向かう。
一旦下って登り返す過程で、途中に展望の良いところがあり、墨絵のようではあるがこの日初めての 富士山を見ることができたのは幸いであった。
三角点のある奥仙重は、標柱もない寂しい扱いを受けており、尾根道の一角に三角点を置き、その周囲に丸太の腰掛けを置いただけの場所であった。
しかし、こちらでは風もそれほど強く吹かず、暖かい日差しが差し、先ほどの頂上 (もどき) とはエライ違いである (11時17分着)

再び先ほどの標柱がある頂上に戻り、そこからバラボタン平を経由して今度は裸山へと向かった。
このバラボタン平から裸山の間の原生林は見事で、苔むした岩や倒木があり、とても人が多く登る山とは思えない風情を感じ、 あまり期待していなかっただけに大変得した気分になったのであった。
視界が開けてくると、草原の中に丘のように立つ裸山が見えてきた。この草原はアヤメの群生地とのことであるが、今の季節ではただの枯れ野原で、 その面影は全く感じられない。
大きな看板のある分岐のところから一登りすればすぐに裸山の頂上で (12時3分)、 山頂から振り返れば先ほど登ってきたばかりの櫛形山が大きい。
但し、展望はそれだけで、本来なら見えると聞く、白根三山を初めとする南アルプスの山は全く見えず、 少し休憩してから寂しく次の目的地であるアヤメ平へと向かったのであった (12時15分)

この裸山からアヤメ平までは 15分ほどである。この時期のアヤメ平はただの草枯れの空き地という感じで、 周囲に張られたロープだけが 7月のアヤメの盛期を感じさせる。
さて、このアヤメ平からは北尾根を下っていけば今朝程のビレッジに戻れるのであるが、それだけではつまらないということで、 少し先の唐松岳まで足を伸ばしてみることにした。
結果は何の面白みもない道で、10分ほどでたどり着いた唐松岳の頂上は、登山道の一角にある枯れ葉に埋もれた空き地に、 三角点と小さな標識が置かれただけの寂しい場所であった。
すぐにアヤメ平へと戻る (12時59分)。あとは一気に下るだけである。
この道はアヤメの盛期に大勢の人が登ってくる道なのであろう、これまでの登山道とは違ってしっかり踏まれて整備された道である。

この頃になると一時止んでいた雪もまた風の中に混じり出し、山の天候の変わり方に驚かされる。
周囲の木々にはサルオガセが目立ち、吹く風のに揺れる様が何とも不思議な感覚を覚えさせる。
周囲からは風が木々を揺する音しか聞こえないが、登山道の配置によっては風の音が止み、笹などの葉にパラパラと当たる雪の音だけが聞こえるのが面白い。
道をドンドン下るにつれて周囲も明るくなり、雪も止んできたので、どうやら山頂周辺だけが雪雲 ? に覆われていたようである。
道はやがて伊奈ヶ湖林道とぶつかることになったが、そこには見はらし平と呼ばれる展望台があり、甲府盆地の眺めとそれらを見守るような 富士山の姿が印象的であった。
また、見はらし平には 「ハッピーコールベル」 という鐘と、田中澄江さんの詩が組み込まれた記念碑もあって、 駐車場にもなっていることから、ここから山頂やアヤメ平を往復する人も多いようである。

再び山道に入り、ひたすら下り続けるとやがて檜の植林帯で、そこを抜けると林道にぶつかったので、 林道を右に進み、15分ほど歩けば今朝程のビレッジ前であった (14時40分)
この山は、アヤメの最盛期には多くの人が訪れ、また年間 10万人もの人が登ると聞いていたので、人の手が入り過ぎた登山コースを思い描いていたのだが、 山奥の部分は全く手つかずの自然が残っており、サルオガセが絡みついた木々や苔むす樹林帯、樹齢数百年を思わせるような大きな木々の出現に大いに驚かされ、 大変得をした気分になった山であった。
それに山では誰一人とも会わなかったのが、先の自然の豊富さと並んで良い意味で想像を裏切ってくれ、大いに満足した山行であった。
ただ、この山がその魅力を最大に見せる 7月頃は人が多く入ると思われ、私はご勘弁願いたい。


櫛形山登山データ

上記登山のデータ登山日:2000.12.16 天候:晴後曇り時々雪単独行日帰り
登山路:ウッドビレッジ伊奈ヶ湖−櫛形山林道−祠頭−バラボタン平−櫛形山−奥仙重−櫛形山−バラボタン平−裸山−アヤメ平− 唐松岳−アヤメ平−見はらし平−北尾根登山口−ウッドビレッジ伊奈ヶ湖
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道)−甲府昭和IC−櫛形町−ウッドビレッジ伊奈ヶ湖 (車にて)
交通復路ウッドビレッジ伊奈ヶ湖−櫛形町−甲府昭和IC−(中央高速道)−相模湖IC−三ヶ木−半原−厚木−(国道246号線)−瀬谷 (車にて)
その他の
櫛形山
登山
ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前−櫛形山林道−祠頭−バラボタン平−櫛形山(奥千重)−三角点−櫛形山− バラボタン平−裸山−アヤメ平−展望台−ウッドヴィレッジ伊奈ガ湖前  ( 2007.3.31 曇り )
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