登山NO.0073 光    岳( 光 岳:2,591m ) 1998.7.27登山


 ひっそりとした光岳頂上( 1998.7.27 )

【光 岳登山記録】

【光 岳登山データ】

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再登山


NO.73 光 岳登山記録

南アルプスにおける百名山は 光岳、聖岳の 2つが残っているが、 本来ならばこの 2つの山は昨年 (1997年) の 7月下旬に登り終えているはずであった。
しかし、希なる 7月下旬の台風襲来によってこの 2つの山の縦走計画は延期せざるを得なくなり、そのため今年の夏、 再度登山を計画したのだが、結果は
「山の雑記帳:ピストンになっちゃいました」 に記述の通り、 縦走を断念しての 光岳だけの登山となってしまったのである。

家に帰ってから 深田久弥氏「日本百名山:光岳の項」 を読んでみると、 氏も同じく 易老度から登り、雨に苦しめられたとのことで、 同じ状況だったのを知って何となく嬉しくなるとともに ホッとした次第である (実は、私は深田氏の登山ルートを調べた以外は 「日本百名山」 を全編ジックリ読んだことはなく、登った山の記述部分だけを下山後に読むことにしているのである)

朝 4時に横浜の自宅を車で出発し、八王子ICから中央高速道に入って飯田ICへと向かったのだが、 途中 八ヶ岳PAあたりでは雨に遭ってしまい、未だ梅雨の明けないおかしな天候を恨みながらのドライブとなった。
しかし、長野への分岐を過ぎて、駒ヶ根付近では青い空が目の前に拡がりだしたので、イライラも吹き飛び、 右手に中央アルプスを眺めながらのドライブの楽しさも手伝って、心がウキウキし始めてきた。
7時過ぎに飯田ICで高速道を降り、よく道の分からないまま標識を頼りに 上村を目指し、 南信自動車道を走って喬木村から矢筈トンネルを通過して152号線に入り、やがて現れた上島トンネル手前から右折してトンネルの上を登って行き、 易老度への林道へと入った。

このように書くと順調のようだが、無謀にも古い地図しか持っていなかったため、 南信自動車道が記述されていなくて最初は戸惑い、また立派な矢筈トンネルを通過してから上島トンネルまでの距離もかなりあったので道が正しいのか不安になり、 途中何回も車を止めて道を聞いたりしたのである。

易老度までの道は思いの外立派な舗装道路で、 完全に林道と思いこんでいたため、山の中にドンドン入っていっても結構民家が道脇にあるのにはビックリさせられた。
ようやく民家も途切れ、道路上に道横の崖から崩れた岩がかなり転がっているのが認められるようになると、 いよいよ 易老度かなと思われたが、まだまだ道のりは長く、 初めて通る場合は少し不安になるかもしれない。
しかし、よく見ると要所要所には 易老度、便ヶ島と書かれた標識が見られるし、 またカーブのキツイ所にはミラーがしっかり備え付けられているので、慎重に運転すれば何の問題もない。

舗装道も切れて暫く行くと、車が数台止まっている場所に着いたが、実はここが 易老度で、よく見れば駐車スペース手前に吊橋も見えたのである。
しかし、私はそれをうっかり見過ごし、そのままトンネルに入っていつの間にか 便ヶ島に着いてしまうというミスを犯してしまい、 慌てて先ほどのトンネル手前まで戻ったのであるが、こうした失敗もあって、易老度を出発したのが 9時20分であった。

遠山川に架かる吊橋を渡ると、いきなりそこから樹林帯の中の急登が始まり、また加えて 1992年の 北岳間ノ岳塩見岳 縦走以来のテント山行によりリュックの荷物は普段の 2倍、20キロ近くあったため、一歩の踏みだしで足にかかる負担が結構大きく、 最初からいきなり汗がドッと吹き出してくる始末であった。
天候の方は、青空が見えるものの、徐々に雲に浸食される形で、10時45分面平に着いた頃には 雨も少々パラつき出し、上の方はガスに覆われ始めていた。

道は樹林帯の中をひたすら登るだけで、しかも 面平に着くまでは一直線の長い登りが多くあり、 また展望の良い所はほとんどなく、精神的にも肉体的にも大変苦しい状況であった。
途中、スズメバチらしき黄色く大きなハチが私の周囲を飛び回り続け、それが 30分ほど続いたので少々恐怖を感じたが、 襲ってくる様子はなく、考えようによっては道案内をしてくれているようでもあった。
私のザックの色とか、服の色、あるいは登山靴に塗り込んだ防水油の臭いがハチを引きつけたのかもしれない。
このスズメバチも、雨が本格的に降り出すと姿を消し、こうなると傘をさしながら例の如く黙々と登る他なく、途中 2,254.1mを示す三角点を越え、 キレット状になったような場所を過ぎると、ようやく 易老岳の山頂であった (13時45分)

ようやく着いた 易老岳山頂は、 ガイドブックにもあるように標識がなければ通り過ぎてしまうような所となっていて、せっかく苦労して着いたのに些か拍子抜けさせられたが、 要所であることは間違いなく、多くの標識が木に打ち付けられていた。
この頃になると雨も止んだので、先を急ぐべく右の斜面を下って 光岳を目指したが、 結構急な下りで、明日ここを登り返すかと思うとやや気分がブルーになってしまった。
何回か登り下りを繰り返し、2,228mのピークを過ぎると、やがて 三吉平で、 暗い窪地の中にいくつかの水たまりが見られた。

三吉平からは涸谷のような所を登って行くようになったが、 この頃になると再び雨が降り出し、ややへばりが来始めた体にはこれが大変応えた。
おまけに、さしていた傘はモンベル製の登山用傘であったが、柄が短いため今回のように背中の荷物が頭より高くなっている場合は非常に持ちにくく、 手をかなり高いところに上げていなければならないため、疲れが倍加した感じであった。
また雨が降っていると、途中休んでザックを開けることが億劫になるもので、そのためかなり水や食物を我慢しながら登り続けたが、 ついに我慢できなくなり、静高平の手前斜面でストップし、 水とともに エナジーゼリードリンクを口にした (これが最高に美味で、力が本当に湧いてくるような気がした)

大きな岩のゴロゴロした涸沢のような登り道もやがて緩やかになり、 トリカブトの紫色の花が多く咲いた場所を過ぎるとやがて左手に標識が現れ、そこには 光小屋まで 15分と書かれてあった。
また、その足下には柄杓 (ヒシャク) が置いてあって水が飲めるようになっていたものの、 残念ながら水は涸れていた。

この頃になると完全に雨とガスの中で、せっかくの センジヶ原も ほとんど何も見えず、ただよく踏まれた道と所々に引かれているオレンジのペンキ印だけが頼りの歩行となった。
そしてようやく全体が青く塗られた 光小屋に着いたが、時刻は 15時50分で、 重い荷物で途中少々ヘバり気味だった割には結構早かったと思う。
小屋でテント代 300円を払い、小屋の主人に案内されてテント場へ行ったが、そこにはすでに 8基程の先客がいた。
幸い雨も再び止んでくれたので、急いでテントを設営し、サブザックに水筒と簡易三脚を入れ、 傘とカメラを持って 光岳頂上へと急ぐことにした。

新築中の新しい 光小屋の横から樹林帯に入り、暫く登っていくと、 百俣沢ノ頭への道を左に分けることになり、さらに小さな登りを幾つか越すと、そこはひっそりとした 光岳頂上であった。
頂上は三角点と標識と、その傍らには名刺を入れるようになっている瓶が木にぶら下がっているだけの質素な佇まいで、 樹林に囲まれて展望は利かず、南アルプスというよりはむしろ奥秩父の雰囲気に近いといった方が当たっているだろうか。
また、頂上から先へ 15分の所に 光岳の名の由来となったと言われる 光石があり、 道もしっかりつけられていたが、ガスが濃くなってきたため行っても何も見えないと思い、結局行くのをあきらめてしまった。

帰りに、ガレ場を下りて水を汲んでいる頃には再び雨が降り始め、結局この雨は翌朝まで止まなかったようであった。
この日のテントは 「山の雑記帳:ピストンになっちゃいました」 に記述したように 雨と風の耐久テストを受けたような状態で、おまけに雷雨注意報まで出されたものだからかなり厳しい状態であった。
そして、同じく 「山の雑記帳」 に記述したように、翌朝の雨を見て 聖岳までの縦走を断念してしまったのだが、それにしても久々のテント山行なのに 最悪のコンディションとはついていない。

そして、下山時も雨とガスの中で、センジヶ原もほとんど様子を見ることができず、 また昨日涸れていた水場も昨晩の雨のもの凄さを示すようにこの日はコンコンと水が湧き出ており、登山道にもあちらこちらに水たまりが出来ていた。
テント場を出発したのが 6時35分三吉平7時5分易老岳着が 8時3分面平着が 9時45分、 そして 易老度へ辿り着いたのが 10時43分とかなりのスピードで戻ってきたが、 面平から 易老度までの下りは長くて結構身体に応え、 昨日よくもまあこんな所を登ってきたなあと自分自身に感心してしまった。

今回は大雨のため、初めて計画の途中変更を余儀なくされ、悔しいことこの上ないが、 光岳聖岳を一度に登ってしまって南アルプスを終わりにしてしまうのはもったいないと 神様が思われたのかもしれない。


光 岳 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1998.7.27 天候:曇り後雨単独行山中テント泊
登山路:易老渡−面平−2,254m三角点−易老岳−三吉平−静高平− センジヶ原−光小屋−キャンプ指定地−光岳−キャンプ指定地(テント泊)−センジヶ原−静高平−三吉平−易老岳 −2,254m三角点−面平−易老度
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道)−飯田IC−喬木村−上村− 上島トンネル−易老度(車にて)
交通復路:易老度−上島トンネル−上村−喬木村−飯田−(国道151号線)−豊川IC−(東名高速道)−横浜IC−瀬谷
その他:7月27日に易老度より光岳登頂。翌日縦走計画を変更して同じルートにて下山。
その他の光岳登山(聖岳より続き) 茶臼小屋−希望峰−易老岳−ゼンジヶ原−光小屋− 光岳−光小屋−ゼンジヶ原−イザルヶ岳−ゼンジヶ原−易老岳−面平−易老渡−便ヶ島 (2008.8.14:曇り)
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