西條奈加
作品のページ No.3



21.心淋し川

22.婿どの相逢席

23.六つの村を越えて髭をなびかせる者

24.よろずを引くもの-お蔦さんの神楽坂日記No.4-

金春屋ゴメス、善人長屋、無花果の実のなるころに、閻魔の世直し、三途の川で落としもの、いつもが消えた日、上野池之端鱗や繁盛記、まるまるの毬、六花落々、睦月童

 → 西條奈加作品のページ No.1


秋葉原先留交番ゆうれい付き、大川契り、九十九藤、みやこさわぎ、雨上がり、月霞む夜、永田町小町バトル、隠居すごろく、亥子ころころ、せき越えぬ、わかれ縁

 → 西條奈加作品のページ No.2

 


               

21.
「心淋し川(うらさびしがわ) ★★        直木賞


心淋し川

2020年09月
集英社

(1600円+税)



2020/10/05



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江戸は千駄木町の一角である心町(うらまち)。
そこに流れる心淋し川と呼ばれる小さな川は、水が淀み、臭いにおいも放つ場所。
その両側にならぶ古びた長屋に住む人々は、その心淋し川に似合ってまさにどん詰まりに生きている、という風。

どん詰まりの場所に吹き寄せられたような、そこに住む人々の姿を描いた連作ストーリィ6篇。

長屋ものストーリィによくあるような人情、助け合いといった肯定的な雰囲気は本作にありません。
そこにあるのは、これまで過ごしてきた人生の悲哀、そして今後もそれが続くのではないかという諦め。
しかし、そうした境遇であっても、自分の気持ちを切り替えることで前向きに生きていくことができる。
完璧な人生などあろう筈もないし、夢見たような人生を送れる筈もない。でも踏ん張れば、それなりの幸せも手に入れることができる、そう本短篇集は語っているようです。

読んで楽しいどころかむしろ重たく辛いものを感じてしまうことの多い、幸不幸の様々な短篇集ですが、何処かで希望も感じる取ることができる、そんな一冊です。

「心淋し川」:ちほ・19歳は、紋上絵師の男と結ばれてこの長屋から出ていくことを夢見るのですが・・・。
「閨仏」:おかめばかりの妾4人を一つ家に住まわせていた六兵衛でしたが、その後の道をりきはどう選び取るのか・・・。
「はじめましょ」:小さな食い物屋を引き継いだ与五蔵は、いつも一人で遊んでいる7歳の女の子=ゆかと出会う・・・。
「冬虫夏草」:怪我で下半身が不随となった我儘息子を献身的に世話する母親の心底にあるものは・・・。
「明けぬ里」:かつて同じ根津遊郭にいながら、今は対照的な暮らしを送る明里よう(葛葉)。しかし、本当はどちらが幸せと言えるのか・・・。
「灰の男」:長屋の差配である茂十、物置に棲む痴呆の楡爺、2人の過去に何があったのか・・・。

※「閨仏」と「はじめましょ」、私はこの2篇が好きだなぁ。

心淋し川/閨仏/はじめましょ/冬虫夏草/明けぬ里/灰の男

                     

22.
「婿どの相逢席 ★★


婿どの相逢席

2021年06月
幻冬舎

(1600円+税)



2021/07/23



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小さな楊枝屋の四男坊である鈴之助、相思相愛のお千瀬から望まれ、その実家=大店の仕出屋である「逢見屋」に目出度く婿入りという筈だったのですが・・・・
祝言の翌朝早々、上座に座った大女将=義祖母の
喜根・女将=義母の寿佐から、逢見屋の差配は代々女将が行う(若女将の千瀬を含む)、鈴之助は何もせず子作りに励んで貰えばよいと言われ、唖然。

それでも、千瀬から頼りにしていると言われた言葉を支えに、何とか千瀬のために役立とうとします。
堅実な商いを守って来た逢見屋でも様々な騒動や難題は起きるというもので、その都度、鈴之助がさりげなく奮闘する、という連作ストーリィ。

舞台設定と鈴之助のキャラクターが絶妙で、文句なく面白い。
鈴之助の活躍も、余計なことをと叱られつつも、分をきちんとわきまえているところが読み処です。
なお、本作設定の男女を入れ替えてみれば、鈴之助が言われたことはそのまま大店に嫁入って来た女性たちに通じることだとおもいます。
そう思えば、コミカルな中にも考えさせられることは色々あり、というものです。

なお後半、逢見屋に仇しようとする思いがけない敵が現れます。
お千瀬、そして逢見屋を守ろうとしての鈴之助の行動には、ミステリ、サスペンス要素もたっぷりです。

総じて、家族愛を元にした連作時代小説。
義妹となった
お丹、お桃、そして鈴之助の三兄である杉之助のキャラクターも魅力的です。 お薦め。

1.逢見屋の婿/2.閻魔の休日/3.井桁の始末/4.初午の災難/5.菱に片喰/6.墨堤・花見の宴/7.伊奈月の宵/8.落ち椿/9.悲喜交々/10.因果応報

             

23.
「六つの村を越えて髭をなびかせる者 ★★☆


六つの村を越えて髭をなびかせる者

2022年01月
PHP研究所

(1800円+税)



2022/02/06



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江戸時代の中期~後期、実在の蝦夷地冒険家=最上徳内(1754~1836)を描いた長編。

出羽の百姓の長男に生まれながら、その学問の才を認められて江戸に出、算学家の
永井右沖、次いで本多利明の「音羽塾」に学びその才を発揮する。
田沼意次肝入りの蝦夷見分隊に、師の本多利明に代わって参加、蝦夷地に渡り、その地でアイヌの少年らと親交を結び、アイヌ語を習得する。
その後、田沼意次の失脚、松平定信が老中首座に就き、蝦夷地政策は大きく転換し、見分隊の一員であった
青島俊蔵たちや徳内の状況も大きく揺さぶられます。
しかし、蝦夷やアイヌに詳しいという能力から普請役として武士に引き立てられ、普請役人として6度、生涯で9度も蝦夷に渡るという足跡を残した人物。

とにかく面白いです。
まだ見たことのない地に渡り、見たこともないアイヌの民に出会って親交を結び、アイヌ語を習得する・・・まさに“冒険行”と言って間違いありません。
そして、最上徳内という主人公のキャラクターが抜群。何とも愛嬌があって、皆が皆、徳内の望みを叶えてやろうと動くところが楽しい。
さらに、徳内が出会い、アイヌの世界に親しむ案内人となったアイヌの少年=
フルウ(フリゥーエン)との交流が、何とも魅力的なのです。
本書の表紙絵は、蝦夷の陸地を2人で旅する、徳内とフルウの後ろ姿でしょう。見ているだけで楽しくなってきます。

また、後に徳内の妻となる
嶋屋のふでも、魅力的で面白いキャラクター。

本作を読みながら、アイヌの民を見下して差別し、虐げてきた和人の行動が恥ずかしくなりますが、現代日本に置き換えて考えるならが、東南アジア等からの移民・出稼ぎ者を区別し、いろいろな制約を加えている日本政府の有り様は、当時と全く変わっていないように感じます。

※アイヌを描いた小説と言えば、
川越宗一「熱源が忘れられません。

1.音羽塾/2.松前/3.アッケシ/4.フリゥーエン/5.イコトイ/6.陸の海/7.霧の病/8.外つ国の友/9.実らずの実/10.浪々/11.野辺地/12.乱/13.鎮撫/14.凱旋/15.空蝉/16.光明/最終話.六つの村を越えて髭をなびかせる者

               

24.
「よろずを引くもの-お蔦さんの神楽坂日記 ★☆


よろずを引くもの

2022年05月
東京創元社

(1500円+税)



2022/06/23



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料理上手な高校生の孫=滝本望と、元芸妓で料理ダメな祖母=お蔦さんコンビによる日常ミステリお蔦さんの神楽坂日記、5年半ぶりの第4弾。

基本的な設定は何も変わりませんから、前巻から引き続き、それなりに楽しめます。
主人公の
、幼馴染の洋平、大叔父の娘で同じ高校生の、彼らには高校生の青春風景を感じます。

「よろずを引くもの」:商店街で万引き被害が多発。望と洋平が犯人を見つけますが(万引きのこと)、そこにお蔦さん。
「ガッタメラータの腕」:美術部の先輩=穴水部長が作った石膏像の腕が盗まれた?
「いもくり銀杏」:鈴木フラワーの央子さんが、幼い2人の子どもを連れて店に。母親が出奔?
「山椒母さん」:お蔦さんが何と緊張しまくり。その客は、かつての置屋のお母さんとか。その口ぶり、お蔦さんと似る。
「孤高の猫」:野良猫のハイドンが行方不明。皆で探すが見つからず。そんな時、望と洋平が掴んだ手掛かりは・・・。
「金の兎」:お蔦さん、浜松へ。昔の役者仲間の家を訪ねたその理由は・・・。
「幸せの形」:望のためのエピローグ。

よろずを引くもの/ガッタメラータの腕/いもくり銀杏/山椒母さん/孤高の猫/金の兎/幸せの形

        

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