西條奈加
作品のページ No.2



11.
秋葉原先留交番ゆうれい付き

12.大川契り
-善人長屋-

13.九十九藤

14.みやこさわぎ-お蔦さんの神楽坂日記-

15.雨上がり月霞む夜

16.
永田町 小町バトル

金春屋ゴメス、善人長屋、無花果の実のなるころに、閻魔の世直し、三途の川で落としもの、いつもが消えた日、上野池之端鱗や繁盛記、まるまるの毬、六花落々、睦月童

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11.

「秋葉原先留(さきどまり)交番ゆうれい付き」 ★★


秋葉原先留交番ゆうれい付き

2015年09月
角川書店刊
(1600円+税)

2018年04月
角川文庫化



2015/10/31



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秋葉原に復活した“先留”交番を舞台に、凸凹コンビの交番勤務警官2人と足だけの幽霊が活躍する、連作短編風&長編事件ものストーリィ。

下半身が極めて緩く、またもや女性関係で謹慎処分を喰らった警官=
向谷弦(むこうや・ゆずる)。その向谷に連れられて再び秋葉原に戻ってきたというのが、足だけの幽霊となり向谷から「足子さん」と呼ばれる渡会季穂、20歳
その2人を迎える先留交番勤務の警官は、30歳前後の権田、季穂が仇名する処の「メガネトド」。
(もっとも季穂の足は向谷には見えるが、権田には見えない)
まもなく足子のことを権田が、メイド喫茶「
桃飴屋」のメイドで行方知れずとなったままの玲那ではないかと気づきます。

何故、季穂は足だけの幽霊となったのか。その謎を解く長編ストーリィに並行して、秋葉原を舞台にした幾つかの事件の解明が連作短編小説風に繰り広げられるという二重構成。
風体とアニオタという人物像からは想像できない権田の意外な慧眼と捜査能力も見処ですが、何と言っても惹かれるのは、足だけという抜群に個性的な渡井季穂の幽霊造形。

不器用で頑張り屋だった季穂、何とか元に戻してやれないものかと思うのは、きっと私だけではないでしょう。
でも、事件が解決したからと言って季穂は成仏する訳でもなく、本書はシリーズものになりそうな気配有り。
今後がとても楽しみです。

オタクの仁義/メイドたちのララバイ/ラッキーゴースト/金曜日のグリービー/泣けない白雪姫

          

12.
「大川契り-善人長屋- ★★


大川契り

2015年11月
新潮社刊

(1500円+税)

2018年07月
新潮文庫化



2015/12/09



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人助けが生き甲斐という本物の“善人”である錠前屋の加助、その加助が毎度持ち込む厄介事に実は裏では“悪党ども”という千七長屋の住人たちが振り回され、否応なく裏稼業の技を駆使して大奮闘するという、善人長屋”シリーズ第3弾。
第1作は連作短編、第2作は長編、そして本書は前に戻って連作短編という構成です。

それにしても毎度毎度、性懲りもなく、人助けのつもりで厄介事を持ち込んでくるものだなぁと、いくら小説とはいえ溜息がでる程です。
冒頭で情報屋の半造が悲鳴を上げていますが、その心境も分かるというもの、つい笑ってしまいます。
いくら人が好いと言っても、何ら洞察力も解決能力も持たず、自分を除く長屋の住人が駆けずり回って苦労しているというのにノホホンとしているところは、もはや「善人」と言うより「厄介人」と言うべきではないかと思う次第。
もっとも「善人長屋」という題名、皮肉を篭めたものなのですから、加助は善人というセリフにも通じることなのかも。

連作短編とはいえ、主人公と言うべき
お縫や住人たちの状況にも多少の進展はあります。
本書では、お縫の5歳上の兄=
倫之助と、10歳上の姉=佳代が顔を出します。また、お縫と文吉の関係にもやや変化が見られる様子。
見逃せないのは、お縫の両親である
儀右衛門お俊の過去物語。思いがけないストーリィに目がテンになりました。

「泥つき大根」:倫之助の義母が25歳もの泥臭い男に恋慕?
「弥生鳶」:掏摸の名人が復活? おかげで安太郎が苦境に。
「兎にも角にも」:加助が連れてきた梅蔵、どうも胡散臭い。
「子供質」:何と子供が千鳥屋に置き去りにされ、子供質?
「雁金貸し」:借金証文の金額が何故3両から5両へ?
「侘梅」:美人局兄弟の唐吉が弟の文吉に隠し事?
「鴛鴦の櫛」:お縫の両親=お俊と儀右衛門の物語-前編
「大川契り」:上記後編にして千鳥屋を襲った凶事の解決編

泥つき大根/弥生鳶/兎にも角にも/子供質/雁金貸し/侘梅/鴛鴦の櫛/大川契り

             

13.
「九十九藤(つづらふじ) ★★


九十九藤

2016年02月
集英社刊

(1500円+税)



2016/03/22



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新たに口入屋(人材斡旋業)の差配を任されたお藤が辣腕を振るう、江戸版ビジネスストーリィ。

当時の口入屋というと、主な仕事は武家への中間者の斡旋。しかし、
増田屋太左衛門が余業で始めた冬屋(かずらや)は儲けどころか赤字続き。いっそ商家を相手に新しい口入屋ビジネスを始めたらと提案したお藤が、太左衛門から冬屋の差配を任せられたところから本ストーリイは始まります。

果たしてお藤、どんなビジネススタイルを考え付き、そして如何に実現させようとするのか。その面白さもさることながら、新スタイルの商売がうまく行き始めればやっかみ半分の既得権者による妨害が入ってくると、この辺りは現代ビジネス小説と何ら変わりません。
そのお藤が如何にして冬屋の差配を任せられるに至ったか、この経緯も中々にドラマチック。
さらに、江戸の裏社会を牛耳る
黒羽の百蔵との因縁、激突という試練がお藤を待ち受けます。

前半はビジネスストーリィ。後半は強欲な既得権者や強大な力を誇示する裏社会のボスとの全面対決という、波乱万丈にして迫力満点のハードストーリィが繰り広げられます。
そうした2つの面白さが満喫できるのですから、本書はかなり読んでお得な時代小説と言えます。お薦め!

       

14.

「みやこさわぎ-お蔦さんの神楽坂日記- ★☆


みやこさわぎ

2016年10月
東京創元社刊

(1296円+税)



2016/11/25



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料理上手な高校生の孫=滝本望と元芸妓で料理ダメの祖母=お蔦さんコンビが活躍する日常ミステリ“お蔦さんの神楽坂日記”シリーズ第3弾。

基本的に事件は、神楽坂周辺を舞台にお蔦さんの知人あるいは望の友人たちの間で起こるというパターンですから、本シリーズについては、神楽坂人脈あるいは学校人脈を舞台にした“地域密着型日常ミステリ”と言うべきでしょう。
<高校青春もの>と<現代版江戸市井もの>という要素を兼ね備えているからこそ、居心地良く、気軽に楽しめるところが本シリーズの魅力。

「四月のサンタクロース」:小2の真心ちゃん、自分の所為で両親が離婚するかもしれないと泣き出す。その真相は?
「みやこさわぎ」:若手芸妓の都姐さんが寿退職。「これ以上迷惑をかけられない」という言葉の意味は?
「三つ子花火」:手がかかる2歳児の三つ子と書き置きを残して母親が突然一週間の旅行へ。その事情、真意は?
「アリのままで」小坂翠の同級生=笹井真棹の挙動不審と、の元気ない様子のその理由は?
「百合の真贋」:元神楽坂にあった布団屋の遺産分け騒動に巻き込まれたお蔦さん、さてどうこれを裁くのか。
「鬼怒川便り」:鬼怒川から届いた鮎に望、ふと昔、温和な祖父がひどく怒っていた姿を思い出す。その理由は何だったのか。
「ポワリン騒動」森彰彦の兄=行也が女の子に入れ揚げて大金を融通? 心配する友人のため、望と洋平が真相解明のため動き出します。

四月のサンタクロース/みやこさわぎ/三つ子花火/アリのままで/百合の真贋/鬼怒川便り/ポワリン騒動

                    

15.
「雨上がり月霞む夜 ★★


雨上がり月霞む夜

2018年11月
中央公論新社

(1600円+税)



2019/02/23



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江戸後期、上田秋成によって著わされた読本「雨月物語」を現代的に蘇らせた連作短篇集。
収録されている9篇の題名は、「雨月物語」の9篇をもじったもの。

主な登場人物は3人。
病弱で家に引きこもりがちな
常盤木雨月(正太郎)、雨月が出会って家に誘った何百年を過ごした妖しの白兎「遊戯」、雨月の幼馴染みで商人を廃業し医者の修業中である上田秋成(仙次郎)
その3人が、あちこちで様々な怪異に出会う、という筋書き。

怨念に充ちた亡霊、化け物の如き男、生きながら呪われた女、狂気に捉われた男、父を殺す念に囚われた息子、捨ててきた妻の呪いに怯える男、妖しの女、外道に堕ちた僧。
そして最後は、訳ありだった雨月の正体がついに明らかに。


雨月、遊戯が秋成に対し語って曰く、亡霊が人に災いをなすことなどない、災いを成すのはその人間の内にある業に他ならない、という言葉は現代においても得心できるなぁ。

怪奇ものであり、同時に人間の尽きない愚かしさを描いた作品でもある、連作短篇集。それなりに楽しめました。


紅蓮白峯(ぐれんしらみね)/菊女の約(きくじょのちぎり)/浅時が宿(あさじがやど)/夢応の金鯉(むおうのきんり)/修羅の時(しゅらのとき)/磯良の来訪(いそらのらいほう)/邪性の隠(じゃせいのいん)/紺頭巾(あおずきん)/幸福論(こうふくろん)

       

16.
「永田町 小町バトル ★★


永田町小町バトル

2019年02月
実業之日本社

(1650円+税)



2019/02/26



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現役キャバ嬢である芹沢小町、34歳。何と国会議員に。

題名と上記主人公像を知ると、永田町を舞台にした騒動劇と思いますが、いやいや本作、そんなドタバタ劇ではないどころか、かなり真剣な政策論争ストーリィ。

主人公の芹沢小町、離婚してシングルマザー。7歳の娘=
菓音を連れて東京に出てきた当時泣きたくなるくらい苦労をしたのは、仕事探しと幼い娘を預ける先の問題。
そうした苦労の末に今は、キャバ嬢にして<夜間託児所と子育て支援>を取り扱うNPOの代表。
そして、法律を変え、予算を勝ち取ることができるのは国会議員だけ、と野党から国政選挙に出て初当選した、という次第。

小町を囲む事務所の秘書たちやNPOの仲間たちと、顔ぶれは多彩ですが、その中でも感動的なのは、人のために戦おうとしているお母さんは恰好いい!と健気に応援してくれる菓音の存在。

その一方、マスコミが話題にしたのは、小町と対照的で共に新人議員となった、与党に所属する世襲議員=
小野塚遼子、36歳
後半、本書題名の“バトル”とはこのことか、とようやく意味が分かりました。

面白いことは勿論面白いのですが、真剣に向かい合いたいと思ったのは、シングルマザー、特に未婚のシングルマザーにとって、現在の生活&育児支援制度が余りに力不足、配慮・柔軟性を欠いていること。
その部分だけでも、読むに値すると評価したい。
本作を読んで、この問題に少しでも多くの人が関心をもっていただければと、心から思います。

  

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