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41.みつばの泉ちゃん 42.夫妻集 43.うたう |
【作家歴】、みつばの郵便やさん、転がる空に雨は降らない、牛丼愛、それは甘くないかなあ森くん、片見里なまぐさグッジョブ、みつばの郵便やさん−先生が待つ手紙−、ホケツ! その愛の程度、ひりつく夜の音、みつばの郵便やさん−二代目も配達中− |
近いはずの人、家族のシナリオ、太郎とさくら、本日も教官なり、みつばの郵便屋さん−幸せの公園−、それ自体が奇跡、ひと、夜の側に立つ、みつばの郵便屋さん−奇蹟がめぐる町−、ライフ |
ナオタの星、縁、まち、今日も町の隅で、食っちゃ寝て書いて、タクジョ!、みつばの郵便屋さん−階下の君は−、今夜、天使と悪魔のシネマ、片見里荒川コネクション |
とにもかくにもごはん、ミニシアターの六人、いえ、奇跡集、みつばの郵便屋さん−あなたを祝う人−、レジデンス、タクジョ!−みんなのみち−、みつばの郵便屋さん−そして明日も地球はまわる−、銀座に住むのはまだ早い、君に光射す |
41. | |
「みつばの泉ちゃん」 ★★ |
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「みつば」「泉」という単語から、ファンの方はすぐ気づかれたでしょうか。 そう、本作の主人公、「みつばの郵便屋さん」で平本秋宏にいつもコーラやお茶を提供してくれる、あの片岡泉なのです。 小学三年生の泉ちゃんから始まり、結婚して木村泉となった33歳までを、泉ちゃんと関わりをもった人たちを主人公にして綴る連作ストーリィ。 冒頭の泉ちゃん、素直で本当にいい子なのです。 当時、両親が喧嘩状態にあったことから2年間、泉ちゃんは祖母の柴原富さんとあきる野市で二人暮らし。 その頃に泉ちゃんと関わったのが、実家が営むコンビニ店を手伝っていた大学生の明石弓乃。 それから、船橋市の中学一年時に創作文クラブで一緒になり、友人となった米山綾瀬、3歳下の従弟=柴原修太、アパレル店の店長でバイト店員の泉を評価する杉野大成、泉の元カレである井田歌男の視点から、いつも率直に好意を示し、裏表のない片岡泉の人物像が語られます。 皆、片岡泉という存在に触れるだけで、なんとなく楽しい気分になってくる、元気が出てくる、そんな存在は目立たないかもしれませんが、貴重でしょう。 「みつばの郵便屋さん」でもそれは同じだったと思います。 私もそんな片岡泉と、是非知り合ってみたい。 井田歌男と付き合った時、泉は蜜葉市みつばの<メゾンしおさい>住まい。平本秋宏との最初の出会いも描かれており、ファンとしては楽しいところです。 これからもこのままでと、泉へ心からエールを贈りたいです。 1995年−明石弓乃・22歳/1999年−米山綾瀬・13歳/2003年−柴原修太・14歳/2011年−杉野大成・34歳/2012年−井田歌男・26歳/2016年−片岡泉・30歳/2017年−木村泉・31歳/2018年−木村泉・32歳/2019年−木村泉・33歳 |
42. | |
「夫妻集」 ★★ |
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文字どおり、様々な夫婦の在り様を描いた連作もの。 総合出版社=景談社の人事部長である佐原滝郎(55歳)は、一人娘の楓(27歳)が自宅に連れてきた結婚相手だという池本悠を面接(?)してダメ出し。 ところが妻の和香は逆に頼もしいと評価し、滝郎の態度は偉そうで失礼だった、嫌だったと、批判されてしまう。 そこから語られる、景談社の部下たちの夫婦模様を知って後、滝郎の考え方は果たして変わるやら? ・「足立夫妻」:販売部所属の足立道哉(25歳)は、大学時代からの交際相手と結婚したばかり。ところが、電機メーカー勤務の新妻=結麻が名古屋本社に2年予定で転勤となり、新婚僅か2週間後から別居婚に。さて道哉、どうする? ・「船戸夫妻」:文芸第二部所属の奥井美奈(35歳)、小一の息子を連れて8歳年下の幹人と再婚。幹人、息子を可愛がってくれ順調だったが、・・・。 ・「江沢夫妻」:ライツ事業部の副部長である三橋梓乃(45歳)、夫の厚久(48歳)が突然、会社を辞めて沖縄に移住し植木職人の修業を始めたいと言い出したことに仰天、そして憤り。受験前の二人の子を抱え、夫婦はどういう結論を出すのか。 ※「断章」の小倉琴恵は作家、奥井美奈が担当編集者・・・。 各章で、夫婦の片方がもう一方に差し出す、余り有名ではない作家の小説として“夫婦三部作”が登場するのも楽しい。 その意味で本作、“三部作”に連なる“夫婦”連作集と言ってよいのでしょう。 ※なお、百波や春行の名前も登場します。 一口に夫婦といっても、今や定型的な形に押し込めようなどとしない方が良いのだろうと改めて感じます。 それぞれが幸せになれる形を探せばよいのでしょう。 佐原夫妻−10月16日(日)−/足立夫妻−10月から11月−/船戸夫妻−11月から12月−/江沢夫妻−11月から12月−/断章:小倉琴恵−12月16日(金)−/佐原夫妻−1月から5月−/断章:小倉琴恵−10月16日(月)− |
43. | |
「うたう」 ★★ |
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大学時から6年間にわたってバンドを組んでいた4人、バンド活動にまだ想いを残しながらだったり、諦めきれないでいたりとバンド解散後の状況は4人それぞれですが、今は誰もバンド活動をしていない処は共通。 そんな4人の、バンド活動を含む来し方と現在の状況、そして新たな一歩を踏み出すまでを描いた連作ストーリー。 ・古井絹枝(ヴォーカル) 4人の中で唯一人就活し、現在は書店員。中学生の時に死去した母親に、悲しませる言葉を発してしまった後悔を今も引きずる。 ・伊勢航治郎(ギター) 今もプロをめざすと言いつつ、実態は恋人にたかってばかりというだらしなさ。ついにその彼女からも絶縁を宣言され・・・。 ・堀岡知哉(ベース) 既婚。ずっとバーでアルバイト働き。妻は雑貨店勤務、仕事好きの正社員。その妻からそろそろ子どもが欲しいと言われ・・・。 ・永田正道(ドラム) 家庭教師派遣会社に登録し家庭教師の仕事。その傍ら行政書士試験の合格を目指している処。 あぁ青春だなァと感じられる、それぞれのストーリィに読み応えあり。 しかし、いつかは青春という時期に別れを告げなくてはならない時期が来ます。それが彼らにとって、今なのでしょう。 良いなぁと感じたのは、航治郎を除いて、3人がよく歩くこと。 街を一人歩き回れば、新しく感じることもあり、いろいろ落ち着いて考えることもできる、というものです。 「ひと」「まち」「いえ」に連なる心地良さが本作品にもあります。 また、それぞれの主人公に親近感を抱けるところが小野寺作品の良さでしょう。ただし、伊勢航治郎は除き、かな。 うたわない−古井絹枝/うたう 鳥などがさえずる−伊勢航治郎 G/うたう 明確に主張する−堀岡知哉 B/うたう 詩歌をつくる−永田正道 D/うたう 音楽的に発生する−古井絹枝 V |
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