小野寺史宜(ふみのり)作品のページ No.3



21.縁(ゆかり)

22.まち

23.今日も町の隅で

24.食っちゃ寝て書いて

【作家歴】、みつばの郵便やさん、転がる空に雨は降らない、牛丼愛、それは甘くないかなあ森くん、みつばの郵便やさん−先生が待つ手紙−、ホケツ! その愛の程度、ひりつく夜の音、みつばの郵便やさん−二代目も配達中−、近いはずの人

小野寺史宜作品のページ No.1


家族のシナリオ、太郎とさくら、本日も教官なり、みつばの郵便屋さん−幸せの公園−、それ自体が奇跡、ひと、夜の側に立つ、みつばの郵便屋さん−奇蹟がめぐる町−、ライフ、ナオタの星

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21.

(ゆかり)  ★★☆


縁

2019年09月
講談社

(1450円+税)



2019/10/13



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ふとした人の繋がりが、人を救い、幸せにすることもある、といった姿を描く円環ストーリィ。

「霧」の主人公は室屋忠仁・38歳。少年サッカークラブでボランティアのコーチ。選手の一人である寛斗のシングルマザー・美汐との仲を疑う噂に、好意は確かにあったものの辞めると即決断。
「塵」はOLの春日真波・28歳。人のことを何かと批判してばかり。彼氏から別れを切り出されるのも当然と思いますが・・。
「針」はバツイチ、会社では万年係長の田村洋造・52歳。別れた息子の尻拭いをした後、かつてパパ交際していた春日真波から6年ぶりに連絡を受ける。自分は甘いのか。
「縁」は、田村洋造と同窓会で再会した国崎友恵。離婚後家政婦として働くが、カツカツの生活。息子の瑞哉の就活、何とか手助けしたいと思い・・・。

春日真波はちょっと?が付きますが、基本的に皆、善良で心優しい人たちばかり。
それでも、悪い道への誘惑や、行動に迷うことは幾度もあるでしょう。
各篇の主人公たち、最後のところで留まった、それが大事なこと。そしてそれを支えたのは、人との繋がりだったと思います。

小野寺さん、人と人の温かな繋がりを描くのが上手いですが、本作はその中でもとくに圧巻。
各篇の登場人物たちが他の篇にも登場し、各篇ストーリィが繋がりあっているところに楽しい読み応えあり。
なお、「霧」の主人公である室屋のその後が気になりますが、それは読者の想像に任されたようで、それはそれで楽しい。

霧/塵/針/縁/終

         

22.

「ま ち ★★☆


まち

2019年11月
祥伝社

(1500円+税)



2019/12/09



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いい小説だなぁと心から思える、感じられる一冊。

主人公は
江藤瞬一、23歳。尾瀬ヶ原が広がる群馬県片品村育ち。
小3の時、宿屋を営んでいた両親が火事で死去。それ以来「
歩荷(ぼっか)」仕事をしていた祖父=紀介に育てられる。
高校を卒業した瞬一は、祖父から
「東京に出て、よその世界を知れ。知って、人と交われ」と言われて単身東京へ。荒川に近い江戸川区平井のアパートに住み、コンビニ、引っ越しのバイトをしながら4年が経ったという状況。

瞬一、いつも淡々、飄々としている感じ。でも、きちんと人に接し、仕事がバイトであろうときちんと働き、きちんと暮らしているという印象です。つい
みつばの郵便屋さん=平本秋宏を彷彿とさせられます。
また、祖父から受け継いだのか、自分の身体を使って働きたい、という。この言葉がとても良いし、新鮮です。

頭を使うという働き方は、もしかするとエゴや損得、無理を生じさせてしまうのかもしれません。身体を使って働くのであれば自ずと限界があり、背伸びはしないで済む、余計な欲をかかずにいられるのかもしれません。

バイト暮らしといっても、行き詰ってのフリーターではありません。きちんと考えるための準備期間という気がします。そもそも田舎暮らしからいきなり東京へ出てきたのですから。

単純でいい、地道にきちんと生きる、それがどんなに大事で、かけがえのないことか。本作はそれを気づかせてくれます。
そうしたことがじっくりと伝わってくる作品です。

同じアパート住まいの
君島敦美・彩美母子、笠木得三さん、バイト仲間の野崎万勇等々、そして故郷の人や同級生たち。
いつのまにか瞬一がきちんと人との繋がりを広げ、自分の居場所を見つけていることが、とても嬉しい。 
いつの間にかじわじわと、温かさ、幸福感が伝わってきます。

       

23.
「今日も町の隅で WHAT GOES ON AT THE CORNER OF THIS TOWN ★★


今日も町の隅で

2020年02月
角川書店

(1700円+税)



2020/04/21



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人生における日常的な一コマを描いた、小野寺さん初の短篇集。

主人公は、11歳(小五)から始まり42歳まで。順々に年齢を追っていく短篇構成に、何やら人生を辿っているような楽しさ(辛さではなく)を感じます。
思ったようにいかないことも多いのですが、それを肯定的に受け止められるかどうか、笑ってしまえるかどうかでその後の人生も変わる筈、そう思わせてくれる短篇集です。

「梅雨明けヤジオ」:小五の島愛里、同級生の長野くんに誘われ県大会野球の試合観戦。そこで遭遇したのがヤジオ。そのヤジオのおかげで気持ちが前向きに。
「逆にタワー」:バンドのリードギターを降格された中三の水谷悠太、同級生の上条乃衣と初デート。予定とは違ってしまったが、悠太に前向きな気持ちが生まれる。。
「冬の女子部長」:高二の森田幹矢、派手な母親のフユにいつも振り回されているため、自分一人で女子研究の部活動。
「チャリクラッシュ・アフタヌーン」:バンドデビュー出来なかったことを今も引きずるケント、28歳。小学生に自転車でぶつかられたことが、自分を見直す契機に。
「君を待つ」:思いがけない繋がりのあった木塚駿作・29歳西川那美。お互いに難しさはあるが、今嬉し涙の時を迎える。
「リトル・トリマー・ガール」:小説家を目指すが一向に目途立たずの佐藤一臣・30歳。思いがけない出会いに幸せ感。
「ハグは十五秒」古川守・31歳、妻の好美を毎朝ハグするのが習慣。その好美から、困っている元カレを泊めてあげて良いかと問われ・・・。
「ハナダソフ」斎藤周平・40歳、バツイチ。中学の同窓会で大塚豪・夏美夫婦と久々の会話。憧れの花田あかりの登場を待つが、あかりにしろ夏美にしろ色々あったと、今にして知る。
「カートおじさん」直美・42歳、今やレジのおばちゃん。でも、おばちゃんになっても好いことはある。
「十キロ空走る」早瀬行人・42歳。引越作業中、結婚する前の高松道代と一緒に出たTV番組収録ビデオを見つけ・・・。

梅雨明けヤジオ/逆にタワー/冬の女子部長/チャリクラッシュ・アフタヌーン/君を待つ/リトル・トリマー・ガール/ハグは十五秒/ハナダソフ/カートおじさん/十キロ空走る

        

24.
「食っちゃ寝て書いて EAT.SLEEP.WRITE. ★★☆


食っちゃ寝て書いて

2020年05月
角川書店

(1700円+税)



2020/06/25



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もう一つヒット作を書けていない小説家の横尾成吾・50歳
片や、編集者歴4年になるも未だヒット作を出したことがない編集者の
井草菜種・30歳
その2人がお互いに本気で向かい合い、新作刊行を目指すというストーリィ。
前任編集者から書き直していた原稿をボツにされ、横尾ががっくりした3月から始まり、ついに新作刊行に至るまでの1年間を、月毎、視点を横尾と井草を交互に替えながら描く構成。

ベストセラー作家ならいざしらず、それ程売れない作家というのは本当に大変なんだろうなぁと思わされます。
ずっと独身、ワンルームマンション住まい、質素な食生活、編集者の指摘も素直に受け入れて、ただひたすら刻苦精励し書き続ける日々。作家という華麗なイメージと異なる、まるで修行僧の如き涙ぐましい生活ではありませんか。

これって、売れている、売れていないという違いを除けば、小野寺さん自身の執筆生活そのものではあるまいか。その意味では、とてもリアルな“小説家苦闘物語”です。

そのリアルさが面白いと思って読み進んでいたら、最後に、あぁヤラレタ!
今ノッている作家は、ただの人ではなかったのです。

小野寺さんにまんまとしてやられた、という感はあるのですが、それが気持ち良い。脱帽です。
ファンには、是非お薦めの快心作です。


三月の横尾成吾/四月の井草菜種/五月の横尾成吾/六月の井草菜種/七月の横尾成吾/八月の井草菜種/九月の横尾成吾/十月の井草菜種/十一月の横尾成吾/十二月の井草菜種/一月の横尾成吾/二月の井草菜種

       

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