|
11.近いはずの人 12.家族のシナリオ 13.太郎とさくら 14.本日も教官なり 15.みつばの郵便屋さん−幸せの公園−−みつばの郵便屋さん No.4− 16.それ自体が奇跡 17.ひと 18.夜の側に立つ 19.みつばの郵便屋さん−奇蹟がめぐる町−−みつばの郵便屋さん No.5− 20.ライフ |
【作家歴】、みつばの郵便やさん、転がる空に雨は降らない、牛丼愛、それは甘くないかなあ森くん、片見里なまぐさグッジョブ、みつばの郵便やさん−先生が待つ手紙−、ホケツ! その愛の程度、ひりつく夜の音、みつばの郵便やさん−二代目も配達中− |
ナオタの星、縁、まち、今日も町の隅で、食っちゃ寝て書いて、タクジョ!、みつばの郵便屋さん−階下の君は−、今夜、天使と悪魔のシネマ、片見里荒川コネクション |
とにもかくにもごはん、ミニシアターの六人、いえ、奇跡集、みつばの郵便屋さん−あなたを祝う人−、レジデンス、タクジョ!−みんなのみち−、みつばの郵便屋さん−そして明日も地球はまわる−、銀座に住むのはまだ早い、君に光射す |
みつばの泉ちゃん、夫妻集、うたう、町なか番外地、モノ、日比野豆腐店 |
11. | |
「近いはずの人」 ★★ |
2020年01月
|
学生時代に付き合い、27歳の時に再会して結婚した妻の絵美。 その妻が突然に交通事故死。 友達と泊りに行くといった温泉宿に向かう途中、タクシーが崖から転落しての死だった。しかし、一緒に行く友達が誰だったかは判らないまま。 夫である主人公の俊英、33歳は、毎晩カップラーメンと缶ビールで食事を済ませる傍ら、妻の遺品となった携帯のロックを外そうと番号を打ち込み続ける。 そしてついにロックが解除された時、まるで知ることのなかった妻の秘密が・・・。 恋愛結婚の妻が突然に死去、それもよく判らない状況で。 納得できない気持ちを抑えられない、という主人公の気持ちは当然のことだろうと思います。 その仔細が判るかと毎晩数字を入れ続けた末に行き着いたものは、さらなる妻の謎。 自分を振り返り、そして妻のことや互いの実家のことを振り返り続ける一年間が月を追って描かれます。 喪失感を抱える自分の心に決着をつけるためにはそれだけの時間が必要だった、とも言えます。 その最後に主人公が辿りついた思いこそ、そこから前へ足を踏み出すために必要な着時点だったのでしょう。 夫婦であっても元々は他人、夫婦になったからといって相手のことを全て知っている訳ではない、と考えられる人であれば共感できるストーリィではないでしょうか。 一年間苦しみ続け、その時間を経てこれから新しい扉を開けようとしている主人公に対し、エールを送りたくなる一冊です。 後退の九月/懐胎の十月/携帯の十一月/重体の十二月/倦怠の一月/招待の二月/敵対の三月/停滞の四月/忍耐の五月/進退の六月 |
12. | |
「家族のシナリオ」 ★★☆ |
2019年07月
|
高校1年生になった安井想哉の家庭は、一般的に見るとちょっと複雑。 3年前に実父と離婚した母親の早苗は、昨年実父の弟である叔父と再婚しており、主人公は現在、母親、叔父かつ義父である友好=“友さん”、中学1年の妹=れなと4人暮らし。そして離婚した後の実父の直仁は、近くの団地で一人住まいという状況。 そんなある日、母親が家族ではない男性がすい臓癌で余命僅か、自分が最後まで看取ると言い出します。そんなのオカシイ、友さんが可哀相と、れなが反抗心を示します。 一方、想哉はテニス部を早々に退部したところを梅本美衣に誘われて、思いがけなくも演劇部に入部するのですが・・・。 叔父が義父となり、実父は伯父でもあると一見複雑な家庭事情。そのうえ、母親が看取ると宣言した男性の存在が一家に重くのしかかります。実母の早苗は、若い頃に女優。相手の男性は当時のマネージャー、自分にとって恩人なのだという。 そんな家族ストーリィに、演劇部に入部した想哉の学園青春&成長ストーリィが絡む、というのが本ストーリィの構成。 どちらも鮮烈で、深く惹き込まれずにはいられません。 本作は、自分自身と家族の関係を描くストーリィ。 自分の道を進むのに家族に捉われる必要はない、家族が全てではないけれど、親がいて現在の自分があるのもまた事実。 家族との関係と距離感を描いた本作、本当に上手い! ストーリィそのものも面白いですが、読了後は温かいものが胸の内を満たします。お薦め。 ダルダルな一学期/バラバラな夏休み/ギリギリな二学期/キレキレな冬休み/ホロホロな三学期/サラサラな春休み |
13. | |
「太郎とさくら」 ★★ |
|
2020年03月
|
丸山家のさくらと太郎は異父姉弟。母の房子が離婚、連れ子で再婚したという事情によるもの。 その所為かさくらは大学進学も地元の県立大へ、しかも親から出してもらった学費は、31歳までかかって分割返済。そんな姉のおかげで太郎は悠々と東京の大学に進学でき、その学費も親に返済しないまま。 そうした経緯で太郎がちょっと負い目を感じている姉さくらの結婚披露宴に、呼ばれてもいないのにさくらの実父=野口庄造が突然、酒に酔った状態で現れます。お祝いをしたかったというのがその言い分。 追い払われるように立ち去った野口を、太郎はつい追いかけて名刺を渡してしまいます。 東京に戻った太郎の会社にある日、野口から電話がかかってきます。そこから太郎は野口と関わることになり・・・・。 何故自分と関わりのない他人に手を差し伸べてしまうのか。姉さくらの気持ちを考えているのか等々、考えもなしに動いてしまう主人公の太郎に対し、ただ読んでいるだけだというのに、苛々してくる気持ちを抑えきれません。 ところが、終盤に至りある時を以て、そんな印象が一転、まるでオセロゲームで一気に白黒が入れ替わったような気分です。 そうか、そういう意味だったのか。それまで鈍感で間が抜けているように見えた太郎が持っている姉弟愛、優しさに気付かせられました。 この辺りは小野寺さんの巧さ、と言うべきでしょう。 さくらの出番が少ないので見誤りがちですが、本書はやはり本質的には異父姉弟であるさくらと太郎の物語。 ちょっぴり他人行儀なところがある、でもお互いへの気遣いは半端ではないという姉弟関係、好いですよね。 |
14. | |
「本日も教官なり」 ★★ |
|
2020年09月
|
今は密葉市の四葉にある自動車教習所で教官をしている益子豊士45歳の元に、11年前に離婚した元妻の岡美鈴から電話が掛かってきます。 なんと、17歳の高校生である娘の美月が妊娠。ついては相手の親との面談等に付き添って欲しいという依頼。 もちろん応諾したものの、あの幼かった娘がと、その突然事に動揺せざるを得ません。 豊士が指導する教習生の中には若い世代の男女もいる。ついつい彼らに、いろいろと聞いてしまいます。 離婚によって道が分かれた元妻と娘、そして自分。それが親としてはおよそ歓迎できない事態によって再び相まみえることに。 そこから過去に切れたはずの家族の糸が、再び、ただし緩く繋がっていく物語。 もし自分がそんな事態を突然突き付けられたらどうするか。とても即答できるものではありません。 しかし、今や世間体など気にせずにいれば、いろいろな家族のあり様、姿があっても良いのかもしれないと感じさせられます。 本ストーリィでは、主人公以外にも、様々な親子、元家族の姿が 描かれます。 緩やかに繋がる家族の姿が何となく、そして気持ち良い。 形より、まず繋がろうとする気持ちが大事なのだと感じた次第です。 また、自動車教習所の教官として、大事な処で誤ってはいけないという慎重で真摯な主人公の姿勢にも、人間として好感が持てました。 7月-ウィスキー・イン・ジャー/8月-ハング・ダウン・ユア・ヘッド/9月-フライング・ハイ・アゲイン/10月-いつもの朝に/11月-アイ・リアリー・ドント・ウォント・トゥ・ノウ/12月-ブラウン・アイの男/1月-テューズデイズ・ゴーン/2月-夜の精/3月-傑作をかく時 |
15. | |
「みつばの郵便屋さん−幸せの公園−」 ★☆ |
|
|
“みつば町”を担当区域とする郵便配達員を主人公とした「みつばの郵便屋さん」シリーズ第4弾。 シリーズ4作の中でも、特にドラマティックな話のない巻。 それでも主人公である「郵便屋さん」=平本秋宏がバイクで回るところ、出会う人たちの心の中に温かさが伝わり、幸せな気分が広がっていくという雰囲気。 それが本シリーズの良さであり、魅力と言うに尽きます。 (いつもどおり、ほんのりした温かさ&気持ち好さ) ・「かもめが呼んだもの」:加瀬風太という差出人から「四葉・益子先生」宛て、センター試験合格のお礼葉書。ところが宛先住所は不完全、差出人住所は未記入。それでも秋宏、できるものなら相手先に届けたいと四葉の町内を巡ります。 ※秋宏の友人=瀬戸達久と、春行のカノジョである百波の友人である川原未佳が結婚。結婚式は気持ちの好いサプライズ付。 ・「テスト」:特定記録郵便物が届いていないとの苦情。アルバイトの荻野君の代わりに秋宏がその大島家へ。届かなかったのは息子の模擬テストの結果通知だったと。 ※いつもお茶を差し出してくれる片岡泉さん、恋人が海外赴任となり遠距離恋愛に。不安と迷いをぽろり。 ・「お金は大切に」:篠原ふささん、孫の海斗くんへのお小遣いをつい普通郵便の中に。気が付いてしまった秋宏、現金書留でのお願いをしに再び篠原家へと戻ります。 ※百波が初出演の映画で助演女優賞を受賞。秋宏の実家で春行と百波を迎えてお祝い。 ・「幸せの公園」:公園でいつも弁当を食べている歯科医院の歯科衛生士=遠山那奈さん、久しぶりの光景を見たと思ったら、呼び止められ郵便物を託されると共に、ある打ち明け話・・・。 かもめが呼んだもの/テスト/お金は大切に/幸せの公園 |
16. | |
「それ自体が奇跡」 ★★ |
|
2020年05月
|
「その愛の程度」「近いはずの人」に続く“夫婦三部作”の完結編とのこと。 主人公の田口貢・綾の夫婦が結婚3年目、共に30歳で、2人とも銀座にある百貨店の正社員(但し、綾は高卒入社)。 高校〜大学とサッカー部で有力選手だった貢は、就職後も会社のサッカー部で活躍していたが、その部はついに廃部。そんな貢に声を掛けてきたのは、同じ大学のOBだという立花立(たつる)。本気でサッカーをしてJリーグを目指す“カピターレ東京”の代表理事。その立花からウチでプレーして欲しいと申し出られた貢は、その場で即応諾。 一方、サッカーを知らない綾は、仕事があるのに無理だと反対、さらにそれが事後報告に過ぎないことに怒りを覚える。 しかし、貢はそのことに綾が何故怒るのかが分からない。 そこから、田口夫婦のすれ違いに満ちた一年間が描かれます。 典型的な夫婦のすれ違い。それ以来2人の関係はギクシャクし、夫婦というより最低限の言葉を交わすだけの同居人、というような有り様に。 夫婦というのは一番近い家族であると同時に、ひとつ絆が切れてしまえば、元に戻って赤の他人に過ぎなくなるという関係。 貢が仕事よりサッカーへの全力投球を続ける一方で、綾の前には天野亮介という紳士的な客が現れ、誘われて綾は天野と2度一緒に映画を観に行き、楽しい時間を過ごす。 前2作の結末は別れでしたが、この完結編ではいかなる結末になることやら。 サッカーでは有能でも仕事上ではどうもそうではないらしい貢と、仕事のできる人という評価を得ている綾の、それぞれのお仕事小説風のところ、そしてサッカー試合のリアルな展開を味わえるところが、軽快に楽しめます。 2人の結末は、天秤の針のように、どちらに傾いても不思議なかったろうと思います。結局、最後どちらに針が振れたかは“愛”という存在のあるかないか次第ではなかったか。 まさに三部作を締めるにふさわしい幕切れ。 いやはや、いろいろ考えさせられるテーマでした。 ※題名の「それ自体が奇跡」とは、結婚のこと。 始まりの日/逃走の三月/反感の四月/奔走の五月/共感の六月/暴走の七月/直感の八月/迷走の九月/痛感の十月/並走の十一月/交感の十二月/始まりの日 |
17. | |
「ひ と」 ★★☆ |
|
2021年04月
|
主人公の柏木聖輔は20歳の大学生。 3年前に父親が交通事故死。生命保険が下りたものの借金返済で保険金は殆ど残らず。それでも母親の強い勧めで上京して法政大学の2年生。 母親の竹代は郷里の鳥取で一人暮らし。大学食堂で働いていましたが、布団の中で死んでいるのが朝になって発見されたという連絡が聖輔の元に突然届きます。 頼れる親戚もなく聖輔は東京に戻りますが、母親が遺してくれたお金は僅か 150万円。このままでは不安と大学を退学し、砂町銀座にある総菜屋とふとした出会いがあり、そこでバイトを始めます。 1個残っていたコロッケを買おうとした時、他のお客にそれを譲ったことに店主が聖輔に好感をもったという縁。 孤独の身となり、これから先を考えると十分なお金があるとはいえない、大学もバンド活動も辞めざるを得ない。 我が身の不幸を嘆いたり、愚痴をこぼしても不思議ない状況だと思うのですが、聖輔は淡々と自分のできることを着実に果たしていこうという風です。 バイトを始めた総菜屋「おかずの田野倉」でも真面目に働き、店主夫婦や客からも信用されていく。 背伸びせず、格好づけせず、他者を羨むことなく、自分のできることを地道に、そして誠実に果たしていく聖輔の姿には、そうした姿勢がどれだけ大事なことか、そうした姿勢を守っていけば必然的に幸せは訪れてくるはずと感じさせられます。 聖輔の周囲には様々な人たちが登場します。聖輔を見くびってまるでたかるかのような親戚の男、聖輔を我が子のように思ってくれる田野倉夫婦、大学のバンド仲間である篠宮剣や、偶然再会した高校の同級生だった井崎青葉、等々。 聖輔と彼らを対比することで、聖輔の有り様の素晴らしさがなおのこと感じられます。 厳しい状況にあっても、聖輔には他人に何かを与えるという心のゆとりがあるのですから。 その結果として、人に頼ることも大事、何かあったら俺たちに頼れ、と声を掛けてくれる人々もいる。それらの言葉が、温かく胸に伝わってきます。 ※聖輔のちょっとしたロマンスも、自然体で気持ち良い。聖輔、と相手の双方にとって、まるでご褒美と言えるような恋愛ではないかと感じる次第。 一人の秋/一人の冬/一人の春/夏 |
18. | |
「夜の側に立つ」 ★★☆ |
|
2021年06月
|
著者曰く「なが〜い、青春のおわり、を描いた小説」との由。 高校3年、最後の文化祭に向けてバンドを組んだ男子3人・女子2人の、それ以来22年間にわたるストーリィ。 主人公は野本了治。帰宅部、目立たず平凡と自認する高校生。それなのに突然話しかけてきた生徒会長の榊信明によって、あれよあれよという間にバンドが結成され、しかもリーダーに祭り上げられます。 バンド仲間となったのは、信明とそのカノジョである生徒会副会長の萩原昌子、吹奏楽部の花形=小出君香と校内実力派バンドのドラマー=辰巳壮介という学年一の美男美女コンビ。了治、オールスター&もう一人という組み合わせだと自嘲。 冒頭、40歳になった彼らに、壮介と了治の乗ったボートが転覆し壮介が溺死するという事件が起きたことから語り出されます。 そして、高校3年当時、二十代、三十代、四十代の主人公が、順番を自在に前後して語られていきます。 時間の推移どおり順番に描いていくなら、高校時代は単なる過去の思い出になってしまうかもしれない。 しかし、前後して語られることによって22年間という時間が立体的に組み上がり、高校時代が今現在に繋がっていることが如実に感じられる、そうした構成になっています。 何が原因だったのか。高校時代のある一日の出来事が原因だったのか。それとも、主人公が余りに自信なさ過ぎ、臆病過ぎた所為だったのでしょうか。 決着を付けられないまま時間だけが過ぎてしまった“青春”に、主人公がやっと決着をつけるまでのストーリィと感じます。 5人の仲間それぞれの人生がくっきりと浮かび上がり、そんじょそこいらにはない青春小説に出逢った、という読後感。 その余韻は中々消えず、胸の中で愛しさと苦さが入り混じり、いつまでも後を引くようです。 決然たる四十歳・現在/純然たる十八歳・八月/断章・車/雑然たる二十代・二十一歳/断章・湖/騒然たる三十代・三十一歳/断章・死/決然たる四十代・現在/純然たる十八歳・九月/雑然たる二十代・二十五歳/騒然たる三十代・三十四歳/決然たる四十歳・現在/純然たる十八歳・十二月/雑然たる二十代・二十九歳/騒然たる三十代・三十八歳/決然たる四十歳・現在/純然たる十八歳・三月/雑然たる二十代・二十九歳/騒然たる三十代・三十九歳/決然たる四十歳・現在 |
19. | |
「みつばの郵便屋さん−奇蹟がめぐる町−」 ★☆ |
|
|
“みつば町”を担当区域とする郵便配達員を主人公とした「みつばの郵便屋さん」シリーズ第5弾。 第4弾「幸せの公園」においても特にドラマティックな話がないよなぁと感じましたが、それ以上に平穏な巻。 その分、お馴染みの人とはこれまで通り親しく、新しい登場人物ともそれなりに親し気に、また懐かしい人との再会もあり、といった風で、ここ“みつば町”で親しみある人たちがどんどん広がっているというストーリィ。 まさしくこれはもう、“町物語”といって過言ではありません。 その中心にいるのが、本シリーズの主人公である<郵便屋さん>=平本秋宏であることは言うまでもなく、彼の持つ優しさ、礼儀正しさ、郵便屋さんとしての誠実さがその根っこにあることは、きちんと触れておきたい。 こんな町に住むのも良いですよね、と思いますが、それは彼が町を巡る郵便屋さんだからですよね。 ・「トレーラーのトレーダー」に登場するのは、トレーラーハウスを住まいとして、株の個人トレーダーである峰崎隆由さん。 彼の家で起きた出来事は・・・。 ・「巨大も小を兼ねる」:長年営んできたクリーニング店の閉店を決意した小田育次が平本に頼んだことは・・・。 ・「おしまいのハガキ」:高齢の恩師から届いた喪中葉書を受け取った加藤八重さんが決意したこととは・・・。 ・「奇蹟がめぐる町」:慣れ親しんだ人たちに起きたいろいろな変化、成長・・・。 ※4篇を通じて、秋宏が小3の時の初恋相手=出口愛加がみつば町に転入してきたことから、再会の様子が描かれます。 トレーラーのトレーダー/巨大も小を兼ねる/おしまいのハガキ/奇蹟がめぐる町 |
20. | |
「ライフ」 ★★ |
|
2021年07月
|
主人公の井川幹太は27歳。大学卒業と務めた先、転職した先を短い年数で退職、今も大学生時代からのアパートに住み続け、近所のコンビニでバイトという生活。 誰にも頼らず、一人で生きていければそれで良いと思っていた幹太が、いろいろな人と触れ合ったことを通じて、ようやく自分の道へ踏み出すまでの<蛹期>のような青春記。 レンタル友人として出席した結婚披露宴で高校の同級生=萩森澄穂と偶然に出会う。 アパートの上の階で物音の煩い住人=戸田は、浮気が原因で妻と2人の子と別居中。その戸田から子守を頼まれたりと、幹太は戸田一家と関わることになります。 さらに隣室の住人=中条、坪内幾乃、近くの一軒家に住む高校生=郡唯樹等々、なんだかんだと言いつつ、幹太の人との関わりは広がっていきます。 幹太という人物像が、何となく快い。就職した仲間たちが順調であるのと比較して焦っても不思議ないというのに、何故かのんびりした風。 そんな幹太が、周囲の人たちと関わることによって、誰しもそれなりの葛藤や挫折を経験していることを知ります。 現実は、こんな風にうまく行くとは限りませんけれど、焦らず、誠実に生きていれば道は自ずと開けてくる、という励ましの声を聞く思いです。 読了後は、とても好い気持ちです。 |
小野寺史宜作品のページ No.1 へ 小野寺史宜作品のページ No.3 へ
小野寺史宜作品のページ No.4 へ 小野寺史宜作品のページ No.5 へ