有川 浩
(ありかわひろ)作品のページ No.1


1972年高知県生、進学時に関西へ。主婦。「塩の街」にて第10回電撃小説大賞を受賞して作家デビュー。「図書館戦争」は「本の雑誌」が2006年上半期エンターテインメント第一位を獲得。


1.
空の中

2.海の底

3.図書館戦争

4.図書館内乱

5.レインツリーの国

6.クジラの彼

7.図書館危機

8.塩の街

9.図書館革命

10.阪急電車


別冊図書館戦争1、ラブコメ今昔、別冊図書館戦争2、三匹のおっさん、植物図鑑、フリーター家を買う。、シアター!、キケン、ストーリー・セラー、シアター!2

 → 有川浩作品のページ No.2


県庁おもてなし課、もう一つのシアター!、ヒア・カムズ・ザ・サン、三匹のおっさんふたたび、空飛ぶ広報室、旅猫リポート、コロボックル絵物語、明日の子供たち、キャロリング、だれもが知ってる小さな国

 → 有川浩作品のページ No.3


倒れるときは前のめり、アンマーとぼくら

 → 有川浩作品のページ No.4

 


      

1.

●「空の中」● ★★


空の中画像

2004年11月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2008年06月
角川文庫化

  

2007/02/22

 

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日本が開発した次世代輸送機スワローテイルがテスト飛行中に、そしてまた自衛隊のF15イーグルが高度2万メートルの上空で突如爆破事故を起こす。
原因は何だったのか。その原因を確かめるため、女性パイロットの武田光稀三尉はスワローテイル設計担当の一人である春名高巳を同乗させ、再び高度2万メートルの上空に向かいます。
そこで2人が遭遇したものは、太古から存在したという数十キロ四方におよぶという巨大な楕円形をした生命体。
人間に対して攻撃意思をもたいないその巨大な生命体に対し、日本政府は愚かにも攻撃をしかけたことから、本書の主人公たちは思わぬ事態に巻き込まれる、というストーリィ。

それだけを取り挙げるなら「ウルトラQ」的な冒険ストーリィ(古い例えでごめんなさい)というに尽きるのですが、本書はそれにかなり型破りな恋愛ストーリィ+幼馴染の少年少女による青春ストーリィを抱き合わせ、思いっきり掻き混ぜたようなストーリィ。
その主役となるのは、“白鯨”または“ディック”と呼ばれるようになったその生命体の折衝役を背負わされた春名高巳と武田光稀、白鯨と衝突して死んだ斉木三佐の息子・斉木瞬と幼馴染の天野佳江
そして“白鯨”をめぐって対立する反白鯨派の急先鋒として、同じく衝突で死んだスワローテイル機長の娘・白川真帆が登場します。
高度な知能をもち空の高みに棲む生命体といった白鯨の存在は奇妙奇天烈という他ないものですが、それはそれなりの面白さがあるとして、実際には堅物の光稀へ柔軟性極めて高い高巳が恋を仕掛けていく部分が一番笑えて楽しい。
おっと、瞬と佳江の幼馴染コンビに白鯨の片割れであるフェイクが絡む部分も、勿論見逃せません。
なによりどの登場人物も生き生きしているところが好い。

三者三様に進んできたストーリィが最後に重なり合い、高巳たちによる爽快な逆転劇に繋がるところは圧巻です。
ただ惜しむらくは本書を海の底の後に読んだこと。先に読んだ「海の底」に比べ、3つのストーリィ要素を盛り込んだ分、やや散漫になった印象があります。

           

2.

●「海の底」● ★★☆


海の底画像

2005年06月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2009年04月
角川文庫化

   

2007/02/10

 

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横須賀に街に突如上陸してきた巨大な甲殻類の群れ。
その甲殻類=レガリスらは人間を恰好な餌として集まってきたのか。逃げ遅れた人間はレガリスの餌食となり、警察の機動隊も歯が立たない。
そんな中、助けた子供たちと共に海上自衛隊の2人の実習幹部生が潜水艦「きりしお」に閉じ込められる。
街は? そして艦内の15人は如何に救助されるのか? というSF的パニック・ストーリィ。

とまあ、ジャンルだけを言えばそういうことになるのですが、本書の面白さは実はそこにあるのではありません。
夏木大和冬原晴臣という対照的な性格をもつ2人の海自三尉の危機に直面して発揮されるコンビの妙と、高校生から小学生までという子供たちの間における確執、唯一人の高校生であり女子でもある森生望の苦悩と恋心、中3の遠藤圭介が負っていた傲慢さの正体等々、狭い潜水艦の中で繰り広げられるそれらの物語が実に面白い。
さらに、面白さは艦内に留まりません。苦闘奮戦する機動隊の一方で、行動に出たくても足枷を嵌められ動くことのできない自衛隊の歯がゆさ。一刻も自衛隊を出動させるため巧妙に失敗を重ねていこうとする警察庁参事官の烏丸、烏丸にダシにされている観のある神奈川県警・明石亨警部のやりとりも楽しめます。

ゴジラ襲来並みのパニックに、苦境に追い込まれた初めて生じた少年間の葛藤、奮闘する海自官2人の青春&恋模様、ついに自衛隊出動という戦闘シーンの痛快さ(僅かですが)、これだけエンターテイメント要素が詰まっていれば、面白くない訳がありません。しかも、どの登場人物をとっても個性的で、かつ生き生きしている。
まさしく第一級のエンターテイメント! 他の有川浩作品も残らず読んでやれ!という気分になりました。

※なお、表題は「海の底から来た奴ら」という意味とのこと。

   

3.

●「図書館戦争」● ★★☆


図書館戦争画像

2006年03月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2011年04月
角川文庫化

 

2006/03/02

 

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な、何なんだ、この小説は?!、とたまげてしまうのが本書「図書館戦争」。
冒頭主人公が故郷の母親に宛てた手紙には「念願の図書館に採用されて、私は今――毎日軍事訓練に励んでいます」とあるのですから、度肝を抜かれます。
昭和最終年度に公布された「メディア良化法」。公序良俗を維持するために検閲を強化するというのは正論に聞こえますが、執行機関に裁量権が委ねられた結果「メディア良化委員会」が書店に対して恣意的に取り締まり権限を行使するという、30年後の正化年代が本ストーリィの舞台。
メディア良化法の検閲権に唯一対抗できる法律が「図書館の自由法」。良化特務機関の示威行動がエスカレートした結果として公立図書館と武力衝突するまでに及び、ついに図書館側も防衛力を備えて図書基地、図書隊(警備隊)を持つに至ったというのが本ストーリィの舞台背景。

主人公となる笠原郁22歳は、元陸上部という体育系。でも子供の頃からの本好きという、図書防衛員志望の新人一等図書士。
とにかくこの笠原郁のキャラクターが最高なのです。面白いこともう極まりなし! 熱く、そして直情径行タイプ。教官である堂上篤二等図書正にも平気で突っかかっていく様子が愉快なうえに、この2人のやりとり、まさに漫才並みの面白さです。
郁と堂上の他、玄田竜助三等図書監、堂上と同期の小牧幹久、郁と同期の友人=柴崎麻子をはじめとして、人間味溢れ過ぎて愉快な登場人物が目白押し。キャラクターの面白さという点で、本書は群を抜いています。
良化委員会との抗争というと派手なアクションを期待してしまいますが、ストーリィの軸はあくまで本好き、本を大切にしたいという気持ちが揺るぎなく描かれていること。それ故、本好きにとっては大歓迎したくなる類稀なエンターテイメント。
ただし、本書の面白さは、舞台設定の奇抜さより、やはり登場人物の面白さによるものなのです。

1.図書館は資料収集の自由を有する/2.図書館は資料提供の自由を有する/3.図書館は利用者の秘密を守る/4.図書館はすべての不当な検閲に反対する/図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る

※映画化 → 「図書館戦争

    

4.

●「図書館内乱」● ★★


図書館内乱画像

2006年09月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2011年04月
角川文庫化

 

2006/09/24

 

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図書館戦争の続編。
主人公の笠原郁を初めとする、あの愉快で個性的なキャラクターたちに再会出来るのは、この上なく嬉しいこと。
でも、読んでの面白さという点では、「図書館戦争」には遠く及ばない。なんたって、あの奇想天外な舞台設定はもう既に知ってしまっているし、主要なキャラクターはもう顔馴染みであるし、それはもう続編である故の宿命として仕方ないことでしょう。
それに、前作および本作の大いなる読み処である郁と直属上司・堂上二等図書正とのやりとり、正編のような先鋭的な対立は影をひそめ、お互いに底では信頼し合っているという雰囲気が漂っています。2人には申し訳ないけれど、ファンとしてはやや物足りなさを感じてしまう(笑)。

ストーリィとしては、前作に引き続き図書隊とメディア良化委員会の対立が底流にありますが、長編というより主要キャラ一人一人の抱えている問題を描く連作短篇風。
両親が上京してきて慌てふためく郁を描く「両親攪乱作戦」を初めとして、小牧二等図書正、郁の親友・柴崎麻子手塚光、そして郁が窮地に陥れられて動揺する堂上二等図書正と郁を描く「図書館の明日はどっちだ」までの5章。
その背景として、新たに図書館内部における対立が描かれます。つまり、堂上や玄田ら原則派対行政派、そして新たな一派・図書館中央集権主義者というの内部対立。
新登場のキャラは、小牧が子供の頃から知っている今は高校生の中澤毬江、切れ者の新館長・江東、手塚の兄・。この3人の中で断然また会いたいのは、毬江ちゃんです。

最後は「・・・・To be continued.」となり、本作品のシリーズ化が決定しているとのこと。
なお、本ストーリィ中で毬江ちゃんが愛読するレインツリーの国は、別途新潮社から刊行済。

1.両親攪乱作戦/2.恋の障害/3.美女の微笑み/4.兄と弟/5.図書館の明日はどっちだ

 

5.

●「レインツリーの国」● ★★


レインツリーの国画像

2006年09月
新潮社刊

(1200円+税)

2009年07月
新潮文庫化

2015年09月
角川文庫化

   

2006/10/21

 

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「図書館内乱」から生まれでた、難聴者を主人公とするラブ・ストーリィ。
「図書館内乱」中のエピソードとして取り上げた難聴者を主人公とする恋愛小説を、有川さんが独立したものとして書きたくなったそうで、結果的にメディアワークスと新潮社の2社をまたぐコラボレート企画となったそうです。

関西から上京して入社3年目の向坂伸行は、ネットの中で好きな小説への思いが重なり合う相手、ひとみという若い女性と出会います。メールでのやり取りを何回も経て伸はひとみをデートに誘いますが、何故かひとみは消極的。そこを無理に押し込むようにしてデートに漕ぎ付けますが、話がぴったり合う筈のひとみと何故かギクシャクしてしまう。
健常者である伸と高校時代の事故で難聴者になったひとみは、幾度も食い違ってしまう。
ひとみに対する伸の気遣いが足りない所為なのか、ひとみが障害者だからといって頑迷に過ぎるのか。
頭では理解していても、細かいところまで気をつけるのはどんなに大変なことか。それに伸は直面することになります。私もまた、改めて教えられた気分です。
難聴者の抱える問題を知ることができるという点で本書はとてもためになりましたが、その前にラブ・ストーリィとしても痛快、そして爽快な作品です。
何よりもメールで飛び交う2人の会話のテンポが良い! そして普通だったら呆れて付き合いを止めてしまうような状況にもかかわらず、ひとみが肝を潰すほど押し捲ってくる伸の率直さが好ましい。
こんなとき関西弁というのはいいですね〜。女性を口説くにおいて東男はとても関西弁に太刀打ちできない、と思う。

会話のテンポの良さ、仲直りするためにしっかりケンカしよう、そんな思い切った2人の言い合いが本ラブ・ストーリィの魅力です。
言葉、言葉、言葉。恋愛にはまず身体、セックス(そうしたタイプの女性も登場しますが)より言葉があって欲しいもの。
そう感じているラブ・ストーリィ好きなら、きっと好きになるに違いない気持ちの良い作品です。

  

6.

●「クジラの彼」● ★★


クジラの彼画像

2007年01月
角川書店刊

(1400円+税)

2010年06月
角川文庫化

    

2007/02/13

 

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レインツリーの国に続くラブ・ストーリィ。
6篇収録の短編集ですが、当事者の片方あるいは両人が自衛隊員である、のが見処です。
本書の「合コンで聡子が知り合った○○は潜水艦乗りだった」という宣伝文句を(内容に期待はしたものの)特に気には留めていなかったのですが、何と読み終えたばかりの海の底冬原晴臣だったとは!
冬原が登場すれば相棒の夏木大和も登場する筈。「海の底」を堪能したばかりの私にとって、番外編となる2篇を続けて読めるなんて、こんな楽しいことはありません。
高尚なラブ・ストーリィではありませんが、自衛隊ならではの悩み事(=恋愛における障害事)も語られていて、その面白いことといったら並ではありません。

6篇のいずれも面白いのですが、やはり冬原(ただし脇役)を恋愛の相手とした聡子が苦悶を重ねる「クジラの彼」が抜群に面白い。・・と思っていたら、それを上回ってすこぶる面白いのが、夏木と森生望の登場する「有能な彼女」
その2篇を読み比べると、冬原との恋人関係に自信がもてず悩む聡子に対して、望に自分はふさわしいのかとやはり自信がもてずに悶々とする夏木と、冬原と夏木がここでも対照的な道を辿るところが愉快でなりません。
いやあ、本書を読む前に「海の底」を読んでおいて良かった。同作品を読まないまま本書を読んでいたら、これ程楽しめたかどうか。
上記2篇の他では、「ロールアウト」宮田絵里高科三尉も好一対。おまけになかなか笑える、これも楽しい一篇です。
本書を読んでみようと思う皆さんは、その前に必ず「海の底」を読むことをお勧めします。そして「海の底」を読んだ勢いにのって本書を読んでこそ、最高の楽しさを味わえるでしょう。

なお、最後を飾る「ファイターパイロットの君」は、空の中に登場した女性パイロットの光稀とメーカー勤務の春名高巳というカップルのその後を描いた番外編。「空の中」はこれから読むところだったのがちと残念。

クジラの彼/ロールアウト/国防レンアイ/有能な彼女/脱柵エレジー/ファイターパイロットの君/あとがき

  

7.

●「図書館危機」● ★☆


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2007年03月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2011年05月
角川文庫化

 

2007/03/18

 

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“図書館戦争”シリーズ第3弾!
これまでの戦争」「内乱では、ストーリィの卓抜さもさることながら、主人公の笠原郁とその共感である堂上篤二等図書正との歯に絹を着せぬ、まるで口喧嘩と思うばかりのやり取りが面白さのひとつでしたが、本書ではそれに変化が生じます。
それは前巻「内乱」の最後で、郁の“王子様”は誰なのかが郁に明かされるからです。
その所為と言うべきでしょう、男勝りだった郁に女らしさが幾度も現れ、恋しているのかそうでないのかと郁の気持ちは千々乱れるという変化が生じます。郁が事実を知ったことを、想われる本人は未だ知らない。しかし、彼の方にも過剰保護を抑え郁の良さを認める気持ちが生じているのですから、当初の面白さはトーンダウンしてしまった、やりとりの面白さは片方が秘密を知ってしまったという故に未だ残るものの、あの抜群の面白さは減じたと感じざるを得ません。

「王子様、卒業」は痴漢撃退話。郁が柴崎麻子と共に囮役を務めることで、郁も女性の恰好をすれば結構上等の部類であることが読者に紹介されます。
「昇任試験、来る」
は優等生・手塚光の弱点を描いた篇。その反面において郁の独創性という長所も描いているのですから、有川浩さん、なかなかの手腕です。
「ねじれたコトバ」は、玄田竜助図書特殊部隊隊長と週刊新世相記者の折口マキを中心とした、メディア良化委員会との前哨戦。

そして「図書館戦争」らしい面白さを満喫できるのは、茨城県立近代美術館+図書館における良化特務機関との激烈な攻防までを描いた最後の2篇「里帰り、勃発」「図書館は誰がために」
郁の強さと弱さがいみじくも一番明瞭に描かれているストーリィであり、再び郁の両親も登場し、結果的にはある意味で郁の転機ともなる篇です。

単独の小説としては前2巻より面白さ劣るものの、シリーズにあって次の作品への架け橋になるという点で欠かせない巻。
ファンとしては充分楽しめますし、特に最後2篇は主要人物たちの活躍ぶりのおかげで読み応えたっぷりです。

1.王子様、卒業/2.昇任試験、来たる/3.ねじれたコトバ/4.里帰り、勃発−茨城県展警備−/5.図書館は誰がために−稲嶺、勇退−

※映画化 → 「図書館戦争 THE LAST MISSION

   

8.

●「塩の街」● ★☆


潮の街画像

2007年06月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2010年01月
角川文庫化

   

2007/06/30

 

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電撃文庫から出版した「塩の街」は、編集担当者の意向で主人公の年齢設定等を応募原稿からいろいろと修正しているそうです。
本書は、そうした設定をほぼ応募原稿当時に戻した上での単行本化とのこと。
宇宙から地球に降ってきた塩の塊の隕石。それ以来地球は塩害に苦しみ、次々と人間は発病して塩に変わっていき、都会はまるで塩に侵食された廃墟と化していく。
そうして廃墟化していく東京の真ん中で、まるで取り残されたように一緒に暮らす元自衛官の秋庭と、秋庭に拾われた高校生の真奈という2人の物語。
空の中」「海の底に先立つエンターテイメント作品で、途中舞台が陸上自衛隊の立川駐屯所に移るという点で“陸自”を描いた作品でもあり、上記2作と合わせて“自衛隊三部作”となるそうです。
上記2作はパニック系冒険エンターテイメントと言える作品でしたけれど、三部作とはいえ本作品は本質的にラブ・ストーリィだと思います。
地球が壊滅する究極の状況だからこそ知り合った2人であり、だからこそ10歳という年齢差以上の違いを超えて強く結ばれることになった2人なのですから。
ただ、かなり甘チャンですね、このラブ・ストーリィは。
エンターテイメントとしても上記2作の比べるとちと迫力不足。
それでも秋庭に対する真奈の想いの部分は、楽しい。

後半は、秋庭と入江の活躍で塩害による壊滅の危機が回避された後の後日談等「塩の街、その後」4篇を収録。
最初と最後の2篇は、秋庭と真奈の恋愛が成就に至るまでの完結篇。他の2篇は「塩の街」で重要な脇役であった、関口由美陸自三曹自身のラブストーリイと、勝手に立川駐屯所司令を些少した入江を主人公とする後日談。
秋庭と真奈のラブ・ストーリィ、私としては「塩の街、その後」の方が味わいがあったように感じられます。

塩の街/塩の街、その後(旅のはじまり/世界が変わる前と後/浅き夢みし/旅の終わり)

 

9.

●「図書館革命」● ★☆


図書館革命画像

2007年11月
メディアワークス刊

(1600円+税)

2011年06月
角川文庫化

 

2007/11/20

 

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“図書館戦争”シリーズ第4弾にて最終巻。 

敦賀原子力発電所にヘリが2機突っ込むというテロが発生。その事件が当麻蔵人の小説そっくりだということをダシに、メディア良化委員会が一時的に作家および作品を規制することができるという施行令を成立させてしまう。
“表現の自由”は決して犯させない。笠原郁の所属する図書特殊部隊は当麻蔵人の身の安全を図るべく、再びメディア良化委員会と一進一退の攻防を繰り広げます。
前半は、折口マキが音頭取りとなってTVを中心としたメディア対メディア良化委員会の攻防に、「未来企画」グループを率いる手塚慧も側面支援に加わり、法律論闘争といった展開。
私としては割りと好きな展開なのですが、抽象的ですからエンターテイメント作品としては物足りない、と感じるのは仕方ないところ。
後半は思わぬ良化特務機関の逆襲から、郁が皆の期待を一身に背負ってゴールに向け突っ走ります。待ってましたッ、と言わんばかりのスリリングな展開がやっと始まりますが、どこかのんびりした雰囲気も。・・・何でだろう?

上記主ストーリィの傍ら、冒頭で郁と堂上の初デートから始まる2人の関係が今後どうなるのか、という点がやはり本巻での興味どころ。
さらに手塚兄弟の確執の行方、柴崎麻子手塚光の関係は?という、最終巻らしい決着がつけられていきます。

魅力ある登場人物たちについてとりあえずの決着がつけられる、という点では嬉しい最終巻。
しかし、エンターテイメント小説としての面白さは慣れもある所為か、第1〜2巻にはもう及ばない。
それでも本シリーズのファンであれば、是非「エピローグ」まで読み上げることをお薦めします。仏料理フルコースにおける最後のデザートのようなものですから、最後を知らずに終えてしまうのはもったいない、と思う次第。

プロローグ/1.その始まり/2.急転を駆けろ/3.奇貨を取れ/4.嵐を衝いて/5.その幕切れ/エピローグ

  

10.

●「阪急電車」● ★★


阪急電車画像

2008年01月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2010年08月
幻冬舎文庫化

  

2008/02/10

 

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関西の私鉄ローカル線、阪急今津線。宝塚から西宮北口まで僅か20分という短いその路線の中で演じられる、乗客たちの数々のストーリィを描いた連作短篇集。
各篇の主人公は異なりますが、同じ時間帯の同じ電車の中ということで、それぞれ袖触れ合いつつという形でリレーのようにストーリィが繋がっていくところが楽しい。
つまり、主人公たちからみれば一つ一つ別の恋物語であり、破局の物語であり、あるいはおばあちゃんと孫娘の物語なのですが、鳥瞰すれば皆ひとつの今津線の物語とも言えるのです。

何といっても舞台設定の妙に加えて、ストーリィの小気味良さ、会話の面白さが魅力。
その点で、すこぶる私好みの短篇集。
例えて言えば、O・ヘンリのユーモラスな話を阪急今津線に持っていって線路にまたがせ、ひとつの鎖に結びつけながら、会話の面白さを存分に撒き散らした、という風。(かなり無理に例えかも)

冒頭の恋の始まり話には、図書館絡みという点からして惹かれます。それに続く美人OL翔子の、元カレ結婚式への討ち入り話はとても痛快。
また、「彼氏彼女いない歴=年齢」という男女学生の恋の始まり話はとても微笑ましい。
それらを超えてカッコイイのが、孫娘に対しても決して甘い顔をしないという時江おばあちゃんの姿。
「そして、折り返し」以降の後半8篇は、前半に登場した乗客たちの半年後を描いたストーリィ。後日談ををそろって味わえるのは、何と楽しいことでしょう。
なお、本書の面白さの要因のひとつとして、関西弁の存在が欠かせません。こんなストーリィには実に合いますね、関西弁。東京だったらもっと索莫とした話になってしまうかもしれません。

長篇のみならず、短篇でもたっぷり楽しませてくれます。有川浩さん、これからも期待大です。

宝塚駅/宝塚南口駅/逆瀬川駅/小林駅/仁川駅/甲東園駅/門戸厄神駅/西宮北口駅
そして、折り返し・・・西宮北口駅/門戸厄神駅/甲東園駅/仁川駅/小林駅/逆瀬川駅/宝塚南口駅/宝塚駅

 ※映画化 → 「阪急電車

    

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