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21.ひまわり事件 22.砂の王国 23.月の上の観覧車 24.誰にも書ける一冊の本−テーマ競作 死様− 25.幸せになる百通りの方法 26.花のさくら通り 27.家族写真 28.二千七百の夏と冬 29.冷蔵庫を抱きしめて 30.金魚姫 |
【作家歴】、オロロ畑でつかまえて、なかよし小鳩組、噂、誘拐ラプソディー、母恋旅烏、コールドゲーム、神様からひと言、メリーゴーランド、僕たちの戦争、明日の記憶 |
さよならバースディ、あの日にドライブ、ママの狙撃銃、押入れのちよ、四度目の氷河期、サニーサイドエッグ、さよならそしてこんにちは、愛しの座敷わらし、ちょいな人々、オイアウエ漂流記 |
ギブ・ミー・ア・チャンス、海の見える理髪店、ストロベリーライフ、海馬の尻尾、極小農園日記、逢魔が時に会いましょう、それでも空は青い、楽園の真下、ワンダーランド急行、笑う森 |
●「ひまわり事件」● ★☆ |
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2012年07月
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同じ系列で隣り合って建つという、老人ホーム「ひまわり苑」と幼稚園「ひまわり園」。 前半は、世間の評価を注目を引こうと、老人ホームと幼稚園の交流を双方の経営者が企んだところから始まります。 しかし、長い。肝心の抗議闘争部分は未だか、未だかと思う内にいつの間にか後半。そこに至るまでが実に長くて、何しろ短めの小説1冊分なのですから。 |
●「砂の王国」● ★★ |
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2013年11月
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仕事がうまくいかず、妻には出て行かれて酒浸りとなり、会社は辞めさせられる。借金の取り立て屋に追いまくられた挙句、お決まりのようにホームレスまで身を落とした元証券マンが、起死回生のビジネスとして選んだのは、新興宗教。 ホームレス、新興宗教、もはや身近な題材と言うべきなのでしょう。いつそれらが現実になっても不思議ないという思いがあるからか、厚めの上下2巻というページ数が全く気にならず、面白くどんどん読み進めます。 下巻の中盤に至ってその先のストーリィ展開が透けて見えてしまったのが、ちと残念。 そんな思い込みを捨てることができるかどうかが、自分自身、苦しまずにいられるかどうかの第一歩。 本ストーリィはホームレス、新興宗教と極端な世界を舞台にしていますが、その底にあるのは、誰しもが直面する普遍的な問題と思います。 1.祈るべきは我らの真下/2.我が名を皆、大地と呼ぶ/3.我らの後に時は続く |
●「月の上の観覧車」● ★★ |
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2014年03月
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失ったものへの悔恨、もう取り戻せない人生を振り返る、というストーリィを主とした8篇からなる短篇集。 荻原さんとしてもちょうど人生を振り返る時期に来たのではないでしょうか。そうした時機を得て初めて生まれた短篇集だろうと思います。 上記の篇からすると「レシピ」は異色です。定年退職日にご馳走を作って夫の帰りを待ちわびる妻が、大切にしているレシピ帳を前にこれまでの恋人たち、彼らのために作った料理のことを回想するという篇。いかにも女性らしいリアル感を備えていて、男性作家なのに荻原さん、巧い! トンネル鏡/金魚/上海租界の魔術師/レシピ/胡瓜の馬/チョコチップミントをダブルで/ゴミ屋敷モノクローム/月の上の観覧車 |
●「誰にも書ける一冊の本−テーマ競作 死様−」● ★☆ |
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2013年09月 2011/07/12 |
光文社が企画したテーマ競作「死様」の中の一作。 函館の父親が危ない状態に陥り、東京から駆けつけた長男が主人公。 父親と息子って、自分のことについて話さないよなぁ。 各々の人生というものを考えた時、「誰にも書ける一冊の本」という言葉には、人を魅了する響きがあります。 |
●「幸せになる百通りの方法」● ★☆ |
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2014年08月
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どこか滑稽でどこか不器用に現代を生きる、ごく普通な人たちを描いた短篇集。 各篇の主人公は、自分では意識していないが認知症の傾向がある老女、他に出来ることもなく俺々詐欺をやっている元役者、奇しくもネットで繋がっていた不器用者たち、お見合いパーティ動物園版に参加した元動物行動学専攻のアラサー女性、リストラを妻に言い出せず毎日をベンチで過ごす元サラリーマン、歴女の恋人に辟易する若者、ノウハウ本のモットーに励むが実績のあがらない若手サラリーマン。 見合いパーティに参加した男性陣を動物行動学に立って観察する女性を描いた「出逢いのジャングル」は風刺が利いていて愉快。 原発がともす灯の下で/俺だよ、俺/今日もみんなつながっている/出逢いのジャングル/ベンチマン/歴史がいっぱい/幸せになる百通りの方法 |
26. | |
●「花のさくら通り」● ★★ |
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2015年09月
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「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」から14年ぶり、久々の“ユニバーサル広告社”シリーズ第3弾。 業況低迷からユニバーサル広告社の面々、ついに都落ち。移転先はというと、都心からは程遠い、寂れた商店街の中にある中古ビルの2階。 難しいことは何もないストーリィ。タイムリーな題材を基にじっくりストーリィが進められていくという風で、楽しく読んでいられるちう点ではまさに夏休みの読書向き。 1.花まつりはイースターで桜餅/2.母の日の水子の供養の柏餅/3.雨安居のジューンブライドには葛饅頭とタルト/4.桃も李も施餓鬼も洗礼式も夏銀河/5.氷菓冷えて僧門にひよどり鳴く/6.花散り落葉舞いあまたの星は地上を照らす |
27. | |
「家族写真 Family Photograph」 ★★ |
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2015年04月
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平凡な家族、あるいは50代になったおじさんたちの、ありふれた悲喜こもごもの姿をコミカルに描いた短篇集。 私自身にも共通することだよなぁと思っている内に笑いが込み上げ、でもよく考えてみると現代日本社会、家族における問題が透けて見えると何やら納得した気分(納得してはいけない問題かもしれませんが)。 どの篇も捻りが利いていて面白いのですが、 結婚しようよ/磯野波平を探して/肉村さん一家176kg/住宅見学会/プラスチック・ファミリー/しりとりの、り/家族写真 |
28. | |
「二千七百の夏と冬」 ★★ 山田風太郎賞 |
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2017年06月
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2011年夏、ダム建設工事の掘削作業中に2700年前に生存していたと思われる縄文時代の古人骨が発見されます。推定では16歳位の少年。さらに、先に発見された少年とお互いに手を伸ばし合い指を絡め合っていたらしい15歳位の少女の古代骨も発見されます。ただし驚くべきことに少女は弥生人。縄文人と弥生人という違いのある2人の間に一体どんな物語があったのか。 各章の冒頭はまず、上記の古人骨に興味をもった現代日本の若い女性記者=佐藤伽耶が縄文人や弥生人について質問あるいは調べるところから始められます。各幕開けでの導入部分といったところでしょうか。 でも何故今、縄文時代の物語なのか? そこが読む側としての関心処です。 |
29. | |
「冷蔵庫を抱きしめて」 ★★ |
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2017年10月
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現代社会に生きる人たちが心に抱える闇、様々なビョーキをテーマにした短篇集。 ・冒頭の「ヒット・アンド・アウェイ」は、同棲相手のDV。自分が強くなることによって漸く相手と決別するシングルマザーを描いた篇で、痛快。 本短篇集を興味深く、かつ面白く読める人は、精神的に健全と言えるのではないでしょうか。 |
30. | |
「金魚姫」 ★★ |
2018年06月
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ブラック企業と言うべき仏壇仏具販売会社の営業マンである主人公=江沢潤は、同棲していた恋人にも出て行かれ、今や鬱状態。そんな自殺しかねなかった彼を思いとどまらせたのは、金魚すくいで持ち帰った金魚=琉金の世話をしてやらなくては、という思い。 その夜、ひた、ひたという音が聞こえたと思ったら、主人公の部屋に全身濡れそぼった、赤い衣装を纏った妖しい美女が現れます。 それからというとも、主人公には死んだ人の姿が普通の見えるようになり、営業成績も順調に伸びていくのですが・・・。 一方、古代中国で、許婚者を非道に殺された揚娥が憎むべき劉顕の配下に追われて水に飛び込むという出来事が挿話として語られます。 夜になると金魚から人間に変身しては目の前に現れる彼女を、潤はリュウと名付けますが、そのリュウ、過去の記憶をすっかり失っているらしい。 妖しい金魚美女との風変わりな同居生活、時空を超えたミステリ・サスペンス要素を感じさせる本作品ですが、本質的にはやはりファンタジーで妖しい恋愛ストーリィと言って良いのでしょう。 奇妙な同居人との恋愛ストーリィといえば、猫、幽霊とそこはいろいろありますが、千幾百年という時空を超えた展開となっている処が本書の特色。「二千七百の夏と冬」の延長線上に本恋愛ストーリィがあると感じるところ大です。 成就し難い恋愛だからこそ忘れ難いもの。リュウのことを想い続ける潤と、いつしか別れざるを得ないリュウとの運命的な恋は、実に切なく、そして忘れ難い。 |
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