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2.バスジャック 3.失われた町 4.鼓笛隊の襲来 5.廃墟建築士 6.刻まれない明日 7.コロヨシ!! 8.海に沈んだ町 10.逆回りのお散歩 |
玉磨き、ミサキア記のタダシガ記、ターミナルタウン、手のひらの幻獣、ニセモノの妻、メビウス・ファクトリー、チェーン・ピープル、30センチの冒険、作りかけの明日、博多さっぱそうらん記 |
名もなき本棚 |
●「となり町戦争」● ★★ 小説すばる新人賞 |
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2006年12月
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となり町と舞坂町との間で戦争が始まったことを「僕」(=北原修路)が知ったのは、「広報まいさか」によってでした。 本当に戦争が行われているのか。 本書を読みながらふと、「戦争」という名前を冠してないだけで実際に戦争は行われているのではないか、と思うに至るのです。 |
●「バスジャック」● ★★☆ |
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2008年11月
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上手いっ! 本当に上手い。舌を巻く程。 「二階扉をつけてください」はカフカ的不条理に星新一的結末を加えたという風な短篇で、正直言ってその上手さに冒頭から度肝を抜かれました。 二階扉をつけてください/しあわせな光/二人の記憶/バスジャック/雨降る夜に/動物園/送りの夏 |
●「失われた町」● ★☆ |
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2009年11月
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「失われた町」という題名から何を連想しますか。 “消滅”への対抗組織である管理局に働く桂子、恋人を失った高校生の由佳、消滅後の回収作業員として隣町に来てそのまま“風待ち亭”というペンションで働くことになった茜、住民が消滅した町でただ一人生き残った少女ののぞみ、等々。 プロローグ、そしてエピローグ/風待ちの丘/澪引きの海/鈍(にび)の月映え/終の響き(ついのおとない)/艫取りの呼び音(ね)/隔絶の光跡(しるべ)/壷中の希望(のぞみ)/エピローグ、そしてプロローグ |
●「鼓笛隊の襲来」● ★★ |
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2011年02月
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「赤道上に戦後最大規模の鼓笛隊が発生」、通常であれば「次第に勢力を弱めながらマーチングバンドへと転じるはず」であったが、今回は勢力を拡大しつつこの国に進路を向けている、というから、台風をもじったものとは分かりますが、これが本当に鼓笛隊。なんとまぁ、よくこんな発想ができるなぁと呆れる思い。 本書収録の9篇は、いずれもそんな奇想に基づくものばかり。 本書中で一番面白いのは、やはり表題作「鼓笛隊の襲来」。子供の頃に読んだネズミと音楽隊の話を思い出します。 本短篇集の共通テーマは、「見えているのに、見えていないものはありませんか?」ということらしい。 「象さんすべり台のある街」はファンタジー要素がありますが、なんとなく侘しく、同時に愛おしくなるストーリィ。 鼓笛隊の襲来/彼女の痕跡展/覆面社員/象さんすべり台のある街/突起型選択装置/「欠陥」住宅/遠距離・恋愛/校庭/同じ夜空を見上げて |
●「廃墟建築士」● ★★ |
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2012年09月
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「バスジャック」「鼓笛隊の襲来」に続く、奇想を元にしたストーリィ、4篇。 冒頭の「七階闘争」は、何故か7階で事件が多く起きる、そのため市が全ての建物から7階を撤去することを決定、反対派が7階護持闘争を繰り広げるというストーリィ。 一方「図書館」は、図書館の夜間開館のため、市から依頼を受けてハヤカワ・トータルプランニングの日野原という女性が、図書館を調教するためやって来るというストーリィ。 「蔵守」はちと判りづらい篇。その分、一番奇想かも。 七階闘争/廃墟建築士/図書館/蔵守 |
●「刻まれない明日」● ★★ |
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2013年03月
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3,095人もの人が理由もなく消え去った事件、それから10年後の物語。 10年経った今も、消えた人々の痕跡は残っています。人々と一緒に消えた図書館第五分館では今なお消えた人々による借出しが行なわれており、ラジオ放送局には消えた人々からのリクエスト葉書が届く。しかし、最近になって本の借出もリクエストも減り、人々に変化の時が訪れようとしています。 繋がりが消えていくという寂しさ、いつかはケリを付けなければならないという覚悟、新たな出発へ向けての気持ちの切り替え。残された人々が新たに抱えつつある、そうした心情が切なく、愛おしい。 序章:歩く人/1.第五分館だより/2.隔ての鐘/3.紙ひこうき/4.飛蝶/5.光のしるべ/新たな序章:つながる道 |
●「コロヨシ!!」● ★★☆ |
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2011年12月
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国家の統制下に置かれ、高校時代にしか競技することが認められていないという伝統的なスポーツ「掃除」。その掃除に邁進する高校生=藤代樹を主人公にした大長篇ストーリィ。 まず、三崎亜記作品として珍しい、というのが第一印象。 高校スポーツを背景に不条理を描き、また高校スポーツの世界に不条理を持ち込んだ長篇作品。 ただし、不条理小説故に、最後の結末は一般的なスポーツ小説のようには終わりません。しかし、それも楽しからずや。 |
●「海に沈んだ町」●(写真:白石ちえこ) ★★ |
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2014年02月
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「失われた町」「廃墟建築士」「刻まれない明日」に連なる、失われた町、廃墟となった町等を語る9つの物語。 町の喪失、廃墟というテーマは三崎さんの継続テーマですが、短篇集だけあって、それが端的に描かれているといった印象です。 遊園地の幽霊/海に沈んだ町/団地船/四時八分/彼の影/ペア/橋/巣箱/ニュータウン |
●「決 起!−コロヨシ!!2−」● ★☆ |
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架空世界での伝統競技“掃除”を中心に描く成長&戦いの青春ストーリィ「コロヨシ!!」の続編。 前篇で高校2年生だった主人公=藤代樹も3年生となり、掃除部の主将となります。 本書の特徴は、そうした樹の成長と同時に“掃除”という競技のもつ秘密、歴史が徐々に明らかにされていくところにあります。 |
10. | |
●「逆回りのお散歩」● ★★ |
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2015年11月
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デビュー作「となり町戦争」は“見えない戦争”を書いたので、今度は“見えるけれど、存在しない戦争”を書いてみた、とのこと。 もう一篇の「戦争研修」は、まさに「となり町戦争」に連なる作品。 逆回りのお散歩/戦争研修 |
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