三崎亜記作品のページ No.2



11.玉磨き

12.ミサキア記のタダシガ記

13.ターミナルタウン

14.手のひらの幻獣

15.ニセモノの妻

16.メビウス・ファクトリー

17.チェーン・ピープル

18.30センチの冒険

19.作りかけの明日


【作家歴】、となり町戦争、バスジャック、失われた町、鼓笛隊の襲来、廃墟建築士、刻まれない明日、コロヨシ!!、海に沈んだ町、決起!−コロヨシ!!2−、逆回りのお散歩

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11.

「玉磨き」 ★☆


玉磨き画像

2013年02月
幻冬舎刊

(1500円+税)

2016年06月
幻冬舎文庫化



2013/03/29



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ルポライターの「私」が6つの奇妙な仕事の現場を訪ね、話を聞いて回るという趣向の連作短編集。
注目点は何かといえば、これはもうその<仕事>、と言う他ありません。
となり町戦争以来、常人の思いもよらぬ事々をストーリィに仕立て上げてきた三崎さんの、まさに本領発揮というべき6篇でしょう。

「玉磨き」では、ただただ玉を磨き続けるという伝統工芸、その唯一の継承者を訪ねる話。
「只見通観株式会社」が運行している鉄道は、何処にも行き着かず、ただ環状の路線を回り続けるもの。
乗客の目的はというと、ただ時間を潰すのみ。私のように電車内読書をというのであれば判りますが、車内での時間の潰し方はそれぞれのようです。
「古川世代」、よくもまぁこんな発想が生まれたものだと絶句。しかし、現代日本社会でならこんなことが起きても不思議ない、と思えてしまうところが可笑しく、そして不気味です。
「分業」は、何に使われるのかは全く知らされないまま、部屋に引きこもり状態で何かの部品を作り続ける、という仕事。
「新坂町商店街組合」は、海に沈んだ町を思い出させられるようなストーリィ。

6篇のどれも、一体何の為に?と言われれば、全く答えようのない仕事ばかり。それでも仕事となれば、人というのはひたすらそれに打ち込む、ということがあるもの。
ある意味、そうであるなら、今更何の為に?と問うこと自体、意味がないのかもしれません。そこに仕事があるからするだけ、なのでしょうから。
自分の励んできた仕事が上記のようなものでは決してない、と誰が言えるのでしょうか。考え始めると底は深そうです。

はじめに/玉磨き/只見通観株式会社/古川世代/ガミ追い/分業/新坂町商店街組合/終わりに

                 

12.

「ミサキア記のタダシガ記」 ★☆


ミサキア記のタダシガ記画像

2013年06月
角川書店刊

(1400円+税)


2013/07/16


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「ダ・ヴィンチ」「本の旅人」で4年にわたり連作された人気エッセイの単行本化ということですが、エッセイというよりコラムというところ。

三崎さんには失礼ながら、ヒキコモリ作家が世間で起きたり言われたりしている様々な事柄について、ほんとにそうなの、私はこう思うんだけど、と一言コメントしているという風。
そこに、気軽に読んで読み手もあれこれ自分はこう思うと考えることができるという楽しさがあります。
三崎亜記ファンにとっては、小説作品とは異なる、ざっくばらんな三崎亜記さんと触れ合えるという喜びもあり。

「ミサキア記のタダシガ記」は、「ダ・ヴィンチ」2009年05月号〜12年04月号+「本の旅人」12年04月号〜13年03月号の連載エッセイ。
「ミサキア記のツブヤ記」は三崎さんのツィッターからの抜粋。
「ミサキア記のケンブツ記」は“居酒屋甲子園”なる全国から選ばれた居酒屋6店による決勝戦の見物記で、書下ろし。

ミサキア記のタダシガ記/ミサキア記のツブヤ記/ミサキア記のケンブツ記

     

13.

「ターミナルタウン Terminal Town ★★☆


ターミナルタウン

2014年01月
文芸春秋刊

(1700円+税)

2016年10月
文春文庫化



2014/02/05



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鉄道と共に繁栄したターミナルタウン=静原町、そしてターミナル駅の静ヶ原駅
しかし大規模震災後に特急列車を走らせた別路線に乗客を奪われ、静ヶ原駅はターミナル駅としての機能を失い、それに伴って静原町は凋落、今は静原町の南に開かれた
開南市に併呑されて単なる一地区となり、すっかり寂れてしまっている。

見えないタワーの存在、トンネルではなく種から育て上げられるという隧道に、その担い手である隧道士。寂れた商店街に、東西に分裂した住民。
そんな静原町に住むことを指定された影無き者、旧都から歩いてやってきた男、旧都から戻ってきた娘、静原町の現状を憂う元町長と駅長、そして再び姿を現した“
神童”。彼らが集まった時から町に変化が起こります。しかしそれは町の為になるものではなく、逆に町に災いをもたらすものかもしれない・・・。静原町には一体どんな運命が待ち受けているのか、というストーリィ。

いかにも三崎さんらしい作品ですが、これまでの三崎作品を凌駕する大きな骨格をもった物語になっています。
架空物語とはいえ鉄道が消える、町の過疎化、シャッター商店街という問題は決して絵空事ではありません。その上、静原町と開南市の抗争部分も実はリアルなストーリィ。
静原町とは一体どんな町なのか、何故こうなったのか、そしてこれからどうなるのか。
謎は謎を呼び、読み進むにつれ深まるばかり。架空小説であるだけにこの先どんな展開が待ち受けているのか全く予想つかず。
一方、この先をただ一人見通しているのではないかと思われるのが“神童”という存在。

架空小説でありながらリアル、町の再生ストーリイである筈なのにサスペンス風。
どの登場人物も個性的というより、各自の立ち位置が面白い。もちろん一番ミステリアスで、読み手を引き付けてやまない存在は“神童”であることに疑いはありません。
とにかくストーリィが面白く、読み応えたっぷり。こんな町興し小説読んだことがない、と言うのが一番適確な感想だろうと思います。不思議な面白さから、お薦め。
※“隧道士”というアイデアが面白い。ストーリィ全体の中に埋もれがちですが、奇想天外と言って然るべき。


01.響一/02.牧人/03.理沙/04.町長/05.丸川/06.修介/07.駅長

        

14.

「手のひらの幻獣 ★★


手のひらの幻獣

2015年03月
集英社刊

(1500円+税)

2018年03月
集英社文庫化



2015/04/16



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イメージした動物をあたかも現実に存在するかのように出現させる(表出)ことのできる異能力者たちを描いた連作中編小説、2篇。

何とも不思議なストーリィ。ファンタジーでもなくSFといった感じでもなく、現在我々が存在している世界とパラレルにある別世界を描き出してみせている、といった印象です。
これは本書に限らず、総じて三崎作品について言えること。
こうした世界もあるのだと受け入れ、その世界に入り込んでみることが三崎亜記作品の魅力でもあります。
とはいえ、いくら小説であっても私の理解が届かない、ついていけない箇所が幾つもあります。でも、それらを合わせて(奇矯なことに)惹きつけられ、また現に面白いのです。

主人公は日野原柚月という、30代女性の表出能力者。突出した力をもつ能力者という訳ではないのですが、表出能力を巡る様々な秘密計画に次々と彼女は直面します。
「研究所」は、消えずに残ってしまった“表出実体”を利用しようとする実験に日野原は危ういものを感じて・・・。
「遊園地」は上記の数年後。日野原はたくや君という少年とペアを組んで各地の動物園を巡っています。しかしある夜、たくや君が閉ざされた次世代遊園地内に幽霊とも表出実態とも言えぬ少女の存在を感じて・・・。

本書主人公の日野原柚月という女性、指摘されるまで全く気付かなかったのですが、これまでの作品に登場していました。
バスジャック収録の「動物園」廃墟建築士収録の「図書館」という2篇。
思い出してみれば2篇とも異色の面白さある作品で、その延長線上にある長編小説と判っただけで、本作品の面白さが2割増しした気分です。


研究所/遊園地

          

15.
「ニセモノの妻 ★★


ニセモノの妻

2016年04月
新潮社刊
(1600円+税)

2019年01月
新潮文庫化



2016/05/11



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三崎亜記さんらしい不条理な世界を舞台に、4組の夫婦を描いた短篇集。

三崎さんにあっては不条理な世界など今更珍しくも何ともないのですが、本書についてはこれまでの作品と違って、何やらとても楽しいのです。
清々しい印象を受ける表紙絵によるものではなく、あくまでもストーリィによって。各篇それぞれに何処かユーモラスな味わいがあるのです。

「対の筈の住処」:新築マンションを購入して移り住んだ新婚夫婦。そのマンションに何故か奇妙なことを感じて・・・。
「ニセモノの妻」:数年前から突然本人のニセモノが現れるという事象が起きる。そしてある日、妻が「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」と言い出して・・・。
「坂」:“坂”ブームが到来し、ついに妻を含む坂愛好者たちが我が家の前の坂をバリケード占拠。住民たちと揉め事になるのですが、その結果は・・・。
「断層」:時間の断層ができた結果妻が時間の歪みに入り込んでしまう。一日に数十分だけ戻ってくる妻とは次第に時間の乖離が広がっていき・・・・。

何と言っても面白かったのは、表題作「ニセモノの妻」。
2人でホンモノを探すために出掛けて行くところはまるでカップルによる冒険物語のようです。ニセモノといっても、その自覚がある以外はホンモノと瓜二つ。そのうえニセモノであるという自覚を持つ故に謙虚なのです。夫にとっては妻でありながら新鮮という次第。
そもそもホンモノとニセモノと区別することに何の意味があるのか(ホンモノ妻は怒るでしょうけれど)・・・・。

不条理なのにユーモラスな味わいある短篇集。お薦めです。


終の筈の住処/ニセモノの妻/坂/断層

        

16.
「メビウス・ファクトリー Mebius Factory ★☆


メビウス・ファクトリー

2016年08月
集英社刊
(1600円+税)



2016/09/17



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ブラック企業に勤めていたアルト、シングルマザーだった美野里と結婚、子のキララと3人で8歳の時に去った町に戻り、巨大工場をもつME創研で働き始めます。
至れり尽くせりのこの町、町の外へ行く必要はまるでない暮らしにアルトは満足するのですが、逆に美野里はその閉鎖性・拘束性に疑念を抱き、不快感を隠さない。やがて・・・。

主人公は町に戻ってきたアルト、製品の鑑定士見習いとなった
遠野、前の会社時代からの熟練工である日比野、彼らの指導役である女性=浪野と章毎に入れ替わりますが、総じて不条理を感じさせられる処は共通しています。

不条理なストーリィと言えば、
フランツ・カフカ「
本作品もまた「城」を連想させる作品ですが、未来社会のSF的リアルさ、連作形式である処が発展系。

目に見えたものしか判らない、偽装されてもそれが真実か虚偽かの判断などできよう筈もない、結局は報道されたものを真実として信じる他ない、本ストーリィのそうしたポイントは、未来だけでなく現代社会においても起こりうることかもしれません。
現代社会へのそんな警告メッセージも潜めている連作風長編。

“不条理”は三崎亜記さんの常なるテーマですが、今回はそれ程面白いとは思えなかったなァ・・・。


1.新入社員/2.鑑定士見習い/3.熟練工/4.新入社員、その後/5.新人鑑定士/6.パンデミック/7.お尽くし

       

17.

「チェーン・ピープル ★☆


チェーン・ピープル

2017年04月
幻冬舎刊

(1600円+税)


2017/07/04


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奇妙に現実的で、奇妙に非現実的、という如何にも三崎亜記さんらしい6篇を収録した短篇集。

「正義の味方」:モデルはウルトラマンなのでしょう。敵か味方かの区別を棚上げして、損害論だけで批評されたら、そりゃウルトラマンだってたまりません。
「似叙伝」:“自叙伝”ではなく“似叙伝”とは? 何となく複雑な気持ちにさせられますが、安らぎは必要ですよね。
「チェーン・ピープル」:表題作。チェーン店を人間に当てはめたもの。まさか、応募制とは思いもしませんでした。
「ナナツコク」:頭の中にある地図によって存在するナナツコクとは、実在するのか?
「ぬまッチ」:“ゆるキャラ”の風刺と思いましたが、「裸の王様」にも繋がるのでしょうか。

「応援」:「ぬまッチ」で緩んでいたところをガツンと一発やられた気分。これは凄い、恐ろしい。ネット社会の現在、こんな事態が生じても何ら不思議ない・・・のではないでしょうか。

正義の味方−塗り替えらえた「像」−/似叙伝−人の願いの境界線−/チェーン・ピープル−画一化された「個性」−/ナナツコク−記憶の地図の行方−/ぬまっチ−裸の道化師−/応援−「頑張れ!」の呪縛−

      

18.

「30センチの冒険 Adventure in 30cm ★★


30センチの冒険

2018年10月
文芸春秋刊

(1850円+税)



2018/11/14



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よくもまぁ次々と奇想を思いつくなぁ、と三崎さんには頭が下がる思いです。
本ストーリィの舞台となる異世界は、絶えることのない人の争いに怒った統治者(神様?)が“遠近”を奪い去り、地図も失われた世界。
そのため、目に見えるものがそこにあるとは限らず、人は家の外に一歩でも踏み出せばたちまち自分の居場所が分らなくなり、道に迷ってしまう。

その異世界に迷い込んでしまったのは、図書館司書の
ユーリ
眠ってバスを乗り過ごしてしまい、終点で降りればそこはもう異世界だった、という次第。
たちまち砂に埋もれそうになったユーリを助けたのは、40代半ばの女性=
エナさん
再び
<大地の苦難>に見舞われる前に大地を固定しようと、30センチの物差しを携えたユーリとエナさん、施政官、不思議な訓練を続けるムキは、測量士の一隊と共に<貯刻地>を目指して旅立ちます。
しかし、思わぬ困難、裏切りが・・・。

謎の塔<
ノリド>、住民を連れ去ってしまう<鼓笛隊>、鳥のように空を飛び回る本の大群、<本を統べる者>、象の墓場と、奇想は留まるところがありません。
そして、ユーリと関わったことから、エナさんにも思わぬ影響が生じて・・・。

一言で語るなら“ファンタジー冒険”というところですが、ファンタジーの域を超えて、やっぱり“異世界”と言うに相応しい。

最後は再び旅立ちへ。
エピローグで、ようやくこの物語の前後が繋がった、という印象。
ここに来てやっと、温もりある安らぎを感じた気分です。
読み手の好み次第ではありますが、たっぷり楽しめました。


1.砂の導き/2.大地の秩序/3.鼓笛隊の襲来/4.測量士との旅/5.象の墓場/6.貯刻地/街への帰還/エピローグ

    

19.

「作りかけの明日 On the way to making the future ★☆


作りかけの明日

2018年12月
祥伝社刊

(1850円+税)



2019/01/13



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30センチの冒険といい、本作といい、三崎亜記さんが創り出す仮想世界、ますます広大なものになっている、という気がします。
その広大さ、緻密さに読者が付いていけるかどうか。
それが物語を楽しめるかどうかに関わっていると思うのですが、「30センチの冒険」では楽しめたものの、本作では本作の構造についていくのが精一杯で、楽しむどころではなし。
ひとつの原因としては、主人公が誰と設定されておらず、複数、多数の人物がその時、その場に応じて主役となっているから、と思います。

人の思念を蓄積して活用する、その秘密実験が失敗に終わった10年後からストーリィは始まります。
実験の失敗により人の思念を狂わせてしまう異質化思念が異常活性化、一時的にそれを抑える為、
<予兆>であるキザシと研究の責任者であった寺田博士が地下プラントに入り込んでから10年、というのが本ストーリィの舞台設定。
思念供給公社と、その監督機関である管理局は、プラントをコントロールするために利用しようと、競ってキザシの長女であるハルカの行方を追います。

<置き換える力>を持つ老女の瀬川<思念耐性>を備えるプラント保安局員の黒田は、10年前にキザシと寺田博士から何かを託されている。
一方、供給公社の追及からハルカを救い出した
カナタは、<思念過敏体質>の青年。
早苗は、母親が作ったという礼拝所を再び人の集まる場所にしたいと、恋人である浩介と共に奮闘中。
西山くん、滝川先輩と呼び合う、市役所図書館勤務の夫婦は、第5分館の閉鎖書庫のことが気になる・・・・。

最後、ようやく地下プラントの始末に決着がつくのですが、得心できるかというと、さに非ず、というのが正直な感想。

なお、ハルカの妹
サユミは学校の部活で「掃除部」に属し、閉鎖書庫に収蔵している本は、<本を統べる者>の元から送り出されたもの、というのですから、もう何が何だか。(笑)

プロローグ/1.海から遠い場所/2偽りの雨/3.忘れられた鐘の音/4.飛べない呪縛/5.歯車の軋み/6.2月25日 SideA/7.2月25日 SideB/エピローグ(A year since then)

    

三崎亜記作品のページ No.1

   


  

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