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2.鹿男あをによし 3.ホルモー六景 4.ザ・万歩計 7.ザ・万遊記 10.悟浄出立 |
バベル九朔、パーマネント神喜劇、ヒトコブラクダ層ぜっと、あの子とQ、八月の御所グラウンド、六月のぶりぶりぎっちょう |
●「鴨川ホルモー」● ★★☆ ボイルドエッグズ新人賞 |
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2009年02月 |
奇想天外な娯楽ファンタジー+大学生の青春ストーリィ。 京大に入学したばかりの主人公・安倍は、新入生勧誘のビラに誘われ、“京大青竜会”の新歓コンパに参加。そこで出会い一目惚れしてしまった相手は、美形な鼻の持ち主・早良京子。 安倍は京子会いたさに青竜会に入会しますが、実はこの青竜会、ただの同好会でないどころか、とんでもない代物だった。なんと古来の陰陽師の如く、式神(鬼)を操って他校と伝統に則った対抗合戦を繰り広げるのだという。 ・・・というところは奇々怪々、魑魅魍魎の跋扈する怖ろしげな物語なのですが、そんな物珍しさを取り払ってみれば、やはりそれは大学生らしい青春ストーリィ。 陰陽師、式神という非現実的な道具立ても、舞台が京都となれば何故かすんなり納得させられてしまいます。 いずれにせよ、エンターテイメント要素も青春要素もたっぷり詰め込まれたテンポ良い作品。楽しめること間違いなし、です。 京大青竜会/宵山協定/吉田代替りの儀/処女ホルモー/京大青竜会ブルース/鴨川十七条ホルモー/エピローグ |
※映画化 → 「鴨川ホルモー」
●「鹿男あをによし The fantastic Deer-Man」● ★★ |
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2010年04月
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大学の研究室で助手といざこざがあり、短期間の教師勤めを命じられた主人公。その主人公が勤めることになったのは、奈良の女子高、奈良女学館。 表題の「あをによし」は“青丹吉”。奈良を示す和歌の枕詞で、建物の青色と丹色(赤)が鮮やかで都の眺めはグッド、という意味だそうです。 冒頭、漱石の「坊ちゃん」に似たものを感じました。ストーリィ全体としても似つつ、展開はそれと逆に奈良の魅力を朗らかに謳い、生徒との山あり谷ありの交流を通じて教職のやり応えも謳い上げるといった明るく肯定的なストーリィ。 ※表紙裏:「あをによし 奈良の都は 咲く花の 薫ふがごとく 今盛りなり」 |
●「ホルモー六景」● ★★ |
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2010年11月
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傑作青春譚「鴨川ホルモー」の番外編6篇。 主人公は京大青竜会に止まらず、舞台は大学そして京都に止まらず、そのうえ時代まで現代に止まらずといった、番外編であれども(番外編だからこそかもしれないが)ますます融通無碍かつ荒唐無稽なストーリィ。 まずは京都産業大学玄武組の有名な“二人静”=定子&彰子が登場。次いで京大青竜会の“諸葛孔明”と名を馳せたお馴染み凡ちゃん=楠ふみの登場します。 それにしても「もっちゃん」には驚いた。安倍ともっちゃんの交友記がまさかあの「檸檬」に通じるとはまさか思いませんよ。 プロローグ/鴨川(小)ホルモー/ローマ風の休日/もっちゃん/同志社大学黄竜陣/丸の内サミット/長持の恋 |
●「ザ・万歩計」● ★ |
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2010年07月 2009/03/28 |
万城目さん初のエッセイ集。 小説を書くようになったきっかけだったのだろう、高校授業での「風吹けば」の宿題のこと。化学繊維会社に就職して地方の工場で経理係として勤務していたところ、東京への転勤辞令を受けたのを機に会社員を辞め作家を志したこと。 大阪弁のことといい、万城目学さんを語るに大阪を抜きにはできないらしい。 ニュー・ソング・パラダイス/吐息でホルモー/木曜五限地理公民/御器齧り戦記/マジカル・ミステリー・ツァー |
●「プリンセス・トヨトミ」● ★★ |
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2011年04月
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「鴨川ホルモー」の京都、「鹿男あをによし」の奈良に続く第3弾の舞台は、大阪。 「五月末日の午後四時、大阪が全停止した」という謎めいた一文から始まる本書、ストーリィはそれに遡ること10日の月曜日から始まります。 「トヨトミ」という言葉に違和感を引きずってしまったのは、それがこれまでの2作と違って明らかに世俗っぽいから。 とは言え本作品も、架空物語として充分面白いし、楽しい。 |
※映画化 → 「プリンセス・トヨトミ」
●「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」● ★★ |
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2013年01月
2010/03/06
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どうして長編小説が新書で刊行?と思うのですが、それはさておき、これまでの万城目学作品とはちょっと一線を画した観のある作品。 かのこちゃんと優雅なマドレーヌ夫人、小学生の女の子と猫の物語は並行して進むようでありながら、最後の肝心なところではきちんと交わります。 少女たちと、猫と犬。何ともメルヘンチックで、心温まるストーリィ。児童小説のようであって、でもやはり大人向け作品、と言うべきなのでしょうか。 プロローグ/かのこちゃん/マドレーヌ夫人/かのこちゃんとすずちゃん/かのこちゃんとマドレーヌ夫人/エピローグ |
●「ザ・万遊記」● ★ |
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2012年05月
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エッセイ第2集。 冒頭は、「鹿男あをによし」テレビドラマ化にまつわる、綾瀬はるか、多部未華子らとのエピソード。この章、ドラマもある程度見ていたし、お2人とも好きな女優さんなので、短くあれど楽しい。 「湯治と観戦記」、開始直前にアキレス腱を切り、湯治はアキレス腱のリハビリ目的ともなる。 なお、本書の半分近くを日曜朝放映の長寿番組という「渡辺篤史の建もの探訪」という、俳優の渡辺篤史氏が視聴者のお宅を訪問するという番組についての話題が占める。 万城目作品に関わるエッセイは楽しいのですが、スポーツ観戦、テレビ番組についてはさほど関心がなかったので、満足感は冒頭部分に留まってしまった感じ。 |
●「偉大なる、しゅららぼん」● ★☆ |
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2013年12月
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京都、奈良、大阪と来て、今度は滋賀県が舞台。 もうひとつ良く判らないストーリィのうえに、結末そのものも、やや釈然とせず。 さて、「しゅららぼん」とは何の意味なのか。 プロローグ/石走/不念堂/竹生島/淡十郎/棗広海/グレート清子/しゅららぼん/エピローグ |
「とっぴんぱらりの風太郎(ぷうたろう)」 ★★ |
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2016年09月
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関西圏を主体に奇想天外な物語を繰り広げることの多かった万城目学さんにしては珍しい、初の時代小説。 ふとしたミスで伊賀忍者から追い出された風太郎(ぷうたろう)、京郊外のあばら家に住んでその日暮し。ところが追い出された筈なのに伊賀忍者のかつての仲間から仕事の呼び出しを受けたり等々、 忍者の仕事から中々足を洗えない。 その一方で、アラジンの魔法のランプならぬひょうたんに住まう因心居士と名乗る不思議な老人に思いのままに操られ、ひょうたん作りに勤しんだりと、まぁ何をやっているんだか。 特に腕が立つ訳でもないくせに、世情に疎く情報にも関心が低くて雲行き怪しい世に一人呑気で人の好い忍者、というのが風太郎のキャラクター。そんな風太郎がいつの間にか豊臣家滅亡の戦さに巻き込まれ・・・というストーリィ。 否応なかったかどうかは別として、自らの選択で豊臣家滅亡の戦に関わる忍者もの小説として似ていると思い出したのは、霧隠才蔵を主人公とした司馬遼太郎「風神の門」。しかし、同作品があくまで時代小説らしいもの品であったのに対し、本作品は極めて現代的な要素から組み立てられています。 ちょっとしたミスにも拘わらずトップの怒りを買って強制解雇。いつかは復職をと希望を抱いていたものの、一旦解雇したからには再雇用などありえぬ話と歯牙にもかけてもらえず。忍びこそわが一生の仕事と思い定めていたのに、伊賀集団を離れ、マカオ育ちのマイペース忍者=黒弓と交わっているうち、いつしか忍びは一生の仕事とするに相応しいのか、自分の性格にあっているのかと、およそ現代青年と同様の疑問を抱くようになります。 豊臣家没落を題材にした歴史時代小説は数多くある訳で、本書においては現代的な問題を織り込んだところが見処。 約 750頁と読み甲斐十分ですが、中でも読み応えたっぷりであるのは最終部分。忍者ものであれば忍者同士の迫真の闘いが見せ場となるのは当然のことでしょう。 なお、因心居士、やはり万城目さんならではの登場人物です。 |
10. | |
「悟浄出立」 ★☆ |
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2017年01月
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中国古典の登場人物、それも脇役といった人物たちの、ふとした心の揺らぎ等を描いた作品集。 主人公ではなく脇役だからこそ心に揺らぎがあっても不思議ではない、だからこその面白味あり。 そうした点で本書中ダントツと言ってよい程興味を掻き立てられるのは、お馴染み「西遊記」のメンバーである沙悟浄を主人公とした表題作「悟浄出立」。妖怪の囚われとなって悟空の助けを待っている間、八戒について考えたり質問したりするというだけのストーリィなのですが、その内容が興味津々。 元々中島敦に「悟浄歎異」「悟浄出世」という2短篇があり、自分はどこまで書けるのかと試す意味で「悟浄出立」を書いたということだそうです。 それに続く「趙雲西航」の主人公は、これまた「三国志」のお馴染み登場人物である劉備配下の勇将=趙雲。北方謙三および宮城谷昌光版「三国志」を読んできただけにこちらも興味は尽きず、面白さも遜色ありません。 上記2篇が古典小説を元にしているのに対し、以降3篇は歴史事実が元になっており、その間4年程執筆期間が空いたそうです。 「虞姫寂静」は項羽の愛妾だった虞姫、「法家孤憤」は秦王の暗殺を謀った荊軻(けいか)、そして「父司馬遷」はその娘の栄が主人公。 「父司馬遷」は、帝の怒りを買って宮刑(腐刑)に処された司馬遷が、何故死より宮刑を選んだのか、その後どうやって立ち直ったのかをその娘の視点から描いた篇。「悟浄出立」「趙雲西航」のような面白さは感じませんが、見逃せないストーリィです。 悟浄出立/趙雲西航/虞姫寂静/法家孤憤/父司馬遷 |