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11.コッペリア 12.レインレイン・ボウ 13.スペース 14.てるてるあした 15.ななつのこものがたり 16.モノレールねこ 17.ぐるぐる猿と歌う鳥 18.少年少女飛行倶楽部 19.七人の敵がいる 20.無菌病棟より愛をこめて |
【作家歴】、ななつのこ、魔法飛行、掌の中の小鳥、いちばん初めにあった海、ガラスの麒麟、月曜日の水玉模様、沙羅は和子の名を呼ぶ、螺旋階段のアリス、ささらさや、虹の家のアリス |
はるひののはる、トオリヌケキンシ、我ら荒野の七重奏、カーテンコール!、いつかの岸辺に跳ねていく、二百十番館にようこそ、空をこえて七星のかなた、1<ONE> |
●「コッペリア」● ☆ |
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2006年07月 2025年01月
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人形を愛する青年、人形のような女優、そして天才的な女性人形作家をモチーフにした、加納さん初の長篇ミステリ。 帯に「新境地を拓く、初めての長編ミステリー」とありますが、その是非については、正直なところ否という感想。 これまでの加納作品には、いつも明るい温かさがありましたが、本作品にはそれがあまり感じらない。むしろ、ストーリィがもうひとつ腑に落ちないという、落ち着きの悪さがあります。 まあ、人形を愛する青年、そして実業家といった要素自体、そもそも薄気味の悪いものですが。 前半は人形に絡むストーリィ。 人形を愛するなら、もっと純粋に愛した方がストーリィとしてはスッキリします。その点で懐かしく思い出されるのは、ジョン・コリア「ある恋の物語」。 |
●「レインレイン・ボウ」● ★★ |
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2006年10月
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高校を卒業してから7年。ソフトボール部の仲間だった知寿子の葬儀に、当時キャプテンだった陶子の呼びかけで、かつての仲間が集まります。そこから語りだされる7つの物語。
高校の時は同じソフトボール部の部員だったといっても、その後彼女たちが辿った道はそれぞれ異なります。その結果がどうであれ、それは彼女たちが自分自身で選んだ道。 高校時代が基点となり、彼女たちの歩んだ青春群像が浮かび上がってくるようです。
爽やかで愛おしい、7様のストーリィが楽しめる連作短篇集。 サマー・オレンジ・ピール/スカーレット・ルージュ/ひよこ色の天使/緑の森の夜鳴き鳥/紫の雲路/雨上がり藍の色/青い空と小鳥 |
●「スペース」● ★★☆ |
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2009年05月
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「ななつのこ」「魔法飛行」に続く“駒子”シリーズ、第3作。 その期待に反して、最初の「スペース」はよく判らなかった。駒子が瀬尾に渡した手紙、それは新しく経験する短大生活を親友に書き送るものです。青春日記風の楽しさはあるものの、このどこにミステリ要素があるのか。また、主人公に違和感もあり。最後に種が明かされた後も、もうひとつ釈然としない気持ちが残ります。 その思いが一変するのは、「スペース」と裏表の関係にある「バック・スペース」を読み出してから。中盤に及んでは、やられたァ、の一言。それは、加納さんの上手さに舌を巻いた、という意味です。「スペース」で書かれなかった物語を紐解いて、なお余りある一篇です。 本書を一言で語ると、自分の居場所探しのストーリィ。それは直前に読んだ「ハイジの子どもたち」にも通じるもの。 スペース/バック・スペース |
●「てるてるあした」● ★★☆ |
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「ささらさや」に続く佐々良町での物語。 折角志望の高校に合格したものの進学ならず、照代はすがる思いで鈴木久代を訪ねてきます。遠い親戚と聞かされたものの、久代は魔女呼ばわりされている、痩せて気難しそうな老女。 嫌いな人ばかりという照代が、久代に厳しく扱われる一方でサヤたちに後押しされ、少しずつ自立心を育て新生していくストーリィ。ありきたりな筋立てかもしれませんが、加納さんならではの優しさ、温かさがとても素敵です。最後にはつい胸熱くなり、涙が溢れそうになりました。 春の嵐/壊れた時計/幽霊とガラスのリンゴ/ゾンビ自転車に乗って/ぺったんゴリラ/花が咲いたら/実りと終わりの季節 |
●「ななつのこものがたり」(絵:菊池健)● ★☆ |
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加納朋子ファンなら、この題名を聞けばすぐに加納さんのデビュー作「ななつのこ」を思い浮かべるに違いないでしょう。 この絵本では、おかあさんが「はやて」という自分の男の子に寝る前に語ってきかせるお話の形をとっています。 新しい話がある訳ではありませんし、話としたら「ななつのこ」を読んだ方が楽しめるのは間違いありませんが、ファンとしては素敵な絵本になったことが嬉しいのです。 すいかおばけ/金色のねずみ/空の青/水色のチョウ/竹やぶ焼けた/ななつのこ/あした咲く花 |
●「モノレールねこ」● ★★☆ |
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2009年06月
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いいなぁ、本当にいい。 加納さんといえば日常ミステリですが、本短編集にはそんな印象はありません。どれもストーリィの上手さに唸らされる短篇ばかり。 表題作の「モノレールねこ」、題名は奇抜ですが、命名の由来は読めばすぐ納得。懐かしくもある子供っぽいやりとりが大人になって鮮やかに蘇ってくる、そんなストーリィは大いに魅力です。それに相手方となる登場人物、私の好きな「掌の中の小鳥」の紗英を彷彿させられて、つい惹きつけられてしまう。 なお、本書収録8篇の中に、O・ヘンリの有名な短篇そっくりの話が出てきます。 モノレールねこ/パズルの中の犬/マイ・フーリッシュ・アンクル/シンデレラのお城/セイムタイム・ネクストイヤー/ちょうちょう/ポトスの樹/バルタン最期の日 |
●「ぐるぐる猿と歌う鳥」● ★★ |
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2010年05月 2013年12月
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“かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド”シリーズ(講談社)の第13回配本作品。 主人公は高見森(たかみ・しん)。父親の転勤で東京から北九州に転校した小学校5年生。 子供向けらしくあっさりと、素直に楽しめるところが本作品の良さ。 プロローグ−あるいは、物語の前のひとりごと/ぐるぐる猿と歌う鳥/モノローグ/図書室の暗号/モノローグ/社宅のユーレイ/エピローグ |
●「少年少女飛行倶楽部」● ★★ |
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2011年10月
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加納朋子さんといえば日常ミステリの旗手ですが、本書は中学生を主人公とした部活もの青春物語、ミステリはなし、です。 「飛行クラブ」の部活目的は、もちろん空を飛ぶこと。 部員たち各々が抱える問題が中学生ドラマとして描かれるのは(考え込まされる部分もありますが)、通例パターン。 部員一人一人のドラマ、部員たちの個性的なキャラクターももちろん楽しいのですが、何より感じるのは、作者である加納朋子さんの彼らに対する温かい眼差しです。 |
●「七人の敵がいる」● ★★☆ |
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2012年03月
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元々日常ミステリの旗手だった加納さん、このところ青春物語等々、作品の幅を広げてきまししたが、今回は何とPTA小説とのこと。 主人公の山田陽子、編集者として仕事に忙しく追われる毎日。しかし、一人息子の陽平が学校に通うようになると、どうしてもPTA等々、いろいろな雑用が入ってきます。 陽子と周囲に迎合してばかりの専業主婦たちとの対決構図、というストーリィ展開ですが、よく読むと主眼は決してそんなことになるのではないことが判ります。 いずれにせよ、決して相手に屈したままとせず、理詰めかつ正論で責め、戦略も駆使し、最後には逆転勝利をつかみ取る陽子の突進力、痛快です。 女は女の敵である/義母義家族は敵である/男もたいがい、敵である/当然夫も敵である/我が子だろうが敵になる/先生が敵である/会長様は敵である |
●「無菌病棟より愛をこめて」● ★★☆ |
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2014年09月
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最近新作が出ていないなぁとは思っていましたが、加納さん、まさか闘病中だったとは。 2010年06月17日、加納さんは急性骨髄性白血病の宣告を受ける。5年後の生存率は35%。 それより前の日々/突如として重病人?の日々/中休み/ドナー日記(1)/無菌病棟より愛をこめての日々/それよりあとの日々/ドナー日記(2)/あとがき |
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