高校時代に愛読した本の再読です。
最初の出会いは、英語のサイドリーダーで「多忙な仲買人のロマンス」を読んだことでした。
ちょっとしたユーモア、ペーソス、ほのかなロマンス、意外な結末、そしていろいろなストーリィが詰まっていて、当時お気に入り本のひとつでした。
今回、随分と久しぶりに読んだのですが、こんなに軽い、ショートストーリィばかりだったのかと、ちょっと驚きを感じました。以前ほどの感動がない。
ひとつは、ストーリィにでき過ぎの観があって、現実感をあまり感じない、ということにあるようです。もうひとつは、ストーリィをほぼ覚えてしまっていますから、新鮮さを感じないということ。(でも、何度読もうと、その都度新鮮な楽しみが得られるという作品もあるのです。)
改めて考えると、オー・ヘンリーの魅力は、小市民のささやかな喜怒哀楽を、飾ることなく素直に描いている、ということにあると感じます。
「賢者の贈りもの」や「最後の一葉」は誰しも忘れることのできない作品だと思いますし、私としては「献立表の春」や「忙しい株式仲買人のロマンス」、「桃源郷の短期滞在客」等のロマンスもの、「赤い酋長の身代金」などが好きな作品です。
岩波文庫の本書は選りすぐりの短篇集ですから、どれも楽しい作品ばかりです。もっと多く読みたい方であれば、最初から新潮文庫 「O・ヘンリ短編集」(全3冊)を選ぶことをお薦めします。
賢者の贈りもの/警官と賛美歌
/マモンの神とキューピッド/献立表の春/緑のドア/御者台から/忙しい株式仲買人のロマンス/二十年後
/改心/古パン/眠りとの戦い/ハーグレイヴズの一人二役/水車のある教会/赤い酋長の身代金/千ドル
/桃源郷の短期滞在客/ラッパのひびき/マディソン・スクェア千一夜物語/最後の一葉/伯爵と結婚式の客(以上20篇収録)
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