加納朋子作品のページ No.3



21.はるひのの、はる

22.トオリヌケ キンシ

23.我ら荒野の七重奏

24.カーテンコール!

25.いつかの岸辺に跳ねていく

【作家歴】、ななつのこ、魔法飛行、掌の中の小鳥、いちばん初めにあった海、ガラスの麒麟、月曜日の水玉模様、沙羅は和子の名を呼ぶ、螺旋階段のアリス、ささらさや、虹の家のアリス

加納朋子作品のページ bP


コッペリア、レインレイン・ボウ、スペース、てるてるあした、ななつのこものがたり、モノレールねこ、ぐるぐる猿と歌う鳥、少年少女飛行倶楽部、七人の敵がいる、無菌病棟より愛をこめて

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21.

「はるひのの、はる」 ★★


はるひのの、はる画像

2013年06月
幻冬舎刊

(1500円+税)

2016年04月
幻冬舎文庫化

    

2013/07/20

   

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ささらさや」「てるてるあしたに続く、“ささら”シリーズ第3作。そして残念ながら最終巻だそうです。
8年も経て第3作を読めるのは思っていなかったなぁ。嬉しいことも嬉しいのですが、それより驚きが先に立ちます。
なお、シリーズものとはいえ、独立した話なので、前2作を読んでいなくても本書を楽しむのには何の支障もありません。もちろん前2作を読んでいれば、多少楽しさも大きくなりますが。

主人公は、各章毎に入れ替わりますが、全体を通しての主人公は「ささらさや」で小さな赤ん坊だったユウスケであると言って間違いないでしょう。
幼いころから普通の人と違う物(幽霊)が視えることがあるユウスケが、その少女と出会ったのは、佐々良川のほとりにある広い原っぱでのこと。その原っぱを彼女は
はるひ野と言い、自分のことを「はるひ」と呼んでと言います。
未来人だというはるひから「助けて欲しいの」とユウスケが頼まれたことは、人の人生を少しだけ変えること。
そんなはるひとユウスケの出会い、手助けは、小学校に上がる前から高校生になるまで幾度か繰り返されます。
ファンタジーで不思議で心優しい物語。でもそれだけならそう深く感じる程のストーリィにはなりません。
一気に面白くなるのは、ユウスケが人生ドラマの主役の一人となる
「ふたたびはるひのの、はる(前)(後)」に至ってから。
全ての謎がこの2章で明らかにされます。

「ささらさや」のユウスケが成長した姿を見るのはファンとしては嬉しい限り。でも本作品の良さは、そのユウスケが前に出過ぎることなく、脇役として、そして最後で主役になるといった寄り添うような存在として登場しているからこそでしょう。
加納さんらしく、優しさに満ちたファンタジー。お薦めです。

プロローグ/はるひのの、はる/はるひのの、なつ/はるひのの、あき/はるひのの、ふゆ/ふたたびはるひのの、はる(前)/ふたたびはるひのの、はる(後)/エピローグ

 

22.

「トオリヌケ キンシ」 ★★


トオリヌケキンシ画像

2014年10月
文芸春秋刊

(1400円+税)

2017年06月
文春文庫化



2014/11/02



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加納朋子さんらしい、優しさと温かさ溢れる連作短篇集。
久々に加納作品の魅力を満喫した思いです。

本書収録の6篇、いずれも何らかの病気がストーリィ上の重要な鍵となっています。
病気であるのは主人公であったり、その身近な人だったりしますが、本人がそうと気付いていなかったりする処でドラマが生まれています。
病気自体辛いものだと思いますが、そうと自分が気付いていなかったり、自分は承知していても他人に気付いて貰えないような病気はなおのこと辛いものでしょう。
こうした本書が生まれるきっかけは、やはり加納さん自身の闘病経験にあるのだろうと思います。

「トオリヌケ キンシ」は、高校生になって部屋にヒキコモリとなった主人公の元に、かつて小学校で同級生だった女子が訪ねてきます。主人公に助けてもらった、というそのこととは・・・。
「平穏で平凡で、幸運な人生」は、極めて平凡な女子である主人公に唯一備わった特殊な能力とは?
「空蝉」は、お化けに乗っ取られた母親に虐待された少年、今もそれがトラウマになって義母にも打ち解けられないでいるのですが、それを解きほぐしてくれた先輩が語った真相とは・・・。
「フー・アー・ユー?」の主人公は、人の顔が識別できない“相貌失認症”。それなのに一人の女子から告られて・・・。2人の恋愛は成り立つのやら?
「座敷童と兎と亀と」は、老妻が死去し一人ぼっちとなった老人が突然、主人公である主婦の元を訪ねて相談したことと言えば「座敷童がいるらしい・・・」。果たして事実か?
「この出口の無い、閉ざされた部屋で」は、加納さんの経験があるからこその、純粋に感動的な物語。

6篇の中でも私好みなのは 「トオリヌケ キンシ」「フー・アー・ユー?」の2篇。「空蝉」は現代的で余りに切ない。そして「この出口の無い、閉ざされた部屋で」は別格の一篇。
加納ファンの方もそうでない方も是非、本書を堪能ください。

トオリヌケ キンシ/平穏で平凡で、幸運な人生/空蝉/フー・アー・ユー?/座敷童と兎と亀と/この出口の無い、閉ざされた部屋で

  

23.

「我ら荒野の七重奏 ★★


我ら荒野の七重奏

2016年11月
集英社刊

(1500円+税)



2016/11/30



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七人の敵がいるにて圧倒的な存在感を知らしめた“ミセス・ブルドーザー”こと山田陽子が再登場。
愛息子の
陽平が公立中学に進学して吹奏楽部に入部、その結果として今回の舞台は吹奏楽部員の親たち、保護者の会です。

相変わらず陽子、陽平のこととなると瞬間湯沸かし器のように激情、周囲のことがまるで見えなくなったまま突進して紛議を来すというパターンは相変わらず。
主人公が陽子ですからストーリィは当然にして陽子の視点から進みますが、非陽子の視点から見たら、こんな親がいたらさぞはた迷惑だろうなぁと感じます。

そんな功罪相半ばする陽子ですが、後半に至るや陽子のパワーがさく裂し始め、ストーリィも俄然面白くなります。それでこそ山田陽子、ミセス・ブルドーザー!といった感じです。

それにしても子供が吹奏楽部に入ると親ってこんなに大変なの?と思う状況が目白押し、呆然とする程です。
子供を人質にとられると親は弱いもの。今やこの時代、親も大変なんだよーというストーリィ。
一方、そうした主ストーリィの裏で、陽平ら子供たちがそれなりに成長している姿もちゃんと描かれている処が好ましい。

“怪傑−陽子”第2弾! お楽しみに。

※それにしてもこの陽子、レインレイン・ボウ
第2話が初登場(小原陽子)だったとは、まるで気付いていませんでした。

独奏(ソロ)/二重奏(デュオ)/三重奏(トリオ)/四重奏(カルテット)/五重奏(クインテット)/六重奏(セクステット)/七重奏(セブテット)!/エピローグ

 

24.

「カーテンコール! Curtain Call ★★☆


カーテンコール!

2017年12月
新潮社刊

(1400円+税)



2018/01/21



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経営不振から閉校の時を迎えた萌木女学園大学、最後の学生を卒業式で全員送り出し無事閉校となるところ、出席不足等による単位不足で10人程が卒業できないという予想外の事態が発生。
そこで理事長兼学長である
角田大造が考え出したのは、半年間にわたる特別補習講。
三食食事付きでの寮生活、但し外出禁止、ネット環境もなし、というまるで拘置所同然。しかし、学生の親たちは感激して娘たちを補習講に送り込んでくる、という次第。

ある舞台設定の下に数人の主人公が登場してくる、という連作ものは、加納さんお得意のところですが、本作も同様。
何故単位不足となったかについては、それぞれに深い事情あり。
加納さんの連作ものの魅力は、各ストーリィの主人公がそれぞれに人間的魅力を持っているからなのですが、それは本作も例外ではありません。

「佐藤壺は空っぽ」の恋愛話は切なくも甘酸っぱく、ミステリ風味あり。
「萌木の山の眠り姫」「鏡のジェミニ」は、2人一部屋の寮生活という設定を活かした妙味ある展開。
そして
「プリマドンナの休日」では、何故優等生が単位不足だったかについて、呆気に取られる真相が待ち受けていました。

どの篇も魅力に富んだストーリィなのですが、上手い! なんて上手いんだ!と、嬉しい思いと共に唸らされたのは、最終章
「ワンダフル・フラワーズ」に篭められた、角田理事長たちからのメッセージ。
こんな秘密が隠されていたとはなー。細部の仕掛けもお見事。
しかし、それ以上に見事なのは、理事長たち、学生たちそれぞれの思いが輪のように繋がった処でしょう。 お薦め!


砂糖壺は空っぽ/萌木の山の眠り姫/永遠のピエタ/鏡のジェミニ/プリマドンナの休日/ワンダフル・フラワーズ

  

25.
「いつかの岸辺に跳ねていく ★★☆


いつかの岸辺に跳ねていく

2019年06月
幻冬舎

(1500円+税)



2019/07/15



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「フラット」は、典型的な青春ストーリィ。
主人公は、
森野護
その護には気になる幼馴染がいる。親同士が仲良く幼い頃は一緒に遊ぶことも多かった
平石徹子
その徹子、自分のことはさておいて、いつも周囲の人が幸せでいることばかりに一生懸命な女の子。中学、高校、卒業後、いつも護の視線の先には徹子がいる。しかし、2人の関係はいつも幼馴染のままであって恋人関係には進展しません。
その徹子についに結婚が決まった、という知らせ。
健やかで、平穏で、物足りないくらい気持ちの良い青春譚。でもこれって加納朋子さんらしくないストーリィだな、と感じざるを得ず。

「レリーフ」は、上記を平石徹子の側から、彼女を主人公に据えたストーリィ。
まったく同じ出来事が繰り返されますが、しかし、徹子の視点に立つと全く違った様相が見えてきます。
それらはすべて、徹子が懸命に努力してきた結果だったのですから。
やがて、徹子の前に、
影山堅利(カタリ)という人物が姿を現します。高校時代からの親友である林恵美の結婚相手として。
そのカタリが、悪魔のような人物。そして徹子さえ、逃れようのない窮地に追い込まれます。

「フラット」が健全な青春小説であったのに対し、「レリーフ」は息も詰まるような恐ろしいサスペンス。
この2篇の格差が凄すぎて、叩きのめされてしまいました。

護も徹子も、純粋で善意しかもっていないような好人物。
その2人と親しくなるのが、ヤンキー夫婦の
高倉正義・弥子大城健治らの仲間たち。
その組み合わせの妙が、2人にとって強烈な支えとなるのですから、この辺り、加納さんはやっぱり上手い!
やぁー面白かった! 彼らと出会えてとても幸せな気分です。


フラット/レリーフ

    

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