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1.GO 3.FLY,DADDY,FLY(フライ、ダディ、フライ) 4.対話篇 5.SPEED 6.映画篇 8.友が、消えた |
●「GO」● ★★☆ 直木賞 |
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2003年03月 2007年06月
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すごく
いい小説です。 この小説の魅力は、登場人物それぞれの存在感にあります。 本書は、根底に在日の人々がかかえる葛藤感を描きながら、それにこだわらず読んでも、充分に楽しめる青春小説です。 ※終盤、何故「在日」と言って差別するのか?という主人公の問いには、貫くような迫力がありました。一方、差別の問題と別にして、日本に永住しながら何故彼らは国籍を変えないのか、という問題もあるわけです。その点については桜井よしこ「日本の危機2」でも論じられていましたので、良かったら読んでみてください。 |
●「レヴォリューションNo.3」● ★★☆ |
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2008年09月
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ひとことで言えば、すこぶる元気の出てくる青春小説。 有名進学校が集まる東京都新宿区で、唯一オチコボレ生徒が集まった高校が、主人公たちの母校。 登場人物は、主人公の僕、相談引受屋のアギー、喧嘩に滅法強い舜臣、不運をいつも招き込んでいるような山下と、個性豊か。そして“ザ・ゾンビーズ”の面々。 「レヴォリューションNo.3」は、その女子高学園祭への乱入顛末。 青春小説といっても、彼等の奮闘は学校内でなく、常に校外でのこと。 本書は、読めば元気が出てくる、カンフル剤のような一冊。 レヴォリューションbR/ラン、ボーイズ、ラン/異教徒たちの踊り |
●「FLY,DADDY,FLY」● ★★☆ |
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2009年04月
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主人公は47歳の平凡なサラリーマン、鈴木一。 ところが、その娘・遥が顔を酷く殴られ、病院に運ばれるという事件が起こります。 素晴らしいのは、単なる復讐劇ではなく、主人公が人間としての自信を取り戻すための挑戦ストーリィであり、同時に可能性に挑むストーリィであること。 それにしても、南方らの周到さには舌を巻く。 |
※映画化 → 「FLY,DADDY,FLY」
●「対話篇」● ★☆ |
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2008年07月 2020年08月 2003/06/28 |
登場人物2人の間で会話形式にて語られる、3つのラブ・ストーリィ。 とくに冒頭の「恋愛小説」。両親の死んだ後、自分が親しくなった相手が次々と死んでしまうようになり、人と接触を避けるようになった青年の恋物語。彼は、あえて会い続ける道を選択します。「会わなくなった人は死んじゃうのとおんなじ」という彼女のセリフは、恋愛の一面を突いていると同時に殺し文句ですね。 「花」は、28年前に別れた妻の遺品を受け取りに、東京から鹿児島までかつての新婚旅行と同じく自動車で向かう弁護士のストーリィ。バイトで同乗することになった青年との間で、妻との思い出が回想として語られていきます。爽やかさ、温もり、そして最も余韻をひくのがこの一篇。 恋愛小説/永遠の円環/花 |
●「SPEED」● ★★☆ |
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2011年06月
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「レヴォリューションNo.3」「FLY,DADDY,FLY」に続く“ゾンビーズ”シリーズ第3弾!(いつシリーズになったのか?) 登場するのは、南方、萱野、山下、朴舜臣、アギー(佐藤健)という、いつものお馴染みメンバー。 その点では 「FLY,DADDY,FLY」と似ています。聖和女学院という私立お嬢様学校の1年生である佳奈子が、奇しくも彼らと知り合うことによって新たな世界、新たな可能性を見出すという(サスペンス風味付)青春ストーリィなのですから。 家庭教師の彩子が突然自殺し、彼女の力になれなかったという悔いを残す佳奈子は、1人で事情を調べようとします。 本書の魅力は、4人と知り合ってからの佳奈子が水を得た魚のように4人に溶け込み、模範生徒という殻を破って生き生きとしていく様にあります。 ※「対話篇」に収録されている「永遠の円環」に関連するストーリィ。 |
●「映画篇」● ★★ |
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2010年06月 2014年08月
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名作映画をモチーフにした5つのストーリィ。 冒頭の「太陽がいっぱい」は、在日朝鮮人の親友2人が主人公。これは今までどおり金城さんらしい物語。 とは言いながら、「ローマの休日」無料上映会の経緯を明かす中篇「愛の泉」がやはり一番欠かせない篇です。 なお、5篇の表題となっている映画のうち、私が観たことのあるのは「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」「愛の泉」の3篇のみ。 太陽がいっぱい/ドラゴン怒りの鉄拳/恋のためらい−フランキーとジョニーもしくはトゥルー・ロマンス/ペイルライダー/愛の泉 |
●「レヴォリューション0」● ★☆ |
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2013年06月
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“ザ・ゾンビーズ”結成前夜の物語にして、シリーズ完結編、とのこと。 新宿区内にある、オチコボレばかりが集まる私立高校。 今頃に何故、ザ・ゾンビーズ結成前夜の物語?とは思うものの、久しぶりに彼らと再会できるのは嬉しいことです。 改めて、今頃どうして“ザ・ゾンビーズ”?と考えてみると、閉塞感漂う現在の日本社会、金城さんはそこにもう一度鉄槌をぶち込もうとしたのではないか、と思います。 ※最近「ランウェイ・ビート」でも聞いた例のメッセージ。私にとっての元祖は本シリーズにあります。 |
8. | |
「友が、消えた」 ★★ |
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“ザ・ゾンビーズ”シリーズは完結済と思っていたので、最新巻と聞いて、まさか!と驚き。 ただし、登場するのは、大学生になった南方のみ。 舞台は2000年代。 今は永正大学法学部法律学科一年生となった南方、平凡な大学生かというと、そこはちょっと違う。 有名俳優から気に入られて割の良いバイトをさせてもらったり、元米軍兵から格闘技の訓練を受けていたりと、やはりただの大学生ではありません。 その南方に近付いてきたのが、同じ学科だという結城拓未という学生。 南方の過去を知っていて、両親共々姿を消してしまった友人=北澤悠人を捜して欲しいと頼み込んできます。どうやら北澤、違法なことに手を染めていたらしい。 親しい友人という訳ではない、何の得になる訳でもない、それなのに南方は何故、危険な目に遭うかもしれない依頼を引き受けたのか。 そこはやはり、「世界を変えてみたくないか?」という問いかけが今も南方の心に残っているからなのでしょう。 あえて言えば、世界をちょっとでも良くしてみないか、が本作に繋がっているテーマであろうと思います。 とんでもないことが色々起こりますが、その一方で感じられるのは、ザ・ゾンビーズの面々が今はいなくても、南方の周りには彼を支援しようという多彩な人物たちが今もいるということ。 (過去のザ・ゾンビーズとしての奮闘は今に活きているのです) そこが面白いし、本作の変わらぬ魅力です。 大学生界のトラブルシューター?といった南方、本一作だけでは勿体ない。是非、続刊を読みたいものです。 |