金城一紀(かねしろかずき)作品のページ


1968年生、日系韓国人。小説現代新人賞受賞、2000年「GO」にて第123回直木賞受賞。


1.GO

2.レヴォリューションNo.3

3.FLY,DADDY,FLY(フライ、ダディ、フライ)

4.対話篇

5.SPEED

6.映画篇

7.レヴォリューションNo.0

  


     

1.

●「GO」● ★★☆    直木賞


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2000年03月
講談社刊
(1400円+税)

2003年03月
講談社文庫化

2007年06月
角川文庫化

     

2000/07/19

すごく いい小説です。
まず印象的なのは、けれんのない直線的な青春ストーリィであること。
主人公の高校生・
杉原は元在日朝鮮人、そして今は在日韓国人。中学校までは朝鮮学校に通っていたが、自らの意思で日本の普通高校に進学。その為、以前の仲間からは裏切り者扱いされ、一方高校では部外者扱いされている、という設定。

この小説の魅力は、登場人物それぞれの存在感にあります。
まず、主人公。切れ味鋭いストレート・パンチを眼前にみるような小気味良さがあります。更に彼の父親の人物像が見事。小学校卒で元日本ランカーのボクサー、現在はパチンコ景品交換所稼業ですから腕力勝負の人間かと思えば、ニーチェの一節を自然に暗唱したりします。得難い魅力の持ち主と言って良いでしょう。
その他、母親、その友人ナオミ、朝鮮学校からの親友・正一、高校での唯一の友人・加藤、朝鮮学校時代の仲間・元秀、誰もが存在感をしっかりと 感じさせてくれます。
それに比べると、恋人となる桜井椿はちょっと存在感が弱い。しかし、彼女の登場があるから、本作品はハードな生き方と友情のストーリィに恋愛の楽しさを加えた青春小説に成り得ています。それと同時に、自らのアイデンティティ確立に苦闘する在日の若者と、安閑と日本人でいる人々との違いを、対照的に浮かび上がらせています。

本書は、根底に在日の人々がかかえる葛藤感を描きながら、それにこだわらず読んでも、充分に楽しめる青春小説です。
歯応えのある爽快さが魅力の所以でしょう。

終盤、何故「在日」と言って差別するのか?という主人公の問いには、貫くような迫力がありました。一方、差別の問題と別にして、日本に永住しながら何故彼らは国籍を変えないのか、という問題もあるわけです。その点については桜井よしこ「日本の危機2でも論じられていましたので、良かったら読んでみてください。

     

2.

●「レヴォリューションNo.3」● ★★☆


レヴォリーションNo.3画像

2001年10
講談社刊
(1180円+税)

2008年09月
角川文庫化

  

2002/02/10

 

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ひとことで言えば、すこぶる元気の出てくる青春小説。

有名進学校が集まる東京都新宿区で、唯一オチコボレ生徒が集まった高校が、主人公たちの母校。
勉強が苦手なのは判っている。学歴社会の日本で、社会に出ても頭の良い連中の下に立たざるを得ないだろうことも判っている。でも、それなりに自分達らしく頑張ってやろうという心意気が、本作品から感じられて、楽しい。
登場人物は、主人公の、相談引受屋のアギー、喧嘩に滅法強い舜臣、不運をいつも招き込んでいるような山下と、個性豊か。そして“ザ・ゾンビーズ”の面々。
「君たち、世界を変えてみたくはないか?」という教師の一声に触発され、有名女子高の学園祭への乱入決行の為結成されたグループが、ザ・ゾンビーズ。(※ちなみに、ゾンビとは怪奇映画に登場した化け物)
「レヴォリューションNo.3」は、その女子高学園祭への乱入顛末。
「ラン、ボーイズ、ラン」は、学園祭の後急性白血病で死んだヒロシの墓参りに、皆でバイトして沖縄に行くまでの顛末。
そして「異教徒たちの踊り」は、前2篇の間に挟まるストーリィ。

青春小説といっても、彼等の奮闘は学校内でなく、常に校外でのこと。そこがオチコボレ高校生らしいところかもしれませんが、事起これば大人や社会に頼らず、自分達の手で解決しようとする行動力、皆で一斉に行動するチームワークが妙に楽しいのです。また、高校生らしい恋愛部分も快い。
本書は、読めば元気が出てくる、カンフル剤のような一冊です。

レヴォリューションbR/ラン、ボーイズ、ラン/異教徒たちの踊り

      

3.

●「FLY,DADDY,FLY」● ★★☆


FLY,DADDY,FLY画像

2003年01月
講談社刊
(1180円+税)

2009年04月
角川文庫化

   

2003/06/15

 

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主人公は47歳の平凡なサラリーマン、鈴木一
一応上場企業の経理部長であり、マイホームも持ち、愛する妻と美人の娘という幸せな家庭をもつ。
ところが、その娘・が顔を酷く殴られ、病院に運ばれるという事件が起こります。突然の事態に立ち竦んでしまい、娘の手を握ってやることさえできなかった主人公。相手の男子高校生に掴みかかろうと思っても、相手はインターハイで三連覇したボクシングチャンピオン・石原、とても敵う相手ではありません。
そんな主人公の前に、オチコボレ高校の5人が助力を申し出る。南方、板良敷、萱野、山下、朴舜臣という、レヴォリューションbRでお馴染みの面々。
その日から、舜臣指導による特訓が始まります。すべては石原に決闘を挑む為、というストーリィ。

素晴らしいのは、単なる復讐劇ではなく、主人公が人間としての自信を取り戻すための挑戦ストーリィであり、同時に可能性に挑むストーリィであること。
そしてまた、オチコボレと世間に評価付けされている高校生たちの、自分達には何ができるのかという、挑戦ストーリィでもある点です。
特訓の様子が楽しいのは勿論のこと、主人公と舜臣、南方ら、見物の老人たち、バスのスタメン乗客らとの触れ合いを描く幾つものシーンが素晴らしい。胸熱くなります。
それにしても、南方らの周到さには舌を巻く。
中年男性にとっての新・青春ストーリィと言って良いでしょう。得難い爽快感あり。お薦めです。

    ※映画化 → 「FLY,DADDY,FLY」   

   

4.

●「対話篇」● ★☆


対話篇画像

2003年01月
講談社刊

(1400円+税)

2008年07月
新潮文庫化

2003/06/28

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登場人物2人の間で会話形式にて語られる、3つのラブ・ストーリィ。
3篇ともそれなりに印象に残るラブ・ストーリィですが、これまでの金城作品の応えある現実感と比べて、拵えごとという印象を持たざるを得ません。

とくに冒頭の「恋愛小説」。両親の死んだ後、自分が親しくなった相手が次々と死んでしまうようになり、人と接触を避けるようになった青年の恋物語。彼は、あえて会い続ける道を選択します。「会わなくなった人は死んじゃうのとおんなじ」という彼女のセリフは、恋愛の一面を突いていると同時に殺し文句ですね。

「花」は、28年前に別れた妻の遺品を受け取りに、東京から鹿児島までかつての新婚旅行と同じく自動車で向かう弁護士のストーリィ。バイトで同乗することになった青年との間で、妻との思い出が回想として語られていきます。爽やかさ、温もり、そして最も余韻をひくのがこの一篇。

恋愛小説/永遠の円環/花

     

5.

●「SPEED」● ★★☆


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2005年07月
角川書店刊
(1100円+税)

2011年06月
角川文庫化

 

2005/07/14

 

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レヴォリューションNo.3」「FLY,DADDY,FLYに続く“ゾンビーズ”シリーズ第3弾!(いつシリーズになったのか?)

登場するのは、南方、萱野、山下、朴舜臣、アギー(佐藤健)という、いつものお馴染みメンバー。
でも主人公は彼らではなく、岡本佳奈子という、16歳のごくフツーの女子高生。
その点では 「FLY,DADDY,FLY」と似ています。聖和女学院という私立お嬢様学校の1年生である佳奈子が、奇しくも彼らと知り合うことによって新たな世界、新たな可能性を見出すという(サスペンス風味付)青春ストーリィなのですから。
若さが溢れ、弾けるような喜びが感じられる本書は、「FLY,DADDY,FLY」以上に痛快、爽快なストーリィ。

家庭教師の彩子が突然自殺し、彼女の力になれなかったという悔いを残す佳奈子は、1人で事情を調べようとします。
ところが彩子が信頼していた学友の中川に会った帰り道、佳奈子は3人組に襲われます。偶々そこに救世主として登場したのが舜臣ら4人。
ヒロシを救えなかった痛みを未だ抱える4人は、佳奈子に協力して事件の背景を探る一方、彼らなりの流儀で佳奈子を鍛え始めます。
本書の魅力は、4人と知り合ってからの佳奈子が水を得た魚のように4人に溶け込み、模範生徒という殻を破って生き生きとしていく様にあります。
また、折々挿まれる佳奈子の独り言は絶妙の合いの手の如し。そして南方や舜臣らが佳奈子にかける言葉には、ぐっとくる好いセリフが幾つもあるのです。
お薦め!

※「対話篇」に収録されている「永遠の円環」に関連するストーリィ。

     

6.

●「映画篇」● 


映画篇画像

2007年07月
集英社刊
(1400円+税)

2010年06月
集英社文庫化

2014年08月
新潮文庫化

 

2007/08/12

 

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名作映画をモチーフにした5つのストーリィ。
それぞれ別のストーリィですが、時間、場所は重なりあいます。
何故それが判るかっていうと、区民会館大ホールで 8月31日に無料上演される映画ローマの休日のことが、どの篇にも登場するから。

冒頭の「太陽がいっぱい」は、在日朝鮮人の親友2人が主人公。これは今までどおり金城さんらしい物語。
しかし、「ドラゴン怒りの鉄拳」からは、在日朝鮮人には捉われない物語となります。
夫が突然に自殺して取り残された妻は・・・、高校生2人による犯罪計画、中年おばさんのハードアクション風復讐物語、そしておばあちゃんのための孫5人によるハートウォーミングなストーリィと。
総じてみると、各篇ストーリィが表題となっている映画以上に映画的。そこに本書の面白味があります。
どれが面白いというより、どれもが各々に面白い、様々な面白さを味わうことができる一冊です。

とは言いながら、「ローマの休日」無料上映会の経緯を明かす中篇「愛の泉」がやはり一番欠かせない篇です。
そしてまた、この篇だけ、表題となっている映画とストーリィにズレがあるのが可笑しい。

なお、5篇の表題となっている映画のうち、私が観たことのあるのは「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」「愛の泉」の3篇のみ。
その最後の「愛の泉」、ご存知の方はどれだけいるでしょう?
1954年公開、アメリカ娘3人のローマにおけるラブ・ロマンスを描いた米国映画です。愛の泉とはトレビの泉のこと。
私はこの映画、結構気に入っていました。3人娘のうち、マギー・マクナマラ(「月蒼くして」等)が好きでしたし。

太陽がいっぱい/ドラゴン怒りの鉄拳/恋のためらい−フランキーとジョニーもしくはトゥルー・ロマンス/ペイルライダー/愛の泉

         

7.

●「レヴォリューション0」● ★☆


レヴォルーションNo.0画像

2011年02月
角川書店刊
(1100円+税)

2013年06月
角川文庫化

   

2011/03/28

   

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ザ・ゾンビーズ結成前夜の物語にして、シリーズ完結編、とのこと。

新宿区内にある、オチコボレばかりが集まる私立高校。
何故か定員を 200名もオーバーする生徒を入学させたと思ったら、新入生たちは唐突に赤城山麓の、高い壁に囲まれた施設に連れていかれ、団体訓練なるものが始まります。
果たして学校側の目的は・・・・?

今頃に何故、ザ・ゾンビーズ結成前夜の物語?とは思うものの、久しぶりに彼らと再会できるのは嬉しいことです。
元優等生の主人公=
僕、舜臣(スンシン)、萱野、ヒロシ、井上、郭、悪運をいつも呼び込んでいるような山下。そして、相談引受屋開業前のアギー(佐藤・アギナルド・健)、等々。
約 150頁と長篇小説にしては少ないページ数。前夜の物語に相応しく、あっという間に読み終わってしまいます。

改めて、今頃どうして“ザ・ゾンビーズ”?と考えてみると、閉塞感漂う現在の日本社会、金城さんはそこにもう一度鉄槌をぶち込もうとしたのではないか、と思います。
最終ページの熱いメッセージ、今でも変わることなく有効です。

※最近ランウェイ・ビートでも聞いた例のメッセージ。私にとっての元祖は本シリーズにあります。

     


 

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