あさのあつこ
作品のページ No.2



11.待ってる

12.朝のこどもの玩具箱

13.火群(ほむら)のごとく

14.シティ・マラソンズ

15.さいとう市立さいとう高校野球部

16.さいとう市立さいとう高校野球部−甲子園でエースしちゃいました−

17.透き通った風が吹いて

18.I love letter

19.さいとう市立さいとう高校野球部−おれが先輩?−


【作家歴】、バッテリー、バッテリー2、バッテリー3、バッテリー4、バッテリー5、バッテリー6、えりなの青い空、福音の少年、ラスト・イニング、ランナー

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11.

●「待ってる−橘屋草子−」● ★★


待ってる画像

2009年02月
講談社刊

(1600円+税)



2009/05/23



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あさのあつこさんには珍しい、時代物連作短篇集。

江戸は深川の料理茶屋「橘屋」を舞台に、薄幸の少女=おふくが厳格な仲居頭=お多代に鍛えられて成長していく姿を描いた長篇時代もの成長ストーリィ、と思い込んで読み始めたら、2章目で主人公が変わり、連作ものと判ってガクッ。
それでも、各章ストーリィは橘屋を中心にして回っているという風で、各章の主人公の後ろにはいつもおふくの姿が見え隠れします。
いみじくも各章における主人公の物語を前面に置き、おふくの成長ストーリィをその背後に垣間見せる、という構成が実に巧み。

甲斐性なし、本性は怠け者という亭主のおかげで女房、子供は苦労するというパターンがやたらと多く、いくら女性作家だからといってワンパターンに決め付け過ぎでは?と思うところ。
それでも本書全体を通しての主人公と言うべきおふく、そのおふくを厳しく鍛える一方で、毅然とした美しい立ち姿を見せる仲居頭のお多代という2人の人物造形がとても魅力的、際立っています。
なお、本書、時代版“お仕事小説”という魅力も持っています。
同じ時代版お仕事小説で私が忘れられない作品に山本一力「だいこんがありますが、お仕事小説としての面白さという点では長篇である同作品に本書は及ばない。
しかし、おふくとお多代という稀に見る組み合わせの妙、キャラクターの点では少しも引けをとりません。

待ってる/小さな背中/仄明り/残雪のころに/桜、時雨れる/雀色時の風/残り葉

 

12.

●「朝のこどもの玩具箱」● 


朝のこどもの玩具箱画像

2009年06月
文芸春秋刊

(1200円+税)

2012年08月
文春文庫化



2009/06/30



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色とりどりの小品を詰め合わせた短篇集。

家族の話もあれば、少年の勇気が試される話、人生訓から妖怪ファンタジー的な恋物語、イジメ+ホラー、宇宙ものSFまでと、実に多彩。
小品ばかりですから、子供たちを小説世界へと誘うおもちゃ箱みたいな短篇集、と言ってよいでしょう。どの篇も、その先への希望が謳われているのがミソ。
ただ、大人の目から見ると、書き足られていない部分を感じて今ひとつ。
それもあって、面白いとは余り感じられませんでした。

6篇中で私が好きなのは、ふわーぁとした感じの若い継母=麻衣子さんと高校生の安奈との、自然に心触れ合っている様子を描いた「謹賀新年」

「がんじっこ」は、頑固で嫌われ者の老婆の元へ出かけた、市役所の職員で地味な女性が、老婆から思わぬ人生訓を受け取る、という話。
「孫の恋愛」は、狐世界の安全を図ろうと人間界に潜り込んだ孫狐が、人間の娘に恋してしまったと祖母狐に相談にくる話。
「しっぽ」は、朝目が醒めると尻尾が生えていたという出だしはカフカ「変身」を思い出しますが、変身ものではなくイジメ+ホラー。
「この大樹の傍らで」は、人類滅亡の日を再び迎えるというSFストーリィ。正直、SFまであるとは思いも寄りませんでした。

謹賀新年/ぼくの神さま/がんじっこ/孫の恋愛/しっぽ/この大樹の傍らで

  

13.

●「火群(ほむら)のごとく」● ★★


火群のごとく画像

2010年05月
文芸春秋刊

(1500円+税)

2013年07月
文春文庫化



2010/07/04



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柚香川と槙野という名川を有し、水利に恵まれた小舞藩六万石を舞台にした、少年剣士たちの時代版青春ストーリィ。

主人公は新里林弥。敬愛する15歳年上の兄=結之丞が背後から斬殺された姿で見つかるという事態から、試練を負います。
友人は、闊達な性格の源吾に、慎重な性格の和次郎
何やら時代版青春ストーリィの定番のような展開ですが、他の作品と異なるのは、あくまでも少年物語の域に留まる点。

仲の良い3人に、江戸から呼び出された筆頭家老の庶子=透馬が加わります。大人の世界に入ってしまえば、身分差・家柄差は大きく対等に付き合いなど叶うべくもありませんが、そこはまだ元服前の少年たち。
とくに江戸で結之丞から剣の手ほどきを受けたという透馬と、その弟である林弥は、お互いへの意識が強い。
実家の地位を抜きにした、率直で本音ベースでの付き合いが彼らの間には繰り広げられます。
彼らと対照的に、大人の世界では陰謀、政争が渦を巻く。当然4人が疑うのは、結之丞の死はそれに関わるものではなかったか、ということ。
そして4人もまた、やがて権力争いの余波に巻き込まれずにはいられません。
それでも、各々の夢を口にし、何とか少しでも夢に近づこうと務める少年たちの姿、助け合おうとする姿は瑞々しい。
特に、川の淵へ代わる代わる飛び込み、水遊びに興じる4人の姿は清々しく印象的です。

小藩、権力争いは時代小説の定番でしょうけれど、本作品の本質はあくまで、大人への入り口を間近に控えた少年剣士たちの、女性への淡い想いも含めた、まぶしい青春物語。

                  

14.

●「シティ・マラソンズ City Marathons」● ★☆


シティ・マラソンズ画像

2010年10月
文芸春秋刊
(1200円+税)

2013年03月
文春文庫化



2010/11/25



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3人の女性作家による、NY・東京・パリという3都市のシティマラソン・ストーリィ。
(株)アシックスが2008〜10年にWEBサイトおよびモバイルサイトで実施した期間限定のキャンペーン
「マラソン三都物語 〜42.195km先の私に会いに行く〜」のために書き下ろされた3篇とのこと。

まずは、三浦しをんさんの「純白のライン」
舞台は
ニューヨーク。走る人も、沿道で応援する人も、和気藹々としていてとても楽しそう。シティマラソン大会の良さ、魅力が満開という感じです。本を読むことによってこの楽しさを味わえる、なんと贅沢なことか。
また、ストーリィに篭められたメッセージもすこぶり心地好い。

それと対照的にあさのあつこさんの「フィニッシュ・ゲートから」は、人生ドラマ含み。しかし、「純白のライン」で単純な楽しさを味わった後となると、ドラマを作り過ぎ、という印象です。

近藤史恵さんの「金色の風」は、冒頭にミステリ風味あり。こちらも人生ドラマ風ですが、若い女性が主人公であるだけに瑞々しさがあります。パリを舞台にしての再スタート・ストーリィ。

いずれにせよ、女性作家3人各々の持ち味を生かした、シティマラソン・ストーリィ。主人公たちと一緒になって走り出す気持ちで楽しめます。

三浦しをん・・・「純白のライン」
あさのあつこ・・「フィニッシュ・ゲートから」
近藤史恵・・・・「金色の風」

     

15.
「さいとう市立さいとう高校野球部」 ★★


さいとう市立さいとう高校野球部画像

2013年08月
講談社刊
(1500円+税)

2017年08月
講談社文庫化
(上下)



2013/12/29



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こんな野球部練習あり? 独自のやり方が飛び出す度思わず笑ってしまう、ユニークな高校野球部小説。

主人公はさいとう高校1年の山田勇作。中学時代はエースピッチャーとして活躍したが、ある理由から今は帰宅部。
その勇作に声を掛けてきたのが、まるで似合わない野球部ユニフォーム姿の美術担当で“
鈴ちゃん”こと鈴木センセ。驚いたことに野球部監督だという。
勇作への勧誘の仕方がユニーク。一家全員が温泉好きの山田家。甲子園出場したら一泊二泊の有馬温泉できる。一緒に有馬温泉に行こう、と。
さらに幼馴染でバッテリーを組んでいた
山本一良も山田家に押しかけてきて、結局勇作はお試し入部することになります。

お試し期間、○○サービス付き、さらに今なら○○恩典付。
さらにランニングの最中には必ず○○を創作し副賞を争うと、勇作が呆然とするのと対照的に読者は笑い出してしまう、というストーリィ。
おまけに実戦練習より、本心トークのミーティングの方を余っ程重視しているのではないだろうか、という意外感。
鈴ちゃん曰く
「野球のことはほとんど何も知らない」「けどね、強くなる方法なら、よく知ってるよ」と・・・・。

これらのユニークさこそ、本ストーリィの真骨頂。
そしてそれは、アマプロ化した現在の高校野球に対する、アンチ甲子園野球小説、アンチ野球部小説ではないかと思う次第。
皆で野球をすることが嬉しい。そんな楽しさをきっと味わえる野球小説、お薦めです・・・・楽しいこと、大好きです。

      

16.
「さいとう市立さいとう高校野球部−甲子園でエースしちゃいました−」 


甲子園でエースしちゃいました画像

2014年08月
講談社刊
(1500円+税)

2018年08月
講談社文庫化

2014/08/30

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実技よりトークを重視するユニークな監督=美術教師の“鈴ちゃん”率いる「さいとう市立さいとう高校野球部」の続編。

前回惜しくも甲子園出場を逃したものの、本巻では春の選抜大会で甲子園出場を果たし、いよいよさいとう高校野球部、甲子園デビューです。
とはいうものの、前置きが長く、また主人公である投手=
山田勇作のおしゃべりと妄想、そして横道に流れること多しは相変わらず。そして、肝心の甲子園での試合部分は僅かと、かなり当て外れ。

そんな訳で少々、いやかなりかな、物足りず、です。

しかしまだ春、主人公たちにはまだ夏の大会が待っています。まだまだ続きがあるのでしょう。
甲子園大会、いくら小説だからといって初出場校がそんな簡単に勝ち進める訳もありません、ということで本巻はちょうど繋ぎにあたる部分なのでしょう。

次巻(きっと刊行されるのでしょう)に期待!です。

     

17.
「透き通った風が吹いて」 ★☆


透き通った風が吹いて

2015年11月
文芸春秋刊

(1100円+税)



2015/12/17



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モラトリアムの時期を迎えた高校生の姿を描く小作品。

主人公の
真中渓哉は高校3年生。硬式野球地方大会の2回戦で敗れて部活を引退、受験のための夏季補習授業を受けている最中。
しかし、未だに試合敗戦の苦みを引きずっていて、受験へ向かう姿勢にはなれていない。
さらに言えば、進学方向も、将来設計もまるで白紙。
実質高校生活が終わりに近づき、大学進学の前という、まさにモラトリアムの季節。

同じ高校生仲間として、幼馴染にして野球部でバッテリーを組んでいた
津田実紀、実紀のまた従姉妹で陸上部を引退した深野栄美が配され、さらに一回り上の年代として、実家の葉茶屋を継ぐため故郷の美作に戻ってきた兄の淳也、偶然に知り合った都会から来た美しい女性=青江里香が登場。
彼ら一人一人の姿を渓哉の現状と照らし合わせることによって、モラトリアムにある渓哉の姿を浮かび上がる、という構成です。

渓哉の心の揺れを清新に描いた、まさにモラトリアム小説という一言に尽きる作品。
個人的な思いかもしれませんが、そんな渓哉の、ある一瞬の姿の向こう側に、ふと
コレット「青い麦の光景を見る思いがしました。

      

18.
「I love letter ★☆


I love letter

2016年09月
文芸春秋刊

(1300円+税)


2016/10/04


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手紙、文通をモチーフにした連作ストーリィ。
元々書簡体小説とか、手紙を主体にしたストーリィは好きな方なので期待して読んだのですが、趣向としてはちょっぴりミステリ風という訳で、期待をはぐらかされた感あり。

人付き合いが苦手な故にヒキコモリとなった
岳彦、17歳が本書の主人公。
部屋に閉じ籠った生活が半年続いたところで、未だ30歳と若い叔母=
「むうちゃん」こと奈波睦美から近所の喫茶店に呼び出されます。ちょうどそろそろ外に出ようかと思っていたタイミング。
そのむうちゃんが岳彦を呼び出した理由はというと、起業した会員制の文通会社で、手紙の返事書きを手伝って、というもの。
そんなむうちゃん&岳彦が、会員からの手紙によって関わることになった謎あるいは事件を描いた連作ものストーリィ。

小川糸「ツバキ文具店の如き“手紙”を突き詰めていくようなストーリィを期待した訳ではなかったのですが、それでも文通を発端としたミステリ趣向とはまるで予想していませんでした。
ちょっと残念、という思いです。

I love letter/さよなら、ママ/おさななじみ/こいぶみ/猫が鳴いている/Love letterの降る夜に

           

19.

「さいとう市立さいとう高校野球部−おれが先輩?− 


さいとう市立さいとう高校野球部 おれが先輩?

2017年07月
講談社刊

(1500円+税)



2017/07/31



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さいとう市立さいとう高校野球部第3弾。

主人公でエースピッチャーの
山田勇作は、幼馴染でバッテリーを組む山本一良と一緒に相変わらずおちゃらけばかり。
いくら温泉好きとはいえ、日本全国各地の名湯を並び立てる与太話で本書頁の大部分を消化してしまうというのは、幾ら何でもどうなのかなぁ。
つい先日、シリーズもの高校野球小説、
須賀しのぶ「夏は終わらない−雲は湧き、光あふれて−」を読んだばかりなので、なおのこと比べてそう感じてしまいます。

そのうえで本書の目玉としては、新入生の新入部員の中に、中学野球部で県大会ベスト4の原動力となったバッテリー2人がいたこと。なお、監督の
鈴ちゃんは2人のことを承知済。
キャッチャーは頭脳派の
長瀞智樹、ピッチャーは面倒臭がり屋の妙高五志(いつし)という珍妙コンビ。
その2人に紅白戦でまんまとしてやられるかといえば、そうはならないところが頼もしいところ。

さてさて、本格的な野球ストーリィの展開は、次巻に期待して良いのでしょうか・・・。


1.すみません。やっぱり温泉から始まります。/2.塩江温泉での早足散歩は、チョウ刺激的だった。/3."憧れの先輩"は雲の彼方に。/4.ついに新入部員、登場か?/5.怒涛の紅白戦の始まり、始まり。/6.ということで、おれの期待と不安をのせて紅白戦、始まり、始まり。/7.ふふふ。いよいよ、試合のマウンドです。ふふふ。

    

あさのあつこ作品のページ No.1

    


   

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