シドニー・ガブリエル・コレット作品のページ


Sidonie Gabrielle Colette  1873〜1954 フランスの女流作家。20歳の時に作家アンリ・ゴーティエ・ブラールと結婚、夫婦合作といわれる“クローディーヌ”もの全4冊により作家デビュー。1906年離婚後はミュージック・ホールの舞台に出演してパントマイムで収入を得ながら自活。12年編集者であるアンリー・ド・ジュヴネルと再婚後、執筆活動に専念、第一次大戦には記者として従軍。戦後本格的に作家活動を開始。24年再度離婚し、35年に三度目の結婚をする。45年に女性で初めてアカデミー・ゴンクール会員に選ばれる。


1.シェリ

2.青い麦

 


    

1.

●「シェリ」● ★★☆
 
原題:"Cheri"        訳:工藤庸子

 

1920年発表


1994年03月
岩波文庫刊

 


2001/09/04

文庫表紙の紹介文には「コレットの最高傑作」とあります。
本書は、親子程も年の違う男女間の恋愛を描いた作品であり、如何にもフランス的であると同時に、如何にも日本人から縁遠いストーリィです。

主人公のレアは49歳の元高級娼婦、現在は充分な財産を有し、召し使いにもかしづかれて、プチブルジョアといった優雅な生活を送っています。彼女の現在の恋人は友人の息子フレッド、25歳。レアが“シェリ(いとしい人)”と呼ぶ美貌の青年です。しかし、言葉遣いは粗野で、シェリは必ずしも上品な青年ではありません。
ストーリィは、まずレアとシェリが2人で迎える朝のシーンから始まり、まもなくシェリの結婚話がまとまろうとしていることが明らかにされます。相手は19歳の若く美しい娘エドメ
結婚によって当然シェリはレアから足が遠のきますが、レアは何でもないという風に振る舞います。ところが、レア自身思いがけなかったことに、これまででシェリこそ最も強く愛した相手であることに気付きます。そこからのレアの策略・行動が見事。49歳という年齢のハンデを知るが故に、レアはシェリの焦燥感をかきたてるような行動に出ます。その結果、シェリはレアへの情熱を再び強くかき立てられ、煩悶することになります。
年齢差を思うとこの2人の恋愛関係は納得し難いところがあるのですが、理屈をはるかに越えた情熱がこのストーリィにはあると実感させられます。不自然と思うような間がありません。
前半、中盤となんとなく読み進んだという観があるのですが、最後のレアとシェリが対峙する場面は圧巻! 恋愛という感情の深さ、互いの思惑、自意識、そして相手への欲求、恋愛におけるあらゆる要素が一気に噴き出してくるようで、完全に圧倒されます。この場面故に、本作品の価値、魅力があると言えます。
恋に燃えつつ、自分の美しさそして同時にその老いを自覚せざるを得ない、レアという女性の創造が見事です。

 

2.

●「青い麦」● ★★★
 
原題:"Le Ble en Herbe"        訳:堀口大学




1923年発表

1955年03月
新潮文庫刊

第37刷
1977年02月


2000/06/15


amazon.co.jp

中学生時代からの愛読書の一冊。
毎年避暑を一緒に過ごす2家族の子供たち、
フィルヴァンカは幼馴染。2人にとって、お互いは自分のものと信じるのは自然のことですが、16歳と15歳という時期に至ると心の内に微妙な揺れが生じてきます。本作品は、そんなひと夏の出来事を鮮烈に描いた青春・恋愛小説の傑作です。

将来的にもお互いを自分から切り離して考えられないことに2人とも微塵の疑いも持ってはいませんが、一人前になりかけている男女の微妙な心理、相手の気持ちが読めないことの迷い、恋愛の喜びと不安を知る季節を2人は迎えた訳です。そんな2人の間に現れるのが、有閑夫人らしいマダム・ダルレー。フィルは何故か彼女に惹きつけられるものを感じます。
本作品は、互いが異性であることを意識し始めた2人の心中の微妙な移ろいを、フィルを主体に詳細に描き出していきます。それは読み手にとっても無縁な感情ではない筈。だからこそ、本作品は読者を永遠に惹きつけて止まないのだと思います。

ストーリィ出だしの「漁に行くのかい、ヴァンカ?」というフィルの呼びかけ、終盤の「とにかくあんたは間違ったことをしたのよ、フィル。なぜかって、あんたはあれを私にこそ求むべきだったのよ....」というヴァンカの一言は、いつまでも私の胸の中に響いています。

  


 

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