山本一力(いちりき)作品のページ


1948年高知県生、都立世田谷工業高等学校電子科卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空会社関連の商社勤務を経て、97年「蒼龍」にて第77回オール讀物新人賞を受賞。「損料屋喜八郎始末控え」が初の単行本。2002年「あかね空」にて 第126回直木賞を受賞。


1.損料屋喜八郎始末控え

2.あかね空

3.大川わたり

4.深川駕籠

5.だいこん

6.赤絵の桜−損料屋喜八郎始末控え−

7.かんじき飛脚

8.菜種晴れ

9.おたふく

10.桑港特急

 


    

1.

●「損料屋喜八郎始末控え」● ★☆


損料屋喜八郎始末控え画像

2000年06月
文芸春秋刊
(1571円+税)

2003年06月
文春文庫化

   

2001/12/09

上司の身代わりとなって職を辞し、今は庶民相手に鍋釜や小銭を貸す“損料屋”となった、元同心・喜八郎を主人公とする、時代小説。
ただし、損料屋と言っても、喜八郎は普通の損料屋には非ず。実は、札差・米屋の先代が、頼りない2代目を支えて貰う為、喜八郎に損料屋の商売を世話した、というのが裏事情。
時代は、旗本・御家人が金繰りに苦しみ、その一方、支給米を担保にその御家人らに金を融資する札差が隆盛を極めていた頃。
時には米屋政八の身代わりとなり、時には元の上司である北町与力・秋山の懐刀となって、巨利を貪る札差、伊勢屋、笠倉屋相手に喜八郎が堂々と渡り合うストーリィです。
といっても、喜八郎が単身で活躍する訳ではありません。彼の手足となって働く行商人等が組織されており、まるでスパイ・チームのようです(昔懐かしいTV番組「スパイ大作戦」を思い出します)。
札差たちの悪計に対する、喜八郎らチームの情報戦という趣きがあり、さしづめ時代版スパイ・サスペンス小説というところでしょう。
札差vs喜八郎チームという構成の為、ストーリィ展開に幅を欠きますが、喜八郎にもそれなりのロマンス要素が加えられており、なかなか楽しめる作品です。
今後が期待できそうな時代作家の登場作です。

万両駕籠/騙り御前/いわし祝言/吹かずとも

   

2.

●「あかね空」● ★★      直木賞


あかね空画像

2001年10月
文芸春秋刊
(1762円+税)

2004年09月
文春文庫化

   

2002/01/27

上方からたった一人江戸に来て、京風の豆腐屋・京やを開業した永吉
本作品は、その永吉とおふみ夫婦、彼等を引き継いだ息子、娘たちの2代にわたる、奮闘、葛藤を描いた時代小説です。
市井ものというと、つい人情話を予想してしまうのですが、本作品は江戸期における家族小説といった趣き。
その点で、時代小説に新鮮な風を吹き込んだ、という印象があります。
本作品の魅力は、そんな清新さより、むしろテンポの良さにあります。
読み出したら最後、頁を繰るのを止められなくなってしまうのは、その小気味良さにあると言って過言ではありません。
永吉とおふみは理想的な夫婦のように思えましたが、商売に追われ、子供をもつと、揉め事も増えてきます。まして子供たちの代になると、それは尚更のこと。それでも、彼等の間には京やを守り抜こうとする強い家族の絆が窺われ、感動に胸を熱くさせられます。
作者の山本さんについては、前作「損料屋喜八郎始末控え」で手堅さを感じましたが、本作品では手堅さに加え滑らかさが加わったような気がします。
本質的に“家族小説”ですから、時代小説ファンでなくても楽しみ、また感動することのできる作品です。お薦め。
※なお、損料屋喜八郎始末控えに登場した江戸屋の女将・秀弥が、本作品にも登場。

     

3.

●「大川わたり」● ★☆


大川わたり画像

2001年12月
祥伝社刊
(1700円+税)

2005年04月
祥伝社文庫化

  

2002/03/03

期待して読んだのですが、それ程ではなかった、というのが本心です。
あかね空のストーリィ展開には納得感がありましたけれど、本書ストーリィには、こしらえ事が多過ぎる、と感じます。それが評価が厳しくなった理由。

主人公は、若い大工の銀次。寂しさから賭場に入り込み、二十両という借金を抱え込んでしまった銀次は、仲間の鏝屋まで巻き込み、一家を夜逃げに追い込んでしまいます。
覚悟を決めて賭場に交渉した銀次は、借金を返すまで大川を東に渡らないという条件のもと、返済を猶予されます。
そして、大川の西に住むこととなった銀次は、町道場で心身を鍛え、やがて推薦されて呉服商の大店へ手代として勤めることになります。
要は、苦難を乗り越え、人と人との信頼関係の大切さを知るに至るという、銀次再生のストーリィ。
カバーに書かれた粗筋を読むと実に面白そうなのですが、肝心なところで、いかにもこしらえ事、と感じてしまうのが難点。
(小説ですからこしらえ事は当然なのですが、それにしてもなぁ、と感じます)
そもそも、気配りがきき、陰日向なく働くという銀次が、博打で借金をこしらえた、ということが今ひとつ納得感がない。
それと最後の逆転劇。本書は江戸の町人世界を舞台にした小説なのになぁ、と思わざるを得ません。

ストーリィにメリハリが効いている分楽しめますが、「あかね空」程には期待しない方が良いだろうと思う次第。

 

4.

●「深川駕籠」● 

 
深川駕籠画像
  

2002年09月
祥伝社刊
(1700円+税)

2006年04月
祥伝社文庫化

 

2002/10/07

江戸市内の駕籠かきを主人公とした連作短篇集。
駕籠かきという主人公像は目新しいところですが、その他はちょっと中途半端な市井話。正直言って、物足りず。

駕籠かきのコンビは、揃って六尺の大男という、新太郎尚平の2人。駕籠かきという職業ながら、2人ともプロらしくきちんと振舞って誤りないところは、各々訳ありの身上故のこと。片や新太郎は、老舗両替商の総領息子ながら、親から勘当された身。一方の尚平は、相撲部屋を訳あって追い出された身。
2人の身元引受人となって人別帳・駕籠かきという職業を世話したのが、長屋の家主・木兵衛。したがって、この木兵衛に2人は頭があがらない。
2人の周囲に、鳶の頭・辰三、今戸の親分・芳三郎等々、江戸の町でそれなりの威勢をはる人物たちも登場しますが、賑やかではあっても少々都合良過ぎるな、と思わざるを得ません。
また、江戸の町にトライアスロン類の競争を持ち込んだのが、本書のうち目立つ部分ですが、まあそれまでのこと。
それに絡んで登場する悪役の同心も、粒が小さ過ぎて、単なる悪さ程度に留まります。
なお、トライアスロン競技の場面で、喜八郎、秀弥が登場しますが、これはご愛嬌と言うほかありません。

菱あられ/ありの足音/今戸のお軽/開かずの壺/うらじろ/紅白餅/みやこ颪

   

5.

●「だいこん」● ★★☆


だいこん画像

2004年01月
光文社刊
(1800円+税)

2008年01月
光文社文庫

    

2005/07/18

 

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若い娘の身でありながら、働く者相手の一膳飯屋に夢をかけ、商売を成功させていく時代版青春サクセス・ストーリィ。

時代小説に現代的な経済感覚を持ち込んでストーリィに仕上げるのは、山本一力さんの得意とするところでしょう。
その中でも本書は、理屈ぬきに、群を抜いて読み応えある作品です。
主人公つばきの幼少の頃から始まり、大勝負といえる新たな店の開業に挑むところまでを描く半生記と言えます。そしてそれは、9歳の頃から働き出したつばきの事業経歴そのものと言って良い。言うなれば、つばきの「私の履歴書」(日経新聞)的なワクワクする面白さに富む作品なのです。
何といっても、未だ若い娘であるつばきの人物像が魅力的。
率直で実があり、物言いがはっきりしていて裏がない。創意工夫に長け、自分が信じたところを突き進んでいくというチャレンジ精神も旺盛。新たな時代版ヒロインの誕生と言って過言ではありません。
一度読み出したらもう止まらず、後は一気読み。ちょうど連休で良かった、というのが正直な思いです。
物語の面白さがあって、かつ読み応えのある小説をお望みの方には、間違いなくお薦めできる一冊です。

なお、あらすじは次のとおり。
つばきは長屋暮らしの三人姉妹の長女。大工である父親が賭博で作った借金のために、一家5人が苦しめられます。そんな中、つばきは誰よりも飯が美味く炊けるという才能を発揮します。その腕を買われて9歳の時から母親と一緒に働き始めます。
そして17歳になった時、つばきは母親と2人の妹の助けを借りて一膳飯屋を開業。廉くて美味いその店“だいこん”は、大繁盛。いろいろな修羅場を潜り抜ける度、つばきは創意工夫を発揮して更に“だいこん”を大きくしていく。
やがて、地元の有力者や大店の主人たちにも人間性および経営手腕を高く評価され、つばきの新たな挑戦は留まるところを知らない、というストーリィ。

    

6.

●「赤絵の桜−損料屋喜八郎始末控え−」● 


赤絵の桜画像

2005年06月
文芸春秋刊

(1524円+税)

2008年06月
文春文庫化

  

2005/07/24

 

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損料屋喜八郎始末控えの続編。
前作よりきっと面白くなっているに違いないと信じて読んだのですが、期待を外された思いがします。

寛政元年(1789)棄捐令(旗本等の借金を一方的に棒引きにするという政令)が発布され、札差は総額 180万両余りの債権を失うこととなり、結果的に江戸は不況の嵐が吹き荒れることになります。そんな時代を背景にした、大江戸版ハードボイルド。
と言うより、ハードボイルド風の連作短篇集と言うべきでしょう。とことん突っ込んでいく風はなくて、表面的にさらりと流してしまう観があるのですから。そこが今ひとつ物足りず。

今回喜八郎たちが対峙する陰謀は、押上村に開業された大規模な窯風呂。その事業の裏には、伊万里焼(鍋島藩)の傷物を焼き直して正価で売ろうとする企みが隠されていた。相手は、御家人の青山家、薪炭屋の鋏屋森之助。
前作と同じく、札差の伊勢屋米屋政八、北町同心・秋山、深川の料亭「江戸屋」の女将・秀弥のほか、喜八郎配下のいつもの面々も登場します。
ファンにとっては、喜八郎と江戸屋の女主人・秀弥との関係の進捗が一番気になるところなのですが、これまたはっきりしない。
全てさらりと、抑え過ぎではないかと思う次第。
ただ、山本さんとしては本書の長いシリーズ化を意識しているのかもしれません。そうであれば、深く入り込みせず、淡々とストーリィを書き綴っていくところも理解できます。
なお、最後の「初雪だるま」は、物足りなさを覚えるファンに対してのおまけプレゼントと言うべきか。

寒ざらし/赤絵の桜/枯れ茶のつる/逃げ水/初雪だるま

       

7.

●「かんじき飛脚」● 


かんじき飛脚画像

2005年10月
新潮社刊

(1700円+税)

2008年10月
新潮文庫化

  

2005/11/10

 

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加賀藩vs松平定信という対決ストーリィ。
山本一力作品の特徴は現在のビジネス感覚を江戸時代に持ち込むスタイルにあり、そこが面白さの素と私は思っているのですが、時代ものらしいストーリィとはいえ本作品もその系統。

加賀藩・江戸藩邸に老中松平定信から、藩主と正室共々に宴席への招待状が届きます。正室が病気であることを届け出ていないことを公の場で暴き、加賀藩に難題をふっかけようというのが定信の腹。その根底には幕府の収入を増やそうという思惑が見え隠れします。その罠に嵌まってはならじと加賀藩では藩の秘薬“密丸”に全てを託します。
その丸薬を加賀藩国許から江戸上屋敷まで運ぶのは、加賀藩御用の飛脚宿・浅田屋の擁する“三人飛脚”。しかし、定信側から妨害が入るのは必須。江戸詰用人・庄田要之助浅田屋伊兵衛は万全の体制を組み、加賀・江戸両方の飛脚を総動員して任務を果たそうとする。
加賀と江戸を往復する飛脚を題材にしたストーリィというのですから、道中の面白さもあるものと期待したのですが、その期待は空振り。本書ストーリィは、飛脚と彼らを応援する旅篭、猟師たちという〔加賀藩+飛脚チーム〕と〔老中+幕府御庭番チーム〕という対抗戦ゲームの雰囲気です。
支配される側(民)と権力者側(官)との対決となれば、判贔屓で支配される側を応援するのは当たり前。
読んでいる最中はそれなりに楽しめたのですが、読み終わってしまえばゲームをし終えた時のように、あぁ終わったかというばかりで読後の余韻はあまりありません。

※それにしても江戸中期の物語となると、田沼意次か松平定信のどちらかが出てくるケースが多いなあ。米村圭伍「紅無威おとめ組を読み終えたばかりのところで、またもや松平定信か、と思ったのが冒頭。田沼意次なら善悪それぞれ描いた作品がありますし、退屈姫君のように愛敬ある悪人というパターンもあるのですけれど、松平定信となると大抵つまらない人物像ですねー。

 

8.

●「菜種晴れ」● ★★


菜種晴れ画像

2008年03月
中央公論新社
(1700円+税)

2011年03月
中公文庫化

   

2008/05/20

 

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房総勝山の菜種畑農家に生まれた女の子が、5歳にして江戸は深川の大店(菜種油問屋)に養女として貰われてから、幾多の困難を乗り越えててんぷら屋を開業する、という物語。

と聞いて、私の好きなだいこんに類するストーリィだろうと思い、手に取った作品です。
主人公はニ三(ふみ)といい、上に兄姉をもつ末っ子。いくら富裕な農家の娘とはいえ、農家に生まれた5歳の女の子にしては出来過ぎの観あり。
いかにもスーパー少女という感じで、昔なら「小公女」=セーラ(バーネット原作)の役どころでしょうか。
でも、本書の主人公であるニ三は、単に性質が良いというだけでなく、実務能力に長けているところが現代的。第三者から幸運を与えられるという旧来型の“プリンセス”ではなく、幾多の困難にも負けず自分の手で運命を掴み取るという独立独歩型のプリンセスです。

前半は、ニ三が出来過ぎな少女であるうえに、彼女を取り巻くのも好人物ばかり。幾らなんでもなぁと思いつつも、山本さんにうまく乗せられている所為か、快調にかつ楽しく読み進みます。
ところが後半になると、全てが順調に展開していた前半と打って変わるように、繰返し不運がニ三の身に降りかかります。いくら何でも両極端過ぎないか、と思うくらい。
結局最後に残るのは、眼の前一杯に広がる菜の花畑と、新たな決意を胸にするニ三の姿。
これって「風と共に去りぬ」スカーレット・オハラみたい。

それでも油が貴重品だった江戸時代の様子、菜種油の存在感や、深川という町の活気が感じられて、読み手を惹き付ける時代小説版少女成長物語であることに変わりはありません。

 

9.

●「おたふく」● ★★


おたふく画像

2010年03月
日本経済新聞出版社刊
(1800円+税)

2013年04月
文春文庫化

 

2010/04/27

 

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田沼時代の後老中となった松平定信により、江戸の札差 109名に対し 総額118万両の貸金棄損が命じられた。
その結果、札差は金遣いを控え、御家人らに対する融資を拒み、江戸市中は未曽有の不景気に見舞われる。
そんな状況下、大店育ちの次男坊が、高価品を扱い札差らを主顧客とする実家を離れ、弁当屋を新たに起業、美味くて廉い弁当を歓迎する普請場の職人や火消し連中の支持を勝ち得て、商売は隆盛していく、というストーリィ。

私が山本一力作品で一番好きなだいこんと、リテール事業という点で通じるところがあります。
とは言っても、新規事業の成功ストーリィというだけなら二番煎じですし、高い志をもつ真摯な人柄ではあっても主人公の裕治郎の魅力は「だいこん」のつばきには及ばない。
しかし、読み進んでいく内に気づくのです。本作品の魅力は。裕治郎一人に負うのではなく、周辺人物皆々に負うものであることに。
取引相手に対して誠を尽くすことを第一に考え、相手に対する自分の責任を全うする覚悟を抱く人物。それは何も裕治郎一人ではなく、裕治郎の周りに登場し、彼に協力する一人一人が、大なり小なりそうした人物です。
裕治郎の岳父である小料理屋「おかざき」の店主=駿喜も秀でた人物ですが、それに増して特筆したいのは、裕治郎の実兄で特撰堂の第五代目当主である太兵衛と、江戸市中のてきやの元締めである橋本堂俊治朗、という2人。
太兵衛と裕治郎が各々の商売を案じて諫言し緊張感を孕む場面と並んで、初めて太兵衛と俊治朗が会しお互いの人物を認め合う場面は、圧巻です。

本書に登場する人物たちを見ていると、本作品は現在の日本に対する警鐘のように感じられます。
数多くの人のために尽くし、その責任を全うする覚悟を固めている人物が、現在日本の政財官界に一体どれだけいるのか、ということ。
少なくとも、自分の当選を第一に考えている政治家、問題を紛糾させておいて辞めれば責任は取れるなどという愚かしい了見違いをしている指導者など、彼らに遠く及ばないのは明らかです。

  

10.
「桑港特急 San Francisco Express ★★☆


桑港特急

2015年01月
文芸春秋刊

(1650円+税)

 


2015/04/04

 


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江戸時代末期、吉原に身売りする4人の若い娘を乗せた船は嵐に会って漂流し、小笠原諸島の父島に流れ着きます。4人を助けたのは、アメリカ人の元捕鯨船乗りたち。
やがて夫婦となった元航海士の
ジム・ガーナーみすずとの間に生まれたのが、本書の主人公となる丈二子温の兄弟。

前半は2人の父島での日々。父島に寄港した米国捕鯨船、それに乗船していたのは“
ジョン・マン”こと日本人のマンジロウ
子供は旅をしてこそ成長するというマンジロウの言葉に促され、みすずは愛する息子たちを米国へと送り出します。
時はちょうどゴールドラッシュに湧くアメリカ西海岸、大陸横断鉄道の敷設計画も起こり、その活気が伝わって来るようです。
事業の可能性を探るため中国人がサン・フランシスコに開いた洋品店で兄弟は働き始めます。
上記の丈二・子温の物語と並行して、極悪人一味に身重の妻と友人を虐殺された
リバティ・ジョーたちの復讐劇が絡みます。

較べるのは適切ではないのかもしれませんが、黒人奴隷のジムと一緒に筏でミシシッピ川に繰り出したハック・フィンの冒険を彷彿させます。
それに加えて終盤、極悪人
サントス一味に罠をかけ一気に決着を付けようとするリバティ・ジョーたちの対決は圧巻、まるでジョン・ウェインらが登場する西部劇を久々に見る思いです。
若い兄弟の成長・冒険物語と西部劇の面白さ、登場人物の多彩さと合わせ、約 550頁と読み応えたっぷりです。
ただ、リバティ・ジョーの物語部分に頁を割かれた分、兄弟の体験・冒険物語が省略された向きを否めないのが残念なところ。

なお、表題の
「桑港特急」は、リバティ・ジョーたちがサントス一味たちの目を惹きつけようと、砂金輸送のために特注した駅馬車に名付けた名前“San Francisco Express”の漢字版。
山本一力さんのライフワーク
「ジョン・マン」からの派生による物語であることは間違いないようです。 

序章/第一部/第二部/終章

  


  

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