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2.あかね空 3.大川わたり 4.深川駕籠 5.だいこん 6.赤絵の桜−損料屋喜八郎始末控え− 7.かんじき飛脚 8.菜種晴れ 9.おたふく 10.桑港特急 |
●「損料屋喜八郎始末控え」● ★☆ |
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2003年06月
2001/12/09 |
上司の身代わりとなって職を辞し、今は庶民相手に鍋釜や小銭を貸す“損料屋”となった、元同心・喜八郎を主人公とする、時代小説。 万両駕籠/騙り御前/いわし祝言/吹かずとも |
●「あかね空」● ★★★ 直木賞 |
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2004年09月
2002/01/27 |
上方からたった一人江戸に来て、京風の豆腐屋・京やを開業した永吉。 |
●「大川わたり」● ★☆ |
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2005年04月
2002/03/03 |
期待して読んだのですが、それ程ではなかった、というのが本心です。 「あかね空」のストーリィ展開には納得感がありましたけれど、本書ストーリィには、こしらえ事が多過ぎる、と感じます。それが評価が厳しくなった理由。 主人公は、若い大工の銀次。寂しさから賭場に入り込み、二十両という借金を抱え込んでしまった銀次は、仲間の鏝屋まで巻き込み、一家を夜逃げに追い込んでしまいます。 ストーリィにメリハリが効いている分楽しめますが、「あかね空」程には期待しない方が良いだろうと思う次第。 |
●「深川駕籠」● ☆ |
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2006年04月
2002/10/07 |
江戸市内の駕籠かきを主人公とした連作短篇集。 駕籠かきのコンビは、揃って六尺の大男という、新太郎と尚平の2人。駕籠かきという職業ながら、2人ともプロらしくきちんと振舞って誤りないところは、各々訳ありの身上故のこと。片や新太郎は、老舗両替商の総領息子ながら、親から勘当された身。一方の尚平は、相撲部屋を訳あって追い出された身。 菱あられ/ありの足音/今戸のお軽/開かずの壺/うらじろ/紅白餅/みやこ颪 |
●「だいこん」● ★★☆ |
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2008年01月
2005/07/18
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若い娘の身でありながら、働く者相手の一膳飯屋に夢をかけ、商売を成功させていく時代版青春サクセス・ストーリィ。 時代小説に現代的な経済感覚を持ち込んでストーリィに仕上げるのは、山本一力さんの得意とするところでしょう。 なお、あらすじは次のとおり。 |
●「赤絵の桜−損料屋喜八郎始末控え−」● ★ |
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2008年06月
2005/07/24
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「損料屋喜八郎始末控え」の続編。 寛政元年(1789)棄捐令(旗本等の借金を一方的に棒引きにするという政令)が発布され、札差は総額
180万両余りの債権を失うこととなり、結果的に江戸は不況の嵐が吹き荒れることになります。そんな時代を背景にした、大江戸版ハードボイルド。 今回喜八郎たちが対峙する陰謀は、押上村に開業された大規模な窯風呂。その事業の裏には、伊万里焼(鍋島藩)の傷物を焼き直して正価で売ろうとする企みが隠されていた。相手は、御家人の青山家、薪炭屋の鋏屋森之助。 寒ざらし/赤絵の桜/枯れ茶のつる/逃げ水/初雪だるま |
●「かんじき飛脚」● ★ |
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2008年10月
2005/11/10
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加賀藩vs松平定信という対決ストーリィ。 加賀藩・江戸藩邸に老中松平定信から、藩主と正室共々に宴席への招待状が届きます。正室が病気であることを届け出ていないことを公の場で暴き、加賀藩に難題をふっかけようというのが定信の腹。その根底には幕府の収入を増やそうという思惑が見え隠れします。その罠に嵌まってはならじと加賀藩では藩の秘薬“密丸”に全てを託します。 ※それにしても江戸中期の物語となると、田沼意次か松平定信のどちらかが出てくるケースが多いなあ。米村圭伍「紅無威おとめ組」を読み終えたばかりのところで、またもや松平定信か、と思ったのが冒頭。田沼意次なら善悪それぞれ描いた作品がありますし、「退屈姫君」のように愛敬ある悪人というパターンもあるのですけれど、松平定信となると大抵つまらない人物像ですねー。 |
●「菜種晴れ」● ★★ |
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2011年03月
2008/05/20
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房総勝山の菜種畑農家に生まれた女の子が、5歳にして江戸は深川の大店(菜種油問屋)に養女として貰われてから、幾多の困難を乗り越えててんぷら屋を開業する、という物語。 と聞いて、私の好きな「だいこん」に類するストーリィだろうと思い、手に取った作品です。 前半は、ニ三が出来過ぎな少女であるうえに、彼女を取り巻くのも好人物ばかり。幾らなんでもなぁと思いつつも、山本さんにうまく乗せられている所為か、快調にかつ楽しく読み進みます。 それでも油が貴重品だった江戸時代の様子、菜種油の存在感や、深川という町の活気が感じられて、読み手を惹き付ける時代小説版少女成長物語であることに変わりはありません。 |
●「おたふく」● ★★ |
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2013年04月
2010/04/27
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田沼時代の後老中となった松平定信により、江戸の札差
109名に対し 総額118万両の貸金棄損が命じられた。 私が山本一力作品で一番好きな「だいこん」と、リテール事業という点で通じるところがあります。 本書に登場する人物たちを見ていると、本作品は現在の日本に対する警鐘のように感じられます。 |
10. | |
「桑港特急 San Francisco Express」 ★★☆ | |
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江戸時代末期、吉原に身売りする4人の若い娘を乗せた船は嵐に会って漂流し、小笠原諸島の父島に流れ着きます。4人を助けたのは、アメリカ人の元捕鯨船乗りたち。 やがて夫婦となった元航海士のジム・ガーナーとみすずとの間に生まれたのが、本書の主人公となる丈二と子温の兄弟。 前半は2人の父島での日々。父島に寄港した米国捕鯨船、それに乗船していたのは“ジョン・マン”こと日本人のマンジロウ。 子供は旅をしてこそ成長するというマンジロウの言葉に促され、みすずは愛する息子たちを米国へと送り出します。 時はちょうどゴールドラッシュに湧くアメリカ西海岸、大陸横断鉄道の敷設計画も起こり、その活気が伝わって来るようです。 事業の可能性を探るため中国人がサン・フランシスコに開いた洋品店で兄弟は働き始めます。 上記の丈二・子温の物語と並行して、極悪人一味に身重の妻と友人を虐殺されたリバティ・ジョーたちの復讐劇が絡みます。 較べるのは適切ではないのかもしれませんが、黒人奴隷のジムと一緒に筏でミシシッピ川に繰り出したハック・フィンの冒険を彷彿させます。 それに加えて終盤、極悪人サントス一味に罠をかけ一気に決着を付けようとするリバティ・ジョーたちの対決は圧巻、まるでジョン・ウェインらが登場する西部劇を久々に見る思いです。 若い兄弟の成長・冒険物語と西部劇の面白さ、登場人物の多彩さと合わせ、約 550頁と読み応えたっぷりです。 ただ、リバティ・ジョーの物語部分に頁を割かれた分、兄弟の体験・冒険物語が省略された向きを否めないのが残念なところ。 なお、表題の「桑港特急」は、リバティ・ジョーたちがサントス一味たちの目を惹きつけようと、砂金輸送のために特注した駅馬車に名付けた名前“San Francisco Express”の漢字版。 山本一力さんのライフワーク「ジョン・マン」からの派生による物語であることは間違いないようです。 序章/第一部/第二部/終章 |