有川ひろ
作品のページ No.2



11.別冊図書館戦争1

12.ラブコメ今昔

13.別冊図書館戦争2

14.三匹のおっさん

15.植物図鑑

16.フリーター、家を買う。

17.シアター!

18.キケン

19.ストーリー・セラー

20.シアター!2


【作家歴】、空の中、海の底、図書館戦争、図書館内乱、レインツリーの国、クジラの彼、図書館危機、塩の街、図書館革命、阪急電車

 → 有川ひろ作品のページ No.1


県庁おもてなし課、もう一つのシアター!、ヒア・カムズ・ザ・サン、三匹のおっさんふたたび、空飛ぶ広報室、旅猫リポート、コロボックル絵物語、明日の子供たち、キャロリング、だれもが知ってる小さな国

 → 有川ひろ作品のページ No.3


倒れるときは前のめり、アンマーとぼくら
、イマジン?、みとりねこ、物語の種

 → 有川ひろ作品のページ No.4

 


          

11.

●「別冊 図書館戦争1」● ★☆


別冊図書館戦争1画像

2008年04月
アスキー・メディアワークス刊
(1400円+税)

2011年07月
角川文庫化

2008/05/11

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完結した筈なのに何故「図書館戦争」が再び? と思ったら、シリーズの番外編、それもその第1巻。
ストーリィとしては、図書館革命の本編最後とエピローグの間、目出度く郁と堂上がカップルとなってからのラブ・ラブ模様を描いた連作短篇集。
有川さん曰く、「主人公カップルがエピローグでいきなりあんなことになって終わったので、この本では二人がそこに至るまでを追いながら図書館の比較的小さな日常事件を絡めてみました」とのこと。

小うるさい柴崎、小牧、手塚らの見守る中、不器用だからこそ甘ったるい両想い関係の姿を見せつける2人とあって、とても読んでられるかっ!てなものですが、ファンとしてはその後の2人の姿も確かめずにはいられない、という訳です。

それにしても、いくら恋愛の進捗する様子を描いたストーリィとはいえ、あの戦闘系=笠原郁のあそこまで赤裸々で、内々の姿まで見せられるとは思いもしませんでした。
惜しまれるのは、堂上篤の型破りな妹=静佳のこと、もっと出番があって欲しかった。

1.明日はときどき血の雨が降るでしょう/2.一番欲しいものは何ですか?/3.触りたい・触られたい二月/4.こらえる声/5.シアワセになりましょう

  

12.

●「ラブコメ今昔」● ★★☆


ラブコメ今昔画像

2008年06月
角川書店刊

(1400円+税)

2012年06月
角川文庫化



2008/07/19



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自衛隊ラブコメ”シリーズ第2弾。(※第1弾はクジラの彼とのこと)

冒頭から、こりゃ面白い!の一言。
図書館戦争における笠原郁の登場も見ものでしたが、その郁に優るとも劣らない女性自衛官が冒頭から登場します。
「ラブコメ今昔」で新任の隊内紙担当尉官という、矢部千尋二等陸尉
弱冠まだ27歳、童顔で女の子っぽいというのに、空挺部隊の大隊長・今村ニ佐に気おくれしないどころか、奥様との馴れ初めをと取材攻勢をかけ、今村二佐をトイレの個室にまで逃げ込ませ、本人をして何でこんな目にと嘆く羽目に追いやるのですから爆笑。

ラブコメ第1弾の「クジラの彼」は、空の上」「海の底登場人物らの番外編という趣向でしたから自ずとストーリィは限定されていましたが、本書第2弾にはそうした制約がないため、実に伸び伸びと楽しく愉快でカッコ良過ぎるラブコメが存分に繰り広げられています。
こうしたラブコメが大好きな私としては、嬉しくってたまりません、充分堪能しつつ読み耽りました。

また単にラブコメで終わらず、各篇各々、国を守るという責任を担った自衛官たちの覚悟の程がきちんと描かれていることも、本書に好感を抱く理由のひとつ。
ただ、本書に登場する自衛官たち、少々スマート過ぎ、カッコ良過ぎるようです。そんなカッコ良さ、凛々しさばかり目立ってしまいますが、自衛官たちの現実は結構厳しいものです。
(※それについては、杉山隆男“兵士”シリーズを是非ご参照ください。)

本短篇集の中では、表題作「ラブコメ今昔」「軍事とオタクと彼」の2篇がとびっきり面白い。
また、最後の「ダンディ・ライオン」にて、「ラブコメ今昔」のカップル2人に再会できたことがまたまた嬉しい。これはもう、有川さんから読者に対するプレゼント、ですね。
ラブコメ・ファンにはとびっきり嬉しい短篇集、お薦めです!

ラブコメ今昔/軍事とオタクと彼/広報官、走る/青い衝撃/秘め事/ダンディ・ライオン〜またはラブコメ今昔イマドキ編/あとがき

          

13.

●「別冊 図書館戦争2」● ★★


別冊図書館戦争2画像

2008年08月
アスキー・メディアワークス刊
(1400円+税)

2011年08月
角川文庫化



2008/09/09



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図書館戦争主要人物たちのエピソードをつづった番外編=、「別冊」の第2弾。

冒頭「もしもタイムマシンがあったら」は、図書特殊部隊で地味な存在、元良化特務機関員という経歴をもつ副隊長、緒形明也の恋愛ストーリィ。
地味なこの人にこんな秘めたる恋愛物語があったのか、という意外性もまたエピソード編の楽しみというもの。独立した恋愛ストーリィとしても、本篇は味わい豊かな一篇です。好きですねぇ、私はこういう作品が。

「昔の話を聞かせて」は、が旦那である堂上から、新人だった頃の失敗談を聞き出すというストーリィ。
完璧と思える2人(堂上と小牧)は最初から完璧だったのか知りたい、というのがその動機。
でもそこには、郁と同様突っ走ってしまう傾向の新人隊員・堂上がいます。以前だったら自分の失敗を語るなど考えられなかったことでしょうが、そこは愛する妻の懇願だからと応じる堂上に、夫婦なんだなぁと感じさせられて、微笑ましい。

後半3篇「背中合わせの二人」は、郁の親友=柴崎麻子と同僚=手塚光をめぐるストーリィ。
なんだかんだと結末の長引いている2人ですが、漸く本書にて決着がつきます。しかし、そのためには柴崎が初めて弱さを自覚する必要があるらしく、利用客のストーカーに悩まされたと思えば、その直後にはさらに極限的な悪質ストーカーが登場。これでもかこれでもかと柴崎を奈落に突き落とす辺り、柴崎が可哀相なくらい。でもだからこそ緊迫感が盛り上がるという部分があるのですから、この辺りのエンターメント性は流石です。

純真なラブストーリィあり、前日談あり、サスペンスありといった、「図書館戦争」番外編としての魅力満載!と言うべき一冊。
ファンなら必読の最終巻!

1.もしもタイムマシンがあったら/2.昔の話を聞かせて/3.背中合わせの二人(1)/4.背中合わせの二人(2)/5.背中合わせの二人(3)

 

14.

●「三匹のおっさん」● ★★


三匹のおっさん画像

2009年03月
文芸春秋刊
(1524円+税)

2012年03月
文春文庫化

2014年06月
新潮文庫化

2015年01月
新潮社刊

2015年09月
講談社文庫化


2009/04/04


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イマドキのお年寄りは若いよなぁ、と思ったことがこの話のきっかけだったとか。
定年退職して第二の職場に嘱託勤めのキヨは剣道の達人。居酒屋亭主の座を息子に譲ったシゲは柔道家。そして機械をいじらせたら天下無敵という工場経営者のノリは頭脳派。
暇を持て余した幼馴染の元“三匹の悪ガキ”が語らって始めた活動は、地域限定正義の味方、という次第。

私が子供の頃見ていたTVの人気番組に「三匹の侍」という時代劇がありました。本書「三匹のおっさん」という題名は、そのもじりらしい。
鍛え上げた戦闘力と頭脳を活かして、3人のジーサン、いやオッサンが、カツアゲ犯、暴行魔、詐欺師、動物虐待犯、性犯罪者、催眠商法という現代悪を追い詰め、バタバタとなで斬りにするという現代勧善懲悪+キャラクターの魅力が弾け、交わされる会話が楽しいという有川風エンターテイメント。
本ストーリィの楽しさはその3人の怪男児ぶりだけにあるのではありません。それにプラスして、青春ストーリィ要素あり。
その担い手となるのが、現代風ナマイキな高校生=キヨの孫である祐希と、真面目で良い子過ぎる女子高生=ノリの娘である早苗の2人。

図書館戦争シリーズが完結してちょっと気が抜けていたかなァというところ、それに代わって登場したようなこの物語、とても楽しかった。本書だけで終わらず、是非シリーズ化してもらいたいものです。
なお、各章、3人の持ち味フル発揮しての勧善懲悪+青春物語で楽しいことしきりなのですが、冒頭、キヨ定年退職祝いの場でのキヨ&芳江夫婦と息子夫婦の会話、これが一番痛快だった気がします。

※「三匹の侍」は1963〜69年にTV放映された連続時代劇。主役の三匹を演じたのは、丹波哲郎(途中で加藤剛に交代)、平幹二郎、長門勇。リアルな殺陣が斬新でした。

  

15.

●「植物図鑑」● ★★☆


植物図鑑画像

2009年06月
角川書店刊
(1500円+税)

2013年01月
幻冬舎文庫化



2009/07/30



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ラブストーリィのはずなのに、何故「植物図鑑」という題名? しかも各章の題名も野草の名前ばかり?

その理由は読んでみれば判ります、それも嬉しいくらいに。
主人公は25歳のOL=河野さやか。会社帰りのある夜、彼女はアパートの前で行き倒れていた青年を拾い上げます。無用心極まりないことですが、それも酔った勢いか。
そんな経緯から同居することになった青年、料理は上手いし、野草の知識が豊富。いつしか野草摘みに連れ出され、一緒に野草料理を楽しむようになります。

「雑草という名の草はない。草にはすべて名前があります」と昭和天皇は仰ったそうです。
いろいろな野草を知る楽しみ、その野草をどんな風に調理すれば食べられるか、どんな味になるかを知る楽しみ。
そしてそれらの料理を味わいながら、若い男女の会話が弾む。
こんな楽しいストーリィって、そうは無いです。
共同生活を送る中、さやかがどんどん相手のことを好きになっていくのが手に取るように判る。
それなのにさやかが知っている相手のことといえば、樹(いつき)という名前と、野草の写真を撮るのが好きらしいことくらい。
これって女の子にとってはかなり切ないシチュエーション。

野草に親しむ楽しさ+旅と発見の喜びという趣向+さやかの切ない想い。これって好いですね〜。
有川浩さんの描くラブ・ストーリィ、当分目が離せそうにありません。

植物図鑑・・・ヘクソカズラ/フキノトウ・フキそしてツクシ/ノビル・セイヨウカラシナ/春の野花−タンポポ・イヌガラシ・スカシタゴボウ/ワラビ・イタドリ/ユキノシタ・クレソン/ノイチゴ/イヌビユ・スベリヒユそしてアップルミント/アカザ・シロザ・ヨモギそしてハナミズキ/巡る季節
カーテンコール・・・ゴゴサンジ/午後三時

   ※映画化 → 「植物図鑑

   

16.

●「フリーター、家を買う。」● ★★


フリーター、家を買う画像

2009年08月
幻冬舎刊
(1400円+税)

2012年08月
幻冬舎文庫化



2009/09/10



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堪え性がなくて自分に甘い。そのために折角就職した会社を馴染めないと3ヶ月で退職し、その後フリーター。
ところが、母親が重度の鬱病+強度の妄想症+全般性不安障害を発病。しかもその原因が、20年来ずっと近所から自分の一家がイジメられてきたことにあると姉から初めて知らされ、愕然。
自分勝手な父親も大きな原因だったが、自分にも責任の一端はあると、それから一念発起、夜間の道路工事バイトで金を貯めながら、就職活動に真剣となる。
そんな主人公が、真面目に働き出したその姿勢を買われてスカウトされ、働き場所とやり甲斐、責任を与えられるや、みるみる内にすっかり頼もしい青年に変身してしまう。そしてついには、母親のため引越も実現する、というまでを描くストーリィ。

有川浩作品としては、それ程インパクトのあるものではありません。それでも、読み始めると止められない面白さは、いつもの有川作品と変わるところなし。
第二新卒、フリーター、就活、鬱病、家庭内不和。さらには履歴書の書き方、採用する側の視点、仕事のやり甲斐から人の育て方まで、現代社会の様々な問題を惜しみなく注ぎ込み、それでいてバランスの取れた面白い長篇小説に仕上がっているところが、有川さんの達者なところ。
また、生真面目過ぎて不器用な恋愛篇 【after hours】というオマケのサービスもあり。

※読み終わってから、"Before主人公"像と "After主人公"像のあまりの違いに改めて驚きます。違いの大きさだけ楽しい、と言って誤りではありません。

フリーター、立つ。/フリーター、奮闘。/フリーター、クラスチェンジ。/元フリーター、働く。/元フリーター、家を買う。/
【after hours】傍観する元フリーター

  

17.

●「シアター!」● ★★


シアター!画像

2009年12月
メディアワークス文庫刊
(610円+税)



2010/02/02



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私のような素人でも、劇団というと収入よりむしろ持ち出しの方が多いくらい、とはよく聞く話。
そんな採算度外視、赤字当たり前と思い込んでいる劇団に、有能な会社員が入り込み、公演収支に厳しい目を光らせ支出に大なたを振るったらどうなるか・・・・というのが本ストーリィ。

劇団がいつの間にか拵えていた借金3百万円の返済を兄のに泣きついた小劇団「シアターフラッグ」の主宰者=春川巧は、借金の条件として、劇団公演の収益により2年間で全額返済、もしできなかったら劇団解散という難題を突きつけられます。
しかし、その司、決して冷酷な金銭至上主義者ではありません。自分もそのために手を貸す。有能な自分が経理を司っても利益がでないようなら、もう諦めろ、というのがその主張。
さて、シアターフラッグ、次の公演で利益を上げることができるのかどうか。

司と巧ら劇団メンバーたち、対照的な両者の姿を描いていきながら、小劇団の実態を浮かび上がらせているところが本ストーリィの面白さ。
金勘定ができないダメ人間として批判的に見るだけでなく、創作するという能力において自分の手に及ばないものを彼らは持っていると、「鉄血宰相」と仇名された司の存在感、その司と交じりあうことによって生き生きとしてくる劇団メンバーの姿が読んでいて楽しい。
特に私としては、新規加入した、声優として十分なキャリアあるものの演劇は初めてという羽田千歳25歳と、彼女が「オジサン」と呼ぶ春川司31歳との会話、やり取りがすこぶる楽しい。
軽い感じの作品かなと、読み始めはそれ程期待していなかったのですが、司と千歳のキャラクターに魅せられました。2人の他では、看板女優の早瀬牧子も魅力的。巧は・・・ちと大人になりきれていないなぁ。
軽快なテンポ、会話の面白さは有川さんならでは。楽しいという点では、本書も外れはナシです。
売れない小劇団に興味のある方は、是非!

※TVアニメ「図書館戦争」で柴崎麻子役を演じた沢城みゆきさんが、「Theatre 劇団子」という劇団に所属していたことが縁になってこの作品が生まれたとのこと。しかも、作品中で演じられる劇「掃きだめトレジャー」も、劇団子さんの過去公演「トレジャーのある街 '08」が元ネタとのこと。

   ※ → Theatre 劇団子

  

18.

●「キケン」● ★☆


キケン画像

2010年01月
新潮社刊

(1400円+税)

2013年07月
新潮文庫化

2016年06月
角川文庫化


2010/02/08


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成南電気工科大学・機械制御研究部、略して“機研(キケン)”
「彼らの巻き起こす、およそ人間の所業とは思えない数々の事件から、周りからは畏怖と慄きをもって、キケン=危険、と呼び恐れられていた。これは、その伝説的黄金時代を描いた物語である」というのが、裏表紙の紹介文言。

“ユナ・ボマー”と異名をとる危険人物のキケン部長=上野直也と、“大魔神”と異名をとる副部長=大神宏明に早速目をつけられたのが、新入生の常識的人物=元山高彦と、常に沈着冷静な池谷悟の2人。
その4人を中心に、他の新入部員も加えての破天荒な大学・部活動ストーリィ。
さしづめ、図書館戦争のノリの良さをさらに悪ノリの境地にまでスケールアップした、娯楽性の高い破天荒なエンターテイメント。

各篇に徒花スクモさんの描く漫画も挿入され、ハチャメチャなマンガ的ストーリィと思って読み進んだのですが、読み終わって見ると、そこには懐かしい、大学青春時代があった、というのが有川さんらしい仕上げの良さ。
各篇とも、部員の一人らしい人物が、妻に当時の思い出を面白おかしく語るという場面が付け加えられているのが、最後の効いてきます。
有川浩作品の中でも、娯楽性においてダントツ、気楽に読め、かつ大学青春時代への郷愁たっぷりな連作風長篇小説。
エンタイーテイメント&青春好きな方にお薦め。

1.部長・上野直也という男/2.副部長大神宏明の悲劇/3.三倍にしろ!-前編-/4.三倍にしろ!-後編-/5.勝たんまでも負けん!/6.落ち着け。俺たちは今、

  

19.

●「ストーリー・セラー」● ★★


ストーリー・テラー画像

2010年08月
新潮社刊
(1300円+税)

2015年12月
幻冬舎文庫化



2010/09/05



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「面白い物語を売る」というコンセプトで作られたアンソロジーが「Story Seller」(「小説新潮」別冊、現在新潮文庫刊)。
「Side A」はそれに掲載されたものであり、「Side B」は単行本に際して書き下ろされたもの、とのこと。

Side A
本好きな主人公が、ふと会社の同僚女性が忘れたUSBメモリの中を確かめてみると、そこには彼が面白くてたまらないと思う小説原稿が保存されていた。
その瞬間、彼は彼女への恋に落ち、彼女は自分をただ一人評価してくれる読み手として彼に惹かれる・・・・。
Side B
女性社員に人気ある営業マンは何故か常にバリアを張っている。ある日主人公は、彼が自分の書いた小説を絶賛するのを聞いて心弾ませる。そして2人は・・・・。

表面的には、純愛小説。そして、切ない運命の物語。
しかし、本質的には、面白い小説を書かずにはいられない人と、面白い小説を読まずにはいられない人との物語なのです。
小説家にとっては、書いた作品を喜んで読んでくれる読み手の存在が欠かせませんし、面白い小説を読みたい人間にとっては、面白い本を書いてくれる作家の存在が欠かせません。
2人が偶然に出会えば、恋に落ちても不思議はないし、2人が緊密な関係を結ぶのもまた不思議はないこと。
本作品は、そんな2人の出会いと、2人に訪れた切ない結末を描くストーリィ。

そして同時にそれは、面白い小説を書く作家と、面白い小説を読みたい、私たち本好き人間との物語でもあります。
有川浩さん側の気持ちが、本書の女性小説家に投影されているのは間違いないでしょう。書き手から読み手に投げかけられたエール、そこに本作品の本質、魅力があります。

Side A/Side B

          

20.

●「シアター!2」● ★☆


シアター!2画像

2011年01月
メディアワークス文庫刊
(610円+税)



2011/02/18



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弱小劇団の実態を描くシアター!第2弾。
鉄血宰相という異名を捧げられた
の下、経営面を考慮するよう叱咤されて順調に歩み始めたかと思えた“シアターフラッグ”でしたが、好事魔多し。
公式サイトにシアターフラッグを誹謗する書き込みが執拗に続いて
牧子千歳が気持ちをかき乱されたり、ゆかりスズの煩悶が描かれたりと、劇団員一人一人が抱えた悩み、壁にぶつかる様子が本書では描かれます。
そこが「
etude:01〜04」と名付けられた各章。
そしてその後「
Stage:-1」に進むと、が仲間に黙って姿を消すという事態が生じ、劇団員たちが大慌てするという展開。
春川兄弟の再婚した母親も、声だけですが登場。僅かな場面ですが、その部分も見逃せません。

今回、司の出番はそう目立ちません。前面に出てリーダーシップを振るうというより後ろに控え、それでいて皆が頼りにするという心強い相談役、という位置づけです。
その点では、スズと千歳が思わぬ諍いを起こした「
etude:04」が見所。

前作程の突進力ある面白さは感じられませんが、各人のエピソードを語っていくという構成はバランス良く、程よい面白さ&楽しさあり、という印象です。
本書は次の巻へと繋げるための巻。次作での飛躍ある展開が、今から楽しみです。

             

有川ひろ作品のページ No.1     有川ひろ作品のページ No.3

有川ひろ作品のページ No.4

 


   

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