ルーシー・モード・モンゴメリ作品のページ No.1


Lucy Maud Montgomery  1874〜1942 カナダのプリンス・エドワード島生。1歳9ヵ月で母と死別、祖父母に育てられ教師となる。30歳の時に書いた「赤毛のアン」シリーズが人気を博した。37歳に長年の恋人である牧師と結婚。


1.赤毛のアン 村岡花子訳

2.アンの友達

3.アンをめぐる人々

4.赤毛のアン 松本侑子訳

5.アンの青春 松本侑子訳

6.アンの愛情 松本侑子訳

 ※1.アン・ブックス

 ※2.“アン”シリーズ・執筆順序 


果樹園のセレナーデ、ストーリー・ガール、黄金の道、青い城、もつれた蜘蛛の巣、銀の森のパット、パットの夢、丘の家のジェーン

 → モンゴメリ作品のページ No.2


松本侑子さんのホームページ内に“赤毛のアン電子図書館”があります。
“アン”についてのいろいろな情報に出会うことができます。

   


       

1.

●「赤毛のアン」● ★★★
 原題:"Anne of Green Gables"(村岡花子訳)


赤毛のアン画像

1908年発表

1954年07月
新潮文庫刊

第111刷
1998年05月

  

2000/03/11

今更言うまでもなく、児童文学における 傑作! そして名作。
「果樹園のセレナーデ」を先に読み返したからこそ感じるのでしょうか、「果樹園」と比べ、「アン」がはるかに広く、はるかに豊かな世界を描き出していることに、驚きの念を禁じ得ません。
何より感動することは、
“アン・シャーリー”という主人公を作者が生み出したことです。
呆気にとられるほど空想力に充ちたおしゃべり(パレアナはとても及びません)、溌剌とした感情の豊かさ、明るく開けっぴろげな気性、そして自分の責任を認める勇気。アンのすることなすこと、いつも大騒ぎを引き起こすことばかり。そんなアンが全世界の人々を魅了したからといって、何の不思議もありません。
今まではいつもアンを中心に読んできました。しかし、今回はアンと
マリラ、マシュウの3人の物語として読みました。
アンは、
グリーンゲイブルスに引き取られて初めて自分の家を持てたのですが、引き取られて面倒をみられるという経験は既に2回もしている訳です。それにひきかえ、クスバート兄妹、とくにマリラにしてみれば、子供を我が家で養育するなどまるで初めての経験。アンがいろいろな失敗を重ねて派手に成長していく一方で、ひそかにマリラもアンへの愛情を育て、それ故に笑ったり嘆いたりする喜びを学んでいくのです。
その意味で、本作品はアンとマリラとマシュウという、偶然の縁で結びついた家族の物語であり、
「アンの青春」以降の続編にはない要素を含んだ 作品であると言うことができると思います。
11歳のやせっぽちの女の子から、16歳の娘へと成長するアン。マリラならずとも、あっという間だなあ、と思わざるをえません。
最後、マシュウの墓から戻るアンが
ギルバートと出会い、仲直りする場面、私の大好きな部分です。

なお、初めて読んだ小学生の頃は、女の子の物語だと思った為か、夢中になることはありませんでした。中学生の頃にアンが好きになり、「アンの夢の家」までを、大学生の頃に以後の「炉辺荘のアン」「虹の谷のアン」「アンの娘リラ」を読みました。したがって、アン周辺の人々を描いた「アンの友達」「アンをめぐる人々」を読んだのは、ネット世界に入り込んでから。

   

2.

●「アンの友達」● ★★
 原題:"Chronicles of Avonlea"


アンの友達画像

1957年01月
新潮文庫刊

第86刷
1995年08月

   

2000/03/26

“アン”シリーズのうち、周辺人を描いた2冊については未読だったのですが、「赤毛のアン」後何人かの方から勧められて 読むに至りました。
アヴォンリー周辺に住む人々を描いた短編12作。
アンは殆ど登場しません。けれど、直前に読んだO・ヘンリもののあっさりし過ぎに物足りなさを感じていたところでしたので、本書の充実感がとても楽しめました。
“アン”とはまた違った味わい、 楽しさがあります。
12作の内、お互いの意固地さや家族が原因で10年も20年も待ち続けた恋人たちが漸く結ばれるというストーリィが、なんと5作もあります。似たようなストーリィですけれど、主役の男女にそれぞれ個性があって、たまらなく楽しいです。
本書収録12篇の中で何と言っても秀逸なのは
「ロイド老淑女」。 独身で貧乏な老婦人がかつての恋人の娘のため、ひっそりとした贈り物をし続けるストーリィです。季節の花の彩りもあり、とても美しい作品です。
また
「隔離された家」は、天然痘流行のため、女嫌いの農夫と男嫌いの婦人が同じ家に同居をやむなくされるというストーリィ。飼い犬と飼い猫も加わって、12篇中きってのユーモラスな作品です。
アンにこだわらず、独立した短編集として読んでも、充分に楽しめる一冊です。

奮い立ったルドヴィック/ロイド老淑女/めいめい自分の言葉で/小さなジョスリン/ルシンダ ついに語る/ショウ老人の娘/オリビア叔母さんの求婚者/隔離された家/競売狂/縁むすび/カーモディの奇蹟 /争いの果て

   

3.

●「アンをめぐる人々」● 
 原題:"Further Chronicles of Avonlea" 

  

1959年04月
新潮文庫刊

第70刷
1998年07月

  

2000/05/06

本書は「アンの友達」に続く“続アヴァンリーの記録”
前作同様に、長年にわたる恋が漸く実るというストーリィが大部分を占めています。しかし、その割に前作程の感動、面白さが感じられないのはどうした訳なのでしょうか。
単にストーリィがマンネリ化した、というだけのことではないと思います。前作でも同じようなストーリィばかりだったのですから。
その中では
「シンシア叔母さんのペルシャ猫」がユーモラス、「偶然の一致」O・ヘンリ的。また、「父の娘」「ベティの教育」は出来すぎのストーリィですけれど、気持ち良さがありました。

シンシア叔母さんのペルシャ猫/偶然の一致/父の娘/ジェーンの母性愛/夢の子供/失敗した男 /ヘスターの幽霊/茶色の手帳/セーラの行く道/ひとり息子/ベティの教育/没我の精神/ディビッド・ベルの悩み /珍しくもない男/平原の美女タニス

   

4.

●「赤毛のアン」● ★★★
 原題:"Anne of Green Gables" (松本侑子訳)


赤毛のアン画像

1908年発表

1993年04月
集英社刊

2000年05月
集英社文庫
(800円+税)

 

2001/03/25

 

amazon.co.jp

1ヶ月かけて、少しずつ、じっくりと読みました。
すると、これまでのように一気呵成に読んだ時とは、違ったものが見えてきます。つまり、本書の1章、1章それぞれにおいて、アンは何かしらの事件を引き起こしており、1章だけ読んでも十分に楽しめるということです。
それと、アンの言葉に、古典文学(主に英文学)からの引用が実に多いということ。これは松本侑子さんの指摘どおりです。それぞれに詳しい注釈が巻末につけられていますので、気分次第で引用の中味を知ることが出来ます。それによって、アンの物語を一層面白く読むことが出来ます。
松本新訳本の特徴は、この 100頁近くにも及ぶ注釈にあります。また、松本さんによると、村岡訳には省略された部分もある、とのことですが、冒頭のブラウニングの詩を除いてその違いはなかなか判りません。頁数の面では、それ程大きな開きはないのですが。
訳の面では、松本新訳の方が、すっきりと現代的な印象を受けます。幾場面か村岡訳と比べますと、後者の方が言葉をかなりまるめようとしてる気配を感じます。それと、文章における漢字の多寡に気付きます。村岡訳は比較的少なく(多分意識的に)、松本新訳は一般小説程度に多い。ただし、読んでいる最中、村岡訳と松本訳の違いなんて、まるで気になりませんでした。素直に読んで、楽しめました。
感想は前回のとおり。アンだけでなく、マシュウ・マリラ兄妹を含めた新たな家族の物語として読みました。また、アンの成長の様が著しいだけに、シリーズの中でもやはり格別の作品です。
 

 
2001/10/27

追記
松本訳を読んだ時、一頁一頁村岡訳との違いを比べた訳ではありませんので、明確に村岡さんが省略した部分を知ることはできませんでした。
今般、松本侑子さんご本人からメールを貰い、大きな違いがある場所を教えて頂きました。第37章第38章とのことです。(リンク先は
赤毛のアン電子図書館」の当該説明ページです)
この2章は、マシューの死を含む、小説最後の2章です。村岡さんが省略された部分は、松本訳を読んだ時に強く印象に残った部分。記憶に無かった所為ということもあったかもしれませんが、アンとマリラの感情を深く描いた部分、アンが詩情溢れんばかりにアヴォンリーの土地を形容をする部分で、アン・ファンとしては捨て難い、貴重な部分です。
村岡さんが何故この部分を省略したかというと、児童が理解するには難しい部分だったからでしょう。村岡訳が松本訳に比べて劣るということでは決してありません。私としては、そのどちらも素敵な訳だと思っています。
ただ、訳本というのは所詮限界があるもの。ですから、アン・ファンの方には、村岡訳に留まることなく、松本訳も是非読んでみることをお薦めします。私と同様、きっと新たなアンの魅力を発見することでしょう。

      

5.

●「アンの青春」● ★★★
 原題:"Anne of Avonlea" (松本侑子訳)


アンの青春画像

1909年発表

2001年10月
集英社刊

(2000円+税)

2005年09月
集英社文庫化

    

2001/11/10

 

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シリーズ第2作である本書は、アヴォンリーの学校で教師となったアンの、16歳半からの2年間が描かれています。
ちょうど少女から若い娘に変わりゆく時期。花がこれから咲き誇ろうするかのように、若々しく、すらりとした姿の美しい娘として成長を遂げつつあるアンが描かれます。(やや度々にわたり強調し過ぎという気もするのですが)
健康な美しい娘に成長したのは、アンの親友ダイアナも同様です。しかし、ダイアナとアンが大きく違うのは、内面における成長の度合いが、アンにおいては遥かにダイアナより大きいからでしょう。作中でも、内面の輝きがアンを美しい娘として他人に印象付けていると、書かれています。

第2作には、何を仕出かすか判らない、繰り返し事件を引き起こす活発な女の子はもういません。それ故、「赤毛のアン」的な面白さはなく、「赤毛のアン」、第3作の「アンの愛情」に比べると、本書におけるアン自身の印象は薄いものです。しかし、その代わりに、内面を成熟させつつあるアンがそこにいます。かつての想像好きは変わりませんが、すぐ口に出すということがなくなり、相手、時宜をわきまえて振る舞うことをアンは既に習得しています。本書中では、ポール・アーヴィング、ミス・ラヴェンダーが“心の同類”として登場します。
第2作で特徴的な出来事としては、アンたちが村の改善協会を立ち上げた事、マリラディヴィドーラという双子の子供を引き取ったこと、隣人ハリソン氏のこと、ミス・ラヴェンダーのことが挙げられるでしょう。また、第1作と違い、養育される側から養育する側へ、教わる立場から教える立場への変化があり、大人の愛情の在り方にも触れ、それらを糧としてアンは大人の女性への入り口に立とうとしています。
本書の最後で、アンは愛着ある教師生活に一旦終止符を打ち、慣れ親しんだアヴォンリーと親しい人々に別れを告げて、大学進学という新たな生活に踏み出すことを決意します。ダイアナだったら、そんなことはせず、アヴォンリーの穏やかな生活に満足してそこに留まることを選ぶでしょう。しかし、アンは新たな世界に飛び込む意義を信じ、かつての意欲を忘れることなく心を振るって大学への進学を選びます。そんなアンの、人生への前向きな姿勢に、どれだけ勇気付けられる人がいることでしょう。
以前のような突拍子もない行動で人々、読者を楽しませてくれる“赤毛のアン”に代わり、ここには、これからの日々に希望と夢を感じさせてくれるアンがいます。「赤毛のアン」とは異なる趣きですが、深い味わいのある、魅力に充ちた一冊です。
なお、巻末の「訳者ノート」により、本書中引用される言葉の詳細な意味を知ることができるのは、本書を読む楽しみを更に深くしてくれるものです。
そして、ここに至れば松本侑子訳「アンの愛情」も読みたい、と思うのは自然の情でしょう。

※本書は訳者の松本侑子さんからプレゼントして頂き、読むに至りました。心からお礼申し上げます。(注:だからといって、ヨイショしていることは決してありません)

     

6.

●「アンの愛情」● ★★
 原題:"Anne of the Island" (松本侑子訳)


アンの愛情画像

1915年発表

2008年10月
集英社文庫刊

(743円+税)

   

2009/01/01

 

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久々に読んだ「アンの愛情」松本侑子さんの新訳版です。
大晦日から元旦にかけて本書を読んでいたので、その2日間、珍しくゆっくりと時間を過ごせた、という気分です。

本巻でアンは、アヴォンリーや親友ダイアナから離れ、ギルバートらと共にカナダ本土の都会キングスポートへ渡り、レッドモンド大学に入学します。
富裕な家が建ち並ぶスポフォード街を散歩中に見つけた、愛すべき“パティの家”。幸運にもその家を賃借できることになったアンは、友人のプリシラ、ステラ、フィリッパ・ゴードンと共にジェイムジーナおばさんに世話を受けながら、実り多き大学生活を送ることになります。
「赤毛のアン」「アンの青春」の時期を過ぎ、大学生になったアンが主人公ですから、少女時代のような溌剌さがストーリィから影をひそめているのは仕方ないことかもしれませんが、やはり寂しい。
その大学生活4年間のストーリィですから、大学生活のいろいろが描かれると期待するのは当然というものですが、意外にその部分は少ない。クリスマス休暇や夏休暇しか帰らない筈のアヴォンリーらのことが、かなり頁を割いて描かれています。
つまり本書は、大学生のアンというより、自由な時間を得て娘から一人立ちした大人の女性へと成長を遂げていく、その孵化期間を描いた巻と言うべきなのでしょう。
それを現わすように(当時だからでしょうけど)、本書のアンは幾組もの結婚や夫婦生活を見聞きすることになりますし、アン自身もまた幾つもの求婚に見舞われる羽目になります。

松本侑子訳の特徴は、アンらが盛んに用いる英文学上の名詩選、聖書からの引用について、余すところなく注釈を付している点。こんなにも多かったのかと呆れ返る程ですが、それが判ってこその「アン」シリーズの味わいと思います。
したがって今回松本侑子訳で再読できたことは、とても嬉しいことでした。

なお、“アン”シリーズで欠かせないのは、主人公であるアンと共に、その盟友であるギルバート・ブライスの存在。
娘物語ですからどうしても少女たちがストーリィの中心になってしまいますが、そのギルバートが最後の最後でやっとギルバートらしい存在感を発揮してくれたのは、男性ファンとしてはホッとする嬉しさ。
さぁ、次の巻がまた楽しみになります。

                              

“アン・ブックス”

   

01.赤毛のアン    Anne of Green Gables
02.アンの青春    Anne of Avonlea
03.アンの愛情    Anne of the Island
04.アンの友達    Chronicles of Avonlea
05.アンの幸福    Anne of Windy Willows
06.アンの夢の家   Anne's House of Dreams
07.炉辺荘のアン   Anne of Ingleside
08.アンをめぐる人々 
Further Chronicles of Avonlea
09.虹の谷のアン   Rainbow Valley
10.アンの娘リラ   Rilla of Ingleside

「アンをめぐる人々」を最後に、アン・ブックス全冊を読み終えました。しかし、振り返って考えてみると、本当に面白かったのは「赤毛のアン」「アンの青春」までではなかったかと思います。少女時代とその延長期にあるアンがそこにいたからです。
「アンの愛情」になると、結果的にはギルバートとの関係に決着をつけるという作品でしたし、「アンの幸福」“アン”に書簡体小説の面白みを持ち込んだ作品と思えます。
一方、結婚してしまった以降のアンは、アンより周辺人を描くことが多くなり、
“赤毛のアン”とはもはや 別物と考えたほうが良いのではないかと思います。
「アンの夢の家」までは繰り返し読みましたので、それだけ親しい思いがありますが、「炉辺荘」以降は一度しか読んでいないため、もはや記憶にとどまっていません。
やはり、若々しい時代のアンこそが、一番
“アン”らしい姿だと思います。それに加えて、「アンの友達」が魅力ある3冊です。

※ 他作家によるアン物語 → バッジ・ウィルソン「こんにちはアン

   

“アン”シリーズ執筆順序(松本侑子「誰も知らない赤毛のアン」より)

  

1908(作者33歳) 赤毛のアン  アン:11〜16歳
1909(作者34歳) アンの青春  アン:16〜18歳・アンの教員生活2年間
1915(作者40歳) アンの愛情  アンの大学生活

1917(作者42歳) アンの夢の家 アンの新婚生活2年間
1919(作者44歳) 虹の谷のアン アンの子供の物語
1921(作者46歳) アンの娘リラ 娘リラと第一次世界大戦

1936(作者61歳) アンの幸福  アンの婚約時代
1939(作者64歳) 炉辺荘のアン 新婚3年目以降の育児と家庭生活

※モンゴメリ自身がシリーズとして組んだ本は、6冊だけだそうです。つまり、子供たちの本は除外されている、ということ。勿論、「アンの友達」と邦題のついている「アヴォンリー年代記」(正・続)は含まれません。

     

モンゴメリ作品のページ No.2

    


 

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