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弦楽四重奏曲第8番作品110 ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に捧ぐ
last updated: 2000.12.20

第1楽章 第2楽章 第3楽章 第4楽章・第5楽章

作曲の背景

1960年7月14日、映画「5日5夜」に作曲のため Gorlits 滞在中の三日間で完成したとされる。ショスタコーヴィチは弦楽四重奏に決して同じ調を選ぶことがなかったが、DSCHを基本主題とすることで、ほとんど必然的に「運命」の調であるハ短調となった。7月19日に友人(I.Glikman)に宛てた手紙の中でこう書いている。

映画のために何か書こうとしたけどできなかった。そのかわりに、誰の役にもたたないイデオロギー的に欠陥のある四重奏を書いてしまった。

僕が死んだ時、誰かが僕の想い出に四重奏を書いてくれる、なんてとうてい思えない。だから自分で書くことにした。表紙に「この四重奏の作者に捧ぐ」と書いてくれてもいい。基本主題は DSCH 音型、つまり僕のイニシャル。 僕のいろいろな作品と革命歌「重き鎖に繋がれて」を素材にしている。自分の作品からは、第1交響曲,第8交響曲,ピアノ三重奏曲,チェロ協奏曲(第1番),マクベス夫人の主題を使った。ワグナーの神々の黄昏の葬送行進曲とチャイコフスキーの交響曲第6番(「悲愴」)の第1楽章の第2主題も仄めかしてある。ああ忘れてた、第10交響曲の主題も。とても大切なかわいいごた混ぜ!

この悲劇まがいの四重奏がどんなにすごいかというと、書いている間に、ビールを半ダース飲んだ後の小便くらい涙が溢れてきたほど。帰ってから2度弾いてみたけど、また涙がでてきた。こんどは悲劇まがいのせいじゃない。自分でも驚いたくらい、すばらしいまでに統一のとれた形になっていたから。

参考書

全曲の構成
第1楽章とフィナーレがともに DSCH による静かなフーガ。これにより曲全体が弓形となる。 その間に、嵐のようなトッカータ、引き攣ったワルツ−スケルツォ、葬送の音楽が挟まれるのは(順序の違いはあるが)交響曲第8番と同じ構成。全楽章続けて演奏。
第1楽章 Largo 二分音符=63 ハ短調 4/4 DSCHによるフーガ(序) 4:03
第2楽章 Allegro molto 全音符=120 嬰ト短調 4/4 (嵐のような)トッカータ 2:41
第3楽章 Allegretto 二分音符=120 ト短調 3/4 (引き攣った)DSCHによるワルツ−スケルツォ 3:47
第4楽章 Largo 二分音符=138 嬰ハ短調 3/4 葬送 4:41
第5楽章 Largo 二分音符=63 ハ短調 4/4 DSCHによるフーガ(結) 3:15

  1. 演奏時間は、ベートーヴェン弦楽四重奏団による一般公開初演(1960.10.9 meldac MECC-26019)のもの。

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