[2023年の動向]

オランダがインドネシアとスリランカに文化財を返還
-アジアにも広がる返還の波-

森本和男

はじめに
オランダ
ドイツ
 ナイジェリアの内紛
フランス
ベルギー
イギリス
ヨーロッパの他の国々
 アイルランドフィンランドスイスオーストリアバチカン
アメリカ
カナダ
おわりに


はじめに

 2017年にフランスのマクロン大統領がアフリカ文化遺産の返還を宣言し、4年後の2021年に、フランスはベナンにダホメ王国アボメー宮殿から奪った文化財26点を返還した。そして2022年にはドイツの博物館からナイジェリアへ、西アフリカのベニン王国からイギリス軍によって略奪されたベニン青銅器1,000点以上が返還された。

 ヨーロッパ帝国主義旧宗主国から旧植民地へと文化財の返還は、虐殺をともなう植民地戦争・懲罰遠征で奪われた戦利品からはじまった。軍事力を背景にした暴力的略奪は歴史的不正義であり、これ以上博物館で戦利品を収蔵することは不当だと認識されるようになったからである。ホロコースト犠牲者への美術品返還、カンボジアや中東の戦乱で流出した違法文化財の返還などで蓄積された文化財に対する倫理観の高まりをうかがえる。

 フランス、ドイツに続いて2023年には、オランダが旧植民地だったインドネシアとスリランカへ大量の文化財を返還した。返還の対象となった多くの文化財は、植民地戦争でオランダ軍の奪った戦利品だった。文化財返還が進む過程で、戦争責任、植民地責任など帝国主義にともなう課題に改めて直面せざるをえない状況と言えるだろう。

 2023年の各国の動向を概観してみよう。


オランダ

 ドイツに続いてオランダが、2023年7月6日に植民地文化財478点の返還を声明した1)。インドネシアに472点、スリランカに6点を返還する。返還は、植民地的状況に由来する文化財返還諮問委員会(the Advisory Committee on the Return of Cultural Objects from Colonial Context)の勧告にしたがい、文化メディア相が決定した。世界文化博物館(Nationaal Museum van Wereldculturen、NMVW)とアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)のコレクションから返還されることになった。

 インドネシアは前年に8件の文化財返還を要求したのだが、返還されたのは4件で、「ロンボク財宝」335点、シンガサリの神像4体、バリ島クルンクンのクリス(短剣)1点、ピタ・マハのコレクションで知られる近代美術品132点である。7月10日にライデンの民族学博物館で所有権が移転された。

 ロンボク財宝は、1894年にオランダ軍がロンボク島のバリ系マタラム=カクラネガラ王国の宮殿を襲撃して奪った戦利品で、金230kgと銀7,000kgおよび宝石・宝飾品とされる。バタビアに運ばれてから1896年にオランダに移送された。インドネシア独立後1977年に財宝の返還が両国で合意され、金銀製品243点が送られてジャカルタの国立博物館に収蔵された2)。今回で2度目の返還となった。

 シンガサリの神像とは、東ジャワに位置するヒンズー教と仏教の重複的影響のうかがえるシンガサリ寺院から、1803年に東ジャワ知事ニコラス・エンゲルハルド(Nicolaas Engelhard)が持ち出した5体の神像の4体である。彼はジャワ中を旅して多数の石像を見つけて収集、スマランの邸宅に飾っていた。後にシンガサリの石像はウィレム1世への贈物として1819年にオランダに送られ、1903年には民族博物館に収蔵された。13世紀の大きな特徴的石像として、インドネシアは1975年に返還を交渉し、1体が返されたが、4体はオランダに残されたままだった3)

 クルンクンのクリスは蛇行剣で、1908年にオランダ軍がバリ島を侵攻して最後に残っていたクルンクン王国を征服し、敗北した国王や臣下たちのププタン(集団自決)の際に奪われたものとされる。王の所有あるいは家臣のものか、所有者は不明。戦利品はオランダに移送されて多数の博物館に分与された。1909年3月に王立軍事アカデミー民族博物館に移され、1956年に民族博物館が軍事アカデミーのコレクションを継承した4)

 ピタ・マハのコレクションとは、ピタ・ハマ(偉大な光)という1936年に結成されたバリの芸術家グループの作品で、絵画、木彫、銀製品、織物などがふくまれている5)。植民地統治下で伝統的スタイルに西洋の影響を取り入れた独特な作風で有名である。

ピタ・マハの絵画
Advisory report from the Colonial Collections Committee,
I-2023-1, Pita Maha collection


 スリランカに返還された物件はアムステルダム国立美術館に展示されていたもので、キャンディの大砲、大型銃2点、サーベル2点、ナイフ1点の計6点である。6点の文化財は1760~66年のオランダ=キャンディ戦争の際、1765年に攻略されたキャンディ王国の宮殿から略奪された戦利品だった6)。1658年にポルトガルがスリランカから駆逐されると、ポルトガルに代わってオランダ支配が強まり、侵略に対抗する植民地戦争が繰り返された。その後18世紀末のフランス革命戦争でイギリスがオランダの海外植民地を奪取して、スリランカはイギリス領となった。返還された6点は8月に所有権が移転され、12月に首都コロンボの国立博物館で展示された7)

 儀仗用の華美な大砲は青銅と金銀で作られ、ルビーが象嵌されている。砲身は長さ約1mで、太陽と三日月、ライオンからなるキャンディのシンボルマークが付けられている。スリランカは1965年からたびたび返還を要求したのだが、キャンディ王からの寄贈品だとしてオランダは返還を拒絶していた。しかし最新の調査で戦利品であることが判明した。

キャンディの装飾大砲
Provenance Report 46, Sinhalese cannon, NG-NM-1015


 大型銃は重さ30kg近くあり、戦場では三脚の上に設置して使用する。サーベルの1本は柄が金製で4頭のライオン頭部と2体の女神像が描かれ、136個のダイヤモンドと13個のルビーで飾られている。木製鞘を金でおおう。もう一本のサーベルは柄が銀製でライオン頭部と女神像が描かれ、宝石が飾られている。2本のサーベルは王室の工房で制作され、実戦用ではなく儀仗用である。ナイフは長さ約30cmで、柄に水晶が使われ、鉄製の刃に部分的に金で装飾する。木製鞘を金でおおう。王室の工房で制作された。

儀仗用サーベル
Provenance Report 48, Kastane, NG-NM-560
ナイフ
Provenance Report 47, Sinhalese knife, NG-NM-7114


 オランダからインドネシアとスリランカに返還されたものは、おもに植民地戦争で奪われた戦利品だった。

 その他オランダから返還されたものとして、3月にカリブ海のオランダ領シント・ユースタティウス島へ先住民族の遺骸7体が返還された。30年前の1984~89年に島の空港で考古学者たちが発掘した遺骸で、研究のためにほとんどすべての出土品がオランダへ輸送された。1992年にはプレ・コロンビアの生活に関する本にまとめられた。残りの多数の出土品も戻されるという8)

 オランダでは文化財の返還と同時に脱植民地化も進んでいる。返還の声明が出る1週間前、奴隷制廃止160周年に相当する7月1日に、ウィレム=アレクサンダー国王(Willem-Alexander)が、奴隷制ではたした国の役割について公式に謝罪した9)。ヨーロッパの君主たちのなかで奴隷制ではたした役割に対して謝罪するのは珍しい。前年12月のマルク・ルッテ首相(Mark Rutte)の謝罪に続く10)、国王による公式謝罪であった。


ドイツ

 ドイツは前年に千点以上のベニン青銅器をナイジェリアに返還した。正確にはドイツの博物館からナイジェリアへ所有権を移転しただけで、ほとんどの実物はまだドイツの博物館にある。ナイジェリアで博物館が建設中で、竣工後に返還された文化財を収納する予定になっている。あるいはドイツの博物館にそのまま貸与して、文化使節の役割をはたすことが期待されている。

 ナイジェリアの内紛

 受け取る側のナイジェリアでは、欧米から次々に返還されるベニン青銅器について誰の所有になるのか問題となっていた。所有権はドイツのプロシャ文化遺産財団(the Prussian Cultural Heritage Foundation)からナイジェリアの国立博物館モニュメント委員会(NCMM、the National Commission for Museums and Monuments)に移された。またドイツの他の博物館や、イギリス、アメリカでも所有権は国立博物館モニュメント委員会へ移転された。

 3月23日に突如ナイジェリア政府は、19世紀後半に略奪された文化財の所有者および管理者としてベニン王オバ・エーアル2世(Oba Ewuare II)を承認することを、大統領宣言として発表した11)。伝統的支配の継承者であるベニン王家にベニン青銅器の所有権が確定され、イギリスのケンブリッジ大学ジーザス・カレッジとアバディーン大学から返還された2点のベニン青銅器が、オバ・エーアル2世に渡された。1897年にイギリス軍に敗北して王国は消滅、宮殿が略奪されて炎上した時のオバ・オーヴォンランウェン(Oba Ovonramwen)は、現在の王の高祖父(祖父母の祖父)にあたる。

 一方、かつて王国のあった地元エド州知事ゴドウィン・オバセキ(Godwin Obaseki)は、ベニン青銅器を収納するため2024年竣工予定の西アフリカ美術館を建てていた。

 つまり所有権の移転先となった政府機関の国立博物館モニュメント委員会も、収蔵施設として建設中のベニン市の西アフリカ美術館も、ベニン青銅器の公式所有者の資格がないことが、ナイジェリア大統領によって決まったのである。実際に実物を返すには、一体誰を相手にどこへ送ればよいのか混乱した状況になってしまった。また、返還された文化財は王の私的宮殿博物館に展示されるのか、ナイジェリアの人々に公開されるのか、王がコレクターに売るかもしれないという懸念も生じた。

 ドイツ議会で極右政党ドイツのための選択肢の議員が問題視したが、政権党の社会民主党議員は「条件付き返還はネオ・コロニアリズムだ」と反論して、政府による返還を擁護した。ドイツでは、受け取る側のナイジェリアの課題であり、返す側にミスはなかったと見られている12)。だが、116点を返す予定だったイギリスのケンブリッジ大学考古学人類学博物館は、5月16日の返還式典を延期した13)。アメリカでは、ベニン青銅器は奴隷たちの子孫と共有すべきだと主張して、前年スミソニアン博物館による返還に対して停止仮処分を裁判所に申請したするグループが、ベニン青銅器のオバ所有権を批判した14)

 結局、返還されたベニン青銅器がどのように取り扱われるのか、具体的な確たる方針はナイジェリアからしめされていない。

 ナイジェリアの隣国で1884~1918年にドイツ保護領となったカメルーンから持ち出された文化財が、ドイツの博物館に40,000点もあることが判明した。カメルーンの首都にある約6,000点のコレクションと比較すると、在ドイツの文化財は莫大な数量に達する。しかもその多くは収蔵庫に収納されたまま展示もされていない。

 旧宗主国ドイツにある植民地カメルーン由来の文化財の実態が、ドイツとカメルーンの研究者および45館のドイツ博物館の学芸員たちによって、2年間の研究で明らかにされた15)。そして2023年6月1~3日に、ベルリン工科大学で「ドイツにあるカメルーンの文化遺産。調査結果と展望(Cameroon's Cultural Heritage in Germany. Findings and Perspectives)」と題して国際会議が開催された16)

国際会議「ドイツにあるカメルーンの文化遺産。調査結果と展望」
オープニング・セッション
KuK TU Berlin 2023/07/11)


 30年以上にわたるドイツの植民地支配で少なくとも180回の懲罰遠征が実行されて、村落や農地が荒廃、文化遺産の略奪や破壊がともなった。ドイツの博物館にあるカメルーンの文化財には織物、楽器、儀式用仮面、玉座や王冠などの王室の財宝、写本、武器などがふくまれている。ライデン博物館に8,000点以上、ベルリンの民族博物館とライプツィヒのグラッシィ博物館にそれぞれ5,000点以上あるとされる17)

 アフリカの文化財に続いて、かつてドイツの植民地ではなかった南米由来の文化財も返還された。

 6月16日にベルリンの民族博物館のコレクションからコロンビアへ、先住民族コギ人の15世紀中頃の木製仮面が返還された。仮面は、1915年に当時学芸員だったドイツ人民族学者コンラッド・テオドル・プロイス(Konrad Theodor Preuss)が、死亡したコギの司祭の息子から購入したものだった。コギ人の代表は、仮面はコギ人にとって神聖で歴史的文化財ではなく生きている、仮面を着けて儀式を行ない、太陽、水、山、さらに世の中のたくさんの生き物の精霊たちと触れ合うのだと述べた。ただし木製仮面には防虫剤が塗布されていて、人体への危険性が指摘された18)

コロンビアのコギ人に返還された仮面
the Guardian 2023/06/16)


 コギ人の仮面とは別にコロンビア政府は、現在フンボルト・フォーラムのコレクションにふくまれているプレ・コロンビア文化に属するサン・アグスティン文化の石造彫刻35体の返還を要求した。サン・アグスティン文化の石造彫刻とは、日本の埴輪のように古代墳丘墓に配置されていた特色ある石造物である。サン・アグスティン遺跡群は1995年に世界遺産に登録された。1913年にドイツ人民族学者プロイスが考古学調査で持ち去り、第1次世界大戦後の1923年にベルリンに到着した。1990年代から市民の間で返還運動がはじまったが、ドイツおよびコロンビアで具体的進展はなかった。

サン・アグスティン遺跡の石造彫刻
Hyperallergic 2023/02/13)


 ところが2022年にコロンビアで左派グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)が大統領に就任すると、政府は文化財返還に積極的に取り組むようになり、2022年12月の会議で外務省代表が石造彫刻の返還要求を公表したのである19)

 先住民族の文化財は、南米だけでなくオーストラリアにも返還された。毎年のようにオーストラリアとニュージーランドへ先住民族の遺骸が返還されてきたが、文化財についての返還はまだ実現していなかった。ドイツ政府とオーストラリア政府が重要な協定を結び、先住民族の文化財も返還することになり、ヨーロッパ大陸からオーストラリアへ最初の公式返還になると予想された20)

 8月16日にドレスデンの民族博物館からオーストラリア南部のカウルナ(Kaurna)アボリジニのコミュニティへ、槍、掘り棒、こん棒、網の日用品4点が返還された。1838~39年にプロテスタント宣教師が収集し、1840年に宣教師会がドレスデンの歴史博物館に寄贈した。博物館コレクションの出所調査後2019年に地元から返還要求が出されていた21)

 前年のベニン青銅器にはじまった植民地文化財の返還は、対象となる地域が広がり、内容も多岐にわたるようになった。

 ドイツ政府は2019年に190万ユーロ(約2億4,000万円)の予算を投入して博物館コレクションにふくまれる植民地文化財の出所調査をはじめた。2023年には、さらに調査が拡大された。ベルリンの国立博物館では考古学コレクションの体系的出所調査が開始され、原産国から違法に発掘もしくは輸出された物件の返還も考慮されるという。これまで出所調査はナチスの略奪美術品や植民地時代の取得品に焦点があてられてきたのだが、国のコレクションを管掌するプロシャ文化遺産財団では、考古学資料も同様に法的・倫理的に重大な問題をかかえているとしている。

 パイロット・プロジェクトでイスラム美術館(Museum für Islamische Kunst)、近東博物館(Vorderasiatisches Museum)、古代コレクション(Antikensammlung)にあるトルコのサマル遺跡(Sam'al)とディディマ遺跡(Didyma)、イラクのサーマッラー(Samarra)の考古学資料が調査され、35万ユーロの費用がドイツ損失美術品財団(the German Lost Art Foundation)から支出される。調査期間は2023年3月から2025年2月までの2年間である22)

 返還も考慮に入れた考古学資料の調査がはじまったのだが、とはいえ、ベルリンの博物館にあるネフェルティティ胸像やペルガモン祭壇の返還はまったく計画していないと、ベルリン当局が1月に言明した23)。つまり世界的に著名な考古学資料の返還は考慮されていないのだ。

 なおペルガモン祭壇の展示館は現在修復中で公開されていない。『ドイツ皇帝のトレジャー・ハンター:オリエントでのドイツ考古学遠征(Die Schatzjäger des Kaisers: Deutsche Archäologen auf Beutezug im Orient)』の著者ユルゲン・ゴッツリッヒ(Jürgen Gottschlich)は、ドイツ当局が不公正な影響力を行使して祭壇をベルリンに運んだ、「法的に返還手続きの望みはないが、道義的に不明瞭な話だ」と語った24)

 ドイツ北西部のニーダーザクセン州では、大学と博物館にある6つのコレクションに収蔵されている植民地文化財の出所調査(PAESE、Provenance Research in Non-European Collections and Ethnology in Lower Saxony)が、2018~22年にフォルクスワーゲン財団の助成で進められた。2021年6月には国際会議が開催され、調査成果や調査方法、倫理原則、学際的アプローチ、原産国側との対話、植民地コレクションの法的地位、将来的展望など多角的側面から総合的に論じられた。会議録が2023年12月に刊行され、ドイツにおける出所調査の実態を具体的に伝えている25)

 出所調査は国や公共機関のコレクションだけでなく、キリスト教の修道会でも開始された。植民地時代に海外へ派遣された宣教師たちが故国に持ち帰ったコレクションを調査して目録化し、もしも適切であれば文化財を原産国へ返還する。

 ドイツ中西部のサンクト・ゲオルゲン哲学神学大学(Philosophisch-Theologische Hochschule Sankt Georgen)の世界教会伝道研究所を拠点に、調査プロジェクト(the Historic Mission Collections)が組織された。初歩的調査で約50のカソリック団体を調べた結果、半分以上で目録がまったく作成されていなかった。多くはドイツの植民地から由来するが、他のヨーロッパ植民地や独立国からのものもある。19世紀後半に、はるか遠くの異国からもたらされた珍品を宗教団体が見せて、訪問客を驚嘆させる展覧会が流行したのである26)

討論会:植民地的状況における宣教師の「収集」
Kulturgutverluste / German Lost Art Foundation 2023/12/20)


 調査はさらに拡張されて国境をまたいで実施されることになった。ドイツ政府とフランス政府はサハラ以南のアフリカ由来の文化財について、合同して出所調査を行なうことに合意した。2024年2月からはじまる3年間のパイロット・プロジェクトで、毎年それぞれの国が36万ユーロを拠出する27)

 文化財の返還と出所調査の拡大に並行して、遺骸の調査・返還も進展している。東アフリカの旧植民地由来の遺骸調査パイロット・プロジェクトが、2017年からベルリンの先史古代史博物館で開始され、調査結果が1月に公刊された。1,135体の頭骨が調査され、904体がルワンダ、202体がタンザニア、22体がケニヤからだった。大部分の頭骨は墓地とくに共同墓地からで、一部刑場からのものもあった。出所調査の明解な目的は遺骸を原産国へ返還することであり、すみやかに返還を準備しているとプロシャ文化遺産財団は語った28)

 12月にはドイツの博物館と大学のコレクションにふくまれる植民地由来の遺骸調査の結果が公表された。調査はドイツ・コンタクト・ポイント(the German Contact Point)が主導して2022年に実施され、33施設が参加して約17,000体が集計された。世界中から遺骨が集められたが、46%は地理的に同定できなかった。アフリカから2,492体、オセアニアから4,017体あり、両者を合わせると地理的に判明した遺骸のなかで70%をしめる29)

 実際にドイツに集められた数量はもっと多く、約20,000体とも見積もられている。なかでもオーストリア人医師・人類学者・民族学者で、ベルリンの民族学博物館に勤めていたフェリックス・フォン・ルシャン(Felix von Luschan)は世界中から6,500体の頭骨を集めた。相対的に短期間に大部分の遺骸がドイツに持ち込まれたと考えられる30)

 植民地責任を明確に指摘しながら遺骸の調査をまとめて返還を求めるレポートが、前年2022年2月に「ベルリンを脱植民地化する(Decolonize Berlin)」という市民団体によって公刊された。ベルリン州の博物館や大学、学術機関に所蔵されている遺骸の数量が明示されコレクション形成過程も詳述されて、返還に向けて諮問機関の設置、機関横断型プロジェクト、植民地過去の検証と記憶など数々の勧告も提言され31)、同年7月には政府系組織のドイツ損失美術品財団から、遺骸の取り扱いと出所調査に関する新しい学術ガイドブックも公刊された32)。こうした前年の動きを引き継いで、ドイツで遺骸調査が促進され、具体的成果が公表されたのだろう。

 タンザニアでは1905~07年のマジ・マジ反乱で30万人が殺害され、無数の頭骨と骨がドイツに持ち去られたといわれている。また19世紀後半から20世紀前半にかけて人類学調査と称して村落の墓地から遺骸が略奪された。2020年からタンザニアは返還についてドイツ政府と交渉をはじめた。2024年にフンボルト・フォーラムでタンザニアの歴史に関する展覧会が予定されていて33)、終了後に返還が予想されている34)

 具体例として、タンザニア北東部キリマンジャロの麓でドイツ植民地支配に反抗した人たち19人が、1900年3月2日に処刑され墓地に埋められた。しかし、いつの間にか頭骨が掘り出されてベルリンへ送られた。ルシャンの頭骨コレクションにふくまれている可能性が推測され、子孫たちは懸命に遺骨を捜索したのだが、確たる文書も欠いて、見つけ出すのは不可能だった。DNA検査で奇跡的にわずか2体の頭骨だけ判明した35)

 アフリカ以外にニュージーランドの先住民族マオリとモリオリの遺骸95体が、5月にグラッシィ博物館、ライデン博物館、シュトゥットガルト州立自然史博物館など6ヶ所の施設から返還された。刺青された頭骨(トイ・モコ toi moko)6体がふくまれていた。刺青された頭骨は1800年代前半から売買されるようになり、コレクターの間で珍重された。多数の頭骨が墓地から盗み出され、世界の著名な博物館のコレクションにも収蔵された36)

 文化メディア省の外郭団体であるドイツ損失美術品財団は、文化財問題を専門的に管掌する機関で、出所調査やデータベース構築を行なっている。対象によってナチ略奪文化財、植民地的状況、戦時損失、ソビエト占領地区とドイツ民主共和国、の4部門が設けられている。2024年9月の時点で、今までに全部で559のプロジェクトが実施され、そのうち2019年に設置された植民地的状況部門のプロジェクトは82である37)

 連邦政府とは別に、大学や博物館などさまざまな公共機関でも植民地文化財の出所調査が進められ、ドイツ全体で植民地的状況の実態が解明されつつある。出所調査は原産国側との共同調査を前提に実施されている。今後もベニン青銅器の返還に続いて多数の文化財が原産国に戻され、ドイツで文化財の脱植民地化が進展すると予測される。


フランス

 フランスは2021年11月にベナンへ文化財26点を返還した。その後、返還に関して目立った動きは見受けられない。イギリスと同様にフランスでも、国のコレクションから文化財を処分することが法律で禁じられている。返還には複雑な手続きが必要で、事案ごとに個別の法律によって議会から承認を受けなければならない。

 そこで議会の議決を必須とせずに、特別に設置された専門家委員会が検討して返還をすみやかに進めるため、3本の法案が1月に提案された。つまりナチス占領時代にユダヤ人から奪った美術品の返還、博物館に収蔵されている人間の遺骸の返還、そして植民地文化財の返還に関する3本の法案が文化省から議会に提出された。人間の遺骸に関する法案は、前年元老院で満場一致で可決されたものの、政権によって阻止された法案を修正したものである38)

 2021年にフランスからベナンへ文化財が返還された時、マクロン大統領は返還に関する原則・法律について、ルーブル美術館の前館長ジャン=リュック・マルティネス(Jean-Luc Martinez)に諮問した。意見を求められたマルティネスは、2023年4月25日に85ページのレポートを外務相と文化相に提出した39)。なお彼はルーブル美術館の文化財密輸事件に連座して2022年に起訴されている。

 マルティネスのレポートは、アフリカ文化財の迅速な返還を阻止する条件を発案していた。イデオロギーや倫理的観点から返還を検討するのではなく、返還可能な基準が違法もしくは非合法に限定された。この定義にしたがうと、フランスの博物館にある収蔵物のごく一部しか該当しない、パリのケ・ブランリ美術館にある85,000点の物件のうち、たったの300点だけが問題となり返還の基準にあてはまるのだろうと、彼は述べた。その他にも共有遺産、ワシントン原則をモデルにした返還原則の共同宣言など、特異な提案がレポートにふくまれていた40)。当然のごとくアフリカ側から、2018年の返還レポートから後退している、旧来の普遍主義(universalism)だとして厳しい批判がよせられた41)

 返還に関する3本の法案のうち、1月に、ナチス時代にユダヤ人から略奪された美術品返還の法案が議会で満場一致で可決され、7月に法律が成立した。ナチス時代にフランスで10万点の作品が略奪されたとされる。戦後連合軍によってドイツから約6万点がフランスに戻され、返還要求のあった約45,000点が返された。要求のなかった約13,000点は価値が低いとされて国によって売却された。残った約2,200点は復旧国立博物館(MNR、Musées Nationaux Récupération)と名づけられて、公共美術館に収納された。その後約30年の間にわずか4点しか返還されなかった。

 略奪美術品の返還が遅れた理由は、フランスが過去の暗い汚点になかなか向き合おうとせずに沈黙したままだったからである。1995年にジャック・シラク大統領がナチス占領時代の犯罪的愚行とフランス政府の責任を認めてから、ようやくユダヤ人から奪われた美術品についても再検討されるようになった。新しい法律で、ホロコースト犠牲者の美術品返還が促進されると期待されている42)

 そして12月に、人間の遺骸返還に関する法案が議会で採択された。フランスの公共コレクションから過去500年以内の遺骸を、議会の議決ではなく、首相の決定によって原産国へ返還可能となった。返還要求は外国によって提出され、専門家委員会の報告を受けた後に返還が決定される。懸案となっていた返還に関する法律が2本成立したのだが、3つ目の植民地文化財の返還に関しては意見が多岐に分かれ、法案の草稿すらできていない43)

 アフリカ文化財の返還が遅々として進まないなか、古美術市場でアフリカの仮面が破格の高値で販売されて、裁判沙汰となった。パリ南西ウール=エ=ロワール県に住む老夫婦が、フランス南部ガール県にある別荘を処分するため屋根裏を整理し、2021年9月に不用品を古道具屋に売却したのだが、そのなかに木彫仮面がふくまれていた。

 仮面はオークションに出品され、19世紀にガボンのファン人(the Fang people)の制作したもので、ピカソやモディリアーニにインスピレーションをあたえるような独特なスタイルと紹介された。1917年ごろに植民地知事ルネ=ビクトル・エドワルド・モーリス・フルニエ(René-Victor Edward Maurice Fournier)が取得し、老夫婦は彼の孫である。2022年3月のオークションで当初30万ユーロと評価されたが、420万ユーロ(約5億5,000万円)で落札された。仮面を150ユーロで売却した老夫婦は落札価格に驚き、正当な利益を受け取るべきだと古道具屋を相手に裁判を起こしたのである。

 一方在フランスのガボンのコミュニティはオークションに抗議し、また8月にクーデターの勃発したばかりのガボン当局は、返還を求めて裁判に任意参加を要請した44)

オークションに出品されたガボンのファン人の木製仮面
the Guardian 2023/10/31)


 結局12月に裁判所は、弁解の余地のない不注意、軽率だとして老夫婦の訴えをしりぞけ、またガボン政府からの申し出も却下した45)

 古美術市場の話題をもう一つ紹介しよう。ベトナムは19世紀の皇帝の金印を取り戻した。フランスのオークション会社ミロン(Millon)が2022年10月に329点のオークションを発表し、そのなかにベトナム最後の王朝となった阮朝の明命帝(ミンマイ)が1823年に制作した金印と、啓定帝(カイディン)時代の金製椀がふくまれていた。金印は13.8cm×13.7cmの方形で重さ10.78kg、上部に竜の彫像があり、印面には「皇帝之寶」と刻まれている。予想価格は200万~300万ユーロ(約2億9,000万~4億3,000万円)であった。

 王朝から近代民主制へ移行するベトナムで重要な時期の金印と評価された。阮朝時代に100点以上の印が金、銀、玉で制作され、ベトナムの国立歴史博物館には85点の玉璽が収蔵されている。

 金印は皇帝から皇帝へと受け継がれ最後の皇帝だった保大帝(バオダイ)が保管し、彼の死後には最後の妻であるフランス人モニーク・ボードー(Monique Baudot)が保管していた。2021年に彼女が死去してから、遺族が売りに出したと見られている。

 1年あまりの交渉のすえベトナム・バクニン省で建設不動産業をいとなむ実業家で、古物コレクターのグエン・テー・ホン(Nguyen The Hong)が610万ユーロ(約9億9,000万円)で買い取ることになった。2023年11月16日にパリのベトナム大使館で引き渡された。グエン・テー・ホンは、自ら設立したナムホン王家博物館(Nam Hong Museum)5階の特別展示室で金印を厳重に保管したという46)



ベトナムの金印と金印を手にするグエン・テー・ホン
VOV 2023/11/21)


 フランスから植民地文化財の返還は、的確な法律の目途がたたず、マクロン大統領の政治主導によるベナンとセネガルへの返還を除いて、今後もしばらく足踏み状態が続くと思われる。


ベルギー

 ベルギーでも人間の遺骸について関心が高まった。ベルギーでは2022年6月に植民地文化財の返還に関する法律が議会で成立したが、法律の対象は文化財のみで遺骸はふくまれていない。2022年12月には、植民地コンゴ由来の3体の頭骨がブリュッセルのオークションに出品されるというショッキングなニュースに、広範な批判がよせられた。オークション会社は販売を停止して返還すると声明した。議会でも植民地過去を調査している委員会で、博物館にある遺骸の鑑定と返還について議論が進められた47)

 2020年11月にアフリカ博物館、芸術歴史博物館、自然科学研究所の3人の館長が、博物館や学術機関、個人のコレクションに収蔵されている人間の遺骸について、連邦政府公衆衛生の生命倫理委員会に諮問した。そして委員会の答申レポートが2023年3月に公表された。人間の遺骸は敬意、尊厳、礼儀をもって取り扱うべきだとして、植民地から暴力と残虐性によって取得された遺骸の返還、遺骸とともに副葬品も返還、遺骸返還に関するガイドライン作成、遺骸に関する義務原則の策定、EU内部および第三国との遺骸取引の禁止など、多数の勧告が提案された48)

 植民地から取得された遺骸としてベルギーで有名なのは、コンゴのタンガニーカ湖西岸で奴隷貿易を行なっていたタブワ人(the Tabwa)の首長ルジンガ(Lusinga lwa Ng'ombe)の頭骨である。1884年にベルギー国王レオポルド2世の派遣した軍人エミール・ストームス(Émile Storms)が、彼を殺害して斬首、頭骨を戦利品として持ち返った。

 2018年にルジンガの頭骨が自然科学研究所で発見されたとフランスの週刊誌が報じると、社会的関心が高まり、子孫が返還を求めた。2019年12月からベルギーで博物館や学術機関にある遺骸の目録化プロジェクト(HOME、Human remains Origin(s) Multidisciplinary Evaluation)が進められた。コンゴ、ルワンダ、ブルンジに由来する遺骸が534体あることが判明し、そのうち約半数は、レオポルド2世からベルギー政府に植民地統治が移管されてから、かなり後に持ち出されていた。たとえば1945年から46年の間に植民官フェルディナンド・ファン・ドギンスト(Ferdinand Van de Ginste)は、コンゴ西部クワンゴ州で200基以上の墓を暴いて187体の頭骨を集めた49)

 2024年4月に人間の遺骸返還に関する法案がベルギー議会に提出された。6月の総選挙後に議会で議決となるだろうと予測されている。もしもベルギーで法律が成立すれば、2023年12月のフランスの法律に続いて、ヨーロッパで2番目の人間の遺骸に関する法律となるだろう。しかしコンゴからは、相談もなく法案が作成された、ベルギーは返還基準を一方的に決めることはできないと、不満がよせられている50)

 植民地文化財返還の法律に続いて、遺骸返還の法律もベルギーで制定されると、原産国への返還手続きがより具体化されて、返還が促進されると思われる。


イギリス

 かつて広大な植民地を統治していたイギリス政府は、相変わらず原産国からの文化財返還要求に応答する気配を見せていない。しかし近年オランダ、ドイツ、ベルギーなど他の帝国主義旧宗主国による文化財返還に積極的に取り組む様子は、イギリス政府と大英博物館にとって大きな圧力となっているはずだ。

 文化財返還で毎年つねに世界的注目を浴びているのは、大英博物館にあるパルテノン大理石である。2023年も話題の中心をしめた。まずパルテノン大理石をめぐる動きから見ていこう。

 年のはじめからパルテノン大理石に関する大英博物館とギリシャとの交渉が報じられた51)。前年に大英博物館は、交渉の内容を「パルテノン・パートナーシップ」と称して、パルテノン大理石の貸与によるギリシャへの移動を語っていた。けれども、ギリシャ側はあらためて大英博物館の所有権そのものを否定し、長期貸与による返還を拒絶した。ギリシャ首相キリアコス・ミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)は総選挙を前にして、パルテノン大理石の返還を公約にかかげた52)。選挙の結果与党が勝利し、6月にミツォタキスはふたたび首相に就任した。

 3月にリシ・スナク首相は、イギリスにとってパルテノン大理石は巨大な資産だと明言して、前任者と同様に返還に対して素気ない態度をしめした53)。11月末にミツォタキスがイギリスを訪問したのだが、しかしスナク首相は、28日に予定されていた首脳会談を直前にキャンセルしてしまった。26日のBBC放送で、大英博物館にあるパルテノン大理石は「モナ・リザを半分に切ってルーブルに半分、大英博物館に半分あるようなもの」と揶揄したミツォタキスの発言に、腹を立てたのだといわれている。

 ミツォタキスは27日に労働党党首キア・スターマーとも会談した。スターマーは会談前に、相互に容認できる貸与の取り決めを受け入れると示唆した54)

 イギリスとギリシャの両首脳の会談は実現しなかったが、大英博物館はギリシャに、著名な赤絵式壺をアテネのアクロポリス博物館に短期貸与することにした。大英博物館議長ジョージ・オスボーン(George Osborne)が、パルテノン大理石をめぐってギリシャとの友好的合意を望むと表明していた。大英博物館側は、ギリシャとの文化財の貸し借り、つまりパルテノン大理石を貸与することで返還要求をかわそうとしているのである。

 貸し出される赤絵式壺はメディアス・ヒュドリア(Meidias Hydria)という高さ52cmのBC420年ごろのもので、ヘラクレスなどのギリシャ神話が描かれている。1764年に在ナポリ大使ウィリアム・ハミルトン卿(Sir William Hamilton)がナポリで購入、1772年に博物館が取得して、古代ギリシャ・ギャラリーの主要作品となった。250年たってはじめて貸し出された。12月4日からアクロポリス博物館ではじまる特別展に出品された後、翌年にはルーブル美術館の展覧会でも展示される予定である55)

 結局2023年も、パルテノン大理石をめぐり明白な進展はなかった。

 パルテノン大理石に関して進展はなかったが、大英博物館はオセアニアのアア(A'a)という名称で知られる著名な彫像をタヒチの博物館に返した。所有権移転をともなう返還ではなく、3年ごとの貸与である。タヒチから南側約600kmに位置する小さなルルツ島の人たちの先祖を神格化した像である。高さ117cmの木製像で、30体の小像が頭部や胴部に付いている。

ルルツ島のアア像
the Art Newspaper 2023/04/12)


 3月にフランス領ポリネシアの首都パペーテの博物館が増築再開館されて、大きな展示ホールの目玉品として展示されることになった。

 1821年にルルツの首長たちがキリスト教改宗の忠誠として、他の宗教具とともに木像をライアテア島にあったロンドン伝道者協会の基地に船でとどけた。像はイギリスに移送されて伝道者協会の博物館で展示され、1890年に大英博物館に貸与、1911年に所有権が移された。アア像は、ピカソやヘンリー・ムーアなどヨーロッパの芸術家たちに大きなインスピレーションをあたえ、人類の偉大な芸術創作品の1つと評価されている56)

 ところで8月に、大英博物館内部の学芸員による収蔵品の窃盗事件が発覚し、権威ある大博物館にとって前代未聞の大スキャンダルへと発展した。8月16日に博物館が、名前を伏せたまま学芸員の解雇を突如発表した。続いて各種メディアが、ギリシャ・ローマ部門の学芸員ピーター・ヒッグス(Peter Higgs)が1,500点以上を盗み出して、ネット・オークションのeBayで売却して馘首されたのだと報じた57)

 ヒッグスは30年以上も大英博物館で働くベテランの学芸員だった。2021年にオランダの古美術商コレクターが窃盗の疑いを博物館に通報していたにもかかわらず58)、大英博物館館長ハートウィグ・フィッシャー(Hartwig Fischer)は無視して対応しなかった。フィッシャーは責任を取って8月25日に辞意を表明した59)

 長年にわたり窃盗に気付かなかった原因の一つとして、ずさんな目録管理に目が向けられた。盗まれたのは目録化されていなかった物件だったからである。博物館は800万点を所蔵しているが、200万点は目録への記載登録がもとめられていない。すでに約450万点がデジタル化されているので、さらに130万点のデジタル目録化に5年間の時間と、1,000万ポンドの費用が必要と見積もられた。不十分な目録化・デジタル化の間隙を悪用して窃盗が発生したのである60)

 大英博物館では建物の老朽化も進んで、現在屋根からの雨漏りに悩まされている。ギリシャ神殿を模した新古典主義の建物は、1823年から工事が着手されて1852年に竣工した。歴史的建造物として、イギリスの文化財保存制度の一部である登録建造物(Listed Buildings)のグレード1(Grade I)に指定されている。約50万件あるとされる登録建造物のうち、グレード1の建造物はわずか2.5%しかない。そのため、大英博物館の建物はいわば国宝級の歴史的建造物なのである。

 2023年12月に大英博物館の改築と再展示の基本計画が発表された。全計画の費用は10億ポンド以上、期間も数十年かかると予想された。加えて基本計画のため今後10年間にわたりイギリス石油会社(BP)が5,000万ポンドを寄付すると伝えられて61)、論争が起きた。大量の炭素産出の元凶である石油・ガスの大会社が公共の博物館に巨額な資金を提供することに、グリーンウォッシュだと批判がよせられ62)、建築家たちは博物館のコンペのボイコットを呼びかけ、さらにテート美術館館長も批判した63)

 近年気候危機を訴えて環境活動家たちが美術館で展示名画をよごす事件が相次いでいるように、ヨーロッパでは日本よりもはるかに気候危機に関して認識が高いのだろう。

 大英博物館の大規模な再開発がいつごろ完了するのか見通しがたたない。しかし、とりあえず雨漏りと湿気対策の応急工事が急がれているのだ。論争の的となっているパルテノン大理石を展示する大きな部屋のある西側ギャラリーで、屋根の応急修理が進められている64)

 大英博物館の窃盗事件を契機に、長年にわたり文化財返還をもとめてきた原産の国々が、より強硬に返還を主張しはじめた。というのは植民地文化財を所蔵する西欧博物館は、返還要求を拒否する際に、アフリカなど旧植民地国には文化財保存に適した施設・博物館がない、盗難を防止するしっかりした保管体制がないなど、さほど根拠のない不備を理由にして、西欧博物館の所蔵を正当化してきた。それゆえ大英博物館の窃盗事件とデジタル目録の不全、施設の老朽化は、まさに旧宗主国の大博物館こそが文化財所蔵に適していないことを露呈させてしまったのである。

 当然のごとくギリシャの文化相は博物館の信頼性が疑問だとし、雨漏り状態も批判して、あらためてパルテノン大理石の返還を主張した65)

 ナイジェリアでベニン青銅器の返還を進める国立博物館モニュメント委員会の委員長は、「ナイジェリアにあるとベニン青銅器は安全でないといっていた国や博物館で盗難がおきるとはショックだ」と皮肉まじりに述べて、安全かどうかに関係なく、奪われたものなのであり、ナイジェリアに元あったコミュニティに戻すべきだと付け加えた。新しく就任した文化相が、数週間以内にベニン青銅器の即時返還を大英博物館とイギリス政府に要求するだろうと語った66)

 中国の政府系メディアである『Global Times(環球時報)』が社説で、不適切な経路で取得したすべての中国文物を無償で返還するように、公式に大英博物館に要求した。さらに返還をスムーズに進めるため、法律や他の手段でイギリス政府が協力するように主張した。大英博物館には約2万3,000点の中国文物があり、そのうち女史箴図、遼三彩羅漢像、商周青銅器、魏晉石仏経卷など貴重な文物約2,000点が長期に展示されている67)

 『Global Times』の社説は中国国内で大きな反響を巻き起こし、SNSの微博weiboでハッシュタグ#請大英博物館無償歸還中國文物(大英博物館は無償で中国文物を返してください)#が検索トップとなり、5億回以上の閲読数を記録した68)

 続いてウェールズの政治家たちも、大英博物館にある4000年前の黄金のケープ(the Mold Gold Cape)や、展示されていない3000年前の銅合金の盾(the Moel Hebog shield)の返還を要求した69)

 こうして窃盗事件の発覚で文化財返還の声がますます高まるなか、9月になって中国で大英博物館を舞台にした文化財返還の短編動画がバズった。『逃出大英博物館(大英博物館からの脱出)』というタイトルで、3部作からなり全編で16分あまりの作品である70)

 大英博物館から逃げ出した玉製茶壷の化身である女性が、ロンドンで中国人ジャーナリストに遭遇して故郷を目指すストーリーで、中国版TikTokの抖音Douyinで3億7,000万回再生された。中国人インフルエンサー煎餅果仔と夏天妹妹が独立して制作したものだが、政府系メディアも称賛した。奇しくも政府系『Global Times』の返還要求と歩調をあわせた作品となった。

 しかし中国のソーシャルメディアでは、必ずしも返還に賛同の意見ばかりではなかった。大英博物館に収蔵されている物よりも文化大革命で破壊された文物が多い、ヒロインが戻っても四旧(共産革命前の文化)キャンペーンで紅衛兵に破壊されて文物がまったく残っていないのを発見するなどと、懐疑的意見もみられた71)

 窃盗事件は国会議員たちの間でも話題となった。アフリカ賠償超党派グループ(APPG Afrikan Reparations、the all-party parliamentary group on Afrikan reparations)の議長ベル・リベイロ=アッディ(Bell Ribeiro-Addy)は、パルテノン大理石やベニン青銅器などの返還を阻止する大英博物館法を変えるべきだと考えている。「彼らの最も侮辱的な言い訳の1つは、他の国々がそれらを所有したら管理することもできず、盗まれてしまうだろうというのだ。しかしこの国の人間がeBayに出品しているのだ」。窃盗事件は、問題となっている文化財を原産国に返還するのを拒否する「侮辱的滑稽」を露呈させたと疑っている72)

 アフリカ賠償超党派グループは、アフリカ文化財や先祖の遺骸の返還を促進させるために結成された。返還要求を実施するための指針の確立、財源確保、遺骸展示に関するより厳格なガイドライン、アフリカの文化財と遺骸にホロコースト法(Holocaust (Return of Cultural Objects) Act 2009)に類似した新しい法律を国会議員は考えるべきだ、などと提案している73)。そして10月21~22日にアフリカ人奴隷貿易の修復的司法に関する国際会議(UK Reparations Conference 2023: Charting a Pathway Towards Reparative Justice)を開催し74)、分科会で文化財や遺骸の返還についても論じられた。

分科会-返還:歴史的不正義を正す
略奪された文化財、財宝、遺骸の返還、および法的障害を議論
「イギリス賠償会議2023:修復的司法に向けて道をさぐる」
APPG Afrikan Reparations 2023/10/26)


 前年と変わらずに、2023年もイギリス政府および大英博物館は文化財返還にきわめて冷淡だった。しかしながら政府と関係しない地方自治体や大学の博物館では、次々に文化財返還が進んだ。

 2023年1月に、前年4月にスコットランドのグラスゴー市議会で返還が決議された文化財7点が、グラスゴー生命博物館からインドに送られた75)。イギリスの博物館からインドへ文化財が返還された最初の事例となった。

 同じく1月にダービーシャー州の小さな町にあるバクストン博物館(Buxton Museum)が、カナダのブラックフート・クロッシングのシカシカ・ネイションへ文化財12点を返還した。前年にはカナダ西岸ハイダ・グワイ群島のハイダ・ネイションにも文化財5点を返還した。バクストン博物館は地方の小さな博物館だが、1年間にわたって、所蔵するアメリカ先住民族やファースト・ネイションの文化財51点すべてを、各地の原産コミュニティに返還するプロジェクトを進めていた。先住民族たちから返還要求を待つのではなく、博物館の方から返還を提案したのである76)

 3月にケンブリッジ大学トリニティ・カレッジが、1770年にジェームス・クックが先住民族から奪った槍4本をアボリジニのコミュニティへ返還すると声明した。オーストラリア大陸にはじめて足を踏み入れたクック船長は、カメィ(Kamay、ボタニー・ベイ)で、同意をえないまま先住民族のキャンプから槍を40本持ち出したと記録している。

 クックの航海を支援したジョン・モンタギュー(Lord Sandwich of the British Admiralty、第4代サンドウィッチ伯爵)が、そのうちの4本をトリニティに寄贈して、1771年から大学のコレクションとなった。2022年12月に地元から公式に返還が要求された77)。翌年2024年4月23日にトリニティ・カレッジで返還式典が催行された78)

トリニティ・カレッジからアボリジニに返還された槍
the Guardian 2023/03/02)


 7月にオックスフォード大学ピット・リバー博物館(the Pitt Rivers Museum)が、コレクションをめぐって友好な関係を築けたとして、ケニアとタンザニアのマサイ人に98頭の畜牛を寄贈した。2017年にマサイの人権活動家が博物館を訪問し、父から息子に代々伝えるネックレスやブレスレットなど、世襲の大切な文化財5点を見つけた。これらの物件はイギリス人行政官が入手したものなのだが、マサイの習慣によると決して貸したり、売ったり、手放したりしない。失った家族や子孫は災厄におそわれると信じられている。

 そこでアドバイスをえるため、博物館はマサイの人たちと交流を深める「マサイの生きてる文化プロジェクト(the Maasai Living Cultures Project)」を開始した。2020年にはマサイの人たちがイギリスの博物館を見学し、自分たちの文化財について理解を深めた。2023年には館長らが現地を訪問して教育プログラムや伝統儀式に参加し、そして問題となった家族に牛を贈ったのである。世襲の文化財はマサイの人たちにとって神聖なものである。彼らは返還を希望しなかったのだろうか。博物館のホームページでは、文化財の返還要求を受けていない、もしも返還が要求されたら規定された大学の手続きにしたがうと記されていた79)

イギリスの博物館で自分たちの文化財に対面するマサイの人たち
文化的空間を脱植民地化する
InsightShare 2020/08/06)


 ピット・リバー博物館は、インド北東部周辺に住むナガ人たち(the Naga peoples)と返還に向けて対話を進めている。ナガ人とはインド北東部ナガランド州とミャンマー北部に分布する山岳の先住民族である。

 19世紀にイギリス軍がアッサムから侵入を繰り返したが、ナガ人たちは激しく抵抗した。アジア太平洋戦争末期には日本軍による無謀なインパール作戦の主戦場にもなった。第2次世界大戦後にイギリス軍が撤退する際、インドとビルマの国境線が一方的に引かれ、1947年のインド独立によってナガ人たちは分断されてしまった。インドは独立を主張するナガ人たちを徹底的に武力弾圧して戦闘が続き、1997年にようやくインド政府とナガ人との間で停戦合意にいたった。ナガ人は、いくつもの外圧に抑圧され続けた過酷な歴史を経験している人たちである。

 2020年のブラック・ライブズ・マターの抗議運動をへて、ピット・リバー博物館は植民地主義、人種主義と積極的に向き合い、出所調査、透明性、返還、補償に力を入れている80)。2020年から博物館は、ナガ人の合議体であるナガ和解フォーラム(FNR、the Forum for Naga Reconciliation)と、ナガの文化財や遺骸について協議をはじめた。翌年フォーラムに「回収、復興、脱植民地化(RRaD、Recover Restore and Decolonise)」というナガの遺骸返還に特化したチームも組織された。213体の遺骸と6,466点の文化財をめぐって、癒し・和解・脱植民地化をどのように進めるのか、博物館とナガ人とで話し合いが進んでいる81)

 戻された遺骸をどうするのか?キリスト教に準じて埋葬するのか、キリスト教以前の儀式が良いのか、今やほとんど抑圧されてしまった伝統で死者を追悼できるのか、国立のメモリアルを創って集団で供養するのが適しているのかなど、さまざまな課題が想定されている。まずは、返還の意味についてナガ人たちの間で理解と合意形成を目指して、高齢者から聞き取り調査をしたり、絵本や映像を制作して議論を深めている。

先祖の遺骸とナガの故郷|ピット・リバー博物館
Nagaland Today 2022/09/08)


 8月末にスコットランド博物館から、カナダのブリティッシュ・コロンビアのニスガア・ネイション(Nisga’a Nation)に、高さ約11mの巨大なトーテムポールが返された。前年末に博物館が返還を声明していた。博物館での返還式典後、カナダ軍航空機で運ばれ、9月に現地に到着、受領式典が催行された。トーテムポールは1860年代に制作され、1927年にカナダ人民族誌学者マリウス・バウビュウ(Marius Barbeau)が持ち出し、後にスコットランドの博物館に売却した。約1世紀後に戻ったのである82)

 9月にマンチェスター大学の博物館が、オーストラリア北部のアボリジニのアニンディルヤクワ(Anindilyakwa)に文化財174点を返還した。マンチェスター大学の社会学前教授ピーター・ワースレイ(Peter Worsley)が収集したコレクションで、彼は、博士課程の調査をしていた1950年代からアニンディルヤクワのコミュニティと強い関係を築いた。彼は2013年に死去した。返還されたものは、槍投げ器、樹皮バッグ、貝殻人形など日用品がふくまれている。

マンチェスター大学博物館から返還されたアニンディルヤクワの貝殻人形
the Art Newspaper 2023/09/05)


 マンチェスター博物館は、文化財を活かし将来の世代に伝えるための最良な方法を、アボリジニ・トレス海峡諸島民オーストラリア研究所(AIATSIS、The Australian Institute of Aboriginal and Torres Strait Islander Studies)やアニンディルヤクワ地区議会と3年以上にわたって協議した。その結果、無条件で返還して原産コミュニティのものにしたのである。なおマンチェスター博物館は2019年にも、オーストラリアの先住民族に文化財43点を返還している83)

 1868年にエチオピアのマグダラの戦いで、イギリス軍が戦利品として持ち去った聖なる板タボツ(tabot)が返還された。エチオピア正教会で、タボツは契約の箱(十戒の刻まれた石板を収めた箱)を意味し、聖職者以外決して見ることができない。大英博物館にもタボツが11点あるのだが、地下の収納庫に秘匿され、学芸員ですら見れない。

 返還されたのは個人的に所有されていたもので、ネットで販売されていたのを、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの講師が発見した。彼は販売者に返還を勧めたが失敗し、結局自分で購入して返すことにした。タボツは、9月にロンドンのエチオピア正教会に安置され、近いうちにエチオピアへもどされる84)

 9月に、マグダラの戦いで持ち出された盾やコップ3点、そしてエチオピア王子の髪の毛が一緒にロンドンのエチオピア大使館で返還された。イギリス軍と戦ったエチオピア皇帝テオドロス2世は敗れて自死し、アレマエフ王子(Crown Prince Alemayehu)と母親の皇后は捕らえられてイギリスへ送られた。旅の途中で母親は死亡、王子はヴィクトリア女王の庇護の下で育てられた。しかし彼は胸膜炎のため18歳で死去し、ウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂の墓地に埋葬された。王子の世話人だったイギリス陸軍大尉トリストラム・スピーディー(Capt. Tristram Speedy)の子孫が、家宝のなかから王子の髪の毛を見つけ、遠くニュージーランドからはるばるかけつけたのである85)

エチオピア大使館での返還式典
Embassy Tube 2023/09/22)


 2007年にエチオピア大統領はエリザベス女王にアレマエフ王子の遺骸の返還を要求した。けれども、他の多数の人たちの眠りを荒らさずに掘り出すのは不可能だと、5月にバッキンガム宮殿は遺骸の返還要求を拒否した86)

 博物館からの返還にかぎらず、美術品市場に出品された物件も返還の対象として関心をよんだ。1月にロンドンのサザビーズのオークション目録に載せられた短い石製棒を、ニュージーランドのマオリが返還をもとめた。

 この棒はタオンガ(taonga)という財宝であり、ンガティ・ワツア(Ngāti Whātua)族の首長パオラ・ツハエレ(Pāora Tūhaere)が、イギリス海軍中将に家族にとどめおくことを条件に1886年にあたえたものなので、家族の手から離れるのなら返還されるべきであり、購入する人は返還を考えてほしいと、ンガティ・ワツア・オラケイ人(Ngāti Whātua Ōrākei people)の副議長は語った。残された重要な文化財は少ししかなく、略奪や都市化、移転によってほとんど失われたと、文化財のさびしい事情を述べた。

 サザビーズは、過去にしばしばマオリの物件を販売した。2019年には出所不明の木製彫像テコテコ(tekoteko)が60万8,000ポンド(約8,450万円)で売られた87)

 5月には、インドのティプー・スルターン(Tipu Sultan)が所持していた剣がオークションにかけられた88)。ティプー・スルターンは南インドのマイソール王国の18世紀の王で、イギリスの侵略に激しく抵抗した。1799年に宮殿で東インド会社の軍隊に殺害された時、手の届く範囲に「寝室の剣(bedchamber sword)」があった。剣の柄には金文字が象嵌され、刃には王の剣という金文字やムガール刀鍛冶の印の象嵌がある。剣は戦利品として陸将補ディビッド・ベアード(Major General David Baird)に贈られた。

 かつて2003年にディビッド・ベアード関連品のオークションがあり、寝室の剣は15万ポンドで落札された。今回のオークションでは1,410万ポンド(約24億4,000万円)と、きわめて高額となった。同じ戦場から持ち出された王座を装飾していた虎頭部が、2021年にオークションに出品された。その時は、貴重な文化財だとしてイギリス政府が一時的に輸出禁止に指定したのだが、戦利品だと批判がよせられた89)

 遺骸の返還も続いた。10月にピットリバー博物館とオックスフォード大学自然史博物館が、遺骸11体をオーストラリアのアボリジニのコミュニティに返還した。6体は自然史博物館からで、19世紀に取得された医学人類学コレクションや個人から寄贈されたものだった。ピットリバー博物館からの5体は1887から1917年に、ほとんど個人寄贈者から入手した。全部で30体返還するという博物館とオーストラリア政府との合意にもとづき、その一部が返還された90)

 11月にはエディンバラ大学から台湾のパイワン族に戦士の頭骨4体が返還された。1874年に日本軍が台湾出兵でパイワン族の牡丹社などに侵入して半年間占領した。多くの犠牲者が出て、戦利品として頭骨が持ち去られた。

 軍事顧問として日本軍に従軍したアメリカ軍将校が頭骨を日本へ持ち出し、その後30年間は、横浜に暮らすアメリカ人医師で頭骨コレクターのスチュアート・エルドリッジ(Stuart Eldrige)と、カルカッタのインド博物館で初代学芸員となったジョン・アンダーソン(John Anderson)の所有となった。それからエディンバラ大学学長ウィリアム・ターナー(William Turner)に寄贈されて、1907年に到着した。大学には、イギリス帝国中から収集したターナーの膨大な頭骨遺骸コレクションがある。最初の返還は75年以上前で、最近は2019年に、植民地時代の1880年代にスリランカから持ち出された先住民族の頭骨9体を返還した91)

 2021年11月に台湾の原住民族委員会から返還要求が出され、台湾先住民族にとって国際的に遺骸が返還された最初の事例となった。

エディンバラ大学で返還式典に出席した台湾牡丹郷の人たち
the University of Edinburgh 2023/11/07)


 ところで2023年は、5月6日にチャールズ3世が国王に即位する戴冠式が執り行われ、イギリスにとって重要な年だった。戴冠式はイギリス王室の権力と富を世界に誇示する一大セレモニーでもあり、王室に伝わる数々の宝物が話題となった。宝物にはイギリス帝国主義時代に世界中から入手した貴重な物品も多数ふくまれていて、70年ぶりの戴冠式を機会に原産国から返還の声が上がった。

 2022年9月8日にエリザベス女王2世が死去すると、世界最大のダイヤモンドとされる「偉大なアフリカの星(the Great Star of Africa)」、カリナンIの返還が南アフリカで議論された。3,106カラットの大きなダイヤモンドが1905年に南アフリカのプレミア鉱山で見つかり、鉱山を3年前に発見したトーマス・カリナン卿(Sir Thomas Cullinan)にちなんで、カリナンと名づけられた。宝石はトランスバール政府が購入し、1907年にエドワード7世へ66歳の誕生日プレゼントとして贈呈された。

 オランダのアムステルダムのアッシャー社がダイヤモンドをカットし、9個の大きな塊と96個の小塊に分割された。最大の530.2カラットのカリナンIは、エドワード王によって偉大なアフリカの星と名づけられ、王笏に付けられた。2番目に大きい317.4カラットのカリナンIIは大英帝国王冠(the Imperial State Crown)に付けられた。

大英帝国王冠を戴冠し、王笏をもつチャールズ3世国王
カリナンIは王笏の先端、カリナンIIは王冠の正面下帯に付けられている
BBC JAPAN 2023/05/06)


 南アフリカ大学のアフリカ政治教授エベリスト・ベニェラ(Everisto Benyera)は、「植民地の取引は違法であり、不道徳である」「トランスバールと南アフリカ連邦、そして付随する鉱山企業連合の全部が違法である。盗まれたダイヤモンドを受け取るのは受領者の潔白を証明していない。偉大な星は血のダイヤモンドだ...私企業、トランスバール政府、大英帝国は植民地制の大きなネットワークの一部だ」と語った92)

 イギリス王室の王冠を飾るもう一つの有名なダイヤモンドは、インド産「コ・イ・ヌール(Koh-i-Noor)」である。パンジャーブのシク王国を解体させた1849年のラホール条約で、コ・イ・ヌールは、まだ少年だったラホールのマハラジャから、イングランド女王に差し出すように規定された。翌年イギリスに到着した後、ダイヤモンドはビクトリア女王のためにブリリアントカットにカットされて105.6カラットとなった。女王あるいは王妃のみが身につける習慣があり、ビクトリア女王以後は、アレクサンドラ王妃、メアリー王妃、エリザベス王妃(エリザベス皇太后)がそれぞれ戴冠式で王冠にコ・イ・ヌールを付けて現れた。

 カミラ王妃は、今回の戴冠式にコ・イ・ヌールを装着せずに、代わりにカリナン・ダイヤモンドをメアリー王妃の王冠に付けて再利用することにした。18世紀以来王妃は戴冠式に新しいきらびやかな王冠を発注してきたのだが、カミラ王妃ははじめて古いものを再利用した。一方エリザベス女王が死去するとインドではコ・イ・ヌールが争点となり、モディ首相のインド人民党のスポークスマンは、もしもカミラがコ・イ・ヌールを身に付けたならば、インドに大英帝国の日々が逆戻りするだろうと述べた。戴冠式でカミラ王妃は持続可能性の観点から古いものを再利用しただけでなく、インドとの外交関係も配慮したと見られている93)

 現在コ・イ・ヌールはエリザベス皇太后王冠に付けられたまま、多数の宝物とともにロンドン塔で展示されている。新しい展示替えによって、コ・イ・ヌールは「征服のシンボル」、子供の所有者が「強制されて」引き渡してからイギリスが取得したと、説明されているそうである94)

エリザベス皇太后王冠
the Royal Collection Trust


 数奇な歴史をたどったコ・イ・ヌールは、インドだけでなく、パキスタン、イラン、アフガニスタンからも返還要求が出されている。

 2023年もイギリス政府と大英博物館は返還に消極的だった。しかしながら他の博物館などで前年と同様に絶えることなく次々に返還が続いた。ヨーロッパの他の帝国主義旧宗主国と同様に、イギリス社会でも文化財返還がより常態化しつつあるといえるだろう。


ヨーロッパの他の国々

 アイルランド

 ロンドンのハンター博物館(the Hunterian Museum)で展示されていたアイルランド人の遺骨が問題視された。ハンター博物館は医学系博物館で王立外科医師会(the Royal College of Surgeons of England)の一部であるが、独立して運営されている。5年間の再開発の後に3月に再開館することになった。問題となったのは巨人症で身長7.7フィート(約2.31m)となったチャールズ・バーン(Charles Byrne)の骨で、1月に出された博物館の声明によると、展示から外すが、将来の研究のために遺骸を保持すると決定したからである。

 バーンは「アイルランドの巨人」と自らを見世物にしていた。そして、死んだら解剖学者たちに身体を没収されないように、海に埋葬してほしいと語ったといわれている。しかしながら1783年に22歳で死亡すると、彼の死体を博物館創設者で外科医・解剖学者のジョン・ハンター(John Hunter)が入手した。埋葬のために船に遺体を乗せる途上で、ハンターが、バーンの友人たちに500ポンドの賄賂を支払ったといわれている。バーンの骨はハンター・コレクションで最もよく知られた解剖標本として、200年以上にわたって公開展示されていた。

 バーンの遺志を尊重して遺骨を解放して埋葬するように、長く世論が続いている。博物館側は、18世紀と19世紀の外科医・解剖学者たちは、今日では倫理的に考えられないような方法で多数の標本を手に入れた。バーンの遺志は伝えられているが、書かれた証拠がまったく存在しないと主張した。医学専門家たちの間でもバーンの遺骸保持をめぐって意見が分かれている95)

 2月にアイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンが、アイルランド・ゴールウェイ県の小さな島イニスボフィンから1890年に持ち出された頭骨13体を返還することにした。人類学者アルフレッド・コート・ハッドン(Alfred Cort Haddon)と、後にトリニティの教授となった彼の解剖学の学生アンドリュー・フランシス・ディクソン(Andrew Francis Dixon)が、島の中世の修道院廃墟から数十の頭骨を見つけ出して、13体を選んだ。ハッドンは日記で、うわべは漁業調査をよそおいつつ、修道院での盗掘を豪胆な冒険のように記述していた。2人は、頭骨を入れた袋をアイルランドの密造酒が入っているのだと、船の乗組員に偽っていた。

 彼らは頭骨20体をトリニティに引き渡した。13体はイニスボフィンから、残りはケリー県のアラン諸島とセントフィニアン湾からのものだった。アイルランド西海岸の島民たちは、アングロ・サクソンや他の部外者と混血していない土着人種の子孫だという説が19世紀に流行し、頭骨の計測分析に関心がよせられていた。

 地元の人たちにとって頭骨の盗掘は植民地時代の暴力であり、歴史家や人類学者が盗まれた頭骨の返還運動に取り組んだ。そして7月に、返還された頭骨は地元の人たちによって手あつく再埋葬された96)

 フィンランド

 4月にフィンランドがナミビアに聖なる石を返還した。石はナミビア北部オンドンガ王国(the Kingdom of Ondonga)のパワー・ストーンで、1886年にフィンランド人伝道者マルッティ・ラウタネン牧師(Rev. Martti Rautanen)とスイス人探検家・植物学者ハンス・スキンツ(Dr Hans Schinz)が2破片を持ち去った。1926年にラウタネンが死去すると、彼の資料は伝道者協会の新しい民族博物館へ移された。2013年に伝道者協会の博物館が閉館され、2015年にコレクションがフィンランド国立博物館に寄贈された。

 2015年にナミビア博物館協会の代表がフィンランド博物館を訪問して写真を見せられ、パワー・ストーンを確認した。そこで返還に向けて交渉が進められた。戻されたパワー・ストーンはナミビア国立博物館におかれ、その後オンドンガのコミュニティに返還される97)

 スイス

 スイスでも植民地時代に持ち出された文化財の返還が行なわれた。2月にジュネーブの民族博物館(Musée d'ethnographie de Genève)が、アメリカとカナダの国境をまたいで暮らす先住民族ホーデノショーニー連邦(the Haudenosaunee Confederacy、イロコイ連邦)に、聖なる文化財とされる医療仮面と音を鳴らす道具の2点を返還した。1825年にスイスの歴史家・政治家が博物館に寄贈した。

 前年7月にガラス・ケースのなかに仮面と道具が展示されているのを、カナダから訪れた先住民族が見つけ、展示から外すように館長に申し入れた。すると即日博物館は実行した。その後先住民族側から公式に返還要求が出され、ジュネーブ市が、ホーデノショーニー連邦が所有者だと公式に認めて返還が実現した。

 近年民族博物館は、伝統的コミュニティを招待し協力しながら返還できる物件を割り出している。人間の遺骸や副葬品、聖なる物を優先したいと語っている98)

 ベニン青銅器についても関心が高まっていて、返還に向けて調査が進んでいる。チューリッヒのリートベルク美術館(Rietberg Museum)の主導で、2021年にスイス・ベニン・イニシアティブ(SBI、the Swiss Benin Initiative)が開始された。2月に調査成果として、スイスの公共コレクションに収蔵されているベニン青銅器に関するレポートが公表された。

 8館の美術館・博物館でベニンの文化財が96点展示されているが、そのうち21点が1897年のイギリス軍懲罰遠征で宮殿から略奪されたものだった。筆記された証拠はまったくないが、おそらく1897年の略奪品と思われる物件が32点あった。スイスで展示されている約半数が略奪品と認識され、判明した物件のナイジェリアへの返還が想定された。ナイジェリアとさらに関係を深めて拡大調査が進められている99)

手がかりを探す-スイス・ベニン・イニシアティブ|リートベルク美術館
Museum Rietberg 2022/06/15)


 11月にジュネーブの民族博物館が3体のミイラをボリビアに返還した。1100年から1400年に属する大人2体と子供1体のミイラで、標高4,020mの鉱山町コロコロ(Coro Coro)から出土した。1893年に首都ラパスのドイツ人領事が、所有者の同意も輸出入の公的許可もないままジュネーブの地理学会に送った。領事の兄弟が1895年に市の考古学博物館に寄贈し、6年後に民族学博物館のコレクションとなった100)

 オーストリア

 オーストリアでは、前年1月に設置された植民地文化財返還ガイドライン作成諮問委員会が、学術評価委員会の設置、国と国との関係にもとづく返還など20項目を、6月に政府に勧告した。勧告を受けて文化相アンドレア・マイヤー(Andrea Mayer)は、2024年3月までに法案提出を目標にする、出所調査の年間予算を倍にして32万ユーロにしたいと語った101)

 10月にオーストリア科学アカデミーが、オーストラリアの墓地から盗まれた先住民族の遺骸6体を返還した。オーストリアの民族学者・人類学者ルドルフ・ペヒ(Rudolf Pöch)が、1905年に科学アカデミーとウィーン大学のためにオーストラリアに旅行し、墓を暴いてアボリジニの遺骸を入手した。数十の遺骸をオーストリアに持ち帰り、そのうちの47体が2009年から2011年の間にオーストラリアに返還された102)

 バチカン

 バチカンは3月末に、アメリカやアフリカ、その他の地域で数世紀にわたって先住民族から土地を奪うことを正当化した「発見のドクトリン(Doctrine of Discovery)」を公式に否定した。この教義は、15世紀の教皇の文書をもとに、入植者による土地の発見は、先住民族の土地の所有権もしくは占有を、購入または征服によって消滅させて独占権をあたえるという「発見」の法的概念であった。

 16世紀以降植民地の宗主国によって議論され、19世紀にいくつかの国の裁判所の法学でとくに表現された。先住民族の土地を没収して植民地化させ、人々を支配する機能をはたしたとして、先住民族たちが数十年にわたって教義の撤回をもとめていた。

 2021年に、カナダでカトリック教会の運営していた先住民族の寄宿学校から、失われた子供たちの遺骸が大量に見つかった。カトリック教会のはたした役割を謝罪するため翌年夏にカナダを訪問したフランシスコ教皇は、先住民族たちが発見のドクトリンを問題視しているのに直面せざるをえなかった。そこでドクトリンの再検討が行なわれて、公式に否定されたのである103)

 ドクトリンの否定に続いて4月末に、フランシスコ教皇は、バチカン博物館にあるカナダ先住民族の文化財返還を進めると語った。フランシスコ教皇のカナダ訪問準備のため、先住民族グループたちがバチカンの民族博物館(Anima Mundi)を訪問してコレクションに興味をしめし、いくつかの返還を伝えたのである。植民地時代の文化財返還について話し合い中だと、教皇は述べた。返還問題に関するはじめての教皇のコメントは、欧米の博物館に民族学・人類学コレクションの再考をもたらすだろうと指摘された104)

 ヨーロッパでは、帝国主義旧宗主国以外の国々でも、植民地時代に取得した文化財や遺骸の調査と返還が進んでいる。過去に直接植民地を統治していなくても、他国の植民地から不正に持ち出された文化財を原産国に戻して、歴史的不正義を是正するという文化財に関する倫理が、ヨーロッパ全体で共有されているのである。


アメリカ

 アメリカでは、アメリカ先住民族墓地保護返還法(NAGPRA、the Native American Graves Protection and Repatriation Act)の改正をめぐって、先住民族の遺骸や副葬品の状況が広範に論議された。内務省は2022年10月にNAGPRAの改正を告知し、2023年1月12日までパブリック・コメントを受け付けた。その後先住民族の関係者たちと討議して最終規則が2023年12月に公表され、2024年1月12日から施行された105)

 法律改正の目的は、先住民族の遺骸や副葬品を迅速に返還することにある。1990年に制定されたNAGPRAは、連邦資金を受領している大学や博物館などの施設が遺骸や副葬品の目録を作成して、先住民族に返還することを規定している。

 会計検査院によると、1990年以後に報告された208,698体の遺骸のうち、2022年までに返還されていないのが52%あり、2,619,951点の副葬品のうち29%が返還されていない106)。30年たってもまだ半数の遺骸が戻されていない状態だった。バイデン政権になって、はじめて先住民族出身の内務長官が誕生し、返還問題の解決が進められたと考えられる。

 改正された論点は多岐にわたり107)、ここで詳述するのは差しひかえたい。いくつかの要点として、遺骸や副葬品を展示・利用・研究するにあたって先住民族から同意をえる義務を所蔵する博物館や大学などの施設に課すこと、遺骸との関連性を地理的に特定できることなどをあげられるだろう。

 法律改正と並行して、調査報道で有名な『ProPublica』が「送還プロジェクト-返還が遅れる先住民族の遺骸(The Repatriation Project-The Delayed Return of Native Remains)」という特集を組んで、一連の記事で返還問題の実態を詳しく報じた108)。そして多数の遺骸や副葬品を所蔵する博物館や大学の実態が、次々に明らかにされていった。

 スミソニアン博物館は、アメリカで一番多く遺骸を収蔵している施設だといわれている109)。しかしながらスミソニアンから先住民族への遺骸返還は、NAGPRAではなく、別の連邦法である1989年のアメリカ・インディアン国立博物館法(the National Museum of the American Indian Act)に準拠して実施され、5,000体以上が返還されたという。

 8月にワシントン・ポスト紙が、スミソニアン自然史博物館が255個の脳をふくむ30,700点の人体部位を所蔵していると報じた。収集を主導したのは、1903年から1941年まで形質人類学部門の初代学芸員だった人類学者アレス・ハードリチカ(Aleš Hrdlička)で、彼は人種差別的優生学の観点から解剖学的違いを研究するために人体標本を集めた。標本の大半は本人やその家族の同意を得ずに入手し、とくに彼は先住民族や有色人種の遺骸に関心をよせていたと見られている110)

 ワシントン・ポスト紙の報道によると、スミソニアンには予想をはるかに超える数量の人間の遺骸が収蔵され、しかも白人至上主義の似非科学にしたがい、その多くが非倫理的手法で集められていたのである。

 報道を受けてスミソニアンの事務局長ロニー・バンチ(Lonnie G. Bunch III)が、学術の名の下で行なわれたスミソニアンの非倫理的活動に謝罪した。あわせて年の前半に遺骸問題に取り組む「人間の遺骸作業部会(Human Remains Task Force)」を設置したことも述べた111)

 そしてスミソニアンの人間の遺骸作業部会が、翌年2024年1月10日にレポートを公表した。倫理原則にもとづいて、遺骸の返還をはじめ、同意のない遺骸を展示しない、研究は明確な同意のある遺骸にかぎる、子孫同定のため遺骸の破壊分析をすべきでない、子孫が見つからなければ適切な出身コミュニティにゆだねる、ハイレベルな委員会による監督と報告等々、多数の勧告を事務局長に提示した112)

 ニューヨークのアメリカ自然史博物館(the American Museum of Natural History、AMNH)では、10月11日に新しいコレクション政策が採択された。4月に館長に着任したショーン・ディケーター(Sean Decatur)が、新しい政策をうけて翌日に、人間の遺骸の取扱い方法を改めることを公表した。

 自然史博物館には約12,000体の遺骸コレクションが人類学部にある。そのうち約26%がアメリカ先住民族の人骨で、1,200体は連邦政府のために博物館で収蔵し、2,200体がNAGPRAにしたがって処理された。今までに約1,000体を返還し、約200体を国際的に返還した。残り74%の大半は世界中から、考古学調査や個人コレクターなどさまざまな由来から調達された。約400体は地元の医学校からもたらされ、解剖学研究で使用された遺体である。

 研究のため医学校に遺体が遺贈されたわずかな例外を除いて、個人的同意が博物館コレクションにまったくないことを認識しなけれがならない。人間の遺骸コレクションは権力の極端な不均衡によって可能だった。しかも19世紀から20世紀にかけて研究者の間で白人至上主義が横行し、1921年にはわが博物館で第2回優生学会議が開催されたのだ。

 差別を推進させた研究は道義的混乱をもたらし、学術的にあからさまな不正だったと館長は断じた。その上で彼は、人間の遺骸が常設展示されている12ケースから遺骸を外すように指示した113)

 館長の指示に続いて、芸術紙ハイパーアレルジック(Hyperallergic)とニューヨーク・タイムズ紙が自然史博物館の遺骸問題を詳細に報じた114)。たとえば前述したドイツ植民地支配に反抗して、1900年3月2日にタンザニアで処刑された19人の遺骨の一部が、アメリカの博物館で見つかった。

 処刑されたメル人(the Meru people)の首長マンギ・ロブル・カアヤ(Mangi Lobulu Kaaya)の遺骸は、ベルリンのフェリックス・フォン・ルシャンへと移送された。その後1924年に自然史博物館がルシャンの未亡人から購入した人骨200体と頭骨5,000体のなかに、ロブルの遺骸がふくまれていた。今時の子どもたちがポケモンカードを交換するように、研究者たちは人間を取引していたのである。

 カルフォルニア大学バークレー校は9,000体のアメリカ先住民族の遺骸を所蔵している。初代人類学教授アルフレッド・クローバー(Alfred Louis Kroeber)は、世界的に著名な文化人類学者で、在職40年間に先住民族の墓地を発掘した。

 大学のハースト人類学博物館(Phoebe A. Hearst Museum of Anthropology)は、大英博物館やハーバード大学に競り合って、数十年にわたって先住民族の遺骸と副葬品を貪欲に収集した。遺骸コレクションの大部分はカルフォルニアの神聖な先祖の遺跡からもたらされた。

 アウストラロピテクスの化石骨「ルーシー」やアルディピテクスの「アルディ」の発見で世界的に有名な古人類学者ティム・ホワイト(Tim D. White)は、1977年に人類学部に加わり、長年にわたって先住民族の遺骸を教材にして人類学の授業を行なっていた。

 1990年にNAGPRAが制定されると、すぐさま先住民族たちは遺骸返還を要求するのだが、多くの部族は連邦によって認証されていないため、返還を求める資格がなく(州内183部族のうち68部族が未認証)、NAGPRAに準拠した返還は不可能となり、多数の遺骸がコレクションにとどまったままなのである115)

 6月に州の会計検査官も、カルフォルニア大学のずさんな管理と返還の遅滞を厳しく批判した。23あるキャンパスのうち21キャンパスにNAGPRAに該当するコレクションがあり、そのうち12キャンパスでは1995年後半までに再調査を要求されていたにもかかわらず、十分に行なっていなかった。関連するコレクションのわずか6%しか先住民族に返還されていない。

 大学にはNAGPRAを優先するコンプライアンスが欠けていて、法律にしたがって返還に必要な全般的方針、財源、人員が欠けていると指摘した。そして、返還を適切に進めるための法律、遺骸と文化財をすべて確認するため学長室はコレクションの再調査を監督し、2024年12月までに目録を完成させること、先住民族に敬意を表しつつ有意義で時宜にかなった話し合いを通じて、先住民族たちとキャンパスとの協議を学長室は確保すること等々の勧告を提案した116)

 NAGPRAの改正と当時に、先住民族の遺骸や副葬品を大量に所蔵している3ヶ所の学術機関の問題点が詳細に報道され、さまざまな勧告も提案された。改正されたNAGPRAやスミソニアンの作業部会の勧告には倫理的普遍性がうかがえ、アメリカ国内に限らず、世界的に共通するグローバル・スタンダードになる可能性がある。

 NAGPRAの改正論議とは別に、2023年も先住民族へ具体的な返還が続いた。

 インディアナ州のアマチュア考古学者が1940年代から2000年代にかけて収集した膨大な違法文化財が2014年に発見され、FBIによって押収された。押収された物件の中から、2022年11月に450体の遺骸が、サウスダコタのオグララ・スー・ネイション(the Oglala Sioux Nation)とミシガンのポタワトミのポカゴン部族(the Pokagon Band of Potawatomi)に返還された。

 FBIは、押収した500体以上の人間の遺骸を約8年間で整理して、返還を実現させることができた。数十年経ってもNAGPRAに関連する大学や博物館による返還が進んでいないことから、FBIによる今回の迅速な返還は、先住民族から称賛をうけた。FBIは先住民族のコミュニティと密接に相談して、作業を進めた。先住民族の関係者は、FBIの返還は大学や博物館のモデルになると語った117)

 マサチューセッツ州では、NAGPRAによる州の調査が2023年1月に終わり、博物館から先住民族のワンパノアグ(the Wampanoag Confederation)へ、313体の遺骸を返還することになった。その後さらに39体が見つかり、合計352体となった118)

 2月にニューヨーク州のコーネル大学が、約60年前に墓地から掘り出されたオネイダ人(the Oneida people)の遺骸3体と副葬品22点を返還した。1964年にブルーム郡で排水路を掘っていた土地所有者が遺骸を発掘した。掘っていた場所は、オネイダ人の数世紀にわたる大集落遺跡の近くだった。土地所有者は警察に連絡して、鑑定のため遺骸をコーネル大学の人類学者に運んだ。人類学者が2014年に死去すると、遺骸は大学の人類学部へと移された119)

コーネル大学でのオネイダ人返還式典
Oneida Indian Nation 2023/02/23)


 同じくニューヨーク州にあるロチェスター博物館科学センター(the Rochester Museum and Science Center)が、8月に19体の遺骸と副葬品をオネイダ人に返還した。遺骸は1828年から1979年の間に少なくとも6か所の墓地遺跡から掘り出された。博物館による発掘や、寄贈、購入によって博物館は取得し収蔵していた。

 博物館議長のヒラリー・オルソン(Hillary Olson)は、「アメリカ先住民族の先祖と彼らの所有物について発掘、収集、研究、展示をふくめ、有害な習慣を長らく続けて来ました」「この返還は過去を変えることをできません。しかし公正に向けて小さな一歩になることを望みます」と語った120)

 4月にテネシー川流域開発公社(T.V.A.、the Tennessee Valley Authority)が、5,000体近い遺骸の返還を声明した。テネシー川流域開発公社は、世界恐慌に対応するニューディール政策で、失業対策としてテネシー川流域で42か所のダム建設をはじめ、大規模な公共開発事業を実施した政府機関である。現在多数のダムや水力・火力発電所以外に、原子力発電所3ヶ所を運営して電力を供給している。

 ダム建設などの開発にともない膨大な数量の先住民族の墓地が発掘された。T.V.A.は14年前の2009年から調査を開始し、少なくとも4,871体の遺骸を集計した。4月28日からアメリカ中の先住民族は遺骸の返還を要求することが可能で、1,000点以上ある副葬品も返還すると語った。収集された遺骸や、土器、髪飾りなど副葬品の一部は、南部の大学や博物館に寄贈され、アラバマ大学、ケンタッキー大学、ミシシッピー州立大学、サザーンイリノイ大学、テネシー大学で収蔵されている121)

 年の暮れに『ProPublica』は、2023年に博物館、大学、政府機関が、前の2年間を合計した以上の380件もの返還告知をしたと報じた。過去30年間のどの時点とくらべても多数の、先祖の遺骸と聖なる物の返還が告げられた。内務省のNAGPRAプログラムのマネージャー、メラニー・オブリ(Melanie O’Brien)は「あらゆる点で新記録の年だ」と述べた122)

 2023年は、先住民族への返還件数が増えただけでなく、目録の完成、先住民族との対応、倫理的姿勢などが劇的に改善されたのである。改正されたNAGPRAが2024年1月から施行されるので、さらに返還が推進されると考えられる。

 アメリカ国内のセトラー・コロニアリズムに関連して、先住民族に向けての返還に大きな変化がうかがえたのだが、さてそれでは、アメリカ国外への返還についても見てみよう。

 6月にカルフォルニアのサンタ・バーバラ自然史博物館が、ペルー先住民族の遺骸2体を、ロスアンゼルスのペルー総領事館に返還した。遺骸は、1877年にリマ郡北部のアンコン墓地遺跡(the Ancón Necropolis)から、フランス人考古学者レオン・デセサク(Léon de Cessac)が発掘した。彼は遺骸を1878年にサンタ・バーバラ州立大学に寄贈し、さらに1925年に自然史博物館に寄贈された。自然史博物館ではNAGPRAにもとづいて、カルフォルニアおよびそれ以外の、すべての先住民族の遺骸と副葬品の返還に積極的に取り組んでいる123)

 12月にスミソニアンの自然史博物館からオーストラリアへ、アボリジニの遺骸14体が返還された。自然史博物館がアボリジニの先祖の遺骸を返還するのは、2008年から数えて4回目である124)

 2023年のアメリカから国外への返還には、先住民族への遺骸返還の他に、大きな動きは見られなかった。


カナダ

 カナダでもアメリカと同様に、先住民族への返還が続いた。

 2月にカナダ南西部ブリティッシュ・コロンビアの州都ビクトリアにある王立博物館(the Royal British Columbia Museum)から、州内ベラ・クーラのニューホーク・ネイション(the Nuxalk Nation)へ、トーテムポールが返還された。1800年代半ばに制作され、ロングハウス入口のポールとして使用され、その後に墓地標となった。天然痘が流行して先住民族たちが土地を離れていた時期、1931年に墓地遺跡から持ち出され、45カナダ・ドルで博物館に売却された。2019年に世襲首長が博物館で見つけ、数年の討論の後、返還を早めるために2022年に訴訟を起こした125)

家の入口から墓地に移設された
ニューホークのトーテムポール 1913年
Royal BC Museum


 同じく2月に、先住民族クリー族(Cree)のすぐれたリーダーとして著名なパウンドメーカー(Poundmaker)の装飾鞍と儀式用パイプが、オンタリオ王立博物館(the Royal Ontario Museum)から子孫へと返還された。パウンドメーカーは、先住民族とカナダ政府との紛擾となった1885年の北西反乱(North-West Rebellion)で逮捕され、反逆罪で投獄された。3年間の刑を宣告されたのだが、服役1年後の釈放直後に死亡した。2019年にジャスティン・トルドー首相は彼の潔白を証明して、謝罪した。返還された装飾鞍は1924年に博物館が取得し、土製パイプは1936年に購入された126)

 カナダでも、先住民族の文化や歴史を回復されるための返還だった。


おわりに

 2023年の特徴として、まず第1にあげられる点は、返還の対象地域がアフリカからアジアへと拡大されたことである。2017年にフランスのマクロン大統領はアフリカのブルキナファソで、アフリカ文化遺産返還の歴史的声明を発した。翌年公表されたサルとサヴォワによるフランス文化財返還の画期的レポートも、アフリカを対象にして論じられた。そして欧米の各地からナイジェリアへベニン青銅器の返還が相次いで実現している。

 返還の波はアジアにもおよび、オランダからインドネシアとスリランカへと、大量の文化財が返還された。イギリスでは、インドとミャンマーの国境をまたいで居住しているナガ人への返還議論が進められている。また日本軍の台湾侵略とともに持ち出された先住民族戦士の頭骨が、エディンバラ大学から台湾の牡丹郷に返還された。

 1900年の義和団事件で中国からドイツに持ち出された文化財について、ドイツの博物館による調査プロジェクトが2021年からはじまった。2023年2月にワークショップ、2024年2月には国際会議も開催され127)、ドイツから中国への返還も近い将来に実現する可能性がある。

 日本帝国が西欧列強と競って侵略し領地を奪い合った東アジアにも、ヨーロッパから文化財が返還されると思われる。

 第2の点は、人間の遺骸について各国で関心が高まったことである。ドイツとアメリカで調査と返還が進展し、またフランスでは遺骸に関する法律が制定され、ベルギーでも法制度が整備されつつある。

 とくにアメリカではブラック・ライブズ・マターの抗議運動や、先住民族出身女性がはじめて内務省長官に就任したことなどから、先住民族の文化や歴史の回復に大きな改善が見られた。遅々として返還が進まないおもな原因の1つだったNAGPRAも抜本的に改正された。今後は改正されたNAGPRAをはじめ、ブラック・ライブズ・マターの抗議運動による人権意識の高まり、一層深化された倫理によって、人種主義と植民地主義の残滓である遺骸コレクションの解体と返還が進むだろう。

 アメリカで大量の遺骸返還が実行されるなか、遺骸との関連性を地理的に考慮する、遺骸や副葬品を展示・利用・研究するには先住民族から同意をえる、遺骸の破壊分析をしない、敬意を表しつつ先住民族たちと協議するなど、新しい規範が徐々に適用されている。

 先住民族と所蔵機関との間で対話や和解をかさね、遺骸返還に関する理念、方法、倫理は、さらに洗練されて、アメリカ以外にも世界中に影響をおよぼすと思われる。

 第3の点は、原産国の人々や研究者を交えながら多くの国々で出所調査が進められていることだ。2018年のフランスの文化財返還レポートが公表されて以来、各国で予算が用意され出所調査がはじまった。これまでに調査成果として多数のレポートが公表され、国際会議も多く開催されている。

 調査レポートや国際会議によると、出所調査には、つねに原産国側の研究者、ディアスポラ、地元のコミュニティなどが参加していることが分かる。戦争責任、植民地責任を意識しながら、文化財をめぐって対話を深めているのだ。植民地文化財の調査は、原産国側との協力なくしては不可能といえるだろう。

 2018年にフランスで画期的な文化財返還レポートが公表されてから、以来毎年欧米の動向をまとめてきた。年を追うごとに返還の質や量が増大して内容も複雑となり、1年間の動向をまとめる作業は長時間を要するようになった。

 しかしながら日本では返還について微動だもせず、情報は皆無といってよかろう。あたかも日本では時間が止まってしまったかのように、世界からの遅れを痛感せざるをえない。

 もちろん日本に、返還に相当すると想定される文化財が無いわけではない。かつて西欧列強諸国の後塵を拝して日本も帝国主義宗主国になったのであり、西欧列強と競いながら侵略戦争を重ね、植民地支配を強制的に確立していった。したがって日本でも、現在欧米で真摯に検討されている文化財問題が存在するわけだが、まるで何事もないかのようになかなか話題にもならない。

 日本で戦争責任、植民地責任の意識の希薄なことが、文化財返還の世界の流れから落差を感じさせる原因の一つなのだろう。

 日本では2023年11月から連日のように政治家たちの裏金問題が報じられている。もともと政治と金の問題は30年前から論じられてきたにもかかわらず、いまだに決着していなかったことが明白となった。そして批判を受けてあわただしく法律などを改正しても、政治と金の問題がにわかに解決するとは多くの人々が信じていない。将来同じような疑惑がふたたび世間を騒がせるに違いないと予想される。つまり日本の権力者・為政者たちの問題解決能力に疑問をいだかせる状況といえる。

 見つからなければ大丈夫、法律に違反しなければ問題ない、起訴されなければ差支えないという行動規範が、政権をになう政治家たちの活動を支配しているように見える。本来権力者や為政者とは公正・公平の模範を社会にしめすべき人たちだろう。ところが日本の政治家たちは、公正・公平の倫理がうすらぎ金銭や利権に左右されていると指弾されても、自らを矯正する能力が低いのだ。

 ヨーロッパの帝国主義旧宗主国では、社会を不安定にする分断や対立、差別を克服するため、公正・公平の理念にもとづいて戦争責任、植民地責任が認識され、脱植民地化が進められている。文化財返還も歴史的不正義を是正するという倫理から進められている。公正・公平の倫理意識の低い日本では、戦争や植民地から奪ってきた文化財を元にもどすという脱植民地化がなかなか広がらないのだろう。

 社会指標などで世界のすう勢と日本とをくらべると、人権、男女平等、気候危機対策、エネルギー転換、産業構造の転換、DX、輸送手段の転換、一人当たりGDP、低賃金、教育投資、社会保障、財政悪化、食糧自給などさまざまな分野で日本の停滞ないし遅れが目立つ。問題解決能力の乏しい日本で、喫緊の諸課題が次々に山積みになっているのである。「失われた三〇年」というよりも、衰退の三〇年、国力低下といった方がよかろう。

 衰退のスパイラルに落ち込み内向きになりがちな日本で、世界の動きを注視しつつ文化財の返還を主張することは、きわめて重要だと考えられる。近年国際社会で日本の存在感が薄れるなか、日本政府は軍事的威圧によって近隣諸国を承服させようとしている。しかしながら対話と和解を積み重ね、失われつつある日本への信頼を取り戻して、東アジアで平和と安定を築くべきであろう。




参考
2022年の動向
森本和男「ドイツがベニン青銅器を返還 -「パンドラの箱が開いた」-」(2023年7月)
2021年の動向
森本和男「フランスがアフリカに文化財を返還 -各国で確実に進む返還の準備-」(2022年6月)
2020年の動向
森本和男「ブラック・ライヴズ・マターとモニュメント・文化財 -加速する脱植民地化の動き-」(2021年11月)
2019年の動向
森本和男「フランスの文化財返還レポートから1年 -欧米の脱植民地化の流れと文化財- 」(2020年4月27日)
2018年の動向
森本和男「フランスのアフリカ文化財返還政策とその波紋」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2019』No. 8(2019年5月1日)




1) Colonial collections to be returned to Indonesia and Sri Lanka(Government of the Netherlands 2023/07/06)
 https://www.government.nl/latest/news/2023/07/06/colonial-collections-to-be-returned-to-indonesia-and-sri-lanka
  Netherlands to return treasures looted from Indonesia and Sri Lanka in colonial era(the Guardian 2023/07/06)
 https://www.theguardian.com/world/2023/jul/06/netherlands-to-return-treasures-looted-from-indonesia-and-sri-lanka-in-colonial-era
  Netherlands to repatriate nearly 500 looted objects to Indonesia and Sri Lanka(the Art Newspaper 2023/07/06)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/07/06/netherlands-to-repatriate-nearly-500-looted-objects-to-indonesia-and-sri-lanka
 Indonesia, Advisory reports(the Colonial Collections Committee
 https://committee.kolonialecollecties.nl/publications/advisory-reports/2023/05/12/indonesia
2) Wahyu Ernawati, The Lombok Treasure, In Pieter ter Keurs (ed.), Colonial Collections Revisited, CNWS Publicaions, 2007. pp. 196~198.
3) Pauline Lunsingh Scheurleer, Collecting Javanese Antiquities, In Pieter ter Keurs (ed.), Colonial Collections Revisited, CNWS Publicaions, 2007. pp. 85~86.
  Jos van Beurden, Inconvenient Heritage, Amsterdam University Press, 2022. p. 97.
4) Quist, Tom, Provenance report regarding Staatsiekris - keris (Ceremonial Kris), PPROCE provenance reports No.31(Wereldmuseum 2022)
 https://pure.knaw.nl/portal/en/publications/provenance-report-regarding-staatsiekris-keris-ceremonial-kris
5) Netherlands returns historical objects to Indonesia(ANTARA 2023/07/11)
 https://en.antaranews.com/news/287841/netherlands-returns-historical-objects-to-indonesia
6) Rijksmuseum to Return Colonial Objects from its Collection for the First Time(Rijksmuseum 2023/07/05)
 https://www.rijksmuseum.nl/en/press/press-releases/rijksmuseum-to-return-colonial-objects-from-its-collection-for-the-first-time
  Provenance research(Rijksmuseum
 https://www.rijksmuseum.nl/en/research/our-research/overarching/provenance-research-colonial-collections
  Provenance Report 46, Sinhalese cannon, NG-NM-1015, March 2022
 https://www.rijksmuseum.nl/asset/download/3fe46b12-932c-4692-a26b-965c7d22ac87/RAP_PPROCE_ProvenanceReport_46_InclAppendices_KanonKandy_NG-NM-1015_v10_202203.pdf?c=edcb9f2d211ed3ae894eae1af36ad8a35b4a6be035d337b09f033d495cd9a551
  Provenance Report 50, Two Wall Guns, NG-NM-519, NG-NM-520, March 2022
 https://www.rijksmuseum.nl/asset/download/e0f3c06a-015b-4517-ac39-73884d4bcdb5/RAP_PPROCE_ProvenanceReport_50_TwoWallGuns_NG-NM-519and520_v10_202203.pdf?c=500f005f2a14d1faf56eef575e3401dbcae2af1f52656bf376528b05ff4d5cf3
  Provenance Report 48, Kastane, NG-NM-560, March 2022
 https://www.rijksmuseum.nl/asset/download/29990e22-c63a-4112-a407-d6b04d81451c/RAP_PPROCE_ProvenanceReport_48_KastaneMetSchede(GoldenSabre)_NG-NM-560_v10_202203.pdf?c=67f1dc70da392fa524d3ea9ca3bf31ce302b4dcef63508631d36136809ca9868
  Provenance Report 49, Kastane, NG-NM-7112, March 2022
 https://www.rijksmuseum.nl/asset/download/fb7415c1-076a-4342-a6d5-8b55199a5a76/RAP_PPROCE_ProvenanceReport_49_KastaneMetSchede(SilverSabre)_NG-NM-7112_v10_202203.pdf?c=d59258eea338c061fff4d2e6b1e9018475ed6d1201e949fc46ec46687376a60b
  Provenance Report 47, Sinhalese knife, NG-NM-7114, March 2022
 https://www.rijksmuseum.nl/asset/download/0790cc1b-7c47-4879-8f82-62afd1d83de6/RAP_PPROCE_ProvenanceReport_47_Piha-kaetta_NG-NM-7114_v10_202203.pdf?c=ad666a95ed55927811fd9a7e4df962da2653a7c7582a2f2b0a9932d7ae8f2065
  Sri Lanka, Advisory reports(the Colonial Collections Committee
 https://committee.kolonialecollecties.nl/publications/advisory-reports/2023/05/12/sri-lanka
7) Netherlands to physically return stolen artefacts to Sri Lanka in December(NewsWire 2023/11/27)
 https://www.newswire.lk/2023/11/27/netherlands-to-physically-return-stolen-artefacts-to-sri-lanka-in-december/
  Sri Lanka’s cultural triumph in artefact repatriation(Sunday Observer 2023/12/31)
 https://www.sundayobserver.lk/2023/12/31/opinion/13115/sri-lankas-cultural-triumph-in-artefact-repatriation/
8) The Netherlands Returns Human Remains to Statia after More Than Three Decades(St. Eustatius 2022/03/10)
 https://www.statiagovernment.com/news-and-tenders/news/2023/03/10/the-netherlands-returns-human-remains-to-statia-after-more-than-three-decades
  Netherlands returns Indigenous remains to Caribbean island Sint Eustatius(the Art Newspaper 2023/03/17)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/03/16/netherlands-returns-indigenous-remains-caribbean-island
9) Dutch King Apologizes for His Country’s Role in the Slave Trade(the New York Times 2023/07/01)
 https://www.nytimes.com/2023/07/01/world/europe/netherlands-king-slavery-apology.html
  Dutch king apologises for country’s historical involvement in slavery(the Guardian 2023/07/01)
 https://www.theguardian.com/world/2023/jul/01/dutch-king-apologises-for-countrys-historic-involvement-in-slavery
10) Dutch Prime Minister Apologizes for His Country’s Role in the Slave Trade(the New York Times 2022/12/19)
 https://www.nytimes.com/2022/12/19/world/europe/netherlands-slavery-apology-mark-rutte.html
11) Nigeria transfers ownership of Benin Bronzes to royal ruler—confusing European museums' plans to return artefacts(the Art Newspaper 2023/04/26)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/04/26/who-will-museums-partner-with-over-benin-bronzes-now-eyebrows-raised-as-latest-nigerian-government-announcement-makes-oba-owner-of-artefacts
  Nigeria Has Transferred Ownership of the Benin Bronzes to Its Royal Leader, Creating a ‘Better Environment’ for Future Restitution(artnet news 2023/04/27)
 https://news.artnet.com/art-world/benin-bronze-oba-ownership-2291586
12) 'Restitution with conditions is neo-colonialism': German ruling parties defend return of Benin bronzes in parliament(the Art Newspaper 2023/05/13)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/05/12/german-ruling-parties-defend-return-of-benin-bronzes-in-parliament
  Who Owns the Benin Bronzes? The Answer Just Got More Complicated.(the New York Times 2023/06/04)
 https://www.nytimes.com/2023/06/04/arts/design/benin-bronzes-nigeria-ownership.html
13) Nigeria Benin Bronzes: Buhari declaration 'blindsides' museum officials(BBC 2023/05/10)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-65531736
14) Black group tells Met not to return king’s bronzes: ‘Slavery profits’(New York Post 2023/04/29)
 https://nypost.com/2023/04/29/black-group-tells-met-not-to-return-kings-slavery-profits/
15) Publication: Atlas of Absence. Cameroon's Cultural Heritage in Germany(Technische Universität Berlin
 https://www.tu.berlin/en/kuk/research/projects/current-research-projects/umgekehrte-sammlungsgeschichten-mapping-kamerun-in-deutschen-museen/atlas-der-abwesenheit
16) Internationale Konferenz I Kameruns Kultuerbe in Deutschland I Atlas der Abwesenheit(Technische Universität Berlin
 https://www.youtube.com/playlist?list=PLsVviNCam0jKADWqpINnkth7N5I3fYOGE
17) German museums hold 40,000 objects from former colony Cameroon, study finds(the Art Newspaper 2023/06/02)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/06/02/german-museums-hold-40000-objects-from-former-colony-cameroon-study-finds
18) Toxic dilemma faced by German museums repatriating artefacts(the Guardian 2023/01/17)
 https://www.theguardian.com/world/2023/jan/17/toxic-dilemma-german-museums-repatriating-artefacts-pesticides-objects-contaminated
  Germany’s return of sacred Kogi masks to Colombia may have health risks(the Guardian 2023/06/16)
 https://www.theguardian.com/world/2023/jun/16/germanys-return-of-sacred-kogi-masks-to-colombia-may-have-health-risks
19) At Last, Colombia Demands the Return of Its San Agustín Statues(Hyperallergic 2023/02/13)
 https://hyperallergic.com/800333/colombia-demands-the-return-of-its-san-agustin-statues/
20) Australia, Germany poised to strike landmark deal to return Indigenous artefacts(the Sydney Morning Herald 2023/06/27)
 https://www.smh.com.au/politics/federal/australia-germany-poised-to-strike-landmark-deal-to-return-indigenous-artefacts-20230625-p5dj87.html
21) Dresden museum returns four objects to Australia’s Kaurna community(the Art Newspaper 2023/08/17)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/08/17/dresden-museum-returns-four-objects-to-australias-kaurna-community
  Museum für Völkerkunde in Dresden returns four objects to the Kaurna people in South Australia that are integral to their identity(Staatlichen Kunstsammlungen Dresden 2023/08/24)
 https://www.skd.museum/en/besucherservice/presse/2023/museum-fuer-voelkerkunde-in-dresden-returns-four-objects-to-the-kaurna-people-in-south-australia-that-are-integral-to-their-identity/
22) New Approaches to Establishing the Provenance of Archaeological Collections(Staatliche Museen zu Berlin 2023/05/16)
 https://www.smb.museum/en/whats-new/detail/new-approaches-to-establishing-the-provenance-of-archaeological-collections/
  Berlin museums to look into origins of archaeological collections (the Art Newspaper 2023/05/17)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/05/17/berlin-museums-to-look-into-origins-of-archaeological-collections
  Legal – Illegal? (Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/zentralarchiv/research/provenance-research/legal-illegal-the-circumstances-of-the-excavation-and-export-of-archaeological-objects-from-samal-didyma-and-samarra/
23) No plans to return Berlin's star museum attractions Nefertiti and Pergamon Altar, German official says(the Art Newspaper 2023/01/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/01/20/no-plans-to-return-berlins-star-museum-attractions-nefertiti-and-pergamon-altar-german-official-says
24) Restitution Is Moving Quickly. The Pergamon Museum Is Taking It Slow.(the New York Times 2023/10/18)
 https://www.nytimes.com/2023/10/18/arts/design/pergamon-museum-restitution.html
25) International Conference Provenance Research on Collections from Colonial Contexts Principles, Approaches, Challenges 21 - 23 June 2021(PAESE
 https://www.postcolonial-provenance-research.com/en/int-conference-2021/
  Provenance Research on Collections from Colonial Contexts: Principles, Approaches, Challenges(ART-Books
 https://books.ub.uni-heidelberg.de/arthistoricum/catalog/book/1270
26) What will German monasteries do with colonial-era objects in their collections?(the Art Newspaper 2023/10/09)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/10/09/what-will-german-monasteries-do-with-colonial-era-objects-in-their-collections
  “Missionary ‘Collecting’ in Colonial Contexts – Aspects of the Relationship between Mission and Colonialism“ | Colloquium Provenance Research(German Lost Art Foundation 2023/12/20)
 https://kulturgutverluste.de/en/eventdocumentation/missionary-collecting-colonial-contexts-aspects-relationship-between-mission-and
27) Germany and France set up joint provenance research fund focussed on Africa(the Art Newspaper 2023/10/11)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/10/11/germany-and-france-set-up-joint-provenance-research-fund-focussed-on-africa
28) New Publication: Results of the Provenance Research on Skulls from German East Africa(Stiftung Preußischer Kulturbesitz 2023/01/18)
 https://www.preussischer-kulturbesitz.de/en/news-detail/article/2023/01/18/new-publication-results-of-the-provenance-research-on-skulls-from-german-east-africa.html
  Berlin museums ready to return skulls from African ex-colony(AP 2023/01/18)
 https://apnews.com/article/germany-berlin-tanzania-rwanda-kenya-81822f2e67126d59268861047316300b
29) Dealing with human remains from colonial contexts(German Contact Point for Collections from Colonial Contexts
 https://www.cp3c.org/dealing_with_human_remains/
  Museums, unis in Germany hold 17,000 human remains from colonial era(Daily Sabah 2023/12/29)
 https://www.dailysabah.com/world/europe/museums-unis-in-germany-hold-17000-human-remains-from-colonial-era
30) How Germany is handling human remains in museum collections(DW 2024/03/12)
 https://www.dw.com/en/legacy-of-colonialism-how-germany-is-handling-human-remains-in-museum-collections/a-68493538
31) We want them back: Report (German, February 2022)(European Center for Constitutional and Human Rights
 https://www.ecchr.eu/en/publication/we-want-them-back-wissenschaftliches-gutachten-zum-bestand-menschlicher-ueberrestehuman-remains-aus-kolonialen-kontexten-in-berlin-februar-2022/
32) New guide on dealing with human remains from colonial contexts(German Lost Art Foundation 2023/07/08)
 https://kulturgutverluste.de/en/meldungen/neue-arbeitshilfe-zum-umgang-mit-menschlichen-ueberresten-aus-kolonialen-kontexten
33) Humboldt Lab Tanzania(Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/ethnologisches-museum/collection-research/research/humboldt-lab-tanzania/
  Cooperation Contract Signed: Joint Exhibition on Tanzania’s History in Berlin (Staatliche Museen zu Berlin 2022/04/12)
 https://www.smb.museum/en/whats-new/detail/cooperation-contract-signed-joint-exhibition-on-tanzanias-history-in-berlin/
34) Clarifying German colonial-era atrocities in Tanzania(DW 2023/03/22)
 https://www.dw.com/en/clarifying-german-colonial-era-atrocities-in-tanzania/a-65077397
35) The Tanzanians searching for their grandfathers' skulls in Germany(BBC 2023/10/29)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-67209935
36) Māori ancestral remains and mummified heads returned to New Zealand from Germany(the Guardian 2023/06/13)
 https://www.theguardian.com/world/2023/jun/14/maori-ancestral-remains-and-mummified-heads-returned-to-new-zealand-from-germany
37) Project Finder(German Lost Art Foundation
 https://kulturgutverluste.de/en/projects
38) France’s Ministry of Culture Is Pushing Forward a Trio of Groundbreaking Laws That May Have Sweeping Effects on Restitution(artnet news 2023/01/17)
 https://news.artnet.com/art-world-archives/frances-ministry-of-culture-is-pushing-forward-a-trio-of-groundbreaking-laws-which-may-have-sweeping-effects-on-restitution-2243534
39) Presentation of the report Shared heritage: universality, restitution and circulation of works of art by Jean-Luc Martinez(Ministère de la culture 2023/04/27)
 https://www.culture.gouv.fr/en/Documentation-space/Reports/Presentation-of-the-report-Shared-heritage-universality-restitution-and-circulation-of-works-of-art-by-Jean-Luc-Martinez
40) France's long-awaited restitution policy is finally here(the Art Newspaper 2023/04/27)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/04/26/france-long-awaited-restitution-policy-is-finally-here
  What Is ‘Shared Heritage’? Here Are the Big Takeaways From Embattled Former Louvre President Jean-Luc Martinez’s New Report on Restitution(artnet news 2023/05/03)
 https://news.artnet.com/art-world/report-on-restitution-2293910
  Understanding France’s New Restitution Guidelines(Hyperallergic 2023/05/04)
 https://hyperallergic.com/819941/understanding-frances-new-restitution-guidelines/
41) Does The Martinez Report Constitute A Pre-Announced Burial Of African Cultural Artefacts In French Museums?(Modern Ghana 2023/05/14)
 https://www.modernghana.com/news/1230672/does-the-martinez-report-constitute-a-pre-announce.html
42) France Has Adopted a New Bill That Will Fast-Track the Return of Artworks Looted During World War II(artnet news 2023/07/14)
 https://news.artnet.com/art-world-archives/france-new-bill-expedites-restitution-of-nazi-looted-artworks-2336915
  France’s New Restitution Law for Nazi-Looted Art Reveals the Country’s Inconsistent Efforts in Dealing with Its Complicated Past(ARTnews 2023/10/09)
 https://www.artnews.com/art-news/news/new-french-restitution-law-nazi-looted-art-complicated-history-1234681413/
  LOI n° 2023-650 du 22 juillet 2023 relative à la restitution des biens culturels ayant fait l'objet de spoliations dans le contexte des persécutions antisémites perpétrées entre 1933 et 1945 (1)(République française
 https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000047874541
43) France simplifies law on restitution of human remains(the Art Newspaper 2023/12/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/12/20/france-simplifies-law-on-restitution-of-human-remains
  LOI n° 2023-1251 du 26 décembre 2023 relative à la restitution de restes humains appartenant aux collections publiques (1)(République française
 https://www.legifrance.gouv.fr/loda/id/JORFTEXT000048668800
44) French couple take dealer to court for share of African mask’s €4.2m sale price(the Guardian 2023/10/31)
 https://www.theguardian.com/world/2023/oct/31/french-couple-go-to-court-for-share-of-rare-african-masks-sale-price
  Once Deemed ‘Worthless,’ a $4.4 Million African Mask Is Now at the Center of a Restitution Claim by Gabon(artnet news 2023/11/02)
 https://news.artnet.com/art-world/gabon-restitution-african-mask-2388826
45) French couple lose court case over rare African mask worth millions(the Guardian 2023/12/19)
 https://www.theguardian.com/world/2023/dec/19/french-couple-lose-rare-african-mask-case-worth-millions
  The Elderly Couple Who Sued a Dealer Over a $4.4 Million African Mask Lose in Court(artnet news 2023/12/19)
 https://news.artnet.com/art-world/dealer-african-mask-2411422
46) Two precious Nguyen Dynasty antiques up for auction in France(Hue News 2022/11/01)
 https://news.baothuathienhue.vn/culture/two-precious-nguyen-dynasty-antiques-up-for-auction-in-france-120196.html
  フランスで競売予定だった阮朝の金印、ベトナム返還が決定(VIETJO 2022/11/16)
 https://www.viet-jo.com/news/social/221115171455.html
  A close look at Nguyen Dynasty’s gold imperial seal returned to Vietnam(VOV 2023/11/21)
 https://english.vov.vn/en/multimedia/photos/a-close-look-at-nguyen-dynastys-gold-imperial-seal-returned-to-vietnam-post1060516.vov
  阮朝の金印がベトナムに帰郷、民間コレクターが買い取り(VIETJO 2023/11/24)
 https://www.viet-jo.com/news/social/231123075114.html
47) Colonial human skulls will not be auctioned in Brussels after protests(The Brussels Times 2022/12/01)
 https://www.brusselstimes.com/330545/colonial-human-skulls-will-not-be-put-up-for-auction-in-brussels-after-all
48) Avis n° 82 - Statut des restes humains(Santé publique, Sécurité de la chaîne alimentaire et Environnement 2023/03/29)
 https://www.health.belgium.be/fr/avis-ndeg-82-statut-des-restes-humains
  Colonial human remains should be returned, not put on display(The Brussels Times 2023/03/30)
 https://www.brusselstimes.com/432812/colonial-human-remains-should-be-returned-not-put-on-display
49) AfricaMuseum backs recommendation for the unconditional repatriation of human remains in colonial collections(AfricaMuseum 2024/02/)
 https://www.africamuseum.be/en/research/news/HOME
50) His Skull Was Taken From Congo as a War Trophy. Will Belgium Finally Return It?(the New York Times 2024/05/05)
 https://www.nytimes.com/2024/05/05/world/europe/human-skull-africa-belgium.html
51) British Museum in talks with Greece over return of Parthenon marbles(the Guardian 2023/01/04)
 https://www.theguardian.com/artanddesign/2023/jan/04/british-museum-in-talks-with-greece-over-return-of-parthenon-marbles
  The British Museum Is in Talks to Return the Parthenon Marbles to Greece in Landmark Loan Deal(artnet news 2023/01/04)
 https://news.artnet.com/art-world/parthenon-marbles-british-museum-greece-deal-2238087
52) Dispelling Rumors, Greece Has Rejected the British Museum’s Offer to Return the Parthenon Marbles as a Long-Term Loan(artnet news 2023/01/11)
 https://news.artnet.com/art-world/greece-rejects-british-museum-loan-deal-parthenon-marbles-2241261
  British Museum's hopes of a 'loan arrangement' for the return of the Parthenon Marbles imperilled ahead of Greek elections(the Art Newspaper 2023/01/14)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/01/13/british-museums-hopes-of-a-loan-arrangement-for-the-return-of-the-parthenon-marbles-imperilled-ahead-of-greek-elections
53) No plans to return Parthenon marbles to Greece, says Rishi Sunak(the Guardian 2023/03/13)
 https://www.theguardian.com/artanddesign/2023/mar/13/no-plans-to-return-parthenon-elgin-marbles-to-greece-says-rishi-sunak
54) ‘Like cutting the Mona Lisa in half’: Greek prime minister doggedly pursues Parthenon Marbles deal(the Art Newspaper 2023/11/27)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/11/27/like-cutting-the-mona-lisa-in-half-greek-prime-minister-doggedly-pursues-parthenon-marbles-deal
  Parthenon Marbles row deepens after Rishi Sunak cancels meeting with Greek prime minister(the Art Newspaper 2023/11/28)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/11/28/parthenon-marbles-row-deepens-after-rishi-sunak-cancels-meeting-with-greek-prime-minister
55) British Museum's ancient Greek Meidias vase will be loaned to Athens—leaving London for the first time in 250 years(the Art Newspaper 2023/11/24)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/11/23/british-museums-loans-ancient-greek-meidias-vase-athens-acropolis-museum
  History's most famous pot: the Meidias hydria(the British Museum 2023/11/24)
 https://www.britishmuseum.org/blog/historys-most-famous-pot-meidias-hydria
56) British Museum returns Oceanic sculpture to Polynesia—for three years(the Art Newspaper 2023/04/12)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/04/12/british-museum-returns-oceanic-sculpture-aa-to-polynesiafor-three-years
57) British Museum Was Warned Gems Were Being Sold on eBay, Emails Show(the New York Times 2023/08/22)
 https://www.nytimes.com/2023/08/22/arts/design/british-museum-thefts.html
  'More than 1,500' artefacts were stolen from British Museum, internal investigation reportedly reveals(the Art Newspaper 2023/08/22)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/08/22/reports-claim-close-to-2000-artefacts-were-stolen-from-british-museum-according-to-internal-investigation
58) British Museum gems for sale on eBay - how a theft was expose(BBC 2024/05/27)
 https://www.bbc.com/news/articles/cpegg27g74do
59) British Museum director Hartwig Fischer resigns after suspected thefts(the Guardian 2023/08/25)
 https://www.theguardian.com/culture/2023/aug/25/british-museum-director-hartwig-fischer-steps-down-after-suspected-thefts
  British Museum thefts: Director Hartwig Fischer quits over stolen treasures(BBC 2023/08/26)
 https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-66621006
60) British Museum Announces Plan to Stop Thefts(the New York Times 2023/10/18)
 https://www.nytimes.com/2023/10/18/arts/design/british-museum-collection.html
  British Museum to digitise collection as one million objects are found to be undocumented(the Art Newspaper 2023/10/19)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/10/19/british-museum-to-digitise-collection-as-over-two-million-objects-are-found-to-be-undocumented
  In the Wake of a Major Theft Scandal, the British Museum Plans to Spend $12 Million to Fully Digitize Its Collection(artnet news 2023/10/19)
 https://news.artnet.com/art-world/british-museum-to-fully-digitize-collection-following-theft-scandal-2381495
61) British Museum's long-awaited masterplan includes record £50m BP deal(the Art Newspaper 2023/12/19)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/12/19/british-museum-finally-reveals-details-of-masterplanincluding-record-%C2%A350m-deal-with-bp
62) British Museum’s BP sponsorship deal ‘astonishingly out of touch’(the Guardian 2023/12/19)
 https://www.theguardian.com/culture/2023/dec/19/british-museum-bp-sponsorship-deal-astonishingly-out-of-touch
63) British Museum revamp contest faces boycott over BP backing(the Architects’ Journal 2024/01/16)
 https://www.architectsjournal.co.uk/news/british-museum-revamp-contest-faces-boycott-over-bp-backing
  Tate director Maria Balshaw criticises British Museum’s sponsorship deal with BP(the Art Newspaper 2024/06/03)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/06/03/tate-director-maria-balshaw-criticises-british-museums-sponsorship-deal-with-bp
64) British Museum suffering from leaking roofs as wait for huge redevelopment project goes on(the Art Newspaper 2024/02/22)
 https://www.theartnewspaper.com/2024/02/22/british-museum-suffering-from-leaking-roofs-as-wait-for-huge-redevelopment-project-goes-on
65) British Museum thefts ‘reinforce’ Parthenon restitution claims, according to Greek minister(the Art Newspaper 2023/08/23)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/08/23/greek-minister-and-archaeologists-question-british-museum-security-in-wake-of-alleged-thefts
66) Nigeria doubles down on restitution demands following British Museum thefts(the Art Newspaper 2023/08/25)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/08/25/nigeria-doubles-down-on-restitution-demands-following-british-museum-thefts
67) British Museum must return Chinese cultural relics for free: Global Times editorial(Global Times 2023/08/28)
 https://www.globaltimes.cn/page/202308/1297079.shtml
68) China state media calls on British Museum to return artefacts(BBC 2023/08/28)
 https://www.bbc.com/news/world-asia-china-66636705
69) British Museum thefts: Welsh politicians join the queue in calling for objects to be repatriated(the Art Newspaper 2023/09/02)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/09/01/british-museum-thefts-welsh-politicians-join-the-queue-in-calling-for-objects-to-be-repatriated
70) 《逃出大英博物馆》第一集
 https://www.youtube.com/watch?v=DB9f6VqeD8U
  《逃出大英博物馆》第二集
 https://www.youtube.com/watch?v=vKEnm7znHVc
  《逃出大英博物馆》第三集大结局 山河无恙,家国永安
 https://www.youtube.com/watch?v=RFyxptVGuPo
71) 大英博物館から中国の文化財「玉壺」が脱出するミニドラマが話題に(人民網日本語版 2023/09/05)
 http://j.people.com.cn/n3/2023/0905/c206603-20067629.html
  British Museum: Chinese TikTok hit amplifies calls for return of artefacts(BBC 2023/09/06)
 https://www.bbc.com/news/world-asia-china-66714549
  Viral series about Chinese teapot escaping from British Museum to become film(the Guardian 2023/09/20)
 https://www.theguardian.com/world/2023/sep/20/viral-douyin-series-chinese-teapot-escaping-british-museum-film
  A Video Series About a Teapot That Escapes the British Museum, Which Went Viral on Chinese Social Media, Has Landed a Film Deal(artnet news 2023/09/21)
 https://news.artnet.com/art-world/film-about-chinese-teapot-escaping-british-museum-2365787
72) Thefts expose British Museum’s ‘ridiculous’ stance on return of artefacts, says MP(the Guardian 2023/08/27)
 https://www.theguardian.com/culture/2023/aug/27/thefts-expose-british-museums-ridiculous-stance-on-return-of-artefacts-says-mp
73) REPORT - Hearings on the Restitution of Stolen African Artefacts and Ancestral Remains(All-Party Parliamentary Groups for Afrikan Reparations 2023/10/18)
 https://www.appg-ar.org/news/appg-for-afrikan-reparations-hearings-on-restitution-of-stolen-artefacts-and-remains
74) UK politicians and campaigners call for reparative justice for African slave trade(the Guardian 2023/10/21)
 https://www.theguardian.com/world/2023/oct/21/uk-politicians-and-campaigners-call-for-reparative-justice-for-african-slave-trade
  UK Reparations Conference 2023 | Session Recordings(All-Party Parliamentary Groups for Afrikan Reparations
 https://www.appg-ar.org/uk-reparations-conference-2023-recordings
75) Seven artefacts returned to India by Glasgow Life Museums(Museums + Heritage 2023/01/11)
 https://museumsandheritage.com/advisor/posts/seven-artefacts-returned-india-glasgow-life-museums/
76) Indigenous objects repatriated from small British museum come home to Haida Gwaii(the Globe and Mail 2022/09/15)
 https://www.theglobeandmail.com/arts/art-and-architecture/article-objects-repatriated-from-small-british-museum-arrive-on-haida-gwaii/
  Why a small British museum went out of its way to repatriate Haida Nation artifacts(CBC 2022/09/30)
 https://www.cbc.ca/radio/thecurrent/haida-nation-artifacts-repatriated-uk-1.6602014
  How one Derbyshire museum took initiative in returning Indigenous artefacts(the Guardian 2023/02/13)
 https://www.theguardian.com/culture/2023/feb/13/how-one-derbyshire-buxton-museum-took-initiative-in-returning-indigenous-artefacts
77) Aboriginal spears to be returned to traditional owners(Trinity College Cambridge 2023/03/02)
 https://www.trin.cam.ac.uk/news/aboriginal-spears-to-be-returned-to-traditional-owners/
  Spears stolen by Captain Cook from Kamay/Botany Bay in 1770 to be returned to traditional owners(the Guardian 2023/03/02)
 https://www.theguardian.com/australia-news/2023/mar/02/spears-stolen-by-captain-cook-from-kamaybotany-bay-in-1770-to-be-returned-to-traditional-owners
78) Return of the Gweagal Spears to the La Perouse Aboriginal Community(the National Museum of Australia 2024/04/23)
 https://www.nma.gov.au/about/media/media-releases-listing-by-year/media-releases-2024/return-gweagal-spears-la-perouse-community
  Cambridge college returns 18th Century Aboriginal spears(BBC 2024/04/23)
 https://www.bbc.com/news/uk-england-cambridgeshire-68875158
79) Maasai Living Cultures Project(the Pitt Rivers Museum
 https://www.prm.ox.ac.uk/maasai-living-cultures
  Maasai Living Cultures 2023(the Pitt Rivers Museum
 https://www.prm.ox.ac.uk/maasai-living-cultures-2023
  Maasai families receive cows in recognition of 'culturally sensitive heirlooms' in Pitt Rivers Museum(the Art Newspaper 2023/07/06)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/07/06/maasai-families-receive-cows-in-recognition-for-culturally-sensitive-heirlooms-in-pitt-rivers-museum
80) Committed to Change(the Pitt Rivers Museum
 https://www.prm.ox.ac.uk/committed-to-change
81) The Unfinished Business of Colonialism: Naga Ancestral Remains and the Healing of the Land(the Morung Express 2022/07/01)
 https://morungexpress.com/the-unfinished-business-of-colonialism-naga-ancestral-remains-and-the-healing-of-the-land
  A Path Home: A graphic novel on Naga Repatriation(Recover Restore and Decolonise
 https://rradnagaland.org/novel/
  Dolly Kikon Discusses Naga Repatriation in SASC Colloquium(South Asian Studies Council, Yale University 2023/02/20)
 https://macmillan.yale.edu/southasia/stories/dolly-kikon-discusses-naga-repatriation-sasc-colloquium
  Repatriation and the Naga Case(the Morung Express 2023/06/22)
 https://morungexpress.com/repatriation-and-the-naga-case
  Recover Restore and Decolonise (RRaD) holds Mon dialogue on ‘Repatriation of Naga ancestral Human remains’(Ukhrul Times 2023/06/24)
 https://ukhrultimes.com/recover-restore-and-decolonise-rrad-holds-mon-dialogue-on-repatriation-of-naga-ancestral-human-remains/
82) Totem Pole Taken 94 Years Ago Begins 4,000-Mile Journey Home(the New York Times 2023/08/29)
 https://www.nytimes.com/2023/08/29/world/europe/totem-pole-nisga-a-nation-scotland.html?smid=tw-share
  Stolen totem pole formally welcomed home to Nisga'a territory after nearly a century in Scottish museum(CBC 2023/09/28)
 https://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/memorial-totem-pole-returned-1.6981891
  From Scotland to Canada, a totem pole finally returns home(BBC 2023/10/02)
 https://www.bbc.com/news/world-us-canada-66932129
83) Return of cultural heritage to the Anindilyakwa People of Groote Eylandt(Manchester Museum
 https://www.museum.manchester.ac.uk/return-of-cultural-heritage/
  Manchester Museum hands back 174 objects to Indigenous Australian islanders(the Guardian 2023/09/05)
 https://www.theguardian.com/australia-news/2023/sep/05/manchester-museum-hands-back-objects-to-indigenous-australian-anindilyakwa
  Manchester Museum returns 174 items to Indigenous Australians in major restitution move(the Art Newspaper 2023/09/05)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/09/05/manchester-museum-returns-170-items-to-indigenous-australians-in-major-restitution-move
84) Sacred Ethiopian tablet looted by the British at the battle of Maqdala 155 years ago is returned in London church service(the Art Newspaper 2023/09/25)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/09/25/sacred-ethopian-tablet-looted-by-the-british-at-siege-of-maqdala-155-years-ago-is-returned-in-london-service
85) A piece of a 19th-century Ethiopian prince is going home(CBC 2023/09/20)
 https://www.cbc.ca/news/world/prince-alemayehu-1.6972478
86) Ethiopia's Prince Alemayehu: Buckingham Palace rejects calls to return royal's body(BBC 2023/05/23)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-65588663
87) ‘We are inextricably linked’: Māori tribe urges Sotheby’s to return relics up for auction(the Guardian 2023/01/12)
 https://www.theguardian.com/world/2023/jan/12/maori-tribe-sothebys-relics-auction-new-zealand
  A Māori Tribe in New Zealand Is Calling for the Return of Cultural Artifacts Listed in a Sotheby’s Auction(artnet news 2023/01/13)
 https://news.artnet.com/market/maori-tribe-wants-sothebys-artifacts-returned-2242077
88) The Bedchamber Sword of Tipu Sultan (reg. 1782-1799), a fine gold-koftgari-hilted steel sword (sukhela) (Bonhams
 https://www.bonhams.com/auction/28300/lot/175P/the-bedchamber-sword-of-tipu-sultan-reg-1782-1799-a-fine-gold-koftgari-hilted-steel-sword-sukhela-india-18th-century/
  Looted Indian sword fetches record ₤14m at Bonhams(the Art Newspaper 2023/05/24)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/05/23/looted-indian-sword-tipu-sultan-bonhmas-14m
89) UK puts temporary export ban on Tipu Sultan tiger's head—but commentators claim it was looted in the 18th century(the Art Newspaper 2021/11/16)
 https://www.theartnewspaper.com/2021/11/16/uk-puts-temporary-export-ban-on-finial-from-the-throne-of-tipu-sultanbut-commentators-claim-it-was-looted-in-the-18th-century
90) Oxford museums return ancestral remains to Aboriginal communities(Museums Journal 2023/10/05)
 https://www.museumsassociation.org/museums-journal/news/2023/10/oxford-museums-return-ancestral-remains-to-aboriginal-communities/
  Ancestral remains returned from British museums(the National Indigenous Times 2023/10/05)
 https://nit.com.au/05-10-2023/7980/ancestral-remains-returned-from-british-museums
91) Tribal warrior skulls repatriated to Taiwan by University of Edinburgh(BBC 2023/11/04)
 https://www.bbc.com/news/uk-scotland-edinburgh-east-fife-67296570
  Scottish university returns tribal warrior skulls to Taiwan(the Guardian 2023/11/04)
 https://www.theguardian.com/education/2023/nov/04/scottish-university-returns-tribal-warrior-skills-to-taiwan-indigenous-people
  Warrior skulls returned to their ancestral home(the University of Edinburgh 2023/11/07)
 https://www.ed.ac.uk/news/2023/mudan-skulls
92) Royal gift or ‘stolen’ gem? Calls for UK to return 500 carat Great Star of Africa diamond(CNN 2022/09/16)
 https://edition.cnn.com/style/article/great-star-of-africa-diamond-intl-lgs/index.html
  South Africans call for UK to return diamonds set in crown jewels(Reuters 2023/05/04)
 https://www.reuters.com/world/africa/south-africans-call-uk-return-diamonds-set-crown-jewels-2023-05-04/
  【写真で見る】英国王チャールズ3世の戴冠式(BBC JAPAN 2023/05/06)
 https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-65508363
93) Queen Consort Camilla rejects controversial Koh-i-Noor diamond for crown(Euronews 2023/02/16)
 https://www.euronews.com/culture/2023/02/16/queen-consort-camilla-rejects-controversial-koh-i-noor-diamond-for-crown
  The controversial history of the Koh-i-Noor diamond – and why it may never be worn again by a British royal(the Telegraph 2023/05/06)
 https://www.telegraph.co.uk/royal-family/2023/05/06/queen-consort-camilla-koh-i-noor-diamond-story-history-diplomatic-jewel/
94) New Tower of London display acknowledges ‘complex’ history of crown jewels(the Guardian 2023/05/25)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2023/may/25/new-tower-of-london-display-acknowledges-complex-history-of-crown-jewels
95) Statement on the skeleton of Charles Byrne from the Board of Trustees of the Hunterian Collection(Hunterian Museum 2023/01/11)
 https://hunterianmuseum.org/news/statement-on-the-skeleton-of-charles-byrne-from-the-board-of-trustees-of-the-hunterian-collection
  Hunterian Museum defends decision to retain skeleton of ‘Irish giant’ Charles Byrne(Museums Journal 2023/01/13)
 https://www.museumsassociation.org/museums-journal/news/2023/01/hunterian-museum-defends-decision-to-retain-skeleton-of-irish-giant-charles-byrne/
  London Museum Removes ‘Irish Giant’ Skeleton From Display(the New York Times 2023/01/21)
 https://www.nytimes.com/2023/01/21/world/europe/charles-byrne-irish-giant-museum.html
96) Trinity College Dublin considers returning Inishbofin skulls(the Guardian 2022/12/14)
 https://www.theguardian.com/world/2022/dec/14/trinity-college-dublin-considers-returning-inishbofin-skulls
  Trinity College Dublin to return skulls stolen from Inishbofin(the Guardian 2023/02/23)
 https://www.theguardian.com/world/2023/feb/23/trinity-college-dublin-to-return-skulls-stolen-from-inishbofin
  Relief as Irish island's stolen bones return for good(BBC 2023/07/17)
 https://www.bbc.com/news/articles/cd1exnkzp12o
97) Two Fragments of the Kingdom of Ondonga’s Power Stone Return to Namibia(the Museums Association of Namibia 2023/04/27)
 https://www.museums.com.na/entry/2023/04/two-fragments-of-the-kingdom-of-ondongas-power-stone-return-to-namibia
  The Power Stones of the Owambo Kingdoms(ICOM ICME
 https://icme.mini.icom.museum/activities/projects/the-power-stones-of-the-owambo-kingdoms/
98) Haudenosaunee Sacred Object Return Ceremony(Musée d'ethnographie de Genève 2023/02/03)
 https://www.meg.ch/en/program-activities/ceremonie-retour-objets-sacres-haudenosaunee
  Geneva museum returns Native American sacred objects(SWI swissinfo.ch 2023/02/08)
 https://www.swissinfo.ch/eng/culture/geneva-museum-returns-native-american-sacred-objects/48269046
  Haudenosaunee Confederacy retrieves sacred objects from Geneva museum(CBC 2023/02/16)
 https://www.cbc.ca/news/indigenous/haudenosaunee-confederacy-repatriation-geneva-museum-1.6747873
99) Half of Benin Kingdom exhibits in Swiss museums probably looted(SWI swissinfo.ch 2023/02/03)
 https://www.swissinfo.ch/eng/culture/half-of-benin-kingdom-exhibits-in-swiss-museums-may-have-been-looted/48256142
  Artefacts in Swiss museums were looted from the Kingdom of Benin, new report says(the Art Newspaper 2023/02/06)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/02/06/artefacts-in-swiss-museums-were-looted-from-the-kingdom-of-benin-says-new-report
  Looted colonial art: ‘There are no limits to restitution’(SWI swissinfo.ch 2023/02/15)
 https://www.swissinfo.ch/eng/culture/looted-colonial-art-there-is-no-limit-to-restitution/48282022
  Benin Initiative Switzerland (BIS): New FOC funding and start of phase II(museum rietberg
 https://rietberg.ch/en/research/the-swiss-benin-initiative
100) Switzerland returns centuries-old mummies to Bolivia in landmark repatriation ceremony(Euronews 2023/11/21)
 https://www.euronews.com/culture/2023/11/21/switzerland-returns-centuries-old-mummies-to-bolivia-in-landmark-repatriation-ceremony
101) Austrian government to propose law on returning museum objects acquired in a colonial context(the Art Newspaper 2023/06/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/06/20/austrian-government-to-propose-law-on-returning-museum-objects-acquired-in-a-colonial-context
  Restitution: How Austria intends to deal with colonial objects in the future(24 Hours Worlds 2023/06/21)
 https://24hoursworlds.com/international/466482/
102) Aboriginal remains stolen by ethnologist from graves in 1905 repatriated from Austrian science academy(ABC NEWS 2023/10/17)
 https://www.abc.net.au/news/2023-10-17/aboriginal-ancestors-stolen-from-graves-repatriated-from-austria/102982426
103) Vatican Repudiates ‘Doctrine of Discovery,’ Used as Justification for Colonization(the New York Times 2023/03/30)
 https://www.nytimes.com/2023/03/30/world/europe/vatican-repudiates-doctrine-of-discovery-colonization.html
104) Pope voices willingness to return Indigenous loot, artifacts(AP 2023/05/01)
 https://apnews.com/article/vatican-restitution-indigenous-parthenon-0e486d653bcac89f94854430ce29faf0
105) Native American Graves Protection and Repatriation Act Systematic Processes for Disposition or Repatriation of Native American Human Remains, Funerary Objects, Sacred Objects, and Objects of Cultural Patrimony(Federal Register, National Archives 2023/12/13)
 https://www.federalregister.gov/documents/2023/12/13/2023-27040/native-american-graves-protection-and-repatriation-act-systematic-processes-for-disposition-or
  ローラー・ミカ「【アメリカ】アメリカ先住民墓地保護・返還法新規則の制定」『外国の立法』No.298-2、2024年2月。
 https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info:ndljp/pid/13331977
106) Native American Priorities: Protection and Repatriation of Human Remains and Other Cultural Items(GAO 2023/10/10)
 https://www.gao.gov/products/gao-24-106870
107) NAGPRA: Major Changes Proposed for 2023 to Native American Repatriation Law(Cultural Property News 2023/01/08)
 https://culturalpropertynews.org/nagpra-major-changes-proposed-for-2023-to-native-american-repatriation-law/
108) The Repatriation Project(ProPublica
 https://www.propublica.org/series/the-repatriation-project
109) America’s Biggest Museums Fail to Return Native American Human Remains(ProPublica 2023/01/11)
 https://www.propublica.org/article/repatriation-nagpra-museums-human-remains
110) 有色人種の脳標本を「非倫理的な方法」で収集。スミソニアン国立自然史博物館が過去の慣行を陳謝(ARTnews JAPAN 2023/08/21)
 https://artnewsjapan.com/article/1446
  米スミソニアン博物館、有色人種の人体部位を大量収集 事務局長が謝罪(CNN 2023/08/23)
 https://www.cnn.co.jp/usa/35208154.html
111) Opinion|This is how the Smithsonian will reckon with our dark inheritance
the Washington Post 2023/08/20)
 https://www.washingtonpost.com/opinions/2023/08/20/smithsonian-secretary-lonnie-bunch-human-remains/
112) Human Remains Task Force Report to the Secretary(Smithsonian Institution 2024/01/10)
 https://www.si.edu/sites/default/files/about/human-remains-task-force-report.pdf
  The Smithsonian’s Human Remains Task Force Calls for New Repatriation Policies(Smithsonian Magazine 2024/02/22)
 https://www.smithsonianmag.com/smart-news/smithsonian-human-remains-task-force-calls-for-new-repatriation-policies-180983829/
113) Collections Policy and Procedures(American Museum of Natural History
 https://www.amnh.org/about/collections-policy-procedures
  Human Remains Stewardship(American Museum of Natural History 2023/10/12)
 https://www.amnh.org/about/human-remains-stewardship
114) A New York Museum’s House of Bones(Hyperallergic 2023/10/15)
 https://hyperallergic.com/850350/a-new-york-museums-house-of-bones/
  Facing Scrutiny, a Museum That Holds 12,000 Human Remains Changes Course(the New York Times 2023/10/15)
 https://www.nytimes.com/2023/10/15/arts/american-museum-natural-history-human-remains.html
115) A Top UC Berkeley Professor Taught With Remains That May Include Dozens of Native Americans(ProPublica 2023/03/05)
 https://www.propublica.org/article/berkeley-professor-taught-suspected-native-american-remains-repatriation
116) Native American Graves Protection and Repatriation Act(California State Auditor 2023/06/29)
 https://information.auditor.ca.gov/reports/2022-107/index.html
  Less than half of California State University campuses are complying with federal Native American restitution regulations, audit finds(the Art Newspaper 2023/07/01)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/06/30/california-state-university-system-compliance-native-american-restitution
117) IN GOOD FAITH: The Repatriation of a Massive Collection of Native Ancestors and Artifacts by the FBI May Be A Model for NAGPRA's Future(Native News Online 2023/02/18)
 https://nativenewsonline.net/sovereignty/it-was-surreal
118) At least 313 indigenous remains in Massachusetts will be returned to tribes. Federal inquiry ends for now.(Cape Cod Times 2023/02/23)
 https://www.capecodtimes.com/story/news/2023/02/23/tribal-skeletal-remains-museums-wampanoag-nation-harvard-peabody-wampanoag-confederation/69926819007/
119) Cornell University Returns Native Ancestors 60 Years After They Were Dug out of the Ground(Native News Online 2023/02/24)
 https://nativenewsonline.net/sovereignty/cornell-university-returns-native-ancestors-60-years-after-they-were-dug-out-of-the-ground
120) Museum in New York state returns remains of 19 Native Americans to Oneida Indian Nation(AP 2023/08/03)
 https://apnews.com/article/new-york-native-american-remains-repatriation-oneida-04c7644861aba35f4860a9a50d6b3db5
121) Remains of Nearly 5,000 Native Americans Will Be Returned, U.S. Says(the New York Times 2023/04/04)
 https://www.nytimes.com/2023/04/04/us/repatriation-native-american-remains-artifacts-tennessee.html
122) The Remains of Thousands of Native Americans Were Returned to Tribes This Year(ProPublica 2023/12/26)
 https://www.propublica.org/article/repatriation-progress-in-2023
123) SB Museum of Natural History Returns Indigenous Ancestral Remains to the Consulate General of Peru in Los Angeles(Santa Barbara Museum of Natural History 2023/06/05)
 https://www.sbnature.org/publications/press-releases/111/sb-museum-of-natural-history-returns-indigenous-ancestral-remains-to-the-consulate-general-of-peru-in-los-angeles
124) Smithsonian returns Indigenous remains to Australia(National Indigenous Times 2023/12/01)
 https://nit.com.au/01-12-2023/8870/smithsonian-returns-indigenous-remains-to-australia
125) Nuxalk Riches from the Sea(Royal BC Museum
 https://totems.royalbcmuseum.bc.ca/en/story/Riches
  The Nuxalk Nation's totem pole was stolen and sold to a museum. After waiting 110 years, they finally have it back(CTV News 2023/02/20)
 https://www.ctvnews.ca/world/the-nuxalk-nation-s-totem-pole-was-stolen-and-sold-to-a-museum-after-waiting-110-years-they-finally-have-it-back-1.6280504
  Sacred Nuxalk Nation Totem Pole Finally Repatriated(Hyperallergic 2023/02/22)
 https://hyperallergic.com/802729/nuxalk-nation-welcomes-totem-pole-repatriated-from-royal-bc-museum/
126) Pipe and saddle owned by Chief Poundmaker returned to descendants in Toronto ceremony(CTV News 2023/02/24)
 https://saskatoon.ctvnews.ca/pipe-and-saddle-owned-by-chief-poundmaker-returned-to-descendants-in-toronto-ceremony-1.6286084
  Toronto museum returns objects to family of famous Cree leader(the Art Newspaper 2023/02/25)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/02/24/royal-ontario-museum-repatriates-poundmaker-saddlebag-pipe-cree-leader
  Pauline Poundmaker, Brown Bear Woman’s Sacred Repatriation Journey(Royal Ontario Museum 2023/02/28)
 https://www.rom.on.ca/en/collections-research/magazine/pauline-poundmaker-brown-bear-womans-sacred-repatriation-journey
127) Traces of the ‘Boxer War’ in German Museum Collections – A Joint Approach(Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/museum-fuer-asiatische-kunst/collection-research/research/traces-of-the-boxer-war/
  Boxerloot Conference on 22 and 23 February 2024 in Munich(Staatliche Museen zu Berlin 2024/01/11)
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/museum-fuer-asiatische-kunst/about-us/whats-new/detail/boxerloot-conference-on-22-and-23-february-2024-in-munich/