[2018年の動向]

フランスのアフリカ文化財返還政策とその波紋 
『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2019』No. 8、2019年5月1日

森本和男

はじめに
1.フランスのアフリカ文化財返還レポート
2.フランスとアフリカの反応
3.ヨーロッパ各国の動き
おわりに


はじめに
 2017 年11 月28 日にフランス大統領エマヌエル・マクロンが、西アフリカのブルキナファソの首都ワガドゥグで、800 人の学生を前にして文化財返還について語った1)。「5年以内に、アフリカ遺産の一時的もしくは永久的返還のための条件を整えたい」と述べて2)、満場の拍手でもって迎えられた。演説後にエリゼ宮のツイッターでは「アフリカ遺産はヨーロッパ博物館の囚人であってはならない」とも表現された。

 その数ヵ月前にマクロンはアルジェリアを訪問した際に、植民地主義は「人間性への犯罪」と声明した。「植民地主義はフランスの歴史で重要な部分である。それは犯罪、人間性への犯罪、野蛮の典型的事例だった。この過去の歴史から、これらの活動の対象となった人たちに対して、我々は真摯に謝罪する勇気を持たねばならない」と述べていた3)。植民地主義を問い糺すという彼の姿勢から、文化財返還も連想されたと思われる。

 以来ヨーロッパとアフリカを中心に、にわかに文化財返還論議が活発になった4)。今まで旧植民地国からヨーロッパの旧宗主国へ、文化財返還の要求が何度も出されていながら、常に冷たい拒絶の反応しか返ってこなかった。ところが今回は、世界に君臨する列強の一つだったフランスの元首が、かつての植民地で、文化財返還を積極的に公言したのである。

 文化財返還を宣言したマクロン大統領の真意、また法律的に返還が可能なのかどうか注目が集まるなか、2018 年3 月5 日にマクロン大統領は、フランスの歴史家ベネディクト・サヴォワ(Bénédicte Savoy)とセネガルの経済学者フェルウィン・サル(Felwine Sarr)の2人の専門家に、フランスの博物館にあるアフリカ文化財の返還計画を11 月までに作成するように諮問した5)

 サヴォワは、フランス革命からナポレオン戦争にかけてフランス軍による文化財略奪と返還をテーマに詳述した大著を2003 年に出版し6)、高く評価されて国際的に知られている女性である。彼女はマクロンの演説を「革命」と評価した。

 サルはセネガルで生まれ育ち、フランスでも教育を受けて、オルレアン大学で経済学の学位を取得。現在セネガルのガストン・バーガー大学経済経営学部長で、政治経済、開発経済学などを教えている。マルチな才能でエッセイ集や小説を出版したり、音楽家としてアルバムも出している。また新しくできた文明宗教芸術コミュニケーション学部の部長も務める。

 2人はフランス国内およびフランス語圏のアフリカ諸国(ベナン、セネガル、マリ、カメルーン)を回って多数の人たちと意見を交わし、またダカールとパリでそれぞれワークショップを開いて意見を集約した。アフリカ文化財返還計画に関する大統領への答申は、11 月23 日に公表され、多くのメディアによって紹介された。公表に続いて、博物館に所蔵されている植民地由来の文化財について、ヨーロッパ各国から活発な報道が展開されている7)。残念ながら日本ではほとんど報じられていない。


サルとサヴォワ(Le Monde, 2018/03/22 より)


1.フランスのアフリカ文化財返還レポート
 公表された答申は、『アフリカ文化遺産の返還 新しい倫理関係に向けて(Rapport sur la restitution du patrimoine culturel africain. Vers une nouvelleethique relationnelle / The Restitution of African Cultural Heritage. Toward a New Relational Ethics)』という題名のレポートで(以下、返還レポートと称する)、本文89 頁、添付書類と図版156 頁、合計約250頁あり、仏語版と英語版をネットからダウンロードできる8)

 返還レポートは、0.長期にわたる損失、1.返還、2.返還とコレクション、3.返還にともなって、の4 章で構成され、最後に結論が述べられている。

 返還レポートの冒頭で、対象とする地域をアフリカのサハラ以南のかつてフランス植民地に、限定することが述べられた。この地域では文化遺産の90 パーセントがアフリカ外部で所蔵され、現地にほとんど残っていない。人口の60 パーセントが20 歳以下という大陸で、かつて発達した自分たちの文化、創造性、精神性に、若い人たちが触れることができないと記述されていた。アフリカの悲しい惨状に驚かされる。

 第0章ではフランスにあるアフリカ文化財の歴史的背景が概述された。戦争で文化財を略奪して戦利品としてあつかうことは合法だったが、19 世紀頃からヨーロッパ諸国の間ではこの慣習を避けるようになった。その一方で同じ慣習を急速に外部へと広め、19世紀中葉からアジア・アフリカでの征服戦争や、経済的影響をあたえながら組織的に資源を奪取するようになった。イギリス、ベルギー、ドイツ、オランダ、フランスによる軍事的襲撃といわゆる懲罰遠征が行なわれ、前例のない文化遺産の略奪と取得が発生した。征服戦争に続いてさまざまな占領・植民地行政が形成された。ヨーロッパ中で黎明期の人類学と民族学の学術性が確立されて、文化財あるいは文化資源の獲得競争がはじまった。1960 年代にアフリカの多くの国々が独立し、植民地時代に失った重要な文化財の返還を旧宗主国に要求するようになったが、ヨーロッパ諸国はほとんど応じなかった。

 第1章で返還の意義や内容について論じられた。返還とは、ある物を法的所有者に返すことを意味するが、返還の行為は物事を適切な調和、秩序へと戻す試みであると主張された。文化財返還を単なる物的移動に終わらせるのではなく、元あった場所の集団的記憶の回復、文化遺産の再社会化、記憶の再構築が必要だとされた。そして文化財の意義を広く世界的に共有して、人類の創造性を豊かにさせる新しい倫理関係を結ぶため、巡回の重要性が提案された。

 第2章では、フランスの公共博物館・コレクションにどのようなアフリカの文化財があるのか具体的に分析され、返還の段取り・過程が提案された。アフリカ文化財はおもに3つの集積場所、つまり第1に国家の中心であるパリ、第2にアフリカとの交易拠点だった海岸都市、第3に相続をへて寄贈・贈与によって博物館に所蔵された。パリのケ・ブランリ美術館(ケ・ブランリ-ジャック・シラク美術館、musee du quai Branly-Jacques Chirac)に収蔵されているサハラ以南のアフリカ文化財約70,000 点を分析してみると、コレクションの収蔵に3つの時期が考えられる。最初の時期は、ヨーロッパ列強の間でアフリカの分割をめぐって合意が確定されたベルリン会議(1884/85 年)以前の時期。2番目は、アフリカ諸国が独立する1960 年までの植民地時代の時期。3番目は、1960 年代から今日までである。

 1885 年より前に博物館に収蔵されたアフリカ・コレクションは1,000 点にも満たない。1885 年から1960年まで、文化遺産の文化財数量は45,000 点と激増し、博物館にあるアフリカ・サハラ以南のコレクション全体の66 パーセントに相当するのだが(図5a)、植民地征服の局面(1914 年まで)と永続的な植民地統治の局面(1960 年まで)に等しく分割される。



図5a  緑:1885 年以前、青:1885-1960 年、黄:1960 年以降


 この重大な増加は、1920 年代末にはじまった民族調査の漸次的発展によってはっきりと説明でき、1928~38 年の10 年間だけで、20,000 点が目録から見つかるのである。コレクションは増加し続け、1960 年以降も20,000 点の文化財がある。

 典型的状況がフランスの植民地であったカメルーンについて見られる。1885 年までカメルーンに起源
する文化財はわずか3 点しかない。1885 年から1960年までの間、6,968 点もの文化遺産の文化財が見つかる一方、1960 年以後は713 点しかない(図5b)。



図5b

 反対にかつてイギリスの植民地だったガーナやナイジェリアからの数量は、それらの国が独立した後に増加しているのである。ナイジェリアからの文化財は、1885 年以前には41 点、1885 年から1960 年までは254点だけだったが、1960 年以後に840 点も取得している(図5d)。同じ状況がガーナの事例でも見られる。1885 年以前には5 点、1885 年から1960 年までは376点、そして1960 年以後は1,258 点である。アフリカ独立後もパリの文化施設が、不断にコレクションの体系的多様性を追求し続けた結果、増大したと推測された。



図5d


 こうした現状をふまえて、象徴的物件の公式返還をする第1段階(2018 年11 月-2019 年)、目録化やデジタル・ファイルの共有を通して自由なオンライン・アクセスの設定、合同委員会を設置して返還の組織化を進める第2段階(2019 年春-2022 年11 月)、そして第2段階に継続して文化財の移籍などを進める第3段階(2022 年11 月-無期限)が提案された。

 第1段階の公式返還に選ばれた物件は、1ベナンへ:1892 年の征服戦争でダホメー王国の王都アボメー宮殿から持ち出されたゲゾ王をイメージしたボチョ像、人間-動物型彫像、王座など。2セネガルへ:19 世紀後半にセグーから獲得した戦利品(エル・アジ・オマル・タル/アマドウの「財宝」)であるペンダント、ネックレスなど。3ナイジェリアへ:1897 年のイギリス軍によるベニン懲罰遠征に由来するベニン青銅器など。4エチオピアへ:ダカール・ジブチ調査で1932 年にゴンダールの聖アオントワーヌ教会(アバ・アントニュース)の壁から引きはがされた壁画。5マリへ:1930 年代の調査で持ち出された仮面など。6カメルーンへ:1934 年の調査で持ち出された王座。以上6ヶ国への返還が想定された。


ゲゾ王をイメージしたボチョ像(ベナン)



ベニン青銅器(ナイジェリア)


 第3章では、法律問題が検討された。フランスでは公共コレクションの譲渡不可が、法律によって規定されている。つまり博物館に収蔵されているコレクションからアフリカのものだけを選んで、元来あった国へ所有権を移すことができないのである。この問題の袋小路を脱するための妙案として、例外を設けることである。2002 年にサラ・バートマン(別名ホッテントット・ビーナス)が南アフリカへ返還された。2010 年にマオリ頭部がニュージーランドに返還された。死者の威厳を尊重して、人間の遺骸を返還するという例外が起きている。

 第2次世界大戦時の大量なナチス略奪美術品の返還については、戦時暴力による取得を問題視する国際規範が成立している。博物館コレクションには、暴力やペテン、あるいは「植民地的環境」という非対等な不正的状況によって取得された物件が多数見つかる。国家によって援助された学術調査、新しい領土の征服と探検による文化財のコレクションも、大部分は軍事行動の影響に並行して入手されたのである。暴力による過去の結果の類似性を考えるならば、植民地時代に同じような状況で暴力的行為によって取得された物件の返還に対処できないのであれば、法律に疑問を発するのは当然だとされた。

 そこで法律を改定し、2国間合意にもとづく例外を認めることにしようという提案がなされた。この試案は法律家たちとの討議によって生まれたようだが、今後の行方に注目したい9)

2.フランスとアフリカの反応
 返還レポートが公表された11 月23 日に、マクロン大統領はサルとサヴォワの2人に会見した後、ベナンへ26 件の文化財を返還するように指示した10)。さらに翌年4 月にパリで文化財返還に関するヨーロッパ-アフリカ会議を開催することを提案した11)

 返還レポートの発表後、フランス内外で大きな反響が起きた。日本ではフランスの返還政策は報道されず、わずかに12 月17 日にNHK 衛星放送で解説されただけだった12)

 パリのケ・ブランリ美術館は、人類博物館、アフリカ・オセアニア美術館を統合して2006 年に設立された新しい博物館で、アフリカ・アジア・オセアニア・アメリカの「原始美術」文化財を多数収蔵・展示している。ステファン・マルティン館長は返還レポートを批判して、植民地時代のものはすべて不道徳に集められたのではないと、博物館側を擁護した。また返還は特殊な事例に限るべきで、貸与、巡回によって対応できる、返還だけが唯一の解決策ではなく、さもないとヨーロッパの博物館を空っぽにしてしまうと語った13)

 古物商組合の会長は、他の地域、時代のものにも影響をおよぼしかねない、相談もなく一方的に返還レポートが作成されたとして怒りをあらわにした。先住民族の文化財を取り扱う古物商は、文化財を収集・保存し、情報を文書化してコレクション形成を助けているのに、彼らは誤解されていると感じ、また返還に向けて法律の枠組みが欠如していることを指摘した14)

 市場関係者が動揺するなか、12 月12 日に行なわれたアフリカ・オセアニア美術のパリ・サザビーのオークションは好調で、440 万ユーロ(約5 億4,800 万円)の取引出来高だった。最高額だったのはコンゴ民主共和国からの頸台で175 万ユーロ(約2 億1,800 万円)。マリからの頭部衣装は予想価格の倍以上となって69万3,000 ユーロ、象牙海岸(コート‐ディヴォアール)からの彫像も予想の倍以上の18 万7,000 ユーロだった。

 旧植民地であったアフリカ側の反応を見てみよう。かつてナイジェリアにあったベニン王国から、1897年にイギリスの懲罰遠征で持ち出された文化財について、現地で展示する合意声明が、返還レポートの公表される直前の10 月19 日に発表された15)。軍事遠征で持ち出された文化財は、イギリスをはじめ欧米各国に約2,400 点収蔵されている。ナイジェリアは1960 年の独立以来たびたび返還を要求してきたが、返還は実現していない。

 そこで所蔵しているイギリス、ドイツ、オーストリア、オランダ、スウェーデンの10 ヶ所の博物館と地元の機関とによって、2007 年に「ベニン対話グループ、Benin Dialogue Group」が結成され、長らく返還について討議が進められた。そしてグループが誕生して10 年以上たってから、ようやく合意に達し2018 年に声明が出されたのである。合意によると、ナイジェリアのベニン市に博物館を建設し、それぞれの所蔵機関が輪番で文化財を貸与して展示するという解決策だった。貸与であって所有権移行をともなう返還ではない。このグループにフランスの機関は参加していないが、討議および合意の内容は、返還レポートにも影響をあたえたと思われる。

 返還レポートが発表されると11 月27 日にセネガルの文化相が、フランスにあるセネガルの文化財すべて、10,000 点あるならのならば10,000 点を返してほしいと表明した16)。セネガルの首都ダカールには、中国からの3,050 万ユーロ(約37 億9,000 万円)の援助で建設された黒人文明博物館が12 月6 日に開館された17)。すでに中国はアフリカで多額のインフラ投資を行なっているが、セネガルの博物館は中国の資金で建設された最初の大きな博物館である。博物館側は、今までヨーロッパだけとの交渉だったので、中国の役割は新しい可能性を開くと期待をよせている。

 セネガルに続いて象牙海岸も100 点の返還を表明し18)、12 月19 日に文化相が、148 点の返還リストを作成したと声明した19)。象牙海岸の文化財はパリのケ・ブランリ美術館に4,000 点、ニューヨークのメトロポリタン美術館に4,000 点、スイスのリートベルグ博物館に3,000 点所蔵されている。突如大量に文化財を返還されても置く場所もなく、作品を収納する環境を整えなければならない。首都アビジャン近郊に世界的レベルの博物館が2022~23 年に開館する予定で、博物館など12 ヶ所の文化センターも国中に建てられる。返還された美術品は展示して巡回されると文化相は語った。

 セネガルと象牙海岸の反応は異なり、一方は全部、もう一方は一部の返還を求めた。概して返還レポートは、アフリカ諸国の間で好意的に受け止められている。

 ベルギーの旧植民地だったコンゴも返還要求に向けて動いている。韓国の援助で首都キンシャサに建設中の国立博物館が来年6 月に開館する時、ベルギーのアフリカ博物館のコレクションから公式に返還を要求すると、コンゴ民主共和国の大統領がベルギーの新聞に語った。アフリカ博物館はブリュッセル郊外テルヴレン宮殿にあり、5 年の歳月、7,400 万ユーロ(約91 億9,500 万円)の経費をかけて改装され、12 月8 日に一般公開された。コンゴ大統領のコメントはその前日に発表された20)。博物館で所蔵する12 万点以上の文化財は、ほとんどコンゴから持ち出されたとされている。

 旧イギリス領だったナイジェリアのラゴス州から、2 月1 日にランダー・ストール(the Lander Stool)の返還要求が大英博物館に出された21)。この木製の椅子はイギリスの探検家リチャード・ランダーが1830 年に持ち出したもので、植民地統治下で最初に流出した象徴的物件である。ラゴスでヨルバ歴史文化ランドル・センターが2019 年5 月に開館する予定なので、ラゴス州は多数の文化財の貸与を大英博物館に申し入れ、なかでもランダー・ストールは開館展示の目玉とされている。

 返還レポートで分析されたように、1885 年以前にアフリカの文化財はほとんどフランスに存在していない。アフリカのものを美術品と認識するヨーロッパの美意識は、19 世紀末に確立したと考えられるので、1830 年にイギリスにもたらされたランダー・ストールの歴史的意義は重要だろう。

3.ヨーロッパ各国の動き
 返還レポートの反響は、フランスやアフリカ諸国に限らず、大きな博物館のある旧植民地宗主国のヨーロッパ各国にもおよんだ。

 世界中の植民地から多数の文化財が集められて、所蔵するイギリスでは、返還要求が次々に続いている22)。まず大英博物館では、ギリシャのパルテノン神殿から持ち出されたエルギン・マーブルズや、エジプトで出土したロゼッタ・ストーンなどの返還要求が有名である。最近の事例では、チリ・イースター島から1868年に持ち出されたモアイ像の返還要求が2018 年11 月に、イタリアの文化遺産省から紀元前30~10 年頃の大理石墓石彫像の返還要求が2018 年4 月に出された。

 大英博物館以外では自然史博物館に、ジブラルタル政府からネアンデルタール人の頭骨をふくむ人骨化石の返還要求が2018 年9 月に、同じく自然史博物館に、チリ政府からダーウィンのナマケモノと呼ばれている絶滅動物の化石返還の要求が2018 年8 月に出された。15 年かけて改装され2 月8 日に開館したスコットランド国立博物館では、突然披露された1872 年に持ち出されたというピラミッドの石をめぐり、エジプト政府は文化財の違法性を疑い、取得に関する文書呈示を求めた23)

 フランスで返還レポートが発表され、大統領が具体的にベナンへの文化財返還を声明すると、返還への圧力がイギリスでも高まった。1 月末に、大英博物館のハートウィグ・フィッシャー館長が、エルギン・マーブルズは返さない、持ち出しは「創造的活動」と語ったと報道されると、内外で強い反発をよんだ24)。文化財返還に関心が高まるなか、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館、大英博物館、オックスフォードのピット・リバー博物館では、植民地時代の文化財について出所調査を強化し、透明性を高めてラベルを書き換えるとしている25)

 なおスコットランド国立博物館は、カナダの先住民族ベオサックの首長と妻の遺骸を返還することを1月に決めた26)。博物館は彼らの遺骸を1850 年代に入手し、2018 年7 月にカナダ政府から返還要求が出されていた。また3 月にはロンドンの軍事博物館が、1868 年にマグダラの戦いに敗れて自死したエチオピア皇帝テオドロス2世の髪を返還することにした27)。2018 年4 月にエチオピア大使館が返還を要求していた。イギリス軍は戦いの後に、黄金の王冠や多数の写本などを奪い去り、エチオピアは返還を要求しているのだが、実現していない。イギリスの博物館は文化財の返還を拒否する一方で、人間の尊厳にかかわる人骨や遺骸の返還を進めている。

 マクロン大統領の演説に続いて、ドイツでも返還が取りざたされるかもしれないと憶測されたが、結局メルケル首相は何らの反応もしめさなかった。代わって2018 年5 月14 日に、ドイツ博物館協会から『植民地的状況で得られた文化財の取扱いガイドライン(Leitfaden zum Umgang mit Sammlungsgut aus kolonialen Kontexten / Guidelines for dealing with artefacts acquired from colonial contexts)』(博物館協会のホームページからダウンロードできる)が刊行され28)、モニカ・グリュッター文化相が紹介した29)

 このガイドラインは植民地的状況を記した概説本で、本文約100 頁のうち半分の50 頁にわたって歴史的背景が詳述されている。本の題名がしめすように「取扱い(Umgang / dealing)」に焦点があてられ、ドイツにおける具体的な収蔵状況や返還に関する手段・法律については触れられていない。疑問点に対するQ&Aも付記されているので、返還に向けてのガイドラインというよりも、博物館職員用の植民地文化財の取扱い解説書に近いだろう。とはいえ、かつて世界中の植民地からどのように文化財を収集したのか、詳しく記載されているので参考となる点が多い。

 博物館協会によると、10 月に原産の国々の代表とともに内部のワークショップで議論をかさね、2019年春に改訂版を刊行するとしている。おそらく第2 版で返還について具体的な論議が展開されると思われる。

 ベルリンの博物館島でドイツ皇帝宮殿跡に、フンボルト・フォーラムという大きな民族美術館が2019 年末に開館される予定である。開館を前にして、過去の植民地の扱い方、植民地時代に奪ってきた文化財の展示方法などをめぐり、広く議論が起きている。ナミビア系ドイツ人の政治学者ヘミング・メルベルは、植民地主義の犯罪をテーマにした展示室を設けるべきだと主張している30)。フランスの返還レポート執筆者の一人であるサヴォワは、フンボルト・フォーラムの学術顧問委員を務めていたが、植民地からの文化財に対して、出所調査など透明性を高めるべきだとして、2017年夏に辞任してしまった31)

 フランスの返還レポート発表後、ドイツでも返還への圧力が高まった。2019 年2 月初頭にグリュッター文化相は、植民地時代コレクションの出所調査のため190 万ユーロ(約2 億4,000 万円)を支出すること、2015 年に設立され、おもにナチス略奪美術品の返還を行なっているドイツ損失美術品基金(the German Lost Art Foundation)が管轄することを声明した32)。さらに3 月13 日に16 州の文化相が、今日法的、倫理的に正当化できない植民地から持ち出された文化財の返還に合意した33)。この合意は画期的なもので34)、フランスに続いてドイツも、植民地時代に得られた文化財の返還へと動き出したのである。

 なお2 月にシュトゥットガルト市は、ナミビアの国民的英雄ヘンドリック・ウィッチボーイから奪った聖書と鞭を返還すると表明した35)。ウィッチボーイはドイツの植民地統治に抵抗したナマ-ヘレロ暴動の指導者の一人で、保護条約の調印を拒否したため1893 年にドイツ軍によって報復され、略奪された。聖書と鞭は1902 年に、シュトゥットガルトのライデン博物館へ寄贈された。ドイツは2004 年にナマ-ヘレロ虐殺を公式に謝罪している。

 ベルギーでは、2018 年12 月初頭にアフリカ博物館が改装開館した。この博物館の前身は王立中央アフリカ博物館(テルヴレン宮殿)で、ベルギー国王レオポルド2世がコンゴでの帝国的野心を推進しようと、人間動物園をふくめ戦利品展示のため1898 年に建てられたのである。見世物として連れてこられた7 人のコンゴ人は1897 年に死亡し、宮殿近くに埋葬されたという。改修のため2013 年に閉館される前まで、「コンゴに文明をもたらした」と無批判に描かれた白人宣教師像が見学者たちを迎えていた36)。つまり植民地主義、人種主義の濃厚な博物館として知られていた。博物館側は、改装にあたり脱植民地化に努力したと述べている37)

 12 万点以上の収蔵品のほとんどがコンゴ由来とされている。1970 年代に165 点が返還されたが、数年後に盗まれてしまい、受け入れ国のずさんな管理体制が今でも問題視されている。現国王は、大陸から略奪された文化財をめぐる論争に巻きこまれるのを恐れ、開館式典を欠席した38)

 オランダも、返還へと動きはじめた。2019 年3 月7 日に熱帯博物館、民族学博物館、アフリカ博物館の3 館からなる世界文化博物館(NMVW、Nationaal Museum van Wereldculturen)が、文化財返還に関する規定を旧植民地向けに公表し39)、スリランカやインドネシアなどとの協議に備えた40)。世界文化博物館のスチジン・シュクーンデルウォルド館長は、権力関係がすこぶる相違して不正な時期だった植民地時代にコレクションが獲得された。今日の国際条約によると、シリヤから盗まれたものは我々のコレクションとはならない、この原則をなぜ100 年前に盗まれたものへあてはめることができないのだと語っている41)。アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)も同調し、タコ・ヂッビツ館長は旧植民地諸国へ積極的に協議を働きかけると述べている42)

おわりに
 マクロン大統領の文化財返還の演説と返還レポートは、ヨーロッパ中に衝撃をあたえている。その背景に、植民地主義は非人道的だった、植民地主義を清算するという脱植民地主義(decolonize)の動きが世界的流れとなっているからである。今やかつてのヨーロッパ列強諸国は植民地時代に起きた虐殺に謝罪したり、略奪された文化財の返還を進めている。

 近代日本は「脱亜入欧」をかかげ、欧米列強の帝国主義を手本にして東アジアを侵略し、植民地を拡大していった。近年日本では歴史修正主義者が跋扈し、過去の帝国主義や軍国主義を礼賛したり、近隣の植民地支配を正当化する動きが強まっている。日本の動向は、脱植民地主義の歴史的潮流に真逆の方向だといえるだろう。少なくとも文化財に関しては、フランスの返還政策が報道されず話題にもなっていないことから、日本は世界の流れから孤立し、取り残されつつあるように見える。


参考
2022年の動向
森本和男「ドイツがベニン青銅器を返還 -「パンドラの箱が開いた」-」(2023年7月)
2021年の動向
森本和男「フランスがアフリカに文化財を返還 -各国で確実に進む返還の準備」(2022年6月)
2020年の動向
森本和男「ブラック・ライヴズ・マターとモニュメント・文化財 -加速する脱植民地化の動き-」(2021年11月)
2019年の動向
森本和男「フランスの文化財返還レポートから1年 -欧米の脱植民地化の流れと文化財- 」(2020年4月27日)



1) Emmanuel Macron Says Return of African Artifacts Is a Top Priority (the New York Times 2017/11/29)
 https://www.nytimes.com/2017/11/29/arts/emmanuel-macron-africa.html
2) Emmanuel Macron’s speech at the University of Ouagadougou (Élysée)
 https://www.elysee.fr/emmanuel-macron/2017/11/28/emmanuel-macrons-speech-at-the-university-of-ouagadougou.en
3) French presidential hopeful Macron calls colonisation a ‘crime against humanity’ (France24 2017/02/16)
 https://www.france24.com/en/20170216-france-presidential-hopeful-macron-describes-colonisation-algeria-crime-against-humanity
4) Macron Promises To Return African Artefacts In French Museums: A New Era In African-European Relationships Or A Mirage? (Modern Ghana 2017/12/10)
 https://www.modernghana.com/news/821779/macron-promises-to-return-african-artefacts-in-french-museum.html
  President Macron, African art and the question of restitution (Financial Times 2018/09/07)
 https://www.ft.com/content/be73f54c-ad30-11e8-8253-48106866cd8a
5) After a Promise to Return African Artifacts, France Moves Toward a Plan (the New York Times 2018/03/06)
 https://www.nytimes.com/2018/03/06/arts/design/france-restitution-african-artifacts.html
6) Patrimoine annexé. Les biens culturels saisis par la France en Allemagne autour de 1800, 2 vol. Paris. 2003.
7) 'Give Africa its art back', Macron's report says (the Art Newspaper 2018/11/20)
 https://www.theartnewspaper.com/news/give-africa-its-art-back-macron-s-report-says
  In a Groundbreaking Report, Experts Advise French President Macron to Begin the ‘Restitution’ of Looted African Art (artnet news 2018/11/20)
 https://news.artnet.com/art-world/french-restitution-policy-macron-1399429
  Museums in France Should Return African Treasures, Report Says (the New York Times 2018/11/21)
 https://www.nytimes.com/2018/11/21/arts/design/france-museums-africa-savoy-sarr-report.html
  Macron advised to return looted African art treasures (ArtDaily 2018/11/22)
 http://artdaily.com/news/109331/Macron-advised-to-return-looted-African-art-treasures#.XOX62_7gqf2
  Return of African Artifacts Sets a Tricky Precedent for Europe’s Museums (the New York Times 2018/11/26)
 https://www.nytimes.com/2018/11/27/arts/design/macron-report-restitution-precedent.html
  Restitution Report: museum directors respond (the Art Newspaper 2018/11/26)
 https://www.theartnewspaper.com/comment/restitution-report-museums-directors-respond
  It’s Not Just Art That Indigenous People Are Fighting to Reclaim From Museums. They Want Their Ancestors’ Remains Back, Too (artnet news 2018/11/29)
 https://news.artnet.com/market/its-not-just-art-that-indigenous-peoples-want-back-from-museums-they-want-their-ancestors-human-remains-too-1397737
  ‘It Still Belongs to Africa’: Trevor Noah of ‘The Daily Show’ Says Colonial-Era Art Should be Returned—With Interest (artnet news 2018/12/18)
 https://news.artnet.com/art-world/daily-show-restitution-african-art-1423081
  Artwork Taken From Africa, Returning to a Home Transformed (the New York Times 2019/01/03)
 https://www.nytimes.com/2019/01/03/arts/design/african-art-france-museums-restitution.html
  The Fight to Repatriate African Skulls in European Museum Collections (Vice 2019/01/26)
 https://www.vice.com/en_us/article/qvyp95/the-fight-to-repatriate-african-skulls-in-european-museum-collections
  The Sarr-Savoy Report & Restituting Colonial Artifacts (Center for art law 2019/01/31)
 https://itsartlaw.org/2019/01/31/the-sarr-savoy-report/
  LOOTED BENIN ARTEFACTS: ANY HOPE OF RETURN, 122 YEARS AFTER? (the Nigerian Observer 2019/03/06)
 https://nigerianobservernews.com/2019/03/looted-benin-artefacts-any-hope-of-return-122-years-after/
8) The Restitution of African Cultural Heritage. Toward a New Relational Ethics
 http://restitutionreport2018.com/
9) Legal challenges remain for restituting African artefacts from French museums (the Art Newspaper 2018/11/28)
 https://www.theartnewspaper.com/comment/french-report-calls-for-massive-restitution-of-african-artefacts-while-macron-promises-return-of-26-items-to-benin
  The repatriation debate intensifies as calls for post-colonial restitution grow—but is it legal? (the Art Newspaper 2018/12/27)
 https://www.theartnewspaper.com/analysis/calls-for-post-colonial-restitution-grow-but-is-it-legal
10) France to return 26 artworks to Benin (ArtDaily 2018/11/24)
 http://artdaily.com/news/109396/France-to-return-26-artworks-to-Benin#.XOYfU_7gqf2
  On the Heels of a Dramatic Restitution Report, France Is Returning 26 Artifacts to Benin. Will Other Countries Follow Suit? (artnet news 2018/11/26)
 https://news.artnet.com/art-world/macron-26-benin-bronzes-restitution-1402570
11) French President Emmanuel Macron calls for international conference on the return of African artefacts (the Art Newspaper 2018/11/26)
 https://www.theartnewspaper.com/news/french-president-emmanuel-macron-calls-for-international-conference-on-the-return-of-african-artefacts
12) 議論広がる文化財の返還問題 (NHK 2018/12/17)
 https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/catch/archive/2018/12/1217.html
13) A French Museum Director Pushes Back Against a Radical Report Calling on Macron to Return Looted African Art (artnet news 2018/11/28)
 https://news.artnet.com/art-world/quai-branly-president-macron-africa-restitution-report-1404364
  French museum chief hits back at call to return African artt (ArtDaily 2018/11/28)
 http://artdaily.com/news/109503/French-museum-chief-hits-back-at-call-to-return-African-art#.XOYjDv7gqf2
14) French antiquities dealers slam ‘shocking’ report on restituting African art (the Art Newspaper 2019/01/03)
 https://www.theartnewspaper.com/news/french-antiquities-dealers-slam-shocking-report-on-restituting-african-art
15) Statement from the Benin Dialogue Group
 http://docs.dpaq.de/14096-statement_from_the_benin_dialogue_19_october_2018_16.33.pdf
16) Senegal wants restitution of 'all' its artwork: minister (ArtDaily 2018/11/28)
 http://artdaily.com/news/109502/Senegal-wants-restitution-of--all--its-artwork--minister#.XOYrZf7gqf2
  Senegal and Ivory Coast will ask for return of objects in French museums (the Art Newspaper 2018/11/29)
 https://www.theartnewspaper.com/news/senegal
  Senegal and the Ivory Coast Ask France to Return Looted Art in the Wake of a Groundbreaking Restitution Report (artnet news 2018/11/29)
 https://news.artnet.com/art-world/senegal-ivory-coast-france-repatriation-1405822
17) Black heritage museum, 'crucible of creativity', opens in Dakar (ArtDaily 2018/12/07)
 http://artdaily.com/news/109720/Black-heritage-museum---crucible-of-creativity---opens-in-Dakar#.XOYtD_7gqf2
  Senegal Unveils a Vast Museum That Raises the Stakes in Africa’s Campaign to Reclaim Its Art (artnet news 2018/12/07)
 https://news.artnet.com/art-world/museum-of-black-civilizations-1409911
  Senegal’s Museum of Black Civilizations Welcomes Some Treasures Home (the New York Times 2019/01/15)
 https://www.nytimes.com/2019/01/15/arts/design/museum-of-black-civilizations-restitution-senegal-macron.html
18) Ivory Coast to ask France to return a hundred works of art (ArtDaily 2018/11/30)
 http://artdaily.com/news/109567/Ivory-Coast-to-ask-France-to-return-a-hundred-works-of-art#.XOYs8_7gqf2
19) Ivory Coast calls on France to return 148 artworks (ArtDaily 2018/12/20)
 http://artdaily.com/news/110039/Ivory-Coast-calls-on-France-to-return-148-artworks#.XOYtdP7gqf2
  The Ivory Coast Drafts a Long List of the Colonial-Era Works It Wants Back From France (artnet news 2018/12/20)
 https://news.artnet.com/art-world/ivory-coast-148-works-from-france-1426252
20) DR Congo to request restitution of works from former coloniser Belgium (the Art Newspaper 2018/12/10)
 https://www.theartnewspaper.com/news/africa-museum-in-belgium
21) Nigerian Officials Want the British Museum to Return the First Object Taken From the Country During the Colonial Period (artnet news 2019/02/04)
 https://news.artnet.com/art-world/lander-stool-1455775
  Nigeria calls for return of Lander Stool from the British Museum (the Art Newspaper 2019/02/04)
 https://www.theartnewspaper.com/news/nigerian-culture-officials-seize-initiative-in-restitution-debate
22) Museums grapple with rise in pleas for return of foreign treasures (the Guardian 2019/02/18)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2019/feb/18/uk-museums-face-pressure-to-repatriate-foreign-items
  Night in the museum: How Britain could lose its marbles and a host of other treasures (Express 2019/03/07)
 https://www.express.co.uk/news/history/1097098/museums-britain-marbles-treasures-british-museum
23) Pyramid stone row: Egypt asks Museum of Scotland for papers (the Guardian 2019/01/10)
 https://www.theguardian.com/world/2019/jan/10/pyramid-stone-giza-row-egypt-asks-museum-of-scotland-for-papers
  Museum of Scotland says Egyptian pyramid stone is not stolen (the Guardian 2019/02/06)
 https://www.theguardian.com/culture/2019/feb/06/museum-of-scotland-says-egyptian-pyramid-stone-is-not-stolen
  A Dispute Over a Fragment of the Great Pyramid Overshadows the National Museum of Scotland’s $104 Million Revamp (artnet news 2019/02/08)
 https://news.artnet.com/art-world/national-museum-scotland-pyramid-stone-1459483
24) British Museum chief: taking the Parthenon marbles was 'creative' (the Guardian 2019/01/28)
 https://www.theguardian.com/artanddesign/2019/jan/28/british-museum-chief-taking-the-parthenon-marbles-was-creative
  The British Museum Says It Will Never Return the Elgin Marbles, Defending Their Removal as a ‘Creative Act’ (artnet news 2019/01/28)
 https://news.artnet.com/art-world/british-museum-wont-return-elgin-marbles-1449919
  British Museum Director Calls Keeping Parthenon Sculptures a "Creative Act" (Art Fix Daily 2019/01/29)
 https://www.artfixdaily.com/news_feed/2019/01/29/422-british-museum-director-calls-keeping-parthenon-sculptures-a-creat
25) UK museums task staff with identifying 'stolen' colonial collections (the Telegraph 2019/01/01)
 https://www.telegraph.co.uk/news/2019/01/01/uk-museums-task-staff-identifying-stolen-colonial-collections/
  British museums to relabel colonial treasures (the Telegraph India 2019/01/23)
 https://www.telegraphindia.com/world/british-museums-to-relabel-colonial-treasures/cid/1682545
26) Remains of 2 Beothuk people to be transferred from Scotland to Canada (CBC.CA 2019/01/21)
 https://www.cbc.ca/news/canada/newfoundland-labrador/beothuk-remains-transfer-1.4986453
  Museum to return First Nation skulls (BBC 2019/01/21)
 https://www.bbc.com/news/uk-scotland-edinburgh-east-fife-46952065
27) London’s National Army Museum to return emperor's hair to Ethiopia (the Art Newspaper 2019/03/04)
 https://www.theartnewspaper.com/news/london-s-national-army-museum-to-return-emperor-s-hair-to-ethiopia
28) Guidelines on Dealing with Collections from Colonial Contexts (Detscher Museumsbund)
 https://www.museumsbund.de/publikationen/guidelines-on-dealing-with-collections-from-colonial-contexts/
29) Germany moves slowly on returning museum exhibits to ex-colonies (the Guardian 2018/05/17)
 https://www.theguardian.com/world/2018/may/17/germany-resists-returning-museum-exhibits-to-ex-colonies
  Germany’s Answer To Macron On Restitution Of African Artefacts: Guidelines For Handling Colonial Artefacts? (Modern Ghana 2018/05/22)
 https://www.modernghana.com/news/855718/germanys-answer-to-macron-on-restitution-of-african-artefac.html
30) Berlin museum stirs debate with plans for colonial era remembrance room (DW 2019/01/30)
 https://www.dw.com/en/berlin-museum-stirs-debate-with-plans-for-colonial-era-remembrance-room/a-47282724
31) Colonial art restitution: 'The desire is not to wipe museums clean' (DW 2019/01/23)
 https://www.dw.com/en/colonial-art-restitution-the-desire-is-not-to-wipe-museums-clean/a-47194605
32) Germany allocates €1.9m for museums to research colonial-era acquisitions (the Art Newspaper 2019/02/05)
 https://www.theartnewspaper.com/news/germany-allocates-eur1-9m-for-museums-to-research-colonial-era-acquisitions
  The German Government Is Putting More Than $2 Million Behind Restitution Research Into Objects From Colonial Contexts (artnet news 2019/02/05)
 https://news.artnet.com/art-world/germany-restitution-1456681
33) Erste Eckpunkte zum Umgang mit Sammlungsgut aus kolonialen Kontexten der Staatsministerin des Bundes für Kultur und Medien, der Staatsministerin im Auswärtigen Amt für internationale Kulturpolitik, der Kulturministerinnen und Kulturminister der Länder und der kommunalen Spitzenverbände
 https://www.bundesregierung.de/resource/blob/973862/1589206/3c890df9817f100acf6948d15de63a91/2019-03-13-bkm-anlage-sammlungsgut-data.pdf
  Framework Principles for dealing with collections from colonial contexts agreed by the Federal Government Commissioner for Culture and the Media, the Federal Foreign Office Minister of State for International Cultural Policy, the Cultural Affairs Ministers of the Länderand the municipal umbrella organisations
 https://www.auswaertiges-amt.de/blob/2210152/b2731f8b59210c77c68177cdcd3d03de/190412-stm-m-sammlungsgut-kolonial-kontext-en-data.pdf
34) Culture ministers from 16 German states agree to repatriate artefacts looted in colonial era (the Art Newspaper 2019/03/14)
 https://www.theartnewspaper.com/news/culture-ministers-from-16-german-states-agree-to-repatriate-artefacts-looted-in-colonial-era
  In a Landmark Resolution, German Culture Ministers Pledge to Lay the Groundwork to Return Colonial-Era Art (artnet news 2019/03/14)
 https://news.artnet.com/art-world/germany-declaration-on-restitution-1488250
35) Germany Is Returning Artifacts Stolen From a Namibian Freedom Fighter During Its Colonial Rule (artnet news 2019/02/15)
 https://news.artnet.com/art-world/germany-namibia-restitution-1467145
36) Haunted by colonial past, Belgium's Africa museum reopens after revamp (ArtDaily 2018/12/10)
 http://artdaily.com/news/109727/Haunted-by-colonial-past--Belgium-s-Africa-museum-reopens-after-revamp#.XOdJR_7gqf2
37) Belgium’s Africa Museum Had a Racist Image. Can It Change That? (the New York Times 2018/12/08)
 https://www.nytimes.com/2018/12/08/arts/design/africa-museum-belgium.html
  With a $84 Million Makeover, Belgium’s Africa Museum Is Trying to Appease Critics of the Country’s Colonial Crimes (artnet news 2018/12/08)
 https://news.artnet.com/art-world/africa-museum-restoration-1408924
38) Belgian king skips re-opening of 'looted' Africa museum (ArtDaily 2018/12/05)
 http://artdaily.com/news/109684/Belgian-king-skips-re-opening-of--looted--Africa-museum#.XOdJE_7gqf2
39) Return of Cultural Objects: Principles and Process, Nationaal Museum van Wereldculturen
 https://www.volkenkunde.nl/sites/default/files/2019-03/Claims%20for%20Return%20of%20Cultural%20Objects%20NMVW%20Principles%20and%20Process.pdf
40) The National Museum of World Cultures (Tropenmuseum, Amsterdam; Museum Volkenkunde, Leiden; Afrika Museum, Nijmegen) has published Return of Cultural Objects (NMVW Nationaal Museum van Wereldculture 2019/03/07)
 https://www.volkenkunde.nl/en/about-volkenkunde/press/dutch-national-museum-world-cultures-nmvw-announces-principles-claims
41) Dutch museums take initiative to repatriate colonial-era artefacts (the Art Newspaper 2019/03/14)
 https://www.theartnewspaper.com/news/dutch-museums-take-initiative-to-repatriate-colonial-era-artefacts
42) Rijksmuseum laments Dutch failure to return stolen colonial art (the Guardian 2019/03/13)
 https://www.theguardian.com/world/2019/mar/13/rijksmuseum-laments-dutch-failure-to-return-stolen-colonial-art
  The Rijksmuseum Becomes the Latest European Institution to Consider Returning Looted Artifacts From Its Collection (artnet news 2019/03/13)
 https://news.artnet.com/art-world/rijksmuseum-may-return-looted-artifacts-1487446