[2022年の動向]

ドイツがベニン青銅器を返還
-「パンドラの箱が開いた」-

森本和男

はじめに
ドイツ
フランス、オランダ、ベルギー
イギリス
ヨーロッパの他の国々
アメリカ
おわりに


はじめに

 フランスのマクロン大統領がアフリカの文化遺産返還を2017年に公言し、翌年画期的な文化財返還レポートが公表された。そしてようやく2021年11月にフランスからベナンへ26点の文化財が返還された。文化財返還の波はフランスに端を発し、2020年のブラック・ライブズ・マターの世界的抗議運動でさらに活気づいて、ドイツ、オランダ、ベルギーへと波及していった。

 実現した返還の数量は、ヨーロッパに蓄積された膨大な植民地文化財のほんのわずかにすぎないが、返還の流れは、後もどりできないほど定着しつつあるように見える。

 2022年の各国の動向を見てみよう。


ドイツ

 前年2021年4月29日にドイツの文化相、博物館館長、州文化相たちがベニン青銅器の返還、データベースの作成などについて合意し、ベニン青銅器の返還を公式に声明した1)。文化財返還に関する画期的ニュースとして世界中で報じられた。6月にはドイツの博物館が所蔵する約1,200点以上のベニン青銅器データベース「ドイツ・コンタクト・ポイント」が公開された2)

 ドイツとナイジェリアは返還にむけて合意に達し、2022年7月1日にベルリンで調印式が催行され、ベニン青銅器2点が手渡された3)。8月25日にはベルリンの民族博物館にある514点の所有権がナイジェリアに移行された4)。1,000点以上の物件の所有権をドイツからナイジェリアへ移してから、自国にもどしたいもの、あるいはドイツの博物館にそのまま貸与して文化大使の役割をはたすものを、ナイジェリア当局が決めることになる。

 11月にはベニン青銅器の世界的データベース「デジタル・ベニン Digital Benin 」が公開された5)。ハンブルグのローテンバウム世界文化博物館(Museum am Rothenbaum Kulturen und Künste der Welt、MARKK)が中心となり、エルンスト・フォン・ジーメンス芸術財団の150万ユーロ(約2億2,700万円)の助成金を利用して、2年間で制作された6)。世界20ヶ国131施設にあるベニン文化財5,246点のデータベースだけでなく、さまざまな材質・形態をしたベニン文化財の説明、ベニン王国の歴史、オーラル・ヒストリー、3Dモデル、塗り絵、単語カードなど、最新のデジタル技術を応用して多角的にベニン文化財について紹介している。子供でも楽しみながらベニンの歴史と文化を学習できるように工夫されている。

 なお前年に公開された在ドイツのデータベースも、世界中を対象とするデジタル・ベニンも、公的博物館に所蔵された物件情報のみ収録されていて、個人コレクションの情報はふくまれていない。

 年の暮れのおしつまった12月20日にナイジェリアの首都アブジャで、ドイツはベニン青銅器21点を手渡した7)

ナイジェリア外相ジョフリー・オニェアマに
ベニンの文化財を渡すドイツ外相アンナレーナ・ベアボック
artnet news 2022/12/21)


 アフリカ文化財の返還はベニン青銅器だけでなく、他の物件にも広がった。6月27日にプロシャ文化遺産財団(the Prussian Cultural Heritage Foundation)は、ベルリンの民族博物館にある民族資料23点をナミビアへ、マジ・マジ戦争やその他の植民地戦争で取得した戦利品をタンザニアへ、女神像ンゴンソ(Ngonnso')をカメルーンへ返還すると声明した8)

 ナミビアの物件は、ドイツとナミビア両国による学術共同プロジェクト「植民地過去に向き合い、創造的未来をえがく(Confronting Colonial Pasts, Envisioning Creative Futures)」の調査資料として、すでに5月にナミビアへ移送されていた。1860~90年の間に取得されたもので、はじめてナミビアの人たちに公開された。宝飾品や服などをふくむ日用品である。ナミビア人の視点から歴史の書き直しをめざして国立博物館で展示するという。

 ナミビアでは、ヨーロッパの博物館にあるとされる12,000点の文化財を受け入れる準備がまだできていない。研究や保存の学術スキルの蓄積や、専門家の養成が進められている。5月の時点では貸与であったが、6月の財団理事会の会合で正式に返還が決まった9)

 タンザニアの物件は、植民地戦争で戦利品としてドイツに持ち去られたものである。すでに2016年から、ドイツとタンザニア両国による出所調査のパイロット・プロジェクト(Tanzania–Germany: Shared Object Histories?)が開始されていた10)。また2024年にはフンボルト・フォーラムで大規模なタンザニアの展覧会が開催される予定である。展覧会終了後に、正式な文化財返還が行なわれるだろうと予想されている11)

 女神像ンゴンソは、カメルーン北西部のンソ王国(the Kingdom of Nso')から植民官クルト・フォン・パヴェル(Kurt von Pavel)が持ち出し、1903年にベルリンの民族博物館に寄贈された資料にふくまれていた。数年前から返還活動家シルヴィー・ンジョバティ(Sylvie Njobati)を中心に、地元の人たちによって「ンゴンソを取りもどす(Bring Back Ngonnso)」市民運動が進められた12)。女神像は、王国の首都クンボから戦争の略奪で持ち出されたのではなく、パヴェルが、戦闘もないのに兵士や武装した運搬人たちをともなって、威嚇的に取得したことが確認された。女神像はンソ人にとって中心的存在であり、母神とみなされている。

女神像ンゴンソ
Stiftung Preußischer Kulturbesitz 2022/06/27)

返還活動家シルヴィー・ンジョバティをまじえた女神像ンゴンソ返還に関する討論
Open Society Foundations 2022/08/05)


 ベニン青銅器の返還はおもにプロシャ文化遺産財団が中心となり、ドイツ政府によって推進されている。文化遺産財団は政府の予算で運営され、連邦法で1957年に設立された。国立の博物館、図書館、秘密文書館、ラテンアメリカ研究所、音楽研究所の5つの機関から構成されている。

 国立の博物館以外でも返還が進んだ。12月15日にケルン市は、ラウテンシュトラウフ=ヨースト博物館(Rautenstrauch-Joest-Museum)にあるベニン青銅器92点の返還にサインし、所有権が移された。3点を同月にもどし、89点を貸与にする。翌年52点を返し、残りを少なくとも10年間の貸与としてケルンにそのまま残す予定である13)

 返還やデータベースの作成に並行して、ハンブルグ大学ではナイジェリアとの共同研究が進められ、その研究成果として「ベニン青銅器。植民地から略奪された美術品のグローバル化(the Benin Bronzes. Globalising the Colonial Looting of Art)」という国際会議が10月25~26日に開催された。

 会議には、長年にわたり多数の論考でアフリカ文化財返還の論陣を張ってきた国連の元法律顧問クワム・オポク(Dr. Kwame Opoku)が講演した。オポクは、ベニン青銅器返還の歴史をたどってから、ドイツからすべてのベニン文化財の返還が確定したわけではない、ベニンの物件のみに視野が狭窄されている、エチオピアのアシャンティ黄金、ネフェルティティ胸像など数千のアフリカ文化財がヨーロッパにあると、返還の現況に苦言を呈した14)

 ベニン青銅器の返還で注目をあつめるドイツであるが、残念ながら、ネフェルティティ胸像やペルガモンの大祭壇を原産国へ返還する意向はまったくないと、議会で当局が言明した15)

 2022年にドイツの返還は、ベニン青銅器の話題でもちきりだった。その他、アフリカの文化財以外の返還については、ハワイの先住民族に遺骸32点を返すと、プロシャ文化遺産財団が2月に告げた。持ち出された先祖の遺骸を取りもどそうと、ハワイの先住民族代表団がベルリン、ブレーメン、ゲッチンゲン、イェーナ、ウィーンを訪ね、ドイツの4つの機関・施設から58点、ウィーンの自然史博物館から1点が返還された16)

 植民地時代の中国由来の文化財調査が、ドイツ損失美術品財団(the German Lost Art Foundation)の110万ユーロの助成金で進められることが2020年に報じられた17)。調査の一部として1900年の義和団事件を対象に、「ドイツ博物館コレクションに見られる義和団事件の痕跡(Traces of the 'Boxer War' in German Museum Collections)」という共同プロジェクトが、7館の博物館により2021年11月からはじまった。22万2,000ユーロの助成金で2年間続く予定である。まだプロジェクトは終了していないが、北京の紫禁城などから略奪され、ドイツで所蔵された文化財が数千点あるだろうと予想されている18)


フランス、オランダ、ベルギー

 フランスは前年2021年11月にベナンへ26点の文化財を返還した。返還された文化財は、2022年2月19日から3月22日まで首都コトヌーの大統領宮殿で現代美術品とともに展示された。19世紀末にフランス軍によって略奪された王室の文化財が、現代絵画や彫刻とならべられ、過去から現在へと芸術文化の歴史的つながりが強調された。展覧会は無料で公開され、盛況で20万人が訪れた19)

 2022年にフランスで返還に関する大きな動きはなかった。5月にパリを訪問したアルゼンチン大統領とマクロン大統領との会談後、19世紀末にフランス人がアルゼンチンから持ち出したテウェルチェ人(the Tehuelche)の首長の遺骸を返還すると、報じられた。パタゴニアの先住民族テウェルチェ人は長身の巨人として当時知られていたのだが、死亡して埋葬された首長の墓から骨が掘り出されてフランスに送られ、パリの人類博物館に収蔵されて2009年まで展示された。2015年にアルゼンチンから返還要求が出された。返還には議会の返還決議が必要である20)

 フランス議会では1月10日に元老院で、非ヨーロッパの返還を審問する専門家委員会の設置と、人間の遺骸返還を促進する法案が可決された。しかし下院の国民議会に上程される日程が組まれず、4月の大統領選挙を前にして審議される可能性はうすくなった。現状では返還の事例ごとに議会で法律を採択しなければならず、そのうえ議会に相談もなく大統領によるトップダウン式の決定に対して、元老院では反発が強まっていた。

 そこでマクロン大統領は法的制度の確立について、前ルーブル美術館長ジャン=リュック・マルティネス(Jean-Luc Martinez)に諮問した21)。その後5月に大規模な国際的文化財密輸事件の捜査がルーブル美術館にも波及して、マルティネスは起訴された22)

 6月の国民議会選挙で大統領与党は大敗して過半数割れとなった。2023年1月に文化省は返還に関する3本の法案、つまり遺骸の返還、ナチス時代の略奪美術品の返還、植民地からの略奪文化財返還についての法案を議会に提出した23)

 フランスは2020年7月に、19世紀の植民地戦争で戦利品として持ち出された戦士の頭骨24点をアルジェリアに返還した。しかしニューヨーク・タイムズ紙は、そのうち6点は確かに戦士の頭骨なのだが、残りの頭骨は戦士のものでないか、あるいは由来が不確かだった、しかも手渡した後も依然としてフランスの所有権のままだと報じた。あまりにも外交スケジュールを重視したために拙速に進められた返還の実情を暴露し、批判した24)

 パリの人類博物館には、旧植民地で集められた頭骨やアメリカ先住民族の頭骨をふくめ、18,000点の頭骨が収蔵されている。過去の歴史に暗い影を投げかけるこれらの頭骨について、いままで情報は公開されたことがなかった。他の国々とくらべて、フランスの人類博物館は透明性と説明責任を欠いて、遅れているとも批判された25)

 植民地文化財の返還に向けて先頭を切ったのはフランスだったが、具体的な返還の実績はとぼしい。2018年の画期的な返還レポートで提案された象徴的な植民地文化財の返還は、ベナン以外にほとんど実現していない。また目録作成、出所調査、デジタル化、原産国との合同委員会設置と組織化など、返還にともなうさまざまな事業は手つかずの状態である。内政で不人気なマクロン大統領が、歴史に向き合う外交を強調して、友好演出の小道具として散発的に文化財が返還されているようにも見受けられる。


 オランダでは2021年末から植民地文化財の調査が、世界文化博物館(Nationaal Museum van Wereldculturen、NMVW)とアムステルダム自由大学(Vrije Universiteit Amsterdam)を中心にして開始された26)。調査の成果としてすでに2冊のレポートが刊行された。2022年にはインドネシア由来の文化財46件を調査するパイロット・プロジェクトが実施され、そのうち33件に関する出所調査レポート、および最終レポートが公表された27)

 出所調査が進むなか、6月にインドネシアは8件のコレクション返還をオランダに要求し、10月にその返還リストが公表されて話題となった。インドネシアは、1894年のロンボク戦争でオランダ軍により宮廷から奪われた「ロンボク財宝」や、シンガサリ寺院から持ち出されたヒンズー教神像などとともに、ジャワ原人(ピテカントロプス)の頭骨と大腿骨をふくむウジェーヌ・デュボワ(Eugène Dubois)のコレクション返還をもとめた。

 デュボワは、人とサルとの進化の中間にあるいわゆるミッシング・リンクを探し求めて、1887年にインドネシアに赴任したオランダ軍医である。デュボワは原人化石以外にもさまざまな動物化石を採掘した。彼のコレクションは40,000点の化石からなり、現在ライデンのナツラリス自然史博物館(Naturalis)にある。自然史博物館では、地元の人たちが制作した美術品や財宝でない、自然産品である化石の返還をインドネシアが要求したことに驚いていた28)

 地球が国境で区画される以前の自然産物は特定の国家の所有に適するものではない、国家的財産というよりも普遍的遺産である、デュボワの主導がなければ発見できなかったのであり発見者が保持する、という見解を長年オランダ側はしめしていた。インドネシア側は、植民地的状況で取得され持ち出すのが容易だった、両国が対等のパートナーとして学術活動を連携できると主張している。

 要求に応えて、オランダの教育文化科学省では委員会を設置して問題を討議すると、省の報道官ジュールズ・ファンデヴァン(Jules van de Ven)は語った。「オランダ政府にとって重要なことは:どのようにして国のコレクションになったのか?」という点であり、「購入せずに取得し、寄贈でもなければ、返還する」と付け加えた。

 ザンビアは、ロンドンの自然史博物館にある約30万年前のローデシア人の頭骨を、1972年から返還を要求している29)。タンザニアは、ベルリンの自然史博物館の人気展示物であるブラキオサウルス・ブランカイ(Brachiosaurus brancai)の巨大恐竜化石の返還を、1980年代から要求している30)

 ケニアで発掘された霊長類プロコンスル・アフリカヌス(Proconsul africanus)の頭骨化石を、発見者のメアリー・リーキー(Mary Leaky)が1948年に大英博物館に貸与した。その時にケニア政府官房長は、一時的な貸与、頭骨はケニアの所有であり、将来回収されると規定していた。その後息子のリチャード・リーキー(Richard Leaky)がナイロビの国立博物館館長となり、ケニアから頭骨の返却が要請されると、大英博物館は寄贈品であり博物館の収蔵品だとして、長らく返還を拒否していた。1982年にメアリー・リーキーの秘書が、国立公文書館でケニア政府官房長の書簡を見つけても、博物館側はまったく認めようとしなかった。数ヶ月たって、大英博物館評議委員会で「売却 deaccession」となり、ようやく頭骨化石の返還が実現した31)

 ジャワ原人の化石がオランダの自然史博物館のものか、あるいはジャカルタのインドネシア国立博物館のものになるのか、この議論は博物館の脱植民地化の大きな流れや32)、他の著名な化石の返還にも影響をおよぼすと思われる。

 12月19日にオランダ首相マルク・ルッテが、奴隷制におけるオランダ国家のはたした役割について公式に謝罪した33)。奴隷制について話し合う諮問機関が前年7月に提出したレポートで、政府に謝罪を勧告していた。政府は、認識を高めて現代の奴隷制の影響にとりくむため2億ユーロ(約300億円)の基金を用意し、計画中の国立の奴隷制博物館を発展させると言及した34)

 オランダ王室でも脱植民地化が進行している。ウィレム=アレクサンダー国王(Willem-Alexander)は1月13日に、長年にわたり論争の的となっていた黄金馬車の使用を停止すると声明した。

 黄金馬車とは、毎年9月の議会開会式に出席するため国王夫妻が乗車する金色に飾られた荘厳な馬車のことである。1898年にオランダで最初の女王となったウィルヘルミナ女王(Wilhelmina)に、アムステルダム市が寄贈した。馬車に描かれた「植民地からの捧げもの(Tribute from the Colonies)」という絵画には、王座にすわる若い白人女性に黒人やアジア人が貢物をささげる様子が描かれていて、オランダの奴隷制、植民地主義を象徴するものとして、批判が高まっていた。

 2015年の使用後、約140万ドルかけて修復作業がほどこされ、修復後にアムステルダム博物館で展示されていた。前年には馬車の使用停止をもとめるネットの署名活動に9,000人の署名が集まっていた。引退となった黄金馬車は、他の馬車とともに王室きゅう舎に保管されるそうである35)

 11月に王室遺産を管理するオラニエ=ナッサウ家歴史コレクション財団(the Historical Collections Foundation of the House of Oranje-Nassau、SHVON)が、コレクションにふくまれている植民地由来の美術品や他の物件ついて、独立した出所調査を委託した。王室コレクションは私有財産なのだが、組織される予定の調査委員会による勧告は、政府の植民地コレクションの政策とできる限り同列となることが求められる。調査は少なくとも1年半かかると予想されている36)

 12月には国王が、植民地主義における王室の役割について独立した研究を委託した。16世紀から現代までを対象にして、3人の歴史家と1人の人権専門家が3年かけて調査する37)。7月にはオランダ中央銀行が、独立調査の結果にしたがって奴隷交易ではたした役割を謝罪し、奴隷制の悪影響を軽減するプロジェクトに10年間で1,000万ユーロを拠出すると語った。オランダの大手銀行であるABNアムロ銀行も、4月に奴隷交易の関与に謝罪した38)。奴隷制を推進したオランダの国家および主要な統治機構が、独立した調査の成果にもとづいて歴史的(植民地)責任を自覚し、次々に謝罪を行なっているのである。

 オランダでは社会全体で脱植民地化が進行している。そして植民地由来の文化財についても、不当な持ち出しは歴史的不正義であり是正しなければならないという倫理にしたがい、出所調査をして返還要求に応える準備をしているのである。


 ベルギーではアフリカ博物館所蔵品の目録作成が進められた。2月17日には、植民地時代のものとされる約84,000点の目録が、ベルギーのアレクサンダー・デ・クロー首相からコンゴのジャン=ミシェル・サマ・ルコンデ首相に手渡された。今後4年間に200万ユーロの予算で文化財調査が実施されるそうである。アフリカ博物館には約12万点が所蔵されていて、そのうちの約70%が目録でコンゴにしめされ、将来の返還の対象となる可能性が示唆された。

 目録は政府および関係する専門家だけが利用でき、一般には公開されなかったため、透明性に欠けると批判された39)

 コンゴを初訪問したフィリップ国王が、6月8日に首都キンシャサの国立博物館で、木製仮面をフェリックス・チセケディ大統領に手渡した。仮面は南西部のスク人(the Suku people)が儀式のときに使用するカクング仮面(the Kakungu)で、1954年にベルギーの研究者が購入したものである。所有権移転をともなう完全な返還ではなく、無期限貸与とされた。国王は、2020年6月30日のコンゴ独立60周年記念日に、コンゴ大統領宛ての書簡のなかで植民地支配を「痛惜の念」と表現した。しかし謝罪までにはいたらなかった40)

 国王がコンゴを訪問している最中に、議会では文化財返還の法律が審議されていた。6月30日に法案は代議院(下院)で可決されて7月3日に成立、9月28日に公布、10日後に施行された。ヨーロッパの帝国主義旧宗主国のなかで、植民地文化財の大規模な返還と順序を規定した最初の法律となった41)

 法律の要点をいくつか見てみよう。具体的な返還の対象となるのものは、ベルギー国家が所有する動産に限定された。連邦政府以外の施設、つまり自治体やコミュニティの施設のものや、あるいは個人が所有しているものは対象から除外された。また人間の遺骸と文書も対象から外された。返還過程はベルギー国家と原産国との間でのみ実行される。したがって原産国のコミュニティや個人は直接の当事者になれない。対象となる旧植民地の原産国はコンゴ、ルワンダ、ブルンジの3ヶ国に限定された。原産国との共同の出所調査の後に、ベルギー政府が公有財産から除籍と原産国への返還を決定する42)

 6月20日には、コンゴ独立の指導者で初代首相だったパトリス・ルムンバ(Patrice Lumumba)の、唯一残された遺骸である金歯が遺族に返還された。故国コンゴに運ばれた遺体は6月30日に埋葬された43)。2020年にブラック・ライブズ・マターの抗議活動がベルギーでも盛り上がりを見せていた頃、独立60周年記念日の6月30日にルムンバの娘が、唯一の遺骸を返してほしいとフィリップ国王に手紙を送った。そして同年9月に裁判所が、歯をコンゴの家族に返還すべきだと判決を下していた。

 ベルギーでもオランダと同様に、過酷な植民地支配を主導した王室をふくめて、社会全体で脱植民地化が進んでいる。植民地文化財の返還に関する新しい法律は、他の国々の返還政策にも参考となるだろう。


イギリス

 ドイツ、フランス、オランダ、ベルギーの各国は、脱植民地化を基調に帝国主義旧宗主国の責務として文化財返還を推進している。ところでイギリスも同じ旧宗主国の一員だったのだが、上記した国々とちがい、政府は文化財返還に関して、とてつもなく冷淡である。ギリシャの切望するパルテノン大理石返還に対するイギリス政府と大英博物館の反応が、その実例といえるだろう。イギリスの状況を、パルテノン大理石をめぐる動きから見ていこう。

 前年2021年にはユネスコの文化財返還促進政府間委員会(the Intergovernmental Committee for Promoting the Return of Cultural Property、ICPRCP)で、パルテノン大理石返還の勧告が、満場一致ではじめて決議された。またグラスゴーで開催されたCOP26に出席したギリシャ首相がパルテノン大理石の返還を重ねて申し入れたのだが、ジョンソン首相は大英博物館評議会の問題だとして、政府の政治課題としなかった。

 返還への圧力がイギリス政府と大英博物館へ日ましに強まるなか、イギリスとギリシャが返還について公式の話し合いをすると2022年5月17日に発表された44)。6月14日に大英博物館議長ジョージ・オズボーン(George Osborne)がラジオのインタビューで、ギリシャとパルテノン大理石共有について「取引が成立する(deal to be done)」だろうと答えて、話し合いの進展を示唆した45)。6月18日にはパルテノン大理石の再統一を訴える活動家たちが老朽化した大英博物館に集まり、環境良好なアテネのアクロポリス博物館の開館13周年を祝った46)

 オックスフォード大学のデジタル考古学研究所(the Institute of Digital Archaeology)が、パルテノン大理石の一部である馬の頭部の3Dデータをもとに、精巧な複製を作成した。実物の代わりに複製をおいて、大英博物館に返還を促すためである。3月にデータのスキャンを大英博物館が公式に許可しなかったため、研究所のスタッフが見学客として展示室を訪れ、レーザー測定を装備したiPhonesとiPadsでゲリラ的に3Dデータを取得した。アクロポリスの原材料ともなったペンテリコ山産の大理石が用意され、彫刻ロボットに3Dデータをアップロードして原型が造られ、彩色されて夏にできあがった47)。大英博物館としては複製を展示する意向はなく、別のフロイト博物館(the Freud Museum)で展示された48)

 8月には大英博物館副館長ヨナタン・ウィリアムズ(Jonathan Williams)が「パルテノン・パートナーシップ」を結ぶとして、ギリシャと文化財の貸し借り、貸与を語った。しかしギリシャ側はつねに所有権の移転を望んでいるのであって、借りるのではない49)。12月には秘密会談が報じられたが50)、結局2022年にパルテノン大理石の返還に大きな進展はなかった。

 殺到する文化財返還要求に対して、大英博物館が謝絶する根拠としていつもかかげるのが大英博物館法(the British Museum Act 1963)である。重複品など特殊な事例をのぞいて売却や譲渡は不可能で、所蔵品を処分する場合は評議会が決定すると規定されている。テート美術館やヴィクトリア・アンド・アルバート博物館など他の国立の博物館や美術館についても、国立遺産法(the National Heritage Act 1983)によって大英博物館と同様に収蔵品の処分が不可能となっている51)

 7月にヴィクトリア・アンド・アルバート博物館館長トリストラム・ハント(Tristram Hunt)は、「厄介な領域だ;これにはっきりとした明瞭な解決はない、政府の関与する役割があるだろう」「この法律制定の意味が40年たった今でも筋が通るだろうか?別な課題に関連して、もはや博物館はおそろしいほど収蔵している...いくつかは処分しなければならないし、それを自由にできないのだ」と、BBC Radio 4 の番組で法律の再検討を提案した52)

 法律に関するハントの意見は、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が大理石製エロス神像の頭部をトルコに返還した声明に続いて、言及されたのである53)。イギリスから返還された頭部はイスタンブール考古学博物館で3世紀の石棺に再接合された。1882年にアナトリアのイギリス軍事総領事チャールズ・ウィルソン(Charles Wilson)がトルコでローマ時代の見事に装飾されたシダマラ石棺(Sidamara Sarcophagus)を発見。彼はイギリスに石棺を送るつもりだったが、かなわず、子供の姿をしたエロス神頭部のみを持ち出して、石棺を埋めもどした。その後1898年に石棺は再発掘されてイスタンブールに運ばれた。

 1883年にウィルソンは頭部をヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(当時サウス・ケンジントン博物館)に寄託し、彼の娘が1933年に寄託から寄贈へと変更した。翌年から博物館は、ビザンチン時代の大理石彫像との交換を条件にトルコへ頭部を返還しようとしたが、実現しなかった。2005年と2010年に交渉が再開し、2022年にやっと合意に達した。返還は仮の返還である。正確には貸与で、最初は6年間として定期的に更新される。所有権はヴィクトリア・アンド・アルバート博物館にある。

 シダマラ石棺は重さ30トン以上もある古代で最も大きな石棺の一つとされ、イスタンブール考古学博物館で人気展示物となっている。エロス神像の頭部は本体上部のもとの位置にしっかりと接着された。巨大な石棺の一部のみ、イギリスの博物館のものという奇妙な現象が起きているのである。エロス神像の頭部をめぐる難航した返還交渉を念頭におきつつ、実際の当事者として法律の再考が迫らている博物館の実情を、ハントは吐露したのだろう。

シダマラ石棺にエロス神像の頭部をつける
the Art Newspaper 2022/07/04)
シダマラ石棺(Daily Sabah 2022/07/01)


 8月5日にデジタル・文化・メディア・スポーツ省のイングランド芸術審議会(Arts Council England)が返還に関するガイダンス(Restitution and Repatriation: A Practical Guide for Museums in England)を公表した。芸術と法律研究所(the Institute of Art and Law)に委託され作成された返還のための博物館用実践ガイドである。冒頭で、博物館は透明性、共同作業、公正の精神で積極的に動くように勧告している。

 返還要求を判断するにあたって、法律的根拠があるのか、あるいは倫理原則にしたがうのか、フローチャートによってしめされた。要求に法的根拠があれば、法的助言をもとめる。法的根拠がなければ、倫理原則として1/要求者にとっての物件の重要性、2/原産地あるいは過去の所有者からどのように物件が持ち出されたか、3/どのように博物館が物件に関与したのか、4/要求しているのは誰か、という4つの要因を考慮する。倫理的に支持できれば、法律的制限や移動の安全性に配慮しながら、所有の結論を要求者とさぐるとしている。

Restitution and Repatriation: A Practical Guide for Museums in England、17頁
Arts Council England 2022/08/05)


 実際にはさまざまなケースがあり、ガイダンス通りにすみやかに進まないだろう。博物館は守勢の敵対的対応になる必要性はなく、多くの人々、集団、組織と知り合う機会となり、コレクションの知識を広められる。原産地のコミュニティと関係を築いて文化遺産について対話や討論を深められると説明している54)

 改正されたイギリスの慈善法(Charities Act 2022)が秋に効力を発揮するので、博物館評議会に財産処分の裁量権が増強され、好意による支払い(ex gratia payments)、つまり道義的理由による文化財返還がより実行しやすくなるだろうと、芸術と法律研究所所長アレクサンダー・ハーマン(Alexander Herman)が予想した55)

 並行して10月13日に貴族院の委員会で国立遺産法が議論された56)。デジタル・文化・メディア・スポーツ省の遺産関連国務大臣補サイ・カマル(Syed Kamall)は、国立の博物館は素晴らしい文化財を保護していて、世界中とともに分かち合いたい。政府に国立遺産法を改正する計画はまったくないと明言した。慈善法の適用についても、整合性をたもつために先送りすると述べた57)。法律を改正して大博物館から文化財返還を可能にすることに、イギリス政府は従来と変わらずに否定的姿勢を堅持したのである。

 ドイツやオランダとくらべてイギリス政府は文化財返還に消極的で、国立の大博物館からの返還も進まない。逆に国立遺産法などに準拠しない大学博物館、地方博物館、小さい博物館でつぎつぎに返還が起きている。

 まずベニン青銅器から見てみよう。

 1月12日にニューキャッスルにあるハンコック博物館(the Great North Museum: Hancock)がベニン青銅器をナイジェリアに返還すると声明した。この博物館は、ニューキャッスル大学のタイン・アンド・ウィア文書博物館(Tyne and Wear Archives and Museums)が管理している。物件は真ちゅう製の棒に鳥の彫刻がつき、儀式で使用する音楽用具とされる。1897年のイギリス軍懲罰遠征で持ち出され、1951年にウェルカム医学史博物館(the Wellcome Historical Medical Museum)が医療品以外を処分した際、ニューキャッスル大学の管理するノーサンブリア自然史学会のコレクションとなった58)

 4月にスコットランドのグラスゴー市議会が、ナイジェリアにベニン青銅器17点、インドに文化財7点、アメリカ先住民族のラコタ人に文化財25点を返還することを決議した。ベニン青銅器の多くはケルビングローブ美術館(Kelvingrove museum)で展示されている。市議会委員会の議事録によると、所有権をナイジェリアの国立博物館モニュメント委員会(the National Commission for Museums and Monuments、NCMM)に移転し、移送の時までグラスゴー・ライフ博物館(Glasgow Life Museums)に貸与としてとどめるとしている59)

 返還されたインドの文化財7点のうち、6点は19世紀に寺院から盗まれたもので、11世紀のレリーフのある石造扉をふくむ。残りのもう1点は14世紀と思われる儀式用蛇行剣で、1905年にニザーム王国(Nizam of Hyderabad)のコレクションから盗み出され、後にアーチボルド・ハンター将軍(Sir Archibald Hunter)に売却された。7点すべてがグラスゴー博物館に寄贈された。8月にインド高等弁務官事務所の代表が文化財の所有権移転にサインし、翌年1月に梱包されてインドへ送られた60)。イギリスの博物館からインドへ文化財が返還された最初の事例となった。

グラスゴーの博物館からインドに返還された儀式用蛇行剣
BBC 2022/08/19)


 7月にオックスフォード大学とケンブリッジ大学がベニン青銅器213点を返還すると報じられた61)。オックスフォード大学ピットリバー博物館は、1月7日にナイジェリアの国立博物館モニュメント委員会から97点の返還要求を受け取った。6月20日の大学評議会で返還要求が承認され、8月9日に所有権移転を慈善委員会に勧告した62)

 ケンブリッジ大学考古学人類学博物館もナイジェリアから116点の返還要求を受け、7月18日の大学評議会で返還要求が承認された。所有権移転を慈善委員会に申請し、12月に応諾された63)

 8月には、ロンドンのホーニマン博物館庭園(Horniman Museum and Gardens)がベニン青銅器72点を返還すると伝えらえた。ホーニマン博物館もナイジェリアの国立博物館モニュメント委員会から返還要求を受けて、博物館評議会が要求を承認、慈善委員会も了承した。11月28日に博物館で記念式典が催行され、所有権が移転された。72点のうち2点は、1897年のイギリス軍懲罰遠征の翌月に博物館創設者のフレデリック・ホーニマン(Frederick Horniman)が個人的に取得、残りは2年後に地元住民から購入された。返還された6点がナイジェリアにもどされ、その他は貸与されてロンドンにとどまる64)

 ベニン青銅器以外に返還されたのは、先住民族の文化財と遺骸であった。5月にエクスター市の王立アルバート記念博物館(the Royal Albert Memorial Museum)が、カナダの先住民族シクシカ・ネイション(Siksika Nation)に、ブラックフット族のクロウフット(Crowfoot)族首長の盛装その他を返還した。2015年に返還が要求され、2020年に市議会が全会一致で返還を決議、コロナ禍で遅れていたが、2022年に返還が実現した65)

 6月に自然史博物館がニュージーランドの先住民族であるマオリ人に2体、チャタム諸島のモリオリ人(the Moriori)に111体、合計113体の遺骸を返還した。モリオリ人の遺骸返還については15年かけて調査と交渉が続いた。自然史博物館には約27,000点の人骨コレクションがあり、その約半数がイギリス外部から集められた。ニュージーランド由来の遺骸は、今回返還された分とは別に、まだ200体あると考えられている66)

 11月にオックスフォード大学のピットリバー博物館と大学自然史博物館が、オーストラリアの先住民族の遺骸18体を返還した。女性1体はオーストラリア南部のホードン湖から1900年に持ち出され、サウス・イースト・ファースト・ネイションに返還された。残る17体はオーストラリア政府が各地の博物館で管理し、身元調査後にそれぞれのファースト・ネイションにもどされる予定である67)

 12月に、スコットランド博物館が高さ約11mの巨大なトーテムポールを、カナダのブリティッシュ・コロンビアのニスガア・ネイション(Nisga’a Nation)に返還すると声明した。トーテムポールは1860年代に制作され、戦士の物語を描いている。1927年にカナダ人民族誌学者マリウス・バウビュウ(Marius Barbeau)が持ち出し、後にスコットランドの博物館に売却した。2022年8月に先住民族から返還要求が出され68)、博物館評議会で返還が承認された。2006年にスウェーデンの民族誌博物館からハイスラ人(the Haisla)にトーテムポール(G'psgolox totem pole)が返還されてから、ヨーロッパの博物館から返還される2例目のトーテムポールとなった69)


National Museums Scotland
2022/12/01)
スコットランド博物館から
ニスガア・ネイションに
返還されたトーテムポール
Smithsonian Magazine 2022/12/22)


 先住民族への返還はおもに先祖の遺骸の返還だった。かつてないほど多数の遺骸が自然史博物館から返還されたのだが、依然としてイギリスには大量の遺骸が収蔵されている。

 遺骸については、ジンバブエから返還が求められている反植民地闘争を戦った英雄たちの頭骨が話題となった。2021年5月には、独立戦争の伝説的人物であるンブヤ・ネハンダ(Mbuya Nehanda、Nehanda Charwe Nyakasikana)の高さ3mを超える銅像が首都ハラレに建立された。第1次チムレンガ独立戦争を闘って死亡した英雄たちの頭骨が戦利品として持ち出されたとして、ジンバブエの代表団がイギリスで調査をすることになった。代表団は自然史博物館とケンブリッジ大学ダックワース研究所(the Duckworth Laboratory)を訪れた。ダックワース研究所には18,000体の遺骸がある。調査の成果はなかったが、ジンバブエに協力して見つけたら返すと、博物館と研究所は約束した70)

 イギリス政府は依然として植民地文化財の返還に消極的で、大きな博物館からの文化財返還は実現していない。しかしながら、地方や小さい博物館は文化財や遺骸を原産の国やコミュニティに次々に返している。イングランド芸術審議会によって提示された倫理を重視する返還ガイダンスにそって、政府とは別に博物館界では、倫理的観点から植民地由来の文化財返還の事例が今後も増えるに違いない。文化財をめぐるこの脱植民地化の流れは、イギリス政府や大英博物館にとって圧力となるのは確実だろう。


ヨーロッパの他の国々

 フランスに端を発した文化財返還の波は、隣接する帝国主義旧宗主国であるドイツ、オランダ、ベルギーだけでなく、ヨーロッパの他の国々にも波及しはじめた。

 アイルランドのコーク大学(University College Cork、UCC)は12月に、1928年に寄贈されたミイラ化した遺骸、木棺、内臓を納める壷カノピック、ミイラ・棺の覆いカートネッジなどをエジプトに返還すると声明した。数年前からエジプトと返還について話し合いが進んでいた71)

 スイスでは5月4~5日に、ローザンヌ大学で「過去に準備できているか?スイスの博物館における脱植民地化について(Ready for the Past? On the State of Decolonisation in Swiss Museums)」という国際会議が開催され、植民地時代に取得された文化財の出所調査や、奴隷制と植民地暴力、搾取に関して討論された。スイスには植民地がなかったが、西欧列強の帝国主義諸国はスイスの投資や移民を受け入れ、伝道者、傭兵、商人、学者を歓迎した。スイスの帝国主義協力者は情熱的収集家であり、自然産品あるいは文化的物品をスイスの博物館に寄贈した。スイスにおける植民地文化財、遺骸について、返還の課題と展望を総合的観点から考察したはじめての会議だったといえるだろう72)

 バチカンのフランシスコ教皇は7月にカナダを訪問し、先住民族たちに、子供たちを家族から強制的に引き離した寄宿学校制度で、カトリック教会のはたした役割を謝罪した。1万人以上の子供たちが寄宿学校で死亡した。カナダでは文化財返還をもとめる先住民族たちの声が高まっている73)。1925年に世界中の先住民族から10万点におよぶ文化財が集められて展覧会が開催され、その後4万点が民族博物館(Anima Mundi Ethnological Museum)に収蔵された。3月にカナダ先住民族と教皇との会談がもうけられ、文化財返還が課題の一つとなったが、カトリック教会側は寄贈品だったとして、話し合いに進展はなかった。しかし2023年4月30日に、フランシスコ教皇は先住民族の文化財を返したいと語っている74)

 フランシスコ教皇は12月16日に、パルテノン大理石の破片3点をギリシャ正教会アテネ大主教に寄贈して、ギリシャに返還すると声明した。3点の破片とは、馬の頭部、少年の頭部、髭のある男性頭部で、問題となっている大英博物館のパルテノン大理石よりもかなり以前に持ち出された。2点は18世紀末にローマに入り、骨董商をへて1803年にバチカン博物館が購入。もう1点は1688年に持ち出されて、19世紀前半にコレクションに入った75)。3点の破片は、2023年3月24日のアテネのアクロポリス博物館で受領式典後、博物館コレクションに組み込まれた76)。国と国の2国間関係による返還ではなく、宗教的友好関係による寄贈という返還方法だった。

 オーストリア連邦政府の芸術文化省は1月に、植民地文化財返還を進めるためガイドライン作成の諮問委員会を組織した。オーストリアは19世紀に帝国主義宗主国ではなかったが、ハプスブルク王家の支援などで商人や探検家たちが他国の植民地から物品を取得していた。植民地文化財を多く所蔵しているのはウィーンの民族博物館と自然史博物館である。

 委員会は2023年6月20日に、学術評価委員会の設置、国と国との関係にもとづく返還など20項目を勧告した。勧告を受けて文化相アンドレア・マイヤー(Andrea Mayer)は、2024年3月までに法案提出を目標にする、出所調査の年間予算を倍にして32万ユーロにしたいと語った77)

 法律制定に先行してオーストリアから先住民族へ遺骸が返還された。9月に自然史博物館からマオリとモリオリに64体の遺骸がニュージーランドに返還された。そのうち49体は、1877~89年に墓を荒らして有名となったオーストリア人アンドリアス・レイシェク(Andreas Reischek)の収集したものだった78)

 フランス、オランダ、ドイツ、ベルギーの旧宗主国ではじまった植民地文化財返還の流れは周辺の国々にも影響をおよぼし、旧宗主国でなかったスイス、バチカン、オーストリアでも、返還に向けた動きが見られた。おそらく近いうちにオーストリアでも返還の法律が成立し、文化財返還が本格化するだろう。


アメリカ

 アメリカは帝国主義旧宗主国ではなかったが、文化財返還のさまざまな課題に直面している。世界一富裕な国として、あたかも世界中から吸いよせるかのようにして大量の美術品や文化財がアメリカに流入し、文化財をめぐる紛争が絶えないのだ。

 とくにホロコースト犠牲者から取得されたナチス略奪美術品について、盗まれたものを収蔵・展示するのか、不正に奪われたものを所有するのか、強迫によって売却されたものを購入して良いのかという倫理が、アメリカの博物館・美術館で厳しく問われている。ホロコースト犠牲者の遺族らによる返還訴訟が多数裁判所に提出され、前提となる美術品の詳細な出所調査・履歴のデータが求められるようになった。

 8月には近代美術館(MoMA)やグッゲンハイム美術館など著名な美術館のあるニューヨーク州で、第2次世界大戦中にナチスに略奪された物件を博物館・美術館で展示する場合、「窃盗、押収、没収、強制的売却、もしくは不同意な方法によって所有者が変わった」と説明板やラベルに由来を明記する法律が成立した。ホロコーストを教育する法律も一緒に採択された。生存者たちを称賛・支援し、ホロコーストを忘れないための一連の法律である79)

 倫理意識の高まりで、問題となる物件はホロコースト犠牲者の美術品だけでなく、違法文化財や植民地文化財にも広がった。たとえば近年メトロポリタン美術館、クリーブランド美術館、デンバー美術館などで多数のカンボジアの彫像が違法美術品と判定され、次々に返還されている。また2020年のブラック・ライブズ・マターの抗議運動で奴隷制や人種主義に関心がよせられ、先住民族の文化財や遺骸、奴隷の遺骸、アフリカの植民地から流入した文化財なども80)、ホロコースト犠牲者の美術品と同類に考えられるようになった。

 まずベニン青銅器から見てみよう。ヨーロッパと並行してアメリカでもベニン青銅器が返還された。

 3月にベニン青銅器39点を所蔵するスミソニアン博物館が、そのほとんどを返還すると声明した81)。4月末にスミソニアン博物館は法律的解釈よりも倫理を重視する新しい返還政策を採用し82)、6月には博物館理事会で、ベニン青銅器29点をナイジェリアの国立博物館モニュメント委員会に返還することが可決された。すべて1897年のイギリス軍懲罰遠征で略奪されたもので、倫理を優先する新しい返還政策にそった最初の事例となった。まず所有権を移転し、移送は後日とした83)

 10月11日にスミソニアンの国立アフリカ美術館で、ナショナル・ギャラリーとロードアイランド・スクール・オブ・デザインも参加して所有権移転の合同式典が催行され、合計31点がナイジェリアへ返還された。ナショナル・ギャラリーが返還したのは雄鶏像で、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインのものはオバ(王)の頭部像だった84)

 ベニン青銅器の返還に異議をとなえ、スミソニアン博物館に対して返還停止の仮処分を裁判所に申請したグループがいた。返還に反対したのは返還研究グループ(Restitution Study Group)という非営利団体で、青銅器はアメリカにいる奴隷だった人たちの子孫に関連しているのに、返還によって文化を体験する機会が奪われてしまう。金属の青銅品は、我々の先祖たちをヨーロッパの奴隷商人に売り渡した引き換えに、ベニン王国に支払われた金属製腕輪のマニラ通貨(manilla currency)を溶かして造られたのだ。青銅器は奴隷にされた人々の後継者と共有すべきだと主張した。裁判所は10月14日に仮処分申請を却下した85)

 返還された植民地由来のものはベニン青銅器だけであった。一方、先住民族に関して多数の物件が返還された。

 1月にカルフォルニア大学バークレー校が、1860年の虐殺に関連した遺骸と埋葬品をワイヨット人(the Wiyot)に返還すると声明した。1946年にフンボルト湾の桟橋建設で陸軍工兵部隊が集団墓地を発見、人骨20体と埋葬品136点が大学のハースト人類学博物館(Phoebe A. Hearst Museum of Anthropology)に移送された。2016年からワイヨット人は返還の手続きを進めたが、大学側は証拠がないと数年にわたって抵抗していた86)

 カルフォルニア大学は2018年に先住民族の遺骸の調査を禁止した。ハースト人類学博物館が返還の努力を怠っていると批判されてから、2020年に、アメリカ先住民族墓地保護返還法(the Native American Graves Protection and Repatriation Act、NAGPRA)による新しいNAGPRA委員会が創設された。委員会の議長である生物考古学者サブリナ・アガーワル(Sabrina Agarwal)は、「100年以上にわたって研究機関や博物館が、同意もなく先住民族の先祖や所持品を持ち去ったので、アメリカでは先住民族と我々の関係はとても難しい」。委員会は今までに遺骸を少なくとも1,000体、副葬品を53,000点以上返還した。まだ9,000体の遺骸、20万点以上の所持品を大学は返す計画だと語り、「先住民族の所持品、文化財、先祖たちをすべて故郷にもどしたい」と付け加えた87)

 5月にオレゴン州のポートランド美術館が、アラスカのウランゲルから持ち出された文化財9点を、トリンギット人(the Tlingit)のナアヤイ族(the Naanya.aayí clan)に返還した。1921~44年に教育長が集めた800点以上のコレクションの一部で、ポートランド美術館が1948年にコレクションを購入した。2002年から返還要求が出され、2019年に美術館が承認した88)

 7月にスミソニアンの自然史博物館が、南オーストラリアの先住民族であるナルンガ(Narungga)とカウルナ(Kaurna)のネーションに遺骸2体を返還した。これらの遺骸がスミソニアンのコレクションに入ったのは1904~31年で、取得の詳細は不明である。他にも23体の遺骸がもどされ、伝統的管理が決まるまでオーストラリア政府が保管する。スミソニアンは当初返還に抵抗していたが、数年にわたるロビー活動で実現した89)

 ノースダコタ大学でダンボール箱に入った遺骸と宗教具が見つかり、8月末に学長が謝罪し、先住民族に返還することになった。1990年に制定されたNAGPRAによると、連邦資金を受け取る機関は内務省国立公園局と協働してコレクションを目録化し、先住民族たちに返還するように規定している。ところがノースダコタ大学は、1883年の創立時から先住民族の文化財を所有していることを大学当局も知っていながら、連邦の目録にまったく登録していなかった。

 ノースダコタ大学の謝罪は、30年以上も前に法律が制定されたにもかかわらず、先住民族の遺骸や文化財が依然として軽視されていることを象徴していた。先住民族の間では、法律を履行して目録化や返還を促進するように、公共の大学や博物館に対して圧力を強める声が高まった90)

 9月にカンザス大学が、キャンパスから先住民族の遺骸や埋葬品を見つけたので返還に取り組むと声明した。諮問委員会の設置、先住民族との話し合い、大学コレクションの総点検、先住民族研究の空間確保など具体的な施策を提案した91)

 11月にマサチューセッツ州バリの小さな博物館図書館であるファウンダース博物館(the Founders Museum)が、先住民族の文化財約150点をラコタとスーに返還した。服装、パイプ、武器などで、いくつかは1890年のウンデット・ニーの虐殺に関連したものだった。フランク・ルーツ(Frank Root)という靴行商人が19世紀に旅行中に収集し、巡回興行したものを博物館が取得した。博物館は連邦から資金を受け取っていないので、NAGPRAによる返還の必要性はないのだが、独自にNAGPRAに準拠して返還することを決めた。館長アン・メイルス(Ann Meilus)は、「正しいことをしたいだけだ、そしてつらい悲劇からラコタの人たちを癒す助けになりたい」と述べた92)

 同じく11月にハーバード大学ピーボディ博物館(the Peabody Museum)が、1930年代前半に寄宿学校にいた先住民族の数百人の子供たちから採取した頭髪のサンプルを返還すると発表した。約300にもおよぶ先住民族の約700人の生徒たちからサンプルをあつめ、数十年にわたって所有していたことを博物館は謝罪した。大学講師で研究員だった人類学者が収集し、1935年に博物館に寄贈した。20世紀前半の頭髪研究は、記述、計測して人種的カテゴリーとヒエラルキーを正当化し、学術的人種主義を支持するために行なわれた93)

 30年以上前に先住民族に遺骸や副葬品をもどすNAGPRAの法律が制定されたにもかかわらず、カルフォルニア大学やノースダコタ大学、あるいはミネソタ大学のように94)、返還への取り組みは遅々として進んでいない。返還の実行を強化するために、内務省は法律を改正することにした。法外な「学術的根拠」が要求されて返還を阻止している、連邦の承認した574の先住民族だけ返還の資格があたえられ、200以上は承認されていないので返せない、博物館や当局は要求されたコレクションに関連する証拠書類のすべてを用意しない、等々の批判や不満がよせられた95)

 内務省は10月に改正案を公表し、2023年1月12日までパブリックコメントをもとめた。改正案は、先住民族とハワイ先住民族団体の権限や役割を強化する、時宜にかなった譲与や返還に障害となるものに注意する、連邦と先住民族の土地で見つかった遺骸や文化財が乱される前に先住民族とハワイ先住民族団体に記録し要求に注意する、透明性を高め所持品やコレクションを報告する点を反映させたと伝えた96)

 法律の改正に並行して、返還を促進するため国立公園局は博物館と先住民族に210万ドルの補助金を用意した97)

 2020年のブラック・ライブズ・マターの抗議運動で、先住民族の遺骸や文化財とともに新たに注目を集めたのは、粗末にあつかわれる奴隷たちや黒人の遺骸だった。

 フィラデルフィアのペンシルベニア大学ペン博物館(Penn Museum)には、人種主義的な骨相学の観点から、19世紀前半に収集された約1,300個の頭骨からなるモートン頭骨コレクションがある。批判を受けて2020年に、博物館は教室のキャビネットに収納されていた頭骨を、目に触れないように倉庫に移動させた。また1985年に黒人解放運動団体ムーブ(MOVE)の弾圧の際に死亡した黒人少女の遺骨を、遺族の許可もなく、大学の人類学オンライン授業で見せていたことが発覚した。ペンシルベニア大学とペン博物館は、犠牲者の家族とコミュニティに謝罪した。

 ペン博物館は、奴隷だった黒人の頭骨13個を市内の黒人共同墓地に埋葬することを孤児裁判所に請願している。請願が認められると秋に墓地で公開の儀式を挙行する計画だった。ペン博物館の埋葬計画は、大量の遺骸を所蔵して倫理的難問をかかえる世界的大博物館、つまりスミソニアン博物館、シカゴの自然史博物館、クリーブランド自然史博物館、カルフォルニア大学バークレー校にも同様な圧力となるだろう。あるいはパリの人類博物館、ベルリンの民族学博物館、ロンドンの自然史博物館もペン博物館の経過を注視している98)

 ハーバード大学は9月に大学博物館コレクションにある遺骸に関するレポートを発表した99)。ピーボディ博物館は、NAGPRAの制定される以前1980年代に、アメリカ国内からの遺骸10,000体、国外から10,000体を収蔵していた。今日、NAGPRAに関連する先住民族コミュニティにまだ返還されていない遺骸が6,500体残っている。奴隷の遺骸が19体があり、遺骸を子孫に返還すると約束した。一部の奴隷の子孫や先住民族の学者たちは、すぐに返還するように、明確な返還の期限が設定されていない、作業工程をしめしていないと大学を批判した100)

 ヨーロッパに端を発したベニン青銅器の返還が旧宗主国でもないアメリカでも実現し、植民地文化財の返還は世界的潮流となったといえるだろう。返還の基礎にあるのは、スミソニアン博物館で倫理を重視する新しい返還政策が採用されたように、過去の歴史的不正義を是正する脱植民地化の理念である。

 一方、停滞気味の先住民族への遺骸と文化財の返還も、ブラック・ライブズ・マターの抗議運動や脱植民地化の加速によって、ようやく前へ進みはじめた。NAGPRAの改正で返還が実行しやすくなるだろうから、今後の展開を期待したい。


おわりに

 「パンドラの箱が開いた」と、ドイツ・ケルン市のラウテンシュトラウフ=ヨースト博物館が12月にベニン青銅器を返還した時、館長ナネット・スヌープ(Nanette Snoep)が述べた。「博物館にとって新しい時期、博物館の国際協力にとっても新しい時期なのだ」と付け加え、博物館は「新しい幕明けのスタート」に立っていると語った101)。パンドラの箱が開いたとは、さまざまな災いや凶事を引き起こす原因をしめす否定的な言葉である。けれどもスヌープ館長が話した内容は、文化財返還が災いをもたらすのではなく、あたかも新時代の扉を開く鍵のような役割をはたすと肯定的意義を説いたのである。

ベニンの文化財を渡す
ラウテンシュトラウフ=ヨースト博物館のスヌープ館長(中央)
DW 2022/12/16)


 ドイツはベニン青銅器とともに、アフリカ諸国に他の文化財の返還をはじめた。今後は対象をさらに広げて、アフリカだけでなく他地域の国々にも返還を進めるだろう。

 ベルギーで返還の法律が制定され、続いてフランスやオーストリアでも法律が制定されるだろう。イギリスとアメリカでは、従前の法律的根拠を厳密に適応する返還方法から、倫理を基本とする新しい返還政策へと変化した。各国が取り組む返還の法律制定や倫理的返還の推進は、返還に対して頑強に抵抗し続けるイギリス政府と大英博物館に圧力となるだけでなく、ホロコースト犠牲者たちへの財産や美術品返還と同じように、国際規範の形成へと発展する可能性がある。

 2023年5月にG7広島サミットが開催された。サミット開催前に議長国日本で連日のように報じられたのは、G7のうち唯一LGBT差別禁止法がない国として、人権意識の低い日本の遅れた現状だった。結局差別禁止法ではない、「LGBT理解増進法」がサミット閉幕後の6月16日に国会で成立し、23日に施行された。人権意識の後進性だけでなく、近年日本では政治経済的停滞ないし遅れがさまざまな分野で指摘されている。世界的な脱植民地化の流れから日本が遅れているのも、そのうちの一つとしてあげられるだろう。

 イギリスは2013年にケニア独立運動弾圧に対する損害賠償を認めた。オランダは2020年にインドネシア独立戦争の虐殺事件に遺族に賠償金を支払うことを決めた。ドイツは2021年にヘレロとナマの虐殺について賠償金の支払いをナミビアと合意した。脱植民地化とともに暴力的な植民地支配への謝罪と賠償が世界的に進んでいるのだが、人権小国日本では、関東大震災の朝鮮人虐殺や三・一独立運動の虐殺をはじめ、過去の虐殺事件に関心が低い。謝罪や賠償どころか、虐殺を否定する歴史修正主義が横行している。植民地責任の意識がとぼしい日本では、脱植民地化の世界的流れから取り残されて、文化財返還の議論もなかなか進んでいない。

 先進国G7の世界的影響力は相対的に弱まったといわれている。貿易に占める中国やグローバルサウスの割合が増加し、あるいは国際的多極化が進んで、かつてのように先進国だけで主要な決定を下すのが困難な状況となりつつある。

 グローバルサウスの盟主インドでは、今、文化財返還運動が盛んである。寺院などから盗み出され密輸された神像などを取りもどす市民運動 India Pride Project が2014年からはじまった。以来200点以上の文化財がインドに返還された。1970~2012年にインド政府に返還された文化財の数量がわずか19点だったことを考えると、格段の違いである102)。ヒンズー・ナショナリズムをかかげて2014年に政権についたモディ首相は、インドの文化財返還を歓迎している。

 ネパール、カンボジアでも近年続々と文化財が返還されている。トルコには文化観光省の文化遺産博物館総局に密輸対策部があり、国外に流出した違法文化財の返還に力を入れている。2018年から合計7,701点がもどされ、2023年だけでも2,956点の返還があった103)

 メキシコではオブラドール大統領が2018年に政権につくと、政府が#MiPatrimonioNoSeVende(「私の遺産は売り物ではない」)というユニークな文化財返還キャンペーンを開始した。これまでに約9,000点の違法文化財を国外から取りもどした。2012~18年に返還された数量が1,300点だったので、キャンペーンの効果がうかがえる104)。グローバルサウスの国々で発言力がまし、自己のアイデンティティやナショナリズムの強化の一端として、文化財返還が促進されているのである。厳密な出所調査と文化財を原産国にとどめる(返す)という原則は、これからも一層強まるだろう。

 世界の動きとともに、文化財返還についての認識もつねに変動しているのである。



参考
2021年の動向
森本和男「フランスがアフリカに文化財を返還 -各国で確実に進む返還の準備-」(2022年6月)
2020年の動向
森本和男「ブラック・ライヴズ・マターとモニュメント・文化財 -加速する脱植民地化の動き-」(2021年11月)
2019年の動向
森本和男「フランスの文化財返還レポートから1年 -欧米の脱植民地化の流れと文化財- 」(2020年4月27日)
2018年の動向
森本和男「フランスのアフリカ文化財返還政策とその波紋」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2019』No. 8(2019年5月1日)




1) In a ‘Historic Milestone,’ Germany Will Begin to Return Benin Bronzes From Its Public Collections to Nigeria in 2022(artnet news 2021/04/29)
 https://news.artnet.com/art-world/nigeria-germany-benin-bronzes-1963143
  Germany pledges to return Benin bronzes to Nigeria starting in 2022(the Art Newspaper 2021/04/30)
 https://www.theartnewspaper.com/2021/04/30/germany-pledges-to-return-benin-bronzes-to-nigeria-starting-in-2022
  Germany Sets Out Plans to Return Benin Bronzes(the New York Times 2021/04/30)
 https://www.nytimes.com/2021/04/30/arts/design/benin-bronzes-germany.html
2) Database of Benin-Bronzes in Germany(German Contact Point for Collections from Colonial Contexts
 https://www.cp3c.org/benin-bronzes/index.php
3) Concluding a Slate of Negotiations, Germany and Nigeria Plan to Sign an Agreement on the Return of Benin Bronzes From Berlin(artnet news 2022/06/29)
 https://news.artnet.com/art-world/nigeria-germany-negotiations-benin-bronzes-2138851
  Germany Begins Return of Benin Bronzes to Nigeria(the New York Times 2021/07/01)
  https://www.nytimes.com/2022/07/01/arts/design/germany-benin-bronzes-nigeria.html
4) 514 Berlin Benin bronzes return to Nigerian ownership(Stiftung Preußischer Kulturbesitz 2022/08/25)
 https://www.preussischer-kulturbesitz.de/en/schwerpunkte/provenienzforschung-und-eigentumsfragen/umgang-mit-aussereuropaeischen-objekten/alle-news-umgang-mit-aussereuropaeischen-objekten/news-detail-umgang-mit-aussereuropaeischen-objekten/article/2022/08/25/512-berliner-benin-bronzen-wieder-nigerianisches-eigentum.html
  Germany returns ownership of bronzes to Nigeria(DW 2022/08/25)
 https://www.dw.com/en/berlin-transfers-ownership-of-looted-benin-bronzes-to-nigeria/a-62930286
5) Digital Benin
 https://digitalbenin.org/
6) Where in the World Are the Benin Bronzes? A New Website Offers the Most Comprehensive Assessment to Date(artnet news 2022/11/07)
 https://news.artnet.com/art-world/digital-benin-markk-benin-bronzes-2205398
  Benin bronzes online database goes live with details of thousands of looted artefacts(the Art Newspaper 2022/11/07)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/11/07/benin-bronzes-online-database-goes-live-with-details-of-thousands-of-looted-artefacts
  Digital Benin project reunites bronzes looted by British soldiers(the Guardian 2022/11/10)
 https://www.theguardian.com/world/2022/nov/10/digital-benin-reunites-thousands-of-objects-scattered-after-british-looting
7) Germany returns 21 Benin bronzes to Nigeria – amid frustration at Britain(the Guardian 2022/12/20)
 https://amp.theguardian.com/world/2022/dec/20/germany-returns-21-benin-bronzes-to-nigeria-amid-frustration-at-britain
  How Germany Changed Its Mind, and Gave the Benin Bronzes Back(the New York Times 2022/12/20)
 https://www.nytimes.com/2022/12/20/arts/benin-bronzes-nigeria-germany.html
  Germany Has Returned Its First Group of Stolen Benin Bronzes to Nigeria Following a Repatriation Deal Struck Earlier This Year(artnet news 2022/12/21)
 https://news.artnet.com/art-world/germany-returns-benin-bronzes-to-nigeria-2234316
  Germany kicks off major Benin bronze restitution with return of 20 artefacts to Nigeria(the Art Newspaper 2022/12/22)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/12/22/germany-kicks-off-major-benin-bronze-restitution-with-return-of-20-artefacts-to-nigeria
8) Returns to Namibia and Tanzania: Foundation Board clears the way(Stiftung Preußischer Kulturbesitz 2022/06/27)
 https://www.preussischer-kulturbesitz.de/en/news-detail/article/2022/06/27/rueckgaben-nach-namibia-und-tansania-stiftungsrat-macht-weg-frei.html
  Ngonnso’: Foundation Board clears the way for the return to Cameroon(Stiftung Preußischer Kulturbesitz 2022/06/27)
 https://www.preussischer-kulturbesitz.de/en/news-detail/article/2022/06/27/ngonnso-stiftungsrat-macht-weg-fuer-die-rueckkehr-nach-kamerun-frei.html
9) Namibia recovers 23 museum pieces from Germany(DW 2022/05/31)
 https://www.dw.com/en/colonial-looted-art-namibia-recovers-23-objects-from-germany/a-61988037
10) Pilot project: Tanzania–Germany: Shared Object Histories? (Staatliche Museen zu Berlin
 https://www.smb.museum/en/museums-institutions/ethnologisches-museum/collection-research/research/tanzania-germany-shared-object-histories/
11) German Museums Announce a New Wave of Restitutions, With Plans to Return Objects to Namibia, Cameroon, and Possibly Tanzania(artnet news 2022/06/27)
 https://news.artnet.com/art-world/germany-returns-objects-africa-2137271
12) Restitution Roundtables: Remember to Reclaim—Confronting Colonial Pasts and the Way Forward(Open Society Foundations 2022/08/03)
 https://www.opensocietyfoundations.org/events/restitution-roundtables-remember-to-reclaim-confronting-colonial-pasts-and-the-way-forward
  Cameroon's Ngonnso: 'My fight to bring our sacred stolen statue home(BBC 2023/06/18)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-65746910
13) Cologne hands over stolen Benin Bronzes to Nigeria(DW 2022/12/15)
 https://www.dw.com/en/cologne-hands-over-stolen-benin-bronzes-to-nigeria/a-64117329
  Cologne Hands Back 92 Benin Bronzes to Nigeria, But a Few Will Remain in Germany on Long-Term Loan(artnet news 2022/12/16)
 https://news.artnet.com/art-world/benin-bronzes-cologne-2231179
14) Dr. Kwame Opoku: The Benin Bronzes, Restitution and Decolonization. The Debate on Colonial Loot and Reparations(Universität Hamburg 2022/10/25)
 https://lecture2go.uni-hamburg.de/l2go/-/get/v/64125
  Videos & Retrospective: The Benin Bronzes. Globalising the Colonial Looting of Art(Universität Hamburg 2023/01/04)
 https://kolonialismus.blogs.uni-hamburg.de/2023/01/04/videos-retrospective-the-benin-bronzes-globalising-the-colonial-looting-of-art/
15) No plans to return Berlin's star museum attractions Nefertiti and Pergamon Altar, German official says(the Art Newspaper 2023/01/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/01/20/no-plans-to-return-berlins-star-museum-attractions-nefertiti-and-pergamon-altar-german-official-says
16) Germany returning ancestral remains to Hawaii(Changing America, The HILL 2022/02/07)
 https://thehill.com/changing-america/respect/equality/593160-germany-returning-ancestral-remains-to-hawaii/
  Native Hawaiians Collect Ancestors’ Skulls From European Museums(the New York Times 2022/02/10)
 https://www.nytimes.com/2022/02/10/arts/design/hawaii-remains-europe.html
  German museums foundation returns ancestral human remains in Berlin collection to Hawaii(the Art Newspaper 2022/02/11)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/02/11/germany-returns-ancestral-human-remains-in-berlin-museum-collection-to-hawaii
17) German Museums Are Embarking on Long-Overdue Research Into Chinese Colonial-Era Objects as Part of a €1.1 Million Grant(artnet news 2020/10/22)
 https://news.artnet.com/art-world/german-lost-art-foundation-1917423
18) German museums may have thousands of looted relics from China’s Imperial Palace, research group believes(the Art Newspaper 2022/01/25)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/01/25/german-museums-may-have-thousands-of-looted-relics-from-chinas-imperial-palace-research-group-believes
19) As 26 Looted Treasures Go on View in Benin Republic, the West African Cultural Community Is Asking: What Happens Next?(artnet news 2022/03/11)
 https://news.artnet.com/art-world/benin-republic-restitution-2083328
  Kingdom Comeback. The spectacular return of Benin’s looted art(ARTFORUM 2022/03/24)
 https://www.artforum.com/diary/the-spectacular-return-of-benin-s-looted-art-88239
  ‘Artistic Awakening’ in Benin as Return of Royal Artifacts Attracts Huge Crowds(the New York Times 2022/08/21)
 https://www.nytimes.com/2022/08/21/world/africa/benin-art-restitution-exhibition.html
20) The story of Liempichún Sakamata, the Tehuelche chief that France agreed to return to Argentina(Then24 2022/05/13)
 https://then24.com/2022/05/13/the-story-of-liempichun-sakamata-the-tehuelche-chief-that-france-agreed-to-return-to-argentina/
  France will return to Argentina the remains of the Tehuelche cacique Liempichún Sakamata(California18 2022/05/14)
 https://california18.com/france-will-return-to-argentina-the-remains-of-the-tehuelche-cacique-liempichun-sakamata/4603502022/
21) Why Macron's radical promise to return African treasures has stalled(the Art Newspaper 2022/02/03)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/02/03/why-macrons-radical-promise-to-return-african-treasures-has-stalled
22) What has happened to France’s grand plans to return Africa's heritage?(the Art Newspaper 2022/06/01)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/06/01/what-has-happened-to-frances-grand-plans-to-return-africas-heritage
23) France’s Ministry of Culture Is Pushing Forward a Trio of Groundbreaking Laws That May Have Sweeping Effects on Restitution(artnet news 2023/01/18)
 https://news.artnet.com/art-world/frances-ministry-of-culture-is-pushing-forward-a-trio-of-groundbreaking-laws-which-may-have-sweeping-effects-on-restitution-2243534
24) France Returned 24 Skulls to Algeria. They Weren’t What They Seemed.(the New York Times 2022/10/17)
 https://www.nytimes.com/2022/10/17/world/europe/france-algeria-restitution-skulls.html
25) A Paris Museum Has 18,000 Skulls. It’s Reluctant to Say Whose.(the New York Times 2022/11/28)
 https://www.nytimes.com/2022/11/28/arts/design/france-human-remains-restitution-skulls.html
26) NMVW and VU start research project on colonial collections(NMVW Nationaal Museum van Wereldculture 2020/12/07)
 https://www.wereldmuseum.nl/en/nmvw-and-vu-start-research-project-on-colonial-collections
 Forging ahead with historic restitution plans, Dutch museums will launch €4.5m project to develop a practical guide on colonial collections(the Art Newspaper 2021/03/10)
 https://www.theartnewspaper.com/2021/03/10/forging-ahead-with-historic-restitution-plans-dutch-museums-will-launch-euro45m-project-to-develop-a-practical-guide-on-colonial-collections
27) Provenance series(Tropenmuseum in Amsterdam
 https://www.tropenmuseum.nl/en/provenance-series
  PPROCE - Provenance Research on Objects of the Colonial Era(Tropenmuseum in Amsterdam
 https://www.tropenmuseum.nl/en/our-collection-0/pproce-provenance-research-on-objects-colonial-era
28) Indonesia asks Netherlands to return art, natural history collections(NL Times 2022/10/18)
 https://nltimes.nl/2022/10/18/indonesia-asks-netherlands-return-art-natural-history-collections
29) Zambia claims Rhodesian Man, the 250,000-year-old fossilised skull at London’s Natural History Museum(the Art Newspaper 2020/03/09)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/03/09/zambia-claims-rhodesian-man-the-250000-year-old-fossilised-skull-at-londons-natural-history-museum
30) Holger Stoecker, The Brachiosaurus brancai in the Natural History Museum Berlin(DCNtR 2019/10/04)
 https://boasblogs.org/dcntr/the-brachiosaurus-brancai-in-the-natural-history-museum-berlin/
31)  Jeanette Greenfield, The Return of Cultural Treasures, 3rd edition, Cambridge University Press, 2007. pp. 380~1.
32) Dispute Over Java Man Raises a Question: Who Owns Prehistory?(the New York Times 2022/11/09)
 https://www.nytimes.com/2022/11/09/arts/design/naturalis-museum-java-man-indonesia.html
33) Dutch Prime Minister Apologizes for His Country’s Role in the Slave Trade(the New York Times 2022/12/19)
 https://www.nytimes.com/2022/12/19/world/europe/netherlands-slavery-apology-mark-rutte.html
34) Advisory Board of the Slavery Past Dialogue presents final report Chains of the Past(Rijksdienst Caribisch Nederland 2021/07/01)
 https://english.rijksdienstcn.com/latest/news/2021/july/1/advisory-board-of-the-slavery-past-dialogue-presents-final-report-chains-of-the-past
  Government apologises for the Netherlands’ role in the history of slavery(Government of the Netherlands 2022/12/19)
 https://www.government.nl/latest/news/2022/12/19/government-apologises-for-the-netherlands-role-in-the-history-of-slavery
  Nationaal Slavernijmuseum – National museum of slavery(City of Amsterdam
 https://www.amsterdam.nl/en/leisure/nationaal-slavernijmuseum/
35) Dutch Royals to Retire Golden Coach With Echoes of Colonialism(the New York Times 2022/01/14)
 https://www.nytimes.com/2022/01/14/world/europe/netherlands-golden-coach.html
36) Investigation launched into provenance of Dutch Royal Collections' colonial objects(NL Times 2022/10/18)
 https://nltimes.nl/2022/11/10/investigation-launched-provenance-dutch-royal-collections-colonial-objects
37) Dutch king commissions research into royal role in colonialism(the Guardian 2022/12/06)
 https://www.theguardian.com/world/2022/dec/06/research-into-royal-role-in-colonialism-commissioned-by-dutch-king
38) Dutch central bank apologizes for role in slave trade(Reuters 2022/07/01)
 https://jp.reuters.com/article/netherlands-slavery-cenbank/dutch-central-bank-apologizes-for-role-in-slave-trade-idUKL1N2YI0OA
39) Belgium takes small step toward returning artifacts to Congo(POLITICO 2022/02/17)
 https://www.politico.eu/article/belgium-takes-first-small-step-in-returning-art-to-congo/
  Inching Toward Restitution, Belgium Has Handed Over an Inventory of 84,000 Artifacts to the Democratic Republic of Congo(artnet news 2022/02/22)
 https://news.artnet.com/art-world/belgium-congo-provenance-restitution-2076021
40) Belgian King Returns Mask to Congo in Landmark Visit(the New York Times 2022/06/08)
 https://www.nytimes.com/2022/06/08/world/africa/belgian-king-congo-mask.html
41) 3 JUILLET 2022. - Loi reconnaissant le caractère aliénable des biens liés au passé colonial de l'Etat belge et déterminant un cadre juridique pour leur restitution et leur retour [Bill of 3 July 2022 Recognizing the Alienability of Goods Linked to the Belgian State’s Colonial Past and Determining a Legal Framework for Their Restitution and Return](belgiquelex.be
 https://www.ejustice.just.fgov.be/cgi/article_body.pl?language=fr&caller=summary&pub_date=22-09-28&numac=2022042012
42) Marie-Sophie de Clippele and Bert Demarsin, Pioneering Belgium: Parliamentary Legislation on the Restitution of Colonial Collections (Santander Art and Culture Law Review, vol.8, no.2 2022/12/)
 https://www.ejournals.eu/pliki/art/22607/
  Restitution The restitution and return of assets related to colonisation from Belgian federal museum collections(AfricaMuseum 2023/01/23)
 https://www.africamuseum.be/en/about_us/restitution
43) Belgium returns Patrice Lumumba’s tooth to family 61 years after his murder(the Guardian 2022/06/20)
 https://www.theguardian.com/world/2022/jun/20/belgium-returns-patrice-lumumba-tooth-congolese-independence
  Patrice Lumumba: DR Congo buries tooth of independence hero(BBC 2022/06/30)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-61993601
44) Amid Mounting Public Pressure, Greece and the U.K. Have Agreed to a New Round of Talks About a Possible Return of the Parthenon Marbles(artnet news 2022/05/18)
 https://news.artnet.com/art-world/restitution-talks-parthenon-marbles-2116907
45) There is a ‘deal to be done’ with Greece over Parthenon Marbles, says British Museum chairman George Osborne(the Art Newspaper 2022/06/15)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/06/15/there-is-a-deal-to-be-done-with-greece-over-parthenon-marbles-says-british-museum-chairman-george-osborne
46) Group of British MPs and peers call for Parthenon marbles to return to Greece(the Guardian 2022/06/18)
 https://amp.theguardian.com/artanddesign/2022/jun/18/parthenon-marbles-must-return-to-greece-british-mps-and-peers-write
  Demonstrators Descend on the British Museum to Make the Case for Athens as the Rightful—and Safer—Home for the Parthenon Marbles(artnet news 2022/06/20)
 https://news.artnet.com/art-world/parthenon-marbles-british-museum-demonstration-2133377
47) The Robot Guerrilla Campaign to Recreate the Elgin Marbles(the New York Times 2022/07/08)
 https://www.nytimes.com/2022/07/08/science/elgin-marbles-3d-print.html
48) The British Museum Declined to Display Ultra-Precise Digital Replicas of the Parthenon Marbles. So Another Museum Snapped Them Up(artnet news 2022/11/01)
 https://news.artnet.com/art-world/replicas-parthenon-marbles-freud-museum-2202419
49) British Museum proposes new ‘Parthenon partnership’ with Greece in bid to end deadlock over Marbles(the Art Newspaper 2022/08/01)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/08/01/british-museum-proposes-new-parthenon-partnership-with-greece-in-bid-to-end-deadlock-over-marbles
50) Secret talks between British Museum and Greece to return Parthenon Marbles in 'advanced stages'(the Art Newspaper 2022/12/05)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/12/05/after-spending-200-years-in-the-british-museum-the-elgin-marbles-may-be-about-to-return-to-greece
  The British Museum Is Said to Be Reaching a Deal With Greece on the Parthenon Marbles. But the U.K. Warns It Can’t Break Up Its Collection(artnet news 2022/12/05)
 https://news.artnet.com/art-world/british-museum-parthenon-marbles-warning-2222924
51) British Museum Act 1963(legislation.gov.uk
 https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1963/24/section/5
  National Heritage Act 1983(legislation.gov.uk
 https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1983/47/contents
52) Victoria & Albert Museum director says it is time to change UK law that stops museums from ‘disposing’ of works(the Art Newspaper 2022/07/04)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/07/04/victoria-and-albert-museum-director-says-it-is-time-to-change-uk-law-that-stops-museums-from-disposing-of-works
53) Sidamara Sarcophagus reunites with missing Head of Eros(Daily Sabah 2022/07/01)
 https://www.dailysabah.com/arts/sidamara-sarcophagus-reunites-with-missing-head-of-eros/news
  Victoria and Albert Museum returns—and reattaches—a third-century marble head of Greek god taken from Turkey(the Art Newspaper 2022/07/01)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/07/01/victoria-and-albert-museum-returnsand-reattachesa-third-century-marble-head-of-greek-god-taken-from-turkey
54) Restitution and Repatriation: A Practical Guide for Museums in England(Arts Council England 2022/08/05)
 https://www.artscouncil.org.uk/supporting-arts-museums-and-libraries/supporting-collections-and-cultural-property/restitution-and
  Arts Council England Has Issued New ‘Proactive’ Restitution Advice for Museums, Replacing Outdated, Two-Decade-Old Guidance(artnet news 2022/08/08)
 https://news.artnet.com/art-world/arts-council-england-restitution-reports-2157242
55) Museums, restitution and the new Charities Act(The Institute of Art & Law 2022/09/25)
 https://ial.uk.com/museums-restitution-and-the-new-charities-act/
  Museums in England and Wales to gain powers to dispose of objects on moral grounds(the Guardian 2022/09/25)
 https://www.theguardian.com/culture/2022/sep/25/museums-england-wales-powers-to-dispose-objects-moral-grounds
  A New U.K. Law Gives Museums Unprecedented Power to Deaccession Art and Repatriate Objects in Their Collections(artnet news 2022/09/27)
 https://news.artnet.com/art-world/charities-act-museums-repatriate-2182298
56) Reviewing the National Heritage Act 1983(UK Parliament、House of Lords Library 2022/10/03)
 https://lordslibrary.parliament.uk/reviewing-the-national-heritage-act-1983/
57) National Heritage Act 1983, Volume 824: debated on Thursday 13 October 2022(UK Parliament、House of Lords Hansard
 https://hansard.parliament.uk/lords/2022-10-13/debates/2A9B0A96-9EE5-4F84-824D-EFB3B214043C/NationalHeritageAct1983
  UK heritage minister says government has no plans to amend law that prevents museums from 'disposing' of objects(the Art Newspaper 2022/10/15)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/10/15/uk-heritage-minister-says-government-has-no-plans-to-amend-law-that-prevents-museums-from-disposing-of-objects
58) A Benin Bronze at the Great North Museum: Hancock(Newcastle University 2022/01/12)
 https://www.ncl.ac.uk/press/articles/latest/2022/01/beninbronze/
59) Native American activists call for return of artefacts from Scotland(the Art Newspaper 2022/02/12)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/02/11/native-american-activists-call-for-return-of-artefacts-from-scotland
  Glasgow museums to return 49 looted objects—including Benin bronzes—in biggest restitution in Scottish history(the Art Newspaper 2022/04/14)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/04/14/glasgow-museums-to-return-49-looted-objectsincluding-benin-bronzesin-biggest-restitution-in-scottish-history
60) Glasgow Museums to return seven stolen artefacts to India(BBC 2022/08/19)
 https://www.bbc.com/news/uk-scotland-glasgow-west-62604145
  Glasgow Life Museums returns seven artefacts to India in historic agreement(Glasgow Life 2023/01/11)
 https://www.glasgowlife.org.uk/news/glasgow-life-museums-returns-seven-artefacts-to-india-in-historic-agreement
61) Oxford and Cambridge universities could return 213 looted artefacts from Benin(INDEPENDENT 2022/07/29)
 https://www.independent.co.uk/news/uk/cambridge-oxford-benin-british-cambridge-university-b2134339.html
  Oxford and Cambridge universities approve returning 213 looted Benin bronzes to Nigeria(the Art Newspaper 2022/08/01)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/08/01/oxford-and-cambridge-universities-approve-returning-213-looted-benin-bronzes-to-nigeria
62) The Benin Bronzes(Pitt Rivers Museum
 https://www.prm.ox.ac.uk/benin-bronzes
63) Cambridge to return Benin artefacts(University of Cambridge
 https://www.cam.ac.uk/stories/beninreturn
  Cambridge University to return Benin Bronzes to Nigeria(BBC 2022/12/14)
 https://www.bbc.com/news/uk-england-cambridgeshire-63973271
64) Horniman to return ownership of Benin bronzes to Nigeria(Horniman Museum & Gardens 2022/08/07)
 https://www.horniman.ac.uk/story/horniman-to-return-ownership-of-benin-bronzes-to-nigeria/
  Benin Bronzes: Nigeria hails 'great day' as London museum signs over looted objects(BBC 2022/11/28)
 https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-63783561
  London museum returns looted Benin City artefacts to Nigeria(the Guardian 2022/11/28)
 https://www.theguardian.com/culture/2022/nov/28/london-museum-returns-looted-benin-city-artefacts-to-nigeria
65) Exeter museum in 'historic' handover of regalia to tribal leader(BBC 2022/05/19)
 https://www.bbc.com/news/uk-england-devon-61510755
  Crowfoot Regalia to be handed over to Siksika Nation delegation(Royal Albert Memorial Museum、ramm 2022/07/13)
 https://rammuseum.org.uk/news/crowfoot-regalia-to-be-handed-over/
66) The Natural History Museum, Hokotehi Moriori Trust and Museum of New Zealand Te Papa Tongarewa hold formal ceremony to mark the return of ancestral remains to New Zealand(Natural History Museum 2022/06/30)
 https://www.nhm.ac.uk/press-office/press-releases/formal-ceremony-marks-return.html
  ‘Ultimate honour’: remains of hundreds of Moriori returned in biggest repatriation yet(the Guardian 2022/07/08)
 https://www.theguardian.com/world/2022/jul/08/ultimate-honour-remains-of-hundreds-of-moriori-returned-in-biggest-repatriation-yet
67) Press releases: Aboriginal and Torres Strait Islander Ancestors Returned Home from the Pitt Rivers Museum and Oxford University Museum of Natural History(Pitt Rivers Museum 2022/11/10)
 https://www.prm.ox.ac.uk/sites/default/files/prm/documents/media/university_of_oxford_museums_-_press_release_-_australian_repatriation_10.11.2022.pdf
  ‘We were fuelled by colonial convictions’: Museums return remains of 18 Indigenous Australians(The Sydney Morning Herald 2022/11/10)
 https://www.smh.com.au/world/europe/oxford-university-hands-back-remains-of-18-indigenous-australians-20221110-p5bx0b.html
68) National Museum of Scotland urged to return First Nations totem pole stolen by Canadian anthropologist(the Art Newspaper 2022/08/11)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/08/15/national-museum-scotland-urged-return-first-nations-totem-pole
69) National Museums Scotland to transfer memorial pole to Nisga’a Nation(National Museums Scotland 2022/12/01)
 https://media.nms.ac.uk/news/national-museums-scotland-to-transfer-memorial-pole-to-nisgaa-nation#
  Inside the Nisga’a Nation’s Fight to Get a 36-Foot Totem Pole Back From Scotland(Smithsonian Magazine 2022/12/22)
 https://www.smithsonianmag.com/history/inside-the-nisgaa-nations-fight-for-the-return-of-a-36-foot-totem-pole-180981342/
70) UK museums willing to return skulls to Zimbabwe(BBC 2022/10/30)
 https://www.bbc.com/news/world-africa-63171981
71) UCC repatriates mummified human remains to Egypt dating from 100AD to 975BC(The Irish Times 2022/12/08)
 https://www.irishtimes.com/history/2022/12/08/ucc-repatriates-egyptian-mummy/
72) Ready for the Past? On the State of Decolonisation in Swiss Museums(infoclio.ch
 https://www.infoclio.ch/ready-past-state-decolonisation-swiss-museums
73) Vatican says they’re gifts; Indigenous groups want them back(AP 2022/07/21)
 https://apnews.com/article/pope-francis-entertainment-travel-canada-3e9ab6fad79ee444f20633fd8020edea
  Pope Francis addresses forced assimilation in Canadian tour amid calls for repatriation of Indigenous artefacts from Vatican Museums(the Art Newspaper 2022/07/26)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/07/25/pope-francis-residential-school-abuses-canada-repatriation-indigenous-artefacts-vatican-museums
74) Pope voices willingness to return Indigenous loot, artifacts(AP 2023/05/01)
 https://apnews.com/article/vatican-restitution-indigenous-parthenon-0e486d653bcac89f94854430ce29faf0
75) Pope returns Greece’s Parthenon Sculptures in ecumenical nod(AP 2022/12/17)
 https://apnews.com/article/pope-francis-greece-religion-vatican-city-6e6d4043fd46c4b81e3d7849c9a14c66
  Pope Francis to Return 3 Parthenon Marble Fragments to Greece(the New York Times 2022/12/19)
 https://www.nytimes.com/2022/12/19/world/europe/vatican-parthenon-marbles-greece.html
76) The Vatican’s Parthenon Marble Fragments Have Officially Entered the Collection of the Acropolis Museum in Athens(artnet news 2023/03/27)
 https://news.artnet.com/art-world/vatican-parthenon-marble-fragments-returned-greece-acropolis-museum-2275942
77) Austria sets up expert panel to develop guidelines for repatriating colonial loot(the Art Newspaper 2022/01/22)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/01/21/austrian-expert-committee-to-develop-guidelines-for-repatriating-colonial-loot
  Austrian government to propose law on returning museum objects acquired in a colonial context(the Art Newspaper 2023/06/20)
 https://www.theartnewspaper.com/2023/06/20/austrian-government-to-propose-law-on-returning-museum-objects-acquired-in-a-colonial-context
  Restitution: How Austria intends to deal with colonial objects in the future(24 Hours Worlds 2023/06/21)
 https://24hoursworlds.com/international/466482/
78) Austria to return stolen Māori and Moriori ancestral remains(Stuff 2022/09/27)
 https://www.stuff.co.nz/pou-tiaki/129978565/austria-to-return-stolen-mori-and-moriori-ancestral-remains
79) A New Law Requires New York Museums to Indicate If Artworks on View Passed Through Nazi Hands(artnet news 2022/08/12)
 https://news.artnet.com/art-world/new-york-holocaust-laws-2159480
  Nazi-looted art on display in New York museums must be prominently identified as such under new law(the Art Newspaper 2022/08/16)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/08/15/nazi-looted-art-new-york-museums-placard-law
80) A Long Way Home for ‘Looted’ Art Is Getting Shorter(the New York Times 2022/04/27)
 https://www.nytimes.com/2022/04/27/arts/design/victoria-reed-museum-of-fine-arts-stolen-artwork.html
81) Smithsonian to Return Most of Its Benin Bronze Collection to Nigeria(the New York Times 2022/03/08)
 https://www.nytimes.com/2022/03/08/arts/design/smithsonian-benin-bronze-nigeria.html
82) Smithsonian Adopts Policy on Ethical Returns(Smithsonian 2022/05/03)
 https://www.si.edu/newsdesk/releases/smithsonian-adopts-policy-ethical-returns
  In a Nod to Changing Norms, Smithsonian Adopts Policy on Ethical Returns(the New York Times 2022/05/03)
 https://www.nytimes.com/2022/05/03/arts/design/smithsonian-ethical-returns.html
83) In a Landmark Vote, the Smithsonian Institution Officially Approves the Return of 29 Benin Bronzes to Nigeria(artnet news 2022/06/15)
 https://news.artnet.com/art-world/smithsonians-board-votes-to-return-benin-bronzes-2131098
84) Smithsonian Returns 29 Benin Bronzes to the National Commission for Museums and Monuments in Nigeria(Smithsonian 2022/10/11)
 https://www.si.edu/newsdesk/releases/smithsonian-returns-29-benin-bronzes-national-commission-museums-and-monuments
  Trove of Benin bronzes in US museum collections repatriated to Nigeria(the Art Newspaper 2022/10/12)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/10/11/benin-bronzes-us-museum-collections-repatriated-nigeria
85) A New York Nonprofit Has Filed a Lawsuit to Block the Smithsonian From Repatriating Its Benin Bronzes to Nigeria(artnet news 2022/12/02)
 https://news.artnet.com/art-world/benin-bronze-lawsuit-restitution-study-group-smithsonian-2221312
  US campaign group sues Smithsonian over return of Benin Bronzes to Nigeria(the Art Newspaper 2022/12/06)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/12/06/us-campaign-group-sues-smithsonian-over-return-of-benin-bronzes-to-nigeria
86) Army Corps of Engineers, UC Berkeley repatriate human remains to Wiyot Tribe(US Army Corps of Engineers, San Francisco District Website 2022/01/24)
 https://www.spn.usace.army.mil/Media/News-Stories/Article/2909764/army-corps-of-engineers-uc-berkeley-repatriate-human-remains-to-wiyot-tribe/
  UC Berkeley returns Wiyot human remains and burial objects(the Art Newspaper 2022/01/29)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/01/28/university-california-berkeley-returns-wiyot-human-remains-burial-objects
87) UC Berkeley is repatriating cultural artifacts, including ancestral remains, to Indigenous tribes (CNN 2022/10/17)
 https://edition.cnn.com/2022/10/17/us/uc-berkeley-indigenous-repatriate-cultural-artifacts-reaj/index.html
88) Nine works from the Portland Art Museum return to their Tlingit home(Oregon Arts Watch 2022/06/11)
 https://www.orartswatch.org/nine-works-from-the-portland-art-museum-return-to-their-tlingit-home/
89) Indigenous leaders bring their ancestors home after 90 years at the Smithsonian National Museum of Natural History(ABC News 2022/08/04)
 https://www.abc.net.au/news/2022-08-04/indigenous-remains-repatriated-from-smithsonian/101272318
90) Search for missing Native artifacts led to the discovery of bodies stored in ‘the most inhumane way possible’(NBC News 2022/09/04)
 https://www.nbcnews.com/news/us-news/search-missing-native-artifacts-led-discovery-bodies-stored-inhumane-w-rcna46151
  Congress Told Colleges to Return Native Remains. What’s Taking So Long?(the New York Times 2022/09/15)
 https://www.nytimes.com/2022/09/15/us/native-american-remains-university-of-north-dakota.html
91) KU shares next steps for repatriation of Indigenous remains found on campus(The Lawrence Times 2022/09/23)
 https://lawrencekstimes.com/2022/09/23/ku-update-nagpra/
  University of Kansas returning Native American remains(AP 2022/10/19)
 https://apnews.com/article/travel-religion-museums-native-americans-kansas-3228f790915f77b8311a13ee18b9f59e
92) Sacred items in Massachusetts museum to be returned to Sioux(AP 2022/10/11)
 https://apnews.com/article/travel-museums-massachusetts-5b897c81b0f9aa5b883f3c0bbdd33272
  A Massachusetts Museum Has Returned 150 Native American Artifacts—Including Some Connected to the Wounded Knee Massacre—to Lakota and Sioux Tribes(artnet news 2022/11/09)
 https://news.artnet.com/art-world/founders-museum-native-american-artifacts-2206908
  Massachusetts museum repatriates Wounded Knee Massacre artefacts to Lakota and Sioux nations(the Art Newspaper 2022/11/18)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/11/17/founders-museum-massachusetts-native-american-repatriation
93) About the Collection(Harvard University, Peabody Museum
 https://peabody.harvard.edu/about-woodburycollection
  Harvard Museum Will Return Hundreds of Native American Hair Samples(the New York Times 2022/11/10)
 https://www.nytimes.com/2022/11/10/us/harvard-museum-native-american-hair.html
94) UMN begins repatriation of Mimbres-cultural collections after 32 years of non-compliance(the Minnesota Daily 2022/12/01)
 https://mndaily.com/274753/news/umn-begins-repatriation-of-mimbres-cultural-collections-after-32-years-of-non-compliance/
95) US revises law governing repatriation of Indigenous remains and burial objects(the Art Newspaper 2022/02/22)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/02/21/us-revises-nagpra-law-governing-repatriation-indigenous-remains-burial-objects
96) Interior Department Takes Next Steps to Update Native American Graves Protection and Repatriation Act(U.S. Department of the Interior 2022/10/13)
 https://www.doi.gov/pressreleases/interior-department-takes-next-steps-update-native-american-graves-protection-and-1
  Department of Interior Proposes Overhaul of NAGPRA(Native News Online 2022/10/13)
 https://nativenewsonline.net/sovereignty/department-of-interior-proposes-overhaul-of-nagpra
  Native American Graves Protection and Repatriation Act Systematic Process for Disposition and Repatriation of Native American Human Remains, Funerary Objects, Sacred Objects, and Objects of Cultural Patrimony(Federal Register, National Archives 2022/10/18)
 https://www.federalregister.gov/documents/2022/10/18/2022-22376/native-american-graves-protection-and-repatriation-act-systematic-process-for-disposition-and
97) US museums and Indigenous tribes receive $2m grant to boost repatriation efforts(the Art Newspaper 2022/08/13)
 https://www.theartnewspaper.com/2022/08/12/museums-indigenous-tribes-2m-grant-repatriation
98) Ivy League university set to rebury skulls of Black people kept for centuries(the Guardian 2022/08/07)
 https://www.theguardian.com/us-news/2022/aug/07/us-university-plans-repatriation-black-american-remains
  Penn Museum to Bury Skulls of Enslaved People(the New York Times 2022/08/09)
 https://www.nytimes.com/2022/08/09/us/university-pennsylvania-black-skulls-burial.html
99) Report of the Steering Committie on Human Remains in University Museum Collections(the Harvard University 2022/Fall)
 https://provost.harvard.edu/files/provost/files/harvard_university-_human_remains_report_fall_2022.pdf
100) Harvard Pledges to Return Human Remains of Enslaved People to Descendents(the Harvard Crimson 2022/09/16)
 https://www.thecrimson.com/article/2022/9/16/harvard-pledges-to-return-human-remains/
  Descendants Call for Immediate Return of Human Remains in Harvard Museum Collections, Criticize University Report(the Harvard Crimson 2022/09/26)
 https://www.thecrimson.com/article/2022/9/26/call-for-return-human-remains/
101) Benin Bronzes: From German museums off to Nigeria(DW 2022/12/16)
 https://www.dw.com/en/benin-bronzes-from-german-museums-off-to-nigeria/a-64120683
102) How stolen art detectives India Pride Project tracked down 265 artefacts(the Print 2022/03/27)
 https://theprint.in/india/how-stolen-art-detectives-india-pride-project-tracked-down-265-artefacts/889814/
  The sleuths bringing back India’s stolen treasures(BBC 2022/04/18)
 https://www.bbc.com/culture/article/20230417-the-sleuths-bringing-back-indias-stolen-treasures
  240 ancient artefacts brought back to India in last 9 years: PM Modi at museum expo(the Indian Express 2023/05/19)
 https://indianexpress.com/article/cities/delhi/240-ancient-artefacts-brought-back-to-india-in-last-9-yrs-pm-at-museum-expo-8617313/
103) Some 7,701 artifacts returned to Türkiye since 2018(Hürriyet Daily News 2023/06/28)
 https://www.hurriyetdailynews.com/some-7-701-artifacts-returned-to-turkiye-since-2018-184262
104) #MiPatrimonioNoSeVende: Recent Developments in the Mexican Government’s Campaign to Recover its Stolen Cultural Property(International & Comparative Law Review, University of Miami School of Law 2023/04/14)
 https://international-and-comparative-law-review.law.miami.edu/mipatrimonionosevende-recent-developments-in-the-mexican-governments-campaign-to-recover-its-stolen-cultural-property/