[2019年の動向]

フランスの文化財返還レポートから1年
-欧米の脱植民地化の流れと文化財-

森本和男

はじめに
フランス
イギリス
ドイツ、ベルギー、オランダ
アメリカ
おわりに


はじめに
 フランスのマクロン大統領が2017年11月に西アフリカのブルキナファソでアフリカ遺産の返還を声明し、そして返還について専門家に諮問した答申が、2018年11月23日に『アフリカ文化遺産の返還 新しい倫理関係に向けて(Rapport sur la restitution du patrimoine culturel africain. Vers une nouvelleethique relationnelle / The Restitution of African Cultural Heritage. Toward a New Relational Ethics)』という題名のレポートで(以下、返還レポートと称する)公表された1)

 20世紀後半から旧植民地が次々に独立し、植民地時代に持ち去られた文化財の返還を旧宗主国に要求しても、旧宗主国側はつねに冷たい反応しかしめさなかった。しかしマクロン大統領の声明は、帝国主義列強の一つだったフランスが、これまでの姿勢を180度あらため、文化財返還を、わざわざかつての植民地で宣言したのである。大統領に提出された返還レポートは、返還に向けて具体的指針をしめしていた。文化財返還に関するマクロン大統領の声明と返還レポートは、世界中の文化財を収蔵・展示するヨーロッパ、とくに植民地時代に膨大な文化財を取得した大博物館に衝撃をあたえ、大きな議論を巻き起こした。

 返還レポートが公表されてから1年以上経過した。実際に、フランスから文化財の返還は、ほとんど進んでいない。フランスおよび欧米各国の最近の動向を伝えたい。

フランス
 フランスの返還レポートは、歴史学者のベネディクト・サヴォワ(Bénédicte Savoy)と経済学者フェルウィン・サル(Felwine Sarr)によって執筆された。2018年11月23日に返還レポートが提出・公表されると、マクロン大統領はサルとサヴォワの2人に会見してから、ベナンへ26点の文化財を返還するように指示し2)、さらに翌年4月にパリで文化財返還に関するヨーロッパ-アフリカ会議を開催することを提案した3)

 返還レポートは内外で大きな話題となったが、肝心の文化財返還については、その後具体的進展はほとんどなかった。またマクロンの提案した国際会議は、開催されなかった。2019年7月4日にパリのアカデミー・フランセーズで、アフリカとの文化的連携をテーマにした控えめなシンポジウムが開催され、ヨーロッパやアフリカから考古学者、人類学者、歴史学者、学芸員、文化省の代表など約200人が参加した。サルとサヴォワは文化相から招聘演説を依頼されていたのだが、姿を見せなかった。このシンポジウムでは、返還レポートが忘れられたかのようだったと報じられた4)

 返還される26点の文化財を収蔵・展示するため、ベナンのアボメイに新しい博物館が建設されることになった。フランスから2,000万ユーロ(約24億円)の援助で建造され、2021年に開館予定である5)。アボメイは約300年にわたって栄えたダホメ王国(17世紀初頭~1894年)の首都で、フランス軍が1890~94年に侵略した。フランスはダホメ王国から約5,000点の文化財を持ち出し、そのほとんどが現在パリのケ・ブランリ美術館に収蔵されている。

 11月17日にフランスはセネガルに、オマール・サイドウ・タル(Omar Saïdou Tall)のサーベルを手渡した6)。オマール・タルは、短命に終わったトコウルー帝国(Toucouleur empire、1861~90年)の創設者だった。サーベルは、タルの息子からフランス人が1893年に押収した。パリの軍事博物館のコレクションであるが、2018年12月に首都ダカールで開館した黒人文明博物館に数ヶ月にわたって貸与・展示されている。サーベルは完全に返還されたのではなく、5年間の貸与である。というのは、フランスの法律では国のコレクションは譲渡不可になっていて、法律を変えない限り、文化財返還は法的に実行できないからである。返還レポートでも法律の改定が提案されたが、まだ実現していない。

仏首相からサーベルを受け取るセネガル大統領
Face2Face Africa, 2019/11/18)


 12月16日にフランス文化相がベナンを訪問し、王座をふくむ26点の文化財を2021年までに返還すると約束した7)

 フランスのナントで開かれたアフリカ文化財のオークションで、抗議によってダホメ王国由来の文化財27点が出品から外され、美術商たちが購入して2020年1月17日にベナンへ返還された。返還された文化財は、1890年の軍事遠征に参加した人物と、伝道を行なった神父のコレクションだった8)

 フランス政府による返還事業はなかなか進まないが、個人レベルでの小規模な返還が実現している。

イギリス
 イギリスには、世界各地の旧植民地から取得した膨大な文化財がある。マクロン大統領の声明と返還レポートは、返還を要求する旧植民地側に勢いをあたえ、イギリスのとくに大博物館に対して返還の圧力が高まった。しかし大英博物館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ピット・リバー博物館では返還に向けた動きはまったくなく、収蔵品の由来を精査してラベルを書き換えるとしている9)。その一方で、昨年、小さい博物館から少数の文化財返還が相次いだ。

 2019年7月15日にエジプト人女性作家のアーダフ・ソーイフ(Ahdaf Soueif)が、大英博物館評議員会からの辞任を表明した。彼女は2012年から評議員だったが、イギリス石油会社からの資金援助、派遣会社倒産で解雇されたスタッフ再雇用に無関心、植民地の文化財問題を語ろうとしないと指摘して、大英博物館の道義的責任を問題視した10)。エジプト出身の作家が、返還レポート公表後に加熱する文化財論議について、沈黙する大英博物館に対して、抗議の意思をあらわしたのである。

 8月初旬にカリブ海にあるジャマイカ政府が、雨神像と鳥人像の返還を大英博物館に要求した11)。ともに木製の神像で雨神像は高さ104センチメートル、鳥人像は高さ89センチメートル、先住民族のタイノ人によって制作され、1792年に山頂付近の洞窟から発見された。大英博物館のデータベースによると取得経路は不明である12)。ジャマイカの文化相オリビア・グランゲ(Olivia Grange)によると、現在これらの神像は展示されていない。博物館にあるタイノの文化財は、美術商ウィリアム・オールドマン(William Oldman)の個人コレクションにふくまれていたが、第2次大戦後、美術商の死亡とともにコレクションは売れに出されたという。大英博物館への文化財返還要求が、また一つ増えたことになる。

Carved figure of bird-man spirit
(British Museum, Collection online, No. Am1977,Q.2)


 10月4日にマンチェスター博物館がオーストラリアの4つの先住民族に43点の神聖な文化財を返還すると声明した13)。返還される文化財には、石製や木製の精霊像、クラップスチックと呼ばれる儀式用楽器、伝統的服飾品などがふくまれている。そしてこの返還は、2020年のキャプテン・クック(ジェームズ・クック)のオーストラリア初航海250周年記念プロジェクトの一つだという。

 その前週に在ニュージーランドイギリス高等弁務官のラウラ・クラーケ(Laura Clarke)は、クックとマオリとの初会合で9人の先住民族が死亡したことに、「遺憾」と地元の人たちに表明した。だが、謝罪までにはいたらなかった。返還プロジェクトを進めるアボリジニ・トレス海峡諸島民オーストラリア研究所(AIATSIS、The Australian Institute of Aboriginal and Torres Strait Islander Studies)は、クックの到来をアボリジニ「文化遺産の海外持ち出し」のはじまりだと述べ、世界中の220の機関に100,000点以上あり、そのほとんどがアメリカ、イギリス、ヨーロッパの他の国々の博物館の地下室で、ほこりに埋まっていると述べている。

 マンチェスター博物館館長のエスム・ワード(Esme Ward)は、「AIATSISとの文化理解の促進、相互の学習、未来への新しい関係の構築ほど重要で時宜をえたものはない。他の博物館との協力をもとめたい、、、」と語った。またオックスフォード大学ピット・リバー博物館の考古学学芸員ダン・ヒックス教授(Dan Hicks)は、「イギリス植民地博物館が2つの点で前進した。第1は返還の過程が人間の遺骸から先祖の物質文化へと拡大されたこと。第2は返還が明らかに無条件なことである。」「イギリスの国立でない、地方や大学の博物館が、、、文化の回復に重要な役割をはたしている」と返還を評価した14)。マンチェスター博物館は、儀式用の聖なる文化財を返還したイギリスで最初の機関となった。

 11月にエディンバラ大学がスリランカの先住民族ヴェッダ人に、9個の頭骨を返還した。頭骨は200年以上前のものとされた。大学の解剖学コレクションの一部で、少なくとも1世紀以上前に取得された15)

 同じく11月にケンブリッジ大学のイエス大学(Jesus College)が、ベニン青銅器をナイジェリアへ返還することにした。オクコー(Okukor)の名前で知られる雄鶏像は、ベニンで犠牲となった動物とされる。雄鶏像は1897年のイギリス軍懲罰遠征の時に略奪され、学生の父親であったジョージ・ネビル大尉(Captain George Neville)が1905年に大学に寄贈した。大学では勝利の象徴として展示された16)

イエス大学の雄鶏像オクコー(Okukor)
Jesus College Cambridge


 大学の食堂に展示されていたが、2016年に学生組合が返還を要求してから、展示されずに保管されていた。そして大学内に設置された奴隷制遺産ワーキング・パーティ(Legacy of Slavery Working Party)が返還を勧告したのである17)。ケンブリッジで学生たちが雄鶏像の返還を要求した同じ頃、オックスフォード大学では、アフリカ植民地化を進めたセシル・ロード(Cecil Rhodes)の銅像撤去運動が起きた。結局ベニン青銅器は撤去されたが、セシル・ロード像は撤去されなかった18)

 ナイジェリアからたび重ねて返還要求の出ているベニン青銅器をめぐり、所蔵する欧米の博物館を主体にして構成されたベニン対話グループ(the Benin Dialogue Group)は、輪番して文化財を貸与し、現地の博物館で展示するという解決策を2018年10月にしめした19)。ケンブリッジによる雄鶏像の返還は貸与ではないので、ベニン青銅器の将来に、新たな展開をもたらすかもしれない。

 11月末にイングランドのナショナル・トラストは、マオリの歴史的彫刻で装飾されたハインミヒ集会所(Hinemihi meeting house)を、ニュージーランドへ返還することにした20)。この家屋は、1889~92年にニュージーランド総督だったウィリアム・ヒラー(William Hillier、第4代オンズロー伯爵)によって持ち出され、イングランド南西部にある彼の先祖伝来の邸宅クランドン・パーク・ハウスに設置された。クランドン・パークは1956年にナショナル・トラストに寄贈された。2年前にニュージーランドから返還要求が公式に出され、歴史的彫刻と現代彫刻とを交換するとことで返還の合意に達した。マオリにとって集会所は、儀式、結婚式、葬式など重要な儀式を催行する精神的儀礼の場だった。

 1897年のイギリス軍によるベニン懲罰遠征に参加していた軍人の孫マーク・ワーカー(Mark Walker)が、相続した祖父の遺産から略奪されたベニン文化財2点を、2014年にナイジェリアのベニン王家に返還した。続いて2019年12月に、略奪品と思われる儀式用木製櫂を、3年以内に返還するという条件を付して、オックスフォード大学ピット・リバー博物館に寄託した21)

 フランスで返還レポートが公表されて以来、イギリスでも植民地時代に取得した文化財をめぐって議論が活発化した。しかし、大英博物館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などの大博物館は、議論を避けるかのように沈黙を保っている。その一方で、小博物館や個人のレベルで文化財の返還が次々と実行されているのである。

ドイツ、ベルギー、オランダ
 ドイツでは16州の文化相が文化財返還を進める声明が、2019年3月13日に出された22)。そして5月に、ナミビアの海岸からドイツへ持ち出された航海用の石製十字架を、ナミビアへ返還した23)。この石標は高さ3.5メートル、重さ1.1トンあり、1486年にポルトガルの探検家が設置して、植民地時代の1893年にドイツ海軍の指揮官が持ち出した。2006年からベルリンのドイツ歴史博物館に常設展示されていた。ナミビアは2017年に返還を要求していた。石製十字架の返還は、アフリカの旧植民地へ、文化財や人間の遺骸を返すというドイツの誓約をしめす具体的な第1歩と評された。しかしその後、文化財の返還は続いていない。

ドイツからナミビアへ返還された航海用石製十字架
ArtDaily 2019/05/18)


 7月にドイツ博物館協会(Deutscher Museumsbund)から『植民地的状況で得られた文化財の取扱いガイドライン(Leitfaden zum Umgang mit Sammlungsgut aus kolonialen Kontexten / Guidelines on how to Care of Collections from Colonial Contexts)』(https://www.museumsbund.de/publikationen/guidelines-on-dealing-with-collections-from-colonial-contexts-2/)の第2版が刊行された24)

 このガイドラインは2018年5月に初版が刊行されたのだが、第2版は初版を基礎にして、初版刊行後の動向や、アラスカ、ニュージーランド、ナミビア、オーストラリア、サモアなどからの論文が付け加えられ、非ヨーロッパ的視点が強調された。博物館協会によると、法的側面の検討、実践的事例を加えた第3版も計画中としている25)

 ベルギーは西アフリカのコンゴ民主共和国の旧宗主国である。2018年12月に改装オープンしたアフリカ博物館が最も顕著な植民地博物館で、コンゴから持ち出された文化財を多数収蔵している。しかし返還論議はほとんど進んでいない。わずかな動きとして、2019年3月に学術政策相ダビッド・クラリンバル(David Clarinval)の提案で、文化財返還に関して、ベルギーの施設にある大量の文化財の由来を調査する学際委員会が設置されたことがあげられる26)

 12月にニュージーランドとコンゴから文化財の返還要求が出された。ニュージーランドは先住民族マオリの遺骸、コンゴは植民地時代の混合人種の住民文書を要求し、両者はブリュッセルのチンクエテナリー公園にある美術歴史博物館に収蔵されている27)。返還されるかどうか不明である。

 オランダでは、2019年3月に世界文化博物館(NMVW、the Nationaal Museum van Wereldculturen)が、文化財返還に関する規定を旧植民地向けに発表し28)、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)も同調した29)。けれども両博物館から旧植民地国へ文化財返還は、まだ実現していない。

 6月にアムステルダム市議会で奴隷交易に謝罪することが決議された30)。2020年7月1日のケチ・コチ(Keti Koti、「鎖が切られた」)奴隷解放記念日に、公式謝罪が予定されている。オランダの植民地だった南米のスリナムとカリブ海のオランダ領アンティルで、1863年7月1日に奴隷制が廃止されてから、7月1日が奴隷解放記念日となった。1621年に設立されたオランダ西インド会社はスリナムなどへ60万人以上のアフリカ人を輸送し、砂糖やコーヒーのプランテーションに従事させた。アムステルダムの30人の有力商人たちは、17世紀に奴隷交易で巨富を築き、都市の発展に寄与して、オランダは「黄金時代」を迎えた31)

 9月になると、奴隷交易で栄えた「黄金時代」という用語を見直す動きが、美術館や博物館で広まった32)。9月12日にアムステルダム博物館は17世紀を「黄金時代」の用語で引用しない、使用しないと声明した。17世紀学芸員のトム・モレン(Tom van der Molen)は「用語にともなう繁栄、平和、富裕、無邪気などの肯定的側面は、この時期の歴史的現実をとらえていない、、、この用語は、貧困、戦争、強制労働、人身売買など17世紀の多数の暗い側面を無視している」と語った。アムステルダムにあるエルミタージュ美術館分館には、アムステルダム博物館とアムステルダム国立美術館提供の常設ポートレート・ギャラリーがあり、従来「黄金時代(the Golden Age)」と名付けられていたが、「17世紀(the 17th Century)」に変えられた。

Portrait Gallery of the 17th Century
Hermitage Amsterdam


 ポートレート・ギャラリーの展示に関与していた学芸員のトム・モレンは、ギャラリーの広告ポスターに上書きされた落書きを見て驚いたという。「黄金」の文字は「盗まれた(STOLEN)」に書き換えられ、そして顔の部分は消されて「血(BLOODY)」と記されていた。17世紀の富裕な体制を代表するリッチな男女と感覚を共有できない、奴隷として交易され抑圧された先祖をもつ有色系の人たちと、彼は議論し、時代の新しい見解、解釈、物語を認識したという。黄金時代に対して根強い反発があり、もはや時代を表現する用語として使用できないと感じたのである33)

落書きされた「Portrait Gallery of the Golden Age」のポスター
(Tom van der Molen, CODART 2019/11/)


 博物館の声明に、すぐさま広く非難がよせられた。首相のマルク・ルッテは「ナンセンス」と言って切り捨て、野党キリスト教民主アピール党の国会議員ミチェル・ログは博物館の決定を「馬鹿げた言葉」と語った。

 しかしながらオランダの博物館界の流れの変化は顕著で、多数の学芸員や研究者たちが、植民地的慣習を克服しなければならないと述べている。エルミタージュ美術館分館の「オランダ巨匠再考」展の学芸員ヨルゲン・フォング(Jorgen Tjon A. Fong)は、「黄金時代を語るのならば、どんな話を知っているだろうかと人々は想うでしょう。我々が話すのを忘れている点は、それが社会のほんのわずか1パーセントにすぎないということだ。オランダの人たちは貧困に打ちのめされ、内戦があり、トップには奴隷制があった。今日オランダにいる人たちは、その1パーセントの子孫ではない。彼らは99パーセントの子孫なのだ」「より中立的な17世紀という用語によって、新しい話、新しい展開へと踏み出すことができる」と語っている34)

 アムステルダム市による奴隷交易への謝罪、博物館・美術館での「黄金時代」の用語削除は、オランダにおける脱植民地化の動きを象徴しているといえるだろう。

 2020年1月にオランダ政府はインドネシアへ1,500点の文化財を返還した。この物件は、財政難のため2013年に閉館されたデルフトのヌサンタラ博物館(the Nusantara Museum)に収蔵されていた。同博物館はインドネシア由来の美術品をおもな対象にしていた。2016年11月に両国は返還に合意し、オランダは当初12,000点の返還を提案した。しかしインドネシア文化省は1,500点だけ受け入れることにした。古代武器や陶器、紀元前5,000年のものから1940年代のものまで、幅広い多種類にわたる文化財がふくまれていた35)

アメリカ
 アメリカは、かつてアフリカを植民地としたわけではないので、アフリカから持ち出された文化財の返還について直接関係していない。けれども先住民族であるアメリカ・インディアンの遺骸と文化財の返還、および南部連合のシンボルである南軍将軍像撤去などが脱植民地化の流れに関連していると思われる。

 アメリカ・インディアンに対する文化財や遺骸の返還は、1990年に法制化されたアメリカ先住民墓地保護・返還法(NAGPRA:Native American Graves Protection and Repatriation Act)によって具体的に促進された。一方、2007年に国連で採択された先住民族権利宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)のなかで、第12条で遺骨返還に関する先住民族の権利が規定された。国連での先住民族権利宣言の採決に際して、当初アメリカは反対票を投じたが、2010年12月にオバマ大統領は宣言の支持を表明し、連邦政府はさまざまな施策に取り組んでいると伝えた36)

 アメリカ・インディアンに関する文化財と遺骸の返還については、これまでに日本でも多くの論考・報告があるので、ここでは省略したい。インディアンとは別に、近年アメリカで苛烈な論争を巻き起こしている南軍遺産の除去、学校壁画の撤去を取り上げたい。

 南軍遺産が大きな社会問題として注目される発端となったのは、2015年6月17日にサウスカロライナ州チャールストンの教会で起きた銃乱射事件だった。襲撃された教会は、エマニュエル・アフリカン・メソジスト・エピスコパル教会といい、1816年にアフリカ系アメリカ人によって創設された南部では最古のアフリカ系教会である。6月17日の夜、聖書勉強会に若い白人男性がはいり、しばらくしてから銃を乱射し、9人が死亡。犯人は21歳の白人至上主義者だったが、事件後に発覚したインターネット上にあった犯人の写真と宣言が大きな話題となった。銃撃犯が星条旗を燃やす写真や、その一方で、南軍旗と銃を両手にした写真がふくまれていたからである37)

南軍旗と銃を手にするチャールストン虐殺銃撃犯
the New York Times 2015/06/20)


 南軍旗は人種主義・白人至上主義のシンボルだ、南軍旗を公共の場から下すべきだという世論が一気に高まった。サウスカロライナ州のインド系共和党女性州知事ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)が38)、州議会の敷地に1961年から掲揚されている南軍旗の撤去を呼びかけ39)、州議会での決議後、同年7月10日に南軍旗が下された40)

 バージニア、ノースカロライナ、メリーランド、テネシーの各州知事は自動車ナンバープレートに付されている南軍旗のエンブレム使用停止を求めた。アラバマ州では州知事の命令で州都モンゴメリーから4本の南軍旗が下された。ミシシッピー州では、南軍旗が描かれている州旗の図柄変更が議論となった41)

 南軍シンボルへの反感は旗の除去以外に、銅像(モニュメント)の撤去、地名や祝日の変更などにもおよび、排斥の対象が急速に広まった。

 南軍像撤去を一段と加速させたのは、2017年8月に起きたバージニア州シャーロッツビルの事件だった。シャーロッツビルには、1924年に建てられた南軍のリー将軍(Robert E. Lee)騎馬像がある。シャーロッツビル市議会議員や副市長がリー将軍像の撤去を呼びかけて撤去運動が広がり、2017年2月6日に市議会で騎馬像の撤去、および像の立っている公園を「リー公園」から「解放公園」へと改称することが決議された。

シャーロッツビルのリー将軍像
the New York Times 2017/08/13)


 しかし南軍を賛美する団体である南軍退役軍人の息子たち(Sons of Confederate Veterans)などが、像の撤去に反対して撤去差し止め訴訟を5月に起こした。そして8月11日と12日に極右、白人至上主義、ネオナチたちが集まる集会(Unite the Right)が開かれたのだが、極右集会に抗議のため集まった多数の人たちの群れに、白人至上主義者の運転する車が突っ込み、女性1人死亡、19人が負傷したのである42)

 南軍像撤去をめぐる騒動で死者まで出たことから、事件直後から各地で像の撤去が進行した43)。メリーランド州アナポリスでは8月18日に、州議会議事堂の前にあった奴隷制に有利な判決を下した最高裁判所長官ロジャー・トーニー(Roger Taney)の像を撤去。テキサス州オースティンでは8月21日に、テキサス大学からリー将軍とジョンストン将軍(Albert Sidney Johnston)の像を撤去。メリーランド州ボルチモアでは8月17日に、公園や大学などにあった南軍関連の像4体を撤去。

 ニューヨーク市ブルックリンでは8月16日に、記念樹に付されたリー将軍を讃えるプレートを撤去。ノースカロライナ州ダラムでは8月14日に、郡庁舎前にあった南軍兵士像を抗議者たちが倒す。同じくダラムで8月19日にデューク大学でリー将軍像を撤去。フロリダ州ゲーンズビルでは8月14日に、郡行政庁舎にあった南軍兵士像(Old Joe)を撤去。ケンタッキー州レキシントンでは郡庁舎にあった南軍像2体の撤去を8月17日に市議会で決議、10月17日に撤去。

 上記した事例は全体のほんの一部にすぎない。また実際に撤去にいたらなくても、多数の州知事や市長が、続々と撤去の提案を表明したのである。

 燎原之火のように拡大した南軍像撤去に関して、歴史学界を代表するアメリカ歴史協会(AHA、American Historical Association)が8月末に声明を出した44)。アメリカ歴史協会は南軍像をめぐってひろまった国民的議論を歓迎する。というのは、多くの像がそのような話し合いや、公的意思決定によって建造されたわけではなかったからだ。モニュメントの撤去、あるいは学校や通りの名称変更は、歴史の削除ではなく、以前の歴史解釈を改めることである。

 モニュメントの多くは19世紀末から20世紀の20年代までに造られ、南軍そのものではなく、南北戦争後の再建(Reconstruction)後に、南部の「取り戻す(Redemption)」を記憶するために建てられた。南部全域で法的に人種差別が義務づけられ、公民権剥奪が広まった。再建をひっくり返し、アフリカ系アメリカ人を政治的に委縮させ、政治生活の主流から彼らを孤立させる目論見だった。20世紀中頃の再流行は公民権運動の興隆と一致し、南軍旗が政治シンボルとなった。シャーロッツビルなどの事件は、白人至上主義のシンボルによって、いまだに同じ目的が呼び起こされることをしめしている。

 モニュメントの撤去は歴史の「変更」でも「削除」でもない。撤去によって変わるのは、アメリカのコミュニティが市民的名誉に値すると決定するものが変わるのである。すべての記憶は時と場所の文化財として残ることを、コミュニティは忘れないでほしい。他の歴史文書と同様に保存すべきである。撤去の前に写真を撮り、本来の状況を測るべきである。

 ほとんど全部の南軍関連モニュメントは民主的プロセスぬきで建てられた。アフリカ系アメリカ人は疑問をいだく機会もなく、発言もまったくできなかった。アメリカ歴史協会はこれらの決定を再考する時期だと勧告する。

 南部貧困法律センター(SPLC、Southern Poverty Law Center)による2019年2月の統計調査によると45)、780のモニュメントがあり、そのうちジョージア州、バージニア州、ノースカロライナ州に300以上ある。103の公立学校と3の大学の名称がリー将軍、ジェファーソン・デイヴィス(Jefferson Davis)などに由来する。80の郡と市の名称が南軍に由来する。5州の9州休日、10アメリカ軍基地に見られる。2015年のチャールストン虐殺事件から、48モニュメントと3旗をふくむ114の南軍シンボルが除去され、35学校と1大学、10通りの名前が改称された。

南軍遺産の年代順集計数
SPLC 2019/02/01)


 年代順に南軍遺産を集計したグラフを見ると、2つのピークが見て取れる。グラフに表示された緑の点は学校、青い点は郡庁舎にあるモニュメント、赤い点はその他の地点をしめしている。南軍のモニュメントや名称が最初に多く出現したのは、1900年前後、アフリカ系アメリカ人の公民権を剥奪するジム・クロウ法(Jim Crow laws)が南部諸州で立法された時期で、クー・クラックス・クラン(KKK、Ku Klux Klan)が再建された1920年代まで続いた。2番目の時期は1950年代中頃から60年代後半までで、公民権運動が盛んだった。

 南軍像は文化財保護法による保護の対象物となり、撤去が困難な場合がある46)。たとえば広範な撤去の引き金となったシャーロッツビルのリー将軍像を見てみると、市議会は撤去を決議したのだが、巡回裁判所の判事は2019年9月に、1904年に法制化された州法で戦争・戦闘のモニュメントや記憶は保護されている、市に権限はないとして、像をそのまま残置させる判決を下した47)。類似した州法がアラバマ州(2017年)、ジョージア州(20世紀初期)、ミシシッピー州(2004年)、ノースカロライナ州(2015年)、サウスカロライナ州(2000年)、テネシー州(2013年、16年改正)にあり、南軍像撤去に立ちはだかっている。

 撤去を望む地域住民の意志と、撤去を制限する保護法との間に齟齬をきたす状況が生じているだが、テネシー州メンフィスでは、錯綜する複雑な事情を何とかクリアして南軍像を撤去した。テネシー州では2013年にテネシー遺産保護法(Tennessee Heritage Protection Act)が制定された。この法律は、公共財産にある像、モニュメント、メモリアル、名称札や額を許可なく撤去、移設、改称することを禁止し、許可にはテネシー歴史委員会29名の3分の2の賛成が必要とされている。

 メンフィスには3体の南軍像が公園にあった。健康科学公園(旧称フォレスト公園)にネイサン・ベッドフォード・フォレスト(Nathan Bedford Forrest)像、メンフィス公園(旧称南軍公園)にジェファーソン・デイヴィス像と、ジェームス・マス(James Harvey Mathes)像があった。公園の名称は、テネシー遺産保護法が制定される直前にメンフィス市議会によって改称が決議された48)。フォレストは南軍の将軍で、大半がアフリカ系アメリカ人だった北軍捕虜を虐殺したピロー砦の戦い(1864年)で指揮官だった。奴隷所有者・交易者で、クー・クラックス・クランの最高指導者(Grand Wizard)でもあった。ジェファーソン・デイヴィスは南軍側の大統領、マスは南軍大尉でフォレスト将軍の伝記作家だった49)

 市議会は2015年に像の撤去を決議したが、テネシー歴史委員会は許可を否決した。それでも17年9月に市議会は像撤去の条例を採択50)。さらに17年12月20日に市議会は、像とともに健康科学公園とメンフィス公園を非営利団体グリーンスペースへ売却することを、満場一致で決議した。すぐさま決議した夜に、クレーン車と警察官が公園に出動して像が撤去された51)。公園を私有化して公共財産から外すことにより、像の撤去を法律的に可能にしたのである。

 南軍退役軍人の息子たちは像の撤去を違法と市を訴えたが、デイヴィッドソン郡判事は、私有財産にあるから州法に違反していない、撤去を防いではならないと棄却した52)。像は南軍退役軍人の息子たちに売却され、彼らは、テネシー州コロンビアで2020年5月に開館される南軍史博物館の敷地に再建すると語っていた。

 現在テネシー州では、州議会議事堂に1978年から設置されたフォレスト胸像の撤去が議論されている。共和党州議会下院議員ジェレミィ・フェイソン(Jeremy Faison)は、「歴史を保存したいならば、正当な方法で述べよう」と発言し、フォレスト像を州の博物館へ移動させ、代わりにカントリー・ミュージックの第一人者である女性シンガーソングライター、ドリー・パートン(Dolly Parton)や、婦人参政権活動家アン・ダッドリー(Anne Dallas Dudley)の像をおくことを提案している53)

 南軍像以外にも、人種主義・奴隷制が描かれているとして学校壁画が議論の的となっている。インディアナ州ノートルダム大学では、1880年代に描かれたクリストファー・コロンブスの壁画12枚が、奴隷制や、人類史上最も大規模な虐殺の一つを起こした人物を祝福しているとして、2017年に学生、同窓生、職員たち340人以上が撤去に署名した54)。彼らは、絵が、ヨーロッパ入植者を美化して初期アメリカ史の現実を不正確に伝え、その一方で先住アメリカ人の窮状に目をつぶっていると主張した。

 大学総長は2019年1月に、壁画を織物でカバーすると表明した55)。壁画が、コロンブスを慈悲深い探検家、先住民族の友人として描いているが、我々が認識しなければならない歴史の暗い部分を隠していると総長は述べた。カソリック移民の祝福を意図した芸術作品として保存したい、壁に直接描かれたフレスコ画で壁画は撤去できないが、高解像度の画像で見られるようにするという。

 2019年6月にサンフランシスコ教育委員会が、初代大統領ワシントンの生活を描いたジョージ・ワシントン高校の壁画13枚を塗りつぶすことを、満場一致で可決した56)。壁画は、ルーズベルト大統領のニューデール時代に公共事業促進局(WPA、Works Progress Administration)の事業として制作された。描いたのはロシア人移民画家ビクトル・アルナウトフ(Victor Arnautoff)で、共産主義者だった。

ジョージ・ワシントン高校の壁画「マウントバーノン」
「西への展望」
(Richmond Review/ Sunset Beacon 2019/03/29)


 「マウントバーノン(Mount Vernon)」と題する壁画では、作業所の窓から農場で綿花を摘み採ったり、大きな荷物を背負う奴隷たちの姿が見える。「西への展望(Westward Vision)」では、建国者たちに地図をしめしながらワシントンが指差す方向へ、開拓者群が先住アメリカ人の屍体を通り過ぎて行く。右端に武装解除させる和平締結のトマホーク型パイプを吸う様子が描かれている。鳥の羽の頭飾り上部に描かれた折れた枝は、アメリカ政府によって壊された和平条約、開拓者たちによって破られた約束を意味しているという。

 当時高校の歴史教育では、「すべての人間は生まれながらにして平等である」とする独立宣言に署名していながら、ワシントンや他の建国者たちが人間を家財のように所有していた矛盾を通常無視していた。ニューデール時代の壁画は多いが、奴隷制や先住民族の虐殺を伝えたものはきわめてわずかしかない。しかしながら画家アルナウトフは、歴史の違った見方、暗い側面を若者たちにしめそうとして、奴隷や先住民族を描いたと評価されている57)

 教育委員の一人は、学校で子供たちを精神的、感情的に安全にしたいと語り、他のメンバーは、壁画は奴隷制、虐殺、植民地主義、白人至上主義、抑圧などを賛美し、社会正義を反映していない、生徒たちの体験でなくて、画家の作品が注目されるならば、生徒中心とはいえないという意見だった。実際に生徒の間で、壁画は不評だった。

 その後、著名なアフリカ系画家や俳優、人権活動家たちが壁画破壊の反対を表明して、議論は大きくなっていった。そして8月に、教育委員会は以前の決定をくつがえし、壁画をそのままにしておおう決議をした58)

 同じくニューデール時代に描かれた学校壁画が、シカゴでも議論の対象となった。シカゴ公立学校には20世紀前半の壁画が400点以上あり、アメリカ最大のコレクションとなっている。2020年2月にシカゴ教育委員会が美術作品について新しい政策を提案すると、多くの意見が寄せられ、とくにガーフィールド公園の事務所にある先住民族と白人開拓者を描いた壁画の除去を訴えていた。

 「どうかすべての作品を取り除いてください、、、ヨーロッパ開拓者がこの国を造り、先住インディアンを教育したという話を、止めにする必要がある。我々にはこの国について真実を語る義務がある」。多数のコメンテーターはより直接的に、人種主義、時代遅れ、侮辱的だと述べた。「先住アメリカ人が大虐殺され、白人侵入者が天然痘に汚染された毛布を配布した、鎖につながれたアフリカ人が鞭打たれ、レイプされ売られたことを、シカゴ公立学校がしめす計画がないのなら、すべて撤去すべきだ」「初期の白人アメリカ人を救い主として描くのは時代遅れだ。本当の真実を語れ」

 問題となっている壁画の一つは、先住アメリカ人がカヌーをこぎ、隣のカヌーでは鳥の羽の頭飾りを付けた首長らしき人物が、立っている白人男性(おそらく宣教師)に顔を向けて川を渡るような身振りをしめしている59)

シカゴ公立学校ガーフィールド公園の事務所にある論争となった壁画
(Chicago Tribune 2020/02/26)


 シカゴ公立学校では、以前から壁画の撤去が進んでいた。2013年にアンダーソンビルのトランバル小学校で、講堂入口上部に1913年に描かれたコロンブスの絵が撤去された。あるいは2019年に、白人の子供たちだけが遊ぶ冬の風景画を撤去するように、オーク公園のパーシィ・ジュリアン中学校の生徒たちが当局を説得した。多様な生徒からなる集団を反映していないので、新入生に居場所がないと感じさせると、懸念したからだ60)

パーシィ・ジュリアン中学校から撤去された壁画
(artnet news 2020/03/02)


 シカゴ公立学校の新しい政策には、作品を評価して教育委員会に勧告する運営委員会の創設もふくまれている。スポークスウーマンは、勧告に作品の撤去もありえるとし、今後運営委員会に芸術家や教師たちをふくめて、コレクションの目的を明確にすると語った。

 アメリカでは、20世紀末から先住民族へ文化財や遺骸の返還がはじまった。現在では、人種差別、奴隷制を想起させる文化財・モニュメントを過去の遺産として、公衆の目にふれないようにする動きが活発となっている。人々が歴史認識を再考し、それぞれのコミュニティが主体となって改めて文化財・モニュメントの価値を討議し、除去の判断を下している。この動きは、植民地支配や奴隷交易を反省する脱植民地化の大きな流れに連動していると考えられる。

おわりに
 奴隷制・奴隷交易そして植民地主義が「人道に対する罪」として言及されるようになったのは、今世紀になってからである。人道に対する罪とは、第2次世界大戦でナチス・ドイツの戦争犯罪を裁くためにニュルンベルク裁判で規定された概念であるが、その後戦争に限らず、平時でもジェノサイド、アパルトヘイトなどにも適用されるようになった。また人道に対する罪に対して時効を適用しない条約も発効して、犯罪として永久に罰せられることにもなった。

 2001年に南アフリカのダーバンで開催された国連主催の「反人種主義世界会議」(通称ダーバン会議)で採択された宣言のなかで61)、奴隷制度と大西洋横断奴隷取引が、人類史上恐るべき悲劇であり、人道に対する罪、さらには人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の主要な源泉および表現になっている。アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民および先住民は植民地主義の犠牲者である。アフリカ系人民が数世紀にわたって人種主義、人種差別および隷属の犠牲者となり、したがって文化と自己のアイデンティティーを有する権利、宗教・生活・伝統を保持育成する権利、そして自己の伝統的知識および文化芸術遺産を保護する権利が承認されるべきであると述べられた。先住民族についても同様の権利が認められた。

 奴隷制や植民地主義の罪悪・弊害を追及する動きは、既存の文化財・モニュメントの観方、文化的価値判断にも影響をおよぼしている。

 奴隷制でえられた富の一端は、オランダ・アムステルダムで展示されている17世紀のポートレートによって表現されているといえるだろう。きらびやかなポートレートは、奴隷所有者たちの権勢や富裕を誇示するものであり、同時に奴隷制を維持し繁栄したオランダ国家の象徴でもあった。17世紀は富裕層にとって栄華をきわめた黄金時代であろうが、奴隷となったアフリカ系の人たちにとっては苦しみに満ちた暗黒時代だった。アフリカ系の人たちの犠牲によってもたらされた国家的繁栄を、黄金という用語で、もはや一面的に表示できないという社会認識が形成されたのである。

 奴隷制や奴隷所有者について明確な歴史認識なくして、アメリカ南軍像の文化的価値を評価することはできないだろう。現在にも根強く続いている人種差別を考慮しながら、アフリカ系住民をまじえて、南軍遺産の文化的再評価をコミュニティが主体的に行なっている。

 その一方で植民地戦争の戦利品として、あるいは植民地統治強化のため、植民地から宗主国へ、大量に持ち出された文化財が文化的損失として問題視されているのだ。

 フランスの返還レポートの冒頭で、アフリカのサハラ以南では文化遺産の90パーセントがアフリカ外部で所蔵され、現地にほとんど残っていない。人口の60パーセントが20歳以下という大陸で、かつて発達した自分たちの文化、創造性、精神性に、若い人たちが触れることができないと指摘している。文化的貧窮な状況におちいったのは、植民地時代に文化財が持ち出されたからであり、文化財の返還によって新しい倫理関係を構築することに意義があると、返還レポートの著者たちは提案している。

 奴隷制や奴隷交易でえられた権勢や富裕を誇示する文化財・モニュメントと、反対に犠牲となった植民地の文化財について、表裏一体となって文化価値の再認識が進んでいるのである。

(この小論は、『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2020』No.9(2020年6月1日)に掲載された論考に加筆したものである。)


参考
2022年の動向
森本和男「ドイツがベニン青銅器を返還 -「パンドラの箱が開いた」-」(2023年7月)
2021年の動向
森本和男「フランスがアフリカに文化財を返還 -各国で確実に進む返還の準備」(2022年6月)
2020年の動向
森本和男「ブラック・ライヴズ・マターとモニュメント・文化財 -加速する脱植民地化の動き-」(2021年11月)
2018年の動向
森本和男「フランスのアフリカ文化財返還政策とその波紋」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2019』No. 8(2019年5月1日)



1) The Restitution of African Cultural Heritage. Toward a New Relational Ethics
 http://restitutionreport2018.com/l
2) France to return 26 artworks to Benin (ArtDaily 2018/11/24)
 http://artdaily.com/news/109396/France-to-return-26-artworks-to-Benin#.XOYfU_7gqf2
3) French President Emmanuel Macron calls for international conference on the return of African artefacts (the Art Newspaper 2018/11/26)
 https://www.theartnewspaper.com/news/french-president-emmanuel-macron-calls-for-international-conference-on-the-return-of-african-artefacts
4) France retreats from report recommending automatic restitutions of looted African artefacts (the Art Newspaper 2019/07/05)
 https://www.theartnewspaper.com/news/france-buries-restitution-report
5) Benin Receives $22.5 Million Loan From France for New Museum (HYPERALLERGIC 2019/07/17)
 https://hyperallergic.com/509718/benin-receives-22-5-million-loan-from-france-for-new-museum/
  Benin readies for return of treasures taken by France (ArtDaily 2019/07/17)
 https://artdaily.cc/news/115281/Benin-readies-for-return-of-treasures-taken-by-France#.XqZexs3gr9A
  Benin gets €20m loan for new museum to show restituted heritage (the Art Newspaper 2019/07/08)
 https://www.theartnewspaper.com/news/benin-gets-eur20m-loan-for-new-museum-to-show-restituted-heritage
6) France Returns to Senegal an 18th-Century Saber That It Looted During the Colonial Period (artnet news 2019/11/18)
 https://news.artnet.com/art-world/france-restitutes-senegal-saber-1707042
  France returns a historic sword to Senegal (the Art Newspaper 2019/11/18)
 https://www.theartnewspaper.com/news/france-returns-a-historic-sword-to-senegal
7) France to return Benin artworks by 2021: minister (ArtDaily 2019/12/17)
 http://artdaily.com/news/119274/France-to-return-Benin-artworks-by-2021--minister#.XqZiv83gr9C
  After a Year of Inaction, France Commits to Returning 26 Looted Artifacts to Benin by 2021 (artnet news 2019/12/17)
 https://news.artnet.com/art-world/france-restitution-26-benin-1735425
  France promises to return 26 looted Benin artefacts by 2021 and opens talks on 'wider set of works' (the Art Newspaper 2019/12/17)
 https://www.theartnewspaper.com/news/france-benin-objects
8) A Group of Principled French Art Dealers Teamed Up to Buy 27 Looted African Artifacts at Auction—So They Could Return Them to Benin (artnet news 2020/01/17)
 https://news.artnet.com/art-world/french-collective-returns-benin-heritage-1755405
  Objects Returned to Benin by French Collectors Had Been Removed From a Contested Auction (HYPERALLERGIC 2020/01/28)
 https://hyperallergic.com/538048/objects-returned-to-benin-by-french-collectors-had-been-removed-from-a-contested-auction/
  Why France is dragging its feet to repatriate looted African artworks (the Afirica Report 2020/02/06)
 https://www.theafricareport.com/23025/why-france-is-dragging-its-feet-to-repatriate-looted-african-artworks/
9) UK museums task staff with identifying 'stolen' colonial collections (the Telegraph 2019/01/01)
 https://www.telegraph.co.uk/news/2019/01/01/uk-museums-task-staff-identifying-stolen-colonial-collections/
10) Ahdaf Soueif, On Resigning from the British Museum’s Board of Trustees (London Review of Boooks 2019/07/16)
 https://www.lrb.co.uk/blog/2019/july/on-resigning-from-the-british-museum-s-board-of-trustees
  With Damning Words, a British Museum Trustee Has Resigned Over Its BP Sponsorship and Legacy of Colonialism (artnet news 2019/07/16)
 https://news.artnet.com/art-world/british-museum-trustee-resigns-bp-restitution-workers-1601818
11) Give us back our rain god and birdman, Jamaican government tells British Museum (London Inside 2019/08/07)
 https://www.standard.co.uk/go/london/arts/jamaica-british-museum-artefacts-rain-god-birdman-a4207456.html
  Jamaica Joins a Growing Number of Nations Calling on the British Museum to Repatriate Its Cultural Artifacts (artnet news 2019/08/08)
 https://news.artnet.com/art-world/jamaica-repatriation-british-museum-1619821#.XUypDfovHQQ.twitter
  Growing pressure on the British Museum as Jamaica is latest government seeking return of objects (the Art Newspaper 2019/08/08)
 https://www.theartnewspaper.com/news/jamaica-british-museum
12) Collection online, Museum number Am1977,Q.2 (the British Museum)
 https://research.britishmuseum.org/research/collection_online/collection_object_details.aspx?objectId=648049&page=1&partId=1&peoA=36193-3-18&people=36193&sortBy=fromDateDesc
13) Manchester Museum to return artefacts to Indigenous Australians (the Guardian 2019/10/07)
 https://www.theguardian.com/australia-news/2019/oct/07/manchester-museum-to-return-artefacts-to-indigenous-australians
  Manchester museum returns stolen sacred artefacts to Indigenous Australians (the Guardian 2019/11/20)
 https://www.theguardian.com/australia-news/2019/nov/20/manchester-museum-returns-stolen-sacred-artefacts-to-australians
  Gangalidda Garawa and Nyamal Nations receive significant material from Manchester Museum (ArtDaily 2019/11/24)
 https://artdaily.cc/news/118556/Gangalidda-Garawa-and-Nyamal-Nations-receive-significant-material-from-Manchester-Museum-#.XqZwfs3gr9B
  There's a new push for the return of looted Aboriginal artefacts – in the name of 'truth telling' (the Guardian 2019/12/01)
 https://www.theguardian.com/australia-news/postcolonial-blog/2019/dec/02/theres-a-new-push-for-the-return-of-looted-aboriginal-artefacts-in-the-name-of-truth-telling
14) 'A major step forward for Britain’s colonial museums': Manchester Museum returns objects to Indigenous Australians (the Art Newspaper 2019/11/21)
 https://www.theartnewspaper.com/news/heritage-specialists-welcome-manchester-museum-s-repatriation-of-objects-to-indigenous-australians
15) University of Edinburgh returns nine skulls to Sri Lankan tribe (BBC 2019/11/22)
 https://www.bbc.com/news/uk-scotland-edinburgh-east-fife-50516316
  Returning museum objects to former colonies risks 'denying Britain's history' (the Telegraph 2019/11/22)
 https://www.telegraph.co.uk/news/2019/11/22/returning-museum-objects-former-colonies-risks-denying-britains/
16) Bronze cockerel to be returned to Nigeria by Cambridge college (the Guardian 2019/11/27)
 https://www.theguardian.com/education/2019/nov/27/bronze-cockerel-to-be-returned-to-nigeria-by-cambridge-college
  Cambridge college returns Benin bronze to Nigeria (the Art Newspaper 2019/11/28)
 https://www.theartnewspaper.com/news/cambridge-college-returns-bronze-to-benin
17) Legacy of Slavery Working Party recommendations (Jesus College Cambridge 2019/11/27)
 https://www.jesus.cam.ac.uk/articles/legacy-slavery-working-party-recommendations
18) Cambridge to return looted Benin statue (ArtDaily 2019/11/29)
 http://artdaily.com/news/118787/Cambridge-to-return-looted-Benin-statue#.XqeDVs3gr9C
19) Statement from the Benin DialogueGroup, Nationaal Museum van Wereldculturen, The Netherlands, 19 October 2018
 http://docs.dpaq.de/14096-statement_from_the_benin_dialogue_19_october_2018_16.33.pdf
20) An update on Hinemihi (National Trust 2019/11/28)
 https://www.nationaltrust.org.uk/clandon-park/features/an-update-on-hinemihi
  Hinemihi's time at Clandon Park (National Trust)
 https://www.nationaltrust.org.uk/clandon-park/features/hinemihis-time-at-clandon-park
  These Historic Maori Carvings Were Taken From New Zealand 130 Years Ago. Now, They May Finally Go Home (artnet news 2019/12/06)
 https://news.artnet.com/art-world/england-returns-maori-carvings-1724853
21) Soldier's grandson to return items he looted from Benin City (the Guradian 2019/12/17)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2019/dec/17/soldiers-grandson-to-return-items-looted-from-benin-city-nigeria
  These Artifacts Were Stolen. Why Is It So Hard to Get Them Back? (the New York Times 2020/01/23)
 https://www.nytimes.com/2020/01/23/arts/design/benin-bronzes.html
22) Erste Eckpunkte zum Umgang mit Sammlungsgut aus kolonialen Kontexten der Staatsministerin des Bundes für Kultur und Medien, der Staatsministerin im Auswärtigen Amt für internationale Kulturpolitik, der Kulturministerinnen und Kulturminister der Länder und der kommunalen Spitzenverbände
 https://www.bundesregierung.de/resource/blob/973862/1589206/3c890df9817f100acf6948d15de63a91/2019-03-13-bkm-anlage-sammlungsgut-data.pdf
  Framework Principles for dealing with collections from colonial contexts agreed by the Federal Government Commissioner for Culture and the Media, the Federal Foreign Office Minister of State for International Cultural Policy, the Cultural Affairs Ministers of the Länderand the municipal umbrella organisations
 https://www.auswaertiges-amt.de/blob/2210152/b2731f8b59210c77c68177cdcd3d03de/190412-stm-m-sammlungsgut-kolonial-kontext-en-data.pdf
23) Germany to return Portuguese Stone Cross to Namibia (BBC 2019/05/17)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-48309694
  Germany to return 15th-century seafarer Cross to Namibia (ArtDaily 2019/05/18)
 https://artdaily.cc/news/113669/Germany-to-return-15th-century-seafarer-Cross-to-Namibia#.Xqe63s3gr9A
24) Colonial art restitution: German museums need greater cultural awareness (DW 2019/07/02)
 https://www.dw.com/en/colonial-art-restitution-german-museums-need-greater-cultural-awareness/a-49446396
25) Guidelines for German Museums. Care of Collections from Colonial Contexts (Deutscher Museumsbund)
 https://www.museumsbund.de/publikationen/guidelines-on-dealing-with-collections-from-colonial-contexts-2/
 https://www.museumsbund.de/wp-content/uploads/2019/09/dmb-guidelines-colonial-context-2019.pdf
26) Congo and New Zealand demand return of cultural artefacts (the Brussels Times 2019/12/11)
 https://www.brusselstimes.com/brussels-2/83057/congo-and-new-zealand-demand-return-of-cultural-artefacts/
27) 'We're Coming Late to the Matter Here': Belgian Museums Continue to Struggle With a Flurry of Restitution Claims (artnet news 2019/12/13)
 https://news.artnet.com/art-world/belgium-art-restitution-1731726
28) Dutch National Museum of World Cultures (NMVW) Announces Principles Claims Colonial Collections (NMVW 2019/03/07)
 https://www.volkenkunde.nl/en/about-volkenkunde/press/dutch-national-museum-world-cultures-nmvw-announces-principles-claims
29) Rijksmuseum laments Dutch failure to return stolen colonial art (the Guardian 2019/03/13)
 https://www.theguardian.com/world/2019/mar/13/rijksmuseum-laments-dutch-failure-to-return-stolen-colonial-art
  The Rijksmuseum Becomes the Latest European Institution to Consider Returning Looted Artifacts From Its Collection (artnet news 2019/03/13)
 https://news.artnet.com/art-world/rijksmuseum-may-return-looted-artifacts-1487446
30) Amsterdam council votes to apologise for slave-trading past (DutchNews.nl 2019/06/24)
 https://www.dutchnews.nl/news/2019/06/amsterdam-council-votes-to-apologise-for-slave-trading-past/
31) Amsterdam to apologise for role in slave trade (the Irish Times 2019/06/25)
 https://www.irishtimes.com/news/world/europe/amsterdam-to-apologise-for-role-in-slave-trade-1.3937384
32) End of Golden Age: Dutch museum bans term from exhibits (the Guardian 2019/09/13)
 https://www.theguardian.com/world/2019/sep/13/end-of-golden-age-amsterdam-museum-bans-term-from-exhibits
  The Amsterdam Museum Drops the Term ‘Golden Age,’ Arguing That It Whitewashes the Inequity of the Period (artnet news 2019/09/13)
 https://news.artnet.com/art-world/amsterdam-museum-drops-term-golden-age-decolonize-1650112
33) Tom van der Molen, The Problem of ‘the Golden Age’ (CODART 2019/11/)
 https://www.codart.nl/feature/curators-project/the-problem-of-the-golden-age/
34) A Dutch Golden Age? That’s Only Half the Story (the New York Times 2019/10/25)
 https://www.nytimes.com/2019/10/25/arts/design/dutch-golden-age-and-colonialism.html
35) For the First Time in Its History, the Netherlands Is Returning a Trove of Artifacts to Its Former Colonial Territory of Indonesia (artnet news 2020/01/20)
 https://news.artnet.com/art-world/netherlands-returns-indonesia-artifacts-1748376
36) Announcement of U.S. Support for the United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples (U.S. Department of State 2011/01/12)
 https://2009-2017.state.gov/s/srgia/154553.htm
37) Dylann Roof Photos and a Manifesto Are Posted on Website (the New York Times 2015/06/20)
 https://www.nytimes.com/2015/06/21/us/dylann-storm-roof-photos-website-charleston-church-shooting.html
38) Nikki Haley, South Carolina Governor, Calls for Removal of Confederate Battle Flag (the New York Times 2015/06/22)
 https://www.nytimes.com/2015/06/23/us/south-carolina-confederate-flag-dylann-roof.html
39) This Is Why South Carolina Raised the Confederate Flag in the First Place (TIME 2015/06/22)
 https://time.com/3930464/south-carolina-confederate-flag-1962/
40) Era Ends as South Carolina Lowers Confederate Flag (the New York Times 2015/07/10)
 https://www.nytimes.com/2015/07/11/us/south-carolina-confederate-flag.htm
41) Efforts to banish Confederate symbols grow in US south (BBC 2015/06/24)
 https://www.bbc.com/news/world-us-canada-33259521
42) The Statue at the Center of Charlottesville’s Storm (the New York Times 2017/08/13)
 https://www.nytimes.com/2017/08/13/us/charlottesville-rally-protest-statue.html
43) Confederate Monuments Are Coming Down Across the United States. Here’s a List (the New York Times 2017/08/28)
 https://www.nytimes.com/interactive/2017/08/16/us/confederate-monuments-removed.html
44) AHA Statement on Confederate Monuments (August 2017)
 https://www.historians.org/news-and-advocacy/aha-advocacy/aha-statement-on-confederate-monuments
45) Whose Heritage? Public Symbols of the Confederacy (SPLC 2019/02/01)
 https://www.splcenter.org/20190201/whose-heritage-public-symbols-confederacy
46) Shaping History: Monument-Toppling, Racial Justice and the Law (Center for art law 2019/12/02)
 https://itsartlaw.org/2019/12/02/shaping-history-monument-toppling-racial-justice-and-the-law/
47) Charlottesville Confederate Statues Are Protected by State Law, Judge Rules (the New York Times 2019/05/01)
 https://www.nytimes.com/2019/05/01/us/charlottesville-confederate-statues.html
48) Council Changes Names of Forrest Park, Confederate Park, and Jefferson Davis Park (Memphis Flyer 2013/02/05)
 https://www.memphisflyer.com/JacksonBaker/archives/2013/02/05/council-changes-name-of-forrest-park-confederate-park-and-jefferson-davis-park
  Memphis changes names of 3 Confederate-themed parks (USA Today 2013/02/06)
 https://www.usatoday.com/story/news/nation/2013/02/06/memphis-parks-confederate-ku-klux-klan/1895549/
49) Waters: Capt. Mathes, forgotten casualty of statue war (commercial appeal 2017/12/23)
 https://www.commercialappeal.com/story/news/columnists/david-waters/2017/12/23/waters-capt-mathes-forgotten-casualty-statue-war/976954001/
50) Memphis City Council votes on ordinance to remove Confederate statues (NEWS3 2017/12/23)
 https://wreg.com/news/report-memphis-spent-thousands-guarding-confederate-monuments-last-month/
51) Confederate Statues in Memphis Are Removed After City Council Vote (the New York Times 2017/12/20)
 https://www.nytimes.com/2017/12/20/us/statue-memphis-removed.html
52) Judge rules Confederate statues removal by Memphis is legal (AJC 2018/05/16)
 https://www.ajc.com/news/national/judge-rules-confederate-statues-removal-memphis-legal/78sUqS1Uwl2dSQratByJAK/
53) A Tennessee Republican Wants to Remove a Statue of a Former KKK Grand Wizard and Replace It With One of Dolly Parton (artnet news 2019/12/16)
 https://news.artnet.com/art-world/remove-kkk-dolly-parton-1734777
  'We must stop memorialising such a dark part of our history': official stance on Confederate monuments is shifting (the Art Newspaper 2020/02/05)
 https://www.theartnewspaper.com/news/officials-shift-views-on-civil-war-monuments
54) Notre Dame students want Christopher Columbus murals removed, saying they celebrate slavery (IndyStar 2017/12/03)
 https://www.indystar.com/story/news/local/2017/12/03/notre-dame-students-want-these-christopher-columbus-murals-removed-saying-they-fo-celebrating-slaver/917687001/
55) Letter to Campus Regarding Columbus Murals (University of Notre Dame 2019/01/20)
 https://president.nd.edu/homilies-writings-addresses/letter-to-campus-regarding-columbus-murals/
  After a Yearslong Protest, the University of Notre Dame Decides to Cover Up an Epic Mural of Christopher Columbus (artnet news 2019/01/24)
 https://news.artnet.com/art-world/university-of-notre-dame-christopher-columbus-mural-1447603
56) After Years of Debate, San Francisco Votes to Cover Up Controversial 1930s Mural Depicting George Washington as a Slaveowner (artnet news 2019/07/01)
 https://news.artnet.com/art-world/san-francisco-votes-cover-controversial-1930s-mural-depicting-george-washington-colonizer-slave-owner-1589887
57) George Washington High School Alumni Oppose Censoring Controversial Murals (Richmond Review/ Sunset Beacon 2019/03/29)
 https://sfrichmondreview.com/2019/03/29/george-washington-high-school-alumni-oppose-censoring-controversial-murals/
  San Francisco Will Spend $600,000 to Erase History (the New York Times 2019/06/28)
 https://www.nytimes.com/2019/06/28/opinion/sunday/san-francisco-life-of-washington-murals.html
58) In a Reversal, the San Francisco School Board Has Voted to Cover, Not Destroy, a Series of Controversial High School Murals (artnet news 2019/08/14)
 https://news.artnet.com/art-world/san-francisco-mural-controversy-vote-1625311
59) Art criticized as racist could be removed from Chicago Public Schools under new policy: ‘The days of painting early white Americans as saviors are over’ (Chicago Tribune 2020/02/26)
 https://www.chicagotribune.com/news/breaking/ct-cps-chicago-public-schools-art-murals-policy-20200226-i6wbmcem6vgpdd76ejm5zss2yi-story.html
60) Chicago Schools Boast the Largest Collection of Early 20th-Century Murals in the US. So Why Are Activists Encouraging Their Removal? (artnet news 2020/03/02)
 https://news.artnet.com/art-world/call-to-remove-chicago-public-schools-native-american-murals-1788570
61) World Conference against Racism, Racial Discrimination, Xenophobia and Related Intolerance (2001/08/31~09/08)
  Declaration(宣言)
 https://www.un.org/WCAR/durban.pdf
 反人種主義世界会議