[2020年の動向]

ブラック・ライヴズ・マターとモニュメント・文化財
-加速する脱植民地化の動き-

森本和男

はじめに
アメリカ
 リッチモンドのモニュメント・アベニュー
 通りに描かれるBLMの巨大文字
 トランプ大統領のモニュメント政策
 博物館・美術館の変革
イギリス
フランス
ドイツ
オランダ
ベルギー
まとめ


はじめに

 フランスのマクロン大統領が2017年に西アフリカのブルキナファソで、文化財の返還を声明し、そして翌年には、具体的な指針をしめしたベネディクト・サヴォワ(Bénédicte Savoy)とフェルウィン・サル(Felwine Sarr)による文化財返還レポートが公表された。

 フランスのアフリカ文化財返還レポートの冒頭で、サハラ以南の文化遺産の90パーセントがアフリカ大陸の外側にあり、過去を継承する芸術文化的資源が、アフリカの若者たちのまったく手の届かない国や博物館で所蔵されているという、理不尽な現実を記述している。そして文化的不均衡を是正するために文化財返還が勧告され、立法措置による法律的課題の解決も提案された。文化財返還レポートが公表されると、マクロン大統領は西アフリカのベナンへ26点の文化財を返還すると声明した。フランスは、植民地時代に取得したアフリカ文化財の返還にむけて、一歩踏み出したのである。

 しかしながら、返還への具体的な動きは遅々としている。フランスでアフリカの文化財を最も多く収蔵しているのは、パリのケ・ブランリ美術館(Musée du quai Branly - Jacques Chirac)で、収蔵するコレクションは国有財産である。フランスでは公共コレクションの譲渡不可が、法律によって規定されている。したがって博物館に収蔵されているコレクションの中からアフリカのものだけを選び出し、元来あった原産国へ所有権を移転することは不可能なのである。原産国へ文化財を返還するには新たな法律が必要とされた。2020年12月にようやくフランスの国会で、ベナンに26点とセネガルに1点、計27点の文化財を返還する法律が可決され、2021年には公式に返還される予定である。

 ケ・ブランリ美術館にはサハラ以南のアフリカ文化財が約70,000点あるという。返還の決まった27点は、フランスにある膨大な数量のごく一部にすぎない。

 さて2020年は、突如広まった新型コロナウイルスによる世界的パンデミックと、欧米で広範に盛り上がったブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter、以下BLMと略称)との2つの社会現象に象徴されるだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、人との接触をさけるため、世界中で人々の行動が大幅に制限された。生活だけでなく社会経済にも大きな影響をあたえた。パンデミックが拡がるなか、アメリカで起きた警官による黒人殺害への抗議に端を発したBLMの抗議運動が、ヨーロッパへと波及した。単に黒人差別や警察の暴力に対する糾弾だけでなく、奴隷制、白人至上主義、帝国主義に反対して平等と正義、多様性と包括性をもとめる運動へと発展した。

 以前から進められていた博物館界の脱植民地化の流れと、BLMの抗議運動は呼応し、博物館・美術館における多様性や包括性、過去の不正義を是正するという方向性が一層深められた。そして植民地から持ち出され現在ヨーロッパの博物館に収蔵されている文化財が、植民地主義、過去の不正義の歴史的産物として注目されているのである。

 2020年は、人種主義や奴隷制など帝国主義の歴史的過去に社会的関心が高まり、文化財返還の議論も進んだ。その一方で、具体的な返還の動きが少なかった年だったといえるだろう。


アメリカ

 まず、BLMの抗議運動が興隆したアメリカから見てみよう。2020年5月25日にミネソタ州ミネアポリス近郊で、黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)が警察官によって殺害された。手錠で拘束されたまま頸部を警官の膝で押さえつけられ、息ができないと必死に懇願したにもかかわらず、窒息死させられたのである1)。警官に押さえつけられた動画がSNSによって広く流布されると、黒人差別に抗議する運動がアメリカ中に拡大し、多くの人たちが街頭に出て警官の横暴に抗議した。ピークだった6月6日には50万人もの人たちが550ヶ所に集まり、BLMはアメリカ史上最大の運動と報じられた2)

 BLMのスローガン自体は、以前から社会的に認識されていた。2012年のアフリカ系アメリカ人少年射殺事件の裁判で、射殺した自警団の男性を無罪放免とした2013年の判決に対して、黒人の命は尊重されるべきだという批判が、「#BlackLivesMatter」というハッシュタグを付けてSNSに投稿されてからだといわれている。

 ジョージ・フロイドの殺害事件のあった翌日5月26日から、8月22日までの約3ヶ月間にBLMに関連したデモンストレーションが、全米50州とワシントンDCで2,440ヶ所、7,750件以上あったと報告されている。とくに5月末から6月前半にかけてデモの件数が急増し、その後減少していった。一部に警察や極右勢力の介入で混乱が生じたものの、ほとんどは暴力や破壊のともなわない平和的行動だった。

 アメリカだけでなく世界的にも注目を集め、74ヶ国で少なくとも8,700件のBLMのデモが実行された3)。日本でも大阪や東京・渋谷でデモ行進があった。またテニス・プレイヤーの大坂なおみ選手が全米オープン試合で、試合のたびに警察の暴力で被害者となった黒人犠牲者7人の名前を記した異なるマスクをして登場し、BLMをアピールした4)。差別問題に関心の低い日本人の間でも話題となった。

 BLMの抗議運動にともないアメリカでは多くのモニュメント・彫像が撤去もしくは引き倒された。対象となった像の人物はおもに南軍(アメリカ連合国、CSA、the Confederate States of America)の将軍たちであり、彼らは有力な奴隷主や奴隷商人でもあった。モニュメント排斥の動きは、ヨーロッパにも飛び火した5)

 アメリカ歴史協会(AHA、American Historical Association)によると6)、南軍遺産の多くは、19世紀末から20世紀の20年代までに造られ、南軍そのものではなく、南北戦争後の再建(Reconstruction)後に、南部の「取り戻す(Redemption)」を記憶するために建てられた。南部全域で法的に人種差別が義務づけられ、公民権剥奪が広まった。再建をひっくり返し、アフリカ系アメリカ人を政治的に委縮させ、政治生活の主流から彼らを孤立させる目論見だった。20世紀中頃に公民権運動の興隆とともにふたたび南軍遺産が流行し、南軍旗が政治シンボルとなった。つまり南軍遺産とは、残虐な奴隷制を隠ぺいしつつ、「南部の失われた大義(Lost Cause of the Confederacy)」を表明する白人至上主義たちのシンボルなのである。

 公共の場所から南軍遺産の排除が本格化したのは、2015年6月にサウスカロライナ州チャールストンで起きた銃乱射事件からである。若い白人の人種主義者が教会に入り、9人のアフリカ系アメリカ人を虐殺した。事件後に、銃撃犯が南軍旗と銃を手にした写真が報道されると7)、南軍旗を公共の場から外すべきだという世論が一気に高まり、翌月には州議会敷地に掲揚されていた南軍旗が撤去された8)。南軍遺産への反感は旗の除去以外に、モニュメント・彫像の撤去、地名や祝日の変更などにもおよび、排斥の対象が急速に広まった9)

 2017年8月に起きたバージニア州シャーロッツビルの事件で、南軍遺産の排除は加速した。南軍のロバート・リー将軍(Robert E. Lee)騎馬像撤去に反対する極右勢力が集会を開いたのだが、その集会に抗議のために集まった多数の人たちの群れに、白人至上主義者の運転する車が突っ込んで、女性1人死亡、19人が負傷した10)。南軍像撤去をめぐる騒動で死者まで出たことから、事件直後から、各地で像の撤去が進行した11)。そして2020年に全米を席巻したBLMの抗議運動によって、ふたたび南軍遺産の排除が拡大したのである。

 2020年にアメリカで撤去もしくは引き倒されたモニュメントは、一体どのくらいあったのだろうか。南部貧困法律センター(SPLC、Southern Poverty Law Center)の集計によると12)、2020年に撤去あるいは改名された南軍遺産は168で、そのうちモニュメントは94体だった。2015~19年の5年間で撤去されたモニュメントが58体だったので、2020年にはわずか約半年ぐらいで、倍近い数量のモニュメントが排除されたことになる。

 排除されたモニュメントは南軍関係のものだけでなく、先住民族を虐殺した人物、人種主義者や奴隷制論者の像も攻撃の対象となった。英語版ウィキペディアに一覧表がある。「ジョージ・フロイド抗議期間中に撤去されたモニュメントとメモリアルの一覧(List of monuments and memorials removed during the George Floyd protests)」の項目によると、撤去されたのは南軍関係者モニュメント105件、バージニア州の南軍関係者モニュメント27件、アメリカ先住民族虐殺関係者のモニュメント18件、コロンブス像36件が記載されている。

 項目解説によると、当初南軍関係者のモニュメントがターゲットなっていたが、対象範囲が他の人種主義にも拡大されて、アメリカ到着によって先住民族の虐殺をもたらしたクリストファー・コロンブスの像や、アメリカ先住民族を虐待した人物の像が多数撤去された。奴隷主だったジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、そして奴隷制反対論者であっても先住民族を冒とくしたと見なされた人物の像すらも撤去された13)。実際に撤去されなくても、抗議や署名、落書きの対象となったモニュメントは、数え切れないほど多数あったと予想される。

リッチモンドのモニュメント・アベニュー

 撤去されたモニュメントの代表例として、バージニア州リッチモンドのモニュメント・アベニューを見てみよう。

 南軍の拠点だったバージニア州には、全米の州のなかで南軍遺産が最も多くある。そして南軍の首都だったバージニア州リッチモンドには、「モニュメント・アベニュー(Monument Avenue)」という南軍遺産を象徴する並木通りがある。南東から北西へと延びる約2.4kmの間に南軍関係の銅像5体と、アフリカ系アメリカ人の男性テニス・プレイヤーの銅像1体が立ち、そのうち2020年に南軍関係の像4体が撤去された。

 1619年8月にバージニアのジェームズタウンに、オランダ商人によって黒人奴隷20人が売られたのが、アメリカのイギリス植民地における奴隷制の発祥といわれている。その後タバコ・プランテーションで働く大勢の黒人がアフリカから連れて来られた。19世紀になるとタバコ製造をはじめ各種製造業でも奴隷労働が必需となり、リッチモンドで賃貸奴隷市場が発展して、奴隷の最大供給拠点となって栄えた。北部に独占されてきた製造業部門でも、奴隷を活用すれば南部は競争できると考えられたのである14)

 南軍司令官だったリー将軍が1870年に死亡すると、彼と南軍関係者を讃える彫像を建造する計画が進められ、1890年に最初の銅像であるリー将軍の騎馬像が公開された。続いて1907年にジェイムズ・スチュアート(James E. B. Stuart)将軍騎馬像と、南軍の大統領だったジェファーソン・デイヴィス(Jefferson F. Davis)像、1919年にストーンウォール・ジャクソン(Thomas J. Jackson)将軍騎馬像、1929年に海軍士官で海洋学者だったマシュー・フォンテーン・モーリー(Matthew Fontaine Maury)の像が建てられた。

バージニア州リッチモンドのモニュメント・アベニュー
    ①ジェイムズ・スチュアート将軍騎馬像(1907年)
    ②ロバート・E・リー将軍騎馬像(1890年)
    ③ジェファーソン・デイヴィス南軍大統領像(1907年)
    ④ストーンウォール・ジャクソン将軍騎馬像(1919年)
    ⑤マシュー・フォンテーン・モーリー像(1929年)
    ⑥アーサー・アッシュ黒人テニス・プレイヤー像(1996年)

①ジェイムズ・スチュアート将軍騎馬像(1907年) ②ロバート・E・リー将軍騎馬像(1890年)
③ジェファーソン・デイヴィス南軍大統領像(1907年) ④ストーンウォール・ジャクソン将軍騎馬像(1919年)
   
⑤マシュー・フォンテーン・モーリー像(1929年) ⑥アーサー・アッシュ黒人テニス・プレイヤー像(1996年)
モニュメント・アベニューの銅像
(Monument Avenue WIKIPEDIA


 これらの像をめぐって、南軍を称賛する民間団体で、リッチモンドに本部のある「団結した南軍の娘たち(UDC、the United Daughters of the Confederacy)」や市当局は、リッチモンドを南軍歴史の中心にすえて、生誕記念日に花輪をささげたり、各種イベントを企画してモニュメント・アベニューの南軍遺産を盛り立てた。観光ガイドにも掲載されて広く喧伝された。彫像のならぶ歴史的都市景観が評価されて、1970年にアメリカの歴史的場所(the National Register of Historic Places)、1997年には歴史的ランドマーク(National Historic Landmark)にも登録された15)。モニュメント・アベニューの彫像群は、まさに奴隷制や白人至上主義に代表される南軍イデオロギーを支える歴史遺産だった16)

リッチモンドのモニュメント・アベニュー旧観
Virginia Department of Historic Resources


 1960年代の公民権運動の高まりとともにバージニア州でもジム・クロウ法が撤廃され、1989年には全米初の黒人州知事が誕生した。リッチモンドでは1970年代にアフリカ系が多数派となり、1977年には最初の黒人市長が選出されている。1996年には、テニス4大大会を制覇した初の黒人テニス・プレイヤーで、リッチモンド出身のアーサー・アッシュの銅像が6番目のモニュメントとして造立された。次第に南軍遺産に対する反発が強まり、2010年代になるとジェファーソン・デイヴィス像はたびたび落書きされるようになった。

 2017年8月のシャーロッツビル事件の後、リッチモンドでも9月16日に南軍支持派がリー将軍像の前で集会を企画したが、それに対抗して人種的正義を訴える平和なデモンストレーションが組織され、数百人がモニュメント・アベニューを行進した17)。対立する両派の激突でふたたび死傷者が出るかもしれないという懸念があったのだろう、重装備の機動隊も出動した。撤去か、それともそのままにしておくのか、モニュメントをめぐる攻防は顕著となり、何らかの対応が迫られていた。

 シャーロッツビル事件を受けてリッチモンド市長レバー・ストーニー(Levar Stoney)は、南軍彫像の撤去あるいは移設を検討する委員会を開いた。委員会の会合に500人以上が集まったのだが、会場が狭く、多数の人が門前払いされた18)。市民の間ではモニュメントをめぐる議論に関心が高まっていた。しかし多くの南部諸州には、モニュメントの保存を州政府の権限とする文化財保護法があり19)、バージニア州でも市や郡が軍事記念モニュメントを撤去できなかった。最近になってようやく2020年4月に州法が改正され、同年7月1日から地方の権限で撤去、移設が可能となった20)

 2020年5月末からBLMの抗議運動が急拡大すると、まず6月3日にリッチモンド市長が、モニュメント・アベニューの市所有地にあるすべての南軍モニュメント撤去の条例を、新しい州法の効力が発揮する7月1日に提出すると表明した21)。すると翌日、州知事ラルフ・ノーサム(Ralph Northam)がリー将軍像の即時撤去を命じた22)。リー将軍像は州の土地、その他のモニュメントは市の土地にあったからである。しかし7月を待たずに、6月10日に南軍大統領のジェファーソン・デイヴィス像が倒されてしまった23)

 7月1日に市長は、公共の安全を確保する緊急事態として、すぐさま市所有地にあるすべての南軍モニュメントを撤去するように命じた。午後、群衆が見守る雨のなか、ストーンウォール・ジャクソン像が撤去された24)。続いて2日にマシュー・フォンテーン・モーリー像、7日にジェイムズ・スチュアート像が撤去された25)。こうして6月から7月にかけて、モニュメント・アベニューにあった南軍モニュメント5体のうち、4体が排除されたのである。

 しかし最初に造立されて州の土地にあるリー将軍の騎馬像については、撤去の一時執行停止命令がリッチモンド巡回裁判所から出された。1890年に土地が州に併合された時、誠実に警護し愛情をこめて像を守ると州が約束したと、土地提供者の子孫が訴えたからである26)。10月27日に裁判官は州知事の撤去命令を認めたが、原告が上訴するという理由で騎馬像の残置が許可された27)

 巨大なリー将軍像は引き倒すことも不可能なため、大きな台座にそのまま残された。モニュメントの周りは直径約70mの円形の芝生となっていて、人々の集まる場所となった。デモ行進の出発点となったり、かわるがわる演説したり、あるいはライブ音楽が流されたりして、お祭り広場の場所へと変化した。リー将軍像は落書きのキャンバスとなり、何層もの落書きで日を重ねてとても色彩豊かになった。そしていつしか、周囲はマルクス=デーヴィッド・ピーターズ・サークル(Marcus-David Peters Circle)と呼ばれるようになった28)。ピーターズはリッチモンドに住む高校の生物学の黒人教師だったが、2018年に警官に銃で撃たれて死んだ。

 カラフルな銅像の前は、さまざまな人々によるパフォーマンスの空間となった。広場はバスケットボール、ダンス、音楽ライブ、有権者登録などが繰り広げられ、芸術家たちはそれぞれ趣向を凝らしたアートを披露した。毎晩日が沈むと、光のアーティストが、警官の暴力で犠牲となった黒人たちの顔や姿を、BLMの文字とともに銅像に映し出した。

 長い間リー将軍像は目に見えない暗い否定的な圧力を黒人たちにあたえ続け、彼らは銅像広場に足を踏み入れなかった。しかし犠牲となった黒人たちや著名な黒人活動家、音楽家、芸術家たちの姿が銅像に映し出されると、リー将軍像に対する見方は変化し、広場は再解釈可能となり、肯定的な黒人パワーさえ感じられるようになった29)

リー将軍像の前でダンスやバスケットボール、音楽ライブを楽しむ人たち
Reading the Pictures 2020/06/25、the New York Times 2020/08/06)

リー将軍像に映写されたジョージ・フロイド
the New York Times 2021/02/23)
リー将軍像に映写されたブリオナ・テイラー
the New York Times 2020/10/15)
リー将軍像に映写されたマルコム・X
Richmond Times-Dispatch 2020/06/19)


 人のあまり近づかない白人だけの南軍モニュメントが、人々の集まる生き生きとしたコミュニティの場所へと変化したのである30)。万華鏡のような色彩鮮やかな南軍モニュメントを背景に、多様で活発な抗議活動が展開されたことから、リッチモンドのリー将軍像はニューヨーク・タイムズ紙で、第2次世界大戦後最も影響力のあるアメリカのプロテスト・アート25選の1つに選ばれた31)

 残念ながら2021年1月に、撤去に備えるとして突如州当局が高さ2mを超えるフェンスを周囲にめぐらし、立ち入り禁止にした32)

通りに描かれるBLMの巨大文字

 ジョージ・フロイドの死の直後から、世界中でアーティストたちがさまざまな作品を制作して抗議の意思を表明した。1週間もたたないうちに殺害場所に彼の壁画が、地元ストリート・アーティストたちによって描かれた。その他、ロサンゼルス、ニューヨークなどアメリカ各地をはじめ、ベルリン、バルセロナ、そして戦乱の続く北シリアのイドリブ州の町でも、世界中でフロイドの壁画が出現した33)

 SNSのインスタグラムでは、フロイドや、警察官の銃撃で命を落としたブリオナ・テイラー(Breonna Taylor)など、黒人犠牲者たちのポートレートを投稿して、多数のアーティストたちが哀悼の意を表明した34)。ダラスに拠点をおくあるアーティストは、飛行機を借りて、フロイドの末期の言葉である「お願いだ、息ができない(Please, I can't breathe.)」「彼らは殺そうとしている(They’re going to kill me.)」などと書かれた横断幕で、デトロイト、マイアミ、ダラス、ロサンゼルス、ニューヨークの大都市上空からアピールした35)

 6月1日夜にトランプ大統領はホワイトハウスのローズガーデンで演説し、アメリカ各地で続く抗議運動や騒乱の鎮静に向けて、もしも市や州が強力な行動をしないのならば、合州国軍を派遣してすみやかに問題を解決すると述べた。そして演説後、近くの米国聖公会教会(St. John's Episcopal Church)へ出向き、教会の前で聖書を掲げて記者たちの撮影に応じた。この教会は1816年に建てられ、歴史的ランドマークに登録されている。

 トランプはクラッシック様式の古い教会の前で、法と秩序を重視する大統領であることをメディアにアピールしようとしたのである。しかし彼が教会へ行く前、警察の暴力に対して平和的に抗議していたデモ参加者たちを、シークレットサービスや機動隊が催涙ガスや閃光弾などで強制退去させたため、世界中から非難の声が上がった36)

 ワシントン市長ミュリエル・バウザー(Muriel E. Bowser)は、連邦警察や州兵の出動に強く抗議し、トランプ大統領が写真撮影した教会の通りの名称を、ラフィーエット広場(Lafayette Square)からブラック・ライブズ・マター広場(Black Lives Matter Plaza)へと改名し、さらに道路に Black Lives Matter の巨大な黄色の文字を描いた。

ホワイトハウス北側、聖公会教会前に描かれたBLMの巨大文字
USA TODAY 2020/06/17)


 ワシントン市は人口約70万人のうち、アフリカ系アメリカ人が約46パーセントをしめ、歴史的にアフリカ系民主党市長が続いている37)。以後、通りに Black Lives Matter の大きな文字を描く活動が、ワシントンから全米各地に拡散していった38)

 大文字の描かれた通りが全米でどの程度にまで達したのか正確な数量は不明であるが、英語版ウィキペディアの項目「ブラック・ライブズ・マターのストリート壁画一覧(List of Black Lives Matter street murals)」によると、75の市と郡にストリート文字が出現した39)

 ノースカロライナ州の州都ローリーの下町では、6月7日に現代美術館の通りに黄色の大文字で END RASCISM NOW と描かれた。活動に尽力した美術館前理事長のチャーマン・ドライバー(Charman Driver)は、当初描く場所を、南軍モニュメント数体が設置されていた州議会議事堂を希望していた。しかし、州の所有地だと市長に拒否されたため、場所を美術館そばに変更した。「あの場所に描きたい、だけど最終的に望んでいるのは、あの彫像が撤去されることだ」「降ろそう。12歳の私の子がそこに行って見ないようにしたい」と彼女は語った40)。結局、州議事堂の南軍モニュメントは6月19~21日に群衆によって引き倒されるか、あるいは州知事の命令で撤去された41)。すなわち通りに描かれた黄色の大文字は、南軍モニュメントに対するアンチテーゼを意味していた。

 トランプ大統領の拠点だったニューヨークのマンハッタン5番街のトランプ・タワーの前でも、ホワイトハウス横の大文字を連想させる黄色の文字が、7月9日に道路に大きく描かれた。トランプは地元で評判が悪かった。マンハッタンの地区検事長は業務と動産税に関して召喚状を出していて、大文字の描かれた同じ日に、最高裁は、財務記録をトランプは隠ぺいできないと判決を下した。不正な納税でトランプは批判されていた。文字のペインティングにはニューヨーク市長ビル・デブラシオ(Bill de Blasio)も参加し、市長のスポークウーマンは「大統領はニューヨーク市で私たちが大切にしている価値を侮辱している」と述べていた42)

マンハッタンのトランプ・タワー前にもBLMの巨大文字
中央にニューヨーク市長ビル・デブラシオ
the New York Times 2020/07/09)


 ホワイトハウスやトランプ・タワー近くに描かれた大文字は、路面標識に使用される型抜きの簡素な黄色文字だった。しかし色彩豊かな文字と、洗練されたデザインによって構成される芸術性豊かなものもあった。マンハッタンの黒人文化で有名なハーレムでは、アーチストたちとコミュニティが協議して、8人のアーチストがそれぞれ2文字ずつを描いた。たとえば最初のBの文字には、古代エジプトの翼を広げた女神マアトと隼の姿をしたホルス神が描かれ、警察の暴力で殺害された人たちの霊魂を迎えていた。次のLの文字には、警察に殺害されたジョージ・フロイドをふくむ24人の黒人の名前が、ファラオの名前を刻むヒエログリフ文字のカルトゥーシュのような黒色長円形の囲いの中に書かれていた。

 グループの事務局長であるニコラ・エバンス=ヘンドリックス(Nikoa Evans-Hendricks)は、「通りで壁画が言葉だけを表しているのではなく、ハーレムのコミュニティを具象化する確かなものにしたかった」と語った。ペインティングはコミュニティのイベントとして企画され、地元のレストランからは食べ物が届き、ハーレム少年少女クラブやハーレム・リトルリーグの助けを受けながら塗られた。公開後、その場所は、新型コロナウイルス感染防止で美術館が閉鎖されている最中に、芸術を楽しむ空間となり、また人々の集う場所にもなった43)。地元の人々が協力して制作にたずさわり、コミュニティの記憶としてBLMの大文字が道路に描かれたのである。

ハーレムで公開されたBLMの大文字(Reuters 2020/07/10)


トランプ大統領のモニュメント政策

 各地で公共の場所から南軍モニュメントが次々に排除され、代わって、人種差別や警察の暴力に抗議するBLMのスローガンが目立つようになると、旧来の歴史的見解・価値観を人々に守旧させようと、保守政治家たちがモニュメント維持に固執した。

 共和党勢力の強い南部諸州には、市や郡が独自に南軍モニュメントを処分しないように、モニュメントの移動や撤去を州の権限に限定する文化財保護の州法がある。つい最近も2021年4月にフロリダ州で、歴史的財産を「故意に悪意をもって」損害をあたえると第3級重罪となって5年の刑、破壊したり倒したりすると第2級重罪となって15年の刑が科せられる厳しい法律が制定された。南軍モニュメントを保護するための刑罰といわれている44)

 6月19日夜に首都ワシントンの警察本部近くにあった南軍将軍アルバート・パイク(Albert Pike)像が倒され、続いて22日にはホワイトハウス前にあるアンドリュー・ジャクソン(Andrew Jackson)大統領騎馬像がロープで引き倒されそうになった。第7代ジャクソン大統領は奴隷主で、アメリカ先住民族の虐殺や、悲惨な強制移住を強行させた人種主義者だった。

 ジャクソン大統領騎馬像は旧称ラフィーエット広場にあり、1853年に造立されたアメリカで最初の鋳造による銅像だった。またバランス良く後ろ足で立つ世界最初の騎馬像でもある45)。ホワイトハウス一帯(President's Park)は内務省の国立公園局(National Park Service)の管轄で、広場は周辺の古い建物をふくめて1970年に歴史的ランドマークに登録された46)

倒されそうになったホワイトハウス前のジャクソン大統領騎馬像
the New York Times 2020/06/26)


 ホワイトハウス前で大統領像が倒されそうになったので、トランプ大統領は、モニュメントを損なう者を罰する大統領令を6月26日に発出した47)

 多くの暴徒たち、極左過激派はマルクス主義のようなイデオロギーで行動し、アメリカ合州国は根底から不正だという過激なイデオロギーを広めている。暴力的過激派の主要な攻撃目標は公共のモニュメント、メモリアル、彫像であり、われわれの歴史に対して、すさまじいまでの無知をさらけ出している。称賛するわれわれの過去を無差別に破壊しようとしているのだと、抗議運動による引き倒しを批判した。そして連邦のモニュメントを保護するため、連邦警察当局に、モニュメントや彫像を破壊する者を処罰する権限をあたえ、連邦の財産を故意に傷つけた者に最高10年の刑とした。その一方で、彫像などの保護に失敗した州には連邦の財政援助を保留すると脅したのである48)

 すぐさま翌27日に司法省は、ジャクソン大統領像を引き倒そうとした4人を起訴したと発表した49)。そして国土安全保障省も大統領令に応えて、モニュメントや彫像を保護するため、アメリカのコミュニティを保護する特別捜査隊(PACT、Protecting American Communities Task Force)を7月1日に組織した50)

 7月4日の独立記念日を祝う式典が3日夜に、4人の大統領の巨大な顔の彫刻で有名なサウスダコタ州ラシュモア山(Mount Rushmore)の麓で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていたにもかかわらず、聴衆約7,500人が集まり、華々しい花火が打ち上げられて、トランプ大統領が演説した。人種差別を抗議する運動を「怒りに満ちた暴徒」「この国の歴史を消し去り、英雄たちを侮辱し、我々の価値観をかき消し、子供たちを洗脳しようとする、情け容赦のない運動だ」と非難し、「我々は決して沈黙させられたりしない」と語った51)

ラシュモア山の麓で演説するトランプ大統領
the New York Times 2020/07/04)


 同日にトランプはアメリカン・ヒーロー国立公園(National Garden of American Heroes)を造園する大統領令に署名した52)。歴史的に重要なアメリカ人31人の彫像を制作して庭園に展示し、偉人を崇敬して次世代教育にも役立てる政策である。内務省に特別な委員会を設置し、60日以内に建設計画を作成する。彫像は、抽象的あるいはモダン主義ではなく、実物そっくりに写実的でなければならない。独立記念250周年の2026年7月4日を目途に開園すると規定された53)。予算は明記されなかった。

 その後トランプは、大統領職を辞任する2日前の2021年1月18日に、顕彰する彫像の対象人物を244人に増やす大統領令を発出した54)。危険な反アメリカ過激主義が、我々の国の歴史、制度、大切にしているアイデンティを取り壊そうとしている。国立公園は、我々のヒーロー、価値、生活全体を消し去ろうとする無謀な試みに対するアメリカの答えだ。これをもとに、徹底的な破壊や不一致を、国への変わらぬ愛、長く続く愛国心で打ち勝てるだろうと、新しいモニュメント公園の意義を強調した。

 顕彰する人物として彼が最初に選んだ31人のほとんどは白人男性で、大統領、探検家、奴隷廃止論者、公民権活動家などから構成されていた。保守的な最高裁判事アントニン・スカリア(Antonin Scalia)、伝道師ビリー・グラハム(Billy Graham)、レーガン大統領(Ronald Reagan)がふくまれる一方、フランクリン・ルーズベルト大統領(Franklin D. Roosevelt)やケネディ大統領(John F. Kennedy)など民主党大統領やリベラル派は除外された。アフリカ系アメリカ人として公民権運動家のキング牧師(Martin Luther King Jr.)、黒人初のメジャーリーガーだったジャック・ロビンソン(Jackie Robinson)があげられたが、ヒスパニック系やアジア系、アメリカ先住民族はふくまれなかった。

 その他にBLM運動で批判されたワシントン大統領、アラモの戦いで戦死したデイヴィー・クロケット(Davy Crockett)、日本人にも馴染み深いマッカーサー将軍(Douglas MacArthur)、第2次世界大戦を戦ったパットン将軍(George Smith Patton Jr.)、星条旗を初めて作ったとされる女性ベッツィー・ロス(Betsy Ros)など多彩な人物が無秩序にならべられた。歴史家たちは、思慮深さをまったく感じられない、奇妙な歴史的疑問がたくさんわいてくると、トランプのリストを酷評した55)

 辞任直前に2番目に提示された244人のリストも、7割以上が男性で、スポーツ選手、映画監督、俳優、科学者、作家、探検家、宇宙飛行士、医師、宗教家、政治家、企業家、芸術家などが雑多にふくまれ、さらに混乱した人選リストになっていた56)

 トランプ大統領のモニュメント政策は、激しい抗議運動の原因となった人種差別や不正義に目を向けて是正するのではなく、社会的矛盾や対立を、人物を顕彰する愛国心で乗り切ろうとした文化政策といえるだろう。しかも顕彰する人物を大統領が独断で決定して、行政的に愛国心を教化する意図がうかがえる。

 歴史学者マイケル・ベシュロス(Michael Beschloss)は、「アメリカ大統領もしくは連邦政府が、誰が歴史的英雄であるか我々市民に指図すべきでない。スターリンのロシアではないのだ。民主主義を愛するアメリカ人にとって、公的で全体主義的響きを感じさせる、連邦政府による『アメリカン・ヒーロー国立公園』の強制は、まったくありえない。アメリカ民主主義の栄光は、彼・彼女の個人的英雄を我々市民がそれぞれ決めることにあるのだ」と述べている57)

 かたい花崗岩から4人の巨大な大統領の顔を削りだしたラシュモア山のモニュメントは、先住民族ラコタ(スー)の聖地であるブラック・ヒルズ(Black Hills)にあり、先住民族たちは長年にわたって彫刻を批判してきた。1868年のララミー砦条約で先住民族の土地と確約されたにもかかわらず、1870年代のゴールド・ラッシュで金鉱夫が土地を占拠してしまった。1980年に最高裁で1億ドルの賠償金を8つの部族に支払う判決が支持された。

 1927年に彫刻の作業が開始され、完成する1941年まで14年間かかって彫られた。プロジェクトの中心となった彫刻家ガットスン・ボーグラム(Gutzon Borglum)は完成する前に死亡し、彼の息子が作業を引き継いだ。ボーグラムはジョージア州ストーン・マウンテン(Stone Mountain)にある巨大な3人の南軍将軍像の制作にもかかわり、資金を確保するため、クー・クラックス・クラン(KKK、Ku Klux Klan)のリーダーたちと強い関係を結び、会合にも出席した。彼は白人至上主義や反ユダヤ主義の信奉者としても引用されている。

 先住民族たちは、ラシュモア山に描かれた4人の大統領を奴隷主、人種主義者と批判し、閉鎖して土地を先住民族に返すべきだと主張している。シャイエン川スー族(Cheyenne River Sioux Tribe)の議長ハロルド・フレーザー(Harold Frazier)は、モニュメントは、取り除かなければならない「我々の肉に刺さった刀」だ。「訪れる人たちはこれらの大統領の顔を見上げて、今日のアメリカの国を形作ると信じている美徳を称賛する。ラコタは大統領たちの顔を、土地を盗みたいがため、そこで暮らしているという唯一の罪で、無実の人々に嘘をつき、だまし、殺した男たちと見ているのだ」と声明した58)

 ラシュモア山の独立記念日の花火打ち上げは、1998年から毎年実施されるようになった。しかし山火事の原因になるとして2010年に中止された。2019年に共和党の女性州知事クリスティ・ノエム(Kristi Noem)が花火打ち上げを知らせると、トランプ大統領は花火再開を支持した。トランプの演説行事に先立ち、先住民族を主体とした大勢の抗議者たちが主要道路を封鎖したが、警察によって排除された。

 BLMの抗議運動が全米に広がり、南軍モニュメントが次々に排除されるなか、ラシュモア山モニュメントについても、撤去や閉鎖の声が地元先住民族を中心に広がっていた。

 抗議に反応して、サウスダコタの共和党下院議員ダスティー・ジョンソン(Dusty Johnson)は、連邦の予算でラシュモア山モニュメントを変更したり、撤去するのを禁じた保護法を提案した。先住民族たちの撤去をもとめる声を、ジョンソンは「不快」だとし、「連邦の予算をそんなことのために使わないという明確なメッセージを送り」たいと語った。州知事もモニュメント保護を強調し、「アメリカ民主主義の聖地を脅かす者たちに一言いっておく、私の目が黒いうちはやらせはしない」と明言した59)

 先住民族の聖地を侵略するかのようにして人種主義者の彫刻家によって造立され、旧来の歴史価値観によって称賛されている大統領たちの像の前で、トランプ大統領は、盛り上がるBLMの抗議運動に対抗して、モニュメント政策を発表したのである。

 トランプ大統領の保守的歴史観、反モダニズムの文化趣向は、モニュメントだけでなく建築政策にも反映され、連邦の建物をクラッシック様式に限定する大統領令が発出された。2020年2月に「連邦の建物を再び美しくする(Make Federal Buildings Beautiful Again)」と題された大統領令草稿がリークされた。連邦の新築あるいは改修建物には、クラッシック様式の建築スタイルが望ましく、基準スタイルにすべきだとしたのである。

 ブルータリズム(Brutalism)や脱構築主義(Deconstructivism)の影響がみられるとして、最近建てられたサンフランシスコのU.S.連邦ビルディング(2007年)、テキサス州オースティンのU.S.郡庁舎(2012年)、マイアミのU.S.郡庁舎(2007年)に美的外観が乏しいと、トランプは否定的評価を下した。米国建築家協会(the American Institute of Architects)は、「連邦の建物に画一的スタイルを義務づけることに強く反対する」「国の豊かな場所、思考、文化、気候の多様性を反映する特定のコミュニティのために、建築はデザインされるべきである」と大統領令草稿に反論した60)

サンフランシスコのU.S.連邦ビルディング
artnet news 2020/02/05)


 結局トランプは辞任する前2021年12月18日に、同趣旨の「美しい連邦公民建築の促進(Promoting Beautiful Federal Civic Architecture)」という大統領令に署名した61)

 トランプは、モニュメントや文化財の価値を尊重して、一貫して保護政策を積極的に推進したわけではない。というのは2017年12月4日に、突如ユタ州にある2ヶ所のナショナル・モニュメントを大幅に削減することを発表したからである。ユタ州南部にあるクリントン大統領が1996年に設定したグランド・ステアケース=エスカランテ・ナショナル・モニュメントを75万5,000ヘクタールから40万ヘクタールへ約46%削減、オバマ大統領が2016年に設定したベアーズ・イアーズ・ナショナル・モニュメントを55万ヘクタールから8万ヘクタールへ、約85%削減すると布告した62)

 モニュメントを縮小させたおもな理由は鉱山開発で、石油・ガス採掘用の土地賃貸、石炭やウランの採掘などを目的に、ユタ州共和党議員や化石燃料会社の要望にトランプが応えたのであった。一帯には先住民族の聖地や遺跡が多数残り、また石柱のような奇岩や石のアーチ、化石の産出する峡谷など自然史資料も豊富な地域である。環境保護主義者と先住民族たちは自然遺産と約10万ヶ所の遺跡を破壊すると批判し、保全のため訴訟を起こした63)

西側:グランド・ステアケース=エスカランテ・ナショナル・モニュメント
東側:ベアーズ・イアーズ・ナショナル・モニュメント
トランプ大統領は薄い部分をカットして、濃い部分を残した
赤点:鉱山開発地点
ユタ州南部のナショナル・モニュメント
National Geographic 2021/01/15)


 トランプのモニュメント保護政策は時と状況によって変化し、明確な統一性のある指針をしめすものではなかった。むしろ利権や彼個人の保守的文化趣向にもとづいて、ホワイトハウスから強引に推し進めようとする文化政策だったといえるだろう。

 ジョー・バイデン大統領は2021年1月20日に就任すると、トランプの進めた化石燃料重視、環境規制緩和の政策を大きく転換させて、気候危機への対応を重視して、パリ協定への復帰を表明した。すぐさま、公衆衛生と環境を保護し、気候危機に対処するため科学を復興させる大統領令を発出し、そのなかでトランプが削減したユタ州の2ヶ所のナショナル・モニュメント、および大西洋沿岸の海洋ナショナル・モニュメントについて、境界の回復と状況に関するレポートを60日以内に作成するように、内務長官に命じた64)。新しく発足したバイデン政権の内務長官には、ニューメキシコ州の先住民族ラグナ・プエブロ出身の女性下院議員デブ・ハーランド(Deb Haaland)が就任した。

 続く1月27日にバイデンは、気候危機対策として国の内外で取り組む具体的政策を列挙した大統領令を発出した65)。公有地や沖合で再生可能エネルギーの生産し、公有地や沖合で石油・天然ガスの新規借地の停止する、化石燃料補助金の削除などさまざまな細かい施策とともに、2030年までに陸と海で30%を保護区にする目標がかかげられた。

 30%を保護区にするという意欲的な政策は、2021年1月11日にフランス、国連および世界銀行の共催で開催された「ワンプラネットサミット」で、生物多様性保全のための具体的行動として、50ヶ国以上によって約束された。日本でこの政策はほとんど話題にされなかったが、小泉環境大臣が参加して日本政府も賛同した。

 米国地質調査所によると、現在アメリカでは海の約26%が保護されているが、陸に関しては約12%しか保護されていない。陸の保護区を大幅に拡大しなければ、30%の目標に達するのが困難なのだが、保護区拡張でにわかに注目されているのが、トランプが範囲を激減させたユタ州の2つのナショナル・モニュメントなのである66)

 地元先住民族たちは、ナショナル・モニュメントの領域を元に戻すだけでなく、さらに拡張を主張している。ユタ州で強力な共和党は、大統領によって縮めたり拡張したりするのではなく、議会で法律による制定を提案している67)

 実際には、トランプによるモニュメント範囲の削減で、石油や天然ガスの開発はまったく進まなかった。開発地点が遠隔地にあり掘削が困難で、収益をあげるのは容易ではなかった。しかも石油価格が低迷していて、開発コストにくらべて採算がとれる状況ではなかった。アラバスタ採石場、閉鎖されていたウラン・バナジウム坑道など、いくつか小さな鉱山で操業がはじまったが、短期間で終業したり、書類ミスで閉鎖されたりして、影響は少なかった68)。モニュメント範囲削減で期待されたほどの資源開発は、実現しなかったのである。

 バイデンは2月に、連邦の建築をクラッシック様式に制限するトランプの発出した大統領令69)、そして5月にはモニュメント保護とアメリカン・ヒーロー国立公園に関するトランプの大統領令3本を撤回した70)。6月前半に内務長官は、ホワイトハウスに提出したレポートで、トランプが大幅に縮小させた3ヶ所のナショナル・モニュメントを回復するように大統領へ勧告した71)

 新しく就任したバイデン大統領は、ただちに新型コロナウイルス感染症対策に取り組むとともに、気候危機への対応を政策の基本にすえた。また人々に融和と団結を呼びかけた。旧来の保守的価値観を前面に押し出して、人々の間に分断を煽ったトランプ前大統領の時とはまったく異なる政策が進められようとしている。モニュメントや文化財に関する政策も、今後大きく様変わりすると予測される。

博物館・美術館の変革

 BLMの抗議活動で多くのモニュメントが引き倒されるか、あるいは撤去された。博物館にあるモニュメントも例外ではなかった。排除された代表例として、ニューヨーク市のアメリカ自然史博物館玄関口に設置されているセオドア・ルーズベルトの騎馬像を見てみよう。

 セオドア・ルーズベルトは第26代アメリカ大統領で、日露戦争の停戦を仲介してノーベル平和賞を受賞した。大統領になる前に米西戦争に参加してカリブ海で闘い、後にハワイ、グラム、フィリピンへと、アメリカの帝国主義的植民地拡張を導いた。幼少期は病弱な子供で動物学や博物学に関心をいだき、長じてアウトドアスポーツや狩猟を愛好し自然保護運動を支援した。あからさまな人種主義者となり、人種的ヒエラルキーにもとづく先住民族絶滅政策、貧者と知的障害者の不妊手術、優生学を支持した。

 自然史博物館は1869年に創設され、ルーズベルトの父親は設立メンバーの一人だった。1919年に大統領が死亡すると翌年に記念委員会が組織され、博物館が記念する場所に選定されて、1940年に大統領の騎馬像が設置された。騎馬像は馬に乗るカーボーイ姿のルーズベルトと、後方左右に従者のように、鳥の羽の頭飾りをつけたアメリカ先住民族と、アフリカのマサイ族に似せた背に盾をおう黒人が随伴している。

アメリカ自然史博物館のセオドア・ルーズベルト騎馬像
artnet news 2021/06/23)


 あたかも白人ルーズベルトが、先住民族と黒人を先導する優れた人物のように見て取れる銅像である。博物館ホームページに掲載された彫像問題の解説ページによると、1908~33年に館長だった古生物学者ヘンリー・フェアフィールド・オズボーン(Henry Fairfield Osborn)は優生学の推進者としても有名で、1921年と32年に2回にわたって優生学に関する会議を博物館が主催し、博物館展示にも影響をあたえたと指摘している。モニュメントもオズボーンの成果と見なされている72)

 大統領騎馬像に対する抗議活動は2016年10月からはじまり、「この場所を脱植民地化する(Decolonize This Place)」という活動家グループが彫像をパラシュートでおおった。翌年には別のグループが彫像の台座に赤ペンキをまき散らした。

 博物館はニューヨーク市の所有なので、抗議を受けてニューヨーク市長デブラシオは諮問委員会を招集したが、委員会は結論にいたらず、2018年の最終勧告で彫像は残置された73)。2020年にBLMの抗議活動が盛んになり、白人至上主義を体現する南軍モニュメントなどが次々に排除されると、6月21日に博物館は撤去をニューヨーク市に申し出て、市長も同意を表明した74)。翌年6月21日に市のパブリック・デザイン委員会で、満場一致で撤去が決議され、最終決定となった75)

 博物館は、モニュメントが人種的ヒエラルキー、白人至上主義を表現しているという単なる表面的な理由だけでなく、彫像の制作過程、ルーズベルト自身の人種主義、優生学と博物館との関係などを、特別展示で丁寧に解説した76)

 モニュメント排除の別な事例を見てみよう。西海岸にあるサンフランシスコ市のアジア美術館は、アベリー・ブランデージ(Avery Brundage)が収集した8,000点近いアジア美術品コレクションをもとにして1966年に設立された。ブランデージは建設業と投資によって巨財を形成した。また若いころからスポーツ選手として活躍し、1929年にはアメリカ・オリンピック委員会会長、1952年には国際オリンピック委員会会長に就任して72年まで会長を務めた。

 ブランデージはナチス支持者、人種主義者として知られ、批判されている。彼は、ナチス・ドイツの1936年のオリンピックにアメリカがボイコットしないことを主張し、また第2次大戦へのアメリカ参戦反対運動を支持した。1968年のメキシコシティ・オリンピックで、2人のアフリカ系アメリカ人が表彰台で、黒手袋の拳を高く挙げて黒人差別を抗議するブラック・パワー・サリュートを行なうと、ブランデージは怒り、両選手は出場停止処分となって選手村から追放された。

 アジア美術館はアメリカでアジア美術品を最も多く所蔵し、年間30万人の観覧者が訪れる。2020年6月10日に許傑(ジェイ・シュー、Jay Xu)館長は、ホールに目立つように設置されているブランデージの胸像を倉庫にしまうと声明した。50周年を準備している際にブランデージの人種主義、反ユダヤ主義が判明し、2016年までは知らなかったという。胸像の撤去を美術館は何年も計画していたが、BLMの抗議運動が後押ししたと述べた。

 胸像の撤去だけでなく、美術館が白人の観点からアジア美術を見せていること、ブランデージの収集方法や出所調査・返還の問題、オリエンタリズムの克服、脱植民地化と水平的な力の配分など、美術館のさまざまな点も見直されることになった。胸像撤去はスタートにすぎない77)

 博物館の収蔵コレクションに関しても、批判的検討がなされた。フィラデルフィアのペンシルベニア大学考古学人類学博物館(ペン博物館)には、約1,300個の頭骨からなるモートン頭骨コレクションがある。医師で解剖学者だったサムエル・モートン(Samuel G. Morton)が1830~40年代に世界各地から収集した頭骨で、彼は頭骨の比較研究から、ヨーロッパ人、とくにドイツ人とイギリス人の先祖の頭骨は、他のすべての人種よりも知的、道徳的、身体的に優れていると主張した78)。脳の大きさ・形状が人間の精神活動を反映するという、19世紀に流行した骨相学にもとづいていた。

 モートンが1851年に死去すると、コレクションをフィラデルフィア自然科学アカデミーが購入し、1966年にペン博物館へ移動、1996年に博物館が取得した。いくつかの頭骨は考古学資料分析センター190教室のガラス・キャビネットに収納されていた。

ペンシルベニア大学のモートン・コレクション
artnet news 2020/07/28)


 2019年に学生たちのグループが、コレクションのなかにハバナから奴隷の頭骨53個、アメリカ国内の奴隷の頭骨2個がふくまれていることを見つけ、学生たちはキューバに頭骨を戻し、再埋葬するように要求した。2020年にBLMの抗議活動で返還の声が一層強まると、7月末に博物館はキャビネットに収納されていた頭骨を、目に触れないように倉庫に移動させた79)

 2021年2月に公表された調査レポートによると、1760年代から1880年代にかけてフィラデルフィアの黒人たちは、医科大学での解剖や研究、私的コレクションのために頻々に墓荒しの被害を受けた。多くはフィラデルフィア救貧院の貧困者用集団墓地から盗まれた。救貧院からもたらされた19世紀の解剖学コレクションの一つが、モートン頭骨コレクションである。

 救貧院は無料の公共病院で、ペンシルベニア大学医学部の教員が多数働き、医学生の教育も行われた。ペン博物館は、フィラデルフィア救貧院のあった場所に集団墓地に直面するように建てられた。頭骨コレクションにふくまれている14個の頭骨は黒人奴隷のものである。モートンの取得した白人と黒人の頭骨は、19世紀の人種主義的、社会経済的差別の側面と、死後にも織り込まれた奴隷制、医学的人種主義、人種学にペンシルベニア大学のはたした役割をしめしていると報告された80)

 頭骨コレクションそのものだけでなく、コレクションの形成された19世紀の医学、学術体制についても批判の対象となったのである。

 頭骨コレクションに関する委員会が2021年4月8日にレポートを公表し、頭骨の返還を伝えた。同じような遺骸コレクションがハーバード大学に22,000体あり、そのなかにはアフリカ人を祖先にアメリカで奴隷となった15体がふくまれている。またスミソニアン博物館の自然史博物館には、アメリカで最大の遺骸コレクションがあるとされ、返還の問題が議論されている。

 未公表の内部調査によるとスミソニアンには33,000体の遺骸が倉庫にあり、そのうち約1,700体がアフリカ系アメリカ人の遺骸で、数百体が1865年以前に生まれた奴隷と見積もられた。大多数は、国の資金で運営された貧者のための施設で死亡した人たちの遺体だった。奴隷の地位をどのように判定するのか、誰が遺骸を要求するのか、複雑な問題がからんでくる81)

 アフリカ系アメリカ人の遺骸をめぐり、ペンシルベニア大学は別件でも批判の対象となった。1985年にフィラデルフィアにあった黒人解放運動団体ムーブ(MOVE)の拠点を警察が空からヘリコプターで爆撃し、活動家たち11人が死亡、そのうち5人が7~14歳の子供だった。

 ペンシルベニア大学とプリンストン大学は、人類学オンライン授業で爆撃で死亡した黒人少女の遺骨1点か2点を、遺族の許可もなく使用し、事例研究として教授が骨を見せながら事件の悲惨な状況を語っていた。2021年4月下旬に突如として発覚した犠牲者の非倫理的取り扱いに対して、白人の特権を基礎にした科学研究だとして非難された82)

 1985年にムーブへの爆撃で付近一帯の黒人居住区は燃え上がり、60軒以上の家屋が破壊され、250人以上が家を失った。2020年にBLMの抗議活動が盛んになると、11月にフィラデルフィア市議会は、計り知れないほどの永遠に続く損害をあたえたとして公式に謝罪した。

1985年に爆撃されたムーブ拠点
the Guardian 2021/04/23)


 遺骨をめぐりペンシルベニア大学とペン博物館は、犠牲者の家族とコミュニティに謝罪した83)。そして、1762年にペンシルベニア大学医科大学でアフリカ系アメリカ人の遺体を最初に解剖してから、医学研究や教育の場で、黒人の人たちの身体が非人間的、非倫理的に取り扱われた長い歴史がある、人間の身体を搾取してきた数世紀にわたる遺産を検証し、補償する時だと述べた84)。ムーブ爆撃被害者の遺骨から、医学研究における長期にわたる構造的差別へと視野が拡大されたのである。

 長い人種差別の歴史によって、アメリカでは多数のアフリカ系アメリカ人の墓地が無視され、あるいは失われてきた。そこで彼らの墓地を保護し管理する法律(African American Burial Grounds Network Act)が、2020年12月に上院で満場一致で可決された。内務省が全国のアフリカ系アメリカ人墓地を調査し、データベースを作成する。時間経過や開発によって失われないように、地域コミュニティに技術援助しながら、墓地を回復、保存するのである85)

 墓地保護法とは別に、アフリカ系アメリカ人の遺骸の所在を明確にして保護、返還する法律(African American Graves Protection and Repatriation Act)も提案されている86)。アメリカ先住民墓地保護返還法(Native American Graves Protection and Repatriation Act)にならい、大学や博物館などの研究機関に所蔵されているコレクションから、アフリカ系アメリカ人の遺骸を見つけ出し、目録化して、子孫やコミュニティに返還する法律である。

 2021年5月にカナダで、以前先住民族の寄宿学校だった地点から地中レーダー探査で、失われた子供たちの遺骸が1ヶ所から215体、別な個所から751体発見されて国中が大騒ぎとなった87)。子供たちは強制的に家族から引き離されて寄宿学校に入れられたのだが、多数の子供が姿を消した。消えた実態は長年不明だった。遺骸の発見で、実は学校で死亡していたことがはじめて明らかにされたのだ。

 カナダで子供たちの遺骸が大量に見つかったため、アメリカでも元寄宿学校で子供たちの遺骸調査が着手されることになった88)。BLMの抗議活動で社会正義や公平が叫ばれ、これまで差別、抑圧された人たちの軽視されてきた遺骨・遺骸を、大切に取り扱う人権意識が高まったのである。今後もアフリカ系、および先住民族の人たちの遺骨・遺骸の調査・返還事業が、拡大していくと思われる。

 博物館・美術館にある彫像の撤去、収蔵するコレクションの再検討だけでなく、内部で働く学芸員やスタッフに関する組織構造的な人種差別も問題となり、職場や公共施設としての改革が進められた。

 ジョージ・フロイド殺害後にBLMの抗議活動が高揚すると、多数の文化施設がソーシャルメディアで連帯の意志表示をした。長年にわたり概して文化団体は政治的に白熱した討論をさけ、中立的立場において、芸術家たちに意見を述べさせた。公共施設も税金で運営されるので、政治的忠誠をひかえてきた。

 多くの施設は、富裕な白人たちで構成される理事会に責任をおう白人幹部たちによって運営されているので、芸術団体はもともと真の変化に抵抗していると疑われていた。しかし今回は多くの芸術団体が口論に参加し、沈黙を破ることで称賛された89)

 多数の博物館、ギャラリー、芸術団体がオンラインで連帯を表明しても、形だけの平等主義、偽善、偽の連帯だと糾弾された。施設建物内での構造的差別が非難され、多様性の保証をもとめる投稿が続出した。ニューヨークのメトロポリタン美術館、現代美術館、グッゲンハイム美術館、サンフランシスコ現代美術館、アクロン美術館、バージニア美術館などの文化施設では、数百人のスタッフたちがそれぞれ何十年と続いてきた人種差別の文化を公開質問状で非難した90)

 たとえばメトロポリタン美術館では、質問状が発せられてから91)、反人種主義、多様性、そしてより強固なコミュニティを目指す13の計画が最高経営責任者から提案された。次の180日間でスタッフ全員に反人種主義トレーニングを実施、多様性チーフ職員を4ヶ月以内に雇用、BIPOC(黒人・先住民族・有色系人種)の雇用、2022年までにすべてのインターンをふくむ有給インターンシップの拡大、多様な美術史分野を推進・展示・取得のため300万~500万ドルの基金創設など、その他さまざまな具体策が盛り込まれた92)

 ジョージ・フロイド殺害1年後に美術日刊紙『The Art Newspaper』が、博物館におけるスタッフ、展覧会、コレクションの多様化進展について、アメリカの22館に問い合わせた93)

 多様性(ダイバーシティ)と包括性(インクルージョン)のための予算が計上されたのは1館だけで、300万ドルだった。けれども、学芸員たちが白人男性に偏重する歴史的傾向を見直したり、また過小評価されていたアーチストの展示や作品取得が増大した。多数の主要美術館では、多様性と包括性の指導者がスタッフにふくまれるようになった。反人種主義トレーニングを指導するコンサルタントの雇用や、職場内差別に対する指針の作成なども行なわれた。

 上級職に関しても内部批判によって変化が見られた。グッゲンハイム美術館では告発質問状を受けて、反人種主義に向けた13ページもの行動プランを発表し、多数の目標を実行する上級職を雇うと約束した。すべての会議で多様性と包括性を最優先させ、全スタッフの反人種主義トレーニング、有給インターンシップなどが開始された。

 メトロポリタン美術館では、いくつかの上級職に有色系の人たちが任命され、全額有給インターンシップもはじまった。デトロイト美術館の館長は、独裁的でジェンダーや人種に鈍感と職員から苦情が発せられたが、外部調査の結果、彼は残留となり、代わりに理事会からの監視を強めるとして、複数の理事辞任となった。

 インディアナポリス美術館では、職員の募集広告で、多様な観客を惹きつけるとともに、「伝統的な中核、白人の美術観客」を維持する部長をもとめると記したことで、激しい批判にさらされた。辞職した前準学芸員による有毒な職場環境というコメントもあって、館長が辞任した。

 富裕な白人の理事と寄贈者が、アメリカの博物館の多様性に立ちふさがっているという批判もある。そこで黒人の美術館理事たちが同盟を結成し94)、黒人スタッフを増加させる、黒人理事を支援する、展示とプログラムに黒人の視点を組み入れる、マイノリティのビジネス・パートナーへ美術館による一層の支援を促進させるなど、協力し合うことになった。

 作品取得の多様化も進んだ。先駆的にバルティモア美術館は、白人男性アーチストの作品7点を売却して得た1,600万ドルの資金で、過小評価されていたアーチストの作品を購入した。バルティモアではアフリカ系アメリカ人が多数派なのだが、今まで美術館は白人アーチストで独占されていたのを、人口構成を反映した内容に切り替えることにした。

 メトロポリタン美術館は、カナダの先住民族クリー族系アーチストのケント・モンクマン(Kent Monkman)が制作した大作2点を、大ホールに展示した95)。ホイットニー美術館は24人のアーチストの作品を取得したが、そのうち23人は有色系か女性だった。ニューヨーク近代美術館はアフリカに拠点をおくアーチストの現代作品45点の寄贈を受け入れ、アフリカ系のゴードン・パークス(Gordon Parks)の写真55点を購入した。ワシントンのナショナル・ギャラリーは、アメリカ先住民族のアーチストの絵画をはじめて取得し、またアフリカ系アーチストの作品40点を取得した。

メトロポリタン美術館大ホールの
ケント・モンクマン「ようこそ新人さん(Welcoming the Newcomers)」
the New York Times 2019/12/19)
ケント・モンクマンのインタビュー(The Met 2019/12/21)


 観覧客の多様化も課題の一つである。2010年の調査によると博物館観衆のうちアフリカ系アメリカ人は平均6%にすぎなかった。2020年2月の1ヶ月にナショナル・ギャラリーを訪れた客の70%は白人で、多くは55~75歳だった。この美術館では、主任学芸員にはじめて女性と有色系の人を雇い入れ、パンデミック後の再開館の際には、すべての人たちのための施設を目指す包括性を強調した。ブルックリン博物館は、コミュニティ組織の会合で支援する、食料保護を受けているグループと提携する、反人種主義の博物館の役割を担うなど、地域社会に積極的に動いて観衆の多様性を広げようとしている。

 アメリカの博物館・美術館は、収蔵品やコレクションなど物的側面の再検討だけでなく、理事や学芸員、スタッフの組織的陣容、そして訪れる観覧客の構成内容など人的要素も改革の対象にふくめている。新型コロナウィルスの感染予防のため、2020年から翌年にかけて多くの博物館や美術館は閉館を余儀なくされた。パンデミック後の再開館では、BLMの抗議運動で明らかにされたさまざまな課題に総合的に取り組んで、変わりつつある新しい姿を社会に披露することになったのである。


イギリス

 2020年5月25日にアメリカのミネソタ州でジョージ・フロイドが殺害され、全米でBLMの抗議運動が起こると、同時にイギリスでも、新型コロナウィルス感染防止のロックダウン中にもかかわらず、抗議運動が盛んになった。

 5月31日にはロンドンで人々がトラファルガー広場に集まり、ナイン・エルムスのアメリカ大使館前へデモ行進した。カーディフ、マンチェスターでもデモンストレーションが行なわれた96)。その後260の都市で抗議運動が展開され、6月中旬までにイギリスで21万人以上がデモンストレーションに参加した。BLMの運動は、奴隷制廃止運動以来、最大の人種差別抗議運動だと評された97)

 アメリカと同様にイギリスでも、警察の暴力によって死亡する黒人が多い98)。イギリスの人口で黒人の占める割合は3%にすぎないのに、逮捕された人の中で黒人の占める割合は9%、拘留中の死者は8%と、黒人に対する差別的取扱いが顕著なのである99)。アメリカにおける黒人に対する偏見は、ここでも直面しているのだと、ジョージ・フロイド殺害への抗議が広く共感をもって受け入れらえた。

 そしてイギリスでも、奴隷制や人種差別を体現しているモニュメントの引き倒しや、撤去が相次いで起きたのである。まず6月7日にブリストルで17世紀の奴隷商人エドワード・コルストン(Edward Colston)の銅像が倒され、海に投げ落とされた。

海に落とされるコルストン像
the Art Newspaper 2020/06/08)


 コルストンは、約8万人の奴隷をアフリカからアメリカへ輸送した王立アフリカ会社に加わり、奴隷貿易で築いた資産で学校、病院、救貧院、教会を援助して慈善家として評判を得た。1721年に死亡して170年以上たった1895年に銅像が造立され、像はイギリスの文化財目録グレードIIに登録されている100)。以前からコルストン像を撤去する活動が進み、11,000人以上の署名も集められていた101)。奴隷貿易でもたらされた巨富でブリストルの公共施設が次々に作られたので、ブリストルは残酷な奴隷制によって繁栄した町とも、見て取れるだろう。

 コルストン像の建てられた歴史的背景を見てみよう。1884年にベルリン会議が開催されてヨーロッパ列強によるアフリカ分割が盛んになった。イギリスはアフリカ侵攻を強め、コルストン像が造立された頃には1896年アシャンティ王国と戦争、1897年ベニン王国の懲罰遠征、1898年スーダンのオムドゥルマンの戦いなど、侵略戦争が絶え間なく続いた。そしてジョージ・ゴールディの王立ニジェール会社、セシル・ロードの南アフリカ会社が植民地支配の確立を進めたのである。

 つまり19世紀後半にアフリカ侵攻が激しくなると、奴隷貿易を行なって植民地支配を先導した王立アフリカ会社とコルストンの功績が再び注目され、銅像が建てられたのであった。奴隷制の記憶を蘇らせるとともに、反黒人の政治的背景がうかがえる。同じころアメリカ南部では、人種差別を規定するジム・クロウ法の制定が進められた102)

 コルストン像が海に落とされると、ブリストルを拠点とする著名な匿名アーチスト、バンクシー(Banksy)は Instagram で、港から引き揚げて元の台座に置き、首にロープを巻きつけて引き倒す等身大の抗議者たちの銅像を設置することを提案した。彼によると、コルストンのモニュメントを批判する人も守ろうとする人も、両者ともに満足するだろうと述べていた103)

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 空になったコルストン像の台座に、7月15日、彫刻家のマーク・クイン(Marc Quinn)がBLMの女性活動家をモデルにした銅像を設置した。しかし市議会から許可を得てないとして撤去された104)

 コルストン像に続いて、ロンドン市東側ロンドン・ドックランズ博物館前にある18世紀の奴隷主ロバート・ミリガン(Robert Milligan)の銅像が、6月9日に撤去された。ミリガンは奴隷主で西インド埠頭(the West India Docks)の港湾施設を建設した。1809年に死亡した時、ジャマイカの砂糖プランテーションに526人のアフリカ人奴隷がいた。西インド埠頭会社は彼を称えて1813年に砂糖倉庫の前に銅像を建てた。現在倉庫は博物館となっていて、奴隷制とプランテーション、港湾施設やロンドンの繁栄について解説している。BLMの抗議活動によってモニュメント排除が広がると、地方当局によってミリガン像が撤去された105)

撤去される前のミリガン像(BBC 2020/06/09)


 コルストン像が引き倒された日に、ロンドン中央の議会広場でウィンストン・チャーチル像が落書きされた。オックスフォード大学では数千人が集まって、セシル・ロード像の撤去を要求した。奴隷制や植民地支配に関与した人物のモニュメントが次々に抗議運動の対象となるなか、労働党のロンドン市長サディク・カーン(Sadiq Khan)はロンドンの彫像、通りの名称などすべてを再検討すると表明した。

 ロンドンは奴隷制と歴史的につながる「不快な真実(an uncomfortable truth)」を直視しなければならない、公共の多様性のため新しい委員会を設置して壁画、ストリート・アート、通りの名称、彫像、その他のメモリアルをふくむ市のランドマークを再検討する、奴隷制に関連した彫像は撤去されるだろうと述べた106)

 BLMに対抗するグループが、モニュメントを守ると称して抗議運動を攻撃すると脅した。また極右グループはランドマークを自分たちで守ろうと動き出した。彫像をめぐる双方による衝突をおそれ、市当局はチャーチル像などのモニュメントを板で囲った107)。一方、チャーチルを尊敬するジョンソン首相は、チャーチル像が抗議運動の対象となって防護されたことに「馬鹿げてる、嘆かわしい」と批判し、「議会広場から彫像を撤去する試みに、わが身で何度でも守る」と述べてチャーチル像を擁護した108)

落書きされたチャーチル像(artnet news 2020/06/15)


 オックスフォードではオリオル・カレッジ(Oriel College)の建物正面にあるセシル・ロード像の撤去をもとめ、多数の人々が集まった。2015年4月に南アフリカのケープタウン大学で、セシル・ロード像が学生たちの抗議運動によって撤去された。以後「ロードを倒すべきだ(Rhodes Must Fall)」という脱植民地化の運動が南アフリカをはじめ、世界に拡がっていった。2016年にはオックスフォード大学で教育の脱植民地化や、オリオル・カレッジのロード像撤去の運動がはじまった。しかし、もしも撤去されたら激怒した資金提供者たちが寄付や遺産を引き揚げるとして、ロード像はそのまま残置されることになった。

 像の撤去をめぐりこう着状態が続いていたのだが、BLMの抗議運動とブリストルのコルストン像引き倒しによって、ロード像撤去の運動が再び息を吹き返した。労働党の制する市議会の議員たちが像の撤去を大学に申し入れた。そして6月17日にカレッジ運営組織が撤去を決議した。ただし独立した検証委員会を設置することとなった109)

オックスフォード大学のロード像
the Art Newspaper 2020/06/10)


 BLMの抗議運動が高揚すると、多くの博物館・美術館が抗議運動に連帯を表明した。しかし大英博物館館長ハートウィグ・フィッシャー(Hartwig Fischer)が6月5日にBLMの運動に連帯の意志を Twitter で告げると110)、アフリカのベニン青銅器やギリシャのパルテノン大理石など、植民地時代に収集された文化財の返還にまったく触れていないことに、すぐさま膨大な数の批判が殺到した111)

 BLMの抗議の対象は、奴隷制や人種差別に関与した人物像・モニュメントだけでなく、植民地主義によって確立された博物館や所蔵コレクションにも波及したのである112)

 コロナ禍で大英博物館は5ヶ月間閉鎖された後、8月末に再開館した。再開に際してフィッシャー館長は、BLMの抗議運動の影響を受けた結果、奴隷制や植民地主義に博物館が関連していることを強調して、大きな変化を2つ行なったと語った。1つは、大英博物館の基礎を築いたハンス・スローン(Hans Sloane)の胸像を台座から外し、奴隷貿易に関連した物品の展示ケースに移して、奴隷主のラベルを付けたこと。2つ目は、館内のいくつかの展示品を取り上げて、コレクション収集と大英帝国との関係を解説したガイド・ルート(Collecting and empire)を設定したことだった113)

 1660年に生まれたハンス・スローンは、ジャマイカにあった妻の砂糖プランテーションから得られた富で、生涯にわたって70,000点以上の書籍、コイン、植物資料、その他の資料を収集、死後にコレクションをイギリスに遺贈した。彼のコレクションをもとにして1753年に大英博物館が作られた。

 大英博物館のスローン像は撤去されたのではなく、単に場所を移動させただけだったのだが、それでも博物館の変化に、彫像に固執する保守的な人たちが批判した。

展示ケースに移動したスローン像
the New York Times 2020/08/27)


 9月16日にナショナルトラストが、所有・管理するカントリー・ハウスなどのプロパティと、奴隷制や植民地主義との歴史的関係について調査レポートを公表した114)。レポートでは93地点の歴史遺産に関連して、富・権力としてのカントリー・ハウス、世界の奴隷貿易、抵抗と奴隷制廃止、奴隷主への補償、東インド会社、インド大反乱後のイギリス統治、産業化とコットン輸入などのテーマが詳細に記述された。

 以前は豪奢なカントリー・ハウスについて、エリート家族のイギリスにおける社会的地位に焦点をあてて解釈され、子供や子孫の職歴、獲得あるいは失った財産、冒険的結婚、家族の出来事などが語られた。

 しかし21世紀になって、2007年に奴隷貿易を禁止した奴隷貿易法200周年を記念し、世界史的観点からカントリー・ハウスを考察する研究がはじまった。そして2010年代には奴隷主のデータベースも整備されて115)、奴隷制や植民地主義、カントリー・ハウスとの密接な関係が明らかにされていった116)。すなわち一見のどかな牧歌的に見えるカントリー・ハウスは、過酷な奴隷制でえられた富、イギリス帝国による世界収奪の歴史的産物なのだという、新しい見方が近年提示されているのである117)

奴隷制と向き合うスコットランドのナショナルトラスト
National Trust for Scotland 2020/09/01)


 ナショナルトラストのラディカルなレポートは、右翼や保守メディアを中心に激しい反発を招いた。たとえば日刊タブロイド紙『Daily Mail』は、チャーチルやキプリングの家が「恥のリスト(list of shame)」にふくまれているという見出しを付けて、ナショナルトラストの会員たちが会費を拒否すると脅している、BLMに便乗しているという批判、これらのプロパティをナショナルトラストの管理に託した無実な家族たちを告発したり、侮辱したりできないとして、会員を取り消した保守党郡議会議員の意見、チャーチルの家をリストに加えたことを非難し、トラストは維持と保護に専念すべきだと保守党の文化相オリバー・ダウデン(Oliver Dowden)の意見を伝えた118)

 イギリスでは、概して保守層の間で帝国主義の時代を美化する傾向が強い。そもそも多くの人々は学校で帝国の支配や奴隷制について学ばないし、知らないという。2010年にナイジェル・ファラージ(Nigel Farage)率いる反EUのイギリス独立党は、奴隷制と植民地主義を「イギリス文化左翼」の異常な執着だとして、まとまりある社会を弱体化させていると断じた119)

 2020年6月のアンケート調査によると120)、コルストン像を撤去すべきかどうか判断を下せるほど、子供たちは学校で十分歴史を教わっているかという質問に対して、Yesが16%、Noが65%。チャーチル像に関する同様の質問には、Yesが17%、Noが69%だった。また、奴隷制や植民地主義の歴史について、ナショナルトラストは見学者にもっと教えるべきかという質問に対して、Yesが76%、Noが13%だった。

 つまり学校教育だけではイギリス帝国や奴隷制の歴史について十分な見識がえられず、その一方で、ナショナルトラストのプロパティ、コレクションから学習することを人々は期待しているのである。

 多くの歴史家、文化人、ジャーナリストたちは、イギリス人が過去の歴史を知ることの重要性を訴え、ナショナルトラストのレポートや121)、激しい個人攻撃にさらされた調査プロジェクト統括者の女性歴史家コリン・フォーラー(Corinne Fowler)を擁護している122)。BLMの広範な抗議活動で提起され、取り組むべき課題となっている多様性と包括性を実践するには、歴史的理解が不可欠だからだ。

 BLMに対抗して、約40人の親ブレグジットの保守党議員たちがコモンセンス・グループ(the Common Sense Group)という会派を夏に結成し、保守党ジョンソン政権に圧力を強めている。11月に会派設立者ジョン・ヘイズ卿(Sir John Hayes)は、ナショナルトラストは文化マルクス主義者のドグマに染まっていると批判し、そして25人以上のメンバーたちが、BBC受信料の非犯罪化と、ナショナルトラストの公益法人の地位はく奪を、ジョンソン首相に書簡で要求した123)

 BBC受信料の非犯罪化とは、イギリスでよく知られているクリスマスソング、ザ・ポーグスの「ニューヨークの夢(Fairytale of New York)」に出てくる「faggot(同性愛者への蔑称)」という歌詞を削除し、別なヴァージョンを BBC Radio 1 で放送することに、検閲だとして保守派議員たちが反発したためである。現行の制度ではBBC受信料を支払わないと犯罪になるが、非犯罪化してBBCの番組に支払うかどうか選択できるようにする。要するにBBCの財源削減を目論んだ政治的圧力である。ヘイズは長らくLGBTの権利に反対してきた。

 また政治的姿勢によって公益法人が正道から外れているので、未払いのすべての資金申請を再検討するように、文化相に要求することを首相に訴えた。ナショナルトラストについても財源を脅かそうと、保守派議員たちは、監査するチャリティ委員会がナショナルトラストの公益法人認定を取り消すことを願ったのである。しかし結局チャリティ委員会は、ナショナルトラストのレポートはチャリティの目的に適合している、トラストは合法的に活動していると2021年3月に判断を下した124)

 BLMの抗議活動で多数のモニュメントが問題視され、排除された。モニュメントに体現された既存の歴史解釈を見直す動きが顕著になり、新しい歴史認識を人々がもとめるようになったからである。その一方でジョンソン首相がチャーチル像の絶対的保護を宣言したように、古い歴史観に固執する保守政治家たちは、権力を行使してモニュメントをそのままにとどめさせようとしている。

 ダウデン文化相は9月22日に、多数の主要な博物館・美術館・ギャラリー・文書館、さらにはアームズ・レングス・ボディと呼ばれる政府から独立性をたもつ組織団体にまでも、書簡を発出して、モニュメント撤去を制止させた125)。わざわざアンダーラインで強調しながら「彫像や他の同様の物の撤去を政府は支持しない」と明記し、「運動や政治に刺激されて行動を起こしてはいけない」「公平に行動し続けるのが義務だ」と、各地の文化施設で起きているモニュメント撤去の動きをけん制し、政府による統制を試みたのである。

 オックスフォード大学ピットリバー博物館学芸員ダン・ヒックス教授(Dan Hicks)は、学芸員を公衆から離れた孤独な学者というはなはだ時代遅れなイメージにもとづいていると、文化相の書簡を批判した。今日、学芸員の仕事は人々を大事にしている。われわれの集合的遺産はコミュニティ、見学者、当事者からもたらされる。博物館や歴史的環境は公共空間なのだ。博物館は中立ではない。建てられた環境はつねに変化しているのだと述べて、人々や地域社会の思い、動きを無視して、一方的に政府から方針を押し付ける介入に反論した126)

 さらにイギリス政府は翌年の2021年1月に、撤去の危機にある歴史的モニュメントを保護するため、規制を強化する新しい法律を表明した127)。未来世代のために歴史的モニュメントは「維持され、説明され(retained and explained)」なければならない、すべての彫像、プレート、その他のモニュメントは、撤去に際して十分な計画にコミュニティ相の許可が必要とする法律である。イギリス中の登録された20,000体の彫像・モニュメントをはじめ、リストにないものにまで適用され、許可が必要なのだという。

 ロンドン市では市長が公共のランドマークの再検討を表明し、公共部門の多様性委員会が組織され、奴隷制に関連する彫像の吟味が進められている。コルストン像が倒されたブリストル市では市議会に歴史委員会が設置され、市のメモリアルの検討が進められている128)。またオックスフォード大学では、長年論争となっているセシル・ロード像の撤去がカレッジ運営組織で決議された。

 新しい法律によると、彫像に関するこのような地元の意志や地域社会の動向とは別個に、政府が撤去の適否を最終的に判断して許可を下すので、モニュメントの国家統制、政府の歴史解釈を強要する可能性がある。

 人種差別に抗議するBLMの運動が拡大して、歴史的モニュメントによって体現された奴隷制や帝国主義を賛美する古い歴史観が忌避され、多様性や包括性を考慮した新しい歴史認識がもとめられるようになった。並行してカントリー・ハウスに対しても、懐古趣味的な牧歌的見方から、奴隷制や帝国主義、植民地主義の歴史事実を織り交ぜた世界史的観点から見つめ直すという変化が見られた。

 人々の歴史認識の大きな変化に危機感を抱いた保守政治家たちは、「文化戦争(culture war)」と称して、旧来の歴史観に固執してモニュメント撤去を阻止したり、カントリー・ハウスの新しい見方を封殺しようとしているのである。

 引き倒されたコルストン像は奴隷制、そして落書きされたチャーチル像は帝国主義の象徴と解釈された。カントリー・ハウスは奴隷主や東インド会社の富裕を体現している。同様に、大英博物館などの大博物館に収蔵されている膨大なコレクションは、世界各地の植民地からイギリス本国へと運ばれた植民地主義の産物と見なされている。

 2020年5月に刊行されたアリス・プロクター(Alice Procter)の『丸ごとの絵:博物館の美術品にまつわる植民地の話し、なぜ語らなければならないのか(The Whole Picture: The Colonial Story of the Art in Our Museums & Why We Need to Talk about It)』は、具体的に博物館・美術館にある展示品や現代アートをとり上げて、それぞれ詳細に植民地的過去を語っている129)

 美術史の学業3年間で植民地や帝国の歴史が圧倒的なほど無視され、彼女は失望を感じて、「不快なアート・ツアー(Uncomfortable Art Tours)」という展示品由来を解説するガイドをはじめたそうである。

 学校のグループをガイドすると、イギリスの歴史カリキュラムの抜け穴がわかる。子どもたちはチューダー朝やビクトリア時代を勉強しただろう、だが侵略と戦争、大英帝国創造の強烈で暴力的時期を触れないのである。植民地主義で創られ、無意識に永続され受け継がれた不平等を認識できない仲間の特権的な白人の姿に、うんざりだ。

 彼女はオーストラリア人で香港とロンドンで育った。先住民族たちを押し退けて白人はオーストラリアに侵入し植民地化したのだが、罪を受け継ぐとは信じていない、しかし責任はある。私たちは結果をすべて解決しなければならないのだと、彼女は述べている。

 カントリー・ハウスに新しい解釈が適用されているように、博物館コレクションについても、今まで語られなかった奴隷制や植民地主義の遺産に気づいた彼女は、異なる観点から展示品を解説しはじめたのである。モニュメント、カントリー・ハウス、博物館コレクションは一体となって大英帝国の過去の現実を呈示しているのだ。

 近年原産国から博物館へ文化財の返還要求が次々に突き付けられ、博物館側は何らかの対応を迫られている。BLMの抗議運動でさらに返還の圧力が高まったが、結局2020年にイギリスで返還に向けて大きな進展はなかった。

 わずかに実現した返還事例として、地方博物館からカナダの先住民族に、首長の盛装が返還されることになった。エクセター市議会は4月に、王立アルバート記念博物館にある北米先住民族ブラックフット族のクロウフット(Crowfoot)族首長の盛装を、カナダのシクシカ・ネイション(Siksika Nation)へ返還することを決議した。盛装にはバックスキンのジャケット、ゲートル、羽の束、ナイフなどがふくまれている。地元の文化施設が2015年に返還を要求していた130)

クロウフット族首長の盛装(DevonLive 2020/04/08)


 最後に文化財返還をテーマにして注目され、話題となった本を紹介しよう。ピットリバー博物館のダン・ヒックス教授が11月に出版した『野蛮な博物館:ベニン青銅器、植民地の暴力、文化財返還(The Brutish Museums: The Benin Bronzes, Colonial Violence and Cultural Restitution)』という本である131)

 1897年にイギリス軍の懲罰遠征で奪われたナイジェリアのベニン青銅器を主題に、植民地の文化財を所蔵・展示する博物館の不当性を告発し、文化財返還を主張している。ベニン青銅器を最も多く所蔵する大英博物館(the British Museum)を、野蛮な博物館(the Brutish Museums)と揶揄した本のタイトルになっている。ヒックス教授の専門は現代考古学で、現代社会における博物館の機能や、植民地文化財の意義を考察して、「遺産目録(Necrography)」という概念を提唱している132)

ダン・ヒックス教授のインタビューと討論
Pluto Press 2020/11/06


 BLMの抗議運動で奴隷制や植民地主義に関連した人物像、モニュメントを排除する動きが活発化した。しかしイギリスでは、以前から同じような問題意識をかかげて、カントリー・ハウスや博物館コレクションについて調査研究が進行している。BLMによって多様性や包括性が大きな課題として社会全体で認識されるようになり、これからも一層イギリス帝国の過去や倫理が問われ、脱植民地化が展開するだろう。文化財返還の問題はその一部を構成しているのである。


フランス

 2017年にマクロン大統領がアフリカで文化財返還を声明し、翌年サヴォワとサルによるアフリカ文化財返還レポートが公表されると、にわかに返還をめぐる議論が国際的に活発となり、フランスの動向に注目が集まった。しかし実際に文化財返還が実現したのは、まだごくわずかでしかない。

 2019年にフランスはセネガルへ、トウコウル帝国(Toucouleur empire、1861~90年)の創設者オマール・サイドウ・タル(Omar Saïdou Tall)のサーベルを手渡した。サーベルはパリの軍事博物館のコレクションで、首都ダカールの黒人文明博物館に展示された。所有権を移転させる法律がまだ成立していなかったので、5年間の貸与とされた133)

 2020年には政府の動きとは別に、まず民間による返還があった。フランスのナントで開かれたアフリカ文化財のオークションで、抗議によってダホメ王国由来の文化財27点が出品から外され、美術商たちが購入して2020年1月17日にベナンへ返還された。返還された文化財は、1890年の軍事遠征に参加した人物と、伝道を行なった神父のコレクションだった134)

 アメリカで起きた5月25日のジョージ・フロイド殺害を契機としたBLMの抗議運動は、フランスにも波及し、6月2日にはパリで約20,000人がデモンストレーションに参加した。新型コロナウィルス感染防止のため集会人数が10人までに制限され、警察が許可しなかったにもかかわらず、当局に逆らってデモが実行されたのである。マルセイユ、リヨン、リールでも同じような集会に数千人が参加した135)

 フランスでも黒人差別があり、概してアラブ系への人種差別問題に直面している。アラブ系とアフリカ系の若者は、他の人たちとくらべて20倍以上も警察に止められるという。またジョージ・フロイド事件ときわめて類似した状況下で、2016年に警察官によって黒人青年が殺害されたとして、以前から事件究明と警察の暴力に抗議が展開されていた。青年の名前はアダマ・トラオレ(Adama Traoré)といい、マリ移民2世で、死亡した日が24歳の誕生日だった136)

 BLMの抗議運動にともなうモニュメントの引き倒しや撤去は、フランス本土では発生しなかった。海外領土のカリブ海のマルティニーク(Martinique)で、ナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌ像、フランス人植民者ピエール・デスナンビュック(Pierre Belain d'Esnambuc)像の2体が、7月26日に群衆によって引き倒された137)。ジョセフィーヌはマルティニークの裕福な砂糖農園主の家に生まれた。

 マクロン大統領は6月14日に、人種差別には断固として対処すると約束するが、警察も讃えたい、論争となっている植民地時代の彫像をフランスは取り除くべきでないと演説した138)

 いくつかの彫像が落書きされた。北フランスのベルギー国境に近いオーモン(Hautmont)で、第2次世界大戦の英雄で戦後大統領になったシャルル・ド・ゴールの胸像が、6月15日にペンキで汚されたと報道された139)。6月22日にはパリで、啓蒙主義哲学者のヴォルテール像と、20世紀前半にモロッコで最初のフランス駐在将軍となった軍人ユベール・リョテ(Hubert Lyautey)像が赤ペンキで汚されていた。ヴォルテールは財産の一部を植民地貿易で獲得したという。2つの彫像はナポレオンの墓があるアンヴァリッド廃兵院の近くにある140)

 6月24日にはパリの議事堂前にあるジャン=バティスト・コルベール(Jean-Baptiste Colbert)像が、赤ペンキで汚され、台座に「黒人嫌悪の国(négrophobie d’État)」と記された。汚した犯人はその場で逮捕された。コルベールはルイ14世に仕えた17世紀の重商主義者で、フランス国家財政を安定させた。アメリカとカリブ海にあるフランス植民地の奴隷制を規定した1685年の黒人法(Code Noir)を作成した141)

汚されたコルベール像(BBC 2020/06/24)


 BLMの抗議活動がフランスでも拡大し、モニュメントや文化財などを通して植民地過去について関心が高まるなか、植民地からの文化財略奪に抗議し返還をもとめると主張して、博物館から展示品を持ち出すという手荒な活動が注目をあびた。

 6月12日にコンゴ出身の活動家ムワズル・ヂヤバンザ(Mwazulu Diyabanza)ら5人が、パリのケ・ブランリ美術館で展示されていた19世紀のアフリカの墓標を抜き取り、持ち出そうとして逮捕された。「ほとんどの作品は植民地主義の期間に持ち去られた、正義をもとめる」からだと動機を語った142)

 窃盗の刑罰は10年の刑期と最大15万ユーロの罰金が科せられるだが、9月30日からはじまった裁判で、検察官はヂヤバンザに1,000ユーロ、他の4人にそれぞれ500ユーロを求刑した143)。これは「外交活動であって盗みではない...この裁判は、われわれの遺産が略奪されたという意味で植民地過去すべてに関係している。同様に自主的に作品を持ち出したのはまったく盗みではない;その場で警察に身をあずけた」とヂヤバンザは述べた。結局10月14日の判決では、ヂヤバンザは1,000ユーロの罰金、他の3人は250ユーロ、750ユーロ、1,000ユーロの執行猶予付き罰金となった144)

 ヂヤバンザはケ・ブランリ美術館以外でも、次々に展示品の持ち出しをくり返している。7月30日にマルセイユの市立アフリカ・オセアニア・アメリカ先住民族美術館から、象牙製の儀式用槍を持ち出そうとした。マルセイユの高裁は11月17日に、ヂヤバンザら4人の活動家に無罪判決を下した145)。9月10日にはオランダのベルグ・エン・ダルのアフリカ博物館からコンゴの木製墓像を持ち出し、現行犯逮捕された146)。2021年1月12日の判決によると、250ユーロの罰金、執行猶予付き刑期2ヶ月、2年間の保護観察、そしてアフリカ博物館館長と会うことは可能だが、3年間入館禁止と言い渡された147)

 10月22日にはパリのルーブル美術館から、東インドネシアの守護神像を持ち出そうとして逮捕された。12月18日の判決によると、5,000ユーロの罰金、執行猶予付き刑期4ヶ月が言い渡された148)

 2021年にはヨーロッパの多くの博物館はコロナ禍によって長期間の閉館を余儀なくされたのだが、ヂヤバンザはポルトガルに向かった。空港ではアメリカのテレビチームが待ち受け、彼の挙動をすべて撮影していた。リスボンで彼は博物館から文化財を持ち出そうと何度も試みたのだが、奇妙なことに博物館受付スタッフは展示の閉鎖を告げた。今や有名となりテレビカメラ3台を従えた彼の姿を識別したスタッフは、近づけないようにしたのだろう149)

 ヂヤバンザの活動は犯罪行為であり、決して推奨できるものではない。ポルトガルでは警戒されて実行不可能となり、活動の限界性も感じられる。しかしながらBLMの抗議運動に並行して展開された活動には、アフリカの文化財返還を広く世間に喧伝する十分な効果があったことも事実である。

 2018年のフランスのアフリカ文化財返還レポートの著者の一人であるサヴォワは、10月にインタビューで、BLMの運動がフランスで返還の取り組みをスピードアップさせたと述べている。この数週間、数ヵ月で「大衆の心理的変化が見られる」「人々はポスト人種差別社会をもとめ、その光景の一部として返還を要求している」「ヂヤバンザは映画や文学に登場するような挑発的なふるまいだ」と語った150)

 BLMの抗議運動の広がりにあわせるようにして、フランスは7月3日に、植民地戦争で闘い殺害された戦士たちの頭骨24個をアルジェリアに返還した。800人のアルジェリア人が虐殺された1849年のザッチャの戦い(the Battle of Zaatcha)の指導者シャイフ・ブージャン(Sheikh Bouziane)、絵画にも描かれた有名な抵抗の指導者シェリフ・ブーベグラ(Chérif Boubaghla、Mohammed Lamjad ben Abdelmalek)などの頭骨がふくまれていた。

 これらの頭骨は戦利品としてパリの自然史博物館で展示された。人類学博物館の地下には段ボール箱に収納された18,000件の頭骨があるという。アルジェリア人歴史家が人類学博物館で調査した後、2011年に最初に返還の声を上げた。2018年にはアルジェリアが公式に、植民地文書の譲渡とともに頭骨の返還をもとめた。アルジェリアとフランスの研究者たちが長年にわたって頭骨返還キャンペーンを行なっていた151)

フランスは19世紀のアルジェリア人頭骨を返すだろうか?
France 24 2016/09/28)


 マクロン大統領は就任前2017年2月にアルジェリアを訪問し、植民地主義を「人道に対する罪」と公言した。2018年9月には、首都アルジェで1957年にフランス軍に拘束され行方不明となったモーリス・オダン(Maurice Audin)の死について、軍の責任を認めて未亡人に謝罪した。オダンはアルジェ大学教授の数学者、共産主義者でアルジェリア独立を支持していた。独立を阻止するため拷問をふくめた組織的弾圧を広範に展開していたことを、フランスの大統領としてはじめて認めたのである152)

 2021年1月には歴史学者バンジャマン・ストラ(Benjamin Stora)が、アルジェリアとフランスが和解するレポートをマクロン大統領に提出した。今までタブー視された両国間に横たわる複雑な歴史問題に向き合い、「記憶の和解」を進めるため、さまざまな多数の具体的施策が提案された153)。アルジェリア戦士の頭骨返還には、植民地支配の歴史を見直し、反フランス感情の根強いアルジェリアとの関係改善というマクロンの外交的姿勢もうかがえる。

 マクロン大統領は2017年にアフリカの文化財返還を声明し、翌年文化財返還レポートの公表と同時に、ベナンへ文化財26件を返還すると公約した。その後政府に具体的な動きがなかったのだが、2020年7月15日になってようやく返還に向けて新しい法律が閣議で討議された154)。ベナンに文化財26件、そしてすでにセネガルの博物館に貸与しているサーベル1件、あわせて27件を返還する法律である。フランスの制度では国の所有するコレクションは譲渡不可能なので、返還を許可する特別な法律が必要なのである。

 法律は10月7日に国民議会(下院)で満場一致で採択され、11月4日には元老院(上院)でも満場一致で採択された。ロズリーヌ・バシュロ(Roselyne Bachelot)文化相は国民議会の議決前に、「後悔や償いでもなく、決してフランスの文化モデルを非難する行動でもない、フランスとアフリカの文化的つながりに新しい時代がはじまるのだ」と語った155)

 10月28日に提出された元老院の委員会レポートでは、法律が厳密に例外的で、限定された性格であることが強調され、二国間合意による大規模な返還を助言した2018年のサル-サヴォワのレポートの「行き過ぎた」勧告を退けている。そして元老院は、非ヨーロッパ文化財の巡回と返還に関する国の審議会の設置をもとめた156)

 2019年2月にエチオピアはケ・ブランリ美術館にある3,081点の返還を要求し、5月にはチャドが、フランスのコレクションにあるチャドの物件すべて約10,000点の返還をもとめた。9月にはコートジボワールがケ・ブランリ美術館にあるアツチャン太鼓(Atchan drum)、2020年にはマリが公式に16件、マダガスカルは軍事博物館にある王冠を要求していた157)

 議会で文化財返還の法律が討議されている最中に、11月5日フランスはマダガスカルへ王冠を返還した。正確には所有権移転をともなう返還ではなく、5年間の一時貸与である。王冠は、19世紀後半のラナバロナ3世(Ranavalona III)女王が、武器をもってフランス人に闘うように人々に宣言した1895年の儀式で着用した特別な王冠だった。同年女王はフランスに敗北、翌年フランスはマダガスカルを併合した。王冠はフランス植民官の手に渡り、1910年にパリの軍事博物館に寄贈されて展示された。独立60周年を記念するため、2020年2月にマダガスカルから返還要求が出されていた158)

マダガスカルのラナバロナ3世女王と返還された王冠
the Art Newspaper 2020/12/17)


 返還の法律はまだ完全に成立していなかった。元老院の提案した審議会設置の要求をめぐり、国民議会と紛糾していたからである。一部の元老院議員は、マダガスカルへの王冠の返還を、議会を回避して外交ルートで決定したとして糾弾した。一貫性なく不透明なまま個々に返還を決めるマクロンのやり方に、元老院議員たちが批判を強めていた。しかし元老院の提案した修正案を覆して、最終的に12月17日に、個々に大統領の承認をもとめる法案が国民議会で満場一致で可決され、成立した159)

 マクロン大統領は2017年に旧植民地でアフリカ文化財の返還を宣言し、そしてようやく4年後の2020年末になって、返還を確実にする法律が成立したのである。

 フランスでもBLMの抗議運動が盛んになり、奴隷制や植民地主義に関する過去の歴史に目が向けられた。そしてフランスの博物館・美術館に現在収蔵、展示されている植民地から持ち出された文化財についても、関心が高まっている。博物館から強引にアフリカ文化財を持ち出し、返還を訴える抗議活動も出現した。そして社会の動きと並行するように、マクロン大統領の推進する植民地過去と向き合う外交によって、少しずつであるが、文化財の返還が実現しているのである。2020年にフランスでも、文化財返還の認識が一層社会に定着したと見てよかろう。


ドイツ

 ジョージ・フロイドの死亡後、ドイツでもすぐさまBLMの抗議運動が広がった。ベルリンでは5月30日、31日の2日間連続して人々が集まった。6月6日には多数の都市で集会やデモンストレーションが挙行された。ベルリンのアレクサンダー広場で約15,000人、ミュンヘンで20,000人、フランクフルトで8,000人、ハンブルグで14,000人集まった。その他にもケルン、ミュンスター、ニュルンベルク、あるいは北部のフレンスブルクのような小さな都市でも人々が集まった160)


 ドイツでも人種差別の課題は増大している。連邦反差別庁(ADS、the German Federal Anti-Discrimination Agency)の2019年報によると、ドイツでは人種による差別が一番多く、10%増加して1,176件になったと報告された。犠牲者に対して一貫とした法的支援が十分に整っていない、不当に取り残されたという孤立感が社会のまとまりを危険にさらす、差別は人々をすり減らすと警告された。

 毎日差別に遭うという匿名の発言、アパートを借りる際に移民にルーツのある人は3人に一人が制限を経験するなど、多くの事例が紹介されたが、それらは氷山の一角にすぎないと考えられている。人種差別の次にジェンダーによる差別が多いことも指摘された161)

 BLMの抗議運動で世界中で人種主義や植民地主義が批判されると、ドイツでも植民地時代に光があてられるようになった。ヨーロッパの他の帝国主義と比較して、ドイツの植民地時代は短い。ドイツが公式に植民地帝国となったのは、ビスマルクがベルリン会議を開催した1884年からである。そして第1次世界大戦終結とともにドイツの植民地は消滅した。最盛期には世界で4番目に広い面積の植民地を擁し、植民地主義の記憶は、都市のモニュメントや通りの名称などに残されている162)

 アメリカとイギリスで奴隷制や人種主義を象徴するモニュメントが引き倒されたが、ドイツでは類似した動きは起きなかった。ただし6月にハンブルクでビスマルク像が赤ペンキで汚されたと伝えられた。

 冷戦が終わり共産政権が崩壊すると、東欧の多くの都市で、レーニン像をはじめ多くのモニュメントが排除された。しかし30年ほどたったBLMの抗議運動が盛んな2020年6月に、ドイツ西部ルール地方のゲルゼンキルヒェン(Gelsenkirchen)でレーニン像の除幕式が取り行なわれて、話題となった。ドイツ・マルクス・レーニン主義党という小政党が挙行し、高さ2m以上ある像はチェコスロバキアで1957年に制作されたものだという163)

 近代ドイツはプロシャ王国から、ドイツ帝国、ワイマール共和国、ナチス、分断と統一のドイツへと複雑な歴史を歩んだ。各時代ごとにさまざまなモニュメントが設置され、あるいは排除されてきた。パリでは異なる時代のモニュメントがそのまま残っているが、ベルリンでは定期的に処分されたのである。

 ベルリンのシュパンダウ(Zitadelle)城塞博物館には、撤去されたモニュメントが集められ、展示されている164)。ヴィルヘルム2世の建てた王室の彫像群、ワイマール時代の銅像、ヒトラーの建てたモニュメント群などがある。なかでも1970年に建てられた高さ19mの巨大なレーニン像の一部、重さ3.5トンの頭部が展示物の目玉となっている。かつて盛大な除幕式には20万人が集まった。しかしベルリンの壁崩壊後に巨像は粉々に破壊されて森に埋められ、忘れられていたのだが、博物館に展示するため2015年にわざわざ掘り出されたのである165)

 植民地から持ち出され返還が論議されている文化財として、ドイツでもたびたびベニン青銅器が注目をあびた。1897年のイギリス軍による懲罰遠征後、世界各地に散在してしまったベニン王国の文化財について、ハンブルク民族学博物館(MARKK、Museum am Rothenbaum. Kulturen und Künste der Welt)が中心となって、世界中の情報を集めたデータベースが作成されることになった。2022年から運営開始されるデジタル・ベニン(Digital Benin)というプラットフォームで、公開される予定である166)

 2020年にドイツから返還されたものとして、10月にベルリンの民族博物館から刺青のあるマオリの頭部2点が、ニュージーランドのマオリへ戻された。トイモコ(Toi moko)と呼ばれるマオリ頭部は、1771年にヨーロッパへ到来してから収集熱が異常なほど盛んになった。博物館の頭部は1879年と1905年に収蔵されたものである167)。9月には同じベルリンの民族博物館が、木棺に収められたアボリジニの人骨と2人の子供の遺骸をオーストラリアに返還すると伝えられた168)

 ドイツから返還されたものは先住民族の頭部と遺骸だけで、その他には無かった。一方、植民地由来の文化財に関するデジタル・データベースの整備が計画された。共通のフォーマットでデータを集めオンライン目録にして公開することに、連邦政府、16州、地方自治体が10月に合意した。透明性を高め、ドイツの植民地過去を取り組む具体的方法を促進させる共通の責任を明確にさせたいと、モニカ・グラッターズ文化相(Monika Grütters)は語った169)

 さらに植民地時代の中国由来の文化財についても、ドイツ損失美術品財団(the German Lost Art Foundation)が110万ユーロの助成金を用意して、調査が進められることになった。たとえば山東半島の青島にあった膠州湾租借地などから得られた文化財がふくまれる。中国から公式の返還要求はまったくないが、返還が必要となったならば、責任者と連絡を取る意向だという170)

 この調査にアメリカのスミソニアン博物館が加わり、国際的に展開されることになった。東洋美術品を取り扱った美術商やコレクターたちに焦点をあてたウェビナーが企画され、日本の山中商店もテーマに取り上げられた171)

 年の暮れのおしせまった12月16日に、ベルリン中心部の博物館島で、巨大な民族博物館であるフンボルト・フォーラム(Humboldt Forum)が開館した。コロナ禍のなか、最初はデジタルで公開され、2021年7月に全面開館された。数千点の民族資料を所蔵し、ベルリン民族学博物館とアジア美術館がふくまれている。ドイツ統一後の国民的アイデンティとして2002年に議会で建設計画が決まり、東ドイツによって1950年に廃絶されたプロイセン王室の宮殿のあった場所に、6億7,700万ユーロと約20年の歳月をかけて新しく建てられた。

2020年12月に部分開館したフンボルト・フォーラム
(Humboldt Forum-9147.jpg, Wikimedia Commons

ホーエンツォレルン家宮殿跡に模して建てられた
the Art Newspaper 2020/12/14)


 建設が決まった当時、ドイツ帝国の過去についてさほど大きな議論になっていなかったが、しかし完成に近づいた2018年には、植民地の歴史および植民地から持ち出された文化財をめぐって、国際的に熱い論争が交わされるようになった。開館式前日にナイジェリア大使は、ベニン青銅器をもどすようにメルケル首相に書簡を送っている。プロイセン宮殿の外観を模したフンボルト・フォーラムの開館により、ドイツは否応なしに、ますます文化財返還に直面せざるをえなくなった172)


オランダ

 ジョージ・フロイド死亡後、オランダでも間をおかずに各都市で抗議運動が展開された。オランダのハーグでも2015年6月にジョージ・フロイド殺害と似た状況で黒人が死亡し、すでに人種差別と警察の暴力が社会問題となっていた。死亡したのは西インド諸島のアルバから旅行で訪れていた42歳の男性で、土曜日の夜に公園の音楽祭で武器を持ってると叫ぶと、5人の警官が彼を押さえつけて逮捕した173)。その際にのど輪攻めをされ、窒息死したのである。なお彼は武器を持っていなかった。すぐさま抗議運動が拡がり、さらには暴動にまで発展して数日間街が荒れ、数百人が逮捕された174)

 この事件の裁判で警察官が出廷することがほとんどなく、遺族たちは裁判を続ける資金も底をついてしまった。たいがいの警官が無罪となった、くじけそうだと遺族の妹が悲嘆にくれていた時、BLMの抗議運動がオランダでも盛んとなり、ふたたび事件が大きく取り上げられて、遺族たちは勇気をあたえられたという。民族プロファイリングと闘う団体の調査によると、2016年1月から逮捕中あるいは逮捕後に41人が死亡し、そのほぼ半数が移民系だった。一方検察庁は警察官を一人も起訴していない175)

 人種差別と警察の暴力はアメリカだけに特有な現象ではなく、オランダにも構造的人種主義、白人の特権、無意識な偏見があり、奴隷制の暗い歴史によって形成されたと認識されている176)。BLMの抗議運動の広がりとともに、オランダ特有のテーマがいくつか話題となった。

 第1に、毎年12月5日の聖ニコラウス(サンタクロース)の日に、聖ニコラウスに連れ立ち、顔を黒く塗り、アフロヘアの髪型をしたブラック・ピート(Black Pete)という従者が、子供たちにプレゼントを渡す習慣がオランダにある。人種差別の伝統だと以前から批判が絶えなかった。Amazon や Facebook はブラック・ピートの描写を不許可にし、またオランダの図書館ではブラック・ピートのイラストをふくむ子供の本を秘かに取り除きはじめた。保守的な自由民主国民党のマルク・ルッテ(Mark Rutte)首相は、文化や伝統に国が干渉することに反対していた。しかしBLMの抗議運動によって、ブラック・ピートは民俗文化であり決して人種差別ではないが、傷つく人たちがいることを実感していると、彼は意見を変えた177)

 第2に、王室の「黄金の馬車」が批判の対象となった。毎年議会開会式などの儀式に利用されていたが、修復のため2015年からは使われていない。ウィルヘルミナ女王の戴冠を祝して1898年にアムステルダムの人々が寄贈した馬車である。馬車側面には、半裸体の黒人と南アジア人が、ひざまずき床に伏せて、王座にすわる白人女性に贈物をささげる光景が描かれている。「植民地の捧げもの(Homage of the Colonies)」と題された絵画は、典型的な人種主義、植民地主義の表現として批判されている。修復後、馬車は2021年6月にアムステルダム博物館で展示されてから、今後の行方が議論される178)

黄金の馬車
(Gouden Koets - Prinsjesdag 2014, Wikimedia Commons
「植民地の捧げもの」


 第3に、奴隷制に対する公式謝罪である。オランダは17世紀から19世紀にかけて60万人ものアフリカ人を奴隷にして大西洋を輸送した。1863年7月1日に奴隷制を廃止してから、7月1日はケチ・コチ(Keti Koti、鎖を解かれた)奴隷解放記念日として知られている。国の歴史と奴隷制とが結びついていることを直視するため、政府は記念日に、全国的な対話を企画してきた。公式謝罪への要求に、ルッテ首相は、謝罪にあたって今は適切な時期だとは考えていない、現在生きている人たちが遠い過去に責任をもてるだろうか?謝罪は対話と包括性をまねくどころか、社会を対極化させる危険性があると語った179)

 アムステルダム市議会は2019年に謝罪を決議し、調査を進めて、2021年7月1日に女性市長フェムケ・ハルセマ(Femke Halsema)が、奴隷制に関与した市の役割を公式に謝罪した180)

 オランダでモニュメントの引き倒しや撤去はなかったが、いくつかの彫像が落書きされた。アムステルダムでオランダ領東インド総督だったヨハネス・ヒューツ(Joannes van Heutsz)の像が汚された。ロッテルダムで17世紀に西インド会社副提督だったピート・ハイン(Piet Hein)の像台座に「殺人者(killer)」、「泥棒(thief)」と書かれた。ハーグの議事堂外側にあるヨーハン・ファン・オルデンバルネフェルト(Johan van Oldenbarnevelt)の像にスローガンが塗られた。彼はスペインから独立を勝ち取った英雄で、また東インド会社の共同創立者だった。北部のホールンで17世紀に東インド会社総督だったヤン・ピーテルスゾーン・クーン(Jan Pieterszoon Coen)の像を守るため、機動隊が周りを取り囲んだ。

 大多数の人たちはモニュメントをそのままにしておくべきだと考えているが、オランダの奴隷制の歴史について論争が盛んになった181)

 BLMの抗議運動とともに奴隷制の歴史に社会的関心が高まると、オランダの博物館・美術館でも脱植民地化、多様性の取り組みが進められた182)。前年9月には「黄金時代」という用語を博物館や美術館で使用するのをやめ、単に17世紀と表現することが学芸員たちによって表明された。黄金時代には貧困、戦争、強制労働、人身売買など17世紀の多数の暗い側面を無視し、歴史的現実をとらえていないと解釈されたためである183)。2020年3月には多様性や包括性を推進する新しい博物館ネットワークが結成された。

 レンブラントの家博物館では、「ここに:レンブラント時代の黒人(HERE: Black in Rembrandt’s Time)」という、黒人を主テーマにした今までになかったような展覧会を開催した184)。またアムステルダム国立美術館では、2021年に開催される「奴隷制(Slavery)」という展覧会を数年がかりで準備している。博物館が奴隷制と向き合い、歴史的事実を人々にしめしているのである。

「ここに:レンブラント時代の黒人」レンブラントの家博物館
MuseumRembrandthuis 2020/04/14)


 博物館で働く人たちは、依然として圧倒的に白人が多い。ある調査によると、21の博物館で美術関係の要職に雇用された231人のうち非ヨーロッパ移民系はわずか6人、2.6%にすぎなかった。オランダ人口の民族的少数派は14%なので、一般社会とくらべてかなり割合が低い。博物館・美術館における多様性や包括性は緒についたばかりといえるだろう。

 博物館・美術館の脱植民地化には、当然のごとく植民地から持ち出された文化財の返還もふくまれる。オランダでは2019年3月に世界文化博物館(NMVW、the Nationaal Museum van Wereldculturen)が、文化財返還に関する規定を旧植民地向けに発表したが、その後返還についてこの博物館から音沙汰はない。

 2020年1月にオランダ政府はインドネシアへ1,500点の文化財を返還した。古代武器や陶器、紀元前5,000年のものから1940年代のものまで、幅広い多種類にわたる文化財がふくまれていた。この物件は、財政難のため2013年に閉館されたデルフトのヌサンタラ博物館(the Nusantara Museum)に収蔵されていた。同博物館はインドネシア由来の美術品をおもな対象にしていた。2016年11月に両国は返還に合意し、当初オランダは12,000点の返還を提案したのだが、インドネシア文化省は1,500点だけを受け入れることにした185)

 3月に、45年前にオランダが返還を約束した黄金の短刀をインドネシアに返した。ジャワ島のジョグジャカルタのディポヌゴロ王子(Prince Diponegoro)が所有していたものである。彼はオランダ支配に抵抗して1825年にジャワ戦争を起こし、1830年に降伏。東インド副総督の足元に短刀を差し出したと伝えられている。短刀は1831年にオランダ王ウィレム1世の王室キャビネットに収められ、その後ライデンの民族博物館へ移動した。1968年の文化条約で1975年に返還されることとなり、鞍や槍、パラソルは戻ったのだが、短刀は行方不明だった。ようやく探し出して返還されたのである186)

 10月7日に文化審議会(植民地コレクション政策審議委員会:the Council for Culture、the Advisory Committee on the National Policy Framework for Colonial Collections)が、政府は植民地時代に持ち出した文化財を原産国に戻すべきだと、画期的な勧告を文化相に提出した187)。「植民地過去に起きた不正義は取り消すことができない。しかし植民地のものをとりあつかう責任によって、不正義の修復に寄与することができる」と述べ、植民地戦争と、インドネシアやスリナムが植民地だった時期に持ち出されたものに焦点をあてた。儀式用武器、宗教用具、さらには遺骸もふくめ10万点ある。オランダ植民地だけでなく、他の国の植民地から由来した文化財についても考慮すべきだとした。

 独立した委員会の設置、返還要求を処理する専門家センターの開設、出所調査の継続とデータベース作成などをふくむ審議会の勧告に、アムステルダム国立美術館と熱帯博物館(Tropenmuseum)の館長をはじめ、多数の博物館館長たちが賛同した188)

 オランダ政府は翌年2021年1月29日に、文化審議会の勧告を承認し、独立評価委員会を任命して原産国と協力しながら返還政策を進めると表明した189)

 2020年にオランダでもBLMの抗議運動が盛んになり、人種差別と警察の暴力が批判された。奴隷制の暗い過去に構造的差別の原因があると認識され、オランダ帝国主義の歴史に視線が向けられた。政府は奴隷制に公式謝罪の意向をしめさなかったが、アムステルダム市は奴隷制ではたした市の役割について公式謝罪を行なった。植民地過去の是正、脱植民地化の流れが強まるなか、植民地から持ち出された文化財についても、原産国にもどして不正義を改めるべきだと文化審議会が政府に勧告したのである。

 フランスの文化財返還レポートに次いで、オランダでも文化財の返還を政府に要求する画期的な勧告だった。しかしフランス政府による文化財返還が遅々として実現していないように、オランダ政府による返還も、そう簡単には進まないだろうと予測されている190)


ベルギー

 ベルギーでも、ジョージ・フロイド死亡後に各都市で抗議運動が発生した。6月7日にはブリュッセルで10,000人が集まった。王宮近くに建つレオポルド2世王騎馬像に人々が上り、コンゴ民主共和国の旗をふりながら、殺人者と叫んでいた。平和的なデモが終わった後、若者グループと警官隊が衝突し、一部は暴徒化して店のショーウィンドーを破壊、略奪が起きて200人以上が逮捕された191)

 コンゴは1884~85年のベルリン会議でレオポルド2世の私有地となり、コンゴ自由国として承認されて、国王の植民地統治が1885年から1909年まで続いた。レオポルド2世の統治は過酷をきわめた。ゴム、やし油、象牙を採取するため強制労働が課され、規定の供出量に満たないと、子供ですら手首を切断された。殺害、飢饉、病気で1,000万人が死亡したと伝えられている。レオポルド2世はコンゴに一度も足を踏み入れたことがなかったが、植民地から得た利益でベルギーと、私腹を肥やしたのである。

手首を切断されたコンゴ人
BBC 2020/06/13)


 残虐なコンゴの暴政は次第にヨーロッパで非難されるようになった。1908年にはベルギー議会が植民地統治の放棄を国王に強要、1909年から1960年まではベルギー政府の所有地となり、ベルギー領コンゴとなった。

 前年2019年2月に国連人権委員会のアフリカ系人民に関する専門家作業グループ(United Nations Working Group of Experts on People of African Descent)がベルギーを訪問し、植民地支配および現在の差別状況について論評した。ベルギーは、コンゴの植民地化で犯した罪を謝罪し、賠償すべきだ、アフリカ系への人種差別がベルギーにはびこっていて、現在の人権侵害の根源は、植民地化の暴力と不正義をしっかり見つめる認識が欠如しているからだと専門家たちは述べた192)。BLMの抗議運動が発生する以前から、人種差別および植民地支配についてベルギーは国際機関から指摘され、政府は対応を迫られていたのである。

 BLMの抗議運動の広がりによって、ベルギーではレオポルド2世のモニュメント撤去、あるいは落書きが続いた193)。英語版ウィキペディアの項目「ベルギーのレオポルド2世像のリスト(List of statues of Leopold II of Belgium)」によると、ベルギーではレオポルド2世像が20体以上公共空間に建っている194)。その多くは、1909年の王の死後に王位継承した甥のアルベール1世が、コンゴ暴政への悪評を覆い隠し、ベルギー領コンゴの植民地経営を奮起させるため、両大戦間に造立したとされる。

 レオポルド2世像について長い間さほど大きな議論になっていなかったが、BLMの抗議運動の高揚とともに、批判の声が高まった。王宮そばにあるレオポルド2世騎馬像の撤去を要求する請願キャンペーンがコンゴ人系の14才の少年によって開始され、短期間のうちに60,000人の賛同署名が集まった。ジョージ・フロイド死亡後の週末5月30~31日にはエーケレン(アントワープ)、ハッセルト、ヘントのレオポルド像が落書きされた。6月4日にはエーケレンの像が火で燃やされ、博物館で「修復」するため市当局は像を撤去した。その後もテルビューレン、ハレ、ブリュッセル、オーデルゲム、イクセル、アルロン、モンスの像が次々に汚されたのである。

燃やされた後、撤去されるアントワープのレオポルド2世像
BBC 2020/06/13)


 レオポルド2世像が汚され、あるいは撤去されて、またレオポルド2世の名前を付けた通りの名称が改称されたりして、植民地支配の歴史に社会的関心が高まると、ベルギーによる謝罪と賠償がメディアで議論された195)。6月12日にはフィリップ現国王の弟ロラン王子が、コンゴに一度も行っていないことを理由にレオポルド2世に責任はないと擁護した。一方、フラームス自由民主党のベルギー代議院(下院)議長パトリック・デュウェル(Patrick Dewael)は「真実の委員会」を提案して、議会にベルギーの植民地過去に関する作業委員会の設置が17日に合意された196)

 コンゴ独立60周年記念の6月30日に、フィリップ国王がコンゴ大統領に宛てた書簡のなかで、植民地支配を「痛惜の念」と表現して、暴力的統治に対するベルギー王族による最初の公的見解がしめされ、画期的な出来事として報じられた197)。父アルベール2世(在位1993~2013年)はこの問題に終始沈黙し、アルベール2世の兄ボードゥアン1世(在位1951~1993年)はレオポルド2世を絶賛していたからである。ただしフィリップ国王は謝罪にまで言及しなかった。

 イギリスと同様に、ベルギーの学校でも植民地の歴史を教えることがほとんどなかった。しかし今後は、植民地の歴史教育を重視するそうである。教育相キャロライン・デジール(Caroline Désir)は、ベルギーのコンゴの歴史を新しいカリキュラムの重要な部分に義務化する、「あまりにも多くの学生たちが何も知らずに学校を去って行く」と語った198)

 BLMの抗議運動の高まりとともに、ベルギーでも過去の植民地統治と向き合う姿勢が劇的に顕著となった。けれども文化財に関して、2020年にとくに大きな動きはなかった。王立中央アフリカ博物館で1月31日に館長の諮問委員会が返還政策を承認した。アフリカ文化遺産の大半が西欧にあるのは異常であり、法的に不平等な植民地時代にコレクションが取得されたのだと博物館は認めた。博物館のコレクションは連邦国家の譲渡不可能な財産であり、返還は連邦学術政策相によってのみ決定され、議会の同意が要求されると、返還の工程が具体的にしめされた199)

 9月に、コンゴ独立の指導者で初代首相に選出されたパトリス・ルムンバ(Patrice Lumumba)の歯を、コンゴの家族に返還すべきだとベルギーの裁判所が判決を下した200)。ルムンバはコンゴ独立後1961年1月に暗殺された。遺体はベルギー警察官によって硫酸に溶かされ、歯だけが残って警察官が持ち帰った。後に警察長官となったその警察官は2000年に告白し、テレビ・ドキュメンタリーで歯を見せたのである。

 独立直後に起きた資源豊かなカタンガ州独立をめぐるコンゴ内紛と、ソ連に友好的なルムンバを介して、モスクワがウランを入手するのではないかと西側諸国の懸念から暗殺されたと見られている。殺害の道義的責任がベルギー政府にあると、2001年にベルギー議会が認めた。独立60周年記念日の6月30日にルムンバの娘が、残った唯一の遺骸を返してほしいとフィリップ国王に手紙を送っていた201)

 遺骸について、ベルギーで大きな課題の一つとなっているのが、タブワ人(the Tabwa)の首長ルジンガ(Lusinga lwa Ng'ombe)の頭骨である。タンガニーカ湖西岸にベルギーの基盤を築く過程で、レオポルド2世の派遣した軍人エミール・ストームス(Émile Storms)が、1884年に軍を派遣して集落を襲撃してルジンガを殺害、斬首した。戦利品として持ち返った頭骨を、ストームスの死後に親族が王立中央アフリカ博物館に寄贈し、最終的に王立自然科学博物館に移されて展示された。

 ルジンガの子孫が頭骨の返還を要求し202)、また公共コレクションにふくまれている人間の遺骸について関心が高まったことから、ベルギーの博物館と大学6施設が協同して、遺骸を調査するHOME(Human remains Origin(s) Multidisciplinary Evaluation)というプロジェクトが、2019年12月から王立中央アフリカ博物館で開始された203)。目的は、政策や、関係者に最終的送り先を知らせるためである。

 2020年のBLMの抗議運動の興隆でベルギーでも植民地過去に対する社会的関心が高まった。国王が過酷な植民地支配を認め、議会が特別委員会を設置して、国全体で一層脱植民地化の潮流が大きくなったといえるだろう。植民地から持ち出された文化財の返還についても、植民地責任の一環として今後さらに議論が深まると予測される。


まとめ

 2020年は新型コロナウイルスの感染によって、世界的に大きな衝撃をあたえたパンデミックの年として人類史に特記される年となるだろう。新型コロナウイルスはコウモリのコロナウイルスから進化したと、一般的にいわれている。家畜や野生動物から人間に感染する動物由来感染症として、エボラ出血熱、SARS(重症呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、鳥インフルエンザなどがあるが、人間社会に深刻な影響をおよぼすパンデミックとなる傾向が近年強まっている。動物由来感染症が深刻化しているのは、人間と自然との接する機会の増大、人間による行き過ぎた自然開発の結果だとも指摘されている。

 人間活動による自然環境悪化は気候危機の面でも、近年きわだってきた。熱波による死者増大、大規模山林火災の激増、海水面上昇、旱魃の常態化などは、食料不安や水不足、経済の混乱をまねいて、紛争やテロの要因にもなっている。パンデミックや気候危機から問われている課題とは、人間と自然との関係を見直し、単に自然開発だけでなく今までの経済活動そのものの再考を人間社会に迫っているのである。

 一方2020年に世界を席巻したBLMの抗議運動は、人種差別や奴隷制に反対して社会の構造的変革を要求した。そして差別や奴隷制を象徴しているとしてモニュメント・彫像の排除が起きた。奴隷制は植民地支配による歴史的不正義だったという歴史認識が強調され、帝国主義的経済活動が見直された。パンデミックで人間の経済活動が注目されたが、BLMの運動でも過去の経済活動に焦点があてられたのである。

 17世紀から20世紀にかけて植民地から宗主国へと、人や資源が搾取されて、奴隷制、資本主義が発達し、貧富の格差が増大した。大量生産・大量消費社会が出現し、物資の流通や生産を統御する中央集権的な重厚長大型産業が形成された。白人男性を社会基盤とする家父長制と帝国主義的社会を表明するモニュメントとして、奴隷主などの白人男性像が画一的に造られた。植民地から文化財が持ち出され、宗主国に集積されて大博物館(Universal Museums)が形成された。

 しかし21世紀になると、人種主義、植民地支配が世界的に批判されるようになった。2001年国連主催「反人種主義世界会議」(通称ダーバン会議)で植民地主義が批判され、植民地の文化回復の権利が承認された。植民地主義は人道に対する罪と認識されるようになった。


 21世紀になって、持続可能な開発や気候変動に対処するため、人権や自然を重視する産業社会が求められるようになった。人類の経済活動が地球を破壊するとして「人新世」という概念が提唱され、資本主義の際限ない拡大を阻止する動きが生じてきた。同時に人種主義や経済格差の是正を求める社会運動が世界中に広まったのである。旧来の植民地主義を象徴するモニュメントが撤去された。資本主義社会で大きな転換が進むなか、かつて植民地から持ち出された文化財についても、ヨーロッパから原産国へ返して、旧植民地の権利や文化を回復させ、新しい国際関係を構築することが提案されているのである。


参考
2022年の動向
森本和男「ドイツがベニン青銅器を返還 -「パンドラの箱が開いた」-」(2023年7月)
2021年の動向
森本和男「フランスがアフリカに文化財を返還 -各国で確実に進む返還の準備」(2022年6月)
2019年の動向
森本和男「フランスの文化財返還レポートから1年 -欧米の脱植民地化の流れと文化財- 」(2020年4月27日)
2018年の動向
森本和男「フランスのアフリカ文化財返還政策とその波紋」『韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2019』No. 8(2019年5月1日)




1) How George Floyd Was Killed in Police Custody(the New York Times 2020/05/31)
 https://www.nytimes.com/2020/05/31/us/george-floyd-investigation.html
2) Black Lives Matter May Be the Largest Movement in U.S. History(the New York Times 2020/07/03)
 https://www.nytimes.com/interactive/2020/07/03/us/george-floyd-protests-crowd-size.html
3) Demonstrations & Political Violence in America: New Data for Summer 2020(ACLED, the Armed Conflict Location & Event Data Projec 2020/09/03)
 https://acleddata.com/blog/2020/09/03/demonstrations-political-violence-in-america-new-data-for-summer-2020/
4) 大坂なおみがマスクに遺した7人の犠牲者。勝ち続けることで貫いたもの(HUFFPOST 2020/09/13)
 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f51bd94c5b62b3add3e53ce
5) George Floyd Protests Reignite Debate Over Confederate Statues(the New York Times 2020/06/03)
 https://www.nytimes.com/2020/06/03/us/confederate-statues-george-floyd.html
  How Statues Are Falling Around the World(the New York Times 2020/06/24)
 https://www.nytimes.com/2020/06/24/us/confederate-statues-photos.html
6) AHA Statement on Confederate Monuments (AHA, American Historical Association 2017/08)
 https://www.historians.org/news-and-advocacy/aha-advocacy/aha-statement-on-confederate-monuments
7) Dylann Roof Photos and a Manifesto Are Posted on Website (the New York Times 2015/06/20)
 https://www.nytimes.com/2015/06/21/us/dylann-storm-roof-photos-website-charleston-church-shooting.html
8) Era Ends as South Carolina Lowers Confederate Flag (the New York Times 2015/07/10)
 https://www.nytimes.com/2015/07/11/us/south-carolina-confederate-flag.html
9) Southern Poverty Law Center, "Whose Heritage? Public Symbols of the Confederacy", 2016.
 https://www.splcenter.org/sites/default/files/com_whose_heritage.pdf
10) The Statue at the Center of Charlottesville’s Storm (the New York Times 2017/08/13)
 https://www.nytimes.com/2017/08/13/us/charlottesville-rally-protest-statue.html
11) From 2017: Confederate Monuments Are Coming Down Across the United States. Here’s a List (the New York Times 2017/08/28)
 https://www.nytimes.com/interactive/2017/08/16/us/confederate-monuments-removed.html
12) SPLC Reports Over 160 Confederate Symbols Removed in 2020 (SPLC 2021/02/23)
 https://www.splcenter.org/presscenter/splc-reports-over-160-confederate-symbols-removed-2020
  Over 160 Confederate Symbols Were Removed in 2020, Group Says(the New York Times 2021/02/23)
 https://www.nytimes.com/2021/02/23/us/confederate-monuments-george-floyd-protests.html
13) List of monuments and memorials removed during the George Floyd protests (WIKIPEDIA
 https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_monuments_and_memorials_removed_during_the_George_Floyd_protests
14) 柳生智子「アメリカ・バージニアにおける奴隷市場の発展」『慶應義塾大学日吉紀要』社会科学、21号、2010年。
 https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/pdf%C2%A5AN10425830-20110331-0001.pdf?file_id=52261
15) 127-0174 Monument Avenue Historic District(Virginia Department of Historic Resources
 https://www.dhr.virginia.gov/historic-registers/127-0174/
16) Online Exhibits: The Life of Monument Avenue(the American Civil War Museum
 https://onmonumentave.com/onlineexhibits
17) Richmond Groups Lead Peaceful Racial Justice Rally from Maggie Walker Statue to Monument Avenue(VPM 2017/09/16)
 https://vpm.org/news/articles/9075/richmond-groups-lead-peaceful-racial-justice-rally-from-maggie-walker-statue-to
18) Mayor Stoney: Commission to consider removal of Confederate statues on Richmond's Monument Ave. (Richmond Times-Dispatch 2017/08/16)
 https://richmond.com/news/local/mayor-stoney-effective-immediately-the-monument-avenue-commission-will-include/article_0120e8e9-d3f8-5b9e-8343-69902df255a6.html
19) Shaping History: Monument-Toppling, Racial Justice and the Law (Center for art law 2019/12/02)
 https://itsartlaw.org/2019/12/02/shaping-history-monument-toppling-racial-justice-and-the-law/
20) New law allows Virginia localities to remove Confederate statues and monuments (the Cavalier Daily 2020/04/13)
 https://www.cavalierdaily.com/article/2020/04/new-law-allows-virginia-localities-to-remove-confederate-statues-and-monuments
  Virginia Grants Cities The Power To Remove Their Confederate Statues (WAMU 2020/04/12)
 https://wamu.org/story/20/04/12/virginia-grants-cities-the-power-to-remove-their-confederate-statues/
21) Northam, Stoney Back Removal of Richmond’s Confederate Monuments(VPM 2020/06/03)
 https://vpm.org/news/articles/13956/northam-stoney-back-removal-of-richmonds-confederate-monuments
22) Northam orders removal of Lee statue as soon as possible(WTVR-TV CBS 6 2020/06/04)
 https://www.wtvr.com/news/local-news/northam-expected-to-announce-removal-of-robert-e-lee-statue
23) WATCH NOW: Statue of Jefferson Davis torn down on Monument Avenue(Richmond Times-Dispatch 2020/06/10)
 https://richmond.com/news/local/statue-of-jefferson-davis-torn-down-on-monument-avenue/article_64865aee-76bc-54e1-8e90-2fa749f8877b.html
24) Stonewall Jackson statue removed from pedestal following order from Mayor Stoney(WWBT of Richmond 2020/07/01)
 https://www.nbc12.com/2020/07/01/live-stonewall-jackson-statue-removed-pedestal-following-order-mayor-stoney/
  Stonewall Jackson statue down after Richmond mayor orders removal of Confederate monuments(NBC News 2020/07/02)
 https://www.nbcnews.com/news/us-news/stonewall-jackson-statue-down-after-richmond-mayor-orders-removal-all-n1232732
25) Maury statue on Monument Avenue removed from pedestal; Mayor Stoney says 11 Confederate statues will be removed in total(WWBT of Richmond 2020/07/03)
 https://www.nbc12.com/2020/07/02/city-start-removal-maury-statue-monument-avenue/
  Richmond Removes Confederate Statues From Monument Avenue(the New York Times 2020/07/02)
 https://www.nytimes.com/2020/07/02/us/stonewall-jackson-statue-richmond.html
26) Virginia Judge Blocks Plan To Remove Statue Of Robert E. Lee(NPR 2021/06/09)
 https://www.npr.org/sections/live-updates-protests-for-racial-justice/2020/06/09/872707016/virginia-judge-blocks-plan-to-remove-statue-of-robert-e-lee
  A Court Has Temporarily Blocked Virginia’s Governor From Removing Its Notorious Robert E. Lee Monument(artnet news 2021/06/09)
 https://news.artnet.com/art-world/court-temporarily-blocked-virginias-governor-removing-monument-robert-e-lee-1882665
27) Virginia Governor Can Remove Robert E. Lee Statue, but Not Yet, Judge Rules(the New York Times 2020/10/28)
 https://www.nytimes.com/2020/10/28/us/lee-statue-richmond-virginia.html
28) Space around the Lee statue has been informally named for a Black man who lost his life at the hands of police(Richmond Times-Dispatch 2020/06/26)
 https://richmond.com/news/local/space-around-the-lee-statue-has-been-informally-named-for-a-black-man-who-lost/article_1b48d63f-e932-5edc-8d0b-0e3289ac71bb.html
29) Projections at Lee Monument have offered peace in times of violence(Richmond Times-Dispatch 2020/06/27)
 https://richmond.com/news/local/projections-at-lee-monument-have-offered-peace-in-times-of-violence---a-glimpse/article_15e77f3c-9f81-57f8-a2e5-c01231b15fb9.html
  Powerful BLM Video Projections Help Reclaim Controversial Robert E. Lee Monument(My Modern Met 2020/07/28)
 https://mymodernmet.com/light-projections-robert-e-lee-memorial/
30) Will the Last Confederate Statue Standing Turn Off the Lights?(the New York Times 2020/06/23)
 https://www.nytimes.com/2020/06/23/style/statue-richmond-lee.html
  Refacing the Robert E. Lee Monument in Richmond(Reading the Pictures 2020/06/25)
 https://www.readingthepictures.org/2020/06/refacing-robert-e-lee-monument/#
  In Richmond, Black Dance Claims a Space Near Robert E. Lee(the New York Times 2020/08/06)
 https://www.nytimes.com/2020/08/06/arts/dance/richmond-virginia-lee-monument.html
31) The 25 Most Influential Works of American Protest Art Since World War II(the New York Times 2020/10/15)
 https://www.nytimes.com/2020/10/15/t-magazine/most-influential-protest-art.html
32) State installs fence around Lee Monument to prepare for statue's future removal; appeal filed in suit(Richmond Times-Dispatch 2021/01/25)
 https://richmond.com/news/local/state-installs-fence-around-lee-monument-to-prepare-for-statues-future-removal-appeal-filed-in/article_deac81c6-ce97-507a-921c-f80e920448f3.html
  With Lee monument case tied up in court, people who transformed 'MDP Circle' are asking: What's the fence really for? (Richmond Times-Dispatch 2021/02/28)
 https://richmond.com/news/local/with-lee-monument-case-tied-up-in-court-people-who-transformed-mdp-circle-are-asking/article_8227ea9e-e330-54d6-b173-9993c2a7c227.html
33) From Spain to Syria, Street Artists Around the World Are Painting Murals to Memorialize George Floyd—See Them Here(artnet news 2020/06/01)
 https://news.artnet.com/art-world/street-art-protest-george-floyd-death-1875156
34) Artists Are Paying Tribute on Social Media to George Floyd, Breonna Taylor, and Other Black Americans Killed by the Police(artnet news 2020/06/02)
 https://news.artnet.com/exhibitions/george-floyd-breonna-taylor-tributes-1876281
35) George Floyd's final words flown across five cities as protests erupt across the US(the Art Newspaper 2020/06/01)
 https://www.theartnewspaper.com/news/jammie-holmes-george-floyd-new-york-los-angeles-dallas-detroit-miami
  George Floyd’s Last Words Were Flown on Banners Over Cities Across America as a Rapid-Response Public Art Project(artnet news 2020/06/02)
 https://news.artnet.com/art-world/jammie-holmes-george-floyd-public-art-airplane-banners-1877235
36) トランプ米大統領、騒乱鎮静に軍の投入も辞さないと 「法と秩序の大統領」自認(BBC News|Japan 2020/06/02)
 https://www.bbc.com/japanese/52887126
  How Trump’s Idea for a Photo Op Led to Havoc in a Park(the New York Times 2020/06/02)
 https://www.nytimes.com/2020/06/02/us/politics/trump-walk-lafayette-square.html
  Trump’s Freakish Church Photo Op and the Widespread Arrests of Journalists Point to the Same Deeper Rot(artnet news 2020/06/03)
 https://news.artnet.com/opinion/trump-photo-op-attacks-journalists-photographers-1878630
37) D.C.’s Mayor Fights for Control of Her City at Trump’s Front Door(the New York Times 2020/06/05)
 https://www.nytimes.com/2020/06/05/us/politics/muriel-bowser-trump.html
  Washington mayor stands up to Trump and unveils Black Lives Matter mural(the Guardian 2020/06/06)
 https://www.theguardian.com/us-news/2020/jun/06/washington-mayor-muriel-bowser-trump
38) Cities Across the US Are Painting Massive Black Lives Matter Slogans on Their Streets, Following in the Footsteps of Washington, DC(artnet news 2020/06/08)
 https://news.artnet.com/art-world/painting-streets-black-lives-matter-1881429
  Powerful photos show 'Black Lives Matter' painted across streets nationwide(USA TODAY 2020/06/17)
 https://www.usatoday.com/story/news/nation/2020/06/17/black-lives-matter-painted-city-streets-see-art-nyc-washington/3204742001/
39) List of Black Lives Matter street murals(WIKIPEDIA)
 https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Black_Lives_Matter_street_murals
40) ‘A painful totem:’ Artists paint message on Raleigh street to protest Confederate statues(The News & Observer 2020/06/07)
 https://www.newsobserver.com/news/local/article243348876.html
41) Demonstrators topple 2 statues from Confederate monument outside NC Capitol building(ABC11 2020/06/21)
 https://abc11.com/6256848/
  75-foot North Carolina Confederate monument to be removed from Capitol grounds following Gov. Cooper's order(ABC11 2020/06/22)
 https://abc11.com/raleigh-confederate-monuments-monument-capitol-ground-nc-roy-cooper/6258514/
42) N.Y.C. Paints ‘Black Lives Matter’ in Front of Trump Tower(the New York Times 2020/07/09)
 https://www.nytimes.com/2020/07/09/nyregion/blm-trump-tower.html
43) Black Lives Matter mural unveiled in Harlem(Reuters 2020/07/10)
 https://www.youtube.com/watch?v=VRfjWwaiy0o
  The ‘Black Lives Matter’ Street Art That Contains Multitudes(the New York Times 2020/07/16)
 https://www.nytimes.com/2020/07/16/arts/design/black-lives-matter-murals-new-york.html
44) As protests against police violence surge, Florida passes a bill to combat ‘public disorder.’(the New York Times 2021/04/15)
 https://www.nytimes.com/2021/04/15/us/politics/florida-public-disorder-bill-police.html
  Florida Just Made It a Felony to Damage Confederate Monuments as Part of Its Controversial New ‘Public Disorder’ Law(artnet news 2021/04/22)
 https://news.artnet.com/art-world/florida-felony-topple-confederate-monuments-1961315
45) Four Salutes to the Nation(the White House Historical Association
 https://www.whitehousehistory.org/four-salutes-to-the-nation
46) President's Park Foundation Document(U.S. Department of the Interior, National Park Service 2014/09)
 https://www.nps.gov/whho/planyourvisit/prpa-foundation-document.htm
 https://www.nps.gov/whho/planyourvisit/upload/WHHO_FD_2014_low.pdf
  Lafayette Square Historic Dictrict(National Park Service
 https://www.nps.gov/nr/travel/wash/dc30.htm
47) Protecting American Monuments, Memorials, and Statues and Combating Recent Criminal Violence(Executive Order 13933, Federal Register, National Archives 2020/07/02)
 https://www.federalregister.gov/documents/2020/07/02/2020-14509/protecting-american-monuments-memorials-and-statues-and-combating-recent-criminal-violence
48) Trump Issues Executive Order Targeting Vandalism Against Monuments(the New York Times 2020/06/26)
 https://www.nytimes.com/2020/06/26/us/politics/trump-monuments-executive-order.html
49) Four Men Charged in Federal Court for Attempting to Tear Down Statue of Andrew Jackson in Lafayette Square Amid Protests(U.S. Attorney's Office, District of Columbia 2020/06/27)
 https://www.justice.gov/usao-dc/pr/four-men-charged-federal-court-attempting-tear-down-statue-andrew-jackson-lafayette
50) DHS Announces New Task Force to Protect American Monuments, Memorials, and Statues(the Department of Homeland Security 2020/07/01)
 https://www.dhs.gov/news/2020/07/01/dhs-announces-new-task-force-protect-american-monuments-memorials-and-statues
51) Mount Rushmore: Trump denounces 'cancel culture' at 4 July event(BBC 2020/06/26)
 https://www.bbc.com/news/world-us-canada-53284607
52) Building and Rebuilding Monuments to American Heroes(Executive Order 13934, Federal Register, National Archives 2020/07/08)
 https://www.federalregister.gov/documents/2020/07/08/2020-14872/building-and-rebuilding-monuments-to-american-heroes
53) Trump Says He Will Create a Statuary Park Honoring ‘American Heroes’(the New York Times 2020/07/04)
 https://www.nytimes.com/2020/07/04/us/politics/trump-statues-american-heroes.html
  After Rebuking Statue Toppling, President Trump Signs an Executive Order to Create a National Garden of Monuments to ‘American Heroes’(artnet news 2020/07/06)
 https://news.artnet.com/art-world/trump-executive-order-national-garden-monuments-1892526
54) Building the National Garden of American Heroes(Executive Order 13978, Federal Register, National Archives 2021/01/22)
 https://www.federalregister.gov/documents/2021/01/22/2021-01643/building-the-national-garden-of-american-heroes
55) Historians question Trump’s choice of ‘heroes’ for national garden monument(the Washington Post 2020/07/05)
 https://www.washingtonpost.com/politics/historians-question-trumps-choice-of-heroes-for-national-garden-monument/2020/07/04/4a33932a-be33-11ea-80b9-40ece9a701dc_story.html
56) One of Trump’s Final Executive Orders Reveals the 244 ‘American Heroes’ He Wants to Honor With a National Sculpture Garden(artnet news 2021/01/19)
 https://news.artnet.com/art-world/trump-garden-american-heroes-garden-list-1938026
57) Trump's "American Heroes" are 73% men(AXIOS 2021/01/19)
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58) How Mount Rushmore Became Mount Rushmore(the New York Times 2020/07/01)
 https://www.nytimes.com/2020/07/01/us/mount-rushmore.html
59) Governor Kristi Noem, Not on My Watch.(South Dakota State News 2020/06/26)
 https://news.sd.gov/newsitem.aspx?id=26971
  Tribal leaders and organisations call for the removal of Mount Rushmore monument(the Art Newspaper 2020/07/02)
 https://www.theartnewspaper.com/news/tribal-leaders-and-organisations-call-for-the-removal-of-mount-rushmore
60) Will the White House Order New Federal Architecture To Be Classical?(Architectual Record 2020/02/04)
 https://www.architecturalrecord.com/articles/14466-will-the-white-house-order-new-federal-architecture-to-be-classical
  President Trump Wants to Make ‘Federal Buildings Beautiful Again’ With a New Executive Order That Echoes Fascist History(artnet news 2020/02/05)
 https://news.artnet.com/art-world/trump-make-federal-buildings-beautiful-again-1770435
  Draft Executive Order Would Give Trump a New Target: Modern Design(the New York Times 2020/02/05)
 https://www.nytimes.com/2020/02/05/arts/design/trump-modern-architecture.html
61) Promoting Beautiful Federal Civic Architecture(Executive Order 13967, Federal Register, National Archives 2020/12/23)
 https://www.federalregister.gov/documents/2020/12/23/2020-28605/promoting-beautiful-federal-civic-architecture
62) Modifying the Bears Ears National Monument(Proclamation 9681, Federal Register, National Archives 2017/12/08)
 https://www.federalregister.gov/documents/2017/12/08/2017-26709/modifying-the-bears-ears-national-monument
  Modifying the Grand Staircase-Escalante National Monument(Proclamation 9682, Federal Register, National Archives 2017/12/08)
 https://www.federalregister.gov/documents/2017/12/08/2017-26714/modifying-the-grand-staircase-escalante-national-monument
63) Trump Slashes Size of Bears Ears and Grand Staircase Monuments(the New York Times 2017/12/04)
 https://www.nytimes.com/2017/12/04/us/trump-bears-ears.html
  ハンナ・ノードハウス「米国西部土地をめぐる熱い闘い」『ナショナル ジオグラフィック(日本版)』2018年12月号。
64) Protecting Public Health and the Environment and Restoring Science To Tackle the Climate Crisis(Executive Order 13990, Federal Register, National Archives 2021/01/25)
 https://www.federalregister.gov/documents/2021/01/25/2021-01765/protecting-public-health-and-the-environment-and-restoring-science-to-tackle-the-climate-crisis
65) Tackling the Climate Crisis at Home and Abroad(Executive Order 14008, Federal Register, National Archives 2021/02/01)
 https://www.federalregister.gov/documents/2021/02/01/2021-02177/tackling-the-climate-crisis-at-home-and-abroad
66) The U.S. commits to tripling its protected lands. Here’s how it could be done.(National Geographic 2021/01/28)
 https://www.nationalgeographic.com/environment/article/biden-commits-to-30-by-2030-conservation-executive-orders
67) Biden is poised to expand Bears Ears and Grand Staircase monuments. The real question is by how much?(the Salt Lake Tribune 2021/04/11)
 https://www.sltrib.com/news/environment/2021/04/11/biden-is-poised-expand/
68) Biden expected to reverse Trump’s order to shrink Utah national monuments(National Geographic 2021/01/15)
 https://www.nationalgeographic.com/environment/article/biden-expected-to-reverse-trump-order-to-shrink-utah-national-monuments
69) Joe Biden Has Revoked Trump’s Executive Order Mandating Classical-Only Architecture for Federal Buildings, Restoring ‘Freedom of Design’(artnet news 2021/02/26)
 https://news.artnet.com/art-world/biden-revokes-trump-classical-architectural-mandate-1947351
70) President Biden Nixes Trump’s Planned Sculpture Garden Memorializing Antonin Scalia, Davy Crockett, and Other ‘American Heroes’(artnet news 2021/05/17)
 https://news.artnet.com/art-world/president-biden-cancels-trumps-garden-of-american-heroes-1969549
71) Haaland Wants to Restore Environmental Safeguards for Three National Monuments(the New York Times 2021/06/14)
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72) What did the artists and planners intend?, Addressing the Statue(American Museum of Natural History
 https://www.amnh.org/exhibitions/addressing-the-theodore-roosevelt-statue/making-the-statue
73) After Years of Protest, Theodore Roosevelt Statue Will Be Removed From American Natural History Museum(HYPERALLERGIC 2020/06/22)
 https://hyperallergic.com/572552/after-years-of-protest-theodore-roosevelt-statue-will-be-removed-from-american-natural-history-museum/
74) Roosevelt Statue to Be Removed From Museum of Natural History(the New York Times 2020/06/21)
 https://www.nytimes.com/2020/06/21/arts/design/roosevelt-statue-to-be-removed-from-museum-of-natural-history.html
  ‘It Is the Right Decision and the Right Time’: The American Museum of Natural History Will Remove Its Theodore Roosevelt Statue(artnet news 2020/06/22)
 https://news.artnet.com/art-world/teddy-roosevelt-monument-coming-down-1888811
75) Unanimous Vote Is Final Step Toward Removing Roosevelt Statue(the New York Times 2021/06/21)
 https://www.nytimes.com/2021/06/22/arts/design/theodore-roosevelt-statue-museum-natural-history-removal.html
  New York City Authorities Vote Unanimously to Remove Theodore Roosevelt’s Statue From the Museum of Natural History’s Steps(artnet news 2021/06/23)
 https://news.artnet.com/art-world/nyc-commission-votes-unanimously-relocate-roosevelt-statue-1982664
76) Addressing the Statue(American Museum of Natural History
 https://www.amnh.org/exhibitions/addressing-the-theodore-roosevelt-statue
  Angered by This Roosevelt Statue? A Museum Wants Visitors to Weigh In(the New York Times 2019/07/15)
 https://www.nytimes.com/2019/07/15/arts/design/angered-by-this-roosevelt-statue-a-museum-wants-visitors-to-weigh-in.html
77) Asian Art Museum to Remove Bust of Patron. That’s Just a Start.(the New York Times 2020/06/15)
 https://www.nytimes.com/2020/06/15/arts/design/avery-brundage-bust-asian-art-museum.html
78) Biography, Morton Cranial Collection(Penn Museum
 https://www.penn.museum/sites/morton/life.php
79) Penn Museum to Relocate Skull Collection of Enslaved People(the New York Times 2020/07/27)
 https://www.nytimes.com/2020/07/27/us/Penn-museum-slavery-skulls-Morton-cranial.html
  The Penn University Museum Is Working to Repatriate the Skulls of Enslaved Peoples in its Collection Following Student Protests(artnet news 2020/07/28)
 https://news.artnet.com/art-world/penn-university-museum-working-repatriate-skulls-enslaved-peoples-collection-1897840
80) Paul Wolff Mitchell, 'Black Philadelphians in the Samuel George Morton Cranial Collection', (PRSS、Penn Program on Race, Science, and Society 2021/02/15)
 https://prss.sas.upenn.edu/penn-medicines-role/black-philadelphians-samuel-george-morton-cranial-collection
81) Morton Cranial Collection(Penn Museum
 https://www.penn.museum/sites/morton/
  What Should Museums Do With the Bones of the Enslaved?(the New York Times 2021/04/20)
 https://www.nytimes.com/2021/04/20/arts/design/museums-bones-smithsonian.html
82) Bones of Black children killed in police bombing used in Ivy League anthropology course(the Guardian 2021/04/23)
 https://www.theguardian.com/us-news/2021/apr/22/move-bombing-black-children-bones-philadelphia-princeton-pennsylvania
83) Ivy League colleges urged to apologise for using bones of Black children in teaching(the Guardian 2021/04/24)
 https://www.theguardian.com/us-news/2021/apr/24/ivy-league-universities-bones-black-children-move-philadelphia
  After an Uproar, the Penn Museum Will Return the Suspected Remains of a Black Teenage Girl Who Died in a 1985 Police Bombing(artnet news 2021/04/27)
 https://news.artnet.com/art-world/family-activist-leader-calling-penn-museum-return-remains-person-died-1985-move-bombing-1962407
84) Response to Retention and Use of MOVE Bombing Victims’ Remains by the Penn Museum(PRSS、Penn Program on Race, Science, and Society 2021/04/29)
 https://prss.sas.upenn.edu/news/response-retention-and-use-move-bombing-victims%E2%80%99-remains-penn-museum
85) New Legislation Seeks to Protect the U.S.’ Historic Black Cemeteries(Smithsonian Magazine 2020/12/29)
 https://www.smithsonianmag.com/smart-news/legislation-protect-african-american-burial-grounds-passes-senate-180976642/
86) Craft an African American Graves Protection and Repatriation Act(nature 2021/05/19)
 https://www.nature.com/articles/d41586-021-01320-4
87) ‘Horrible History’: Mass Grave of Indigenous Children Reported in Canada(the New York Times 2021/05/28)
 https://www.nytimes.com/2021/05/28/world/canada/kamloops-mass-grave-residential-schools.html
  How Thousands of Indigenous Children Vanished in Canada(the New York Times 2021/06/07)
 https://www.nytimes.com/2021/06/07/world/canada/mass-graves-residential-schools.html
88) U.S. to Search Former Native American Schools for Children’s Remains(the New York Times 2021/06/23)
 https://www.nytimes.com/2021/06/23/us/indigenous-children-indian-civilization-act-1819.html
89) Floyd Case Forces Arts Groups to Enter the Fray(the New York Times 2020/06/07)
 https://www.nytimes.com/2020/06/07/arts/museums-theaters-protests.html
90) Protest letter urges New York art institutions to rectify ‘egregious acts’ rooted in white supremacy(the Art Newspaper 2020/06/20)
 https://www.theartnewspaper.com/news/protest-letter-urges-new-york-art-institutions-to-rectify-egregious-acts-rooted-in-white-supremacy
  ‘We Were Tired of Asking’: Why Open Letters Have Become Many Activists’ Tool of Choice for Exposing Racism at Museums(artnet news 2020/07/15)
 https://news.artnet.com/art-world/museum-open-letters-activism-1894150
91) In Response to Growing Pressure From Within, the Metropolitan Museum of Art Has Released an Institutionwide Equity and Diversity Plan(artnet news 2020/07/07)
 https://news.artnet.com/art-world/met-racism-allegations-1892614
92) Our Commitments to Anti-Racism, Diversity, and a Stronger Community(The Met 2020/07/06)
 https://www.metmuseum.org/blogs/now-at-the-met/2020/the-mets-plans-for-anti-racism
93) Exclusive survey: what progress have US museums made on diversity, after a year of racial reckoning?(the Art Newspaper 2021/05/25)
 https://www.theartnewspaper.com/news/a-realisation-of-what-damage-we-ve-done-a-year-of-racial-reckoning-for-us-museums
94) Black Trustees Join Forces to Make Art Museums More Diverse(the New York Times 2020/10/09)
 https://www.nytimes.com/2020/10/09/arts/design/black-trustees-art-museums-diversity.html
95) A Cree Artist Redraws History(the New York Times 2019/12/19)
 https://www.nytimes.com/2019/12/19/arts/design/kent-monkman-metropolitan-museum.html
96) Thousands gather in Britain to support US George Floyd protests(the Guardian 2020/05/31)
 https://www.theguardian.com/us-news/2020/may/31/crowds-gather-in-britain-to-support-us-george-floyd-protests
97) How George Floyd's death sparked a wave of UK anti-racism protests(the Guardian 2020/07/29)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2020/jul/29/george-floyd-death-fuelled-anti-racism-protests-britain
98) George Floyd death: Why US protests resonate in the UK(BBC 2020/06/02)
 https://www.bbc.com/news/newsbeat-52877803
99) George Floyd death: How many black people die in police custody in England and Wales?(BBC 2020/06/03)
 https://www.bbc.com/news/52890363
100) STATUE OF EDWARD COLSTON(Historic England
 https://historicengland.org.uk/listing/the-list/list-entry/1202137
101) BLM protesters topple statue of Bristol slave trader Edward Colston(the Guardian 2020/06/07)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2020/jun/07/blm-protesters-topple-statue-of-bristol-slave-trader-edward-colston
  Protesters topple monument to slave trader Edward Colston in Bristol—mayor wants to place it in a museum(the Art Newspaper 2020/06/08)
 https://www.theartnewspaper.com/news/protesters-topple-monument-to-slave-trader-edward-colston-in-bristol-mayor-wants-to-place-it-in-a-museum
102) Dan Hicks, Why Colston Had to Fall(ArtReview 2020/06/09)
 https://artreview.com/why-colston-had-to-fall/
103) https://www.instagram.com/p/CBNmTVZsDKS/?utm_source=ig_embed&utm_campaign=loading
  Banksy proposes new Bristol memorial of protesters toppling slave trader statue(the Art Newspaper 2020/06/09)
 https://www.theartnewspaper.com/news/banksy-proposes-new-bristol-memorial-of-protesters-toppling-edward-colston-statue
104) After a Monument to a UK Slaver Was Toppled, Artist Marc Quinn Replaced It With a Striking—and Unauthorized—Statue of a Black Lives Matter Activist(artnet news 2020/07/15)
 https://news.artnet.com/art-world/marc-quinn-bristol-blm-sculpture-1894850
  Marc Quinn sculpture of Black Lives Matter activist replaces statue to slave trader Edward Colston in Bristol(the Art Newspaper 2020/07/15)
 https://www.theartnewspaper.com/news/marc-quinn-s-sculpture-of-black-lives-matter-activist-goes-up-in-bristol-in-place-of-slave-trader-edward-colston
105) Danielle Thom, Mapping the legacy of slavery in London's Docklands(Museum of London Docklands 2018/10/23)
 https://www.museumoflondon.org.uk/discover/mapping-londons-legacy-slavery-docklands
106) Robert Milligan: Slave trader statue removed from outside London museum(BBC 2020/06/09)
 https://www.bbc.com/news/uk-england-london-52977088
  Statues of slavers around London could be pulled down under mayor’s new diversity plan(the Art Newspaper 2020/06/09)
 https://www.theartnewspaper.com/news/statues-of-slavers-around-london-could-be-pulled-down-under-mayor-s-new-diversity-plan
107) London Boards Up Its Monuments as Tensions Run High Over the Fight to Topple Controversial Historical Statues(artnet news 2020/06/12)
 https://news.artnet.com/art-world/london-monuments-tensions-1885851
108) Churchill statue 'may have to be put in museum', says granddaughter(BBC 2020/06/13)
 https://www.bbc.com/news/uk-53033550
  Boris Johnson Says He Will Defend Winston Churchill’s Statue ‘With Every Breath in My Body’ as the Battle Over the UK’s Memorials Intensifies(artnet news 2020/06/15)
 https://news.artnet.com/art-world/boris-johnson-winston-churchill-monument-1886954
109) Oxford council says controversial Cecil Rhodes statue should go to museum after long-running stalemate(the Art Newspaper 2020/06/10)
 https://www.theartnewspaper.com/news/stalemate-over-sculpture-of-imperialist-cecil-rhodes-could-finally-be-broken-after-oxford-proposes-placing-work-in-museum
  Oxford University Votes to Remove Its Controversial Statue of Victorian Imperialist Cecil Rhodes in the Wake of Mass Protests(artnet news 2020/06/18)
 https://news.artnet.com/art-world/oxford-university-cecil-rhodes-statue-removed-1888083
110) https://twitter.com/britishmuseum/status/1268862849650233347
  A message from Director Hartwig Fischer(The British Museum 2020/06/05)
 https://blog.britishmuseum.org/a-message-from-director-hartwig-fischer/
111) https://twitter.com/BrutishMuseum/status/1269007831862333440
  ‘This Is Performative’: Critics Mercilessly Mock the British Museum for Its ‘Hollow’ Statement of Solidarity With the Black Lives Matter Movement(artnet news 2020/06/09)
 https://news.artnet.com/art-world/british-museum-black-lives-matter-1882296
  'Time to give back the swag, guys!' British Museum unleashes Twitter storm with statement on Black Lives Matter(the Art Newspaper 2020/06/09)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/06/09/time-to-give-back-the-swag-guys-british-museum-unleashes-twitter-storm-with-statement-on-black-lives-matter
112) How UK museums are responding to Black Lives Matter(BBC 2020/06/29)
 https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-53219869
113) Collecting and empire(the British Museum 2020/08/21)
 https://blog.britishmuseum.org/collecting-and-empire/
  The British Museum Reopens to a World That Has Changed(the New York Times 2020/08/27)
 https://www.nytimes.com/2020/08/27/arts/design/british-museum-reopening.html
114) We've published our report into colonialism and historic slavery(National Trust 2020/09/16)
 https://www.nationaltrust.org.uk/news/weve-published-our-report-into-colonialism-and-historic-slavery
115) Legacies of British Slavery(UCL、University Collage London
 https://www.ucl.ac.uk/lbs/
116) Slavery Connections to English Heritage Sites(English Heritage
 https://www.english-heritage.org.uk/learn/research/slavery/
  Slavery and the British Country House(Historic England
 https://historicengland.org.uk/images-books/publications/slavery-and-british-country-house/
  Facing Our Past(The National Trust for Scotland 2021/12/17)
 https://www.nts.org.uk/stories/facing-our-past
117) Jennifer Melville, Throwing new light on difficult histories(The National Trust for Scotland 2020/09/01)
 https://www.nts.org.uk/stories/throwing-new-light-on-difficult-histories
  The National Trust homes where colonial links are 'umbilical'(BBC 2020/09/20)
 https://www.bbc.com/news/uk-england-leicestershire-54018340
118) Revealed: Every reason the woke National Trust placed 100 properties on BLM-inspired list of shame including homes of Winston Churchill, Rudyard Kipling and William(Mail Online 2020/09/22)
 https://www.dailymail.co.uk/news/article-8759219/National-Trust-accused-rewriting-history-property-list-shame-colonial-links.html
  National Trust faces backlash for linking Winston Churchill's home to slavery and colonialism(Mail Online 2020/09/23)
 https://www.dailymail.co.uk/news/article-8762255/National-Trust-faces-backlash-linking-Winston-Churchills-home-slavery-colonialism.html
119) Britain’s Idyllic Country Houses Reveal a Darker History(the New Yorker 2021/08/16)
 https://www.newyorker.com/magazine/2021/08/23/britains-idyllic-country-houses-reveal-a-darker-history
120) Polling – Deltapoll(Policy Exchange 2020/06/29)
 https://policyexchange.org.uk/historymatterspolling/
121) Charlotte Riley, Culture wars in country houses: what the National Trust controversy tells us about British history today(Centre for the Study of the Legacies of British Slavery 2021/02/17)
 https://lbsatucl.wordpress.com/2021/02/17/culture-wars-in-country-houses-what-the-national-trust-controversy-tells-us-about-british-history-today/
  Alan Lester, Culture Warriors’ Attacks on the National Trust(University of Sussex 2021/06/07)
 https://blogs.sussex.ac.uk/snapshotsofempire/2021/06/07/culture-warriors-attacks-on-the-national-trust/
122) I've been unfairly targeted, says academic at heart of National Trust 'woke' row(the Guardian 2020/12/20)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2020/dec/20/ive-been-unfairly-targeted-says-academic-at-heart-of-national-trust-woke-row
  Anti-Woke Crusade Igniting Threats to Safety & Careers ‘There’s So Much Hatred Projected at Women in Public Life’(Byline Times 2021/02/11)
 https://bylinetimes.com/2021/02/11/anti-woke-crusade-igniting-threats-to-safety-and-careers-theres-so-much-hatred-projected-at-women-in-public-life-warns-historian/
123) Tory MPs urge Boris to go to war on BBC and National Trust wokery: PM told to speak out for Britain's patriotic silent majority against 'elitist bourgeois liberals' at institutions(Mail Online 2020/11/21)
 https://www.dailymail.co.uk/news/article-8973679/Tory-MPs-urge-Boris-Johnson-war-BBC-National-Trust-wokery.html
124) National Trust report on slavery links did not break charity law, regulator says(the Guardian 2021/03/11)
 https://www.theguardian.com/uk-news/2021/mar/11/national-trust-report-uk-slavery-links-did-not-break-charity-law-regulator-says
  National Trust's report on colonial and slavery history did not breach charity law, regulator says(the Art Newspaper 2021/03/12)
 https://www.theartnewspaper.com/news/national-trust-report-colonial-slavery-history-charity-la
125) Letter from Culture Secretary on HM Government position on contested heritage(GOV.UK 2020/09/28)
 https://www.gov.uk/government/publications/letter-from-culture-secretary-on-hm-government-position-on-contested-heritage
126) Dan Hicks, The UK government is trying to draw museums into a fake culture war(the Guardian 2020/10/15)
 https://www.theguardian.com/commentisfree/2020/oct/15/the-uk-government-is-trying-to-draw-museums-into-a-fake-culture-war
127) New legal protection for England’s heritage(GOV.UK 2021/01/17)
 https://www.gov.uk/government/news/new-legal-protection-for-england-s-heritage
128) UK government announces new laws to protect controversial historic monuments from 'woke worthies and baying mobs'(the Art Newspaper 2021/01/18)
 https://www.theartnewspaper.com/news/uk-government-says-it-will-protect-historic-monuments
129) Alice Procter, The Whole Picture: The colonial story of the art in our museums & why we need to talk about it, Cassell, 2020.
  Peeling Back the Hidden, Colonial Layers of Museum Objects(HYPERALLERGIC 2020/07/30)
 https://hyperallergic.com/577900/alice-procter-the-whole-picture/
  Book Review: “The Whole Picture: The Colonial Story of the Art in Our Museums & Why We Need to Talk About It” (2020) by Alice Procter(Center for art law 2021/08/04)
 https://itsartlaw.org/2021/08/04/book-review-the-whole-picture-the-colonial-story-of-the-art-in-our-museums-why-we-need-to-talk-about-it-2020-by-alice-procter/
130) Exeter will return the Sacred Crowfoot regalia to the Siksika Nation(DevonLive 2020/04/08)
 https://www.devonlive.com/news/devon-news/exeter-return-sacred-crowfoot-regalia-4029906
  Exeter to repatriate Blackfoot regalia to Siksika Nation(the Guardian 2020/04/14)
 https://www.theguardian.com/world/2020/apr/14/exeter-to-repatriate-blackfoot-regalia-to-siksika-nation
131) Dan Hicks, The Brutish Museums: The Benin Bronzes, Colonial Violence and Cultural Restitution, Pluto Press, 2020.
132) Dan Hicks, Necrography: Death-Writing in the Colonial Museum(British Art Studies, Issue 19 2021/02/26)
 https://www.britishartstudies.ac.uk/issues/issue-index/issue-19/death-writing-in-the-colonial-museums
133) France Returns to Senegal an 18th-Century Saber That It Looted During the Colonial Period (artnet news 2019/11/18)
 https://news.artnet.com/art-world/france-restitutes-senegal-saber-1707042
  France returns a historic sword to Senegal (the Art Newspaper 2019/11/18)
 https://www.theartnewspaper.com/news/france-returns-a-historic-sword-to-senegal
134) A Group of Principled French Art Dealers Teamed Up to Buy 27 Looted African Artifacts at Auction—So They Could Return Them to Benin (artnet news 2020/01/17)
 https://news.artnet.com/art-world/french-collective-returns-benin-heritage-1755405
  Objects Returned to Benin by French Collectors Had Been Removed From a Contested Auction (HYPERALLERGIC 2020/01/28)
 https://hyperallergic.com/538048/objects-returned-to-benin-by-french-collectors-had-been-removed-from-a-contested-auction/
  Why France is dragging its feet to repatriate looted African artworks (the Afirica Report 2020/02/06)
 https://www.theafricareport.com/23025/why-france-is-dragging-its-feet-to-repatriate-looted-african-artworks/
135) Adama Traoré: French anti-racism protests defy police ban(BBC 2020/06/03)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-52898262
  フランスでも4年前の黒人死亡めぐり抗議デモ 集会禁止に反し(BBC NEWS|JAPAN 2020/06/03)
 https://www.bbc.com/japanese/52901217
136) Assa Traoré and the Fight for Black Lives in France(the New Yorker 2020/06/18)
 https://www.newyorker.com/news/letter-from-europe/assa-traore-and-the-fight-for-black-lives-in-france
  Adama Traore: How George Floyd's death energised French protests(BBC 2021/05/19)
 https://www.bbc.com/news/world-us-canada-57176500
137) Anti-racism protesters in Martinique tear down statue of Napoleon's wife(RFI 2020/07/27)
 https://www.rfi.fr/en/france/20200727-france-colonial-era-statues-torn-down-french-island-martinique-empress-josephine-beauharnais-racism-slavery
138) France won’t ‘erase’ history by removing colonial-era statues, Macron says(France 24 2020/06/14)
 https://www.france24.com/en/20200614-macron-vows-that-france-won-t-take-down-statues-or-erase-history
139) De Gaulle statue vandalised in northern France(ArtDaily 2020/06/18)
 https://artdaily.com/news/124664/De-Gaulle-statue-vandalised-in-northern-France#.YW5G7hxUuf3
140) Paris statues of Voltaire and a colonial-era general splashed with red paint(France 24 2020/06/22)
 https://www.france24.com/en/20200622-protesters-daub-paris-statues-of-voltaire-french-colonial-era-general-in-red-paint
141) France Colbert row: Statue vandalised over slavery code(BBC 2020/06/24)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-53163714
  French parliament statue of ‘Black Code’ author defaced in anti-racism protest(France 24 2020/06/24)
 https://www.france24.com/en/20200624-french-parliament-statue-of-black-code-author-colbert-splashed-with-paint
142) Five Activists Were Arrested After Trying to Seize a 19th-Century Artifact From Paris’s Quai Branly Museum and Return It to Africa(artnet news 2020/06/15)
 https://news.artnet.com/art-world/quai-branly-african-artifact-activists-1886920
  Protestors seize African artefact from Paris's Quai Branly museum in bid to 'bring to Africa what was taken'(the Art Newspaper 2020/06/15)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/06/15/protestors-seize-african-artefact-from-pariss-quai-branly-museum-in-bid-to-bring-to-africa-what-was-taken
143) France’s Colonial Legacy Is Being Judged in Trial Over African Art(the New York Times 2020/09/30)
 https://www.nytimes.com/2020/09/30/arts/design/france-african-art-trial.html
  Activists Who Seized an African Statue From a Paris Museum Are Now on Trial. Their Argument: It Wasn’t Theft, It Was Political Protest(artnet news 2020/10/01)
 https://news.artnet.com/art-world/trial-france-colonial-1912070
  Trial of Quai Branly protestors in Paris centres on ‘political’ aspect of activist action(the Art Newspaper 2020/10/03)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/10/02/trial-of-quai-branly-protestors-in-paris-centres-on-political-aspect-of-activist-action
144) Three Activists Who Tried to Remove a 19th-Century African Artwork From the Quai Branly Museum in Paris Have Been Convicted(artnet news 2020/10/14)
 https://news.artnet.com/art-world/paris-congolese-activist-verdict-quai-branly-1915291
  Congolese activist fined €1,000 for trying to seize African funeral pole from Paris museum(the Art Newspaper 2020/10/15)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/10/14/congolese-activist-fined-euro1000-for-trying-to-seize-african-funeral-pole-from-paris-museum
145) A French Court Acquits Four Anti-Colonial Activists Who Removed a Spear From a Museum, Saying the Gesture Counts as Free Speech(artnet news 2020/11/19)
 https://news.artnet.com/art-world/marseille-mwazulu-diyabanza-1924953
146) Activists held for taking African statue from museum in colonialism protest(NL Times 2020/09/11)
 https://nltimes.nl/2020/09/11/activists-held-taking-african-statue-museum-colonialism-protest
147) Mwazulu Diyabanza, the Robin Hood of Restitution Activism, Has Been Fined for Removing a Congolese Funerary Statue From a Dutch Museum(artnet news 2021/01/12)
 https://news.artnet.com/art-world/mwazulu-diyabanza-netherlands-1936340
148) Restitution Activist Mwazulu Diyabanza Must Pay the Louvre €5,000 for Taking an Artwork From a Display Case(artnet news 2020/12/18)
 https://news.artnet.com/art-world/mwazulu-diyabanza-louvre-sentenced-1932638
  Congolese activist who tried to seize an artefact from the Louvre is fined €5,000(the Art Newspaper 2020/12/19)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/12/18/congolese-activist-who-tried-to-seize-an-artefact-from-the-louvre-is-fined-euro5000
149) The man snatching Africa's 'stolen' treasures from the museums of Europe(ABC 2021/09/09)
 https://www.abc.net.au/news/2021-09-09/mwazulu-diyabanza-taking-africa-looted-treasures-france-museums/100441386
150) Black Lives Matter movement is speeding up repatriation efforts, leading French art historian says(the Art Newspaper 2020/10/21)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/10/21/black-lives-matter-movement-is-speeding-up-repatriation-efforts-leading-french-art-historian-says
151) France returns skulls of Algerians who fought colonisation(ArtDaily 2020/07/05)
 https://artdaily.com/news/125172/France-returns-skulls-of-Algerians-who-fought-colonisation#.YXOPyxxUuf2
  The gruesome TRUTH Behind France’s Algerian Skulls(IlmFeed 2020/11/10)
 https://ilmfeed.com/the-gruesome-truth-behind-frances-algerian-skulls/
152) Macron rights a historical wrong in admitting French torture in Algeria(France 24 2018/09/14)
 https://www.france24.com/en/20180914-macron-maurice-audin-historical-wrong-french-torture-algeria
153) Report Aims at ‘Reconciling’ France and Algeria, Its Former Colony(the New York Times 2021/01/20)
 https://www.nytimes.com/2021/01/20/world/europe/france-algeria-war-report.html
154) In a Historic Move, France Has Taken a Major Step Towards Fully Restituting 27 Looted African Objects to Senegal and Benin(artnet news 2020/07/16)
 https://news.artnet.com/art-world/france-objects-benin-deaccession-1895202
  France takes first legal step towards restitutions to Benin and Senegal as cabinet examines new law(the Art Newspaper 2020/07/16)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/07/16/france-takes-first-legal-step-towards-restitutions-to-benin-and-senegal-as-cabinet-examines-new-law
155) After Years of Foot-Dragging, France’s National Assembly Just Approved the Restitution of Looted Artifacts to Benin and Senegal(artnet news 2020/10/07)
 https://news.artnet.com/art-world/french-lawmakers-passed-first-step-approving-law-return-looted-artifacts-benin-senegal-1913806
156) French Senate votes unanimously for restitution to Benin and Senegal in 'act of friendship and trust'(the Art Newspaper 2020/11/05)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/11/05/french-senate-votes-unanimously-for-restitution-to-benin-and-senegal-in-act-of-friendship-and-trust
157) France Has Approved the Return of 27 Artworks to Benin and Senegal, Signaling What May Be a New Era for Restitution(artnet news 2020/11/05)
 https://news.artnet.com/art-world/france-senate-restitution-africa-1921184
158) France returns to Madagascar a royal object kept in Paris(WORLD H24 2020/11/04)
 https://worldh24.com/blog/en/france-returns-to-madagascar-a-royal-object-kept-in-paris
  France gives Madagascar the crown adorning the canopy of Queen Ranavalona III(the Canadian 2020/11/05)
 https://thecanadian.news/2020/11/05/france-gives-madagascar-the-crown-adorning-the-canopy-of-queen-ranavalona-iii/
159) French Senate and government lock horns on restitution(the Art Newspaper 2020/12/17)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/12/17/french-senate-and-government-lock-horns-on-restitution
  France Pushed Through a Bill to Return 27 Looted Artifacts to Benin and Senegal After Senators Threatened to Derail the Plan(artnet news 2020/12/17)
 https://news.artnet.com/art-world/french-senate-restitution-bill-1932400
160) Anti-racism protests spread to Berlin and London(DW 2020/05/31)
 https://www.dw.com/en/anti-racism-protests-spread-to-berlin-and-london/a-53643710
  George Floyd killing spurs fresh protests across Europe(DW 2020/06/06)
 https://www.dw.com/en/george-floyd-killing-spurs-fresh-protests-across-europe/a-53706536
161) Racism on the rise in Germany(DW 2020/06/09)
 https://www.dw.com/en/racism-on-the-rise-in-germany/a-53735536
162) Germany's colonial era brought to light amid global protest(DW 2020/06/22)
 https://www.dw.com/en/germanys-colonial-era-brought-to-light-amid-global-protest/a-53898330
163) Controversial Lenin statue unveiled in Germany's Gelsenkirchen(DW 2020/06/20)
 https://www.dw.com/en/controversial-lenin-statue-unveiled-in-germanys-gelsenkirchen/a-53880002
164) Unveiled. Berlin and its Monuments(ZITADELLE
 https://www.zitadelle-berlin.de/en/museums/unveiled/
  Once taboo monuments now revived in Berlin(DW 2016/04/28)
 https://www.dw.com/en/once-taboo-monuments-now-revived-in-berlin/a-19222121
  What to Do with Toxic Monuments of Racist 'Icons'? Germany Offers Solution with Statue Museum(News18 2020/06/22)
 https://www.news18.com/news/buzz/what-to-do-with-toxic-monuments-of-racist-icons-germany-offers-solution-with-statue-museum-2681869.html
165) Granite head of Lenin unearthed for new Berlin exhibition(the Guardian 2015/09/10)
 https://www.theguardian.com/world/2015/sep/10/lenin-granite-head-berlin-exhibition-german
166) Digital Benin: a milestone on the long, slow journey to restitution(the Art Newspaper 2020/06/08)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/06/08/digital-benin-a-milestone-on-the-long-slow-journey-to-restitution
  Digital Benin(Museum am Rothenbaum Kulturen und Künste der Welt
 https://digital-benin.org/
167) Berlin returns tattooed Maori heads to New Zealand(the Art Newspaper 2020/09/02)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/09/02/berlin-returns-tattooed-maori-heads-to-new-zealand
  German museum returns mummified Maori heads to New Zealand(DW 2020/10/12)
 https://www.dw.com/en/german-museum-returns-mummified-maori-heads-to-new-zealand/a-55246975
168) Berlin museum to return Aboriginal remains(ArtDaily 2020/09/12)
 https://artdaily.com/news/128181/Berlin-museum-to-return-Aboriginal-remains-#.YYoJSrpUuf2
169) Germany to create central digital platform for museum objects acquired in colonial context(the Art Newspaper 2020/10/16)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/10/15/germany-to-create-central-digital-platform-for-museum-objects-acquired-in-colonial-context
170) German Museums Are Embarking on Long-Overdue Research Into Chinese Colonial-Era Objects as Part of a €1.1 Million Grant(artnet news 2020/10/22)
 https://news.artnet.com/art-world/german-lost-art-foundation-1917423
171) Hidden Networks: The Trade of Asian Art(the National Museum of Asian Art, Smithsonian
 https://asia.si.edu/research/scholarly-programs/hidden-networks/
  Smithsonian and Berlin museums join forces to investigate Asian art provenance(the Art Newspaper 2020/12/10)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/12/10/smithsonian-and-berlin-museums-join-forces-to-investigate-asian-art-provenance
172) Humboldt Forum: the empire strikes back?(the Art Newspaper 2020/12/14)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/12/14/humboldt-forum-the-empire-strikes-back
  In Germany, a new museum stirs up a colonial controversy(National Geographic 2020/12/17)
 https://www.nationalgeographic.com/history/article/germany-humboldt-forum-stirs-colonial-controversy
173) Man dies in custody after aggressive arrest(NL Times 2015/06/29)
 https://nltimes.nl/2015/06/29/man-dies-custody-aggressive-arrest
  Prosecutor: Aruban man was unwell before dying in custody(NL Times 2015/06/29)
 https://nltimes.nl/2015/06/29/prosecutor-aruban-man-unwell-dying-custody
174) Mass arrests in The Hague as clashes over death in police custody continue(the Guardian 2015/07/03)
 https://www.theguardian.com/world/2015/jul/03/the-hague-arrests-protest-death-police-custody-mitch-henriquez
175) Five years after Mitch Henriquez: ‘officers are still barely prosecuted’(Caribbean Network 2020/06/17)
 https://caribbeannetwork.ntr.nl/2020/06/17/five-years-after-mitch-henriquez-officers-are-still-barely-prosecuted/
176) Netherlands, we need to talk about racism (and not just about Zwarte Piet)(DutchReview 2020/06/04)
 https://dutchreview.com/culture/netherlands-we-need-to-talk-about-racism-and-not-just-about-zwarte-piet/
177) Why Black Pete matters: Institutional racism and police violence in the Netherlands(Center for Research on Extremism, University of Oslo 2020/06/15)
 https://www.sv.uio.no/c-rex/english/news-and-events/right-now/2020/why-black-pete-matters.html
  In a year of Black Lives Matter protests, Dutch wrestle (again) with the tradition of Black Pete(the Conversation 2020/12/04)
 https://theconversation.com/in-a-year-of-black-lives-matter-protests-dutch-wrestle-again-with-the-tradition-of-black-pete-150592
178) Why Is the Dutch Royal Family’s Golden Carriage So Controversial?(Smithsonian Magazine 2020/09/14)
 https://www.smithsonianmag.com/smart-news/netherlands-retire-carriage-dutch-golden-coach-180975791/
  Colonial-Era Royal Carriage Stirs Up Modern Backlash in Netherlands(the New York Times 2021/09/06)
 https://www.nytimes.com/2021/09/06/world/europe/netherlands-golden-coach-colonialism.html
179) The Netherlands marks anniversary of abolition of slavery(ABC News 2020/07/02)
 https://abcnews.go.com/International/wireStory/netherlands-marks-anniversary-abolition-slavery-71553529?cid=social_twitter_abcn
180) Amsterdam mayor apologises for city's role in slave trade(BBC 2021/07/01)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-57680209
181) Wounds of Dutch history expose deep racial divide(BBC 2020/07/13)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-53261944
182) Decolonising museums: the new network opening up the diversity debate in the Netherlands(the Art Newspaper 2020/07/06)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/07/06/decolonising-museums-the-new-network-opening-up-the-diversity-debate-in-the-netherlands
183) End of Golden Age: Dutch museum bans term from exhibits(the Guardian 2019/09/13)
 https://www.theguardian.com/world/2019/sep/13/end-of-golden-age-amsterdam-museum-bans-term-from-exhibits
184) Dutch Golden Age Art Wasn’t All About White People. Here’s the Proof.(the New York Times 2020/03/13)
 https://www.nytimes.com/2020/03/13/arts/design/black-portraits-dutch-golden-age.html
185) For the First Time in Its History, the Netherlands Is Returning a Trove of Artifacts to Its Former Colonial Territory of Indonesia (artnet news 2020/01/20)
 https://news.artnet.com/art-world/netherlands-returns-indonesia-artifacts-1748376
186) Prince's dagger returned to Indonesia after 45 years lost in Dutch archive(the Guardian 2020/03/05)
 https://www.theguardian.com/world/2020/mar/05/princes-dagger-returned-to-indonesia-after-45-years-lost-in-dutch-archive
187) Summary of report Advisory Committee on the National Policy Framework for Colonial Collections(RAAD VOOR CULTUUR 2020/10/07)
 https://www.raadvoorcultuur.nl/english/documenten/adviezen/2020/10/07/summary-of-report-advisory-committee-on-the-national-policy-framework-for-colonial-collections
  Colonial Collection and a Recognition of Injustice(英語版)
 https://www.raadvoorcultuur.nl/binaries/raadvoorcultuur/documenten/adviezen/2021/01/22/colonial-collection-and-a-recognition-of-injustice/Colonial+Collection+a+Recognition+of+Injustice.pdf
  Advies Koloniale Collecties en Erkenning van Onrecht(蘭語版)
 https://www.raadvoorcultuur.nl/binaries/raadvoorcultuur/documenten/adviezen/2020/10/07/advies-koloniale-collecties-en-erkenning-van-onrecht/Advies+Koloniale+Collecties+en+Erkenning+van+Onrecht.pdf
  Return stolen colonial art, Dutch Council for Culture tells minister(DutchNews.nl 2020/10/07)
 https://www.dutchnews.nl/news/2020/10/165187/
  Dutch government committee recommends return of colonial-era artefacts(the Art Newspaper 2020/10/09)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/10/09/dutch-government-committee-recommends-return-of-colonial-era-artefacts
188) Dutch museums vow to return art looted by colonialists(the Guardian 2020/10/08)
 https://www.theguardian.com/world/2020/oct/08/dutch-museums-vow-to-return-art-looted-by-colonialists
  Museums agree to return of stolen art, up to the government to decide(DutchNews.nl 2020/10/08)
 https://www.dutchnews.nl/news/2020/10/museums-agree-to-return-of-stolen-art-up-to-the-government-to-decide/
189) Government: Redressing an injustice by returning cultural heritage objects to their country of origin(Government.nl 2021/01/29)
 https://www.government.nl/ministries/ministry-of-education-culture-and-science/news/2021/01/29/government-redressing-an-injustice-by-returning-cultural-heritage-objects-to-their-country-of-origin
190) Return Looted Art to Former Colonies, Dutch Committee Tells Government(the New York Times 2020/10/09)
 https://www.nytimes.com/2020/10/09/arts/design/dutch-restitution-report.html
  Returning colonial-era artefacts is not as easy as it seems, say experts(DutchNews.nl 2021/03/29)
 https://www.dutchnews.nl/features/2021/03/returning-colonial-era-artefacts-is-not-as-easy-as-it-seems/
191) 10,000 Black Lives Matters protesters take to streets of Brussels(Euronews 2020/06/09)
 https://www.euronews.com/2020/06/08/10-000-black-lives-matters-protesters-take-to-streets-of-brussels
192) UN: Belgium must apologize for colonialism, face its racism(AP NEWS 2019/02/12)
 https://apnews.com/article/belgium-race-and-ethnicity-africa-discrimination-international-news-ce9234aaabbd4fd5ac1aff4148cfac32
  Statement to the media by the United Nations Working Group of Experts on People of African Descent, on the conclusion of its official visit to Belgium, 4-11 February 2019(UN Human Rights 2019/02/11)
 https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=24153&LangID=E
  Visit to Belgium : report of the Working Group of Experts on People of African Descent(United Nations Digital Library 2019/08/14)
 https://digitallibrary.un.org/record/3849772
193) Campaign launched by teenager to remove statues of Congo coloniser Leopold II gains pace in Belgium(the Art Newspaper 2020/06/09)
 https://www.theartnewspaper.com/2020/06/09/campaign-launched-by-teenager-to-remove-statues-of-congo-coloniser-leopold-ii-gains-pace-in-belgium
  Leopold II: Belgium 'wakes up' to its bloody colonial past(BBC 2020/06/13)
 https://www.bbc.com/news/world-europe-53017188
194) List of statues of Leopold II of Belgium(WIKIPEDIA
 https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_statues_of_Leopold_II_of_Belgium
195) Black Lives Matter in Belgium (June-July 2020)(Rosa-Luxemburg-Stiftung Brussels 2020/10/06)
 https://www.rosalux.eu/en/article/1796.black-lives-matter-in-belgium-june-july-2020.html
196) Belgium wants to confront its colonial past(JusticeInfo.net 2020/07/02)
 https://www.justiceinfo.net/en/44764-belgium-wants-to-confront-its-colonial-past.html
197) Belgian king expresses 'deepest regrets' for brutal colonial rule(the Guardian 2020/06/30)
 https://www.theguardian.com/world/2020/jun/30/belgian-king-philippe-expresses-profound-regrets-for-brutal-colonial-rule
  Belgium’s King Sends Letter of Regret Over Colonial Past in Congo(the New York Times 2020/06/30)
 https://www.nytimes.com/2020/06/30/world/europe/belgium-king-congo.html
198) Black Lives Matter protesters in Belgium want statues of colonialist King Léopold II to come down(the Washington Post 2020/06/09)
 https://www.washingtonpost.com/world/europe/black-lives-matter-protests-king-leopold-statues/2020/06/09/042039f6-a9c5-11ea-9063-e69bd6520940_story.html
199) Restitution policy of the Royal Museum for Central Africa(the Royal Museum for Central Africa 2020/01/31)
 https://www.africamuseum.be/en/about_us/restitution
200) Belgium must return tooth of murdered Congolese leader, judge rules(the Guardian 2020/09/10)
 https://www.theguardian.com/world/2020/sep/10/judge-orders-return-of-tooth-said-to-be-from-assassinated-congolese-icon
201) King Philippe asked to return the remains of Congo’s murdered PM(the Brussels Times 2020/07/23)
 https://www.brusselstimes.com/news/belgium-all-news/122911/king-philippe-asked-to-return-the-remains-of-congos-murdered-pm
202) Looted Art Must Return to Congo, but How?(the low countrie 2021/09/01)
 https://the-low-countries.com/article/looted-art-must-return-to-congo-but-how
203) HOME: a research project on human remains in Belgian collections(the Royal Museum for Central Africa
 https://www.africamuseum.be/en/research/discover/news/home1