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まえがき
'98国際ウエルディングショーが、4月8日から11日までの4日間にわたり東京ビッグサイトで開催されました。
ウェルディングとはwelding=溶接の意。溶接は産業用ロボットの利用目的の最たるもので、ロボット導入による溶接工程の自動化が日本の自動車産業を支えているといっても過言ではありません。特にロボット王国日本で行われる最新溶接技術展示のため、多くの産業用ロボットも展示されるのです。
わたしは2年前の96年にインテックス大阪で開催された国際ウェルディングショウも視察しています。今回の視察は4/11土曜日、日帰りで上京しました。
溶接技術の一大ショウということで、出展された内容は、溶接機、溶接作業仕様の産業用ロボット、溶接教示システム、溶接用の材料(フラックスなど)や、溶接面や安全服などの防護グッズなど多岐にわたりました。客層としては、各社の生産技術部門や中小企業のの生産技術、溶接技術者も多かったように思います。今回は、職場上司より招待状をいただいて東京へと向かったわけです。
このページでは、私が各ブースをまわって得た溶接ロボットほかの情報を、個人的な見解(偏見ともいう)を加えて紹介しようと思います。主に展示会を見に行けなかった人たちを対象として。
逐次更新していきます。なかなか完成しませんがお待ちください。
それまではこのリンク集で勘弁してください。
今回のショウでの溶接ロボットのキーワードは、治具レス溶接、協調動作、デジタル溶接制御、簡易ティーチング(ダイレクトティーチ、レーザーセンサ、自動経路生成、溶接条件データベース)、ネットワーク管理です。
- 松下電機産業/松下産業機器
ボリュームの大きいブースのひとつでした。6軸パナキングVRシリーズを出展。
加工対象を固定する専用のテーブルや固定具を治具といいます。
ここで2台のロボット+ポジショナー(回転テーブルのようなもの)を協調動作させることによって、不要とする治具レス協調動作を行っていました。
※後述しますが同じような制御方式を、他のロボットメーカーも打ち出しています。内部的な処理方法はことなるでしょうが。
目をひいたのは溶接機の制御方式で、溶接電源のパルス制御を行うことで、スパッタ(火の粉の飛びなど)を抑え、薄肉アルミなどの溶接面を美しく加工する=溶接条件をよくする、といった技術です。これをロボットと組み合わせることで、ばらつきのないよりよい溶接条件が得られるのでしょうね。
今回はソフトメーカーの出展がほとんどなかったのですが、溶接経路条件自動生成システム(3D-GUI OpenGL使用)であるVirtue(Visual Robot teaching for users)が出展されています。そのとなりではワイヤーフレームロボットシミュレータDTPSの展示も。
- 安川電機
MOTOMANシリーズが有名。今回はロボットシミュレータRotsyは出展されていませんでした。
このブースで注目されたのは、MOTOMANの新型ロボットコントローラYASNAC XRCシリーズ。容積比1/4と非常に小さく、ティーチングペンダント、制御盤ともに今までとは別物、という感じです。特にペンダントは、人間工学を意識したボタン配列を採用し、ゲームコントローラよろしく十字コントローラも付いている。液晶は大きくなり、さらにWindowsライクなプルダウンメニューを用いることで、キーの数を減らし「連想」で操作できるように一新されています。(いままでのユーザーにとっては使いにくいものでしょうが) もちろんサイズだけでなく32bit RISC CPUを採用することで、多軸協調制御や振動抑制など、制御面で大幅にパワーアップしたそうです。
イージーティーチングという、わたしの大学時代の研究テーマ「ダイレクトティーチ」を実用のものとして出展していました。これはロボット手先に6軸力覚センサを取付け、それを人間がつかんで力を加える。すると位置教示を行おうとする力情報にあわせて、ロボットが追従してくれるというもの。素人なら教示時間を1/10に。
溶接トーチの姿勢回転や微細動作も容易に行えるようです。
右手でロボット手先のグリップをつかみ、左手に小型のコントローラ(緊急停止と教示の指示)を持って作業します。また横に置いた液晶ディスプレイに教示編集画面が現れてわかりやすい、素人でも動作編集を容易にしたのが売り。ただ教示の誤差は大きそう、ファイナルの修正が必要か(個人的な見解)。
さてこの液晶ディスプレイは、実はそれ自体がパソコンで、編集ソフトがインストールしてある。つまり制御盤とパソコンの通信によって編集しています。
- ファナック
黄色のロボット、稲葉清右衛門会長が有名。
前回のロボットショウ、前回のウェルディングショウに比べたら、あっさりしていたような気がします。
おおきなスポット溶接ガンを付けて振り回していました。
パラレルリンク機構の溶接ロボットF-100iをみたの初めてでした。
- 不二越/NACHI
オレンジ色のNACHIロボットが印象的。
ダイヘンと共同開発のNACHI専用溶接電源 ARCMASTERを使用した溶接デモ。
目新しいところといえば、ワイヤーフレームロボットシミュレータ適用検太くんによるデモンストレーションのほかに、うしろのパソコンでソリッドポリゴン描画で複数台の動作デモを行っていました。
追調査によると、実際にネットワーク接続された4台のロボットから1秒間に一回ずつ送信されるロボットの各軸の角度をリアルタイムで表示していたビューワー「適用検太Viewer98」が出展されていたようです。
そのときは描画スピードは遅いと思ったのは、秒間1回のモニタリングのため。
さらにDirect3D使用だったそうです。
(わたしは、世界初のDirect3DロボットシミュレータとしてPUMANを発表しましたが、ようやくDirect3Dの実用性、有効性が認められつつあるのを感じました)
あとイーサネット接続されたロボットの協調動作をさせていたよう。カラー液晶のティーチングペンダントの画面はカスタマイズできるらしい。
- 三井造船
CimStationを出展。工場レイアウトのモデリングから、生産管理シミュレーション、シーケンサープログラムの実行など、バーチャルファクトリ実現を狙っています。UNIXライクなインターフェースでした。
- 川崎重工
溶接トーチ先にレーザーセンサを使用することで、溶接部を自動検出。
他メーカーにくらべて、人間で言う前腕が短いが、その分ブレが小さく加工精度が良さそう。
治具レス協調動作、新型Cコントローラ、大画面液晶のペンダントなど。
- ダイヘン
アルメガシリーズが有名。アーク溶接ロボットとプラズマ/レーザー切断機の出展がありました。
ダイヘンオフラインティーチングという溶接教示シミュレータの出展はなし。あと複数ロボットの協調動作システムがありました。
面白いのは、複数異品種の溶接ロボットをネットワーク接続して、これらの溶接条件の変化を集中管理のパソコンにネットワーク接続を利用してフィードバックし、一元管理するというシステム。
ダイヘンはレーザーセンサでなく、3Dセンサとして自動溶接教示を行っていました。
- KOKUHO
高所作業や造船など大型ブロックの溶接に最適な、伸縮型クレーン+溶接機の組み合わせ「ノビトール」- KOMATU
- KOBELCO
- DAIDEN
- ジャパンテクノメイト
自走式の台車に溶接機をとりつけたカブ虎。地面に置いた溶接材料にそって自走しつつ溶接を行う。- 日立エンジニアリングシステム
- 山本光学
アーク溶接時の火花など、強い光を感知した瞬間1mm秒で、溶接面のレンズ部が遮光する液晶溶接面。- 日本酸素
- ラインワークス
「スケット」という超大型5軸ポジショナーがすごい。可搬重量は1tから3t。
出展の参考例では、下部の3軸ポジショナーに加工対象を、上部の2軸ポジショナーに産業用ロボットを天吊りで設置。双方を積極的に動かすことで、あらゆる溶接姿勢を可能にする。