道成寺説話は、道成寺芸能と結びつく事によって今日まで多くの人々に親しまれる事となった。 歌舞伎『京鹿子娘道成寺』しかり、能『道成寺』しかり。 しかし、これらの道成寺芸能そのものについては、この論考では言及していない。 この論考の主幹は、道成寺芸能の素材となった道成寺説話に着目し、その伝承における変化、 第一伝説の錘巻譚と第二伝説の鐘供養譚の論考と、その変化をもたらした精神史の解明にある。 太古からの伝承者の精神的基盤を洞察し、将来世界の舞台芸術の発展のために 日本からの提言を成し得るような、一つの芸術の精神を探究する一過程なのである。 この論考は、多くの先人の足跡の上に成立している。 筆者はただこの論考によって先人の業績を知り、自らの力の遠く及ばぬことを学んだのみである。 更にまた、この論考の研究段階において、実に種々な多くの問題が提起されて来るにもかかわらず、 筆者がその問題を提示するのみで、現段階では何ら論述する基礎も力も持ち得ていなかったため、 この論考に概説と冠せざるを得なかった。 芸能の価値の変容も含めてこの論考によって、大まかな伝承者の精神史をシュミレーションしているために、 多くの論考に我田引水の観があることを予想する。 しかし、今日以後多くの問題が残されていることを知り、また自らの学ぶべき方法の糸口を把握したことは、 何よりの収穫であった。 加えて、ご指導下さった目代師に御礼申しあげ、この研究の為に多くのご助言を賜わった 今尾師、法月氏、更に協力して下さった白波瀬君に この場を借りて感謝します。 昭和51年2月4日 大谷 潔 |
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