B キャスティング







 B-1 キャスティング


 重さの無い毛鉤を目的の所迄持って行き、魚が釣れるように流す為の技術。

フライロッド、フライライン、リーダー、ティペット、これらを使って目的の所へフライを持って行き、思い通りにコントロールし魚を釣る。この一連の動作がキャスティングです。

キャスティングはフライフィッシングの中でも、とても象徴的で奥深く、重要なものだと思います。

 どんなにタイイングが上手かったり、フィールドの情報を多く知っていても、キャスティングが上手く行かないと、魚を釣る事が難しくなります。

キャスティングは技術だと考えています。この技術を身に付けるには、ある程度の時間と覚悟が必要になります。

単に毛鉤が何メートルか飛んで魚が釣れても、キャスティングとは言えません。

形だけ真似たり、力任せに飛ばしたりで、ある程度は前に飛んで行きますが、きちんとしたキャスティングを身に付ける事をお勧めします。

そして技術を覚えるには順序があります。ひとつの技術の始めから終わりまでを、順番に通して身に付ける事で初めて、モノになってきます。

いろいろな情報をバラバラに取り入れたり、聞いたりするとかえって混乱し、なかなか身に付かなくなります。

しかし全てを自分でやるのも間違いではありません、この辺もしっかり選択してください。


 ここまで言っておいて申し訳ありませんが、この紙面上ではキャスティングを伝える事は難しく、伝えられません。

有料のキャスティングスクールや、キャスティングをきちんと伝えられる人から教えてもらうのが良いと思います。

フライフィッシングを始めて出来るだけ早い時期に、ある程度の費用と覚悟を持って、キャスティングを身に付ける事は、長い目で見ると、とても意味のある事だと思います。

芝生の上でのキャスティングだけでも十分に面白いし、たぶん一生かかってもやり切れないものがあると思います。

フライフィッシングという趣味に巡り会い、その中のキャスティングという、とてもフライフィッシングらしい事が表現出来ないとしたら、とてももったいない事だと思います。


 ワンポイント

ここで対象にしてるフィールドと魚を考えると、使用するロッドは#3〜#5程度になりますが、キャスティングを身に付ける時に使用するロッドは#7〜#9程度になります。

キャスティングを身に付けるという事は、キャスティングでどこの筋肉を使うかを、体が覚える事です、その時低番手のロッドでは体が覚えにくくなる為です。

 キャスティングでフライラインにループを作る動きは、野球でボウルを投げたり、ゴルフのスイングで使う筋肉とは違う所を使う事になります。

今までやった事のない動きを、使った事のない筋肉を使い、新しい動きの運動をする事になります。その為、筋肉が覚えるには反復運動が必要になります。

頭でキャスティングを覚えるのではなく、身体がキャスティングを覚える事が重要になります。

 初めて#7〜#9位のロッドを使うと、とても硬い棒切れのように感じると思います。

しかしキャスティングが身に付くと、ほとんど力を使わず、その棒切れのように硬く感じてたロッドで、30ヤードのラインを出す事が出来てきます。

そしてもっと硬い方が良いのではないかと、感じるようになって行くと思います。












 B-2 タックルとラインシステム


ロッド(釣り竿)

 フライロッドは、ここで対象にしてるフィールドや魚を考えると、概ね#3〜#5位迄の番手が想定されます。

シングルハンドのロッドでは#1〜#10位迄が有ります。たとえば#3のフライロッドには#3のフライラインを使うのが一般的です。

フライラインにも#1〜#10等の、重さを基準にした表示があります。

フライラインの数字が少ない方が軽くなります。フライロッドの番手はこのフライラインの番手(重さ)に概ね合わせるように設定されています。


 このフライロッドやフライラインの番手を決める手掛かりは、使うフライのサイズとそれに合わせたティペット(一番先端のフライを結ぶ所の糸)のサイズ(太さ)、それと魚の大きさ等を総合的に考え決めて行きます。

ここでの対象の魚はヤマメ、イワナ、ニジマス、等になり、使うフライのサイズ(鈎の大きさ)は#26〜#10(数字が小さい方がサイズが小さくなります、詳しくはタイイングの所で説明してあります)位に設定すると、使うティペットのサイズは6X、7X、8X、位になります。

日本の釣り糸のサイズで言うと6Xが0,6号、7Xが0,4号、8Xが0,2号程度になります。

するとこの太さのティペットに合うロッドの番手が、概ね#3〜#5位の番手になります。

 ロッドの長さは7フィートから9フィート位があります。また一番大切なアクション(フライラインの重さでフライロッドが曲がる程度の割合がアクション)は感覚的で解りにくい所があります。

これはいろいろなロッドに触れて、慣れて行くほかありません。

始めは基本的なアクションのもの、硬すぎず軟らかすぎないモノを選ぶと良いと思います。

 よく聞く間違えで、高番手のロッドの方がより遠くへ飛ばせるという事を聞きますが、どれだけ遠くへ飛ばせるかは、ロッドの番手ではなくキャスティングの技術の方が重要です。

より遠くへ飛ばしたいときは、高番手のロッドや新しいタックルを選択するのではなく、キャスティングの技術をより高める事が必要です。


 フライライン

 フライラインには多くの種類がありますが、この案内で想定してる番手を中心に説明して行きます。

重さ(番手)による種類。形による種類。フライラインは均一の太さではありません、先端部分にテーパーが付いています。このテーパの意味は、フライロッドからの力をフライラインに伝え、ループを作りますが、この力をスムースに伝える為にテーパーが付いています。

その形により両端にテーパーが付いてるでDT(ダブルテーパー)。より重い部分を前方に集中させたWF(ウエイトフォワード)等、ほかにも多くのタイプがあります。

また浮かせて使うフローティングライン、沈ませて使うシンキングライン等性能の違いもあります。

ここで対象にしてる、フィールドや魚を元にして考えると、DT(ダブルテーパー)のタイプが使いやすいと思います。

フライラインの長さはタイプや種類により違いがありますが、30ヤード(27、42m)前後あります。

ここで案内してる釣りの状況や釣り場の規模を考えると、実際の釣りで使う長さは3メートルから15メートル(ロッドの先端からフライまでの長さ)程度になると考えます。

するとフライラインの半分程度となります。フライラインは消耗品でもあり時間が経つと交換する必要があります、そのときダブルテーパーは前後を入れ替えて使うことが出来、1本で2回使えることになります


 商品の表示例 フライラインのパッケージに表示されてる例

  DT4F ダブルテーパー 4番 フローティングライン(浮くライン)

  WF6S ウェイトフォワード 6番 シンキングライン(沈むライン)等



 リーダーとティペット

フライラインの先に結んで使う、先端に向かって細くなる、テーパーの付いた透明なラインがリーダー。長さや太さで種類が多くありますが、何を基準に選んで行くかは先端の太さで選んで行きます。太さは6X、7X、8X位で長さは9ftから12ft程度が始めは良いと思います。

実際に使う時はリーダーの先端部、太さの基準になってるティペット部を切ってティペット(テーパーの付いてない一般的な糸)を結んで使います。

リーダーの先端を別のティペットに交換する訳。

リーダーの先端部分よりティペットとして売られてる糸(一般的な日本の号数で売られてる糸でも問題なく使える)の方が強度がある為と、ティペットは消耗品で、1日に何回か交換する必要があります。その為始めからその部分を交換しておくと言うのが、一般的になっています。

使用例。

#18〜#16サイズのドライフライを使い20センチから30センチ程度の魚を対象にしたとき。 9ft7Xのリーダーで先端のティペット部をカットして、同じ長さの7Xのティペットを結んで使う。


リーダーの表示例 9ft7X   12ft6X 等

ティペットの表示例 6X(日本の号数では0、6号)7X(0、4号)8X(0、3号)

X表示は、数字が大きくなると細くなり、日本の号数は数字が大きくなると太くなる。


自分の釣りが変化して行くと必然的に必要なものも変化して行きます、自分に合った道具やモノを探したり作って行くのもフライフィッシングの楽しみです。



ロッドとラインシステムの組み合わせの例を挙げてみます。

 ロッド 基本的なアクションの#4。長さは8フィートから8フィート半程度

 フライライン DT(ダブルテーパー)の#4で浮くフローティングライン

   (商品の表示は DT4F になります)

 リーダー 長さ9フィートから12フィート 太さ(先端の太さ)6Xか7X

 ティペット 太さ6Xか7X  リーダーの先端、ティペット部分をカットして同じ長さのティペットを結ぶ


あくまでも参考の組み合わせです。自分にあったシステムを探してください。

またタックルやラインシステムはキャスティングと密接に関係していて、キャスティングの技術が優先されます。


 フライロッドの所で説明した、ロッドの番手を決めるには、使うフライのサイズとティペットの太さ、対象の魚の大きさ等から、決まってくると説明しました。

このように元になってる意味を、きちんと捉えておくと不安や迷いが少なくなります。



 ワンポイント

 よく聞く間違えの事例をひとつ見てみます。

一般的に渓流でドライフライを使うときは、ロングリーダー(12ft以上の)ロングティペット(60センチ以上の)を使い、ナチュラルドリフト(フライがティペットやリーダー、フライラインに引かれることなく自然に流れること)で釣る。と言うことが一般的と言われていますが、何の為のナチュラルドリフトなのかを明確にしておく必要があります。

ライズを釣る時やポイントを正確に狙って行く様な時は、フライを狙った所に正確に持って行くことの方が、優先順位は高くなります。もちろん両方上手く行くことに越したことはありません。

つまりどのような釣りをするのかの組立てが先にあり、その組立てや自分の技術に合ったラインシステムやバランスタックルを選択する必要があります。

まずは自分の技術で、目的の所までフライを持って行ける、タックルとリーダー、ティペットの長さにすることが肝心です。

目的の所へ届いてないフライを、ナチュラルに流しても意味はありません。

まず目的の所へフライを持って行き様子を見てみる。ドラッグ(リーダーやフライラインに引かれ不自然にフライが動くこと)がかかってしまうようであれば、立つ位置を変えてみる、出来ることであれば近づいてみる等出来ることをやってみましょう。

何より釣れる時は最初のキャストで、着水と同時にヒットしてくることが多くあります。

けして、渓流イコール、ロングリーダー、ロングティペットでナチュラルドリフトではありません。

実際にカゲロウ等が流下しているときも、動かないで静かに流下してるときは食べられず、動いた瞬間に食べられてしまうことが多く有ります。水性昆虫や陸生昆虫も生き物ですから動きが有ります。

その動きを演出することも時には重要です。フィールドで起きてることの中に全てのヒントが有ります。

そしてもっと重要なことがキャスティングの技術です。ラインシステムやタックルが目的を果たしてくれるものではなく、それらを使いこなす技術がないと意味がありません。キャスティングの基礎を身に付けることをお勧めします。



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 始めに                   


 A 釣場での基本               


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 E ルールとマナー