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廣瀬喜一の卓袱台
Folding CHABU-DAI-Table
by Kiichi Hirose
簡素だが融通のきくこのうえなしの円卓。
江戸指物の伝統を受け継ぐ作り手に狂いはない。

片付け、移動は自由自在に
 広くもない空間に、食卓、居間、寝室などを孤立させたばかりに、日本人の生活は非常に窮屈なものになった。
  同じような広さでも、本来、日本の住まいはもっと広々としていた、一つの和室が、布団を敷けば船室。座卓と座布団を置けば客間。文机を据えれば書斎。そこに卓袱台をだせば、たちまち一家だんらんの食堂だった。
  頭のカタイ人間を「融通のきかない奴」という。融通がきくか、きかないかで暮らしのグレードも楽しさも大きく違ってくる。「融通をきかせる」という日本人特有の知恵をもっとよく現している道具が卓袱台である。
  卓袱台は一見変据もない円形の座卓だが、実によくできている。円形だから何人でも座る人数の融通がきく。正面もウラもないから座る全員が平等である。向かい合って対決する感じがないから、自然に気楽な水入らずの団らんの場になる。
  卓袱台の最大の特徴は、円形の天板と折り畳み式の四脚という構造そのものにある。天板の裏側に幕板を取り付け、そこに畳んだ四脚を収納するのだが、跳板と称する可動式にストッパーがついているのがミソである。たかが90度回転するだけの二枚の板でしかないが、跳板の妙案で脚の出し入れが簡単なうえに、脚がぐらぐらしない。
ダイニングキッチンの狭苦しさを見直す
  昔から、「さぁご飯にしますよ」という母親の声で卓袱台をセットするのは子供の役目と決まっていた。脚を畳めばどこへでも転がしていけるのが円形のよさである。これなら子供にもできる。用のないときは片付けておき、必要に応じて食卓にもすれば、子供お遊び台にも勉強机にもする。
 この融通性が卓袱台のすばらしさである。いまは常識になってりうダイニングキッチンの狭苦しさを改めて見直すときである。都市計画や住宅設計の世界でも従来の欧米型デザイン一辺倒を反省し、日本の風土と生活にあった伝統的発想を再確認する必要がある....と前置きして、「やっぱり日本人は畳みに卓袱台。単なる郷愁ではなく合理性が抜群だからね」と、卓袱台礼讃を惜しまないのは建築設計コンサルタント・黛卓郎だ。
 卓袱台は江戸時代に庶民の食卓として考案されたので、風変わりな名称は長崎名物の卓袱料理に由来する。戦前まではどこの家にもあったが、戦後、「正座文化」から「腰掛け文化」に生活様式が一変すると、あっという間に姿を消した。いまや貴重な骨董品....とあきらめていたら、どっこい、まだ東京の下町に頑固な卓袱台職人が一人、健在だった。
 廣瀬喜一。昭和三年生まれ。十三歳から職人見習いとして修行を始め、江戸名物の伝統を受け継ぐ和風民芸家具の技術を幅広く体得した。「教科書を暗記するいまどきの勉強とは違うからな。全部、体が覚えている。指先が眼になっているから目をつぶっていてもできる」という。
 親方の許しを得て独立し、宮城木工所を創業したのは昭和二十六年。宮城は創業地の町名である。若い職人一人を助手に>桐箪笥も作れば欅の飾り戸棚も作るが、いま一番愛着をこめて作っているのは昔ながらの卓袱台だ。
 卓袱台にはもっぱら栓の木を使う。ウコギ科ハリギリ属の高さが二十五メートルにもなる樹で、幹や枝に長く鋭い針が密着し、学名は針桐。昔はこの原木を製材するところから全部手仕事でやっていたから、一日に一台もできなかったそうである。しかし、いまでも要所々々相変わらず手素仕事。
  幅はぎ天板は木理>をいかに自然にそろえるかがポイントになる。塗装はするが木理を塗りつぶすことはしないからである。だから。廣瀬喜一はそれほど売れもしない卓袱台のために、いい栓材があると貪欲に買い込む。木工所の材木の山だ。なかにはすごい欅材もある。
 「本当はこの欅で作りたいが卓袱台は安くなけりゃいかんからな・・・」と、老職人はつぶやいた。
素材は栓の木、まず脚になる角材に木型を当てて線引きし、
ベルトサンダーで成形した後、手鉋で仕上げる
反台、南京鉋など特殊な道具が主役だ。
道具はすべて自作のものを使う
卓袱台の脚を折りたたんで納める部分を幕板という。幕板の四辺をほぞ組にして止め、そこへ跳板(折り畳み式の脚のストッパー)を取り付ける
幕板に跳板を取り付け、4本の脚をはめこんで一度仮止めし、実際に脚を畳んで見て細かい調整をする。それから改めて解体し、各部を塗装する
天板の木口は順目逆目を確かめながら小さな鉋で削り上げた後、サンドペーパーで入念に磨く。




写真上・天板と幕板を接合し、







写真下・木槌で叩いて締め、3〜4時間プレスにかけて圧縮する


写真上・卓袱台は円形の天板、天板の裏側に取り付けられた2脚1組の折畳式の脚、脚を収納する幕板、脚を固定させる2枚の跳板から成り立っている。








写真中・脚を1組ずつ起こす








写真下・跳板を1枚ずつ起こして脚がぐらつかなくなるまで強く固定させる。跳板はキュッと強くしまるまで固定させるのが長持ちさせるコツ。
起こし方がゆるく不完全のまま使うと足や跳板の痛みが早くなる。


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