能・高野物狂について

常陸国の住人である高師四郎は主君である平松殿が亡くなった後、主君の嫡子春満を撫育していました。主君の1周忌にあたる日、菩提寺に詣でている四郎の前に下人より手紙が届きます。手紙は春満の置手紙であり、そこには両親の成仏のため出家すると記されていました。途方に暮れる四郎は行く宛もなく春満の行き先を求め旅立ちます。
<中入り>
場所は変わり、紀州高野山。高野山の僧は師弟の契約をした春満を伴って三鈷の松へやってきます。一方高師四郎は若君の文をはさんだ竹を肩にかけ、物狂いの姿で春満を求め彷徨います。いくつもの山川を越え四郎も高野山へやってきます。そして三鈷の松の下で暫し憩います。春満は四郎と再会しますが自らは名乗ることはせず、僧に声を掛けさせます。僧は四郎に入山を咎めると四郎は弘法大師の例を引いて僧と問答をし高野山の縁起を語ります。更に高揚した四郎はここ高野の内では歌舞禁制であることをも忘れ舞い進めていきます。舞い狂う狂態に自ら気づいた四郎は許しを請います。
それを見ていた春満は自ら名乗り正体を明かします。春満に再会を果たした四郎は平松の家を継ぐべき事を説き、共に下山し故郷へ帰っていきます。