大江能楽堂へようこそ

能・通小町について

ある僧(ワキ)が八瀬の里で夏籠りをしていると、毎日木の実や薪を持って来る女人(ツレ)がいます。今日もまた女がやって来たので、僧は数々の木の実の話を聞きます。僧の求めに応じて木の実語りをした女は、更に名を尋ねられたので

 『小野とは言はじ。薄生いたる市原野辺に住む姥ぞ』 

と、小町であることをほのめかし、僧に回向を乞うて消え失せます。 

『秋風の 吹くにつけても あなめあなめ 

小野とは言はじ 薄生いけり』

という小町の歌を思い出した僧は、先ほどの女人が小町の霊であることに気づき、市原野辺に行きます。座具をのべ香を焚き回向を始めると、女が再び現れて受戒を求めます。するとそこに一人の男(シテ)が現れてそれを止めようとします。男は、小町だけが戒を受け私一人を取り残すのかと言って小町の成仏を妨げます。その両人が小野小町と四位の少将の霊だと察した僧は、少将に懺悔の為に百夜通の有様をみせてくれるように言います。少将は請われるままに、雪の夜も雨の夜も通い続け、とうとう九十九日目の夜にあと一日と喜びつつも死んでしまった昔語りを狂おしく再現して見せますが、やがて両人共に成仏します。

 小町を扱った能の曲目の中で、ツレが小野小町を演じる曲目はこの通小町のみです。そのためシテである深草少将が現れるのは後場のみになります。雨夜ノ伝の小書(特殊演出)がつくと後場の立ち回り(囃子のみの演奏)部分が少し変わります。小鼓の音色にて雨音を表現し、その中を一人歩む深草少将の姿を常の型とは違う形で演じられるので見所の一つとなっております。

クリックで戻ります

当ホームページで使用しております画像などの無断転用を固くお断りいたします。
Copyright (C) 2000-2011 noh.fumi.org All Rights Reserved.