松
降りしきる雪を堪らふる松が枝のときはからひて払ふ雄々しさ ★
竹
万緑の外山にけざやぎ一叢の黄金靡ける竹の秋かな ★
苔
あらたしき狭庭の石も苔生して吾とここにぞ
魚
茜さす磯廻の庭に
獣
再びの呼ぶ声に覚め老い犬は日向にいできぬ冬庭の朝 ★
山
地の極み虚空に迫る群山のヒマラヤ襞のかげ神さびつ ★
川
せせらぎの果てに海原はるけくもいづこ限りぞ流るるあが日 ★
野
もえつきて
橋
わびぬれて空ながむれば虹の橋君が住む辺に渡り入るなり ★
海
もののふの歌碑の背向に伊豆の
旅
雁が音を聞けば旅居の夫恋しはつかばかりの玉章もなく
(「かきつばた」折句)
名所
大峰の山遠ければ明日川を越えても行き見ずみ吉野の里
別
終とならぬ別れはあらぬものなれど知らに別るる人のかなしさ ★
市
田園
早苗葉のあえかにさやぐ峡小田を統べて豊けし越の山影 ★
楽
たらちねの母
懐旧
浮彫の朝貢の絵のなほしるく
夢
夢に酔ひゆふべはかけし世の中もあかとき覚むればあした露けし
無常
散る花はまた来る春をした待てどふりゆくわが身なにかた待たむ
述懐
若き日に老いがこぼせし言の葉の露さはに染むわが身となれり ★
公開日:平成22年09月24日
最終更新日:平成22年09月26日