作者別花筵百首題

    恋 

初恋

ふみかよふ小泥(こひぢ)の道は春浅く結ぶにまだしき片生ひの草

忍恋

蚊遣(かや)り火の下に燃えにしわがけぶり消えてぞ人の思ひ寄すらむ

不逢恋

たのめつつあはで年ふる哀しさは慣れしわが身の心にぞある

逢恋

わびぬれし百夜の袖もあかねさす君が一夜の思ひに干ぬる

変恋

たまづさの返らぬ日より秋空の雁が音ばかり憂きものはなし

別恋

夏草の思ひ(しな)えしわが庭に袖別れよと秋風のふく

久恋

恨みつつ恋ひつつ果てず限りなくゆくへも知らぬわが思ひかな

遠恋

逢へばまた待つ日の遠くたちかへり逢ふも逢はぬもつらしこの恋

寄月恋

あかぬ戸をむなしく待ちて明けそめて空に消えゆく有明の月

寄雲恋

風吹かばちぎれて消ぬる雲に似て君が契りのはかなくもある

    恋 


公開日:平成22年09月24日
最終更新日:平成22年09月26日

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