早秋
由比ヶ浜
残暑
狭庭べのほのぼの白し夕顔に暑き真昼の余波忘るる ★
朝顔
釣瓶なきわが
露
草の葉の露を思はず明け暮れて六十路に露の繁く消ゆみる
萩
いとかなし夜にやあらむ萩の花しとどに濡れてさはに零れり
草花
先を見ず退きてぞ通ふ 集会堂 吾も斯うして小身萎へしかな
(作者注:「水引き」「荷葉(かよう)」「秋海棠」「吾亦紅」「女郎花」と5種の草花を詠み込み、「先」を「咲き」と掛け、縁語としました。)
秋鳥
しろがねの勾玉あゆぐ様なして月のみぐしを雁渡りゆく ★
霧
後朝のつらき別れに明けゆくに人目忍ばすけさの霧かな
月
そびやげる大廈のひまに方形の夜空のありて月渡りゆく
薄
道のべの尾花がしたゆ思ひ草薄き思ひのわれならなくに
虫
すだく虫さとに鳴きやみ君かもと妻戸に立てば風の訪ひ過ぐ
秋夕
たまゆらに光りて失せし入り海の浜にいろへる秋の夕影
秋果実
方代が残せし柿の実枝にあり鳥も飽き満ち冬がきぬらむ
(作者注:本歌は「柿の木に礼をつくして柿の実を梢に三粒捥ぎ残したり」 山崎方代)
秋天象
木枯しの一夜に銀杏は葉を落とし裸木あさの蒼穹に顕つ ★
秋田
秋の田の刈り穂のいとど露にぬれ君が行幸を待ちわびにけり
秋雨
唐松の木間もる秋日にきらきらと
夜寒
片敷きの袖に月影宿らせし夜寒の朝は露もしとどに
菊
菊の弁の盞に浮かべて酌む宵は大宮人の心地こそすれ
紅葉
手向けにし紅葉の錦散りぼはば帰へさに一葉家苞にせむ
暮秋
散りのこる柞の下葉いろなづみ冬隣るらむ山は黙しぬ ★
公開日:平成22年09月24日
最終更新日:平成22年09月26日