作者別花筵百首題 写歌

 夏    

首夏

五月晴れ端山繁山はたばりていぶせき一日家隠りする

時鳥

さみだれて昏れゆく庭のいぶせきになにせはせはと時鳥啼く

五月雨

亡き人の悔し涙か初七日に卯の花腐しさみだれの降る

紫陽花

さみだるるなへに移ろふ紫陽花に君をながめし日もふりにけり

夏花

白木槿ひと日の明り床にあり夏の夕べに茶を点ててゐる

夏草

わが思ひ日にけにしげくなりゆけど朝朝ふかき夏草の露

蛍火を闇路ほのかに見てしより君が魂かと心に添へり

夏夜

夏の夜は遠花火の音にそぞろぎて夜戸出してみる山際の空

夏虫

汝がぬちのまどしき明りにあくがれて玻璃戸に身を打ち夏虫の落つ

水辺夏

夏草の岸のおどろを刈り()けて広むる川面に水馬(みづすまし)舞ふ

炎暑

炎熱の路上の片へ遠くしてむなしく果てしみみずらの殼

空蝉の人をはかなく待ちわびて蜩の音になき暮るるかな

夕立

夕立の軒端宿りの仮初に人を恋ふれば小止みあいなし

納涼

大輪の花火のあとの静けさに潮騒聞こゆ浜の莚べ

晩夏

晩夏光ステンドグラスゆ射しいりて御堂の床に七色にあゆ

 夏    


公開日:平成22年09月24日
最終更新日:平成22年09月25日

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