松
霜ののち雪のうちには更なるに春秋問はぬ松の千年よ
竹
をちこちの竹の端山に吹き合へる秋風の音篠笛の声
苔
仙人の庵のけはひも知らるかし八重八重続く苔のきざはし
魚
大空は青き鱗の鰯雲今日はあまたの漁りなるべし ★
獣
闇に鳴る猿の渡りの木々の声影こそ見えね神さぶる杜 ★
山
片付けばなほとほしろき丈姿月より高くそびく山の端
川
空蝉の同じ我が身と水無瀬川浅瀬の水脈にうつるもみぢ葉 ★
野
色うつる鶉衣に露落ちて心は上の深草の空
橋
年を経て逢ひ見し星の涙かな霜おきまよふかささぎの橋
海
大風に夏のわたつみ波立てていかづち遠くあふぐ浜松
旅
思ひやれ宿より宿に移る身の幾夜眺めし旅の日の月
名所
杉の葉も行き交ふ人もかすみつつ雪降り巡る逢坂の関 ★
別
峰々の遠き別れの慰みにいづこも同じ月もものかは
市
さびしくも暮れゆく年の慰みや雪よりしるき市人の声 ★
田園
千町田やなべて嬉しきなりはひに鍬打ち返すをちこちの音 ★
楽
舞ふ袖も風に鳴り合ふ琴の緒のながき夜も飽かぬ巫女神楽かな
懐旧
書きすさぶ言の葉種もえも捨てず是を見むのちの昔語りに
夢
春の夜に袖を返して夢見草うつつに逢ふは花ばかりなり ★
無常
昨日まで
述懐
花も人も塵の末だに捨てがたし明日は限りの我を思へば ★
公開日:平成22年9月21日
最終更新日:平成22年9月21日