作者別花筵百首題 海松純

    恋 

初恋

消えなむよさらぬ心と思ひしを惜しみそめつる我が身知らるる

忍恋

はづかしな野べに咲き合ふ花々は色に出でてもはばかりもせで

不逢恋

さむしろや露を片敷く黒髪にちぎりおけるは月影ばかり

逢恋

由良の門にこの逢ひながら楫を絶ち名立たぬ旅を重ねてしがな

変恋

常永久に敷くは月とぞ知られけるかはる枕のよその我が身に

別恋

今宵よりかをらぬ風は吹きそめぬゆくへ尋ねぬ床の扇に

久恋

今はただ弁々の日数も月草や訪ひこし路に露も残らず

遠恋

思はくのあなたの月ぞ漏れ入りて夜の錦に袖ぞもみづる

寄月恋

絶えし夜の涙を闇につくろへどあしたの袖にゆるぐ有明

寄雲恋

我が恋はいづちよりともなき雲の絶え間も見えぬ上の空かな

    恋 


公開日:平成22年9月21日
最終更新日:平成22年9月21日

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