早秋
昼はなほ露も扇も置かねどもまづ夜に知る秋の初風
残暑
秋立つもしばしひとへの衣手にうち重ぬるは扇ぐ音の数 ★
朝顔
久方の色をうばひて咲くなれや月とかたみに白き
秋天象
いかにせむ雨夜の星のあやにくに明日とも見えぬつまの灯
露
秋は来ぬ葉末も袖もまがへつつ月の光を散らす下露 ★
萩
さ牡鹿のなく音も遠き萩の末野辺のこなたや風のしがらみ
草花
女郎花よそにおほかる野辺よりはひともと立てる庭を眺めむ ★
秋鳥
おきまよふ黄なる涙に身をつくし木々に袖振り鳴ける鶸かな
月
空見ても心に曇る月の影冴ゆる枕に秋を知るかな ★
薄
旅の空月に重なる花すすき幾袖かけて光る露かな
虫
幾
秋夕
もみぢ葉も露もむなしと見遣るとも空も色添ふ秋の夕暮
秋果実
わらはべが過ぐれば消ゆる栗の実を道におぎなふ木々のくるめき ★
秋田
穂の数の吉事頻かなむ稲莚みながら刈るは冥加なけれど
秋雨
かたときは春の朧に立ち寄りてさすがくもりも果てぬ霧雨 ★
霧
秋霧やいづれか
夜寒
秋の実は梢の風になれぬらん我が身夜寒の床に和ぎぬも
菊
菊の花色々咲けばをりふしの空より寄れる月かとぞ見る ★
紅葉
錦木の千束の色もまどふらん道の奥まで染める紅葉に
暮秋
風はなほ枯野の色にかはりつつ思ひし数も惜しき秋かな ★
公開日:平成22年9月21日
最終更新日:平成22年9月21日