立春
春立つと聞きて覚めけむ佐保姫や霞の衣の今朝の山裾
梅
夢に見る空もこの頃霞むかな床までとほる梅のにほひに ★
春鳥
春は来ぬ声のみ風のつれそめて霞の奥を渡るうぐひす ★
春夢
寝覚めをば何にゆだねん明日の夢梅のにほひかうぐひすの声 ★
春月
あやなしと今宵は言はじ花の香も色も朧に照らす春月
椿
落椿水脈さへにほふくれなゐは盃に似て浮かぶ九重
残雪
残り雪むら消えそめし若草に今年は何の彩を描かん ★
若草
春若くまづ咲き出づるみどりまた草てふ名負ふ花にやあるらん
余寒
大空は雪の別れの色ながら梅が香寒き風のきさらぎ ★
春雨
同じくはいづこに雨の宿りせん梅の花陰青柳の下
春野
春の野に袖より下の花を見てひとひ挿頭の雪を忘れぬ
春山
白妙の色はかはらず横雲の別るるひまの花の峰々
春曙
夜をこめて花は袂をよそふとも枕より見る春のあけぼの ★
桜
昔よりなほ白雲にまがふかな八重立つ染井吉野の色は
落花
吹きまよふ下風花の香に染みて枝をかれゆく天の羽衣 ★
苗代
今年また何を唄はん夕暮れの苗代道を帰る早乙女
蝶
ぬばたまの夜は明けぬれど黒揚羽羽に赤々と灯もともしたり
遅日
暮れがたき春日を見れば君が代の心やすくも長くもがもな
晩春花
ひとへだに色の限りをかきつめてまばゆく咲ける山吹の花 ★
残春
面影は重ねじとてもなほも惜し花の別れは袖のひとへに
公開日:平成22年9月21日
最終更新日:平成22年9月21日