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第2日目:11月1日土曜日 誕生日まで1週間!



今日は土曜日なので桃花さんは学校です。
お昼からは学園際の準備があるから夕方まで帰れないと言って出かけました。でも、とっても嬉しそうです。
桃花さんの部活は手芸部だそうで、ぼくにもようふくというものを作って着せてくれました。
今年の文化祭は「かくてるどれす」というものを作って体育館というところでみんなに見せるんだそうです。
よくわからないけどきっとかわいいだろうな、ぼくも見に行きたいけど、何せカンガルーだから行けません。
尽くんが行く時にこっそりかばんの中に入ってついて行こうかと思っています。
今からわくわくです。それはちょっと横に置いておくことにします。
昨日の夜桃花さんは帰って来てから、有沢さんというお友達に電話をしていました。たぶん悩み事相談です。
「男の人ってお花とかだめだよね」って言ってましたけど、たぶんお花をもらって喜ぶのは守村とかいう人くらいだと思います。
あの人は喜びそうにありません。
桃花さんはまだ悩んでいますが、昨日の電話で少しだけ思いついたようです。
あ、そうなんです、有沢さんには「絶対秘密」と言いながら自分であの人が好きなことをしゃべっていました。
女の人はよくわかりません。どうして奈津実さんはだめで、有沢さんならいいんでしょう。
ぼくにはわからないことがいっぱいあります。




「あ、ねえねえ志穂さん。ごめん、後でちょっといいかな?」
「あら、桃花さん。もしかして昨日の続き?」
「そう、そうなの。志穂さんなら信用できるんだもん」
「まあ、奈津実よりはましってとこかしら。じゃあ、5時過ぎに手芸部に顔出すわね」
「ありがとうっ!」

やっぱりいざという時には志穂さんだ。昨日も結局12時まで電話で相談に乗ってもらったし。奈津実だって、珠ちゃんだって、もちろん瑞希さまだってお友達なんだけど、なんかこう、なんていうか志穂さんは茶化さないでまじめに聞いてくれるんだよね。で、昨日出掛かった結論のおさらいをしようと思ったの。

とりあえず、午前中は授業だし、1時間目は大好きな氷室先生の数学だから真面目に授業を受けたけど、後はどうも上の空だったかもしれない。今日も先生はカッコ良かったな。数式を説明する時の声とか、すっとまっすぐに図形を描いていく大きな手とか、もちろんあの背の高い後ろ姿とか。やっぱり大好き。いつもはすごく冷たい感じがするけれど、修学旅行で一緒に回った時はなんとなくだけど、優しかったな。だって絶対身長差を考えたら先生の方が先に歩いていきそうなのに、ちゃんと歩調を合わせてくれてたし、疲れないように時々休憩してくれたりしたし。


ねえ、みんな、氷室先生って怖くないよ。
ねえ、ホントはすっごく優しいんだよ。
ただ、うまく伝えるのがちょっと下手なだけなんだよ。

お昼休みに珠ちゃんとご飯を食べながらお喋りしていたら、視線を感じた。これは……隣?隣の席といえば、はば学の王子様こと葉月珪くんの席だけど、彼はずっと寝てたんじゃなかったっけ?つんつんと肩をつつかれて珠ちゃんの方を見たら、小さな声で「桃花ちゃんのこと見てるよ」って言われた。

そのとたん、昨日の奈津実の言葉が頭に甦ってきた。


----葉月があんたのこと好きなんだって。


やだ、嘘でしょ。だって葉月くんって孤高の王子さまだもの、わたしみたいな庶民はおよびじゃないでしょ。

「なあ、北川……」
「へっ?な、なに?どうしたの?」
「お前、ほっぺたにご飯ついてる……」
「……」

なんだ、で見てたの。びっくりしたじゃないの。驚かさないでよ、葉月くん。

なぜかほっとしたわたしはけらけらと笑い出した。珠ちゃんもクラスのみんなも変な顔をして見ている。わたしだって変だってわかってるよ、でも止まらないんだもん。誰か止めてよ、おなか痛くなってきちゃった。

「北川」
「ひぁい?」
「北川、放課後数学教官室に来なさい」
「えっ、先生!」
「わかったな」

止まりました、みごとにぴたりと止まりました。先生の声が急に頭の上から降ってきたので、さっきまでのおなかの底から沸きあがるような笑いはぴたりと止まりました。
放課後、ちゃんとわたしは先生のいる数学教官室に行きました、いろいろと心当たりが多すぎて何で叱られるのかわからないまま。でもね、違ったの。日曜日は空いているかって聞かれたから、即座に空いてますって言っちゃった。だってわたしの中では、「社会見学=でーと」に自動的に変換されてるんだから、這ってでも先生と一緒に過ごしますってば。


わーい、日曜日何を来ていこうかな。
どこに連れてってくれるのかな。
今夜眠れるかな、わたし。



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